明日も耕す 農業問題の今 パンデミックなぜ起きた コロナ後の農業の未来

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週刊『三里塚』02頁(1042号02面05)(2020/06/22)


明日も耕す 農業問題の今
 パンデミックなぜ起きた
 コロナ後の農業の未来


 コロナウイルスの感染拡大が続く中で、多くの識者が「ポスト・コロナ」「ウィズ・コロナ」を語ってこれからの時代を模索している。では農業という視点からコロナ問題を見たら何が言えるのか考えてみたい。

 販売先の喪失や流通の破たん、労働力不足など、コロナウイルスの感染拡大は農業にも多大な影響をもたらし、多くの農家が悲鳴を上げている。
 このコロナの問題をどう考えるのか、いくつか書籍をひもといてみた。
 農文協ブックレットの『新型コロナ19氏の意見 われわれはどこにいて、どこへ向かうのか』は様々な分野の方々の考察で面白い。だが、それ以上に雑誌『群像』の2020年6月号に収録された斎藤幸平氏の「コロナ・ショックドクトリンに抗するために」という論考に注目した。

元凶は資本主義

 斎藤氏は、緊急事態条項をめぐる改憲論議や検察庁人事問題を、災害のショックを利用した火事場泥棒、すなわち「コロナ・ショックドクトリン」として批判する。そしてこれに抗するためには、コロナの問題を資本主義の問題として考えなくてはならないとして、マルクスに言及する。
 「マルクスは、人間と自然の関わり合いを物質代謝と呼び、この物質代謝が資本主義の利潤優先型の生産によって歪められ、修復不可能な亀裂が生じグローバルな環境危機が起きることを警告していたのである。この議論の延長線上に、今回のパンデミックも位置付ける必要がある」
 つまり「資本主義の多国籍企業が世界中の増え続ける食料需要を通じて、アグリビジネスを推し進めてきたことが世界的パンデミックの可能性を高めた」ということだ。
 参考までに『19氏の意見』からも同様の論述を一文紹介しよう。
 「パンデミックの根本的な原因は、人間の環境破壊だ。地球環境とは、ウイルスも含んで、全ての生命が作り出す生態系を含む。人間が短期的な利益目的でその多様な生態系を破壊した結果、新型コロナウイルスのような人間に都合の悪いウイルスが誕生した。人間の所業でできてしまったのだ」(人類学者・関野吉晴氏)

産直に未来あり

 コロナウイルスそのものが、資本主義・新自由主義の行き着いた結果なのかもしれない。だから斎藤氏は「過剰な森林伐採と土壌侵食を引き起こす資本主義的アグリビジネスを辞めることしか、根本的解決策は存在しない」と説く。
 対照的に、コロナの問題を契機として「産直」や「提携」といった農業のあり方があらためて注目されている。市東さん、萩原さんだって、感染には気をつけながらも、これまでと何ら変わることなく土を耕し、産直で消費者と結び、意気軒昂と営農を続けている。
 この農業と農地の先にこそ、未来はある。
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