2009年12月21日

教育の民営化と道州制粉砕へ 民主党の教育政策を批判する

週刊『前進』06頁(2421号3面2)(2009/12/21)

教育の民営化と道州制粉砕へ
 教育労働者の大量首切りと非正規化に職場から反撃を
 民主党の教育政策を批判する

 鳩山政権は「ムダづかい排除」と称して公務員労働者の賃下げと大量首切りを推進し、「地域主権国家」の名において道州制へ突き進む内閣である。本紙ではこれまで同政権による教員免許制度改悪や「全国学力テスト廃止」の大ペテンを批判してきたが、今回は、教育財政制度の見直しと教育委員会制度の廃止=首長直轄の教育行政を取り上げる。民主党の「教育改革」が道州制攻撃を貫徹し、教育の全面的な民営化を推進するものであることが浮かび上がってくる。

 戦争・改憲に突き進む鳩山政権は労働者の敵

 小沢・鳩山政権は、自民党以上の戦争と改憲突撃政権である。彼らが掲げる「緊密で対等な日米同盟」「東アジア共同体構想」は、アジアのブロック化=円経済圏形成まで展望した現代版「大東亜共栄圏」構想だ。アメリカ帝国主義との激突をはらむものであることを承知の上で、世界大恐慌下で日帝が生き残る道として決断しているのだ。
 小沢は今年2月、「第7艦隊で米国の極東におけるプレゼンスは十分」「(在日)米軍が引くことによって、日本の防衛は日本が責任を果たしていけばいい」と語った。鳩山も96年に「常時駐留なき安保」を主張、以来一貫して「主権国家の領土内に他国の軍隊が未来永劫(えいごう)常駐し続けることは常識的ではない」(00年)などと訴えてきた。日米安保体制を軸とした日米関係をぶち壊し、自国の軍隊で戦争を行う「普通の国」になるというのは、小沢と鳩山の共通した主張だ。
 連合幹部が振りまく幻想をぶち破ってその本性を暴き、JR検修全面外注化攻撃と対決する反合・運転保安闘争路線を全労働者のものとして、鳩山政権打倒へ職場から大反乱を巻き起こそう。

 国庫負担金制と教職員定数の法定の廃止狙う

 鳩山政権は来年の通常国会に「学校教育環境整備法案」「教員数拡充法案」を提出しようとしている。日教組本部は、これで「教職員賃金・定数改善」が実現するという幻想を振りまいているが、とんでもない。「学校教育環境整備法案」は、義務教育費国庫負担金制度と義務標準法・高校標準法の廃止の布石であり、教育労働者の大量首切り、非正規化に直結する大攻撃なのだ。
 3月に民主党が参院に提出した「学校教育環境整備法案」のポイントは二つある。一つは、義務標準法・高校標準法に定められている教員定数を教育振興基本計画の一部である「指針」に格下げすること。もう一つは、政府が教育振興基本計画に示す目標達成を各自治体に競わせ、その達成度に応じて予算を配分するシステムづくりである。
 民主党はマニフェストで「国庫補助負担金の『一括交付金』化」を掲げ、原口総務相は「11年度から実施する」と述べている。11月に行われた「事業仕分け」では、義務教育費国庫負担金も対象とされ、10年度概算要求の見直しは見送られたが、結論は「国と地方の関係の整理などが必要」となった。義務標準法については、民主党の教育政策を仕切る文部副大臣の鈴木寛が、一括交付金の導入を前提に廃止する意向を表明している。
 すでに義務教育費国庫負担金は、小泉政権の「三位一体改革」で06年度から国の負担が2分の1から3分の1に減らされた(都道府県の負担分が3分の2に増)。04年度に総額裁量制(国庫負担金総額の枠内で、賃金と教職員数を都道府県が決定できる仕組み)が導入されたことと合わせ、このかん、正規教員の非正規教員への置き換えが一気に進められてきた。
 義務教育費国庫負担金制度が廃止され、都道府県の裁量で使い道を決定できる一括交付金とされ、標準法も廃止されたら、非正規教員は野放しで激増することになる。
 すでに暴露してきたように、民主党の教員免許法改悪案は、検定試験による免状切り替えをテコとする道州制に対応した首切り攻撃であり、修士学位の取得を免許授与の条件とし、国による免状取り上げ制度を導入する「国定聖職者教師」づくりである。返還免除の特別奨学金制度の導入も、戦前の師範学校が、給費制度をテコに教員志望者に国家への絶対服従をたたき込んだのと同様の発想が貫かれている。
 同法案には、普通免許状の授与権者を文科相とする一方、都道府県知事が授与する「特別免許状」「臨時免許状」の規定が置かれている。つまり、一部の「エリート教員」以外は非正規化=「代用教員」化していく攻撃でもあるのだ。

 教育委員会制度も廃止教育行政を首長直轄に

 民主党は、政策集「INDEX2009」で「地方の教育委員会を発展的に改組した『教育監査委員会』を創設し、教育行政の責任を首長に移管」としている。教育委員会制度を廃止し、教育行政を首長の直轄支配下に置こうというのだ。
 現行の教育委員会制度は、1947年の教育基本法施行の翌48年、教育行政は公選制による教育委員会が責任を負うとしたところからスタートした。しかし、公選制は56年に首長による任命制に切り替えられ、教育委員会制度は、文部省による都道府県教委、市町村教委への官僚的統制の隠れみのとなってきた。
 教育委員会制度を廃止することは、「教育行政の独立性」の建て前も投げ捨て、首長がむき出しで政治介入するものとなる。「指導・助言」原則なども跡形もなく一掃される。教育労働者は首長をトップとする指揮命令系統のもとに置かれ、一般行政職同様の評価・管理システムのもとに組み敷かれることになる。
 すでに東京・杉並区では、教育委員会の頭越しに山田区長の方針で区独自の学力テストなどが決められ、校長の間では「区長命令」という言葉が飛び交った。大阪府知事・橋下は、学力テストの結果の公表を「教育委員会に指示する」と暴言を吐いて公開を迫った。「教育行政の権限は首長に移管すべき」というのは橋下の持論だ。
 07年に民主党が提出した「地方教育行政の適正な運営の確保に関する法案」では、「指導が不適切な教員」は首長が教諭以外の職への異動などの措置を講じると明記。また首長が学校の「組織編成、教育課程、教材の取扱い……について、必要な規則を定める」「教科書以外の教材の使用について、あらかじめ、地方公共団体の長に届け出させ……承認を受けさせる」とし、副教材まで首長の承認制としている。
 これまでは、「つくる会」教科書を採択するためには、教育委員の入れ替えが必要だった。東京都知事・石原や杉並区長・山田、前横浜市長・中田は、そうやって「つくる会」教科書採択を強行した。しかし、教材を決めるのが首長になれば、「つくる会」教科書採択もやりたい放題だ。

 教育監査委員会を新設民営化を徹底的に推進

 民主党が教育委員会に代えて新設しようとしている「教育監査委員会」は、首長直轄の教育行政をチェックするための組織ではおよそない。首長の命令を現場に徹底し、学校と教育労働者を評価、監視する組織だ。
 そのモデルは、イギリスの教育水準局である。文科委員会筆頭理事に就いた笠浩史は、『サッチャー改革に学ぶ教育正常化への道』に「日本版『教育水準局』の創設を」という一文を載せている。教育水準局はサッチャー教育改革の柱として92年に創設された。監査チームが6年に1回、イギリス全国の保育園から小・中・高校を対象に約1週間の監査を行い、改善勧告を行う。「教育困難校」と認定され、2年後の監査でも「改善されていない」と判断されれば、校長も教育労働者も全員クビ、閉校。教育労働者が「偏った歴史教育をしている」「不適切」と評価されれば、校長に解雇される。
 民主党はこのサッチャー教育改革に学んで、公教育にさらなる市場原理を持ち込み、格差化と民営化を推進するシステムをめざしているのだ。
 文科副大臣の鈴木寛は、著書『中学改造』で「学校の授業自体を民間教育機関にアウトソーシングして、学校外で塾にいかなくてもすむようにしてあげた方がいい」と述べている。杉並区・和田中学の民間人校長として、進学塾サピックスによる有料夜間授業「夜スペ」方式を実施した藤原和博は、鈴木の通産官僚時代からの盟友である。
 「高校教育の実質無償化」も、給付金を教育バウチャーとして機能させることで学校間・公私立間の競争を激化させ、民営化を推進していくことに狙いがある。民主党による教育行財政制度改革は、徹頭徹尾、道州制・教育の民営化攻撃を推進していくものである。

 日教組本部打倒職場から闘いを

 日教組出身の輿石東は民主党幹事長代理、参院議員会長として政権党の中枢に座っている。今や、日教組本部が国家権力そのものとして、教育労働者への大攻撃を推進している。
 11月17日の日教組第153回中央委員会は、鳩山政権発足を「民主主義による本格的な政権交代が戦後初めて実現」と大絶賛し、「新政権とは、有効かつ誠実で互いの信頼関係を重視した対応をはかっていく」と表明。教育労働者に大量首切りと非正規化をもたらす民主党「教育改革」を自ら進んで担うというのだ。
 これは同時に、現場で闘う組合員を徹底的に弾圧していく宣言だ。一昨年度、昨年度に続いて、今年度の日教組全国教研(来年1月開催)から、東京の「日の丸・君が代」レポートが排除された。日教組本部打倒は全教育労働者のテーマだ。
 日教組本部の本性を暴き、職場から闘いをまき起こし、各教組執行部をうち倒す仲間をつくろう。その団結の力で来春「日の丸・君が代」不起立闘争を拡大しよう。