明日も耕す 農業問題の今 鳥インフル猛威を振るう 変異すれば人にも感染

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週刊『三里塚』02頁(1058号02面05)(2021/02/22)


明日も耕す 農業問題の今
 鳥インフル猛威を振るう
 変異すれば人にも感染


 鳥インフルエンザが千葉県内で猛威を振るっている。昨年12月にいすみ市で感染が確認されてから次々と広がり、2月8日時点で採卵鶏の殺処分は427万羽。県内採卵鶏約1243万羽の34・3%に及ぶ事態だ。

 鳥インフルエンザは、2003〜04年に世界的に流行し、日本でもここ数年は毎年のように発生している。今回は、昨年11月に香川県で確認されたのを皮切りに50件に広がり、殺処分は全国で1千万羽。世界的にも欧州や韓国など42カ国・地域で発生している。
 千葉県は採卵鶏の飼育数が茨城県に次ぐ全国2位で影響は大きい。殺処分427万羽というのは8例目の時点の話で、2月15日には11例に増えた。最新鋭の鶏舎でも感染し、お手上げ状態だ。

高密度の養鶏場

 鳥インフルエンザは決して珍しいものではない。カモなどの水鳥は、ウイルスを体内に維持し続けて共存している。
 ところが、養鶏場という高密度状態で、急速に感染を繰り返し、変異・強毒化したのが、今問題になっている「高病原性鳥インフルエンザ」だ。
 非常に感染力が強いため、見つかったら鶏舎内すべての鶏を殺処分する対策が行われている。
 鳥インフルエンザは人獣共通感染症で、事例は少ないが海外では死者も出ている。そのままで人から人へ感染するリスクは限りなく低いが、問題は変異した場合だ。スペイン風邪をはじめ、過去に流行した新型インフルエンザも、鳥インフルエンザウイルスに由来すると解明された。
 強毒性ウイルスに由来し、伝播力をもつ新型インフルエンザが出現・流行したら、最悪の場合、5〜6億人が死亡するという試算さえある。「鳥インフルエンザ問題の本質は、人から人に感染する新型インフルエンザが出現し大流行する前触れだという点にある」(岡田晴恵『鳥インフルエンザの脅威』)のだ。

大規模化の果て

 話を養鶏に戻そう。感染した養鶏場の中に知り合いがいるという全国農民会議の小川浩さんにお話を伺った。知り合いの方は、感染原因を「たぶんネズミじゃないか」と語っていたという。しっかり対策をしていても、採卵が機械化・自動化されていて外部とつながっているから、どこかしら抜け穴があるのだ。
 小川さんは「もうひとつの流れ」として、大手鶏卵会社「アキタフーズ」元代表による吉川貴盛元農林水産大臣への賄賂の問題を取り上げた。
 賄賂の主な目的は、家畜をストレスのない状態で飼育する(アニマルウェルフェア)国際基準案に反対し、日本で主流のケージ飼いを存続させるためだった。だが、今回の感染拡大は経営大規模化のリスクを露呈し、「養鶏や畜産も今のやり方は行き詰まり、見直される方向にある」(小川さん)ことを図らずも明らかにした。
 利潤追求を第一とした農業に未来がないことをこの問題は示している。
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