種苗法改悪を弾劾する 農民の自家採種を一律禁止 企業による種子支配を狙う

週刊『三里塚』02頁(1053号01面04)(2020/12/14)


種苗法改悪を弾劾する
 農民の自家採種を一律禁止
 企業による種子支配を狙う


 12月2日、衆議院に続き参議院で種苗法「改正案」が採決され、自民党などの賛成多数で可決・成立した。この種苗法改悪によって、農家がこれまで行ってきた種苗の自家採取=自家増殖が「登録品種」については一律禁止となる。
 全国の農民、農業関係者が強い反対・抗議の声を上げ、国会前では連日座り込みなどの行動が行われてきた(写真)が、菅政権は一顧だにせず審議を打ち切り、採決を押し通した。この暴挙を徹底的に弾劾する!

農民の権利だ!

 なぜこんな法改定を今行わねばならないのか。農林水産省は「シャインマスカット(高級ぶどう)の苗木が海外に持ち出されて栽培され販売されていた。こうした種苗の海外流出を防がなくてはならない」と繰り返し説明する。これはまったくの口実に過ぎない。
 確かに種苗法は、新たな品種を開発し登録した人の権利を守るものとして1978年に作られた。だがそこには、「農業者が譲渡された登録品種等の種苗を用いて収穫物を得、自己の農業経営において種苗として用いる自家増殖には、育成者権の効力が及ばない」と明記されていた。つまり、農家が自分の農業経営のために作物から種を採り、苗を育てることはまったく自由であると、はっきりうたわれたのだ。それを今回の改定でまるごと削除した。
 農家が次の年のために自分で種苗をつくることは、農民の当然の権利だ。人類が農耕を始めて以来、農民は種をまき、作物を育て、またそこから種を採るという営みを繰り返してきた。血のにじむ根気と努力によってその土地の気候・地質に適合した種が開発され、選ばれ作られていった。種の自家採取は農業サイクルの重要で不可欠の工程であり、その実践によって、さまざまな変化に対応しながら地域の土に合った種子や苗が定着し、その上に新品種の開発も進んだのだ。
 そのような農家や農業試験場の育種の努力を、種苗業者などが横取りして金もうけをしないように、というのがそもそもの種苗法制定の趣旨である。「農家の自家増殖禁止」など、本末転倒も甚だしい!

労農連帯強化し

 この改悪によって、農家は許諾料を支払わなければ登録品種の栽培ができなくなる。許諾制となる品種は5294種(全体の64%)にのぼる。稲は約半数が登録品種であり、また自家採取を前提として成り立ってきたサトウキビ、イモ、イチゴなどの栽培農家が、今後の経営に特に深刻な打撃を受けると予想される。農水省は、「影響を受ける農家は1割」「許諾料はさほど高くないだろう」などと言うが、まったく信用ならない。
 今回の種苗法改悪の狙いは、種苗を農民の手から奪い、企業の管理・支配下に置くことだ。
 2017年に、都道府県や農業試験場などが持っている種苗の知見を「民間事業者へ提供せよ」と求める農業競争力強化促進法が施行された。
 18年には、公的な支援によって稲などの主要穀物の種子を農家に安定的に供給することをうたった、主要農作物種子法(種子法)が廃止された。
 そして今回の種苗法改悪を併せた「3点セット」によって、種苗と作物がやがてはモンサントのようなアグリ大企業、多国籍資本に支配される道が敷かれようとしている。
 農家は企業との契約のもとで、種子・肥料・農薬などを購入させられ、許諾料を支払わされ、違反すれば巨額の賠償請求訴訟を起こされる。このような恐るべき事態が、海外ではすでに現実となり、多くの農民を苦しめている。
 安倍=菅政権は、海外向け高級品種などの「もうける農業」にしか関心がない。日本農業の根幹が衰退・壊滅することをよしとし、農業切り捨て、地方切り捨て政策を進めているのだ。
 闘いはこれからだ。労農連帯を強化・拡大して闘おう。

このエントリーをはてなブックマークに追加