団結街道

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週刊『三里塚』02頁(1041号01面06)(2020/06/08)


団結街道


 ブレイディみかこ著『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。「本屋大賞2019年 ノンフィクション本大賞」をとって話題になった作品だ。イギリス在住の親子が、元・底辺中学校で格差や差別と向き合う1年半をつづっている。日本人の母とアイルランド人の父を持つ息子が白人社会でちょっとブルーになりつつも…とひとくくりできるほど現実社会は単純ではない▼イギリスでは2010年に政権を奪還した保守党政権が大規模な緊縮財政を始めてから、その影響がダイレクトに貧しい層に表れている。貧困地区の教師は、生徒の衣食住の面倒も見る。貧困と闘う教師たちの奮闘もこの本の見どころだ▼『ホワイト・トラッシュ(白い屑)』という差別用語で表現される白人労働者階級の子どもが通う中学では、差別の連鎖とでも言えるようなあからさまな人種差別がある。イギリスでは中学校を選択できるため、他人種の親子からは敬遠されるようになった▼母子はこんな会話を交わす。「多様性ってやつはけんかや衝突が絶えないしそりゃ無いほうが楽よ」「楽じゃないものがどうしていいの?」「楽ばっかりしてると無知になるから」。学校の授業で、「エンパシー」とは何かを学ぶ。それは、自分と違う立場、違う意見、違う感情を持つ人々の気持ちを想像してみる能力のこと▼政治活動をする私たちにこそエンパシーが必要だと、この本が教えてくれた。

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