台風被害と林業の危機 放置され倒木相次ぐ山林の現状 「森林大国」日本で木材自給率3割

週刊『三里塚』02頁(1026号02面05)(2019/10/28)


台風被害と林業の危機
 放置され倒木相次ぐ山林の現状
 「森林大国」日本で木材自給率3割

(写真 溝腐病にかかり台風による強風で幹からぼっきり折れた山武杉)

 台風15号は千葉県に数十万軒の大停電をもたらし、復旧の遅れで無数の人びとの生活が破壊された。森田健作知事は、「自然との闘いだから予測がつかない」と見苦しい言い訳を述べた。だがこれは単なる自然災害ではない。国・県・東電の無為無策、対応の遅れを許さず責任を追及し、問題の所在を明らかにしなければならない。ここでは放置された森林の危機、林業の衰退の問題を考える。

山武杉に溝腐病

 県東部においては特に、強風によるおびただしい倒木によって電柱が倒壊し電線が切られ、道をふさぎ、復旧作業もままならぬほどとなった。そのことが停電の長期化をもたらす主要因となった。倒れた木の多くが、山武(さんむ)市の特産として知られる250年以上前から植えられてきた山武杉(さんぶすぎ)だった。県の杉林面積全体に占める割合は24%、山武地域では87%とされる。元々千葉産のブランド品種として知られる。
 この山武杉に1960年代から、溝腐病(みぞぐされびょう)が浸透していった。幹を腐らせてスカスカにしてしまう深刻な病気で、これにやられた木の多くが今回の台風で折れて倒れた。
 手入れをすることもままならず、こうした弱った木が放置されてきたのが千葉の、いや全国の山林の現状なのだ。

「自由化」で衰退

 日本は森林面積が国土の約3分の2を占める「森林大国」である。
 戦後、農家周辺の広葉樹などを多く含む天然林は、燃料源としての価値を失って次々と伐採され、建築用財として価値の高い杉や檜(ひのき)などの針葉樹が次々と植えられてきた。国の強い指導で1㌶に3千本という高密度で一律に植えられたが、間伐などの手入れを怠れば森林はたちまち衰退する。この拡大造林政策が1996年まで続けられた。
 64年に木材輸入が全面自由化となり、国産材の価格が高騰する一方で、外材は比較的安く大量に供給できることから輸入が拡大していった。
 日本の林業産出額は1980年の1兆1582億円をピークに減少し、現在は4千億円台。木材自給率はかつての9割から2002年に18・8%に落ち込み、現在は約3割に回復している。林業従事者は80年の14万6千人から2015年には4万5千人に減少した。「輸入自由化」に加え、急速な都市化、地方の過疎化によって小規模の林業経営が真っ先に苦境にさらされた。高度な技術を要し伐採作業に大きな危険を伴うことも追い討ちをかけ、後継者不足が深刻化している。

農業と不可分で

 そうした林業に対し、政府・林野庁は「スマート林業」「イノベーション」「生産流通構造改革でコストカットを」などと叫び、林業の成長産業化、「もうかる林業」を呼号している。そして、戦後植林した人工林が伐採期に入っているとして、補助金を出してまで「主伐」(山の木を全部刈る)を奨励している。しかし人手不足と経費負担で、伐採したとしても次の植林に至らずハゲ山のまま放置される例も多いという。
 まさに今、日本の農業が直面している深刻な危機を、そのまま先立って林業が経てきたことが実感される。
 森林を育てることは、何十年もの長期的なサイクルを要する。農業との密接な代謝関係を保つことで、やせた土地が肥沃な農地へと変貌し、森林の土壌保全能力も保たれてきた。(東峰の森も)
 それが災害にも強い森林を育んできたはずだが、今や新自由主義のもとで、ズタズタにされている。
 回復させるのは容易な事業ではないが、われわれは現状を厳しく認識することから始めたい。
(田宮龍一)
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