2008年11月17日

オバマ当選で革命情勢深まる 人民の怒り噴出米帝の危機と没落は加速する

週刊『前進』06頁(2368号5面1)(2008/11/17)

オバマ当選で革命情勢深まる
 戦争と貧困に人民の怒り噴出米帝の危機と没落は加速する
 日米韓労働者の連帯が勝利の道

 米大統領選でのオバマの圧勝は、アメリカ帝国主義のかつてない危機と没落、労働者の怒りの激しさを示すものとなった。アメリカで革命的情勢が現実化しているということだ。オバマは首席補佐官に超タカ派のラーム・エマニュエルを就け、その本性を現しはじめた。今後、オバマがどういう政策をとろうとも、米帝の危機と没落は緩和されるどころか、ますます加速する。世界金融大恐慌はさらに本格化し、世界戦争の危機も高まっていく。帝国主義がのうのうと延命できるような「変革」など絶対にありえない。オバマ圧勝の中に、プロレタリア革命の時代の到来を見なければならない。

 第1章 「イラク撤退」の公約を棚上げ

 オバマ圧勝とは何よりも、アメリカで革命的情勢が現実化していることを示す。8年間のブッシュ路線のもとで、米帝の歴史的な没落、資本主義体制の破綻が極限まで進み、労働者階級はもはや革命以外に生きられなくなっているからだ。
 米帝によるイラク・アフガニスタン侵略戦争は泥沼化しており、大統領選初期の大争点となった。また、80年代のレーガン政権以来の新自由主義攻撃は、貧困と超格差社会をもたらした。しかも9月15日の米証券会社リーマン・ブラザーズの破綻で世界金融大恐慌が本格的に爆発し、米労働者の生活は急激に悪化している。これが9月以降は大統領選の最大争点となった。すでに大リストラが襲いかかり、失業保険の新規申請は1週間で50万件にも膨らんでいる。ローンが返せなくて住宅が差し押さえられる件数は、1日当たり8000件を上回る。もはやプロレタリア革命以外にないという情勢だ。
 その労働者階級の怒りがひとまず議会主義的には、共和党の拒否、オバマの支持として現れた。オバマの圧勝とは、すさまじい米帝危機と労働者階級の怒りの巨大さ、激しさを示す。オバマに対する幻想が吹っ飛ぶのは時間の問題であり、革命的情勢がさらに深まるのは確実だ。

 第1節 「融和」で階級闘争圧殺狙う

 そもそも米民主党は米資本家階級の利害にそったブルジョア政党である。オバマ自身もブルジョア政治家にほかならない。オバマは黒人指導者のジェシー・ジャクソン牧師から「黒人を見下している」と批判される人物だ(ニューズウィーク誌7月23日付)。
 さらに重大なのは、ホワイトハウスで最も重要な位置を占める首席補佐官にエマニュエルを就けたことだ。この男は、91年の湾岸戦争でイスラエル軍に志願して参加した経歴を持つ。今回の首席補佐官就任についてイスラエルの新聞は、「ホワイトハウスにわが味方が!」と小躍りして喜んでいる。米政界でも「ランボー」「政界のけんか野郎」と呼ばれる。「以前、世論調査担当者の報告が締め切りに遅れたとき、死んだ魚を箱に詰めてその担当者に送りつけたこともある」(同4月16日号)。オバマはこういうエマニュエルとタッグを組んだ。
 オバマは、選挙戦中はそうした本性をほぼ隠した。労働者人民の不満と怒りを幻想的に引きつけるために、「チェンジ(変革)」をスローガンにペテンと懐柔を繰り返した。
 何よりも、「16カ月以内のイラク全面撤退」を公約に掲げて反戦票を取り込もうとした。しかし、6月からは「イラク撤退のペースは駐留米軍の安全と治安、および現地の治安状況によって変わる」と変更した。また、「テロ対策」の名目で令状なしの盗聴を合法化する「外国情報監視法」に反対していたが、7月の上院採決では賛成に転じた。
 さらにオバマは、階級的矛盾が極限化していることを承知しているからこそ、「アメリカ人として一つ」「人種を超えた結束」という標語を繰り返した。米帝の国益を貫くために階級間の融和を図るということだ。資本家階級の側から労働者階級に対して”階級闘争をやめろ”と言っているのだ。労働組合を破壊し、労働運動を解体して挙国一致に持ち込もうとしているのだ。
 米労働者階級はこういうオバマの本性を見抜き、必ず打倒に立ち上がっていくにちがいない。

 第2章 大恐慌は食い止められない

 では、オバマ大統領のもとで米国と世界はどうなるのか。明白に、米帝と世界の危機は一段と加速し、階級的矛盾がさらに爆発し、革命的情勢はますます深まっていく。
 何よりも、すでに本格化している世界金融大恐慌は、どういう政策をもっても抑えられない。むしろ、あがけばあがくほど米帝の危機と没落を促進するだけだ。
 オバマは恐慌対策として、ブッシュ政権が決めた7000億㌦(約70兆円)の金融機関支援の増額、GMなど自動車産業の救済、公共事業による雇用増加、中所得層への減税、失業保険の給付期間の延長などを構想している。しかし、かりに実施されても、恐慌を一時的に緩和できても、恐慌の進行自体を食い止めることはできない。
 しかも、膨大な財政支出を伴うものばかりだ。すでに09年度の財政赤字は1兆㌦(100兆円)を超す見通し。さらに赤字が加われば、国債の大増発で長期金利が上昇し、ドル信認もますます崩れてしまう。大恐慌を加速させ、ドルを暴落させるだけだ。
 かつて29年恐慌の際はニューディール(新規まき直し)政策がとられた。しかし、それを繰り返すことなどできない。国家財政が大破産しているからだ。大恐慌が来る前にすでに財政力を使い果たし、財政赤字のアリ地獄に陥っている。帝国主義が、二度にもわたって大恐慌から生き延びられると思ったら大間違いだ。プロレタリア革命で打倒されるしかない!
 また、米帝の雇用・税制・医療・教育などの制度・政策はレーガン以降の新自由主義攻撃で解体されてきたが、オバマはそれを元に戻そうとしているわけではない。その解体の方向は引き継ぎつつ、減税などの一時的でささいな措置を検討しているにすぎない。こんなもので労働者人民の生活が良くなるはずがない。革命で帝国主義を吹っ飛ばす以外にないのだ。
 また、オバマ大統領のもとで世界戦争の危機は一段と促進される。オバマはシカゴでの勝利演説で「世界を破滅させようとする者は打倒する」と述べている。結局は戦争ということだ。

 第1節 アフガンへの増派を最優先

 すでに「イラク撤退」の公約を棚上げしつつあるだけではない。オバマは一貫して、「対テロ戦争の最前線はアフガニスタン」とし、1万人の増派を外交の最優先課題としている。もともと01年9・11反米ゲリラ戦の直後にオバマは、「自分も武器をとってアフガニスタン戦に参加したいと思ったという」(同7・23付)。さらに、パキスタンへの米単独での攻撃も辞さないと言明している。すでに8月以降、アフガニスタン駐留米軍によるパキスタンへの越境攻撃が少なくとも18回に及んでいる。これをさらに大々的にやろうというのだ。
 また、オバマ体制で米帝の保護主義が強まるのも必至であり、帝国主義間争闘戦も激化していく。オバマはNAFTA(北アメリカ自由貿易協定)の見直しを掲げてきた。「低燃費自動車(ハイブリッド車)を日本などからの輸入に頼るべきではない」とも強調してきた。低燃費自動車を対米輸出し現地生産しているのはトヨタだ。
 基幹産業での保護主義は共和党政権下では弱まっていたが、民主党オバマ政権下で再燃する可能性が強い。それは日米間をはじめ帝国主義間争闘戦を新たな次元でエスカレートさせる。それがまた、世界戦争の危機にますます火をつけるものとなる。

 第3章 日米同盟動揺で日帝危機に

 日帝にとって、米帝の保護主義化は大打撃となる。特に北米市場に利益を依存するトヨタにとって致命的だ。トヨタをはじめ日本車メーカーは競って米現地生産を拡大し、それを経営の要としてきた。しかし、大恐慌と保護主義が本格化すれば、この現地生産自体に対する反発が噴出するのは避けられない。”平時”がずっと続くと思い込んで米現地生産にのめりこんできた日本の自動車資本には、恐るべき破滅が待っている。ニューズウィーク誌(10・1付)ですら、経済危機のワーストシナリオとして「世界恐慌、保護主義から貿易戦争へ」としているが、それが現実だ。
 しかも日帝は、日米同盟という面でも危機に入りつつある。米帝は北朝鮮の「テロ支援国家」指定を解除した。これに対し日帝は、単独で北朝鮮に対する追加制裁に動きはじめている。これは許せないことだが、アジア外交をめぐって日米同盟が動揺していることを示す。日帝にとって、日米同盟抜きに帝国主義としての延命はないにもかかわらずだ。この面でも日帝は、帝国主義の「最弱の環」の姿をさらけだしている。労働者階級にとって、日米同盟が揺らぐことは大歓迎だ。革命で日帝を打倒するだけだ。
 結論として、オバマ圧勝はアメリカをはじめ世界の革命的情勢をますます煮詰まらせていくものとなる。オバマがどうあがいても、世界金融大恐慌は加速する。オバマが当面どういう政策をとろうと、帝国主義であるかぎり戦争にさらにのめりこむことになる。労働者階級にとってプロレタリア革命以外にどんな出口もない。
 11・2労働者集会は、このような歴史的な瞬間に闘いとられた。日米韓労働者の団結の中に、プロレタリア革命の展望と労働者政党の希求があふれかえった。参加したILWUローカル10、ローカル34やUTLAの労働者たちこそ、今後オバマ政権下で帝国主義打倒に続々と立ち上がるアメリカ労働者の先鋒だ。11・2集会は、オバマを打倒しアメリカ革命−世界革命に突き進む画期となった。動労千葉派の日米韓労働者はこの日、世界革命の展望と現実性を完全につかんだのだ。確信をもってこの道を進もう。