COMMUNE 2005/10/01(No.354 p48)

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10月号 (2005年10月1日発行)No.354号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉 小泉反革命の刃 郵政民営化

口はじめに
□日米枢軸下で戦争と民営化を激化させる小泉
□ブルジョアジーの利害むき出す「骨太方針X」
□公務員制度改革を狙う日本経団連4・19提言
□達合「7・14見解」を弾劾し11月労働者集会へ
□資料 「骨太方針X」

●翻訳資料1 流血とチエイ二ー=ハリバートンの泡銭
●翻訳資料2 帝国の代償

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/アシアナ航空ストに緊急調整発動−−室田順子

    「つくる会」教科書採択阻止

三里塚ドキュメント(7月) 政治・軍事月報(7月)

労働月報(7月)  闘争日誌(6月)

コミューン表紙

   今こそ小泉打倒へ

   4月以来激烈な闘いの焦点となってきた東京・杉並区での教科書採択は、8月12日の杉並区教育委員会臨時会が最大の決戟の日となった。ここで3村2で「歴史」について扶桑社版を採択することが決定された。もともと、8月4日が採択日であったが、納冨教育長が区内外で高まる採択反村の声にたじろいでぐらぐらになったため、「つくる会」派の委員が採決は危ないと判断して延期となったものだ。それ以来、「つくる会」派は、反対派教育委員を脅迫するなどあらゆる手段を使って採択へ攻勢を強めた。当日も藤岡信勝を先頭に大挙押し寄せた。そして、ついに納冨が扶桑社版を推して採択を強行したのだ。首都の大きな区で採択を強行したことは歴史的な重大事態であり、撤回に向けて関いを継続・強化しなければならない。

 靖国神社をめぐるこの夏の攻防は実に重安な意味を持っている。それは 「つくる会」教科書攻撃と一体の、戦争に向かっての攻撃との闘いだからだ。小泉は首相就任以来毎年靖国神社参拝を重ね、それを居直り、中国、韓国の人民の広範な怒りの決起を呼んだ。それへの反発を組織して排外主義宣伝が吹き荒れ、「外圧に屈せず靖国参拝を貫け」という運動が起こった。結局、小泉は総選挙情勢の中で今年8・15の参拝は断念したが、天皇制右翼は「20万人靖国参拝運動」を呼びかけ、一層の愛国主義・排外主義の運動の拠点として靖国神社を位置づけている。
これと真っ向から村決し、全学連の6人の学生が靖国神社構内で決死糾弾の闘いに立ち上がった。天皇制右翼の暴力にひるまず、決然と闘った時、敵の攻撃は無力化することを示した。

 8月8日、郵政民営化法案が参議院で大差で否決され、小泉は直ちに解散・総選挙という異例の手段で、なんとしても郵政民営化を強行する姿勢を示した。まさにこのような方法で、小泉は、日帝ブルジョアジーの意志を体現し、「戦争と民営化(労組破壊)」に向かって古い体制を破壊してまで突進しようとしているのだ。その背景には、このようにしか延命できない日帝の帝国主義としての破産と危機がある。日帝・小泉はイラク侵略戦争への参戦を継続し、日米枢軸による北朝鮮・中国侵略戦争のための改憲に踏み込む攻撃を全力で構えている。郵政民営化攻撃は、全逓労働者の公務員身分の剥奪と公務員労働運動の圧殺に本質がある。今こそ、戦争と民営化の小泉政権打倒に向かって労働者階級の大反撃に立たなければならない。

 今年前半の闘いは、きわめて多彩で重厚な意義をもっている。「日の丸・君が代」強制拒否の闘いから、「つくる会」教科書採択阻止=都議選決戦へ、8・6広島、8・9長崎の闘い、8・15靖国参拝阻止の闘いが全力で闘いぬかれた。同時に、動労千葉の春闘ストと尼崎事故を弾劾しての安全運転行動が貫徹された。さらに3・20イラク反戦闘争(20労組陣形)、5・7教育基本法改悪阻止闘争(4学者の呼びかけ)、7・15国鉄1047名解雇撤回の集会(3闘争団・争議団の共闘で大高揚)と、いずれも既成の枠組みを越えた統一行動の前進がかちとられた。一方で、連合は「9条改憲」に踏み込んだ「7・14見解」を打ち出し、秋の大会で決定しようとしている。これへの怒りの決起を爆発させ、今年の闘いの成果を踏まえ、労働者の階級的団結を打ち固め、11月労働者総決起へ1万人総決起をめざして前進しょう。(た)

 

 

翻訳資料

 翻訳資料-1

 人民・兵士の怒りに直面するブッシュ

 村上和幸訳 

【解説】

 昨年イラクで戦死した兵士の母シンディー・シーハンさんが、8月6日からブッシュが休暇をとっている牧場の所に行き面会を求めている。「息子が死ななければならなかった理由」「ブッシュの言う高貴な大義とは何か」を聞くまでは、動かないとキャンプを張っている。
 ブッシュは面会を拒否した。この半世紀の大統領の中で最長の5週連続の休暇をとりながら、たかだか20分の面会時間もとれないという。子を失った母の追及から逃げまわるブッシュの姿は、テレビ、インターネットなどで連日報じられ、アメリカ支配階級の不正義性と弱さを全世界にさらした。
 シンディ・シーハンさんは、自分と同じ苦しみを他の親に味わわせたくないとして、一刻の猶予もなく撤兵せよという立場を貫いてきた。そして、いっそうひどい大虐殺と破壊に苦しんでいるイラク人民が米軍と闘い民族自決権を行使することをきっぱり支持してきた。それを貫くために「発言する軍人家族の会」「平和のための金星家族会」の中心的活動家として闘ってきた。彼女の徹底的に闘う立場こそが、ブッシュを追い詰め、支配階級の権威を失墜させ、人民の怒りをかき立てているのだ。
 彼女は、9月24日、ワシントンDCで開かれるUFPJとANSWERの大統一戦線集会への結集を全米に呼びかけている。彼女自身がその演壇で発言する。
 本号では、イラク人民はもとより、アメリカ国内でも、かつてない怒りをかき立てているイラク戦争の実態を示す2つの資料を翻訳して紹介する。
 資料@は、チェイニー副大統領が経営者であったハリバートン社の歴史上かつてなかったほど強引、露骨、大規模な戦時利得の強奪について暴露している。
 もとより、イラク侵略戦争はブッシュ政権だけの戦争ではなく、アメリカ帝国主義支配階級全体の戦争だ。だからこそ昨年の大統領選挙でも、民主党ケリーはイラク占領軍の大増員を主張したのだ。
 だが、この戦争の中で、ハリバートンが濡れ手に粟の大もうけをする一方で、兵士たちは、毎日、いたんだ食料、腐った食料を与えられ、装甲もろくにない車両で戦闘地域に送り出されている。
 このような甚だしい虐待、理不尽に怒らない兵士がいないはずがない。平均的兵士だけでなく、もっとも愛国的、あるいは右翼的な思想を持っていた兵士でさえ、急速に意識が変わってきている。
 ここに意識的な反軍活動が展開された時、必ずや米軍兵士の根こそぎの反乱が実現するのだ。
 米軍当局は必死になって隠したが、ベトナム戦争の時も、空母コンステレーションなどで部隊ぐるみの座り込み闘争などが起こっている。現在、さらに大規模な反乱が起こる条件が満ち満ちている。
 また、資料Aは、昨年7月の時点でのものだが、この戦争がアメリカ社会に与えている影響を全体的に論じている。(ただ米軍兵士の戦死者の数〔米軍公式発表の集計〕は、今年8月17日現在で1852人に達した。イラク人の死者は、昨年秋の英医学誌『ランセット』の調査で、すでに10万人以上になっている)
 兵士がイラクで戦わされている間、家族は収入激減で、借金取立人に負いまわされている。故郷の町は財政難、人材難で荒廃している。兵士自身の兵役の契約期限は、政府の都合で一方的に延長されている。その兵役契約の延長を兵士が拒否して、帰隊しないと逮捕され監獄に入れられる。
 とりわけ、不屈のイラク人民の戦いは、米軍兵士に、解放闘争の正義性を突きつけている。
 この中で、米軍兵士の怒りは、臨界点にまで高まってきているのだ。
 今こそアメリカ、全世界の労働者階級と連帯し、世界的に軍隊内外の反戦運動を発展させよう。闘うイラク人民と連帯し、帝国主義の侵略を国際的内乱に転化しよう。帝国主義を打倒しよう。 

 流血とチェイニー=ハリバートンのあぶく銭

  『カウンターパンチ』05年8月12日 クリス・フロイド

 地政学、善と悪の黙示録的衝突、テロ、神と安全保障といった高尚な話を聞かされていると、ついイラク戦争とは略奪だということを忘れそうになってしまう。しかし、腐敗の塊、ディック・チェイニーという人物ほど明白な略奪の証拠はどこにもないであろう。
 政府から巨額の契約を得ているハリバートン社は、同社の元CEOであるチェイニーに今も「繰り延べ給与」やストック・オプションの形で巨額の年俸を払い続けている。チェイニーは、「アメリカ史上最も強力な大統領」といわれている。彼が大統領府の戦争会議を指揮し、100億jのイラク戦争関係の事業を入札なしでハリバートン社に請け負わせているのだ。ハリバートンの軍サービス部門子会社であるKBR社は先週、第2四半期の利益が284%上昇したと発表した。血と肉汁のしたたる料理を並べた大饗宴だ。チェイニーのストック・オプションは、成層圏にまで上る勢いだ。
 「ハリバートン」はすでにアメリカの辞書では甚だしい癒着・汚職の代名詞になっているが、その不正利得の本当の規模や仕組みについてはまだ少し知られはじめたばかりなのだ。ごく最近行われた公聴会では、同社のイラクでの詐欺、ゆすり、強奪、窃盗は、例外ではなく日常業務になっているということが暴露された。戦場の米軍兵士に、腐った食料を供給することさえやっている。
 国防省の少数の正直な監査係官や調査官が、厳重な検閲をすりぬけて表に出したことを使って、上下院共同少数派委員会(ブッシュ支持の多数派は参加を拒否している)は、ハリバートン社がイラクで少なくとも14億j分の水増し請求及び架空請求をしたと暴露した。国防省内の内部告発者、ハリバートン社の元幹部、他の請負業者の証言によって、権力に溺れた傲慢なやり口が明らかになった。彼らの業務はホワイトハウスのパトロンに守られ、法律の力も及ばないのだ。
 次の例は、特に分かりやすい。ハリバートンは、イラク人が契約した会社、ロイド・オーエン・インタナショナル(LOI)社がクウェートからガソリンを運んでこないように、猛烈に妨害した。LOIの費用効率が良いやり方を放置しておけば、ハリバートンの1ガロン当たり1j30セントという強盗にも等しい価格が維持できなくなるからだ。LOIは、1ガロン当たり18セントでガソリンを供給しようとしていたのだ。
 しかし、神聖なる「企業活動の自由」に、ハリバートンはどのようにして介入することができたのであろうか。同社は私企業ではあるが、チェイニーの会社であり、イラク・クウェート国境の米軍の検問所を支配している。そして、国防省のIDカード発行の権限も持っている。国防省のIDカードは、イラクで業務を行っている請負会社には不可欠なものだ。それは、LOIのような会社にとっても不可欠なものなのだ。
 6月、チェイニーの手下が、LOIを脅迫して、ハリバートンの建設資材をファルージャの友軍地域に運送するようにさせた。「運ばないなら、国防省のカードはやらない」とハリバートンは脅したのだ。彼らは、ファルージャへの道が、最近は頻繁に襲撃されていることをLOIに教えなかった。案の定、LOIの運送トラックは、ハリバートンが運営している軍事基地のすぐ外で爆砕されてしまった。しかし、話はこれで終らない。調査官が入手したメールによると、ハリバートンの幹部は従業員に対して、襲撃された輸送車列にいかなる救援の手をさしのべることも禁止していたのだ。
 ハリバートンは、食料供給事業でも、このような人間的な親切心をぞんぶんに発揮している。同社はトルコ人、フィリピン人の労働者に米軍兵士への食料供給をさせている。解放された幸福なイラク人は、恩人たちを爆破してしまうかもしれないから信用できない。だから外国人労働者にこうした仕事をさせているわけだ。チェイニーの手下たちは、こうした外国人労働者を、ベッドもないテントに詰め込んでいる。砂が床なのだ。そして、文字通り残飯から集めたくずを彼らに食べさせている。
 アメリカの兵士も、それよりたいして良い扱いを受けているわけではない。同社の従業員の証言によれば、幹部は、兵士に毎日毎日、変質した食料、腐敗した食料を供給するように命じたという。幹部はその食料からまともな所を選んでピンはねし、週に2、3回は自分たちでバーベキューをやる。ハリバートンは、1つの基地で1日当たり1万食分の「幽霊の食事」を作って、その費用を納税者に請求している。食事は幻だが、ピンはねは現実である。こうした詐欺行為について監査人に知らせようとする従業員は、ファルージャやサダム・フセインの故郷チクリートなど、灼熱の激戦地域に配転させるぞと脅される。
 この犯罪行為はほんの一例で、もっともっと多くのことがある。これらは、最高レベルに承認されたことなのだ。調達部門の幹部や国防省幹部がそれを確認している。チェイニーの事務所がハリバートンの入札について管理している。国防省ボス、ラムズフェルドは連邦法を破って調達プロセスに直接に関与し、あらゆる競合企業を排除してハリバートンが利潤を保証された契約を確保できるようにしている。ラムズフェルトは、不正取引を監視するプロセスを廃止してしまった。そしてハリバートンの露骨かつ常習的な詐欺についての国防省の監査官からの度重なる警告を無視してきた。金は、あいかわらず転がり込んでくる。先月、ラムズフェルドとチェイニーは、17億5千万ドルのあぶく銭をハリバートン社に入れた。
 このために、彼らは砂漠のなかで、ホロコーストをやり、数万の罪のない人の命を犠牲にしている。安直に莫大な不正利得を得るために、汚らしい横領のために、チェイニーの私服を肥やすために、そしてブッシュ一味が血塗られた金をむさぼるために。

 帝国の代償

 04年7月15日、『アルターネット』 フィリス・ベニス

 最近発表された上院諜報報告書が述べていることは、とっくに周知の事実になっていたことだ。イラク侵攻の理由とされたことはウソだった。しかし、政界が諜報の誤りについて議論している間に、われわれは――アメリカ人も、イラク人も、世界も――ブッシュ政権が自分たちのために行っている戦争で甚大な犠牲を強いられた。
 戦費についてだけみても、ブッシュ政権高官が戦争開始の時に言ったどの数字よりもはるかに高くなっている。現在までに1510億jかかっている。すでに最初の見積もりの3倍になっている。今後、ますます戦費は上昇する。
 ほとんどの人にとって、1510億jというのはどの位の額か想像できないであろう。イメージできるように、若干の事実をあげてみよう。
 1510億jあれば、健康保険に加入できていない2300万人の医療費を負担できる。あるいは、2700万人のホームレスに住居費を支給できる。小学校教師を300万人増やして、1年間給与を支払える。あるいは、67万8千台の消防車を買うことができる。
 この金が国際的に及ぼしうる影響力はもっとすごい。1510億jあれば、世界の飢えている人びとに食料を供給することができるし、それに加えて、すべての発展途上国に清潔な水と公衆衛生を提供することができる。またさらに全世界の包括的なエイズ対策にも、貧困国の児童予防接種にも資金が出せる。これらすべてを1510億jでまかなえるのだ。
 こうしたことをやる代わりにアメリカは、イラクを侵略し、アメリカや世界にほとんど脅威になっていなかった独裁者を引きずりおろしたというわけだ。
 1510億jは驚くべき額だが、戦争の代償は直接的な経済的費用だけではない。全米の地域社会は、戦費のために連邦からの補助金が削減されて死活的な資金の不足にあえいでいるが、もっと重要なことは、緊急対応のための人材――消防士、警官、救急車運転士、救急医療スタッフなどの緊急ケアをする人々――の多くは、州兵や予備役兵に所属している。現在、イラクに展開している米軍部隊の3分の2が州兵や予備役兵なのである。だから、こうした緊急サービス要員に深刻な影響が出ている。
 軍人家族にとっては、戦争の影響は、愛する家族が戦死したり負傷したりするのではないかという恐怖だけではない。アンケート結果によると、軍人家族は、深刻な財政的危機に直面している。破産、失業、飢えである。いわゆる「全員志願制」の軍隊とは、「貧困による徴兵」が作り出したものだ。軍人の圧倒的多数は、貧困者、有色人だ。
 軍人家族への影響は深刻だ。30〜40%の予備役兵・州兵は、軍に召集されると、それまで国内の通常の仕事をしていた時よりも収入が減っている。その結果、多くの軍人家族が緊急食料援助に頼らざるをえなくなっている。ある研究報告書によると、軍人家族のフードスタンプと食料扶助の要求は「数百パーセント」増加しているという。
 こうした軍人家族は将来の展望も厳しい。米軍の展開は伸びすぎており、兵役期間の延長は当たり前のことになってきているからだ。法律による徴兵の復活も話になっている。しかし、予備役兵・州兵も、正規軍部隊も、契約期間がすぎても軍を離れることを禁止されている。そしてこれが、今後さらにエスカレートしていくのだ。
 戦争の長期的影響を考えると、代償の支払はさらに長期化するであろう。米軍によって落とされた推計1000dの劣化ウランは、1991年の湾岸戦争の3倍だ。これは、イラク人、特に子どもたちにダメージを与える。そして米軍・連合軍兵士にも影響を与えるのだ。それは、国境を越えて、イランやクウェートなど河川を供給する国々にも影響する。
 イラク戦争の国際法のルールへの長期的影響も破壊的だ。すでにアブ・グレイブの拷問室で明らかなように。国連の承認なしに国連憲章に違反して戦争に突入するという米国の決定、米国の先制戦争の正当性の主張(とりわけ虚偽の主張にもとづいた先制戦争の正当性の主張)、そしてジュネーブ条約や拷問等禁止条約に基づく義務の拒絶は、国際的な無法状態を準備するものであり、紛争をエスカレートさせるものだ。たとえば、インドがパキスタンを攻撃するにせよ、あるいはペルーとコロンビアの間の戦争、イスラエルのレバノンやシリアへの侵攻にせよ、これらすべてのケースで攻撃側の国は、ブッシュ政権の先例によって彼らの行動を「合法化」する主張をするであろう。
 もちろん、戦争は、イラクをサダム・フセイン政権下ではありえなかった状態にした。国際テロリズムの結集点、動員点にしたのだ。権威あるロンドンの国際戦略研究所によれば、米国の占領の主要な効果は、アルカイダが、「募兵を加速した」ということだ。
 最後に、この戦争のもっとも重要な代償、人命の喪失を想起しよう。米国といわゆる「連合」軍は、1000人以上の兵士の命を失った。米軍は880人だ。数千人以上が負傷している。多くが重傷だ。イラクの民間人はその十倍の被害を受けている。国防省は原則としてイラク人の死亡者を記録していない。だが、最近の推計によれば、1万1164人から1万3118人の間である。
 イラク戦争の目的として掲げられたものが達成されていないことは否定できない。イラクは主権国家になってもいなければ、自由にもなっていない。中東は、より民主主義的になっていない。アメリカは、より安全になっていない。われわれはすでにこの壮大な失敗のために高すぎる代償を払ってきた。針路変更を拒否することは、帝国の膨大な過ちをさらに膨れ上がらせるだけであろう。

(終り)