COMMUNE 2002/3/01(No314 p48)

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3月号 (2002年3月1日発行)No.314号

定価 315円(本体価格300円+税)

コミューン

No314号 2002年3月号 (2002年3月1日発行)
定価 315円(本体価格300円)

 
〈特集〉 再分割戦の焦点・中央アジア

 □石油・天然ガス資源略奪戦争に突進する米帝
 ・激化する資源略奪競争
 ・パイプラインと資源の独占
 ・中央アジアでの米軍基地建設
 ・対米対抗と共同行動のロシア
 ・争闘戦の敗勢に焦る日帝の動向
 □中央アジアにおける民族の抑圧と解放闘争史
 ・ロシアによる植民地化の歴史
 ・ロシア革命とムスリム共産主義
 ・スターリン時代の集団化と粛清
 ・戦後の中央アジアでの民族抑圧
 ・中央アジア・カスピ海諸国の危機

●翻訳資料/「4年ごとの見直し」(QDR)〔下〕
 ・米国防省

 ニューズ&レビュー  休載

     三里塚、団結旗開き

三里塚ドキュメント(11−12月) 内外情勢(11−12月) 日誌(10月)


羅針盤 有事立法との激突

  『前進』新年号の革共同政治局1・1アピールは、国際階級闘争の新しい段階を宣言し、世界革命に向かって勇躍闘いぬくことを呼びかけている。9・11反米ゲリラ戦争が帝国主義国の労働者階級人民、とりわけ革命的共産主義者に突き付けているものは何か、ということを徹底的に突き詰め、それが新しい7・7自己批判を迫るものであること、共産主義者に対する糾弾と告発であることをはっきりさせた。そこから「闘うイスラム諸国人民と連帯し、帝国主義のアフガニスタン・中東侵略戦争を国際的内乱に転化せよ」というスローガンを提起している。それは、侵略と戦争と抑圧の元凶である帝国主義を絶対に許さず打倒せよということである。新しく生まれ変わって、本当に革命に勝利する党を建設しようという呼びかけである。

 米帝は、年を越えてアフガニスタンに対する空爆を繰り返している。すでにニューヨークWTCツインタワーの死者をはるかに上回る人民が殺されている。この一事を見ただけで、米帝を始め諸帝国主義が、「テロ根絶」の名のもとに、いかに反人民的、非人道的な侵略戦争をほしいままにしているかが明白である。1月21、22日、東京で開かれた「アフガン復興支援会議」は、アフガン侵略戦争を正当化し、アフガニスタンへの新植民地主義支配を一層強め、帝国主義同士がその権益を奪い合うための会議である。大体、アフガニスタン人民の頭上に爆弾や巡航ミサイルを雨あられのように撃ち込み、虐殺と破壊をやっておいて、何が「復興支援」か。この帝国主義の古典的とも言える侵略と虐殺と略奪を許してはならない。

 日帝は、恐慌と戦争の時代への突入の中で、いよいよ本格的な戦争国家化に向かって、有事立法と改憲の攻撃に踏み出している。アフガン中東侵略戦争への自衛隊艦隊の出兵に続き、年末には「不審船」銃撃・撃沈・虐殺事件が起こった。日本の軍隊(海上保安庁は軍隊に等しい武力を持つ)が、戦後初めて他国船を攻撃し他国の人民を殺したのである。これ自体が朝鮮・中国侵略戦争の第一歩である。さらに、日帝・小泉は「備えあれば憂いなし」と称して、1月からの通常国会に有事立法を提案しようとしている。有事立法の核心は「非常事態宣言法」であり、憲法の停止である。有事立法は憲法改悪に直結しているのである。今年の闘いを有事立法・改憲阻止決戦として、全労働者階級人民に訴え、大衆的な反撃を巻き起こそう。

 昨年12・15獄中同志奪還大集会が、革共同の主催で行われた。この集会は、71年11・14沖縄闘争でデッチあげの無期懲役攻撃(27年間勾留)を受けている星野文昭同志、迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧で長期投獄されている須賀武敏、十亀弘史、板垣宏、福嶋昌男の4同志を始め獄中同志を絶対奪還することを決意し、誓い合い、具体的行動を起こすことを決定した。不屈非転向で闘いぬく獄中同志こそ、革共同を体現する同志たちである。自分たちの分身である獄中同志が権力によって不当に勾留されていることをもうこれ以上放置することはできない。集会の開催自体に革共同の自己批判が込められている。これまでと画然と違う闘いによって、事態を打開することが迫られている。星野同志の再審無罪をかちとり、奪還するために全国に救援会をつくろう。爆取4同志の早期奪還のために10万人署名運動をやりぬこう。(た)

 

 

翻訳資料

 4年ごとの防衛見直し(QDR報告)〔下〕

 米国防省2001年9月30日

 村上和幸訳 

【解説】

 今回掲載分は、9・11反米ゲリラの打撃を受けた米帝の国防省・軍改革がテーマになっている。
 QDRでは、ソ連崩壊後の予算削減による装備・施設の老朽化、先進的情報技術の必要性、国防省の組織改革の遅れなどが問題としてあげられている。
 特徴的なことは、改革を民間企業が行ってきたリストラクチャリング、リエンジニアリング〔業務プロセスの徹底組み直し〕、アウトソーシング〔外注化〕などの手法そっくりそのままに行おうということだ。(国防省ホームページの自己紹介では、エクソンモービル、フォードなどと売上高〔予算〕、人員数、施設数を比べて「最大のビジネス」だということを真っ先にあげている)。国防省と軍を「ビジネス」「経営」とする改革をやろうというのだ。
 だが現実には、その米企業の改革自体、バブル崩壊で化けの皮がはがれている。エンロン事件はその典型だ。民間企業の手法で米軍の問題点の解決は絶対できない。
 米帝にとって、米軍の最大の問題点は、世界最大の圧倒的な戦力でありながら、内側から深刻に蝕まれていることだ。原因は、QDRの論調にあるような対ソ対決時代の建前的に明確な目標の喪失や予算の削減も大きいが、それ以上に不正義きわまるベトナム侵略戦争での敗北のダメージが大きい。たとえば80年代でも、対ソ対決の正面を担う最精鋭部隊であった在欧核兵器部隊でさえ3分の1が麻薬に汚染されていた。
 米軍の精神的支柱が腐食し、接近戦で戦わせることがあまりにも困難になっている。世界大恐慌、ブロック化の危機の中で凶暴化している米帝は、軍危機のためその度合いをさらに倍加し、クラスター爆弾、デイジーカッター、劣化ウラン弾による残虐な戦法をエスカレートしており、さらに弾道ミサイル攻撃へと向かっている。
 米帝は昨年12月、ABM制限条約の一方的破棄に踏み切った。BMD計画を推進し弾道ミサイル戦争を行うためだ。また、ロシアの現在の国際的地位を破壊して旧スターリン主義・残存スターリン主義の分割戦に突進するためだ。世界戦争の危機が迫っている。
 解決は、全世界の労働者・被抑圧民族が団結し、反帝国主義・反スターリン主義世界革命に勝利するほかはない。

………………………………………

 統合プレゼンス政策 

 全軍事省〔陸軍省・海軍省・空軍省〕のものを合わせた統合抑止戦闘資産の配分の国防長官によるマネージメントの強化のために、QDRは統合プレゼンス政策を求めている。これは、既存の「グローバル海軍部隊プレゼンス政策」を基礎にすることになるだろうが、全軍〔陸・海・空・海兵〕のそれぞれのローテーション海外プレゼンスも含むことになろう。
 統合プレゼンス政策の確立は、米国の前方駐留部隊の能力と柔軟性を増し、また戦力マネージメント・リスクの管理を助けるであろう。この政策は、世界中の決定的地域における空・陸・海の恒常的なプレゼンス・レベルを確定していく。この政策は米軍諸部隊の展開を同期化し、プレゼンスと抑止のための各軍間トレードを促進する。また、全ての米軍部隊の即応性と作戦繁忙度の調整に役立つ。

 兵力の持続性

 兵站能力の変革を確実に行うために、国防省は、部隊の持続性をさらに効果的・効率的に高める作業を遂行していく。その作業は、展開プロセスの劇的な改善、兵站意志決定支援ツールの使用促進などの領域で行われる。また、兵站企画の統合、兵站需要の削減、兵站コストの削減も推進しなければならない。また、もっとも枢要な兵器システムと優先的軍需品についての産業脆弱性アセスメントを行い、持続性プランを作っていくことが、効果的な持続性の確保に役立つ。

 変革的変化をサポートする実験

 生起しつつある作戦上の課題への最良の可能な解決を確定するために、野外軍事演習・実験を使っていく。前世紀をつうじて、生起しつつある作戦レベルの課題への対処や有利な諸条件の利用を目指した野外軍事演習・実験は、軍事の革新・変革の実現を助ける重要な手段となってきた。これらの作戦は、将来の紛争環境と将来の能力についての不確実性を減少させる。生起しつつある作戦上の課題の解決に対応でき、また安全保障環境の変化を効果的に利用する敵を圧倒できる新タイプの戦力と作戦概念の開発にとって、演習と実験が決定的段階となるのだ。
 実験を行う野外演習は、統合レベルでも各軍レベルでも、生起しつつある課題の不可欠の解決手段を提供する。たとえば、アクセス阻害環境への戦力投入という課題に関して、野外演習・実験は、戦力を戦域に展開し、移動標的に対する拡大射程精密打撃を加えるという有望な作戦概念を確定するのに役立つだろう。また、こうした演習・実験は、前方基地への安全なアクセスが可能か否かを決定し、作戦を米国の目標達成に十分な期間持続させる助けになる。そしてまた、どの新システム・能力が必要となるか、どの既存システム・能力を維持すべきか、そして変革的システムと伝統的システムのどのような組合せを作るべきかを決定する助けになる。
 しかも、新たな多様な諸能力の選択肢を作り出し維持するようにする野外演習・実験は、敵になろうとする者の立案をきわめて複雑困難にしてしまう。…将来の対抗者は、米国の諸能力・諸選択肢のすべてないしほぼすべてに対する対応力の開発を追求できたとしても、その結果、彼らの限られた資源は分散してしまう。あるいは、新たな戦闘選択肢のうち、ただ一つないし少数を選んで力を集中することも選択できるが、それは彼らを他の戦闘選択肢に対しては脆弱にするハイリスクの選択だ。このジレンマに直面して、潜在的な敵は、そもそも軍事的対抗に入ることを抑止されていたのだと気づくだろう。
 米軍は、野外演習・実験プログラムを支援するために、戦争ゲームとシミュレーションを重視していく。分析ツールとしてこれらは、試作品の製作に値する能力であるのか、新たな戦力要素が構築すべきものか、そして戦略概念が野外演習でしか行いえない詳細な検討に値するかを判定し、それによって野外演習の効率を大きく向上させる。このようにして、戦争ゲームとシミュレーションは、野外演習の焦点を定め価値を高めるためのふるい分けに役立つ。しかし、シミュレーションと戦争ゲームには新たな作戦と軍事システムの新たな要件を確定するうえでは、元々限界がある。
 冷戦の最後の段階において、各軍は、野外訓練の価値を高める多数の高忠実度機器に投資した。しかし、統合高忠実度野外演習・実験を支援しうる機器は存在しない。国防省は、「統合全国訓練センター」などの統合・相互運用性訓練施設の設立の必要性や既存の各軍の訓練センター・訓練場を統合変革野外演習場・実験場として使い、各軍の演習・実験に情報提供する可能性を検討している。
 国防省は、宇宙統制の維持あるいは米国の国家情報インフラへの攻撃からの防御という課題の増大に対処する高忠実度変革演習・訓練も行う必要がある。この目的のために、宇宙テスト場を設立していく。この種の演習を可能にすることは、国防省の変革作業の重要な課題だ。
 軍の変革をめざした統合・各軍野外演習は、慢性的な財源不足に悩まされてきた。統合軍〔統一軍部隊の一つ。本誌前号参照〕は、少なくとも1年おきに1回の大規模統合変革演習を行う必要がある。それは、その中間年に行われる各軍の実験演習を基礎にしなければならない。また、地域の最高司令官は、指揮下の部隊を定期的な演習と評価を行う統合訓練行事に入れるローテーション計画を策定しなければならない。この作業を支援するために国防省は、「統合対抗部隊」の設立と統合軍演習予算の増額を検討している。実験のために部隊を十分に確保するために、統合軍は毎年、繁忙度ガイドラインと受容しうる作戦リスクの範囲内で、米国内の部隊の5%までの部隊を実験活動のために引き抜く権限を与えられる。
 この野外演習・実験プログラムの結果は、システム、ドクトリン、部隊構造要件の決定プロセスに直接にフィードバックされる。このプログラムをモニターし、演習・実験結果にもとづく政策勧告を国防長官に提出することは、戦力変革局、局長の重要な責任業務だ。

 諜報の優位性の活用

 米国の防衛戦略とドクトリンは、ますます情報・意志決定の優位に依存するようになっている。そして情報優位は、タイムリーな、課題に合った、包括的な諜報に大きく依存する。今日米国にはいかなる潜在的な敵も対抗しえない類なき諜報能力があるだけでなく、現在の諜報能力を改善・拡大する多くの作業を続けている。同時に、米軍の情報への依存は、かつてなく拡大している。これは、国防省のネットワーク中心の戦争への移行に照らしてみるとき、特に真実なのだ。
 諜報能力の需要は、確実に増大する。潜在的敵が情報優位の重要性を認識して、同様の能力の取得を追求しているからだ。米国の通常軍事能力を相殺するために、彼らは情報作戦、宇宙戦争、CBRNE兵器を含む非対称的戦略も追求している。効果的に対応するために国防省は、新たな脅威と要件に対応する大きな潜在力を提供する新技術の開発に尽力しつつ、現存の資産をよりよく活用するための新たな方法・手続を精力的に追求していく。とりわけ、情報作戦、諜報、宇宙資産を単に米国の現有戦力の発揮を助けるものとしてではなく、むしろ将来の戦力の中核能力として扱っていく。

 世界的諜報

 冷戦を通じて、ソ連の戦略的脅威の独特の性格のために、米国の諜報には格別に固定的なターゲットが与えられていた。今日、諜報が政治的・軍事的指導者に提供することを求められている、世界中の政治、軍事、指導者、科学、技術開発についての戦略的・作戦的情報の範囲は、ますます多様化している。
 人的諜報。HUMINT〔人的諜報〕の遂行は、もっとも困難な「ターゲット」、たとえばテロリストの細胞、堅固で深く埋められた標的、閉鎖的体制、CBRNE兵器の開発・配備計画などへのアクセスと知識を得るために最適なようにする必要がある。米国が人的諜報能力を強化する必要があるのは、もっと良いHUMINTを収集するためだが、技術的情報収集システムの配置改善のためでもある。人的諜報の報告は、グローバル指揮統制システム共通作戦図による戦場ビジュアル化を統合部隊に提供する状況認識ディスプレイに一体化されなければならない。
 出現しつつある技術。米国の諜報収集・分析・セキュリティーの優位を大きく拡大できる技術の開発と利用を、国防省は精力的に追求していく。そのうち、もっとも有望なものは、次のものだ。
◇情報収集のプラットフォームに利用できる低識別性技術
◇敵の遠隔地の防御された施設に侵入できる小型・携帯・自動センサーにしうるナノテクノロジー
◇リアルタイム処理、暗号解読、翻訳、音声認識を行える、先進的な並行処理コンピューティングと量子コンピューティング
◇敵を追跡し、ネットワークや施設へのアクセスを追求する個人を確実に特定できる生物測定学
◇地球のリモートセンシングのための商用画像

 諜報、監視、偵察(ISR)

 将来の情報収集需要と諸課題に対応するため、無人飛行体、有人プラットフォーム、宇宙上・海上・地上システムを一体化した、コスト効率のよい組合せのための投資戦略と移行計画を追求している。無人飛行体プラットフォームとセンサーの追加調達を加速するために現在努力しているところだ。グローバルな、遠距離の地上移動標的を指示する能力を提供するために、高性能化した宇宙基地レーダー(SBR)システムによって現存の機上システムの能力を拡大することも必要だ。商用システム、とりわけ衛星画像は、米国のISR能力に取り込まれている。
 センサー。広範な画像諜報(IMINT)、信号諜報(SIGINT)、測定及び特徴諜報(MASINT)のセンサーは、現在と将来の要請への対応に必要だ。衛星IMINTセンサーは、長停滞監視能力を提供しなければならない。SIGINTは、UAV積載のものも船舶積載の、国家的・非国家的脅威からの近代化された電波周波数信号を捉えるための収集センサーに特化したものも必要だ。現在配備されているシステムで捉えきれない低周波帯および高周波帯の収集能力を提供するために、機上SIGINTの近代化のための包括的作業が必要だ。MASINTの範囲はさまざまな専門分野に及び、大きな潜在的可能性を秘めている。とりわけ情報員のためのサンプリングと堅固で深く埋められた標的の情報収集などを目的とするMASINTセンサー開発とその配備は、米国の軍事的優位の維持のために決定的だ。
 協力したISR作戦。ISRにかかわる諸機関は、文官意志決定者や立案・作戦遂行に関わる司令官に対してより即応的な助力ができるように、協力計画実現のために尽力すべきだ。迅速で適応力のある戦略・計画・作戦のためにも、分析の共有や時間の要素が決定的な情報の共有のためにも、協力能力が必要だ。融合された情報図は、意志決定者や司令官にほぼリアルタイムで作戦を支援し、作戦空間を画像表現する能力のあるものでなければならない。一貫性のある戦略と計画、そして発生した状況への意志決定者の迅速な適応のためには、意志決定支援その他のツールが必要だ。そのようなシステムは、統合・合同作戦における効果的・効率的かつ反応性の良いISR態勢を作っていくために不可欠だ。

 任務命令、情報処理、情報成果利用および情報分配(TPED)

 将来の軍事作戦には、IMINT、SIGINT、MASINT、HUMINTや公開情報を含むあらゆる情報収集専門家を一体化したTPEDアプローチが必要だ。一体化TPEDは、商用画像を含む新たなタイプのマルチメディア、多周波数帯域、多情報源の情報を取り込まなければならない。リアルタイムの動画を取り入れる能力、先進的航空機レーダーや商用衛星画像などの非諜報情報源から得た情報を取り込む能力、そして長停滞・凝視システムの有効利用能力は、将来の軍事的必要性を満たすために不可欠だ。将来のTPEDは、戦術的あるいは国家的システムを含むさまざまな段階を支援し、安全保障のさまざまな分野で働くことが期待される。諜報のさまざまな専門分野と強固なネットワーキングを利用したより一体化された構成に移行することで、防衛関係の諜報消費者が必要としている諜報情報の適時性と質が改善される。
 標的がより多様化し、情報収集源がより変化に富んできているなかで、この稀少で異種の情報を結合するには訓練された分析的判断力が必要となる。立案支援の改善に必要な分析ツールとデータベースとともに、必要な技量を持った人材の形成を投資の焦点にしなければならない。

 変革能力の育成

 国防省が直面している根本的課題は、確実に米軍が新防衛戦略を遂行し21世紀の要請にこたえる能力を持つようにすることだ。そのためには、米国がその部隊と能力に投資し、それを変革することが必須だ。近代化のための国防省は次の3つに力を注いでいる。
◇変革のために枢要な技術の決定的リードを米軍が維持できるように、研究開発を利用する
◇カギになる変革活動を推進する
◇伝統的戦力を、短期的課題を満たし、短期的即応性を提供するために、選択的に更新する。

 研究開発

 研究開発の強力な推進は、国防省の変革目標達成には不可欠だ。進化する軍事的必要性を支援し、潜在的な敵に対する技術的優位性を確保する強力な科学技術(S&T)プログラムを維持しなければならない。変革目標の達成のためには、新たな情報システムも必要だ。そしてそれらは、ステルス・プラットフォーム、無人飛行体、スマート子爆弾など他のカギになる分野の技術的進歩と結合しなければならない。これらの能力の基礎的研究を行うために、QDRはS&Tプログラム支出を国防省年間支出の3%のレベルまで大幅に増加させることを求めている。
 冷戦期、米国の政府プログラムは、特にコンピューターや材料の分野などで新技術研究の刺激を受けてきた。しかし、現在および予見しうる将来においては、国防省は新技術の開発における大部分のリーダーシップを民間部門に依拠していく。そのため国防省は、次のことに力を入れ始めている。(a) 研究室から実働部隊にアイデアを移転する新たな方法を民間企業に学ぶ、(b) 民間部門で開発された〔技術〕革新の成果を取り入れる、(c) 適切な場合には政府と民間の研究を結合する、ということだ。この「静かな革命」は科学・技術を活用し米軍に技術的優位を与えつづけていく。
 そして、強力な試験・評価プログラムの維持の優先順位を上げねばならない。そのためには、試験センターと試験場が必要だ。変革は米軍に革命的能力を約束するものではあるが、この変革の産物は配備される前に十分に試験されねばならない。このように試験、とりわけ長距離の試験能力が必要なのだから、国防省は、高度な施設をそなえた試験場を維持・近代化し、また試験場の浸食という課題に対処しなければならない。強力な試験・評価プログラムは将来の調達支出の見返りを最大限に大きくし、それとともに購入への公衆の信頼を強める。

 変革イニシアティブ

 米国の変革作業を進めるために、この新防衛戦略は紛争を抑止し軍事作戦を遂行する枢要な作戦目標を特定している。戦略と投資の連係を改善するように、国防省の投資原資は次の6つの作戦目標に焦点を絞っている。
1 本国と海外における作戦基地を守り、CBRNE兵器の脅威を撃破する
 アメリカの国土へのテロ攻撃の影響を少なくし、それを管理するために、国防省は多くの独特の能力を保持している。国防省は、連邦指導機関に要請された場合に州・地方当局を支援できるように準備していなければならない。国防省は、反テロリズム・プログラムと部隊防御プログラムを強化している。また、国防省要員を含む人員防御などの、化学・生物対抗措置への投資を増やしている。さらに、州兵要員と海兵隊化学・生物事件対応部隊からなる「大量破壊兵器民間支援チーム」を設立した。これらのチームは、指示がありしだい支援を提供できるように構えている。このような国防省の支援提供能力の改善のために、QDRは陸軍予備役構成部隊に選択的に即応性を強化することを求めている。
 弾道ミサイルと巡行ミサイルの拡散の継続は、米国領土、海外・海上・宇宙の米軍、および同盟国・友好国に脅威になっている。この脅威に対抗するため、米国は優先事項としてミサイル防衛を開発している。ミサイル防衛を他の防衛的・攻撃的手段と一体化することは、米国の行動の自由を守り、妨害措置による抑止力を強化し、抑止できなかった場合には攻撃の効果を小さくする。アクセス妨害・地域閉め出し環境の中でミサイル防衛を提供する能力は、友好国・同盟国に安心を与え、アクセスが決定的な地域を守り、敵を撃破するためには不可欠だ。国防省は、急速に台頭してくる脅威に対する短期的防衛能力および長期的に発展するさらに強力な能力を提供するようにしなければならない。
 国防省は、単一サイトの「国家」ミサイル防衛のアプローチから多層ミサイル防衛の配備をめざした広い基盤の研究・開発・試験に焦点を移して、ミサイル防衛計画を改めて重視している。ミサイル防衛計画におけるこれらの改変によって、さまざまな射程・さまざまな飛行段階においてミサイルを迎撃しうる多くの未試験技術とアプローチを検討できるようになる。こうした防衛は、米国の前方展開部隊の防御を助ける。そしてそれは、米国人だけではなく、友好国・同盟国にもミサイルの脅威に対する限定的防衛を提供していく。
2 攻撃を受けた時に情報システムを確保し。そして効果的情報作戦を遂行する
 情報作戦は、情報を迅速に収集・処理・分配・防御しつつ、それらの敵の能力を妨害する手段を提供する。このような作戦は、知覚に影響を与え、コンピューター・ネットワークを防衛・攻撃し、電子戦を遂行し、その他の防御活動を行う。情報作戦は、変革された米軍の決定的な能力強化を代表するものだ。
 QDRは、情報作戦を遂行する米国の比類なき能力の維持と能力の増強をともに強調している。国防省は、情報システム諸要件の開発、システム取得および明日の戦力のためのプログラミングの一体的アプローチも開発しなければならない。情報作戦の遂行力は国防省の中核的力になってきている。
3 米軍を遠距離のアクセス妨害・地域閉め出し環境に投入し維持する
 この防衛戦略は、米軍が世界中に戦力を投入する力をもっていることを前提にしている。米国は、よく武装し、兵站支援された部隊を世界中の決定的な地点に――敵の反対に会っても、あるいは支援インフラが無いか崩壊している場所にも――投入する能力を保持しなければならない。このような状況の中で米軍が優位を占めるためには、非伝統的な揚陸地点に迅速に到着し、警戒している敵に火力を集中し、また自分の移動を隠して敵を欺騙し防衛線を迂回する力を持たねばならない。したがって国防省は、敵が紛争地域に接近しあるいは決定的な港湾や航空基地をミサイルやCBRNE攻撃によって確保し、米軍を発見して攻撃する能力を開発する試みを注意深くモニターしなければならない。
 QDRは、米軍がアクセス阻止・地域使用阻害の脅威を撃破し、決定的地域で効果的に作戦ができるように、新たな投資をする必要性を強調している。すなわち、潜水艦・防空システム・巡航ミサイルおよび地雷による脅威の増大への対処、陸軍目標戦力の開発の加速、戦力投入および強行突入能力の強化、長距離探知手段の打破、長距離攻撃能力の発揮の可能化、戦略輸送機の防御措置の強化、および化学ないし生物攻撃の下での米軍の作戦持続力の確保だ。
4 恒常的監視、追跡、迅速交戦によって敵に聖域を許さない
 米国の敵になる可能性の高い者とその同盟者は、遠距離の地勢、隠れた掩蔽壕、民間人の「盾」などによって防御していくだろう。付随的損害〔民間人殺傷を指す米帝用語〕を限定しつつ、防御された敵を発見し、たたく能力は、米国の抑止力を改善し、また抑止できなかったときの大統領の対応の選択肢を広げる。この能力は、攻撃を受ける可能性を減らすだけでなく、戦闘行為があったときに国家指揮権限者〔「大統領および国防長官またはその正当に代理指名された者若しくは後継者」〕に直ちに対応する力を与える。この目標の達成のためには、各軍にまたがる広範なプログラムへの投資が必要だ。諜報、監視、偵察への取り組みを強化しなければならない。また、有人・無人の長射程精密打撃資産、新小型弾薬のための関連取り組み、および堅固な標的や深く埋められた標的を撃破する力も重視しなければならない。
 国防省は、トライデント潜水艦の誘導ミサイル潜水艦への転換を加速していく。無人戦闘機およびグローバル・ホークなどの無人諜報・監視・偵察機を調達していく。精密兵器の調達も拡大する。
 特殊作戦部隊は、長距離を超えて秘密裏に深く侵入する力が必要であり、そして司令官とのコンタクトを保ちまた多くの形態のリアルタイム諜報へのアクセスを確保するためにC4ISR能力の強化が必要だ。これらの能力は、特殊作戦部隊の敵対的環境の奥深くでの任務を支え、味方の損失・死傷者を減らすための、追加的通信・諜報・火力資産へのアクセスを確保する。また、特殊作戦部隊の戦略的・作戦的敏捷性を高める。
5 宇宙システムの能力と生存性を強化する
 宇宙で行われている多くの活動は米国の国家安全保障と経済的福利にとって枢要であり、宇宙へのアクセスとその利用は、死活的な国家安全保障上の利害だ。危機ないし紛争のときになると、潜在的な敵は米国の軍事作戦の有効性、諜報能力、経済的・社会的安定性、国家意志に対抗するないしはそれを減ずるための非対称的手段として、米国、同盟国のまた商業的な宇宙資産を標的にしかねない。宇宙へのアクセスの自由を確保し、米国の宇宙における国家安全保障上の利害を守ることは、国防省の優先事項だ。
 宇宙統制の任務は、米国と同盟国の宇宙での活動の自由を確保し、また指示があった場合は敵に対してこの自由を拒否することだ。宇宙統制の基礎として、宇宙監視にさらに重点を置いていく。国防省は、老朽化した監視インフラの近代化を追求し、指揮・統制構造を強化し、このシステムをカタログを作り追跡する能力から宇宙の状況認識を提供するシステムへと発展させていく。
 QDRは、宇宙システムが提供する高度技術の戦力倍加力を認知して、宇宙作戦遂行能力の開発をいっそう重視するようにした。宇宙へのアクセスの自由の確保と米国の国家安全保障上の利益の防御は、将来の投資決定に反映させるべき枢要な優先事項だ。
6 情報技術へのテコ入れ。相互運用性のある統合C4ISR開発の革新的概念
 情報技術は、21世紀のための米軍変革の枢要な基盤を提供する。最近のコソボでの米国の経験によって、安全で、妨害抵抗性のあるデータリンクを通して、統合部隊を支えるための情報を伝達する大容量で相互運用性のある通信システムの必要性がきわめてはっきりしてきた。近い将来、米国は現在および計画中の波長帯域の制約を克服できる代替技術を開発することも必要だ。国防省は、新たな通信状況に立ち遅れず、米国のこの分野におけるリードを最大化するためにテコ入れする必要がある。
 将来の作戦は、統合作戦であるだけでなく、予備役構成部隊、文民専門家、および他の連邦省庁や州諸組織も含めていく。頻繁に他の諸国との合同も行っていく。これらの作戦の有効性は、国防省が情報を共有すること、そして外部的にも内部的にも協力していくことにかかっている。相互運用性は、統合・合同作戦を可能にするもので、あらゆる国防省の作戦とシステム構成のカギになる要素だ。言語と文化の障壁を乗り越える力もそれに含めなければならない。経験から明らかなように、事後の相互運用性達成のための調整にはコストがかさみ、また任務に必要な要件も満たさないことも多くて安全保障上の問題になる。もっと良いアプローチは、新システム設計の初めから相互運用性を組み込んでおくことだ。しかしながら、国防省は、費用効果が高い場合には、伝統的システムを相互運用性標準にまで高める作業を続けていく。
 QDR検討作業にもとづいて、端末から端末まで結ぶ指揮・統制・通信・コンピューター・諜報・監視・偵察(C4ISR)能力に資金投入の重点を置いていく。一体化された統合および合同C4ISR能力は、正確で課題に合った情報が様々な情報源から収集され、安全に部隊とその司令官に伝送されることを確保するために必要なのだ。通信の改善は、米国の通常作戦、特殊作戦および戦略部隊にとって優先課題だ。情報技術は、より小さい部隊と少ない兵器システムでより効果的な統合作戦ができる力をもたらす。
 これらの作戦目標を達成するために、国防省は軍事訓練を変革しなければならない。任務と戦力の変革と平行して訓練の変革のために国防省が実施する変更は、次の3つの基本原則に表明されている。
◇国防省の訓練場インフラの浸食を逆転させ、訓練場が持続性があり、能力があり、利用可能なようにする
◇訓練と近代的で十分に能力ある訓練システムのタイムリーな現場配置に重点を置くように、訓練と取得・兵站政策とその手続を改訂する
◇個人訓練と業務成績のリエンジニアリングのために、配布された学習技術を使用する

 国防省の伝統的兵力の更新

 国防省は将来の課題にこたえるための戦力の変革に尽力している。この変革は、タイムリーにしかし慎重な方法で遂行していく。特に慎重を要するのは、現在の脅威を撃破する国防省の力にとって決定的な伝統的戦力は、変革の最中にも維持しなければならないからだ。したがって、変革を強調しつつも、伝統的戦力の選択的な更新も行っていく。この作業はひとつの難題となるであろう。というのは、冷戦終了以来、米軍のあらゆる要素の更新があまりに長く遅らされてきたからだ。90年代をつうじて戦力が老朽化したが、調達された交換品は少ない。兵器システムの更新に当てられる資金の増大のために大きな努力をしないかぎり、戦力構造は老朽化するばかりでなく、作戦的・技術的に時代遅れになってしまう。
 更新の必要性は、現在の戦力構造、特に戦術航空機の高年代化をみれば明らかだ。平均すると空軍の制空機は、いまや20年近くになり、かつてないレベルだ。多任務艦隊も老朽化している。2010年代には平均20年になる。状況は戦術航空機ほどは劇的ではないにしても、他のプラットフォームでも問題なのだ。全般的に伝統的システムを交換、選択的グレードアップ、寿命延長によって更新することは、緊急に必要なのだ。
 国防省はこのことの必須性を認識して、近い将来のいかなる紛争に対しても成功しうる決定的な能力を維持するために、エイブラムス戦車、B1爆撃機、海軍艦艇自衛、水陸両用攻撃車両などの諸システムを選択的にグレードアップすることを計画している。
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 国防省は、これまでのトレンドを克服して、戦力の長期的能力を賭けることなく短期的即応性を維持するバランスのとれた防衛プログラムを持続しなければならない。この目標を支えるために国防省は、課題への適合度の少ない能力の効率性と削減項目の確定に尽力している。これで資源を浮かせて変革作業加速のために再投資できるようなる。各軍事省と国防省各局は優先度の高い変革計画に再投資するための、会計監査にたえうる大きな節約を決めていく。
 テロリズムに対する米国の戦争の展開に関連した諸要件の顕著な増大にてらしてみると、防衛に使える資金についての以前の見積もりは、もはや正確ではない。2001年9月の攻撃の前は、国防省は、内部の効率性によって実現される、使える資金の増大にほぼ対応した防衛支出の段階的な増大を計画していた。この転機にあたって国防省は、発生してきている新たな軍事的必要にそくした必要な資金についての新たな見積もりをつくっている。同時に、増大した資金が国の新たな需要を満たすために緊急に必要になるにあたって、内部の効率化が緩まないようにする国防省の努力が決定的だ。

  Y国防省機構の再活性化

 米国の軍事能力の変革の必要性は、戦略と戦力構造以上のものにも及ぶ。変革は、国防省が何を行うかだけでなく、いかに行うかにも適用される。安全保障環境が冷戦構造から多くの多様な脅威のひとつへと移行したのと同時期に、近代的ビジネスの能力と生産性は根本的に変わった。国防省は変化するビジネス環境に歩調を合わせてこなかった。
 変革された米国の戦力は、同様に敏捷で柔軟かつ革新的な支援構造に適合したものでなくてはならない。そこにいる国防省の献身的な文官・軍人の一人ひとりがその才能をアメリカを防衛するために使い、そこで資源、情報、手段、訓練、業績を上げる自由が得られる構造でなければならない。
 国防省の時代遅れの支援構造の変革は、より能力の高い戦闘力を実現するカギになる一歩だ。
◇国防省は、その部隊に必要とされるより20〜25%も多い施設インフラを維持して、年間30〜40億jも余分なコストをかけている。
◇国防省の財政システムは、数十年遅れており、相互の連絡が悪く、会計と監査の手続が一般に認められている会計原則の基準に合致させるために四苦八苦の状態だ。
◇国防省のビジネスの手続と規制は、どんなミスも防ぐように作られているように見える。だがそうすることによって、こうした規制は、どんなリスクを取ることも妨げてしまうことが多いのだ。
 インフラは新たな現実に適合するよう合理化することが必要になってきており、財政システムは企画を理解し管理する力を制限しており、諸手続は行動を妨げまた実働レベルで相応にリスクを取ることを妨げている。これらは、変革せねばならなくなった成熟企業の特徴なのだ。米国のビジネスが合理化し新たなビジネスモデルを採用して、市場と技術の急変に反応している時、国防省は自分のビジネス慣行の改善のための包括的戦略なしに遅れをとった。
 この状況を挽回し、再活性化プロセスをリードするために、国防省は国防副長官をトップにし、各軍事省長官および取得・技術・兵站担当国防次官からなる「上級経営会議」(SEC)を設立した。SECは変化する難局の時期に国防省のかじ取りをすることになる。また、「防衛ビジネス慣行実施評議会」を創設し、ビジネス慣行改善の国防省の動きに外部の専門的意見を取り入れることにした。
 これらの作業を重視するために、国防省は、次の分野での業績を改善するためのプログラムをつくった。
◇軍人・文官部門への有能な人材の採用と定着化
◇国防省のビジネスの仕方とインフラの近代化

 有能な人材の軍人部門・文官部門への採用と定着化

 技能をもった、有能でモチベーションのある人間は、ぜい肉のない、柔軟な支援構造の基礎だ。現有の国防省要員の技能の改善と新たな人々の募集、定着化、訓練・教育は、最高の優先課題としなければならない。国防省が必要としている多くの技能は、民間部門でもっとも需要が多いものと同じだ。国防省は、戦闘員とそれを支援する者との新たな誓約を固めねばならない。彼らの軍務を尊敬し、彼らが必要とするものを理解し、彼らが国家防衛を生涯の職とすることを励ます約束だ。このマネージメントの必須事項を達成するには、強いリーダーシップが必要で、また要員をいかに引きつけ、動機づけ、報いるかについての革新的思考が必要だ。それには、新たな雇用・人事管理のルールが必要になる。そして、民間部門との相互作用が、両部門の間での人材と知識の流れの増大を確保するために必要になる。
 この目的に向かって国防省は、軍人・文民人員のための戦略的人的資源プランを作っていく。この戦略は、十分な数の質の高い、熟練した、専門的に教育された人材を供給する、軍人・文官人員の量を示し、それを形成していくのに必要なツールを決めていく。
 国防省の軍人家族の人口構成の変化とこの戦略見直しの結果として始まる変化を考慮して、国防省は、現在の生活の質サービスと近代的要件に遅れないことを保証する政策についても見直していく。政府は、戦力維持のために必要な〔生活の〕質プログラムへの支出の責任をはたす必要がある。そしてまた、国防省は、人員繁忙度の管理と軍住宅の改善の必要性に取り組んでいく。
 世界級の保健システムを作るために、国防省は、国防省と各軍事省のすべての保健諸機関、管理活動およびプログラムの包括的見直しを開始した。そしてTRICARE〔軍健康管理〕システムを強化し、管理と説明責任を改善することだ。整合性のある、一体化され、十分に資金供給され、改善された組織構造を持つ健康管理システムによって、現役戦力のために医療能力が有事にすぐ役立つものとして確保される。また、部隊の需要と広範な軍家族の期待を満たすために扶養家族と退役者への医療給付を行う。
 文民の人員を引きつけ、教育し、定着化させる必要性はきわめて高い。民間部門での人的資源マネージメントにおける多くの進歩は、国防省の文官人事システムの中に取り入れられてこなかった。文官人員のための人的資源アプローチには、次のことがある。
◇募集テクニックの近代化
◇給与アプローチの柔軟化
◇訓練・知識マネージメントの強化
◇キャリア・プラニング、キャリア・マネージメントのツール

 国防省のビジネスの仕方とインフラの近代化

 国防省は被雇用者の能力と創造性を強化するとともに、資源を解放して戦闘支援と軍事能力変革に振り向けるために、ビジネス・プロセスとインフラを変革しなければならない。
 これの達成のために、迅速なデータと情報の流れがもたらす利点を活用するように国防省の組織構造を合理化・フラット化していく。企業の場合と同様に、あらゆる機能を削減する必要がある。境界を破壊して全組織を通じた変化を促進し、協力を推進し、情報と最良のやり方を共有し、変化を全省内に制度化しなければならない。組織構造と軍の作風の両方において国防省は、戦闘部隊の間でも支援人員の間でも革新とリスクを取ることを激励しそれに報いる道をみつけねばならない。
 支援の側では、もはや付加価値を生まない階層を取り払うことが任務だ。これを達成するためには、国防省は次の分野での作業を開始していく。
◇間接機構を合理化し、組織をフラット化する
◇国防省の「自前の」資源を、戦闘に直接に寄与する諸分野における優秀性に集中させる
◇国防省全体のビジネス情報へのアプローチを近代化する
◇基礎インフラの統合と近代化

 Z リスク管理

 リスク管理は防衛戦略の中心的要素だ。現在要求されるものと将来のための準備のバランスを戦略の優先事項との調和の下にバランスさせることが必要だ。…
 過去60年にわたって、米国は平均GDPの8%を防衛に支出してきた。2001年には、GDPの2・9%が防衛に支出された。鮮明な、輪郭のはっきりした脅威がない時代のなかで支出を削減する傾向は、戦力への投資を回避ないし遅延することによってリスクを生み出す潜在効果がある。したがって、軍事的挑戦のあらゆる種類にわたる現在と将来の両方の脅威に対抗するのに必要な能力の見積もり作業には、リスクを見積もりそれを軽減するアプローチを入れねばならない。

 新たなリスクの枠組み

 国防省は、リスク管理の新たな幅広いアプローチを開発してきた。…この新たな枠組みは、次の4つの関連した範囲のものからなっている。
◇兵力管理――十分な数の質の高い人員を募集、定着化、訓練、装備し、戦力の即応性を維持すること。それを、多くの作戦任務を遂行しつつ行う。
◇作戦上のもの――短期的な紛争ないし他の有事における軍事目標を達成する力。
◇将来の挑戦――新たな諸能力のために投資し、中期・長期的軍事的挑戦を抑止ないし撃破するのに必要な新たな作戦概念を開発する力。
◇機構的なもの――資源を効率的に使用し、防衛機構の効果的運用を推進するマネージメント慣行・マネージメント管理を開発する力。
 …〔[ 統合参謀本部議長の声明は省略〕
(おわり)