請求異議控訴審 強制執行は許されない 弁護団がNAAを徹底追及

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週刊『三里塚』02頁(1032号01面02)(2020/01/27)


請求異議控訴審
 強制執行は許されない
 弁護団がNAAを徹底追及

(写真 「市東さんの農地を奪うな!」日比谷公園霞門からデモに出発【1月16日】)

(写真 菅野雅之裁判長)

(写真 報告会で決意を語る市東さん)


 1月16日、東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)で、市東孝雄さんの請求異議控訴審の第2回が開かれた。反対同盟と駆けつけた仲間125人は一丸となって闘った。
 午前11時30分、日比谷公園霞門に集合。太郎良陽一さんの司会でデモ前の打ち合わせを行った。東峰の萩原富夫さんが「国とNAAは耕作者の権利を無視して土地を取り上げようとしている。こんなことがまかりとおったら農民は生きていけない。『強制的手段は二度と用いない』と口にしたNAAが自らそれを踏み破ることを絶対に許さない」と訴えた。
 動労千葉の中村仁さんらの連帯発言を受け、力強くシュプレヒコールを上げてデモに出発。「農地強奪やめろ」「早期結審策動を許さない」のコールを霞が関一帯に響かせて裁判所に迫った。

民事訴訟は別!?

 午後2時、大法廷を傍聴者で埋め開廷。最初に補佐人として専修大学法学部の内藤光博教授(憲法学)が陳述に立った。「原判決は、市東さんに対し農民としての死を宣告するものであり、重大な誤り。民事訴訟を使った公用収用の代替行為は許されない。農業による食糧供給は人々の平和と幸福、生存権の基盤であり、憲法的意義がある」と訴えた。
 続いて弁護団が総力でNAA追及に立った。
 NAAの提出した「準備書面1」は怒りなしには読めない。かつて空港公団(NAAの前身)が「B滑走路の用地取得において、あらゆる意味で二度と強制的手段を用いない」と社会的に公約したことについて、「話し合いが頓挫した場合にまで言及したものではない」「民事訴訟で土地明け渡し強制執行を求めることを放棄すると約束したわけではない」「1億8千万円の離作補償をくれてやるのだから問題ない」----こうした居直りの主張を何度も繰り返しているのだ。
 「話し合いが頓挫」云々は、農地法裁判一審判決で千葉地裁・多見谷裁判長がひねり出した理屈だ。NAAはそれをありがたがって何度も援用し、強制執行の根拠にしようとしている。しかし、「あらゆる意味で」と表明した以上、後になってから「民事訴訟は別」という解釈が入り込む余地はなく、NAAの対応は不誠実だ。
 「用地買収」は耕作者である市東家に無断で行われた。実際には転用計画がないのに「車両・コンテナ置き場にする」と後付けで偽りの申請をした。公団は東京に本社があり、「不在地主」だった。こうした違法の数々を重ねたNAAが市東さんに土地明け渡しを求める権利はない。
 そして、金をやれば問題ないという暴言! 実際には離作補償として算出された1億8千万円は「完全な補償」とは程遠い。民事訴訟の体をとっていても、実質上は国策による強制収用であり、「完全な補償」なしに私有財産を没収することは、憲法第29条(財産権)違反だ。市東さんの営農権をふみにじり「農業をやめて残りの人生にあてろ」というものだ。絶対に認められない。
 弁護団はさらに激しく最重要焦点である「強制的手段をとらないと言っても、民事訴訟に基づく強制執行は別」というNAAのひねりだした理屈を追及した。だがNAAはこれ以上「主張立証するつもりはない」と無責任にも言い放った。
 「NAAに立証責任があることを通告し、釈明に応じるよう促せ」という弁護団の要求に対し、菅野裁判長はこれに応じず「裁判所が適切に判断する」と露骨にNAAをかばう姿勢を表した。さらに、「人証調べについては、市東さん本人と平野靖識さんの2人を採用、その他6人は採用せず。補佐人の石原健二氏を加え、次回3月25日に行う。最終陳述のためにもう1開廷必要との控訴人の求めがあり、3月27日に臨時開廷を予定する」と述べ立てた。わずか2日で最終陳述をせよという非常識かつ不公平な訴訟指揮への怒号の嵐が傍聴席から巻き起こる中、閉廷を宣言した。

3・29大結集を

 報告会では、市東さんが「NAAの不誠実な態度を徹底弾劾し、裁判所を揺るがす闘いを」と訴えた。続いて顧問弁護団全員が発言し、他の三里塚裁判も全力で闘うことを確認し合った。
 最後に萩原さんが、「われわれの奮闘が敵を追いつめている。3・29全国集会に大結集しよう」と呼びかけた。

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