COMMUNE 1998/07/01(No.274 p48)

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07月号 (1998年07月01日発行)No.274号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉 周辺事態法阻止するために

翻訳資料 組合破壊・搾取強化に米・豪労働者が大反撃
『エコノミスト』98年4月18日号    松永 洋訳

討議資料  新ガイドライン関連3法案(周辺事態法案/自衛隊法改定案/物品役務相互提供協定改定案(要綱)

    5・24決戦に火ぶた切る

三里塚ドキュメント(4月) 内外情勢(4月)

日誌(3月)

翻訳資料

 翻訳資料

 組合破壊・搾取強化に米・豪労働者が大反撃

『エコノミスト』98年4月18日号

松永 洋訳 

【解説】

 ここに紹介する初めの記事は、アメリカの結成されて間もない労働組合のストライキを報じたものである。
  平坦で広大な国土を持つアメリカで大きな位置を占めている湖・河川・運河を使った運送にたずさわる労働者たちの作られて間もない労組の闘いである。
  二番目の記事は、戦闘的な伝統を誇るオーストラリアの海運労働組合(MUA)を壊滅させようとする資本と政府に対する労働者の闘いを報道している。
  この二つの記事を掲載した『エコノミスト』の基本的性格は、イギリス帝国主義ブルジョアジーのための情報誌であり、また広報誌であるといえる。特に八〇年代以降は、長年にわたって、いわゆる新自由主義のイデオロギーを主張してきた。サッチャー・レーガン・中曽根流の規制緩和・行革・経済のグローバル化・労働運動破壊を推進してきたのである。だが、この『エコノミスト』でさえ、当のアメリカ・イギリスを始めとする世界的な労働運動再生の動きに動転し、また「絶好調」と自称するアメリカ経済のバブル崩壊の予兆に脅えているのである。
  第一の記事のアメリカの内陸水運労働者の闘いは、昨年夏、世界最大の小荷物運送業者UPS社の八万五千人の労働者のスト勝利以降、アメリカ労働運動が戦闘的に再生してきている情勢を象徴している。
  八〇年代のレーガン政権以来、アメリカ帝国主義は労働者階級が数世紀にわたって勝ち取ってきた既得権を徹底的に否定し、労働者に犠牲を集中することによって、資本の利益をはかってきた。労働組合の破壊をテコにして、賃金、労働時間、安全、医療、雇用安定、教育、年金、税制など、すべての面で搾取強化・労働者の生活破壊が強行された。
  貧富の格差は、激しく拡大している。七六年には上から一〇%の富裕層が、アメリカの資産のほぼ半分を所有していた。九五年には、この一〇%の層の資産が、アメリカの総資産の七〇%を占めるにいたった。労働者の実質賃金は七三年が最高水準であり、それ以来二十五年間、下降傾向を続けている。賃金下降に、社会保障破壊が追い討ちをかけた。七九年には、民間部門の労働者の約七〇%が健康保険を持っていた。だが、保険料の企業側持ち分の急落などによって、九三年には、健康保険がある労働者の率は六四%に下落した。一九九六年現在、四千百七十万人のアメリカ人には、条件の悪い健康保険を含め、健康保険が一切ない。この無保険者の数は、九五年より百十万人も増えている。
  このように次々に生活破壊の攻撃がかけられていることに対して、アメリカの労働者階級はついに広範な反転攻勢を開始した。
第二の記事、オーストラリアの海運労組破壊は,すでに新たな二十九年型世界恐慌の過程が開始されている中での世界的な階級間激突の動きを示している。
  オーストラリアは,すでに八〇年代から労働党政権下で産業別労組の破壊・企業別労組化、連帯ストの禁止などの労働法制改悪の動きが激化していたが、労働者階級の戦闘的な闘いの結果、こうした攻撃は現場で撃退されてきた。だが九六年三月に成立した保守連立政権は、発足直後の五月に、「職場関係法案」(新労使関係法案)提で、十一月成立というテンポで、従来の労資関係法制を一変させていった。この法律の内容は,(1)組合保護条項の廃止(クローズドショップ条項の禁止など)。非組合員と資本との交渉に組合が介入する権利の否定。組合員がいない職場では、協定等違反の調査のためであっても、組合の職場立ち入りを原則禁止。(2)交渉期間外のスト、第二次ボイコット(連帯ストなど)の禁止強化。特に貿易に影響を与えるボイコットの厳重禁止(国際連帯の破壊)。(3)連邦労使関係委員会(AIRC)の権限を大幅に縮小し、労働者保護的役割を極小化し、(4)パートタイム・臨時労働者の数を制限するAIRCの権限も廃止し、(5)解雇不当の申立に対して、AIRCは、解雇の手続き上の問題については審査しなくなり、また解雇の金銭補償命令を出すに当たっては企業の経営環境を考慮する義務を負う、などである。
  この新法をうけて、資本の労働運動破壊は一挙に激化した。たとえば、多国籍大鉱業資本リオ・チント社は、労組が勝ち取ってきた協約・労働慣行を破壊し、個別労働者との契約に切り換えようとしてきた。この大攻撃にたいして労働者の怒りは煮えたぎっている。鉱山労働者の組合CRMEUは、同社のハンターバレー鉱山では六週間におよぶ大ストライキに決起した。
  特に港湾労働者は、本文記事からも分かるように戦闘的な闘いの経験を蓄積し、職場支配権を確立してきた力強い労働者部隊であり、国際主義的な闘いを積み上げてきている。イギリス・リバプールの港湾労働者の解雇反対、九六年のインドネシア福祉労働組合(同国史上最大のゼネストを貫徹した政府非公認組合)指導者の騒擾罪逮捕反対などを、荷役ボイコット闘争として実力で貫徹してきたのである。いかに政府・資本が港湾労働者に攻撃を集中しようと、港湾労働者の闘いを抑えられるものではない。五月四日、港湾労働者は、オーストラリア連邦高裁の復職仮処分決定(仮処分の最終審)を勝ち取った。
  世界各地の港湾労組とともに、日本の全港湾も四月二十二日に、非労組員を使って積込みをしたオーストラリア船の荷役拒否を決定し、連帯を示した。
  アボリジニー(先住民族)の先住権、土地使用・所有権回復要求の闘いは、長い闘いのすえ九二年、北部のマリー島のマボ氏が歴史的な最高裁勝利判決を勝ち取り、現在、さらに広範な闘いが発展している。
  ガイドライン関連法案阻止、労働法制改悪阻止の闘いを大爆発させ、全世界の労働者階級との連帯を圧倒的に前進させよう。

【〔 〕内の補足、小見出しは訳者】

………………………………………

【米・豪労働者の大反撃】

◆アメリカ内陸水運労働者のスト

 五大湖からメキシコ湾にいたるアメリカの内陸水路では、列車のように何隻も長大に連結したバージ(はしけ)で、穀物・石油・金属スクラップ・化学物質などが運搬されている。このバージの列を動かしているのが、タグボート(引き船または押し船)の操船手である。

●家族と電話もできない

 タグボートの操船手は、生活の厳しさを訴えている。十二時間交代の労働が三十日間も連続し、しかも残業手当や休日労働手当がつかない。その他の手当もほとんどない。そのうえ、家族の心配がある。水運会社の中には、家族からかかってくる電話を切ってしまうところもある。手紙が寄港地に間に合うように着くことは少ない。食事も悪い。以前は水運会社はみな、タグボートにコックを乗せていたが、今は、自分で食事を電子レンジで暖めるだけである。船が港に着いても、操船手は下船を許されない。
  紙の上では年収四万〜五万ドルで、給料は良いように見える。しかし、操船手たちが言うには、時間給に直すとトラックや鉄道の運転手の平均給与の半分である。また会社は、安全・環境保護法令違反を操船手に強いているという(会社側は否定しているが)。その一例として、油と水を分離する装置がないので、油の混じった船底水が河川に捨てられているということが挙げられている。
  このような問題についての経営側との数ヵ月に及ぶ交渉が決裂したため、四月四日、操船手たちはドラスティックな行動に打って出た。アメリカの三千人の操船手のうち三分の一を組織する「パイロッツ・アグリー」という労働組合がストライキを指令したのである。このストは、出だしこそ鈍かったが、現在ではミシシッピ川とその支流を押さえている。四月八日には、サン・ルイ、ヒューストン、モービール、メンフィスを始め、ミシシッピ川沿岸とメキシコ湾岸の十二の港でピケが開始された。ストによって、オハイオ川の石炭積み出しが止められ、ニューオーリンズの穀物積み込みが遅延させらされている。おそらく数週間のうちに、会社側はスト代替要員を入れ、決定的な衝突がおこるであろう。だが、スト代替要員の数は足りそうもない。

●未熟練者の使用で事故多発

 また、安全問題も発生している。パイロッツ・アグリーのディッキー・メイズ議長によれば、現在、〔昼夜〕交代なしで一人乗務で操船しているタグボートもあるという。また、会社側がスト中の労働者の代わりに無資格者を使えるようにと沿岸警備隊が安全規則をゆるめているため、事故が増加しているという。四月八日には、バージの列がイリノイ川のフローレンス近くの道路橋に衝突した。ミシシッピ川でおきた別の事故では、イリノイ州アルトン近くの船舶昇降用の水門が数時間使えなくなった。また、三隻のバージがサン・ルイのカジノ観光船に衝突したときには、二千人の乗客が避難する事態になった。
  沿岸警備隊は、安全規則を無視しているとされていることについては否定している。無資格の操船手を使ったタグボートは取り締まっているが、春には川の水量が増え、流速が速くなって例年航行の危険が高まるのだといっている。●AFL−CIO全国的支援へ
  労組側は、操船手の九〇%がストに参加している大手内陸水運会社がいくつもあると言っているが、大部分の会社の発表によれば、運行にはほとんど影響が出ていないという。しかし、ストが長引けば、そうも言っていられなくなる。内陸水運で運ばれる貨物は、簡単には鉄道やトラックに振り替えがきかない。アメリカは、自動車の車体を作る鋼板やパン用の小麦粉の不足に直面しかねないのである。
  実際にこうした結果にまでいたると考えている者は、ほとんどいない。たしかに、いわば巨人である水運会社に対して、操船手組合はまだ一年前に生まれたばかりのひよこにすぎない。しかしこの組合には、強力な支援がある。今年初め、操船手組合は航海士・船長・パイロット国際組合に加入した。この組合は、強力な国際沖仲仕協会の一組織である。また、AFL−CIOのジョン・スウィーニー議長は、操船手組合を全力で支援することを約束している。
このストで労働条件を改善できるかどうかはともかく、すでに操船手たちは一つの成果を勝ち取っている。つまり、アメリカの繁栄は、今も操船手のたくましい腕と技によって運ばれていることを全国に知らしめたことである。

◆全員解雇に反撃するオーストラリア港湾労働者

二年前にオーストラリアの首相に選出される前、ジョン・ハワードは「心地良い、リラックスした国」を実現すると有権者に公約した。しかしその実現は、はるかに遠のいたようである。
  港湾は戦場になった。そして議会では土地の権利が大問題になっている。

●組合員だからと全員解雇

 四月七日、オーストラリア第二の港湾荷役会社であるパトリック社が、荷役労働者千四百人を一人残らず解雇した。翌朝のテレビと新聞では、犬を連れた屈強なガードマンが港を警備している様子が報道された。パトリック社の港湾労働者はオーストラリア海運労組に全員加盟している。パトリック社は、労組員を解雇し、非労組員の契約労働者で置き換えたのである。ここから、オーストラリアでは近年最大の激突が始まった。
  これは局所的な衝突ではなく、保守連立ハワード政権自体の威信がかかった激突である。オーストラリアの港湾を一世紀近くも支配してきた労組の力を打ち破ろうというパトリック社の政策は、政府が肩入れしている政策なのである。ハワード首相は、パトリック社が労組員を迅速かつ冷徹に解雇したことは「オーストラリアの労使関係の決定的な転機になる」と述べた。たしかに、そうなる可能性は高い。
  そして首相は、港湾の改革と効率化への政府の決意を示すことは、おそらくこの十月にも行われることになる総選挙での得票を増やすことになると見込んでいるのである。
  四月八日、上院は政府の土地法案の二回目の否決を行った。この政府の土地法案は、アボリジニー〔先住民族〕が広大な農業地域の土地に対して主張している権利=「先住権」に厳重な制限を加えようというものである。この法案は、最高裁が一九九六年に、農業経営と先住権は共存しうるという判決を出したことに対する政府側の対応であった。だが、政府は上院では過半数を持っていないため、政府案よりも広範な権利をアボリジニーに認める上院修正案が出され、政府(および政府案を支持する農場経営者たち)も、上院修正案を受け入れようとした。だが、それでも上院では土地法案が二度にわたって否決されたことによって、ハワード首相は、上下両院を解散してこの問題について民意を問うことができるようになったのである。
  一九九六年に政権を取って以来、ハワード首相は弱体で優柔不断だと見られ、世論調査での支持率は下降線をたどってきた。ハワード首相は、こうした批判を退けるために、港湾紛争と土地所有権の戦いへの対処で、強力な指導者であることを示そうとしているのである。
  港湾での闘いの展開の中で、ハワード首相のパトリック社への肩入れの正しさが明らかになってきたようである。労組員解雇の一週間後には、オーストラリアのほとんどの港で契約労働者が荷揚作業を行った。オーストラリアの港湾が港湾労組によって労働条件ががんじがらめにされて先進諸国の中でもっとも非効率的になっているという評価をひっくり返したい、と政府は言明している。シドニー港とブリスベン港は特に作業が遅く、外国の効率的な港では一時間に三十個のコンテナを処理するのに比べて、二十個しか処理できない。政府の目標は、時間当たり二十五個だという。

●軍隊式の反労組作戦

 だがそれは、痛みなしには実現できない。今週、港湾労働者とその家族がピケットラインを張って警察と衝突した時の光景はひどいものだった。目出し帽をかぶって顔を隠した契約労働者とガードマンがヘリコプターに乗ってピケットラインを越えた場面を見て、一般のオーストラリア人は動揺した。世論調査によれば、この反労組作戦が軍隊式のスタイルで行われたことについて世論は割れている。
  昨年、「二次的ボイコット」つまり連帯ストを禁止する法律が制定されたため、労組の広範な支持行動は抑えられている。その代わりに、この紛争は法廷に持ち込まれた。海運労組は、パトリック社と政府が共謀して不法に労組員を解雇したと主張している。
  (おわり)

 ●討議資料

 

 新ガイドライン関連3法案(周辺事態法案/自衛隊法改定案/物品役務相互提供協定改定案(要綱)

●周辺事態法案

(目的)
第一条 この法律は、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態(以下「周辺事態」という)に対応して我が国が実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項を定め、もって我が国の平和及び安全の確保に資することを目的とする。
(周辺事態への対応の基本原則)第二条 政府は、周辺事態に際して、適切かつ迅速に、後方地域支援、後方地域捜索救助活動、船舶検査活動その他の周辺事態に対応するため必要な措置(以下「対応措置」という)を実施し、我が国の平和及び安全の確保に努めるものとする。
2 対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。
3 内閣総理大臣は、対応措置の実施に当たり、第四条第一項に規定する基本計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。
4 関係行政機関の長は、前条の目的を達成するため、対応措置の実施に関し、相互に協力するものとする。
(定義等)
第三条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 後方地域支援 周辺事態に際して日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の目的の達成に寄与する活動を行っているアメリカ合衆国の軍隊(以下「合衆国軍隊」という)に対する物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置であって、後方地域において我が国が実施するものをいう。
二 後方地域捜索救助活動 周辺事態において行われた戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ)によって遭難した戦闘参加者について、その捜索又は救助を行う活動(救助した者の輸送を含む)であって、後方地域において我が国が実施するものをいう。
三 船舶検査活動 周辺事態に際し、国際連合安全保障理事会の決議に基づく貿易その他の経済活動に係る規制措置の厳格な実施を確保するために必要な措置を執ることを要請する国際連合安全保障理事会の決議に基づき、船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であって非商業的目的のみに使用されるもの(以下「軍艦等」という)を除く)の積み荷及び目的地を検査し、確認する活動並びに必要に応じ当該船舶の航路又は目的港もしくは目的地の変更を要請する活動であって、我が国領海または我が国周辺の公海において我が国が実施するものをいう。
四 後方地域 我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。
五 関係行政機関 国家行政組織法(昭和二十三年法律第一二〇号)第三条第二項に規定する国の行政機関及び同法第八条の三に規定する特別の機関で、政令で定めるものをいう。
2 後方地域支援として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供(次項後段に規定するものを除く)は、別表第一に掲げるものとする。
3 後方地域捜索救助活動及び船舶検査活動は、自衛隊の部隊等(自衛隊法(昭和二十九年法律第一六五号)第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ)が実施するものとする。この場合において、後方地域捜索救助活動または船舶検査活動を行う自衛隊の部隊等において、その実施に伴い、それぞれ当該活動に相当する活動を行う合衆国軍隊の部隊に対して後方地域支援として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供は、別表第二に掲げるものとする。
(基本計画)
第四条 内閣総理大臣は、周辺事態に際して次に掲げる措置のいずれかを実施することが必要であると認めるときは、当該措置を実施すること及び対応措置に関する基本計画(以下「基本計画」という)の案につき閣議の決定を求めなければならない。
一 前条第二項の後方地域支援
二 前号に掲げるもののほか、関係行政機関が後方地域支援として実施する措置であって特に内閣が関与することにより総合的かつ効果的に実施する必要があるもの
三 後方地域捜索救助活動
四 船舶検査活動
2 基本計画に定める事項は、次のとおりとする。
一 対応措置に関する基本方針
二 前項第一号または第二号に掲げる後方地域支援を実施する場合における次に掲げる事項
イ 当該後方地域支援に係る基本的事項
ロ 当該後方地域支援の種類及び内容
ハ 当該後方地域支援を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項
ニ その他当該後方地域支援の実施に関する重要事項
三 後方地域捜索救助活動を実施する場合における次に掲げる事項
イ 当該後方地域捜索救助活動に係る基本的事項
ロ 当該後方地域捜索救助活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項
ハ 当該後方地域捜索救助活動の実施に伴う前条第三項後段の後方地域支援の実施に関する重要事項(当該後方地域支援を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項を含む)
ニ その他当該後方地域捜索救助活動の実施に関する重要事項
四 船舶検査活動を実施する場合における次に掲げる事項
イ 当該船舶検査活動に係る基本的事項
ロ 当該船舶検査活動を行う自衛隊の部隊等の規模及び構成
ハ 当該船舶検査活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項
ニ 第三条第一項第三号に規定する規制措置の対象物品の範囲
ホ 当該船舶検査活動の実施に伴う前条第三項後段の後方地域支援の実施に関する重要事項(当該後方地域支援を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項を含む)
へ その他当該船舶検査活動の実施に関する重要事項
五 前三号に掲げるもののほか、自衛隊が実施する対応措置のうち重要なものの種類及び内容並びにその実施に関する重要事項
六 第二号から前号までに掲げるもののほか、関係行政機関が実施する対応措置のうち特に内閣が関与することにより総合的かつ効果的に実施する必要があるものの実施に関する重要事項
七 対応措置の実施について地方公共団体その他の国以外の者に対して協力を求め又は協力を依頼する場合におけるその協力の種類及び内容並びにその協力に関する重要事項
八 対応措置の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項
3 第一項の規定は、基本計画の変更について準用する。
(自衛隊による後方地域支援としての物品及び役務の提供の実施)第五条 内閣総理大臣又はその委任を受けた者は、基本計画に従い、第三条第二項の後方地域支援としての自衛隊に属する物品の提供を実施するものとする。
2 防衛庁長官は、基本計画に従い、第三条第二項の後方地域支援としての自衛隊による役務の提供について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、防衛庁本庁の機関又は自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。
3 防衛庁長官は、前項の実施要項において、当該後方地域支援を実施する区域(以下この条において「実施区域」という)を指定するものとする。
4 防衛庁長官は、実施区域の全部又は一部がこの法律又は基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、またはそこで実施されている活動の中断を命じなけれはならない。
5 第三条第二項の後方地域支援のうち公海またはその上空における輸送の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該輸送を実施している場所の近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合または付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合には、当該輸送の実施を一時休止するなどして当該戦闘行為による危険を回避しつつ、前項の規定による措置を待つものとする。
6 第二項の規定は、同項の実施要項の変更(第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く)について準用する。
(後方地域捜索救助活動の実施等)
第六条 防衛庁長官は、基本計画に従い、後方地域捜索救助活動について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。
2 防衛庁長官は、前項の実施要項において、当該後方地域捜索救助活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という)を指定するものとする。
3 後方地域捜索救助活動を実施する場合において、戦闘参加者以外の遭難者が在るときは、これを救助するものとする。
4 後方地域捜索救助活動を実施する場合において、実施区域に隣接する外国の領海に在る遭難者を認めたときは、当該外国の同意を得て、当該遭難者の救助を行うことができる。ただし、当該海域において、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、当該活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる場合に限る。
5 前条第四項の規定は実施区域の指定の変更及び活動の中断について、同条第五項の規定は後方地域捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者について準用する。
6 第一項の規定は、同項の実施要項の変更(前項において準用する前条第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く)について準用する。
7 前条の規定は、後方地域捜索救助活動の実施に伴う第三条第三項後段の後方地域支援について準用する。
(船舶検査活動の実施等)
第七条 防衛庁長官は、基本計画に従い、船舶検査活動について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。
2 防衛庁長官は、前項の実施要項において、当該船舶検査活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という)を指定するものとする。この場合において、実施区域は、当該船舶検査活動が外国による船舶検査活動に相当する活動と混交して行われることがないよう、かかる活動が実施される区域と明確に区別して指定しなければならない。
3 船舶検査活動の実施は、次に掲げる態様によるものとする。
一 船舶の航行状況を監視すること。
二 航行する船舶に対し、必要に応じて、呼びかけ、信号弾及び照明弾の使用その他の適当な手段(実弾の使用を除く)により自己の存在を示すこと。
三 無線その他の通信手段を用いて、船舶の名称、船籍港、船長の氏名、直前の出発港又は出発地、目的港又は目的地、積み荷その他の必要な事項を照会すること。
四 船舶(軍艦等を除く。以下この項において同じ)の船長又は船長に代わって船舶を指揮する者(以下「船長等」という)に対し当該船舶の停止を求め、船長等の同意を得て、停止した当該船舶に乗船して書類及び積み荷を検査し、確認すること。
五 船舶に第四条第二項第四号ニに規定する対象物品が積載されていないことが確認できない場合において、当該船舶の船長等に対しその航路又は目的港若しくは目的地の変更を要請すること。
六 第四号の求めまたは前号の要請に応じない船舶の船長等に対し、これに応じるよう説得を行うこと。
七 前号の説得を行うため必要な限度において、当該船舶に対し、接近、追尾、伴走及び進路前方における待機を行うこと。
4 第五条第四項の規定は、実施区域の指定の変更及び活動の中断について準用する。
5 第一項の規定は、同項の実施要項の変更(前項において準用する第五条第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く)について準用する。
6 第五条の規定は、船舶検査活動の実施に伴う第三条第三項後段の後方地域支援について準用する。
(関係行政機関による対応措置の実施)
第八条 前三条に定めるもののほか、防衛庁長官及びその他の関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、対応措置を実施するものとする。
(国以外の者による協力等)
第九条 関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。
2 前項に定めるもののほか、関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。
3 政府は、前二項の規定により協力を求められ又は協力を依頼された国以外の者が、その協力により損失を受けた場合には、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(国会への報告)
第一〇条 内閣総理大臣は、基本計画の決定又は変更があったときは、その内容を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。
(武器の使用)
第一一条 第六条第一項の規定により後方地域捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、遭難者の救助の職務を行うに際し、自己又は自己と共に当該職務に従事する者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。
2 第七条第一項の規定により船舶検査活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、当該船舶検査活動の対象船舶に乗船してその職務を行うに際し、自己又は自己と共に当該職務に従事する者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。
3 前二項の規定による武器の使用に際しては、刑法(明治四十年法律第四五号)第三六条又は第三七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
(政令への委任)
第一二条 この法律に特別の定めがあるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
付 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(自衛隊法の一部改正)
2 自衛隊法の一部を次のように改正する。
  第一〇〇条の九の次に次の一条を加える。
(後方地域支援等)
  第一〇〇条の一〇 内閣総理大臣またはその委任を受けた者は、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律の定めるところにより、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、後方地域支援としての物品の提供(前条第一項の適用があるものを除く)を実施することができる。
2 長官は、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律の定めるところにより、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、防衛庁本庁の機関及び部隊等に後方地域支援としての役務の提供(前条第二項の適用のあるものを除く)を、部隊等に後方地域捜索救助活動及び船舶検査活動を行わせることができる。
理由
  我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して我が国が実施する措置、その実施の手続きその他の必要な事項を定め、もって我が国の平和及び安全の確保に資することとする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 ● 自衛隊法改定案

自衛隊法(昭和二十九年法律第一六五号)の一部を次のように改正する。
第一〇〇条の八第一項中「航空機による」を削り、同条第二項中「状況」の下に「、当該輸送の対象となる邦人の数」を加え、「その他の輸送の用に主として供するための航空機」を「次に掲げる航空機または船舶」に改め、同項に次の各号を加える。
一 輸送の用に主として供するための航空機(第一〇〇条の五第二項の規定により保有するものを除く)
二 前項の輸送に適する船舶
三 前項に掲げる船舶に搭載された回転翼航空機で第一号に掲げる航空機以外のもの(当該船舶と陸地との間の輸送に用いる場合におけるものに限る)
  第一〇〇条の八に次の一項を加える。
3 第一項に規定する外国において同項の輸送の職務に従事する自衛官は、当該輸送に用いる航空機もしくは船舶の所在する場所またその保護の下に入った当該輸送の対象である邦人もしくは外国人を当該航空機もしくは船舶まで誘導する経路においてその職務を行うに際し、自己もしくは自己と共に当該輸送の職務に従事する隊員または当該邦人もしくは外国人の生命または身体の防護のためにやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし刑法第三六条または第三七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
付則
この法律は、公布の日から施行する。
理由
  外国における緊急事態に際して外務大臣から依頼があった場合に防衛庁長官が行う在外邦人等の輸送の手段として船舶等を加えるとともに、当該外国において輸送の職務に従事する自衛官が、自己もしくは自己と共に当該職務に従事する隊員または保護の下に入った当該輸送の対象である在外邦人等の生命等の防護のためやむを得ない場合に武器を使用することができることとする等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 ● 物品役務相互提供協定改定案(要綱)

一  現行協定前文
  「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」の次に「(以下「条約」という)を加える。
二 現行協定第一条1
  この協定において、「周辺事態」とは、日本国の周辺の地域における日本国の平和及び安全に重要な影響を与える事態をいう旨規定する。
三 現行協定第一条2
  協定の目的に周辺事態に対応する活動に必要な物品または役務の日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における相互の提供に関する基本的な条件を定めることを加える。
四 現行協定第二条3
  この協定の下において、日本国の自衛隊による武器もしくは弾薬の提供またはアメリカ合衆国軍隊による武器システムもしくは弾薬の提供が含まれない旨規定する。五 新たな第四条
  現行協定第三条の次に新たな第四条を加え、いずれか一方の当事国政府が、周辺事態に際して日本国の自衛隊又はアメリカ合衆国軍隊がそれぞれの国の法令に従って行う活動であって、条約の目的の達成に寄与するもののために必要な物品又は役務の提供を他方の当事国政府に対して要請する場合には、当該他方の当事国政府は、その権限の範囲内で、要請された物品又は役務を提供することができる旨、及び、日本国の自衛隊は、周辺事態に対処するための日本国の措置について定めた日本国の関連の法律に従って物品又は役務を提供し、当該法律によって認められた自衛隊の活動に関し物品又は役務を受領する旨を規定する。
六 条番号の修正
  現行協定第四条から第九条までを一条ずつ繰り下げる。
七 付表の修正
  今回の改正に併せ、付表に、通信支援、環境面の支援等を加える。
八 発効規定
  この協定は、アメリカ合衆国政府が日本国政府から日本国がこの協定を承認した旨の書面による通告を受領した日の後百二十日目の日に効力を生じ、現行協定が有効である限り効力を有する旨を規定する。