明日も耕す 農業問題の今 「米売り渡せ」と農家に命令 戦時強制供出狙う食糧法

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週刊『三里塚』02頁(1134号02面04)(2024/04/22)


明日も耕す 農業問題の今
 「米売り渡せ」と農家に命令
 戦時強制供出狙う食糧法


 4月10日の日米首脳会談は、日米安保同盟を新たな中国侵略戦争同盟へと大転換させる歴史的大攻撃だ。岸田はこれを「外交成果」と言いなし、社会全体を戦争に向かってつくりかえる戦争法案を押し通そうとしている。
 食料・農業・農村基本法と食料供給困難事態対策法(食料有事法)は、衆議院での審議に入り、今号が出る頃には通過しているであろう情勢だ。
 社民党は戦争情勢にまったく触れず基本法改悪を一部評価し、食料自給率の問題に切り縮めている。共産党(全労連声明)は戦争についての言及はあるものの、「大軍拡より平和」の一般論を述べるに過ぎない。
 新法(食料有事法)への言及がほとんど見受けられない中で、あらためて戦争法案の食料有事法に警鐘を鳴らしたい。

隠された中身は

 前々号では食料有事法の第20条を「看過できない」と取り上げた。
 「特定食料等の価格の高騰又は供給不足」が生じたら、「関税定率法」「国民生活安定緊急措置法」「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」「物価統制令」などの法律を用いて「適切な措置を講じる」としているだけで、具体的な中身がわからないからだ。
 今回、この中で特に注視すべき「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(通称は食糧法)を取り上げたい。

食糧の国家統制

 食糧法は全62条で食糧管理法の後継法とされ、「主要食糧の需給・価格の安定を図る」(第1条)ものだ。
 その第5節に「緊急時の措置」を掲げている。
 米穀の供給が大幅に不足しそうになったら、出荷・販売事業者は譲渡、移動、保管、価格制限などについて政府の命令に服せという(37、38条)。
 そして、第39条(米穀の生産者に対する命令)では「……なお米穀の適正かつ円滑な供給を確保することが困難であると認められるときは、米穀の生産者に対し、売渡しをすべき期限及び数量を定めて、その生産した米穀を、政府に売り渡すべきことを命ずることができる」とある。「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」(第55条)という罰則規定も設けている。
 米を作っても生きていけない状態にしておいて何を言うか。
 1994年に成立したこの法律の背景にあるのは、前年の記録的な冷夏・米不足による「平成の米騒動」だ。店頭から米が消え、卸売業者までもが米の確保に奔走した。それを奇貨としてこんな法律が作られていたのだ。
 食料有事法の中で用いられる食糧法は、まさしく戦時下の強制供出をねらうものだ。
 食料有事法は「農家に食料増産を強制する法律」にとどまらず、食料の国家統制をはかる有事法制そのものだ。
 「戦争のための基本法改悪と新法に反対」を掲げる全国農民会議とともに闘おう。
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