COMMUNE 2007/8/01(No.374 p48)

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8月号 (2007年8月1日発行)No.374号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉  ●特集/朝鮮侵略切迫下で闘う民主労総

□非正規職撤廃を掲げてノムヒョン政権と対決
□危機と腐敗の帝国主義新自由主義政策と激突

●翻訳資料 1募兵・徴兵のための国防総省データベース 2募兵官に反対してたちあがろう

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/民主労総6月総力闘争を宣言−−室田順子

    6・9渋谷デモ

三里塚ドキュメント(5月) 政治・軍事月報(5月)

労働月報(5月)  闘争日誌(4月)

コミューン表紙

 6・9闘争が高揚

▼全世界は日々激動を深め、階級闘争が爆発している。6月2日、ドイツでは帝国主義強盗どものG8サミットに反対して世界各地から8万人の労働者人民が結集し、警察と激突した。イラク、パレスチナ、アフガニスタンでは、ムスリムを先頭とする人民の武装闘争が米帝を追いつめている。日本では6・9ワーカーズアクションin 渋谷がこうした全世界の労働者階級と連帯して帝国主義を打ち倒し、労働者人民が主人公の社会をつくろうという壮大な夢と展望をもってかちとられた。職場生産点での動労千葉型の闘いを基礎とした3・18−6・9と発展してきた闘いは、その衝撃性と革命性によって青年労働者の魂をつかみ、拡大・発展している。「ロストジェネレーション」と言われ2人に一人が非正規雇用、このままでは失業と貧困に追いかけられるだけで将来になんの希望も持てない青年たちが、労働者を人間として扱わないこの腐りきった資本主義社会の根底的転覆を求めて動きだしている。労組幹部の屈服と制動で隠されていた階級対立の非和解性が一挙に噴出していく。この道筋を通して革命に向かって労働者の闘いは前進していく。

▼「消えた年金」「宙に浮いた年金」、介護保険の不正請求事件など、まったく許せないことが次々と明るみに出ている。5000万件もの不明年金が示しているのは、国は年金をそもそも支払う気がないということだ。その根底にはそもそも年金制度が根本的に破産しているということがある。年金や介護の不正の元凶は日帝だ。「新自由主義」政策による公的部門の民営化、社会保障制度解体の必然的な帰結なのだ。公的部門を民営化して資本家の利潤追求の場として提供し、労組破壊と搾取・収奪の極限的強化を追求する「新自由主義」「グローバリズム」がどれだけ反人民的であり、破産的なものであるか。そして帝国主義がどれほど腐敗・腐朽をきわめているか。このことを今回の事件は一挙にさらけだした。もはや革命によって帝国主義を打倒する以外に労働者階級の未来はない。

▼日帝の攻撃の核心は、労組破壊、労働運動つぶしだ。不明年金問題の責任を社会保険庁労働者に転嫁しようとし、社会保険庁と自治労の解体を狙っている。自民党幹事長・中川秀直は、「自治労や日教組にはハローワークに行ってもらいたい」(6月3日)と公言し、13日の自民党全国政調会長会議では次のように述べた。「われわれ自民党は皆さんと一緒に、国鉄、電電公社等の公務員改革を進めてきた。いよいよ今回の改革は、最後の牙城である自治労、日教組という諸君から、公共サービスを、正しい国民の手に取り戻す政策でもあろう」。そして「戦後レジームからの脱却」とは、日教組と自治労の解体のことだと述べている。

▼政府・自民党がこれほどあからさまに「自治労・日教組壊滅」を叫んで攻撃をかけているのに自治労本部、日教組本部、連合中央は何一つ闘おうとしない。動労千葉のように団結して階級的原則的に闘う以外に、労働組合を守り抜くことはできない。「戦後レジームからの脱却」をかけた日帝の改憲と戦争、労組破壊の攻撃は、日帝にとってもまかり間違えば革命で打倒されるような階級決戦のテーマだ。労働者階級の側が、日帝の危機を見抜き、激しい怒りと戦闘性、階級的団結力をもって総反撃に立てばプロレタリア革命に転化できるのだ。(U)

 

 

翻訳資料

 翻訳資料-1

  募兵・徴兵のための国防総省のデータベース
 マイク・フェルナー マンスリー・レビュー紙 2006年3月

 丹沢 望訳

 【解説】

 今月号の翻訳資料は、アメリカの高校における募兵問題について、二つの注目すべき記事を翻訳した。
 一つは米国防総省が募兵活動を強化するために作ったデータベースの内容に関して、マイク・フェルナーが独立系の左翼誌「マンスリー・レビュー」に掲載した論文である。彼は、オハイオ州のフリーランス・ライター。ベトナム戦争時に海軍の衛生兵として兵役につき、トレド市の市議会議員を務めた。「平和を求める帰還兵」のメンバーでもある。
 この論文では、国防総省が募兵活動を促進するために、あらゆるルートを通じて膨大な学生のデータを収集・集積していることを暴
露している。
 現在、イラク侵略戦争での米軍死者が急増し、さらに反戦運動が爆発的に発展するなかで、募兵活動は危機に陥っている。こうした現実を突破するために、将来の徴兵制再導入をも射程にいれて、米帝がなりふりかまわずあらゆる学生関係のデータを収集して、募兵活動を進めようとしている現実が詳細に暴露されている。
 二つ目は、学内での募兵活動に対する闘いの発展を生き生きと描いた、アーリーン・イノウエのレポートである。このレポートは『学校再考』誌という公教育の直面する諸問題に関して左翼的立場から論評する雑誌に掲載された。
 彼女自身は高校の教師であり、学内での募兵官の傍若無人な活動に怒りを感じて反募兵運動を組織
した。闘いを拡大する努力を続けるなかで、ロサンゼルス統一教職員組合の闘う教育労働者たちとの団結が形成され、それが運動の爆発的発展を可能にした経緯が感動的に描かれている。
 このレポートを読めば、アメリカにおける学内での募兵活動に対する闘いが、いかに広範な規模で闘われているかがよくわかる。
 職場での教育労働者同士の団結を基礎として闘争拠点を強化し、運動を学生、両親などの間に積極的に持ち込みながら生き生きと闘う姿は、非常に教訓に富んだものである。

 ………………………………………………………………………………

 全国で団結した市民たちが学校内での軍人の駐在を制限するために闘っている。軍への勧誘のために募兵官を高校のカフェテリアでうろつき回らせるのは、ペンタゴンがわれわれの子どもたちの頭に「軍隊に入ろう」というメッセージを充満させる一つの方法だからである。
 2002年以来、米国防総省は毎年50万jをデータベースを作るために費やしてきた。それは国防総省によれば「16〜25歳の若者に関するデータの集積所としては恐らく最大のものであり、約3000万の記録が保存されている」というものである。ペンタゴンの人間にとっては、このデータベースは、統合広報・市場調査研究(JAMRS)計画の一構成部分を成す。その目的は、世論調査および市場調査に費やされるこれ以外の数百万jの目的と同様に、国防総省の年間40億jの募兵予算に最大の効果をあげさせることである。それは、全国の市民的自由やプライバシーの擁護者、募兵反対の活動家たちの足下に火をつけた。
 最近100以上の団体がラムズフェルド国防長官(当時)と議会の国防総省監督委員会に、JAMRSのデータベースを廃棄することを要求する手紙を送った。
 オハイオ州ACLU(米国自由人権協会)の訴訟コーディネーターのゲーリー・ダニエルズは、「ACLUの活動は個人のプライバシー問題をめぐって行われてきたが、2005年にはそれはまさに船が帆をあげたように急速に動き始めた。ペンタゴンのデータベースはプライバシー権にとって良い前兆ではないことは明らかだ」と宣言した。
 「JAMRSは募兵官の学校への駐在問題よりももっと大きな問題だ」、「自分たちのデータを学校が募兵官に渡すことを「オプトアウト」(保護者の申請による軍への情報供与の免除)してもらった学生たちは、JAMRSのデータベースの他の欄に記載が移されただけであった。この欄は『排除リスト』と呼ばれている」と彼は付け加えた。現在すでにペンタゴンが学生たちの個人情報を保有しているので、若者たちに募兵官が直接接触するのを防ぐのは不可能だろうとダニエルは考えている。
 国防総省のスポークスマンである空軍中佐のエレン・クレンケは、JAMRSのデータベースの重要性は大きくないと見ている。これは2002年に創設された。だが彼女は「それは新たな計画ではなく、情報を集中化しただけにすぎない」と述べている。「各軍(陸軍、海軍など)は1982年に議会によって許可されて以来、このようなデータをずっと集めてきた」。
 これらの3000万人の若者たちについての情報源についてと、このデータがどのように利用されるかについては、クレンケは「データベースのほとんどの情報は、商業的販売者を通じて集められたり、学生たちから自主的に提供された。警察や徴税当局、議会から要求されれば、JAMRSは法律によって情報を提供するように要請される。だが、JAMRSはこれまで情報記録を国防総省の外部に提供したことはない。またこのデータを外部の機関と共有することは国防総省の意図するところでもない」と述べている。
 電子的プライバシー・情報センターの共同責任者のリリー・コーネイは、クレンケの保証は満足すべきものではないと述べている。
 コーネイは今年の5月までかけてJAMRSのデータベースを集め、国防総省がこの2年間にわたって連邦プライバシー法に違反し、この情報がどのように使われるかを国民に隠しているという点について世論を喚起しようとしていると述べている。彼女は、プライバシー法が非適用とされると国防総省の主張する14項目の「包括的ルーティン活用」は、個人の承諾を得ずにその個人情報を他の機関に開示するためのあらゆる抜け穴であり、国防総省は今日まで、なぜデータの対象者から直接情報を求めないか、記録された誤った情報をどのようにして修正するか、地方や州や連邦の機関が対象者の情報を集めたことを、どのようにして軍が本人に通知しようとしているのかなどについて明文化するのを拒否していると抗議している。
 国防総省が要求する14のプライバシー法非適用項目のうち2つは、国防総省が連邦の警察機関に、連邦法に違反したと警察が考えている個人の情報記録を与えることを許すであろう。また「防諜、あるいはアメリカ国家の安全を守る法律を執行する」目的で個人情報の開示を許すであろう。これは、米憲法修正第一条で保障された表現や宗教の自由の権利を行使したにすぎない個人の犯罪記録を作り始めることを軍に対して許す結果をもたらすであろうと、コーネイは警告している。
 「これを信用調査書と比較してほしい」とコーネイは説明する。「もしあなたがそれが存在することや、それが仕事を見つけローンを組むあなたの能力に影響することなどを知らないならば、いったい全体、あなたは間違った情報があるかどうかチェックする必要性をどうして認識できるだろう。学生の名前、電話番号、社会保障番号、eメールアドレス、人種、雇用主、成績平均点、性別、課外活動、運転履歴、学位への関心、獲得した技術などが、連邦政府の機関や外国政府、州、地方政府などに共有されており、それを手に入れれば、なにができるか想像してほしい。もしこのデータベースの情報が間違っていたら、当局者たちは誰を信用するだろうか?あなたかそれとも国防総省か?」。
 データベースの維持・管理など、JAMRSに広範な民間のマーケティング企業が関与していることに対して反対している人もいる。
 トレドアン・ペギー・ダレイ-マスターナクには二人の10代の息子がいる。彼女は、町の公立高校に軍人が駐在することをやめさせることを目的として、学生と家族の権利とプライバシー委員会を創設した。彼女は、「最近ではさまざまな観点の相違を越えて人々を団結させることのできるものはほんのわずかしかない。プライバシー問題はその一つだ。みんながペンタゴンのデータ集中の範囲の大きさを知れば、それに対して大きな『ノー』の声をあげるだろうし、民間企業と契約してこのデータバンクを統合・集中することに『絶対反対』と叫ぶでしょう。でも、JAMRSがやっていることはまさにそういうことなんです」と語った。
 ペンタゴンは、インター・パブリックグループの100以上もある子会社の一つであるミューレン広告会社と契約してJAMRSの仕事を行わせている。インターパブリックグループは、年間64億jの収益があり、世界130カ国で活動している世界的な巨大複合広告会社である。

(中略)

 ダレイ-マスターナクはこれに次のような憂慮の声を付け加えている。「JAMRSのデータベースのデータ源には高校マスターファイルと大学学生ファイルが含まれている。両者とも、アメリカ学生リスト(ASL)と学生マーケティンググループ(SMG)によって集められ処理されたものである。ではASLとSMGは彼らが販売しているデータをどこで手に入れたのか?もしそれが全国教育統計センター(NCES)が、諸学校に対して学生から集めるように勧告したものであるならば、幼稚園から大学に至るまでの全ての生徒・学生のプライバシーが危険にさらされていることになる。JAMRSをNCESに連結させたり、その他の機関のデータに連結させたりすることは、国防総省にすべての人の生涯の概観図を作り出す可能性を与える」と彼女は警告している。(中略)
 国防総省のJAMRSのウエッブサイトは、以下のものをそのデータベース内の情報源としてあげている。
 ・高校のマスターファイル これには毎学年度の約400万人の学生の連絡先が含まれている。高校性の90%をカバーする。
 ・選抜徴兵制 これには選抜徴兵制に登録した年間当たり約250万人のすべての登録者の名前が含まれている。
 ・大学のファイル これには全国の2〜4年制の大学に登録されている340万人以上の大学生の基礎情報が記載されている。
 ・統合指導者管理システム 年間7万人の「影響力のある人物(両親やコーチなど)と将来の指導者」に関するデータが、毎日各軍のデータに基づいて処理される。
 ・永久秘匿ファイル このファイルは更新され、毎月始めに利用できる。
 以下のいくつかの調査計画にはJAMRSの諸委員会が参加している。
・広告調査研究 軍のすべての部門のための「広告の意識性と比喩的描写」に関するモニター活動を3カ月ごとに実施する
・成人・青年への影響力調査 「軍の姿勢、印象、行動意志は軍への入隊志願に影響するものであるので」それに関して追跡調査する。青年世論調査は、「青年の軍への好意的関心、軍に対する理解、現在の経済状態に関する認識、現在おきている事態に関する反応について測る」ものである。両親世論調査は、青年世論調査を済ませた子どもたちの両親を対象としており、何によって両親が間接的に若者の入隊の動向に影響を与えたり、入隊を促したりする可能性がもらされるかを発見するためのものである。
・大学ドロップ・アウト研究 これは「軍隊がいかにしてこのような集団に属する(18〜24歳の)個人を活用できるか」を把握するために実施される。
・教育者調査 90の高校の教師と指導カウンセラーが、「兵役に関してどのような態度をとっているかを明らかにし、若者たちに影響力を持つ集団である教育者と高校のキャンパスで募兵活動を行っている軍の代理人との間の関係をよりよく理解するために」世論調査を受けさせられた。
 ・軍に関する知識についての研究 「軍に関する知識と軍に対する姿勢は、若者の入隊動向と大人たちが軍への入隊を推薦する可能性に大きな影響を与える……JAMRSは2004年8月に、このような若者と大人たちの態度に影響を与える知識の諸タイプに関する調査を開始した。すなわち、主観的知識(自分が軍についてどれだけ知っていると思っているか)、叙述的知識(軍の現実に関する知識)、構造的知識(軍の考え方をどの程度理解しているか)は、軍隊に対する態度に影響を与える3つの知識のタイプである。この研究は、兵役への若者の志向を強め、あるいは兵役に就くことを勧誘するために、軍の募兵官や広告担当者が、若者や若者に影響力を持つ人々が軍隊に関して何を知るべきか、軍隊について自分が何を知っていると思うべきか、軍の考え方にどの程度適応すべきかについて決める際に非常に役にたつ」。
 ・メディア配給計画 
 ニールソンやアービトロンなどの調査サービス会社のサービスを利用して「JAMRSは、何人の若者(15〜24歳、18〜24歳)が国の費用で流される声明や予告を見ているかを月ごとに推定することができる。これらのデータは非営利機関で調査や分析を通じて国の政策や決定をよりよいものにする援助を行っているランド・コーポレーションによって使われてきたし、これからも使われるであろう。この機関は、マーケティング・コミュニケーションの効果を高め、広告混合試験(一定の予算で、テレビ、ラジオ、印刷物などをどのように混合すれば最も効果があるかのテスト)を評価するためにこのデータを使っている。クレムソン大学も、広告の有効性を軍事面に適用し、入隊促進と結びつけるためにこのデータを利用してきた。
 ・母親の態度調査 
 これは第10および第11学年の学生の270人の母親の軍隊に対する態度を計測している。その目的は、募兵官の以下のような活動を促進するJAMRSの「影響力のある人物とのコミュニケーション」戦略を効果的にすることである。すなわち(a)軍隊を強力に支持している母親の友人たちへのアプローチを強化すること、(b)母親の友人で軍隊を支持することを躊躇している人をその気にさせるよう促すこと、(c)軍隊に強力に反発している母親との関係が疎遠になることを避けることなどである。

(中略)

 JAMRSのサイトは、科学アカデミーの全国調査協議会を媒介として国防総省と全国科学アカデミーとの1999年以来の緊密な関係について述べている。この協議会の若者と募兵に関する委員会は次の2段階の仕事を完結させた。
 1.「第1段階においては、委員会は長期間の若者の動向を調査し、若者の軍隊に対する態度と軍隊への登録を改善する政策オプションを査定してきた」。この委員会の調査は2003年の報告書「アメリカの若者の態度、適性、志向 募兵への影響」で発表された。
 2.「第2段階においては、委員会は、広告と募兵に関する軍の調査を再検討した。(中略)この調査については2004年の「軍の広告、募兵に関する評価と理論、方法論」という報告書で発表された。この報告書は、国防総省が広告や募兵政策に関する調査を改善するのを援助した。それは軍マーケットリサーチ監督官や募兵指揮官に送られた。
 現在現役の340万人の警備兵や予備役、国防総省の文民職員に給料を払い、利益を供与してきたドナルド・ラムズフェルド国防長官の募兵に関する最高顧問は、デイビッド・チューである。彼は最近筆者に「徴兵制を望まないならば、国民に接触するために国防総省が街頭にでていかねばならない」と語った。
 ペンタゴンのJAMRSのデータベースは、まさにそのために作られた。それはかつてなく大規模で、どの子どもからも目を離さないものである。

翻訳資料

 翻訳資料2

 募兵官に反対して立ち上がろう
 ロサンゼルスの「校内の軍国主義に反対する連合」の闘い

 アーリーン・イノウエ 『学校再考』誌 2006年春

 丹沢 望訳

 非営利部門で20年間にわたって働いた後、私は1997年にロサンゼルス学区に再就職した。私はこの学区の東ロサンゼルスのセオドア・ルーズベルト高校でスピーチと言語の専門家として働いた。この学校は私の母親が第二次世界大戦の始まった頃に通っていた学校である。 私の母親がルーズベルト高校に通っていた頃と比べる今は様変わりだ。当時に立ち戻ってみると、この学校は人種的に多様な学校であった。現在ではルーズベルト高校は町村合併後の統合ロサンゼルスで最大の高校であり、学生の95%がラテン系・メキシコ系アメリカ人である。近郊の貧しい労働者地区にあり、ラティーノの生徒5000人がいる通年複数科校(年間を通じて複数の学科が存在する学校)である。 私はすぐに、校内の白人以外の学生の多くが年中入れ代わっていることに気が付いた。またすぐに制服を着た軍の募兵官が自由に学生たちと話しながら高校のキャンパスを徘徊しているのにも気が付いた。私は誰か他の人もこれに気が付いたかどうか注意して見てみた。だがすぐにこれは普通のことだとみなされていることを感じ取った。私は彼らが何を言っているか聞き取れるくらい近くにじわじわと近づこうとした。学生たちは興味をそそられたようであり、募兵官は大学費用や特別支給金を出す約束をしていた。私は困惑したが、事情がよくわからず、何と言うべきかあるいはどうすべきかわからなかった。 結局私は、ロサンゼルス地域の教師、学生、両親、帰還兵の草の根組織である「校内の軍国主義に反対する連合(CAMS)」の創設者になった。CAMSは9・11以後のイラク戦争が開始される前の時期に、われわれの息子や娘たちをうまい話で誘惑する軍の募兵活動について、学生や地域社会に情報を与えたり、教育をする活動を開始した。

 「私が軍だ」

 9・11以降、ブッシュ政権が戦争に突進するなかで、私はそれに強い関心を持ち抗議する数百万の人々の隊列に合流した。ラップ音楽を高々と鳴らし、「私が軍だ」というステッカーを張ったハンビー(牽引用のバーのついた軍用車)に乗り、無料のTシャツを持ってきた募兵官がキャンパスに溢れた。私は、戦争と若者の募兵を阻止するために私のできるすべてを行うことが私の道徳的義務であり責任であると感じた。私は、軍に将来の兵士を供給するのは私の学校のような学校であることを知っていた。これは、子どもを戦争で失うことしか思い浮かばない親として、毎日世話をしてきた若い命を心配する教師として、そして戦争は正しい回答ではなく、若者は大砲の餌食であってはならないと考える平和と正義を求める活動家としての私を悩ませた。
 私は、軍国主義が保育所から成人学校まですべての場所で目立つようになり、高校で全面化していることに気づき始めた。カウンセリング室の壁にかかっている国境警備隊のカレンダー、学部のバスルームの鍵を束ねた「軍隊に入ろう」と書かれた飾りひも、廊下に張られた大きな軍人の切り絵、青少年予備役将校訓練隊(JROTC)の写真やトロフィーの展示物、さらに保育所の事務所に寄贈された写真の上に置かれた海兵隊の徽章も見つけた。
 この学区では、平和な学校環境の形成、紛争解決や批判的思考、問題解決の方法についての教育、対話と非暴力による良好な人間関係の促進などの戦略に基づく、「多様性のための教育」(差別反対の教育)と呼ばれる運営方針を持っているのに、このようなことがどうして正当化されるのか私にはわからなかった。
 私は教師や学校職員に軍隊が学校を雇用市場としていることについてどう考えているかと質問し、これについて組合のニュース通信に記事を書き始めた。
 私はルーズベルト高校が全国でいちばん海兵隊の募兵が行われている学校であるという評判を得ていることを知った。軍の募兵官がキャンパスに群がり、口説き文句にひっかかりやすく、それを信じやすい生徒に働きかけている。何人かの生徒は、毎週電話がかかってきたり、軍の募兵官が突然家に訪問してきたり、昼食を一緒に食べようとキャンパスでつきまとうと話している。ある場合には、募兵官は若者に、君は大学には入れないだろうが、募兵に応じれば家族に名誉を与えるだろうと話して、学生の感情をもてあそんだ。
 だが2003年1月、校長が軍の募兵官の学校への訪問を制限する学校の方針をうちだすと、ルーズベルト高校の雰囲気は劇的に変わった。それは学校全体を驚かせた。彼女(校長)は、軍の募兵官に企業や大学の代理人と同様の学生への接触権を与える「落ちこぼれ防止法」第9528項に対して適切な制約が必要であると考えたのだった。彼女は、軍の募兵官はルーズベルト高校では常に企業や大学の募集係よりも大きな学生への接触権を持っていること、そして、彼らの存在が学業成績の達成目標を支えるものではないという事実を認識していた。学校のこのような政策は、学校指導評議会で審議・決定された。これによってルーズベルト高校は、この学区の60の高校のうち唯一、軍の募兵官の学校訪問を制限する明確な政策綱領をうち出した高校となった。軍の募兵官はもはや個々の生徒に接触したり、教室に入ったりすることもできなくなり、年4回あるいはそれより少ない回数、予め設定された時だけ募兵の受付を行えるにすぎなくなった。

 全国的・地方的連携

 私は、フィラデルフィアで行われた最初の全国反募兵活動会議に参加した2003年の6月に、反募兵活動にのめり込んでいった。それはまさに私が必要だと思っていたものであり、活動家のネットワークでもあり、援助と助言を提供してくれる機関であった。(その後05年にわれわれはNNOMI『軍国主義に反対する青年の全国ネットワーク』という、運動の過程で団結と連帯を作り出すために活動する全国組織を作った)
 私は他の人たちもロサンゼルスの反募兵活動に参加するだろうと期待していた。私はロサンゼルスの中心部での集会を告知し、平和で公正な地域社会を実現できるとあらゆる人に話をした。私はビラをもって平和と公正を求めるイベントに出かけていき、軍隊の神話について書いたパンフレットを配布した。だが最初はわずかに一握りの人しか来なかった。他の人たちも参加させるためには何が必要かを私は考えた。ロサンゼルスの統一教員組合(UTLA)の人権委員会の何人かのメンバーが関心を持ち始めると、突破口が切り開かれた。私は、学生に関する問題は社会正義に関する問題とともに、教師の権利のための闘いの中で見失われていると感じていたので、教員組合の中では活動的ではなかった。だが時代は変わった。そしてUTLAの中には他の組合と合流して反戦労組連合を形成した進歩的な潮流が存在した。UTLAの人権委員会は「戦時予算はすべての子どもを落ちこぼれにする」というTシャツをデザインした。そして、戦争と、われわれの学校と生徒に対するその影響についての討論を開始するためのティーチ・インを行おうとする私の意欲を熱烈に支持してくれた。
 私とUTLAの同盟は非常に有意義であった。なぜならば、われわれはこの学区の4万4000人の教員組合の組合員と連絡網を形成でき、メディアとの接点ももつことができた。さらに教育委員会に提案を行う際に、影響力を行使することができた。われわれは組合の広報にティーチインについての広告を出し、数百のビラを撒いた。これによってこのティーチインに数百人の教師、学生、両親や地域の人々が参加した。それはロサンゼルスの全地域をカバーする広範な教師のネットワーク形成の出発点となり、われわれの存在を目に見えるものにした。

(中略)

 数カ月後、われわれは校内の軍国主義を阻止することを目指す広範な民衆のネットワークを創出するために全市的な大イベントを組織する必要があると決定した。われわれは04年2月に市内の学校で全一日の会議を開催することを計画した。これは戦略、情報、学生や教育指導者や平和と公正を求めて闘う活動家の経験などを共有することを目的としていた。われわれはその名称を「校内の軍国主義に反対する連合」と決め、他の学校や地域社会に活動を拡大し、資金集めの計画を立てた。
 われわれはロサンゼルス教育委員会の委員たちに対して、多くの学校で起きている不正な募兵活動についての情報を提示する活動にも着手した。学生、教師、両親と地域社会の人々は自分たちの経験について証言した。両親たちは通訳つきでスペイン語で話をし、募兵官からの迷惑な電話や自分の子どもたちの意志に反した軍事教育課程(JROTC)への引き込みとそこからの子どもたちの取り戻しの困難さなどについて語った。市内の他の学校の教師と地域社会の代表者は、募兵官が反戦の文書を配布した学生をどんなに汚い言葉でののしったかについて語った。学生たちは、ASVAB(軍務適性総合テスト)が軍の試験であり、ペンタゴンのデータベースの重要な源泉であることをだれも教えてくれなかったということについて証言した。別の学生は、軍の募兵官がどんなふうに自分を家まで車に乗せていってやろうと言ったか、そして自分の連絡先を教えるまで車から降ろそうとしなかったかについて語った。
 後に、教育委員長は私に対し、われわれが彼らに情報を提供するまで、教育委員たちは地域の学校で何がおきているか知らなかったと語った。教育委員会は新たに「軍の募兵活動に関する学区諮問委員会」を設立した。この委員会は、学区のスタッフや情報にわれわれが直接コンタクトできるようにしてくれた。われわれは3カ月ごとにミーティングを行い、そこで学校当局や軍の関係者に現状と政策に関する質問を行い、説明を求めた。今のところ、このミーティングの成果はすぐには現れていないし、特に学区当局がわれわれの質問に対しのらりくらりと身をかわすのには不満を感じている。だがこの会合からわれわれは目に見える成果を得つつある。最も顕著な成果は、軍の募兵官の学生への接触の際の制約に関して詳細に説明するという学区全体の政策が出されたことである。アメリカで2番目に大きな学区が、初めて軍の募兵活動に関する成文化された制限条項を作ったのである。

 CAMSの戦略

 CAMSの目的には、学校における軍国主義という直接的課題を越えた任務も含まれる。われわれは学校の環境を変え、若者のために兵役に代わる平和的な選択肢を増やし、社会的公正や希望を与えることを望んでいる。われわれは学生たちが自分たちの夢と情熱を追い求める機会を得られるようになることを望み、生活を維持できる職業を選択でき、軍に入ることなく大学に行けるすべを得られるようになることを望む。われわれは「最高の職業、経歴、未来」というブックレットや、高等教育に関するパンフレットを作った。だが、われわれは、それはまだ出発点に過ぎないと思っている。多様性と学生のリーダーシップを促進する包容性、活力、求心性のある組織を創造しなければならないことも理解している。
 われわれが推進する特別な戦略の一例は、オプトアウト作戦キャンペーンである。これはロサンゼルス統合学校区(LAUSD)が、「落ちこぼれ防止法」とそのオプトアウト条項の条件を満たすという点で、問題があるということに焦点を合わせた戦略である。われわれは、教育委員会への通知経緯に関する懸念を提示した。すなわち、それが短時間でおざなりに行われたこと、混乱した情報の提示、学生との通信権の欠如などである。そこでわれわれは学生全体に情報を周知し、教員組合の代表や平和と公正を求める団体のイベントでのビラの配布などの独自の計画を立てた。CAMSは、裏面に英語とスペイン語で免除申請書類を印刷した数千部の資料集を作り、配布した。
 この闘いは、学生の急速な組織化の引き金となった。学生たちはテーブルを置き、自分たちで作ったオプトアウト要求の大きなマークを出し、クラスの仲間たちに対して情報を与えるように要求した。彼らはビラや反募兵活動の文書を配布し、マルチメディアを使った意見の表明を行った。ある学校では、校長はオプトアウトに関する情報の公開を拒否すると公的に発表した。これに対して教師たちが抵抗闘争に入ったことを知ると、生徒たちの多くが(ユニホームを着たフットボールチームも含めて)怒り、校長室に乱入した。
 オプトアウト者の数が発表されるとわれわれは有頂天になった。われわれは去年よりも5000人多い生徒をオプトアウトさせるという目的を達成した。ロサンゼルス統合学区の6万3000人の低学年から高学年の生徒の18%にあたる総計1万1350人のオプトアウトを実現したのだ。ルーズベルト高校では、オプトアウトの学生数を200人から600人へと約3倍化させた。2005年にはオプトアウトの数は24%増大し、1万5000人以上になった。
 だが数よりもさらに重要なのは、このキャンペーンから得た経験だ。ミシェル・ビレガスという学生は、彼女の属する学生サークル(MEChA アステカ系メキシコ人学生運動)の学生とともに反募兵のビラを配布する活動を開始した。校長は、学校当局の許可を得る必要があると言って彼女がビラをまくのを止めさせた。彼女の母親が娘の運動に参加し、インターネットでCAMSを探しだした。ビレガス夫人はわれわれに手紙を出し、支援を求めた。われわれは彼女からのeメールを受け取り、返事を書き、そのコピーをACLUに送った。学区の弁護士と相談した後、学校当局は態度を変え、学生がどの場所でもビラを配布することを許可した。だが事態はそこで終わらなかった。この事件はミシェルと彼女の母親を力づけ、二人はCAMSに加入し自分たちの高校で指導的役割を果たすようになった。

 認定学校

 昨年、われわれはより多くの人々がわれわれの活動を支援することに関心を持つようになったことがわかったので、どのような活動をすべきかについて明確で詳細な活動手順について提示することを必要になった。学校に子どもを通わせていない地域社会の人々や帰還兵たちは、真剣にわれわれを支援したいと望んでいたが、何から始めるべきかわからなかった。われわれは、近郊の諸学校をより広範な地域社会が活動に参加するための活動拠点とする構想を立てた。そこでわれわれはCAMS認定学校計画と、誰もがどのようにしたら学校を非軍事化しそれにかわるものを作り出す手助けができるかを述べた段階的手引きを行うツール・キットを作った。われわれはこの計画を9月に、ロサンゼルス地区の35の学校で開始し、06年秋にはそれを50校に増加させる計画を立てている。
 今日では東ロサンゼルスのルーズベルト高校を訪問してみれば、3年前と比べて非常に雰囲気の違う高校になったことがわかるだろう。募兵官は「ルーズベルト高校はわれわれを叩き出した」と主張し、もはやキャンパスに二度とやってこようとは思っていない。
 これに対して、MEChAなどの団体の学生は、「本は好きだけど、爆弾は嫌い」「兵士じゃないよ学生だよ」などと主張するすてきなTシャツを着て、反募兵のビラや大学の情報に関するパンフレットを配布している。彼らはすべて少数者から出発して多数になった人々の組織活動の証である。
 CAMSは、私の多大な期待をはるかに越えて成長した。それは私に組織することと、共に協力して活動する力を教えた。だが、心が落ち着いた今、学生たちが「私は以前は軍隊に行こうと思っていた。しかしあなたが私に教えてくれたことが私の考えを変えた。みんながこういうことを知る必要がある」と言うのを聞く時、わたしは最高に報われた思いがする。