明日も耕す 農業問題の今 食料自給率さらに減少 口先だけの国産転換推進

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週刊『三里塚』02頁(1118号02面05)(2023/08/28)


明日も耕す 農業問題の今
 食料自給率さらに減少
 口先だけの国産転換推進


 農林水産省は8月7日、2022年度の食料自給率を公表した。カロリーベースは前年同様の38%で横ばいだったが、生産額ベースは前年度比5ポイント減の58%となり、過去最低となった。
 食料自給率は、国内の食料供給全体に占める国内生産の割合だ。22年度の国民1人1日当たりの輸入熱量は19㌔カロリー増の1446㌔カロリー。他方、国産熱量は同11㌔カロリー減の850㌔カロリー。この合計から輸出や在庫の増減分を差し引いた総供給熱量は、2259㌔カロリーだった。
 小数点以下まで含めたカロリーベースの食料自給率は37・64%となり、0・37ポイント減った。
 生産額ベースの自給率が急落したのは、円安などで輸入価格が高騰しても輸入量は変わらず、国産への切り替えや価格転嫁が進まないからだ。
 マスコミをはじめ、各方面から「国産転換の推進を」「食料安保の強化を」と声が上がっているが、農水省は「今回の結果を受けて取り組み方向を変えることはない」(大臣官房)という。
 麦や大豆、飼料作物など自給率の低い品目の増産に引き続き取り組むと言うが、コメを作るなと言うだけでなく、麦、大豆、野菜、そば、エサ米、牧草などを作る支援として支出していた交付金のカットを決めた。

核の冬で餓死者

 昨年8月、衝撃的な試算を、米ラトガース大などの研究チームが科学誌『ネイチャー・フード』で発表した。
 米ロ間の核戦争が起きた場合、直接的な被爆による死者は世界で2700万人。さらに「核の冬」による食料生産の減少と物流停止によって、2年後には世界で2億5500万人の餓死者が出て、そのうち日本が3割を占め、人口の6割におよぶ7200万人が餓死するというものだ。
 日本の食料自給の現状から考えれば、破天荒な数字だとは言えない。

続く農家つぶし

 食料危機なのに農家と農業をつぶすという矛盾した政策の最たるものがミニマムアクセス米だ。 日本はコメの77万㌧(うち36万㌧は必ず米国から)、そして乳製品のカレント・アクセス(現行輸入機会)枠、13・7万㌧(生乳換算)という莫大な輸入を「最低輸入義務」だと強弁して履行し続けている。
 敗戦帝国主義として米帝の要求も受け入れながら「農業切り捨て」を続けてきた日帝にとって、農産物の輸入をやめて抜本的に国産に転換することなどできない。
 「戦時に備えた食料確保」は、あくまでも海外から食料を奪うことに(侵略もとおして)血道を上げつつ、国内はギリギリの食料で黙らせるしかないのだ。
 したがって、自給率向上のために「食料安保の強化」を叫ぶことが労働者・農民の道ではない。 労働者と農民が連帯して戦争に突き進む岸田を打倒することが、食料と農業を守る唯一の道だ。
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