なぜ日本は原発を止められないのか? 全国で進められる再稼働に怒りと追及 青木美希さん講演会に参加して
週刊『三里塚』02頁(1172号02面02)(2025/11/24)
なぜ日本は原発を止められないのか?
全国で進められる再稼働に怒りと追及
青木美希さん講演会に参加して

(写真 映像の解説をする青木さん)
青木美希さんの講演会「なぜ日本は原発を止められないのか?」が11月16日、「放射能汚染水流すな!千葉県実行委員会」の主催で行われた。
政府がこの春策定した第7次エネルギー基本計画には、「原発を最大限活用する」と原発の新増設まで盛り込まれている。国や電力会社は「AI活用のためのデータセンターで大量の電力が必要になる」ということも口実に、柏崎刈羽原発をはじめ、全国で再稼働を全力で推進している。極右勢力の台頭や高市政権の登場で、核共有や核武装が叫ばれている。このような動きを許してはならないと今回の講演会は企画された。
青木さんは大手3社の新聞社などに勤務し、現在は個人として原発の取材を30年近く続けてきたジャーナリストだ。
講演の前半はサブタイトルにもある「福島への思い 原発事故は終わっていない」という内容で、青木さんは事故から14年が経過した福島第一原発の現状や避難している人々の実情について映像を交えながら語った。
特に避難者への住宅提供について、「避難先の住宅提供はどんどん打ち切られている。帰還困難区域の人たちすら打ち切られている。そしてついに大熊町、双葉町の避難者への住宅提供が来年3月で打ち切られようとしている」と福島切り捨ての実態を明らかにした。
国会では議員立法で「原発事故子ども・被災者支援法」がつくられ、「国は移動先における住宅の確保に施策を講ずるものとする」と書かれている。青木さんは「ちゃんと良い法律つくったのに実際にやっていることは打ち切りで逆じゃないですか」と怒りをにじませて語った。
形ばかりの復興とは裏腹に、いまだに線量が下がらず荒れ果てた庭、朽ち果てた家屋、牛の骨が転がる牛舎など現在の双葉町を伝える映像は見るのがつらかった。
後半は「なぜ日本は原発を止められないのか?」。青木さんは政・官・業・学そしてマスコミがいかに根深く結びついて「原発ムラ」をつくっているか。さらに、業界から政界、マスコミへといかに原発マネーが流れているのかを生々しく語った。青木さんと仲良くなり改革に動いた官僚は、一夜にして左遷されたという。
「原発新増設と言っているけど、1基4000億円だったものがいま、1基1兆円とか2兆円とかにどんどん跳ね上がっている。その分を私たちの電気料金から取る仕組みを経産省はつくった。原発を支える仕組みができている」と暴いた。
質疑応答では、原発を止められない理由として原発と核武装の問題に触れ、「外務省が核平和利用と言いながらも、『核を作れるポテンシャルを日本が持つことは大切だから原発を持っていた』という文章が過去に残っている」と自著(『なぜ日本は原発を止められないのか?』文春新書)を引用した。このテーマでもっと話を聞きたかったのだが、著書の中では一章を使って詳述されているそうだ。ぜひ読んでみたい。(ちなみに「やめられない」と読む。「とめる」は一時的で「やめる」は恒久的。恒久的に「やめさせたい」との思いがタイトルには込められている)
講演会では青木さんのほかに、千葉県に避難されている方の話も伺った。最後に主催者が「汚染水の停止、原発の廃止に向かって共に頑張りましょう」と呼びかけた。
(神部俊夫)