羽田空港衝突事故の深層を暴く 安全無視、人員削減、軍事優先 公共インフラ軍民共用化許すな

週刊『三里塚』02頁(1129号02面01)(2024/02/12)


羽田空港衝突事故の深層を暴く
 安全無視、人員削減、軍事優先
 公共インフラ軍民共用化許すな

(写真 海保機との衝突・炎上で焼け焦げた日航機の残骸)




 1月2日羽田衝突事故から一カ月、国交省の事故報告やマスコミの報道などからその原因が明らかになりつつある。当初から本紙が指摘したように、この事故は、第一に、新自由主義のもと資本の利益が優先され、生産・労働現場で安全性や労働条件が軽視されてきた結果である。とりわけ、管制官の削減=空港運航業務の安全軽視が事故の原因である。第二に、民間空港の軍事使用によるものである。22年国家安全保障戦略策定以降、民間インフラの軍事利用=軍民一体化の攻撃の中で、不可避ともいえる事故であった。
 羽田衝突事故は、海保機の機長が管制官の「ナンバー1」指示を出発の許可と思い込んで滑走路に進入し、待機したことが原因であるとされるが、その根底には先に挙げた二つの要因がある。

管制官削減、仕事量は激増

 第一に、管制官の削減である。現在の管制に関わる人は4134人、05年度のピーク時に比べ8割減った。その中で管制官の数は2031人で、約2000人が削減されている。しかし取り扱う航空機数は、05年に比べ、19年は1・47倍に。いかに仕事量が増加しているかがわかる。
 とりわけ羽田空港は、混雑時には航空機が2、3分おきに発着する混雑空港で、14〜15人で4つの滑走路の管制業務に当たる。誤進入対策の「滑走路占有監視支援システム」は、別の飛行機が滑走路に入ると、画面の滑走路や航空機の色が変わる仕組みだが、管制官は画面の表示に気づかなかった。現役管制官が「直接管制に関係ない監視システムを見る余裕がない」と話すように、表示に気づかないほどの激務に追われているのである。
 管制官の削減は、航空業の規制緩和の中で進められた、新自由主義による合理化攻撃の一環である。輸送分野は新自由主義攻撃が集中し、今日でも第二の分割・民営化とも言うべきJRのワンマン乗務や業務外注化など進行している。航空業もLCC(格安航空会社)に見られるように、少ない機材と人員で運行し、利益を最大限引き出そうとする業態が主流になっている。新自由主義による規制緩和は、航空・空港労働者を酷使し乗客の安全を犠牲にしているのである。また、成田空港のようにLCC誘致のために夜間飛行を延長し、周辺住民の生活を破壊するものだ。

海保機離陸を急がせた指示

 第二に、軍民共用の危険性である。事故機は、海上保安庁所属みずなぎ1号、第三管区海上保安本部羽田航空基地所属である。フライトプランは羽田航空基地16時45分発 →新潟航空基地17時55分着で、乗員6人。
 機長は、前日(1日)には中国公船警戒のため別の機体で沖ノ鳥島周辺まで7時間の飛行を行っていた。みずなぎ1号は、事故前24時間において、能登半島地震の対応のため2回飛行し、事故時は被災地向けの物資を中継場所となる新潟航空基地へ搬送しようとしていた。
 報道は、海保機が離陸を急いでいたため、時間に追われるあまり、自らに都合のよいように解釈して行動する「ハリーアップ症候群」を指摘している。海保機が羽田航空基地の格納庫を午後4時45分出発計画、そしてC滑走路の進入場所までは直線距離で4㌔、A・Bの滑走路を横切らなければならない。空港は混雑し、海保機がどのくらい遅れたのか不明であるが、C滑走路の誘導路に来るまでにかなりの時間が過ぎている。新潟空港への着陸時間から見るとかなりの予定超過である。緊急行動に近い海保機の、当時置かれていた状況である。
 しかしこれは、通常の「ハリーアップ症候群」で片づけられないものである。海保機の軍事的性格が、決定的である。これは、二つの点で言える。一つは、「緊急優先」ということである。当時、管制官が海保機の出発順を繰り上げ、優先的に離陸させようとしていた。海保機が管制官とやり取りを始める前、C滑走路誘導路上には既に別の外国の旅客機がいたが、管制官は海保機を優先し、「ナンバー1」と指示したのだ。羽田管制が日常的に海保機を優先していたかどうかは明らかではないが、スクランブル発進の状況での管制指示が海保機機長の思い込みを誘発したことは明らかだ。このような管制官の指示の機長による取り違えは、18年那覇空港での航空自衛隊機の緊急発進での誤進入がある。

運用の性格が対極の軍・民

 もう一つは、軍隊組織における上下関係である。海保機では、機長と副機長が管制指示を同時に聞き、相互確認する運用であったが、副機長も機長の誤認を修正できなかった。「上下関係」が強い組織では、機長の判断に疑義を抱いても周りは指摘しにくい傾向がある。このように初めから、管制指示の確認の徹底が担保されていないのである。
 そもそも、スクランブル発進を前提とし作戦遂行を目的とする軍用機と旅客の安全運輸を目的とする民間機では、運用の性格は対極にある。これを同じ空港で機能させるのが無謀なのだ。これは、すべてのインフラ、港湾・鉄道・道路などでも同じである。中国侵略戦争体制構築のための公共インフラの軍民共用化攻撃は、関係労働者の労働条件を悪化させるとともに人民の生活を破壊するのだ。成田軍事空港を粉砕しよう。
(大戸剛)

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