ZENSHIN 2000/09/18(No1973 p06)

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週刊『前進』(1973号3面2)

 新潮流運動の大躍進へ 資本攻勢の嵐と対決を (3)

 パート化して賃下げ
 団結破壊するシニア協定 ワークシェアリング
  「雇用延長」で全面導入狙う

 「労資合意」で不安定雇用強制

 首切り・賃金切り下げと不安定雇用化の攻撃が進んでいる。それを一層推し進めるのが、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)なるものである。
 日経連は、今年の「労働問題研究会報告」で「柔軟なワークシェアリングについて、種々の具体策を検討・実施していく」と、ワークシェアリングに踏み込んで言及した。そして、そのためには「正規従業員の仕事・価値を洗い直し、仕事の性格・内容によって時間管理が可能なものは時間給賃金とする発想も必要だ」と叫んでいる。ワークシェアリングとは、賃金を切り下げ、正規雇用を削減し、パート、派遣などの不安定雇用に徹底して置き換えようとする攻撃だ。
 春闘のさなかの三月には、関経協が「ワークシェアリングのあり方」と題した提言をまとめた。そこでは、「(労働者には)時間短縮相当分の減収が生じる」「個人レベルでの不利益変更の問題も検討しなければならない」「雇用維持という集団的利益が個人の利益に優先する」などとあからさまに言われている。
 電機連合の鈴木委員長や自動車総連の草野会長も、ワークシェアリングを公然と唱えてこれに呼応した。
 八月に行われた日経連トップセミナーでも、「オランダ・モデルに学ぶ」などとして、ワークシェアリングの導入が強調された。
 日経連は「他のEU諸国よりも失業率が低い」とオランダを持ち上げるが、その内実は正規雇用の徹底した削減だ。同国では、八〇年代以来「労資合意」のもとに正規雇用労働者が大規模にパート労働者へと置き換えられた。その結果、九八年には総雇用の四五・三%がパート労働者で占められるようになったという。職業安定所までも民営化され、派遣労働や解雇への規制も大幅に撤廃された。もちろん、賃金も大きく引き下げられた。
 日経連は、これをモデルに、不安定・低賃金労働に大半の労働者をたたき込んで「雇用の流動化」をどこまでも推し進めようとしているのだ。
 資本が唱えるワークシェアリングの悪辣(あくらつ)さは、「雇用維持」の看板を掲げることで、首切り・賃下げ・不安定雇用化の攻撃に連合幹部のあらかじめの屈服と先兵化をとりつけようとすることにある。だが、“賃下げを受け入れれば雇用が維持される″などということはありえない。現に、ワークシェアリングを唱える資本自身が、どしどしと首切りを推し進めている。ワークシェアリングとは、こうした首切り攻撃を恫喝材料に、一層の賃下げを労働者に迫るものなのである。
 許しがたいことに連合は、こんなことを「労資合意」のもとに進めようとしているのだ。

 賃下げと一体の「雇用延長」制度

 今年の春闘では、厚生年金の支給開始年齢引き上げに伴う、六十歳以上への「雇用延長」問題が大きなテーマとなった。電機大手などで労資合意された「雇用延長」制度は、高年齢労働者を対象とした全面的なワークシェアリング導入の攻撃である。
 「雇用延長」と言うが、そのほとんどが定年延長ではなく、賃金を切り下げた上での一年契約による再雇用だ。再雇用後の勤務形態は短時間労働となる。
 しかも、賃金削減は五十歳代後半から始まる。三菱電機では、「雇用延長」を希望する労働者は五十六歳でいったん退職し、賃金は八割に削られた上で再雇用される。六十歳以降は、賃金は五割になる。退職金も減額だ。「六十五歳への定年延長」で合意した富士電機でも、五十六歳から賃金が一〇〜一五%ダウンし、六十歳からは四五〜五〇%削減される。資本の狙いはあくまでも「総額人件費の抑制」=大幅な賃下げだ。
 年金の支給開始年齢引き上げそのものが、高年齢労働者の生活を根こそぎ破壊する攻撃だ。資本は、そうした労働者の苦境につけ込み、生きていけるかいけないかのギリギリの低賃金を強制して、死ぬまで労働者をしゃぶりつくそうとしているのだ。

 JRは再雇用先を紹介するだけ

 こうした攻撃の中でも、最も悪辣で反労働者的なものこそ、今年三月にJR東労組=カクマルがJR東日本資本と結んだ「シニア協定」である。
 それは、定年延長でもなければJRでの雇用延長でもない。JRは雇用責任を一切とらず、ただ「グループ会社等での再雇用」のあっせんを行うだけだ(協定の要点は別掲)。再雇用されるためには「採用試験」を受けなければならない。試験に落ちても、JRは「本人の責任だ」と居直ることができる。
 再雇用先の労働条件も、一年未満の有期契約というきわめて不安定なものだ。六十五歳まで契約が更新される保証は何もない。さらにJRは、再雇用先では「ハーフタイムをできる限り活用する」などとして、大半の労働者を短時間雇用に押し込める方針だ。
 賃金も大幅に減らされる。JRが設定した最低基準では、週四十時間のフルタイムで年収百九十二万円、二十時間のハーフタイムならわずか九十六万円というものだ。後者の場合、在職老齢年金とあわせても年収は二百五十万円。これで生活を維持できるのか。
 JRは一銭も払わず、グループ会社は極端な低賃金で熟練労働者を雇うことができるということだ。
 JR総連=カクマルは、協定締結後ただちに「雇用が保障されたのはJR東労組の組合員だけ」などというキャンペーンをけたたましく展開した。彼らが「シニア協定」とともに締結した覚書には、「国鉄改革とその後の十数年間を中核として担った意欲ある真面目(まじめ)なシニア社員の定年退職後の実質的な『雇用確保』という重要な目的を持つもの」などと書かれている。これをもってJR総連=カクマルは、国労・動労千葉解体のテコとしようとしたのである。
 年金の支給開始年齢引き上げという反動政策のしり馬に乗り、六十五歳までの雇用確保という労働者の切実な要求を人質に取って、国労・動労千葉への組織破壊攻撃に打って出るというまったく卑劣なやり方だ。
 さらに「シニア協定」には「労使は……『グループ会社等への鉄道事業等の一部の委託』をさらに深度化して着実に推進する」という条項が入っている。

 全面的外注化は国労破壊が狙い

 この「合理化協力」条項は、危機にのたうつJR総連=カクマルが、資本との結託体制を維持して自己の延命を図るために、JR資本に強いてねじ込んだものである。まさにファシスト反革命そのものだ。
 JR東日本は、「合理化協力」条項に反対して協定締結を拒否する動労総連合に対しては、今日も「再雇用のあっせんはしない」と言っている。断じて許せない不当労働行為である。
 JR資本は今、第二の分割・民営化攻撃と言うべき大合理化攻撃−業務の全面的外注化を推し進めている。JR東日本が打ち出した「設備部門におけるメンテナンス体制の再構築」では、保守部門の大半を下請け化し、二千百四十人を出向に出すとされている。それは、国労組合員の集中する職場を丸ごと解体するための攻撃でもある。
 シニア協定は、団結破壊と国労・動労千葉解体の一大攻撃なのである。

 JR総連打倒し国鉄軸に反撃を

 JR総連=カクマルは、東労組会長の松崎を先頭にして九五年以来、「労働時間を半分にして賃金も半分に」などと唱えてきた。九七年に出した「JR東労組が考えるワークシェアリングと雇用」なる文書では、「年間十二日の時短の代わりに十九万円の賃下げを」などとさえ言っている。
 日帝経済が破局に突き進む中で、JR総連=カクマルはファシスト的正体を一層むき出しにしつつある。それは連合型労働運動の破産を右から反革命的に打開しようとするものである。
 だが、そこには何の成算もない。彼らは、一大資本攻勢への労働者の怒りがますます高まる中で、自らの崩壊の危機におびえ、あがいているのである。全労働者階級の反撃は、国鉄闘争を最先端として大きく開始されている。JR総連=カクマルを使ってもつぶすことのできなかった国鉄闘争の解体に、日帝権力が四党合意という形で直接に乗り出してきた瞬間に、それは国労闘争団を先頭とした労働者階級総体の巨大な反撃を引き出したのである。
 資本は、「労資合意」の形をもとりながら、一切の犠牲を労働者に転嫁するリストラ攻撃を強めている。これに対して、JR総連の敵対や国労内の宮坂・チャレンジ一派、革同上村派の裏切りを打ち砕いて国鉄闘争を発展させよう。それを軸に全労働者の闘う団結と反撃をつくり出すことで、勝利の道を開こう。
〔長沢典久〕

 シニア協定」の要点
 @会社は、60歳に達してグループ会社での再雇用を希望する者に、再雇用先を確保する
 A再雇用先となる会社は採用試験も行う。試験に不合格となった者は、もう1回に限り別の会社の採用試験を受けることができる。
 B再雇用先との雇用形態は1年以内の有期雇用契約とし、年金の満額支給開始年齢まで更新できる。
 C労働条件は再雇用先との個別契約だが賃金水準は「年金満額支給までの間、減額となる年金額を補う程度」が基本。
 D協定を締結した労資は、「グループ会社等への業務委託」をさらに着実に推進する。
 

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