成田夜間飛行差し止め訴訟始まる 騒音被害の訴え生々しく

週刊『三里塚』02頁(1125号02面01)(2023/12/11)


成田夜間飛行差し止め訴訟始まる
 騒音被害の訴え生々しく

(写真 訴訟原告団が千葉地裁へ)


 11月28日、千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で開かれた成田空港夜間飛行差し止め訴訟の第1回口頭弁論を傍聴しました。
 この裁判は成田市、横芝光町、芝山町、多古町、茨城県稲敷市の住民が国を相手に成田空港の深夜早朝の離着陸禁止を求めているものです。成田では現在、午前6時〜深夜0時まで離着陸が行われています。成田と同じ内陸空港である他空港の飛行時間を見ると、大阪空港は午前7時〜午後8時、仙台空港は午前7時半〜午後7時半、福岡空港は午前7時〜午後10時と平均で9〜10時間の飛行禁止時間が設けられています。ところが成田では現在でも6時間。これが空港機能強化(午前5時〜深夜1時)によって4時間にまで減らされようとしています。原告団が求めているのは、国の責任で他空港並みの午前7時〜午後9時まで成田の運用時間を制限しろという当たり前の要求です。
 この日は、成田市、稲敷市、横芝光町、芝山町の原告4人と海渡雄一弁護団長の意見陳述が行われました。原告は自ら作成した動画・スライドを使って異常な成田の実態について分かりやすく説明しました。裁判所が許可しなかったために用意された動画の音は聞くことができませんでしたが、それでも法廷に設置された大きなモニターに映し出される自宅上空を飛ぶ飛行機の映像などから非人間的な状況を強制されている日常が伝わってきました。
 以下、意見陳述で印象に残った言葉をいくつか引用します。
 「騒音は健康被害を引き起こす。水俣病などの公害と同じ命をめぐる問題だ」「地域は分断され、伝統行事もできない」「同居していた長男夫婦と孫が家を出ていった。子どもが飛行機の音を戦車のようだと泣くから。300年続いた旧家だったが自分の代で消滅する。生きていく権利がある。夜だけは静かにしてもらえないか」「90歳の父を連れて移転できない」「大型貨物機が23〜24時に飛ぶ。23時を過ぎても好きな音楽を楽しむことができず怒りだけの時間になった」「連続して大型機が飛んでくる。22時には寝たいが0時にならないと寝られない。慢性的な睡眠不足」「住民を犠牲に、踏み台にして金銭的利益のみを追求することは社会的に容認されるものではない」「国策のために住民が犠牲になっていいのか。昨年の提訴以降に亡くなり今日傍聴に来ることができなかった4人の遺影をスマホに入れてきた」
 原告4人の口ぶりはみな穏やかでしたが迫力ある証言で、「騒音で人が殺されている」成田の異常極まる現状の一端が暴かれました。
 国は恥知らずにもこの日までに「原告適格がない」などとして、請求の却下を求める答弁書を出していました。岡山裁判長は「実態に伴う答弁を出さなければ中間判決もありうる」として、国に反論を求めました。却下=門前払いはせず、今後は実態判断に入っていくことは確実と思われます。反対同盟の裁判を何度も傍聴してきた私からすれば、「公平に見えるように装っているに過ぎない」と思います。しかし今回、周辺住民の切実な要求と訴えを聞き、この声と怒りを一つに集めて闘えば反動の牙城である千葉地裁に風穴を開けることは可能だと実感しました。国策と命をめぐる最先端の攻防がここにあります。
 次回期日は3月19日。また駆けつけたいと思います。
(土屋栄作)

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