International Lavor Movement 2010/10/01(No.410 p48)

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2010/10/01発行 No.410

定価 315円(本体価格300円+税)


月刊『国際労働運動』(410号1-1)(2010/10/01)

羅針盤

■羅針盤/「新成長戦略」粉砕しよう

▼日帝ブルジョアジー、菅政権、連合が一体となって「新成長戦略で国家の危機を救え」と叫んでいる。「新成長戦略」とは、6千万労働者、2千万青年労働者から血の一滴まで極限的に搾取し、「東アジア共同体」という現代の「大東亜共栄圏」を掲げて侵略と戦争へうって出る大攻撃だ。新成長戦略の一環としてある「地域主権戦略、新しい公共」の狙いは、2012年の人勧(人事院勧告)体制解体をとおして道州制攻撃、360万公務員の首切り、労働者階級の非正規職化、外注化による「雇用創出」やボランティア化を強行することだ。それによって労働者階級の組織的な抵抗と団結の解体、分断を狙っている。青年労働者はこの新成長戦略を菅政権もろとも粉砕しなければ生きることさえできない。
▼だが、資本主義は終わりを迎えている。労働者階級の立場は「ギリシャの労働者のように立ち上がろう」「資本主義の危機を労働者の闘いで促進し、打倒しよう」ということであり、「労働者階級の党をつくって最後の勝利を手にしよう」ということだ。大恐慌時代こそ、プロレタリア世界革命の現実性に満ちあふれている。
▼連合幹部や体制内勢力は「労働者は闘っても勝てない」という。そんなことは絶対にない。動労千葉は、JR資本の総力をあげた大合理化攻撃をストライキと青年労働者の組織拡大で粉砕した。全日建運輸連帯・関西地区生コン支部は大手ゼネコンを相手に「産業的ゼネスト」闘争で勝利している。11月集会派は、労働者階級が本気で団結すれば新自由主義に勝利できることを示している。労働者階級は、資本主義に代わる社会主義社会を建設できる力を持っている。

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月刊『国際労働運動』(410号2-1)(2010/10/01)

■News & Review/韓国

派遣法絶対禁止の闘い進む

不法派遣判決をテコに非正規労組が拡大

 現代(ヒュンデ)自動車非正規職労働者がこの6年以上も闘ってきた下請け撤廃・正規職化戦取闘争が、7・22大法院(日本の最高裁)判決を引き出した。7月22日、現代自動車で2年以上勤務した下請け労働者は正規職と見なせという大法院判決をかちとったのだ。今年3月の大法院判決、現代重工業下請け労働者の実雇用主は現代重工業であるという判決とともに、“現代の人身売買制度”である下請け・非正規制度に対する決定的な法的判断だ。

 □団結し闘いぬいた6年

 現代自動車の下請け労働者たちは、2005年の不法派遣正規職化戦取闘争だけで100人を超す組合員が解雇されるなど、03年に労働組合を結成して以来、闘えば解雇されるという厳しい状況で千人近い組合員が民主労組を守り抜いてきた。
 判決当日の7月22日午前7時、現代自動車非正規職支会は鍛造正門前で出勤闘争を闘った後、現代車蔚山(ウルサン)2工場前で整理解雇粉砕決意大会を開いた。整理解雇通知を受けた現代車2工場生産管理、艤装部所属の非正規職支会組合員など50人ほどが集まった。
 イサンス支会長は「2工場の整理解雇問題解決まで闘う。外注化、モジュール化、自動化、編成効率の名で非正規職が工場の外に追い出されている。簡単に退けば簡単に整理される。抵抗すれば使用者側は回答せざるを得ない」と呼びかけた。参加者は決意を込めた8拍子のシュプレヒコールで気勢を上げた。「整理解雇撤回しろ!」「人間らしく生きよう!」「非正規職を撤廃しろ!」
 韓国ではIMF事態後の98年、一部の業種だけに労働者の供給を認める派遣法が施行された。ところが派遣が禁止されていた自動車工場や造船などの製造業で横行したのが、合法請負を偽装した不法派遣だった。業務契約により事実上、派遣のように人材契約をし、元請け企業の工場で働かせる。この場合、元請け企業管理者が下請け企業労働者に業務を指示して労務管理する。これが偽装請負・不法派遣だ。
 今回の大法院判決の原告・チェビョンスン組合員(現・金属労組未組織非正規職局長)は、02年3月13日に現代車蔚山工場のある社内下請け業者に入社した後、労組活動を理由に05年2月2日、下請け業者から解雇された。チェビョンスン組合員らは、@旧派遣法(現行派遣法は07年7月1日施行)6条3項「直接雇用甘受規定」に基づいて、元請けの現代車が直接不当解雇および不当労働行為をしたこと、A現代車の社内下請け業者は偽装請負であり、2年たった時点ではなく採用時点から正規職と見なさなければならないと主張し争ってきた。
 大法院は、@について旧派遣法の直接雇用見なし規定について、適法な勤労者派遣の場合だけに適用されると縮小解釈することはできないとの判断を示し、2年以上、社内下請け業者で勤務した労働者は正規職雇用と見なせと判決したが、Aの主張は認めず、2年に満たない原告には破棄差し戻しをしなかった。

 □労組集団加入運動に突入

(写真 現代自動車蔚山3工場で開かれた懇談会に集まった非正規労働者たち。その場で労組加入願書を書く【8月19日】)

 これに対し、現代車非正規支会は7月27日、2010年賃金団体協議闘争速報と「不法派遣の正規職化戦取のための非正規職労働者説明会資料集」を発行して大々的な現場組織化、労組集団加入運動に突入した。
 現代車非正規職3支会(蔚山、牙山(アサン)、全州(チョンジュ))は、現代車に「不法派遣撤廃! 非正規職即刻転換」のための交渉を要求し、8点(@非正規労働者と3支会および対国民謝罪、A社内下請け労働者全員の正規職化、B全解雇者の正規職化、C同一部署・同一勤続による未払い賃金支給、D不当懲戒および拘束・手配に対する補償、E故リュギヒョク烈士の名誉回復、F現在進行中の整理解雇の即刻中止、G今後、不当な非正規職労働者を使用しないこと)の労使合意を要求した。
 600人ほどだった蔚山支会の組合員数は集団加入運動1週間で1200人に、さらに8月19日集計で1400人を突破した。各工場ごとに昼・夜と労組懇談会を実施し、その場で組合加入願書に記入してもらう。蔚山工場で働く社内下請け労働者は5800人。8月末までに2000人の組織化をめざす。
 ソウル良才洞にある現代起亜自動車本社前では、ドンヒオート社内下請け解雇者が、現代起亜車グループとの直接交渉を要求して座り込みを続けている。旧社屋前で籠城闘争を続けているキリュン電子の女性労働者たちに対しては、8月14日、16日と強制撤去のショベルカーが襲いかかっている。大法院判決が出たからといって待っていても解放されないことは、闘う労働者が一番わかっている。
 現代車非正規3支会は、リュギヒョク烈士の命日の9月4日を金属労組主催の全国労働者大会として闘おうと提起し、攻勢的な組織拡大と全国的な非正規闘争に打って出ようとしている。
 (室田順子)

(写真 7月28日、双龍(サンヨン)車平沢(ピョンテク)工場へ「解雇者復職なき拙速売却に反対する!」と書かれた横断幕を広げてデモ)

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 G20で移住労働者弾圧

 移住労組ミッシェル委員長の闘い

 李明博(イミョンバク)政権が11月にソウルで開催される主要20カ国・地域首脳会議(G20)に向かって移住労働者に対する不法な摘発・強制退去攻撃に打って出ている。あらかじめ外国人労働者を「犯罪予備軍」と見なし、襲いかかっているのだ。
 5月10日に横浜で開かれた「外登法・入管法と民族差別を撃つ全国研究交流集会」に民主労総ソウル本部とともに来日したソウル京畿仁川移住労働者労働組合のミッシェル委員長は、帰国後、移住労働者摘発追放攻撃との闘いに立った。
 明洞のヒャンニン教会で断食座り込みをしていたミッシェル委員長が8月6日午前3時すぎ、突然の吐血で倒れ、病院の集中治療室に運ばれた。座り込み25日、ハンスト13日目のことだった。胃と十二指腸にできた潰瘍からの出血と診断されたが、激闘と疲労がミッシェル委員長を襲ったのだ。一日も早い回復を祈るばかりだ。
 移住労組の座り込みは続いており、6日夜には明洞聖堂で「移住労組キャンドル文化祭」が開かれた。司会を務めた移住労組のチョンヨンソプ事務局長は、「G20を口実に人がゴミのように生活基盤から道ばたに押し出されている」と怒りを語った。
(写真 吐血して入院したミッシェル委員長)

 □外国人摘発の実態

  法務部は6月1日から8月31日までを未登録移住者集中摘発期間と定め、警察庁も5月2日から50日間の「外国人犯罪」摘発に入った。4月21日に出入国管理法改悪案が国会で成立し、廃止された外国人指紋押捺を拡大、復活し、外国人の顔写真などの生体情報提供を義務化するなど、移住労働者に対する人権侵害が強行されている。
 4月7日には大邱(テグ)出入国管理所の無理な摘発でカンボジア移住労働者が重傷を負う事件が発生したが、さらに、外国人移住労働運動協議会(外労協)によれば、ネパール人のグルン氏は8月12日午前7時40分ころ、京畿道安山(キョンギドアンサン)の工場へバイクで出勤の途中、乗用車と衝突、右くるぶし骨折など全治6週間の傷を負った。グルン氏が未登録滞留中であるとした警察が手術からわずか4日後の8月16日にグルン氏を強制退院させ、仁川(インチョン)出入国管理所に引き渡したというのだ。外労協は保護所に引き渡されたグルン氏がまったく治療を受けられずにいるとし、「仁川入管事務所側がとりあえず解放する『一時保護解除』措置を検討しているが、1000万ウォンの保証金を要求している」と弾劾している。
 03年、当時の盧武鉉(ノムヒョン)政権が「合法的な外国労働者の活用制度で、生産職労働力難を緩和し、不法滞留者問題を解決」するとして導入されたのが雇用許可制だ。その施行に先立ち「不法滞留者問題」解決方案として未登録移住労働者への大規模な摘発が行われた。10年近く韓国に滞留した多くの移住労働者が追放される危機に瀕した。
 移住労働者たちは家と工場に隠れた。地下鉄の線路に身を投げたスリランカの労働者タルカ氏をはじめ、多くの移住労働者が自ら命を絶った。しかし移住労働者の一部は身をすくめて静まっていることを拒否した。摘発に抗議する座り込みが明洞聖堂をはじめとする各地で起きた。この闘いの中から「私たちの問題は韓国労働者の問題でもある」と叫んだ移住労働者たちが、2005年に移住労働組合を結成した。

(写真 座り込み中のミッシェル委員長【右】と明洞聖堂前で開かれた8・6移住労組キャンドル文化祭)

 □労働組合の力

 ミッシェル委員長は、5・9入管集会の翌10日に動労千葉で開かれた「日韓移住労働者運動報告会」で韓国の移住労働者の現実と労働組合への組織化について講演した。
 「雇用許可制が施行される前、産業研修制が90年代に導入されました。研修生と呼ばれていましたが、労働権は与えられず、人種差別や虐待的な処遇でたくさんの研修生が離脱し、結果として未登録移住労働者の人口が増えました。
 04年に導入された雇用許可制では、職場の変更は3回を限度とすると制限されており、雇用許可制のもとで働く移住労働者が権利を行使できなくするシステムです。法的地位を失うことを恐れて、移住労働者は低水準の仕事と生活状況に耐えました」
 「私は韓国で移住労働者の労働運動を進めることが重要だと考えています。言葉の壁は労働者としてともに闘う立場に立てば超えられるものです。移住労働者とその国に暮らす労働者は敵対的ではなく、同志的な関係であるべきです。労働者にはさまざまな分断を超えて団結することができる力があります。移住労働者が労働組合を結成して闘うのもそのためです」
 ミッシェル委員長は、集中治療室でさえハンストを続ける意志を示したという。ミッシェル委員長は民主労総ソウル本部とともに
国鉄全国運動の呼びかけ人となった32人の1人だ。国際連帯を貫き、ソウルG20―横浜APECを口実とした外国人労働者への不当弾圧を粉砕しよう!

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月刊『国際労働運動』(410号2-2)(2010/10/01)

■News & Review/中国

労働者の巨大な階級的反乱始まる

争闘戦激化の中で世界戦争にのめり込む

 □切迫するバブル崩壊とスターリン主義の矛盾

 世界大恐慌の深まりの中で、中国の経済と政治・軍事は明らかな変調過程に入った。そこに中国労働者階級人民の新たな階級的決起がわき起こっている。中国発のバブル崩壊は世界大恐慌を決定的に加速し、逆にそれを受けた中国スターリン主義支配の矛盾を激化させ、労働者階級人民の闘いが巨大に爆発する情勢が近付いている。
 中国経済の変調は、中国スターリン主義支配の構造的矛盾に関わる問題と帝国主義経済体制に組み込まれた中で起きている問題との二面で起きている。
 前者の面では、以下の問題があげられる
 一、株式の低迷状態、不動産価格の伸びの鈍化。投機的投資の漸減傾向の顕在化。
 二、鉱工業生産の伸びの鈍化と在庫積み増し傾向の顕在化。輸入の鈍化傾向=今年後半の生産の減速は確定的。
 三、自動車販売の補助金打ち切りによる頭打ち傾向など個人消費の伸びの緩慢さ。
 四、銀行の融資残高の激増と地方政府の膨大な債務の積み上がり、その中での不良債権の顕在化といった問題。
 08年後半からの4兆元の景気刺激策は公共事業中心の固定資産投資によって、輸出激減で下降した景気を上向きにさせるものとはなった。しかしそれは財政出動と放漫な金融緩和で不動産バブルをつくりだし、他方で国有企業と地方政府の膨大な債務増をつくりだしたにすぎなかった。個人消費は08年までのレベルにも届かない緩慢な増加状態(今年7月には18・2%増だが、物価上昇分を差し引けば景気後退の昨年と変わらない状態が続いている)にとどまった。
 放漫な金融緩和策の中で銀行融資が09年だけで9・59兆元にもなり、その大部分が国有企業と地方政府を通して不動産投機に流れ、不動産バブルをつくりだした。そして今日、不動産価格の頭打ち傾向の中で、それらが不良債権化する危険が迫っている。
 とりわけ地方政府の「融資平台」(景気刺激策のために地方政府が融資のため乱造したもので全国に8000社余もある)の債務残高が公式には09年末で7・7兆元(=100兆円強。実際には10兆元とも12兆元ともいわれ、詳細は中央もつかめていないありさま)にもなっている。このうちの2割がすでに不良債権と疑われている。
 他方、銀行は融資額の不良債権比率(現在は4分の1が既に不良債権と考えられている)が高まっていることを懸念し、住宅ローンの貸出制限など融資枠を狭める政策をとりだしている。生産の低迷や地方財政の欠落の下での国有企業や地方政府の不動産ブーム継続へのやみがたい衝動とバブル崩壊の懸念からの引き締め策の綱引きの激化のなかで、現実には膨大な空き部屋・オフィス(6000万件もあるという)が存在しており、不動産バブルの崩壊は完全に切迫している。
 不動産バブルの崩壊はすでに明らかになっている国内生産の過剰状況を激甚につきだし、鉱工業生産を激減させ、中国経済の高成長の崩壊となり、それに依拠しようとする帝国主義経済の大恐慌を決定的に促進せざるを得ない。
 中国スターリン主義の支配構造は、一国社会主義の下で不可避になる労働者と農民からの強収奪の基礎の上に成り立っている。改革・開放政策はその構造の下での新自由主義政策の採用であり、搾取と収奪が吹き荒れ、スターリン主義官僚と資本家層が富裕化し、労働者・農民との格差を拡大(二極分化)しつつ「成長」する中国経済社会をつくりだした。
 スターリン主義支配体制は、官僚(とそれを支える国有企業)の利害を軸にしている社会であるために、彼らが富裕になるバブルへのやみがたい衝動があり、この体制の下ではバブルを自ら抑えることなどできない。
 だが、世界経済に組み込まれ、しかも大恐慌の中では、帝国主義以上に富裕層の一層の富裕化と労働者人民の貧困化、そして政府債務の膨大な積み上げを結果するものとなってしまっている。行き詰まった中国の経済社会建設を帝国主義世界経済に依拠して打開するという中国スターリン主義の「発展の展望」は、大恐慌の中で、根本矛盾を決定的につきだされる過程に入った。それは労働者階級人民の現体制に対する怒りの反乱を呼び起こすものとなっていかざるを得ない。
 後者の点では、人民元安の維持と輸出強化に関わる矛盾が激化しているが、中国スターリン主義は帝国主義的争闘戦の激化の中での市場・資源争奪戦により激しく踏みこむことを決断せざるを得なくなっているのだ。6月中旬に人民元「弾力化」を打ち出したが、それは「外圧」との関係で元高容認の姿をとりながら、現実には元安を維持し、輸出の強化にかけるものであることがはっきりした。
 実際、輸出の低迷によって、金融危機段階で起きたような中小企業の倒産の嵐、2000万人の失業という事態に対する危機感が、強まっている。
 中国紡績工業協会の幹部は「中国では繊維産業に従事する者は2000万人で、綿花栽培に関わる者も含めると関係者は1億4000万人に上るが、元相場の上昇でこれだけの人が路頭に迷ってもいいのか」と党系列の新聞(チャイナデーリー)で喚くような状態となっている。
 大恐慌の深まりの中で、中国のこうした国益のごり押しに対する国際的重圧への懸念からする党内論争も起きているが、延命のために摩擦覚悟で市場・資源争奪戦に突き進む姿勢をとらざるを得なくなっているのだ。それは大恐慌の深まりの中で、争闘戦の激化要因となり、逆に中国経済の破綻性の重大な圧力となっていくであろう。

 □政治的・軍事的摩擦に引き込まれる中国

 今日の中国は、世界的な争闘戦の激化の中で、その大きな加速要因となっている。世界的な市場・資源争奪戦に割って入り、否応なく他国との軋轢を深めている。
 すでに述べたように、中国は「人民元問題」をめぐる独自利害のごり押しの態度に踏み込んでいるが、それは帝国主義世界体制的秩序に対する「挑戦」ということを意味する。それは経済の面だけでなく、軍事や外交の面でも明らかな踏み切りとなっている。 今日、米日帝国主義による北朝鮮侵略戦争に向かっての決定的踏み込みが始まっているが、その中で中国は外交面では、韓国の哨戒艦沈没問題での北朝鮮への制裁への同調を米日韓に要求されながら、逆に膨大な北朝鮮への経済協力を推し進めている。北朝鮮に対する米日帝国主義の侵略戦争重圧による体制崩壊の危機を、中国の支えで何としても乗り切らせるという決意の表れだ。さしあたり、6カ国協議などはどこかに吹っ飛んでいるありさまだ。
 その上で、この間の黄海や日本海での米韓合同演習に対する反対の態度表明にとどまらず、黄海での軍事演習を繰り返して、米帝に対する対抗性をむき出しにしたが、それは米帝の9月からの黄海での米韓合同演習に原子力空母を派遣する態度を引き出した。さらに南中国海の西沙諸島、南沙諸島領有権をめぐって、全諸島の領有を主張して周辺諸国との軍事的緊張を含む摩擦をかまわず、実効支配のために積極的に乗り出している。 これは米帝(7月末のアセアン・フォーラムでのクリントン国務長官の発言=「南中国海での航行の自由はアメリカの国益」)との緊張関係だけでなく、ベトナムと米帝の合同演習を南中国海で行うことさえ生みだした。
 空母の建造などを含めて、中国スターリン主義は世界革命の放棄=一国社会主義論(国際労働者階級の闘いへの不信)に基づいて、中国の権益を押し出し、それを守るという形をとって、軍事、外交における強腰への変転を行いつつ、いまや明らかに大恐慌の中での世界戦争への道を加速する道に踏み込んでいる。だがそれは中国スターリン主義の、世界安定の下での経済発展などという展開がありえないことをはっきりさせるものとなっていく。

 □労働者階級の本格的な台頭への扉が開く

 中国の政治・軍事・経済における大きな変調が起きている中で、この間の新世代農民工を支柱とした中国労働者階級の新たな階級的台頭は巨大な意味をもつ。
 5月中旬の広東省仏山市南海のホンダ部品工場に端を発した中国労働者のストライキは、7月末の『朝日』のまとめでは、全国で43件(うち日系企業で32件)となっていた(左図参照)が、報道封鎖の中で、遼寧省大連市の経済技術開発区で6月から8月にかけて、59社の日系企業を中心とする連鎖的ストライキの大波が起きていたことが分かった。
 大連の連鎖的ストライキは、ネット情報によれば、東芝、YKK、トステム、リョービ、旭硝子、早川電子、日本電産、キャノン、マブチモーターなどの著名な企業を含めて数十社で起きた。
 ストの要求は賃上げと待遇改善である。900元程度の基本賃金でしかないことに対する強い不満が充満しており、中国南部のストが大幅賃上げを勝ち取ったことから、500元の賃上げや手当の増額を要求するストが開発区全体に巻き起こった。
 それはほとんど山猫ストで仕事放棄から始まって、工場全体を巻き込むようなあり方で行われたもので、工会は調停役として最終局面での労働者代表と企業の協議に加わっただけでしかなかった。ここでもスターリン主義権力を背後とする総工会の反労働者的姿が明示につきだされた。
 大連では05年にも日系企業を中心に全体で7万人の労働者が加わる大ストライキが長期にわたって起き、これに対する弾圧で指導者が解雇、投獄される事態があった。今回は指導者を明示しない形の山猫ストを切り口にした闘い方など、それを教訓としての闘い方であった。
 重要なことは、仏山市や中山市のホンダ系の労働者の闘い、および大連市の闘いは、業種や地域内での労働者の緊密な連携がなされる中でストが連鎖したこと、また工会の改組や自主的な労組運営などを目指す労働者の自覚的な階級的団結意識に根差した要求が、はっきりと運動の中に貫かれ始めていることである。中国における労働者階級の指導部形成を伴った階級的台頭が始まりつつあるのだ。
 中国の労働者階級は、1927年の中国大革命の敗北以降、日中戦争、国共内戦、スターリン主義による新中国建国をとおしても独自的な階級性の発露は失われたまま、総工会もスターリン主義政府の上から組織化によってつくられ、労働者階級の自己解放的な活動は抑圧の状態を強いられてきた。
 56年のスターリン批判を契機にした東欧反乱と同時期に、中国でも労働者や学生のストが数万規模で起きたが鎮圧され、またその後総工会指導部の労働者階級の独自要求を容認する路線の展開が主張されたが幹部が失脚させられ、総工会への統制は強まっていく。その後、文革時には臨時工の大造反によって総工会は占拠・閉鎖(66年末)され、78年に旧来型の総工会が再建されて今日に至っている。だが、89年の天安門の闘いの中で、労働者の自主的な労組建設の活動が一気に噴き出し、一カ月で会員2万を超える全国的な動きとなった。スターリン主義の労働者抑圧に対する反乱は、搶ャ平ら中央官僚の恐怖に満ちた血の大弾圧で挫折させられた。
 しかし今日始まった新世代農民工を軸にした中国労働者階級のストの大波は、こうした労働者階級の歴史的状態を根底から突き破る可能性をもつものだ。中国スターリン主義の新自由主義政策と対峙し、さらに「社会主義」の名をかたる労働者抑圧に対する自主的な労組建設を対置した階級意識の鮮明な労働運動が始まったのだ。
 大恐慌の中で、日帝を含む帝国主義資本の植民地的搾取・収奪の激化に対する重大な反撃の橋頭保を築くものとして中国の労働者階級の隊列が形成されつつある。日本労働者階級は日本革命―世界革命の共同の隊列を形成するものとして中国労働者階級の新たな階級的台頭と固く連帯していかなくてはならない。
 (賀山 宏)
(図 中国のスト発生状況【5月17日以降、判明分】)

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月刊『国際労働運動』(410号2-3)(2010/10/01)

■News & Review/アフガニスタン

混迷と泥沼化深める米侵略戦争

米政権中枢と対立、現地最高司令官更迭

 米帝のアフガニスタン侵略戦争がいよいよ泥沼に入っている。鳴り物入りで打ち出されたオバマの兵力増強とカンダハル奪回作戦も、完全に泥沼化し、大失敗に終わっている。さらにオバマ政権と現地軍司令部との戦争遂行上の不一致も広がっており、米帝は完全に展望を失っているのである。

 □現地最高司令官の解任

 米帝オバマは6月23日オバマ政権の戦争のやり方について雑誌ローリング・ストーンの中で公然と批判したマクリスタル米・NATO合同軍司令官を解任することを表明した。
 マクリスタルは、雑誌の中でバイデン副大統領について聞かれたのに対し「誰だそれは」と侮辱し、政権中枢に対する不信感をあらわにしたのだ。これによって政権中枢と現地司令官の間に決定的な不信感があることが明らかになった。オバマは、この責任をマクリスタルに押しつけ、彼を解任し、後任には米中央軍司令官のペトレイアスを充てることにした。マクリスタル将軍は6月30日になって軍から退役することを表明した。アフガン戦争のやり方について政権と現地軍の間に深刻な対立があり、米軍の将校や将軍には退役によって逃げ出す者が相次いでいるのだ。
 オバマは、マクリスタルの政権批判が民主主義に反すると批判したが、問題はそんなところにあるのではなく、米軍最高司令官がアフガン侵略戦争について完全に展望を失って、どうしたらいいか全くわからない状態に陥っていることにある。将軍たちは退役してどんどんと逃げ出し、戦闘において一番重要なベテランの下士官たちは犠牲者続出で補充が効かず、米軍は崩壊状態に陥りつつあるのだ。米軍の追加投入で現在ISAF(国際治安支援軍)は15万人といわれているが、その内実は崩壊状態に近い。
 米軍は、カンダハル奪回作戦を展開したが、その6月のISAFの死者は100人を超え米兵の死者も7月には60人を超え過去最高となった。アフガン侵略戦争開始以来1カ月のISAF軍の死者が100人を超えるのは初めてのことだ。アフガニスタンでのISAF軍の死者は年々増加傾向にあるが、特に、昨年は年間で521人に上っており、今年は昨年をも上回るペースで死者が増えている。ISAF軍の敗勢がはっきりと示されているのだ。
 もともとカンダハルは、タリバンの大拠点であり、米軍が侵略戦争の当初にタリバンの拠点をつぶすとして制圧し、その後はアフガン全土への侵略作戦の拠点としてきたところである。ところがその米軍の拠点であったはずのカンダハルがいつの間にかタリバンの拠点となり、米軍(ISAF軍)が奪回作戦を組まなければならないところまで追い詰められているのである。
(写真 アフガニスタン南部カンダハル近郊でタリバン兵と銃撃戦になり、応戦する米兵)

 □タリバンの拡大

 昨年以来ISAF軍の死者が激増した背景には農民をはじめとしたアフガン人民がタリバンに加わり、タリバンの勢力が拡大したことがある。タリバンに加わらなくても、人民が親タリバンとなり、情報がISAF軍には伝わらなくなっており、ISAF軍の情報はタリバンに筒抜けになるという状態になっているのだ。
 昨年米軍はケシの栽培によるアヘン取引がタリバンの資金源になっているとして、収穫前のケシ畑を焼き払う作戦を強行した。これは貧しい小作農民にとって一年の収入を奪うもので死ねと言うに等しい行為である。収穫前の作物を焼き払われた農民の怒りは計り知れない。農民をはじめアフガン人民にとっては生きるためには米軍をたたき出す以外にないことがはっきりしたのである。8月3日には「アメリカに死を」と叫んだ数百人のデモがアフガン東部の村のメインストリートを埋め尽くすという事態も起こっている。
 今やISAF軍はアフガン全土でアフガン人民の怒りに包囲されているといっても過言でない状態である。こうした中でイギリス軍は、タリバンとの激しい戦闘が続いてきたヘルマンド州から撤退し、米軍に任務を引き継ぐことを決定した。
 2001年の戦争開始以来のイギリス軍の死者は312人に上っており、そのうちの99人がヘルマンド州北部のサンジン地区に集中している。このへルマンド州からの撤退を決めたのである。オランダも2011年には部隊を引き揚げるとしており、カナダも2011年から部隊を削減し、アフガン政府軍の訓練のための部隊だけを残すと、基本的に撤退の方向を打ち出している。これ以上の死者に耐えられなくなっているのである。

 □無人爆撃機の誤爆

 こうした中で米軍は無人爆撃機による空爆を激化させている。プレデター(捕食者)と名付けられた無人爆撃機は、飛行時のブーンといううなり声から通称ドローンと呼ばれている。無人爆撃機は墜落しても米軍の人的被害が出ないということでドローンへの軍事的要求は拡大している。それに伴ってドローンの墜落も増加しているし、一般市民への誤爆も大きく拡大している。
 米軍は一般市民への誤爆については認めようとしない。反論の余地のない証拠を突きつけられてようやく認める場合でも、わずかな補償金で黙らせようとするのだ。こうしたやり方もアフガン人民の怒りをかき立てており、カルザイ政権の権威失墜とタリバンへの支持拡大の重要な要因になっている。現在はカンダハルの基地から操縦者がドローンを操縦していると言われるが、以前は地球を半周も離れた米本土ネバダ州で操縦していた。そして操縦者のミスで墜落や誤爆が繰り返されているのだ。
 こうした中で、インターネット・サイトのウィキ・リークスが7月26日、9万に及ぶ米軍の秘密記録を暴露した。その中には今年だけで1300人を超える一般市民が米軍によって虐殺されていることやタリバンが地対空ミサイルを保有していること、タリバンの攻撃でISAF軍の死者が激増していることなどを覆い隠していたことも記されている。
 そして米軍がアフガン戦争について何年にもわたってごまかしを行っており、マスコミもそれに乗っかってきたことが暴かれている。またタリバンの攻撃の成功やその重大性、米軍が要請した治安維持軍の犯罪的暴力などについても隠していたことが記録されている。しかも重大なことは、米兵の自殺者が激増しており、戦闘による被害を超える事態になっているということだ。米軍の崩壊的事態が起こっているのである。また、特殊部隊の戦争といわれているものが、完全に隠された秘密の戦争でドローンの攻撃、夜間攻撃による殺戮などが現在も継続していることである。
 もともと無人爆撃機で攻撃するというあり方自身が、帝国主義の無差別殺戮の本質を示している。それは、広島・長崎への原爆投下や日帝の重慶爆撃と同じ本質を持ったものである。ベトナムやイラクでも繰り返された無差別爆撃をアフガニスタンでも日々繰り返しているのである。
 無人爆撃機での攻撃に頼らざるを得なくなっているところに米軍の敗勢がはっきりと示されている。しかも無人機での攻撃は決して万能ではない。戦争の勝敗は地上戦での勝敗によって決せられるのだ。地上部隊は安心して行動できるところはどこにもなくなってしまっているのだ。この間タリバンと交戦中のアフガン政府軍を米軍が誤爆するという事件が相次いでいるが、これも追い詰められた米軍の焦りの姿を示している。
 米帝のアフガン侵略戦争は、8年9カ月を超えベトナム侵略戦争を超えて米帝にとっての最長の戦争となっている。しかも侵略戦争は泥沼化を深めるだけで何の展望も見いだせない状態になっている。来年夏からの撤退開始など問題にもならない状況になっている。しかも米帝にとってアフガン侵略戦争は絶対に放棄できない戦争だ。タリバンが勝利すれば、米帝のテロとの戦いが敗北したことを意味し、米帝の世界支配全体が揺らぐことは避けられないからだ。それは世界大恐慌をも劇的に拡大させるものとなるであろう。今や米帝のアフガン侵略戦争は死の苦悶に転化しているのである。
  第4章 □ペトレイアスの新戦略

 □ペトレイアスの新戦略

 こうした中で新司令官になったペトレイアスにも特別に変わった方策があるわけではない。元々マクリスタルが行っていた作戦も、中央軍司令官ペトレイアスの指示によるもので基本的には大きな変化はない。だがペトレイアスが大きく強めようとしているのは、アフガン人民とタリバンとの間にくさびを打ち込むということである。実際には、アフガン人を警察や軍に雇い入れ、訓練するというものでこれまでも行われてきたものだが、さらにこれを強めようというものである。また農民に鶏を与えたり、女子の学校を作ったり、子どもに鉛筆を配ったり、民衆を引きつける政策を強めようとしている。
 だが、はっきりさせなければならないことは、アフガンの農民は、10年間の米軍支配の現実に対して米軍をたたき出すことを選択したということであり、小手先の政策でそれを覆すことはできないということである。実際何人かの農民に鶏を与えたところで、農民全体がそれで生きていけるわけではない。年一回の収穫を焼き払っておいて農民が生きられるわけがないのだ。 政府軍の訓練にしても、訓練中に訓練生が発砲して教官を殺害するという事件が何件も起きている。しかも米軍よりも貧弱な装備しか与えられていない政府軍がタリバンの格好のターゲットになるケースが相次いでいるのだ。こんな状態で各国の軍が警備の責任をアフガン政府軍に引き渡して撤退することなど不可能であることは明白である。
 また米帝はこの間、アフガンに石炭や鉄鉱石、希少金属のリチウムなどの鉱物があると発表した。さらにアフガンに油田があるということも地質調査の結果として発表している。これらはISAFに軍を派遣している各国にも侵略戦争の野望を駆り立てようとするものである。
 しかし、ISAFに軍を派遣している各国ではその犠牲に耐えきれなくなってきているのだ。オバマ自身の米軍増強政策もそれによって事態を改善して来年7月からは軍を削減して撤退の道筋をつけようというもので、そんなことは完全に不可能であり、追い詰められた米帝の姿をさらけ出しているのだ。

 □絶望的な戦争拡大

 このように、アフガニスタンが米帝にとっての泥沼そのものになっている中で米帝は、絶望的に戦争拡大政策に走っている。アフガンでの敗勢が大恐慌情勢の深化とともに米帝の世界支配を根底から揺るがしているが故に、米帝はこれをそのままにしておくことはできないのだ。
 何よりも米帝は北朝鮮侵略戦争策動をますます強めている。北朝鮮スターリン主義の体制的危機の深まりの中でこれに対応して戦争体制をエスカレートさせている。7月には朝鮮半島の東側海域で米韓合同軍事演習を行った。そして8月の米韓合同指揮所演習に続いて、9月には中国をにらんだ黄海で核空母ジョージ・ワシントンを派遣して米韓合同軍事演習を行おうとしている。韓国哨戒艦「天安」沈没事件を口実に北朝鮮と中国の残存スターリン主義に対してすさまじい戦争重圧を加えることで、アフガン侵略戦争の敗勢で決定的に揺らいでいる米帝の世界支配体制を維持しようとしているのだ。
 追い詰められた米帝の絶望的な侵略戦争拡大を許してはならない。
 戦争を止める力は労働者階級の決起にある。職場生産点における職場闘争を全力で闘い、労働組合と労働運動をよみがえらせ、革命的反戦闘争を爆発させよう。
 ( 秋原義明)  ( 秋原義明)

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月刊『国際労働運動』(410号A-1)(2010/10/01)

編集後記

■編集後記

 世界大恐慌は大失業と戦争を生み出す。全世界で膨大な失業者が生まれ、青年労働者は明日をも知れない生活を強いられている。他方では巨万の富を蓄えているブルジョアジーがいる。
 イラク、アフガニスタン侵略戦争の戦火が燃え盛る中で、米日韓の北朝鮮侵略戦争が切迫している。これは東アジアの大動乱の始まりだ。しかし米帝は、イラク・アフガン両戦争で疲弊しきっている。この二つよりも大規模な北朝鮮侵略戦争を準備するだけで米帝の屋台骨が吹っ飛ぶ革命情勢になる。韓国の階級闘争しかり、日本の階級闘争しかりだ。中国スターリン主義者も戦々恐々としている。
 この戦争情勢はプロレタリア世界革命のチャンスだ。11月派が反戦闘争の先頭に立って労働者階級の本体を獲得し、日本のプロレタリア革命を実現していくのだ。

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