明日も耕す 農業問題の今 戦争のための自給率100% 植物工場推奨する高市
週刊『三里塚』02頁(1172号02面04)(2025/11/24)
明日も耕す
農業問題の今
戦争のための自給率100%
植物工場推奨する高市
高市首相は11月6日の参院本会議で、供給カロリーベースの食料自給率について、「100%を目指していきたいという強い思いがある」と述べた。これは歓迎すべきことなのだろうか。
高市は参院本会議で自給率100%への意欲を語った上で、実現には「現在の約3倍の農地が必要という制約もある」と課題が多いことを認めた。
課題が多いどころではない。現実離れした荒唐無稽な数字であることは誰の目にも明らかだ。2024年度の食料自給率は38%。政府は食料・農業・農村基本計画で、30年度までに45%に引き上げる目標を設定した。
高市は首相就任後、鈴木憲和農水相に基本計画の目標達成に向けた施策の実施を指示したが、これも絵に描いた餅だ。
だが、「心強いのは高市首相が自給率の大幅な引き上げに意欲を見せていることだ」(11月6日付日本農業新聞論説)と、歓迎する論調も少なくない。
戦争国家体制へ
だが、「100%」というのは、具体的現実的に自給率を引き上げようということなのか。「100%」が実現可能かどうかというところに高市の真意はない。
「100%」の意味するものは「自前で食料生産できる」国家体制を確立するということだ。
軍事費の国内総生産(GDP)比2%化をはじめ、中国侵略戦争を遂行するために政治・経済・軍事のすべてを戦時体制にたたき込もうとしている高市が、戦争ができる「食料生産」として農業を再編しようというのが自給率100%だ。
いずれ食料有事法も再び前面に出てくるだろう。ちなみに先の参議院選挙の際には、参政党も食料自給率100%の公約を掲げている。
砂漠や戦地でも
こう考えると、食料自給率100%のために、なぜ植物工場が第一なのかという疑問も見方が変わってくる。日本企業が開発した完全閉鎖型植物工場は、「天候や災害の影響を受けず計画的に生産できて、従来型の約5倍の生産性を誇り、災害時の食料供給拠点としても期待される」と宣伝されるが、実際には初期投資もランニングコスト(特にエネルギーコスト)も高く採算に合わない。政府が支援するといっても、植物工場で食料自給率が大幅に向上という発想は現実離れしている。
だが「自前で食料生産できる」ことが真の目的なら話は別だ。
高市は推奨する植物工場について「被災地でも、砂漠でも、宇宙でも食料生産が可能」とうそぶいている。これは有事において戦地でもどこでも食料生産ができるということではないのか。
自給率にどれだけ寄与するかではなく、戦争・軍事の観点から、継戦能力を確保する戦時食料生産として、植物工場は第一級の課題なのだ。
戦争突入の高市政権を打倒しよう。