ZENSHIN 2001/08/06(No2016 p06)

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週刊『前進』(2016号1面1)

「お国のため、天皇のために死ね」と扇動する小泉靖国参拝絶対阻止せよ
 8月広島−長崎反戦反核闘争へ
 杉並・国立・栃木の勝利に続き戦争賛美の教科書採択阻止を

 七月二十五日、杉並区教育委員会は右翼ファシスト団体「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史・公民教科書の不採択を決定した。また栃木県下都賀地区(小山市、栃木市など二市八町)の教科書採択協議会も、住民、労働者の怒りの集中の中で再協議し、逆転して不採択とした。二十四日には国立市が不採択を決めた。これは大衆的な反対運動がかちとった決定的な勝利である。日帝・小泉、文科省が民間右翼団体と結託して改憲・戦争国家化攻撃の突撃路として推進してきた「つくる会」教科書を決定的に打ち破ったのだ。゛闘えば勝てる! 戦争への道を阻止できる!″という大きな勝利の展望、労働者人民の団結した運動の威力をまざまざと示したのだ。この勝利に続き、全国で「つくる会」教科書を一冊たりとも使わせないために総決起しよう。さらに、八・六広島―八・九長崎反戦反核闘争を爆発させ、小泉とのこの夏最大の決戦として八・一五靖国闘争(午前・公式参拝阻止闘争、午後・集会)に進撃しよう。

 第1章 米帝の戦争政策とサミットの大破産

 杉並、国立、栃木での勝利は、小泉反革命に対する大衆的反撃ののろしだ。
 皇国史観で天皇と天皇制を賛美し、日帝のアジア侵略戦争を「アジア解放の戦争」と開き直り、戦死を「玉砕」と美化する戦争賛美の「つくる会」教科書を、日本人民は闘うアジア人民との連帯をかけて、絶対に阻止しなければならない。右翼ファシスト分子=西尾幹二、藤岡信勝らを打倒し、「つくる会」教科書の息の根を止めるまで、全国で徹底的に闘い抜こうではないか。
 帝国主義の危機はいよいよ激化している。帝国主義間争闘戦が爆発的に拡大しそれが市場再分割戦争、侵略戦争に転化する段階にはっきりと入った。まさに一九三〇年代をも超える世界史的な革命的情勢の到来であり、その情勢に対応した「革命党の三大義務」の遂行を待ったなしに要請される「戦争と革命の時代」に突入したのである。
 ジェノバ・サミットを見よ。各国帝国主義とりわけアメリカ帝国主義が露骨に自国の国益最優先の一方的外交、単独決定主義を押し通し、サミットは求心力を失い、完全に破産した。
 超大国としてこれまで全体を牽引(けんいん)してきた米帝が最もサミット破壊的に振る舞い、ブッシュは「私の仕事は米国を代表することだ。米国を繁栄に導くことを行う」となりふり構わず、むき出しの国益第一主義で臨んだ。
 サミット前に米帝は、京都議定書(COなど温室効果ガスの削減を各国に義務づける帝国主義的環境政策)の発効に対して、「米帝経済に重大な損失をもたらす」と離脱を表明、サミットの場でもこれを押し通した。このため共同宣言でも「意見の不一致」を明記せざるを得なかった。日帝もまた「米抜き発効になれば、日本企業は(削減コストの上乗せで)競争に負ける」という争闘戦的危機感から、米抜き発効に反対した。
 さらに米帝ブッシュ政権は、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約や、包括的核実験禁止条約(CTBT)からも一方的に離脱を表明し、新たなミサイル防衛構想と核戦争体制を強めようとしている。このためサミットでは、軍縮・安保問題について合意がまったくできない異例の展開となった。
 そればかりではない。米帝バブル経済の崩壊、日帝経済危機の泥沼化を引き金に、二九年型世界大恐慌過程への突入がいよいよ明らかになっているにもかかわらず、サミットはこれへの対応策を何一つ打ち出すことができなかったのだ。
 このようにジェノバ・サミットでは、米帝を先頭に各国帝国主義が自国の利益をむき出しにして帝国主義間争闘戦、市場再分割戦、侵略戦争−世界戦争に突き進む以外にないことが、ますますはっきりした。
 このジェノバ・サミット、帝国主義強盗どもの会議に対して、世界と欧州の労働者人民の怒りが大爆発した。二十万人が抗議デモを行い、警察・軍隊と衝突し、激しい市街戦となり一人の青年が射殺された。デモ隊はサミット会場の手前二百bまで接近した。
 こうした人民の闘いが帝国主義首脳どもを震え上がらせジェノバ・サミットを破産に追い込んだのだ。確かに労働者人民の闘いは、「反グローバリズム」という表現に見られるような、雑多で混濁した性格のものだが、しかし根底に反帝国主義、反植民地主義を指向する中身をもっている。帝国主義の戦争と植民地主義に反対して立ち上がる全世界の労働者人民、被抑圧人民と連帯し、反帝国主義・反スターリン主義世界革命の勝利、日帝・小泉政権打倒へ闘おう。

 第2章 中国・朝鮮人民の抗議に敵対の小泉

 小泉反革命と真正面から対決する当面の重要な闘いは、八・六広島、八・九長崎反戦反核闘争だ。小泉の来広、来崎を阻止し、被爆者、在日アジア人民と連帯して、改憲・戦争国家化を打ち破る闘いの爆発をかちとろう。そして、今夏最大の決戦として、八・一五靖国闘争に決起しよう。
 中国と韓国の外相が小泉の靖国公式参拝中止を強く申し入れたことに対して、小泉は、「総理大臣小泉純一郎として参拝する。日本国民として、日本国総理として当然の行為だ」と、挑戦的に参拝強行を宣言した。中国、朝鮮やアジアの抗議を無視し、中国、朝鮮に対するものすごい排外主義をあおっている。
 靖国神社とは、東条英機ら十四人のA級戦犯を含む日帝の戦争の死者を「英霊」「軍神」として祭る、戦争のための神社だ。侵略戦争に国民を総動員していくための動員機関であり、徹頭徹尾アジア侵略の血にまみれた存在だ。この靖国神社に首相が参拝することは、何を意味するか。それは、日帝が過去に行った朝鮮・中国・アジア侵略戦争、対米英戦争のすべてを「正義の戦争」「聖戦」「国家の存亡をかけた戦争」として肯定し、これから再びアジア侵略戦争をやる、国民は天皇と国家のために死ねという宣言以外の何ものでもない。
 小泉は「戦没者に心からの感謝で参拝したい」というが、あの日清、日露以来の戦争、中国への十五年侵略戦争、アジア全域に侵略し米英帝国主義と戦ったアジア太平洋戦争とは、いったい何だったのか。「国を守る」とか「アジア解放の聖戦」などと称して、中国・朝鮮・アジア人民二千万人以上を虐殺し、強盗、略奪、放火、女性への暴行などをほしいままにし、アジアをじゅうりんし尽くしたのだ。その悪行の限りを尽くしたのが「皇軍=天皇の軍隊」だった。「国のため」と言って、実は帝国主義ブルジョアジーのための戦争が行われ、日本の労働者人民もその戦争に駆り出され殺されたのだ。
 こうして二十世紀前半の半世紀もの間、アジアに戦争の猛威をふるった日本帝国主義は、敗戦後もアジア人民とアジア諸国に何ひとつ国家として謝罪せず、戦争と植民地支配の責任をとらず、一切の戦後賠償を拒否して今日まできたのである。そして「驚異的な戦後復興」「経済大国」などと開き直り、大国主義と民族差別をあおってきたのだ。
 小泉の靖国公式参拝とは、こうした日帝の血にまみれた戦争と戦後の歴史の一切を正当化し、開き直るものであり、アジア再侵略戦争のための決定的な攻撃なのだ。
 二十一世紀最初の「八・一五」を、小泉の靖国参拝を断固粉砕し、日帝の改憲と戦争を絶対に許さず、戦争の元凶=日本帝国主義打倒に向かって労働者階級人民が総決起する闘いの日としよう。中国・朝鮮・アジア人民の根底からの怒りと決起に連帯して八・一五闘争を闘おう。

 第3章 大失業・戦争と闘う労働者の総決起へ

 小泉政権の改憲・戦争国家化、そして「聖域なき構造改革」路線と全面的に対決し、戦争・大失業攻撃と闘う労働者階級の闘いを全力で切り開こう。
 われわれが直面している情勢は超重大だ。米帝ブッシュ政権は中国・朝鮮侵略戦争を実際に発動し、さらには世界戦争、核戦争に訴えようとしている。
 ラムズフェルド国防長官は六月二十一日、米上院軍事委員会で証言し、これまでの「二正面戦略」からの転換を表明する中で、「米国に死活的な国益を脅かす敵に圧勝するための能力の確保」を打ち出した。これは世界大恐慌と大不況への突入の中で、恐るべき軍事戦略への転換だ。米帝は中国を「敵」とみなして本気になって戦争の準備に突入したのだ。
 米帝はアジアで「敵に圧勝する」戦争を起こすことで中国・北朝鮮の残存スターリン主義を転覆し、対日争闘戦に勝利し、アジアの独占的な支配を固めること、また世界戦争に訴えても米帝が生き残ることを、米帝世界戦略の中心に据えきったのだ。
 この米帝に対して日帝は米戦略への協力(日米安保の堅持)という形式をとりつつ、日帝独自の侵略戦争政策を追求し、戦争国家への転換をもって米帝の対日争闘戦に全力で対応しようとしている。改憲・戦争国家化を本気で狙っているのだ。
 九条改憲と「集団的自衛権」行使、PKO五原則の見直し(PKF=国連平和維持軍本体業務への参加と、武器使用の条件緩和)、有事立法、日米共同演習と自衛隊の実戦訓練の強化、「防災訓練」と称する治安出動訓練などの戦争準備が音を立てて進んでいるのだ。
 この戦争国家化攻撃と一体のものとして小泉は、労働組合を破壊し、戦後的諸権利をはく奪し、金融独占資本(大銀行と大企業)の救済のために、一切の犠牲を労働者人民に押しつける「構造改革」攻撃を決定的に強めている。「不良債権の強制処理」は、それが本当に強行されるならば、中小企業など二十万〜三十万社の倒産、新たに二百万〜三百万人の大失業であり、経済的破局と未曽有(みぞう)の政治危機であり、結局はインフレ政策と経済の軍事化、戦争以外にない。失業した労働者は「競争の敗者」であり、ほったらかして、野垂れ死にしろというのが、小泉と竹中(経済財政担当相)の「構造改革」攻撃なのだ。
 われわれは、このような小泉政権の戦争と大失業、戦争国家化攻撃と真正面から対決する革命的大衆行動、改憲阻止闘争の巨大な大衆的爆発と、戦闘的・階級的労働運動の前進を全力でつくり出さなくてはならない。国鉄決戦を軸にあらゆる産別での闘いを強め、十一月労働者集会の大結集へ闘い抜こう。
 「二度と戦争を繰り返さない」という戦後の労働者人民の反戦の誓いは、まさに今、この小泉反革命との闘いの中でこそ、真価が問われているのだ。小泉「改革」の一つひとつが戦後体制を右側から破壊し、侵略戦争のための国家総動員態勢をつくる攻撃なのだ。これに全力で反撃し、労働者人民の巨大な反戦闘争を組織していくことこそ、「連帯し侵略を内乱へ」の闘いの前進なのだ。

 レーニン主義の党と運動を

 この闘いを、レーニン主義的な党と運動、革命的大衆行動の創造の闘いとして全力でやりぬこう。
 「いま問題となっているのは、すべての社会主義者の最も議論の余地のない、最も基本的な義務、すなわち、@革命的情勢が現存することを大衆に明らかにし、この情勢の広さと深さを説明し、プロレタリアートの革命的自覚と革命的決意を呼びさまし、Aプロレタリアートを助けて革命的行動にうつらせ、Bこういう方向に向かって活動するために革命的情勢に応ずる組織をつくり出すという義務である」「今日の諸政党が自分のこの義務を履行しないのは、それらの党の裏切りであり、政治的な死であり、自分の役割の放棄であり、ブルジョアジーの側に寝返ることである」(レーニン『第二インターナショナルの崩壊』、@ABの丸数字は引用者)
 今こそ革命的祖国敗北主義の貫徹の立場から、「労働者の中へ、大衆の中へ」の闘いを進めることが死活的に問われている。職場で街頭で、学園で、小泉の反革命的正体を暴ききり、自分自身の燃え上がる怒りと危機感を労働者大衆に直接ぶつけていくことだ。「小泉改革は戦争と大失業の道だ。小泉にだまされるな」「小泉自民党打倒に立ち上がれ」と訴えて、闘う仲間を増やし戦列を拡大していこう。
 帝国主義(資本主義)の基本矛盾の爆発の問題や、資本主義のもとではもはや労働者人民の生きる道はないこと、階級的団結とプロレタリア革命の問題を真正面から訴えて、労働者大衆の魂をつかむ宣伝・扇動の闘いを繰り広げよう。
 都議選の敗北を、思想問題すなわち革命的祖国敗北主義の不貫徹の問題として、言い換えれば「第二インターの崩壊」的な危機の問題として厳しく総括を深め、今こそレーニン主義の党として思いっきり自己変革し、闘い抜こう。
 労働者階級・人民大衆の中に無数の党細胞を建設しよう。『前進』拡大闘争を武器に、党勢二倍化に向かって目的意識的・計画的に闘いを進めよう。
 水嶋秀樹同志、M同志に対するむちゃくちゃなデッチあげ起訴、転向強要攻撃を絶対に粉砕しよう。日帝・小泉の治安弾圧攻撃、革共同解体攻撃の激化を許すな。権力との死活をかけた攻防戦の勝利をとおして、真に革命に勝利する革命党が鍛え抜かれていくのだ。
 爆取弾圧の四同志、無期刑の星野文昭同志を始め、不屈に闘い抜く全獄中同志の奪還を、全党の力でやり抜こう。
 レーニン主義的前衛党の強固な建設をかけて、夏期一時金カンパ闘争、財政闘争の勝利をかちとろう。

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週刊『前進』(2016号1面2)

「つくる会」教科書 

 杉並  区民の力が採択阻む
 栃木 全国的反撃で決定覆す

 「やったぞ!」「扶桑社の教科書は不採択!」。七月二十五日午後二時過ぎ、杉並区役所六階の教育委員会室のまわりの廊下で、歓声と拍手がわき起こった。「不採択勝利!」と大書した紙を広げた市民団体の人びとの笑顔が輝く。
 杉並区教委の教科書採択審議が行われた二十四、二十五日の二日間の闘いは、息づまるような高揚と緊張の連続だった。二十四日の昼には、教職員組合や区職労の労働者、市民団体、在日朝鮮人ら五百五十人余が区役所前に集まり、゛人間の鎖″で区役所を完全包囲した。
 午後三時からの教育委員会では、小学校用教科書の審議が行われ、現場を知らないまったく無責任な審議に憤激の声が上がった。
 二十五日は朝十時から中学校教科書の審議が行われた。歴史教科書の審議では、昨年十一月に山田区長が差し替えた委員の一人、宮坂公夫は「扶桑社の教科書が最良のもの」と発言した。大蔵雄之助は、現在杉並で使われている日本書籍の教科書を「一揆(いっき)の記述が多すぎる。偏りがある」と攻撃。他方、二人の委員が「(扶桑社は)公正な記述でない」「中学生には難しい。扶桑社以外のものを」と発言。約一時間の審議を経て、丸田委員長が「帝国書院に」とまとめた。
 昼休み後、公民教科書の審議に入った。大蔵は日本書籍・教育出版の自衛隊、戦後補償に関する記述を攻撃、宮坂は「扶桑社が最良」と発言。他の委員が扶桑社に否定的意見を述べ、約三十分の審議を経て、丸田委員長が「東京書籍ですね」とまとめた。
 その後、残る十一教科の教科書の審議をたった三十分ほどで終え、全教科の採択教科書が確定した。
 最大の焦点となってきた東京・杉並で、ついに「つくる会」教科書の採択が阻止されたのだ。昨年十一月以来の闘い、とりわけ四月三日の検定合格以来百十六日間の闘いがかちとった勝利だ。区教委には「つくる会」教科書に反対する数百の請願が提出され、市民団体から一万二千筆を超える署名が提出された。区役所前では連日座り込みが行われた。地域住民と労働者、そして在日アジア人民、アジア人民との共同の闘いが勝利を切り開いた。
 しかし他方で、採択制度そのものの問題性も完全に浮き彫りになった。大蔵は区内の教師が寄せたアンケートを「偏見がある」と攻撃した。現場教師の声を完全無視してまったく勝手に決めていく採択制度を絶対に許してはならない。
 また大蔵、宮坂だけでなく他の委員も、日本書籍の教科書を「平和主義で意図的な編集」「反権力的表現が多い」と攻撃した。他社が日本軍軍隊慰安婦問題をほとんど抹殺した中で、唯一記述を残した日本書籍を排除することが、もう一つの狙いだったのだ。
 採択結果を受けて、ある区民は「いろんな人たちが集まって一つの大きな力となって、素晴らしい勝利をかちとることができました。でも闘いは続きます。日本の国民がこれから二つに分かれてぶつかっていく、そういう時代が来ていると感じます。『つくる会』教科書絶版まで、闘い続けます。教育委員会に教科書を採択させてはなりません。誇りを持って歩み続けます」と語った。
 また、七月十一日に公立校で初めて「つくる会」歴史教科書採択を決めた栃木県下都賀(しもつが)地区教科書採択協議会は、二十五日に再度協議会を開催し、十一日の決定を白紙に戻して、「中学用歴史は東京書籍」と決めた。労組、市民団体、在日の人びとなどの必死の闘いが、決定を覆して大きな勝利をかちとったのだ。

 国立でも阻止

 二十四日には、東京・国立市で「つくる会」教科書採択が阻止された。国立では右翼が「つくる会」教科書を推す展示会場アンケートを大量に寄せたが、これに対してただちに署名運動が取り組まれ、二十四日までの十日間で、九千筆を超える署名が集まった。
 二十四日は、午後一時から市役所で゛人間の鎖″を行った。右翼の妨害を打ち破って二百人あまりの労働者、市民が闘いぬいた。
 午後二時からの教育委員会には傍聴希望が殺到し、市教委が急きょ会場を変更、約百二十人が傍聴する中、歴史・公民とも「つくる会」教科書を阻んだ。
 さらに兵庫県宝塚市でも二十五日、市教委の反動を打ち破り、採択が阻止された。全国で採択が続々行われているが、「つくる会」教科書を採択した地区は一つもない。杉並、国立、栃木の勝利を全国に押し広げ、すべての地区で採択を阻もう。

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週刊『前進』(2016号1面3)

戦争への道に舵きる小泉打倒へカンパを

 革共同に注目し、期待し、ともに闘う仲間の皆さん!
 小泉反革命と対決し、闘うためにあらゆる力を集中して下さい。党と運動に今とりわけ必要なのは、財政力です。
 仲間の皆さんのカンパは、革共同に託された期待と信頼の糧として、大中小どんな額でも必ず大切に使わせていただきます。
 小泉政権は、登場した直後から「新しい日本」「聖域なき構造改革」を掲げて戦後的な階級関係や社会関係、国際関係を破壊し、改憲とアジア再侵略戦争を宣言し、「戦争のできる国家」への大改造に突進しています。
 戦争と大失業を真正面から押し出し、痛みを強制する小泉反革命との闘いは、かつて経験したことのない大決戦です。これからの人生をかけて、子どもたちの未来をかけて、そして闘うアジア人民への血債をかけて、小泉反革命に負けるわけにはいきません。
 皆さん! 今までの枠を思い切って破った、大胆な熱いカンパを寄せられるよう、切にお願いします。
 七月ジェノバ・サミットは、激闘の「熱い夏」となりました。
 世界中から結集したNGOなど二十万人の抗議行動が帝国主義国首脳たちの「強盗会議」を包囲しました。敵は昨年の沖縄サミット警備から学んでジェノバを戒厳状態にし、デモ隊の一人を小銃の狙い撃ちで殺害し、数百人のケガ人、数百人の逮捕者を出しています。
 ジェノバ・サミットは激しい抗議のデモに包囲され、アメリカのミサイル防衛構想や京都議定書での対立、経済政策などでの米欧日の帝国主義列強の鋭い対立を鮮明にしました。
 七月二十三日の東京株式市場は、サミット経済宣言への不信と絶望、景気先行き不安感を一層強め、バブル崩壊後の最安値に暴落しています。
 サミット前にローマで開催された外相会合と日米外相会談、テレビ取材などで田中外相は、小泉政権の反革命的突出を国内外に宣言しています。
 田中外相は、@アメリカのミサイル防衛構想「支持」、A京都議定書に反対するアメリカの参加なしには「議定書批准はありえない」の表明、B憲法九条問題で政府の議論を開始し、「最後には国民投票になる」「ようやくここまできた」と言明しています。
 ブッシュ政権のミサイル防衛構想とは、中国敵視と帝国主義間争闘戦の大規模な世界戦争を想定した戦略構想です。それはまた、沖縄米軍基地の質的量的な強化、沖縄の犠牲と日本の協力なしには実現しない構想です。
 小泉反革命と対決する闘いのために、苦しい生活の中ですが、ぜひ絶大なカンパを寄せて下さい。私たち革共同は、皆さんの信頼と期待にこたえ、改憲と戦争、大失業の小泉政権打倒の先頭に立ちます。ご支援をお願いします。

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週刊『前進』(2016号2面1)

保守部門の全面外注化=第二の分割民営化阻止へ
 小泉改革粉砕の最前線で闘おう 国労本部の屈服許さずストを

 今、JR東日本において、国労組合員の生活と労働条件、権利を職場もろとも奪い去る大攻撃が進行している。保守部門の全面外注化攻撃である。とりわけ保線などの設備部門の全面外注化について、要員削減や職場の統廃合などの具体的な攻撃が各支社から提案され、十月一日実施をめぐって激しい攻防に突入している。今まさに、JR本体の労働者の生死をかけた決戦の時が来たのだ。この闘いは、第二の分割・民営化攻撃―「ニューフロンティア221」の中心的な攻撃との闘いであると同時に、小泉「構造改革」と正面から激突する闘いである。この時に国労本部は、定期全国大会を「九月下旬から十月下旬の間に行う」として具体的な日程も闘いの方針も打ち出さず、資本のえじきとして組合員を差し出し、闘争団―千四十七人闘争の切り捨て、国労の自己解体の道を突き進んでいるのだ。断じて許すことはできない。以下、「ニューフロンティア21」―全面外注化攻撃を暴露・弾劾し、闘いへの総決起を訴える。

 「必要な効率化」とJR東労組が推進

 六月十三日、JR東労組が「設備部門におけるメンテナンス体制の再構築」について裏切り妥結した。三月三十日の「グループ会社と一体となった業務体制の構築」(運輸車両関係)の妥結に続く大裏切りである。昨年九月に会社側から提案された保守部門の全面外注化について、ほぼそのまま丸のみしたのだ。
 それぞれ本社―本部間での妥結を受けて、支社段階での攻防に移っている。
 @まず設備部門について。これは、設備部門(保線・土木・建築・機械・電力・信号通信)においては「JRは設備管理に関する技術集団、パートナー会社は施工に関する技術集団に専門特化」するというもので、JRが直属で行うのは企画、計画、管理業務だけで、実際の作業は全面的に外注化される。例えば、保線のMTT(マルタイ)などの機械による軌道補修作業も外注化される。保線区、電力区、信通区などは廃止し、「技術センター」に集約される。
 要員は、JRから三千人の労働者を削減し、うち二千人を「出向」に出し、千人を「余力」とする。現在一万三百人を七千人にするという大合理化だ。「出向」に出された労働者は、戻る職場がない。三年の出向期間終了後には「転籍」も狙われている。そうなれば、賃金や労働条件が一気に切り下げられるのだ。「余力」とされた労働者は、「人材活用センター」的な職場に送り込まれることも想定されている。
 七月四日の千葉支社の提案では、保線関係で現在の四百十一人から二百三十人を削減して百八十一人にするなど、全体で三百人の削減である。
 もともと設備部門の外注化攻撃は、数年前から資本と東労組の間で「国労対策を考えた外注化」として検討されてきたもので、国労組合員の多い保線などの職場を狙い撃ちにした攻撃である。千四十七人闘争の解体と一体の国労解体攻撃そのものなのだ。
 現場からは外注化攻撃に対してストライキで闘おうという声が上がっている。この要求をふみにじってきた国労本部やエリア、地方の執行部に対する怒りが渦巻いている。具体的な提案が明らかになるにつれ、怒りはさらに高まっている。今こそ国労の底力を発揮して立ち上がる時なのだ。
 A次に運輸車両関係の外注化とは、車両検修(検査・修繕)業務と構内での入れ換え・出入区作業などの業務を全面的に外注化する攻撃である。
 「運転士や車両職のシニア社員のウェイトは高い」ので、この「ノウハウ・資格をもったシニア」の「雇用の場を確保するため」と称して、検修・構内業務を外注化し、「シニア雇用制度」によって定年退職後のベテラン労働者を月十二〜十四万円の超低賃金で雇うことで、JRとしての人件費を大幅に削り込むことを狙っているのだ。
 実施時期は、シニア社員の規模、グループ会社の受け入れ能力などを見て、四月一日以降、各支社で計画するとしている。
 「必要な効率化は認める」として、「労使協力」で全面外注化を推進したJR東労組は、その狙いをあけすけに語っている。
 『緑の風』六月一日付には、JR東日本グループの二〇〇〇年度決算について「単体では四年ぶりの増収で経常利益、当期利益ともに計画を上回った。……これは人件費の削減効果が大きく反映されたものであり、これまでの額に汗して働いた組合員の『効率化の努力』の成果に他ならない」「とりわけ運車効率化事案については三月三十日に本部・本社間で整理してきたし、設備効率化事案については、現在、最終的な整理の段階に至っている。今後これらの効果も業績に反映される。……これで『ニューフロンティア21』達成のための大きな役割を果たすことができるであろう」と書かれている。
 JR東労組カクマルは、資本の利益を上げるために「効率化」=合理化を進め人件費を削減したことを、憶面もなく自らの成果として押し出し、さらに「ニューフロンティア21」の達成に全力を挙げると言うのだ。なんたることか。このようなファシストどもを打ち倒し、外注化阻止へ全力を挙げて闘わなければならない。
 Bさらに重大なことは、外注化される業務は、鉄道輸送の根幹をなす業務であり、安全のための技術を蓄積してきた職場であるということだ。これらの外注化は安全破壊を一層進めるものだ。山手貨物線の下請け労働者五人の死亡事故、鶴見駅構内での貨物列車の脱線事故などは、関連会社への外注化によって起きた事故だ。まさに労働者の生命のかかった闘いなのだ。

 小泉「構造改革」と一体の大リストラ

 こうした全面外注化攻撃を突破口とする「ニューフロンティア21」は、小泉「構造改革」攻撃と一体のものであり、その最も反革命的な資本攻勢の中身を貫徹しようとするものだ。
 昨年十一月二十九日、JR東日本グループの中期経営構想(二〇〇一〜〇五年度)として「ニューフロンティア21」が発表された。完全民営化をにらんでJR東資本が生き残りをかけて打ち出したものだ。
 五年間で連結子会社を含めた株主資本当期利益率(ROE)を五・八%から一〇%に増やすなどの数値目標を掲げ、JR東日本単体の社員数を一万人削減するとしている。二〇〇一年度初の社員数は七万五千人だが、一万数千人の出向者や退職前提休職者などを除くと鉄道事業の社員数は五万四千人だ。すでにJR発足時の約八万人から二万六千人も削減されている。その上に一万人削減のうち六千人を鉄道事業で削減し、四万八千人体制にするというのだ。この間、次々と削減数が上積みされたように、また現在のNTTや郵政事業などのように、一層の削減が狙われている。
 そこに貫かれている論理は、今、小泉政権が新たに二、三百万人もの失業者を生み出して強行しようとしている「構造改革」の反革命的論理そのものである。
 「ニューフロンティア21」は、「大競争時代に勝ち残り、二十一世紀においてさらなる飛躍を遂げる」ための目標だと位置づけている。「限られた需要をめぐって激しいパイの奪い合い」「冷徹な優勝劣敗の市場原理と自己責任の原則に貫かれた、真の意味での競争社会」などの、弱肉強食の競争原理を押し出した言葉をちりばめ、「株主価値重視経営」に転換するとしている。
 そして、「むすび」では「これらの改革には、当然のことながら多くの困難や痛みをともなうことが予想されます。しかし、我々は、戦後最大の改革といっても過言ではない国鉄改革を乗り越えるなかで、日々変革に挑戦し続けることこそ、将来にわたり企業が生き残り、社員と家族の幸福を実現する唯一の手段であることを学んできた」と言っている。
 「国鉄改革」=第一の国鉄分割・民営化と同様に、労働者に徹底的な「痛み」を強制すると言うのだ。
 ここから「ステーションルネッサンス」と称する「駅空間」を利用した金もうけが事業戦略の第一とされ、鉄道事業は三番目というように、鉄道会社としてのあり方の抜本的転換が打ち出されている。
 その鉄道事業も、「収益力の高い線区への経営資源のシフトを一層推進」するとして、「地域輸送においては……輸送面・メンテナンス面などにおいて大胆なスリム化を図る」「地方ローカル線については、新しい発想で輸送システム全体を抜本的に見直す」などとしている。
 東京圏、新幹線などのもうかる線区が重視され、他の地域、ローカル線の切り捨てが狙われている。東北新幹線八戸開業に伴い、在来の東北線が第三セクター化されるが、他にも第三セクター化などでJR本体から切り離すことがたくらまれている。メンテナンス部門の全面外注化とは、ローカル線をJR本体から切り離そうとしていることの証左である。
 まさに、第二の分割・民営化と言うべき大合理化攻撃である。

 国労・動労千葉解体の攻撃に大反撃を

 「ニューフロンティア21」には、さらに日経連の九五年「新時代の日本的経営」報告から二〇〇一年版労問研報告などで打ち出された、終身雇用の解体―不安定雇用化、年功序列賃金の解体―成果・業績主義賃金への転換などの攻撃が本格的に盛り込まれている。
 「ニューフロンティア21」は、「長期雇用システムを前提としつつも」と言いながら、「人事・賃金制度の見直し、採用区分・ライフサイクルの見直し、雇用形態の多様化など、人事制度全体の再構築を検討」するとしている。
 賃金制度は、JRになっても国鉄時代からの基本給を中心とした枠組みが基本的に維持されてきたが、ついにこれを全面的に解体しようとしている。
 人事制度も「選択肢の多様化」「雇用形態の多様化」の名のもとに、不安定雇用化しようとしている。
 だがJR東労組は、「組織*労働生活ビジョン21」で、これらを積極的に推進することを方針化した。
 また重大なのは、全面外注化と一体の「シニア雇用制度」について、「年金支給年齢の改正を踏まえ、シニア層にグループ会社などにおける就業機会を提供し、同時にグループ全体としてシニア層の持つ貴重なノウハウを最大限有効に活用できる体制を構築する」と位置づけていることだ。
 これは、年金制度の改悪を徹底して悪用したものだ。定年延長を拒否した上で、六十歳以上の労働者を超低賃金で関連会社に再雇用する。JR東は、その「機会を提供」するだけで、試験による新規雇用にすることで、JR東には何の責任もないというものだ。しかも、協定を結ばない組合の労働者には、再雇用先の紹介すらしないのだ。この種の制度では最も悪らつな制度である。
 以上のように、「ニューフロンティア21」は、二九年型世界恐慌への突入情勢と日帝の帝国主義間争闘戦での敗勢という中で、大資本の生き残りをかけた攻撃である小泉「構造改革」の内容をそのまま、あるいは先取りする形で強行するものだ。労働者階級に首切り―大失業を強制するだけでなく、低賃金・無権利の不安定雇用化を促進し、さらに社会保障を解体して高齢者をも低賃金労働力として活用し、資本のあくなき搾取と収奪を貫こうとするものなのだ。
 さらに小泉の「構造改革」は、労働組合を解体し、労働者階級の抵抗を徹底的にたたきつぶす以外に貫徹できない。中曽根は、『新潮45』七月号のインタビュー「誰が『小泉改革』を阻んでいるのか」で、あらためて国鉄分割・民営化は゛国労をつぶすためにやった″と強調している。中曽根は、小泉に対して゛このように改革をやれ″と言っているのだ。
 だからこそ、小泉とJR資本は、闘う闘争団を先頭とする千四十七人闘争を解体し、さらには国労のJR本体、動労千葉をも解体しようと全力を挙げているのである。
 国鉄闘争は、これと全面的に対決していくことによって、小泉反革命と対決する拠点としてそびえ立ち、ますます発展するのだ。
 職場の団結を打ち固めて反撃するなら、全面外注化など、必ずうち破れる。動労千葉は今春の百二十時間ストを打ち抜いた団結の力で闘いぬいている。
 ところが、こうした時に国労本部−チャレンジ・革同一派は、権力や資本の手先となって闘争団を切り捨て、国労を自己解体へと導こうとしているのだ。全面外注化と対決するためにも、高嶋−寺内執行部を引き降ろさなければならない。国労定期全国大会に向けて、四党合意に基づく「ゼロ回答」粉砕とともに、JR本体の闘いを柱に据えて断固として闘おう。

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週刊『前進』(2016号2面2)

広教組 広高教組 懲戒処分の撤回を求め人事委に申し立て

 「日の丸・君が代」強制に反対し、卒・入学式で着席したことを口実として懲戒処分(戒告)された広教組・広高教組の七十七人の組合員が、七月二日、処分撤回を求めて人事委員会に不服申し立てを行った。
 記者会見では、被処分者と両教組の委員長・書記長、弁護人が、@処分の根拠となった「日の丸・君が代」強制の職務命令は憲法と教育基本法に違反し、「言論・表現の自由」「良心の自由」を侵すものであること、そればかりでなく、今展開されている教科書攻撃と同じ根をもつ、侵略されたアジア諸民族に対する攻撃であること、A「学習指導要領の法的拘束力」と「地方公務員法」による「職務専念義務違反・信用失墜行為」を理由とする処分は、辰野教育長の恣意(しい)的判断に基づくものであり、不当かつ選別的でデタラメであること、B処分の真の目的は、広教組・広高教組つぶしを狙って組合内部に分断と対立を持ち込むものであり、「不適格教員の免職・排除」にあることを暴露し、白紙撤回を求めて闘いぬくことを宣言した。
 処分撤回闘争は、広島の教育現場に荒廃をもたらした文部科学省と辰野教育長を弾劾し、その全責任を問うものである。
 七月七日、辰野は゛文部省是正指導三年間の破産と敗北″に追い立てられるように教育長を退職し、文部科学省へ帰任した。辰野は、再び教育を戦争の道具につくりかえようとした国家意志を受けて、ヒロシマ教育(平和教育、解放教育など)の根幹を解体し、両教組の組織破壊攻撃を繰り返してきた。組合との交渉に一切応じず、窓口も閉ざし、授業料を納められない子どもたちに「出席停止」を発動した。「日の丸・君が代」を強制し、組合年休(いわゆる「破り年休」)の破棄と大量処分−返還請求を行い、報復広域人事異動の強行と広同教など教育研究組織の解体−御用組合への再編をもくろむファッショ的手法で攻撃を繰り返してきた。この大罪を絶対に許すことはできない。
 処分撤回闘争は、「辰野教育長の業績を継承し、厳格に遂行する」とうそぶく「辰野以上の辰野」と言うべき後任の常盤豊教育長を迎えて、新たな局面に突入している。
 広教組・広高教組の仲間は「再び戦争を繰り返すな!」「再び教え子を戦場に送るな!」の原点的階級的決起をバネに仁王立ちして闘い、支援連帯に立った労働者人民も心を一つにして両教組を守りきった。
 両教組の代表と被処分者は、この攻撃で逆に組合的団結を強化すると宣言している。不服申し立ては、小泉反革命のもとで戦争国家化攻撃を進める国家権力に対する戦闘宣言であり、全国の労働者人民への熱い連帯と決意の表明である。
 処分撤回闘争の全国的支援共闘陣形を強化し、戦争国家化阻止、教育大改悪−改憲攻撃粉砕の革命的大衆行動の爆発で処分撤回をかちとろう。
 八・六ヒロシマ大行動−八・一五靖国公式参拝阻止闘争を頂点に、今夏−今秋闘争の爆発で処分撤回をかちとろう。
(投稿・広島 H)

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週刊『前進』(2016号2面3)

資本攻勢&労働日誌 7月6日〜19日
 ●財界が有期雇用拡大要求
 ●電機連合、技能職切り捨て
 ●じん肺で国の責任初認定
 NTT労組 10万人削減受け入れへ

●6日 日経連は、政府の総合規制改革会議のヒアリングで雇用の規制緩和を主張。(要旨別掲)
◇坂口労相は閣議に2001年度版の「労働経済白書」(昨年までは「労働白書」と通称)を報告した。IT化の雇用における影響を特集している。
●7日 総務省・郵政事業庁は、郵政3事業に携わる約30万人の労働者のうち約2万人を今後5年間で削減するリストラ案を固め、労働組合と交渉に入った。(朝日)
●10日 NTT労組は、約10万人を新設子会社に転籍・出向させる合理化策を大筋で受け入れる方針を固めた。東西両社の約6万人と両社の子会社の約4万人を転籍・出向させ、転籍者の賃金を15%−30%カットする。
◇採用時に年齢制限をしないよう企業に努力義務を課す改正雇用対策法が10月から施行されるのに先立ち、厚労省は適用例外の10項目の指針をまとめた。「定年まで働ける年数が短い」や「年功賃金なので賃金が割高になる」などの例外事由が盛り込まれた。この2つは事業主側の主張を最後になって採り入れたもので、同法を実質的に骨抜きにするもの。
●11日 私鉄総連は12日まで大会を開いた。「連合への加盟単位一本化」(四産別の合同)案は、無記名一票投票の結果、反対多数で否決された。
●12日 東京商工会議所は、厚労省に対して、有期雇用契約や派遣労働、裁量労働にかかわる規制見直しだけでなく、産別最賃の廃止や、整理解雇の四要件の撤回までも主張した。(要旨別掲)
●16日 電機連合は17日まで定期大会を開き、春闘の統一要求基準(産別スト対象)を、これまでの高卒技能職に加え、大卒事務・技術職(事技職)にも設定する方針を決めた。要求設定で大卒事技職か、高卒技能職のいずれにするかは、各単組の「エントリー方式」となることから、事実上、技能職労働者を切り捨てるもの。
●17日 厚労省は、民間企業における今春闘の賃上げ妥結状況を発表した。妥結額は組合員の加重平均で6328円(2.01%)。昨年の6499円(2.06%)を額で171円、率で0.05ポイント下回った。これで春闘の統計が出そろったことになる。
◇帝国データバンクによると、昨年4月施行の民事再生法の適用申請数がそごうなどを含め、今年6月末時点で1000社に達した。
●19日 福岡県筑豊地方の炭鉱で働き、じん肺になった原告患者が国と企業に損害賠償を求めた「筑豊じん肺訴訟」で、福岡高裁はじん肺訴訟で初めて国の責任を認めるとともに、三井鉱山らの企業に対しても損害賠償の時効を認めない画期的な判決を下した。
◇日本労働弁護団は、小泉首相に「解雇規制と有期雇用・派遣に関する申し入れ」を行った。

 日経連と東京商工会議所の提言要旨

●日経連の「意見」
・有期労働契約期限を1年と定めた労基法14条の削減(契約期間についての労基法上の期限をなくし、民法の規定をそのまま適用すべき)
・削減でいないなら、1年を5年に
・人材派遣の制限の全面見直し
・解雇規制強化の立法化に反対
●東京商工会議所の「要望」
・有期雇用契約期間の5年への延長
・新裁量労働制の運用の弾力化
・産業別最低賃金制度の廃止
・「整理解雇4要件」の規制緩和するルールづくり(”存亡の危機にこうした制約を課すことは、わが国企業の活力をさらに低下低下させる”)
・労働者派遣法の期間1年の撤廃

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週刊『前進』(2016号2面4)

参院選終盤 “沖縄を犠牲にするな” 大田氏、新宿・荻窪で訴え

 参院選比例区に立候補したオータ昌秀候補(前沖縄県知事)は、沖縄県庁前広場の出馬第一声に続き、全国で精力的に訴えてきた。終盤戦の七月二十三日には東京の新宿駅東口と荻窪駅北口で街頭宣伝を行い、沖縄から国政に打って出る力強い意志表示を行った。
 二十三日夕刻、風もなくうだるような暑さの新宿駅東口、オータ候補の街頭演説会が沖縄県人会有志によるエイサーで始まった。沖縄から駆けつけた桑江テル子さんと海勢頭豊さんが登壇、海勢頭さんのギターと歌が響く。
 評論家の佐高信さんらの応援演説に続いて、オータ候補がマイクを握った。
 「私は二期八年県知事として、沖縄が抱えている問題、これは日本の問題だと考えてきましたが、基地問題を始め県内だけでは解決できないということを思い知らされました」と口火を切ったオータ候補は、精力的に沖縄問題とは何であるのかを訴えかけた。
 「皆さん、小泉政権は『聖域なき財政改革』と言っていますが、しかし現に沖縄の軍事問題などは文字どおりの聖域にしている。皆さんの税金で新しく一兆円もかかる軍事基地を沖縄に造ろうとしている」と、小泉政権の沖縄圧殺政策の最たるものである名護新基地建設を弾劾した。
 続いて午後六時半から行われた杉並・荻窪駅北口の街頭演説会では、さらに沖縄が抱える問題の深刻さを掘り下げて訴えた。
 九五年九月の米兵による少女暴行事件以来の沖縄基地返還要求に触れ、「私が沖縄の米軍基地を減らしてほしいと言うと、日本政府もアメリカ政府も基地がなくなったら沖縄の経済は破綻(はたん)するとたえず言う。もしも基地の存在が地域経済に寄与するとすれば、沖縄は日本でも一、二を争うぐらい経済的に繁栄してしかるべきだ。ところが沖縄は全国で一番貧しい。一人当たりの県民所得は都民の半分以下、しかも失業率は全国平均の二倍以上。とりわけ十代から二十代前半の若者たちの失業率は二〇%以上で、そのために暴走行為を起こして自殺する十代の若者たちが全国平均の三倍もいる。これが沖縄の現実だ」と説いた。
 最後に「このまま黙っていたら、永久に沖縄は犠牲にされ続けるという恐れがある。沖縄のため、いや日本を変えていく」。この確信に満ちた演説に大きな拍手、指笛、歓声が起きた。
 荻窪駅北口バスターミナル一帯は、在本土沖縄出身者を始め多数の聴衆が詰めかけた。オータ候補登場に先立って荻窪駅北口では、都政を革新する会の長谷川英憲代表、結柴誠一前区議、新城節子区議を先頭に街頭宣伝を展開し、またも沖縄で起こった米兵の放火事件を弾劾し、オータ候補と東京選挙区の新垣しげお候補への支持を訴えた。

 新垣氏が奮闘 新橋駅で演説

 東京選挙区の新垣しげお候補(沖縄社会大衆党書記長)が、猛暑の東京を駆けめぐって奮闘した。
 七月十九日、米兵の女性暴行事件で外務省に抗議行動の後、新橋駅SL広場で街頭演説会が開かれた。
 演説会は新垣氏の八重山民謡演奏で始まり、島袋宗康社大党委員長、フリーライターの安里英子さん、日本基督教団の小田原紀雄さんなどが応援演説。
 新垣氏は「事件・事故は沖縄で発生するが、その原因は東京にある。だから東京で闘う。小泉内閣を真っ向から批判して闘う」と高らかに宣言し、集まった聴衆から大歓声が上がった。

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週刊『前進』(2016号3面1)

改憲・戦争国家化と大失業 小泉反革命と徹底対決せよ 4
 『痛み伴う構造改革』の正体 新たに200〜300万人が失業

 小泉改革で「景気回復」どころか恐慌の再激化が不可避

 小泉首相は「構造改革なくして景気回復なし」と叫び、「構造改革」によって景気が良くなるかのように言って、幻想をあおり、「小泉人気」をつくり出してきた。だが、小泉の「聖域なき構造改革」は、労働者人民大衆に犠牲をすべて押しつけて金融独占資本(大銀行と大企業)を救済するものであり、「痛みに耐えろ」と、労働者にリストラと大失業、賃下げ、福祉切り捨てと大増税を強制する以外の何ものでもない。
 まず第一に、小泉の「構造改革」で景気は良くなるどころか、九七年以来の日帝の経済危機、恐慌をいよいよ深刻なものとして再激化させる。
 政府が六月二十六日に閣議決定した経済財政諮問会議の答申「経済財政・構造改革の基本方針」は「構造改革」の柱として「不良債権問題を二−三年以内に解決することを目指す」としている。だが不良債権は「基本方針」自身が認めているように「経済の停滞にともなって新規に発生するもの」であり、景気が悪くなればなるほど次から次に増えていくものである。
 これまでも毎年四兆円規模で不良債権の最終処理を行ってきたが、不良債権は増え続けてきており、金融庁の発表でも四十八兆円、予備軍を含めれば百五十一兆円に上っている。しかもこれまで最終処理されてきたものは小口が中心であり、熊谷組、間組、飛島建設などのゼネコンと、ダイエー、セゾングループなどの流通関連の不良債権にはまだまったく手がついていない。
 日帝経済は昨年夏以来の株価の下落に示されているように、再び急速な下落局面に突入している。不良債権の処理はこうした中で恐慌を一気に深刻化させる引き金になる。多くの中小企業が倒産に追い込まれることは必至なのだ。このまま行けばいつ金融恐慌が爆発するかわからないという瀬戸際に立っているのである。
 銀行はゼネコンや流通などの大手に対しては貸し倒れ引当金を積み増して不良債権処理としてきた。だが、それは結局その企業の倒産を避けるために追加融資が行われたりして不良債権は増え続ける結果になってきた。しかし、そうした不良債権の“本丸゜には、実際にはまったく手をつけようとしていない。
 竹中平蔵経済財政担当相は、「マイナス成長は続けない」としているが、これはまったくのウソだ。今後、不良債権のごく一部、十二−十三兆円規模の処理を行っただけで、中小企業などの連鎖倒産が二十万社から三十万社に上ると予測されている。膨大な労働者が失業に追いやられる。これによっても景気は一層悪化していくことは不可避である。
 日帝経済はこの間、一段と景気落ち込みの速度を速めている。日経平均株価はバブル後最安値を割り、七月二十三日の終値で一万一六〇九円となった。一−三月期のGDP(国内成長率)は前期比〇・六%(実質ではマイナス〇・二%)と落ち込んでいる。鉱工業生産も五月は前月比でマイナス一・二%、前年同月比ではマイナス三・九%と大きく落ち込んでいる。
 九七年の経済危機突入以後(九〇年バブル崩壊以降も含めて)日帝は、米帝のバブル経済に乗っかった対米輸出と、対米輸出を急増させたアジアへの中間財輸出という構造でなんとか危機の一層の爆発を抑えてきた。しかしその米帝経済もバブルが崩壊し、日帝の貿易黒字が大幅に減少している。今年上半期の貿易黒字は前年同期比で戦後最大の四四%減となっており、日帝経済の一層の落ち込みは不可避である。
 日帝はアメリカ経済が来年後半には回復するという幻想を唯一の頼みにしているが、その米帝経済もITバブルの崩壊でいよいよぬきさしならない危機に陥りつつある。米主要五百社の四−六月期の企業収益は一五%程度の減益となる見込みであり、株価もナスダック指数が再び二〇〇〇jを割り込んでいる。また、百貨店売上高が減少するなど、消費の落ち込みが現れ始めた。
 欧州経済も後退に向かっており、この間世界経済をなんとか支えてきた米帝経済のバブルが崩壊したことによっていよいよ世界大恐慌が本格化しつつある。
 こうした世界的な経済危機の中で、小泉政権が「構造改革」を本格的に実施すれば、世界恐慌をますます深刻化させるものとなることは不可避である。その影響は単に不良債権処理の連鎖倒産という枠をはるかに超えて、日帝経済が総崩壊的事態に突入することになる。「景気回復」どころか、小泉「構造改革」のもたらすものはまさに恐慌の再激化、世界大恐慌の爆発なのである。

 中小企業はバタバタと倒産 労働者に不安定雇用を強制

 小泉「構造改革」は第二に、大資本の救済のために大失業を始め労働者民衆に一切の犠牲を転嫁する攻撃である。
 「基本方針」では「失業する人はおおむね十万人から二十万人程度」としているが、これもまったくウソである。すでに民間の研究機関が不良債権処理で百二十万人から百三十万人の失業者が出ると予測し、連鎖倒産やリストラを含めると二百万人から三百万人が失業すると予測している。これらは過去の不良債権処理でどれだけ失業者が増えたのかをもとにして試算したもので、実際にはこうした不良債権処理によって景気がさらに落ち込み、新たに発生する不良債権とその処理を考え合わせれば、もっと増えることは確実である。中小企業の倒産は、二十万社から三十万社に上ることが予想される。
 すでに日本の失業率は四・九%と過去最悪にあり、完全失業者は三百四十八万人に上っている。この上二〜三百万人が失業に追い込まれる。さらに就職をあきらめた人を含めると、一千万人を超える労働者が失業を強制されることになるのだ。
 小泉は「痛みに耐えろ」と平然と言い放っているが、倒産・大失業は、労働者にとって生きていけないということである。これを平然と「痛みに耐えろ」などと言うことをどうして許しておけるだろうか。
 「基本方針」が新たな失業者は二十万人から三十万人とするペテンの手口は、同時に発表された竹中経済財政担当相の談話「日本経済再生のシナリオについて」に示されている。そこで新規分野における雇用機会の創出で五年間で五百三十万人の新規雇用が生まれるとしているのだ。既存の分野がすべて駄目で、新規分野で五百三十万人もの新規雇用が生まれることなどありえない。またこの五百三十万人がなければ、新たな失業は二十万人から三十万人という試算は成り立たない。要するに、不良債権処理で失業者が五百五十万人ぐらいになると見ているということである。
 では大量の失業者の発生に対して「セーフティネットの充実」で備えるとしているその中身はいったい何か。自己啓発の支援、社会人の再教育・再訓練、職業能力評価システムの整備であり、派遣制度の規制改革である。要するに失業した人間は職業能力がないからだとして労働者に責任を転嫁し、「規制改革」で労働者の権利を徹底的に奪い、不安定雇用化・低賃金を強制し、資本が労働者をいつでも首を切れるようにするということである。そうすれば企業が労働者を雇いやすくなるという転倒した論理である。しかし恐慌が一層深まる中での労働者の権利剥奪(はくだつ)、不安定雇用化は労働者の失業を一層拡大するだけだ。労働者を犠牲にして資本を救済しようとするこの攻撃を絶対に許してはならない。

 「有期雇用」で自由に首切り

 小泉が狙っている労働者の無権利化の柱が労働者を「有期雇用」にしてしまおうとする攻撃だ。
 五月に小泉は、「二、三年の期限付き雇用の対象拡大」と「解雇ルールの明確化」を厚生労働省に指示した。これと同時に平沼経済産業相が、「新市場・雇用創出に向けた重点プラン」を出した。
 その中身は、「有期雇用契約、裁量労働制、派遣制度の見直し」ということである。有期雇用とは、これまでの終身雇用制に変わって期限を限った雇用契約をさまざまな業種に拡大し、期限が来たらいつでも「契約打ち切り」=解雇ができるようにしようということである。九八年の労基法改悪では、高度の専門職と高齢者に限って労働契約期間が三年に延長された。小泉の政策は、この対象を拡大して、正規雇用労働者を不安定な有期雇用労働者に置き換えようとするものだ。
 現在アメリカで景気の悪化とともに次々と人員削減計画が発表され、大量の労働者が職場を奪われている。この米帝のように資本がいつでも勝手に労働者の首を切れるようにするということなのだ。これを称して「雇用機会の創出」と言っているのだ。一切の犠牲を労働者や中小業者などに押しつけ、大資本の生き残りを図ろうとする攻撃を絶対に許してはならない。

 大銀行救済で再び公的資金 強まる日本経済の独占体制

 小泉の「構造改革」は第三に、〈独占〉を一層強化するものである。
 竹中は、談話の中で「効率性の低い部門から効率性や社会的ニーズの高い成長部門へとヒトと資本を移動することにより、経済成長を生み出す」と言っており、さらに「つぶれるべき企業や銀行はしっかりつぶすという決断」とも言っている。競争力の弱い企業は容赦なく切り捨てると宣言しているのだ。また小泉は、施政方針演説などで「非効率な部門の淘汰(とうた)」と主張し、「競争力のない企業は退場してもらう」と発言している。
 こうして「競争力のない」企業や中小企業はどんどんつぶし、さらに労働者には大失業と不安定雇用、低賃金・強労働を強制する一方で、一部の大銀行や大企業は税金を投入して救済し、それによって独占体制を強化し、国際的な資本の競争に勝てる体制を築こうとしているのである。
 すでに述べたように抜本的な不良債権の処理は景気を激しく押し下げ、それによってさらに多くの不良債権を生み出す。それは銀行自身に跳ね返って銀行の倒産・金融危機を爆発させるものとなる。こうした事態を防ぐために九八年には銀行に公的資金を注入して不良債権処理を行った。それと同じことが今回も行われようとしている。

 整理回収機構使い銀行救済

 それはRCC(整理回収機構)を使って不良債権を処理するというやり方である。RCCは、住宅金融専門会社の不良債権処理のために設立された住宅金融債権管理機構と、東京共和、安全など破綻(はたん)信用組合の受け皿銀行として設立された整理回収銀行が合併する形で九九年に設立された。RCCを使った不良債権処理は、銀行の不良債権をRCCが買い取り、不良債権を処理した上で残りを銀行に買い取ってもらう。その際に残りの資産に公的資金を付けて銀行に買い取らせる。
 要するに、前回の銀行への公的資金の注入があまりにも労働者人民の怒りを買ったために、直接銀行に公的資金を注入して不良債権処理を行うのではなく、RCCに不良債権処理を行わせて、銀行にRCCの赤字にはならない形で買い取らせ(RCCに公的資金を注入するという形もとらない)、実際の価値との差は公的資金で埋め合わせる。二重三重のペテンを使って公的資金を投入するのである。結局、銀行救済のための犠牲がすべて労働者人民に大増税として転嫁されるのである。
 さらに「基本方針」では金融システムの構造改革と称して緊急経済対策で打ち出した「銀行保有株式取得機構」の設立をうたっている。ここでも結局人民の税金を投入して銀行救済、株価の買い支えが行われるのである。
 労働者には新たに二〜三百万人もの大失業を強制し、福祉・社会保障を全面的に切り捨てる。「市場の活性化を図るため、競争政策の積極的な展開が求められる」とか「競争力のない企業は退場してもらう」「つぶれるべきはしっかりつぶす」などと言いながら、中小企業や「競争力のない」企業はつぶされる。その一方で一部の大銀行・大企業救済のために湯水のように税金を注ぎ込むのである。これまでの自民党のあり方をもはるかに超えた金権腐敗構造である。
 こうした小泉の「構造改革」を粉砕するために真っ向から闘わなければならない。公的資金の再投入に断固反対の声を上げよう。
 小泉「構造改革」は、市場を単に競争に任せようとしているのではない。「競争的な経済システム」とか「競争政策の積極的な展開」などと言って優勝劣敗、弱肉強食の政策で「弱い」企業を淘汰しようとするものである。競争から独占が生まれることはレーニンが『帝国主義論』で明らかにしているところだが、小泉がやろうとしていることは、国家の政策をとおして一挙的に独占体制をつくろうということである。その行き着く先は帝国主義の侵略戦争、世界戦争である。
 小泉の改憲・戦争国家化攻撃と経済における「構造改革」は完全に一体なのである。今こそ怒りに燃えて小泉反革命粉砕に立ち上がろう。
 (島田隆二)

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週刊『前進』(2016号3面2)

広島大学 学生自治会ついに結成 学生大会で満場一致決議

 広島大学の学生は、ついに歴史的な反転攻勢を開始した。六月二十八日、全学学生自治会結成を議論する学生大会が開催され、三時間に及ぶ白熱的な討論の末、満場一致で自治会結成が決議されたのだ。
 今日、日帝は改憲=戦争国家化の一環として、国立大学の独立行政法人化攻撃を軸に大学を帝国主義間争闘戦=戦争を担う機関へと変容させようとしている。小泉政権の打ち出した「大学の構造改革」ではすべての国公私立大学を「国への貢献度」で競争させ、トップ三十大学に予算を重点配分し、あとの大学は統廃合などによって切り捨てるとされている。まさに戦争の論理で大学自治を解体し、戦後的な大学のあり方をひっくり返す大攻撃である。
 広島大学では一九七四年の教養部学友会非公認化以来、自治会的なものの一切が奪われ、今日の日帝・文科省の大学改革のモデル大学とされてきた。だがその広島大学で、学生自身が「大学を自分たちの手に取り戻すのだ」「学生が大学の主人公となるのだ」という声を上げ、自らの力で自治会結成を宣言した。それは人民を戦争と暗黒の地獄に引きずり込む日帝の戦争国家化に対する巨大な反撃である。
 この学生大会の成功−自治会結成は、まさしく日帝・小泉政権の戦争国家化攻撃との激突の中でかちとられた。四、五月の新歓闘争では、戦争賛美の「つくる会」教科書と対決し、七百筆を超える教育署名が寄せられた。
 また、広大内では今年に入って数回にわたり民族差別・排外主義を扇動する落書き事件が相次いで起こっている。これは、昨年来のファシスト石原による「三国人」発言と治安演習、さらにはアジア人民の存在をも踏みにじる「つくる会」教科書の登場と完全に一体のものである。
 この許しがたい落書きに対して大学当局は一カ月もそのまま放置し、半年以上も何の声明さえ出さずに事実上容認してきた。学生が大学当局に対して二度とこのような落書きを許さない実効性のある取り組みをするよう申し入れた結果、形ばかりの「抗議」声明が出された。この大学のあり方、あるいはこうした差別・排外主義を生み出している学生自身の分断された現実を本当にのりこえるものとして学生自治会結成が宣言されたのである。
 同時に、国立大学の独立行政法人化との対決を貫きながら、学生を「商品」のように扱う今の大学のあり方に対して、学生一人ひとりの根底的怒りの決起として学生大会がかちとられたのだ。
 学生大会に向けての討論の中で出された意見にそのことは示されている。
 「何か世の中は怪しい雰囲気になって来ていると思う。日本が再びファシズムに進むか否かはそれに対抗する勢力が必要だと思う」「広大を日本の代表になるような平和を象徴する大学にしてほしい」「民族平等の差別を許さない大学にすべき。差別落書きがあったことなど他大学に公開すべき」「企業に認められることより学生の夢の実現が大切だ。学長の利益など重視してはならない」
 そして学生大会で、こうした意見が次々と出された。「今のままでは少数の活動が少数のままで終わってしまう。独法化によってますます学生がないがしろにされようとしている。ここを変えるために自治会が必要」「独法化で学費が値上げされたら自治会がないと阻止できない」「学生がどういう状況に置かれているのかさえ知らされていない」「差別落書きが許せない。こういう差別を許さないために学生の団結が必要」などなど。
 ある一年生は、他の一年生の「自治会をつくるということと、戦争や差別を許さないということが結びつかない」という質問に対して「時代認識が重要だ。大学自治はそもそも大学が戦争に協力したことを反省して確立された。今、小泉政権のもと憲法改悪の動きなど危険な方向に向かっている。こういう中で独立行政法人化によって大学を戦前の体制に戻そうとしている。ヒロシマの学生としてこの状況を変えなければならない」と鮮明に訴えた。
 こうした白熱的な議論を経て、三つの素晴らしい自治会理念のもと、自治会結成が宣言された。その理念とは「学生一人ひとりが主人公の大学に/学生の自由・権利・生活を守り、発展させよう」「あらゆる差別をなくし、お互いを仲間と認め合える団結・つながりを築こう」「ヒロシマに学ぶ学生として、ふたたび戦争というあやまちを繰り返さない」というもの。
 日帝が小泉政権のもと、労働者学生を戦争に動員し、その矛盾を集中し、最後には虫けらのように殺していく、この攻撃の全体に対する「絶対拒否」の立場を鮮明にした自治会としてかちとられたのだ。
 全国の学友の皆さん! 私たち広大生の闘いに続き、全国の大学で学生自治会の再建・発展をかちとり、全国学生運動の革命的統一へと突き進もう!
 (広島大A)

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週刊『前進』(2016号3面3)

富山 教科書会場へデモ 「つくる会」市販本焼く

 六月三十日、北陸労組交流センターと富山大学学生自治会は、教科書展示会場である教育記念館を包囲するデモに決起した。
 富山市の教育記念館は文科省が全国八カ所で行っている教科書展示会場の一つだ。文科省はアジア人民からの猛然たる抗議を無視し、教科書と検定意見の展示で戦争賛美教科書の検定合格を居直っている。文科省に対し「つくる会」教科書の検定合格を弾劾し、白紙撤回を迫るためにこの日の闘いに決起したのだ。
 前日の二十九日には教育改革関連三法案が国会成立し、この日には日米首脳会談が行われる。「日米首脳会談は中国・朝鮮侵略戦争のためのミサイル防衛網をつくり、沖縄を対中国出撃基地として強化するための戦争会議だ」と暴露し、首脳会談粉砕を訴えた。
 デモには富山大の新入生が先頭に立った。梅雨空で小雨が降る中、「改憲と戦争国家化の小泉政権打倒!」「『つくる会』教科書の検定合格を白紙撤回せよ!」のシュプレヒコールが街に響いた。
 小泉政権とは改憲・戦争国家化と大失業である。それは何か成算のある道ではなく朝鮮・中国への侵略戦争と、さらには破滅的な日米間の帝国主義戦争への道だ。だからこそ小泉政権は教育改悪や侵略戦争を賛美する教科書によって、反米愛国主義、国粋主義、排外主義を扇動し、「子どもたちを戦場に送る」教育をやろうとしているのだ。
 デモは教科書展示会場を直撃し、完全に包囲した。デモ隊は教科書を展示している教育記念館前で立ち止まり、その場で「つくる会」教科書市販本を焼き捨てて抗議した。炎が上がった。日帝の侵略によってじゅうりんされ虐殺されたアジア人民の、戦争に動員され死を強制された労働者人民の怒りの炎だ。
 デモ隊はさらにシュプレヒコールを上げ、文科省への激しい抗議をたたきつけた。さらにアジア人民の怒りにこたえ検定合格白紙撤回を求める抗議文を代表二人が会場に提出し、徹底糾弾した。
 デモは県庁と市役所の前を通り、県教委・市教委に対しても「戦争賛美の教科書を採択するな!」とシュプレヒコールをたたきつけた。後半は豪雨となりびしょ濡れになったが、最後まで元気よく戦闘的にデモを貫徹した。駅前などで「小泉政権打倒」に目を丸くしながらもニコニコと見守る人たちの姿があった。
 デモに先立って富山駅前で街頭宣伝を行った。教科書展示の最中でもあり、短い時間だったが多くの署名が寄せられた。街宣では北陸労組交流センターの代表で動労西日本の出口さんがマイクを握り、「小泉政権の人気にだまされるな。小泉『構造改革』は大リストラと戦争だ」と訴えた。
 この日の闘いは、アジア人民と連帯して「つくる会」教科書を一冊たりとも採択させない闘争としてやり抜くとともに、富山における小泉政権打倒闘争の突破口となった。

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週刊『前進』(2016号3面4)

杉並 防災図上訓練を弾劾 反戦共同が区役所デモ

 反戦共同行動委員会は、七月十七日、東京都と杉並区による「防災」に名を借りた治安出動訓練に反対し、集会とデモ、都知事への抗議申し入れに立ちあがった。七月十七日と十八日に行われた図上訓練とは、自衛隊と完全に一体となった軍事演習である。九月一日に予定されているビッグレスキュー(東京都総合防災訓練)を、昨年以上の規模の軍事演習として行うためのものだ。
 この日昼、杉並区内けやき公園で集会の後、区役所までの昼休みデモが行われた。集会では、労組交流センターの三角忠さんが主催者あいさつ、都政を革新する会の長谷川英憲代表の司会のもと、前区議のけしば誠一さんが報告。山田宏区長が正式に自衛隊に出動要請する以前に、迷彩色の戦闘服姿の自衛官がジープで区役所に乗り付け、図上演習では区長の隣に陣取って参加していることを弾劾した。また八月二十六日には、区内浜田山で、防災公園とされる旧興銀グランドで行われる防災訓練に、山田区長が自衛隊のヘリ部隊の参加を要請していると、これとの対決を訴えた。
 全学連の大山尚行委員長が基調報告し、排外主義発言を繰り返す石原都知事と戦争政治を推し進める自民党・小泉政権を厳しく弾劾し、「防災訓練」とは教科書攻撃や靖国参拝と一体の戦争政策そのものであることを明らかにした。
 反戦自衛官の小多基実夫さんは、朝から都庁で始まった図上訓練の様子を報告した。都庁には内閣安全保障・危機管理室も参加していること、石原知事と山田区長がテレビ電話で「都に自衛隊の出動を要請します」などと直接やり取りし、杉並区が特別重要な役割を果たしていることを指摘した。図上演習とは自衛隊主導の治安出動訓練であると暴いた。
 阿佐ケ谷駅前から杉並区役所までデモ。区役所前では「つくる会」教科書の採択に反対して座り込む杉並の父母たちと合流し、戦争への道を絶対に許さないことを誓った。

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週刊『前進』(2016号4面1)

マル学同の8・15決戦アピール
日帝の戦争国家化を狙う小泉靖国参拝実力阻止を
 学生こそ小泉反革命打倒の先頭に

 全国の学友諸君! 「つくる会」教科書採択攻撃との激突が、朝鮮・中国−アジア人民の怒りの決起との連帯をかけた闘いとして、全国で決戦的に闘われている。栃木に続いて、七月二十五日には東京・杉並区での「つくる会」教科書採択を阻止した。東京を始め全国各地での攻防をさらに徹底的に闘いぬき、「つくる会」教科書攻撃を完全粉砕せよ。参院選闘争の地平を引き継ぎ、小泉打倒を真っ向から掲げて、八・六ヒロシマ―八・九ナガサキ闘争を大爆発させ、八・一五靖国神社参拝阻止の大決戦に攻めのぼれ!

 「国のために命を捧げよ」と再び侵略に動員

 八・一五を頂点とする小泉の反革命「全国行脚」の攻撃に対してまなじりを決して対決しなければならない。この攻防は、小泉の改憲=戦争国家化攻撃の核心の粉砕をかけた決戦なのである。
 小泉は、「聖域なき構造改革」という名の戦争国家ヘの国家大改造の核心に、「国のために命をささげよ」という民族主義・愛国主義・排外主義の大扇動をすえ、労働者人民の意識の総転換と反戦闘争の圧殺を狙っている。その大攻撃の頂点が八・一五靖国神社公式参拝だ。
 小泉は、「つくる会」教科書攻撃を反革命的バネとしながら、沖縄、ヒロシマ、ナガサキという、「二度と戦争を繰り返すな」という戦後日本階級闘争の原点の解体を狙い、それら一切を八・一五靖国参拝に総集約することで、日本人民の階級的意識を一挙に解体し、堤防決壊的な反革命的流れをつくり出そうとしているのだ。
 日帝・小泉は、新たな朝鮮・中国−アジアへの侵略戦争参戦を本気で身構えているがゆえに、今ここで靖国思想を復活させようとしているのだ。そもそも靖国神社とは、明治以来、天皇制と国家神道の頂点をなした軍事施設であり、労働者人民を侵略戦争へ総動員していく中心的役割を果たしてきた。そこには東条英機らA級戦犯が「国難に殉じた最高の軍神」として祭られている。
 小泉の靖国参拝は、日帝のアジア侵略戦争と第二次世界大戦のすべてを「日本のため、国を守るための聖戦」と全面肯定することだ。それは、東京裁判やサンフランシスコ条約など敗戦帝国主義として米帝に強制されたものすべてを転覆し、対米対抗的に復活・復権させるということだ。
 さらに、日帝のアジア侵略戦争、対米戦争に駆り出され、戦死した者を「英霊」などと祭り上げることは、日帝がアジアを侵略し、じゅうりんし、何千万人ものアジア人民を虐殺したことを「正しかった」と居直り、賛美することだ。一握りの資本家階級の利益のための戦争で膨大な労働者人民の命を使い捨てにしたことを開き直るものだ。そして「国のために命をささげるのは当然」という転倒した死生観を再び日本の労働者人民に強制し、新たなアジア侵略戦争に駆り出していこうとする大攻撃だ。
 しかも小泉は、中国を始めとするアジア人民の猛反対や日本人民の抗議の声を受け、国際問題化し、与党内ですら動揺が走る中で、「いかなる批判があろうとも」強行することを繰り返し決意表明している。「中国や韓国との関係は、参拝後に考えればよい」などと傲然(ごうぜん)と言い放っている。
 小泉は、日帝の中国・朝鮮侵略戦争の参戦のために、伝統的な自民党政治が越えようとして越えることのできなかった戦後的な制約を本気で突破することを狙っている。日帝は九七年以来、戦後的制約を突き破ってガイドライン体制の構築に全力で突き進んできた。しかし、それでも「戦場とは一線を画する」という文言に象徴されるような縛りを越えられていない。
 小泉は、まさにこの「一線」を突き破って、実際に戦場に突入し血を流す戦争をやろうとしているのだ。だから集団的自衛権の行使や新ガイドラインの「後方地域」定義の見直し、PKF(国連平和維持軍)参加凍結解除に手をかけ、そしてそこに反革命的魂を入れるために靖国神社参拝を強行しようとしているのだ。
 「小泉打倒・戦争国家化粉砕!」「侵略戦争を絶対に許すな! 倒れるべきは帝国主義だ!」と訴えて、八・一五小泉の靖国神社公式参拝絶対阻止の大決戦に立ち上がれ! 国家権力の厳戒体制をぶち破り、闘う朝鮮・中国−アジア人民との連帯を実現する一大戦闘的大衆闘争をたたきつけよう。帝国主義首脳会議ジェノバ・サミットをズタズタに粉砕した国際プロレタリアート人民の闘いと連帯して闘おう! 八・一五決戦を一九三〇年代型の内乱的激動を手繰り寄せる一大突破口とせよ!

 戦争への国家大改造攻撃に突き進む小泉

 小泉反革命との対決は、戦後階級闘争史上真の階級的革命的飛躍をかけた本格的闘いだ。
 小泉は、「国のために命をささげるのは当然ではないか」などというむき出しの帝国主義イデオロギーを振りかざし、労働者人民に突きつけ、そうして階級性を解体し、戦後的階級関係を反動的に転覆することを戦争国家化の核心にすえている。ここに森政権までの従来の自民党政治とは次元を画する、決定的な反革命的踏み切りがある。
 日帝は、ここを突破する以外には、もはやどうにもならない絶望的危機に追い込まれているのだ。
 ひとつは、米帝のバブル崩壊が日帝経済を直撃し、株価暴落と不良債権が金融危機を再燃させ、日帝の恐慌の再激化が一九二九年を上回る世界大恐慌を確実に現実化してきていることだ。しかも日帝は、打つことのできる恐慌対策をもはや出し尽くしてしまっている。バブル崩壊に追いつめられた米帝は、なりふり構わぬ日帝つぶしの対日要求を突きつけている。さらに日帝の財政危機は、大増税によっても解決する規模ではない。日銀の超金融緩和政策は、財政における戦後憲法的歯止めを外したということであり、それは結局、日銀引き受けによる無制限の国債発行と軍拡・戦時経済化という破局に行き着く以外にない。
 今ひとつ決定的なことは、二九年型世界大恐慌情勢のもとで、米帝ブッシュ政権のむき出しの戦争政策の展開が、帝国主義間争闘戦の激化と世界経済の分裂化・ブロック化、その軍事化を一気に加速していることである。
 七月二十〜二十二日、十万を超える労働者人民に包囲されて開催されたジェノバ・サミットでは、米帝のミサイル防衛構想は首脳会議の議題とされず、京都議定書問題についても「意見の不一致がある」と宣言された。ここに突き出されていることは、サミット自体の破産・行き詰まりである。帝国主義がその基本矛盾の爆発をもはや先送りできないところにまで危機を深め、その中で米帝の核・石油・ドルを武器にした争闘戦政策の突出が、帝国主義戦後体制の最後的崩壊と分裂化を激しく促進しているのだ。
 この中でブッシュ政権の「二戦域同時対応」戦略見直しの意味は重大である。それは、一方で市場争奪戦の最大の戦場としての中国を措定し、それをめぐる日米激突を前提にした日米同盟重視を打ち出すとともに他方で経済危機の軍事的突破のための対中国侵略戦争を明確に措定し、そのための日米軍事同盟強化を打ち出したということである。つまり、米帝は中国侵略戦争発動による日帝のたたきつぶしを世界戦略のかなめにすえたということだ。
 北朝鮮政策もその一環として見直された。沖縄圧殺・沖縄米軍基地強化も、今やこの米帝のきわめて具体的な中国・朝鮮侵略戦争発動に向けた体制構築という軍事戦略に沿って決定的に激化してきている。
 小泉は、この米帝ブッシュの凶暴な世界戦争政策に対応しつつ、日帝の危機を戦争に転化する方向で動き始めているのだ。小泉の「集団的自衛権の行使」論、「改憲」論はこの米帝の中国・朝鮮侵略戦争に日帝が必死に食らいついていくものとして打ち出されているのだ。

 愛国主義と排外主義あおる小泉

 さらに今ひとつは、日帝の政治支配の危機、イデオロギーの危機、階級支配の危機が進行する中で、日帝は結局のところ、帝国主義的民族主義、愛国主義、排外主義をあおることでその突破を図る以外にないということである。
 憲法九条破棄を頂点とした戦争国家化の攻撃は、すでに九七年新ガイドライン締結―九九年ガイドライン関連法制定を決定的突破口に、自衛隊の侵略軍隊への転換攻撃や即応予備自衛官制度導入、国旗・国歌法など反動諸立法の制定など、激しく進められている。衆参憲法調査会での改憲論議も、実に重大な情勢だ。
 だが、米帝ブッシュの世界大戦級の軍事力による中国・朝鮮侵略戦争に対して、現在のガイドライン協定のレベルでは、まったく対応できないことが突き出されている。しかも改憲=戦争国家化は、戦後的日米関係の根幹に手をつけ、またアジア諸国人民との非和解的関係を極限的に激化させるとともに、何よりも労働者人民の中に広範に存在する戦後的な反戦意識や戦後的階級関係を反動的に転覆することなしには成り立たないものとしてある。
 小泉は、ここでの突破に戦争国家化攻撃の核心をすえているのだ。「国のために命をささげよ」という帝国主義のイデオロギーをストレートに打ち出し、靖国参拝を強行することで、労働者人民の戦後意識を解体し、日帝の中国・朝鮮侵略戦争に総動員するための反動的魂を吹き込もうとしているのである。
 だが、社民党・日本共産党など既成勢力のすべてが、この小泉反革命と対決するどころか、「改革」を競いあい、より一段と屈服を深める中で、労働者人民には「伝統的自民党政治か、小泉改革路線か」の選択しか示されていない。この現実をなんとしても突き破らなければならない。
 小泉改革は、労働者人民の求めるものとはまったく逆の徹頭徹尾帝国主義の利害のための改革であり、小泉が危機を打開しようとどうあがいても恐慌を爆発させ、侵略戦争に突き進む以外にないものだ。そしてその戦争は帝国主義ブルジョアジーの階級的利害のためにアジア人民と日本人民を犠牲にするものであり、しかも、そもそも今日の危機と矛盾をつくり出した一切の責任と原因は帝国主義そのものにあるのだ。
 働いて働いて揚げ句の果てにほうり出される、家族も崩壊していく、しかも誇りを持って闘うという方向が既成勢力の裏切りによって見えなくさせられている。この中で労働者人民は「このままでは生きていけない!」という悲痛な叫びをあげているのだ。そして、このような非人間的現実の打破・変革を激しく求めている。その怒りと変革の要求がさしあたり自民党政治の行き詰まりと腐敗に対して激しく爆発している。この叫びと現状変革の要求を革命的な方向に扇動するならば、ものすごい力が発揮されるのだ。
 日帝・小泉は、「利権構造の自民党政治を除去すれば現状は一気に良くなる。自民党を変え、日本を変えよう」というペテン的なロジックを駆使して、自民党政治の破綻(はたん)を右から打破する戦争政治、戦争国家化のもとに労働者人民を動員しようとしている。
 これはまったくペテンだ! 本当は、帝国主義・資本主義の反人民的本質こそが、労働者階級のもっている本来の活力、新しい社会を自らの手で作り上げていく力を阻害しているのだ。それどころか、その基本矛盾が恐慌と戦争という破局をもたらそうとしているのだ。帝国主義・資本主義の死滅という問題がここまで迫っているのだ。
 問われているのは、小泉反革命=戦争国家化攻撃への既成勢力の総転向・総翼賛を突き破って、帝国主義批判、帝国主義打倒を真っ向から掲げた反戦闘争の新たな潮流を全学連が先頭でつくり出すことだ。「国家のために命をささげる」という反革命攻撃に対して、「あの侵略戦争を再び繰り返すのか!」という労働者人民の思いを貫き、帝国主義こそ倒れるべきだという思想、闘うアジア人民と連帯し、日帝のアジア侵略戦争を内乱に転化せよという立場をはっきりさせることである。

 改憲粉砕・有事立法阻止・沖縄闘争の爆発へ

 二〇〇一年後半から二〇〇二年階級決戦の中で、われわれは必ずや全国学生戦線の現状を塗り替え、戦略的部隊としての巨万の学生隊列の登場を何がなんでも実現する。対カクマル戦の歴史的勝利のすう勢を、学生戦線を先頭にさらに徹底的に促進し、カクマル完全打倒と全国学生戦線の革命的統一にむかって画然たる前進を実現する。これこそ、革命情勢の急接近情勢の中で要請されている学生戦線の重大な責務である。
 ここに労働者階級人民の大流動情勢を、巨大な革命的大衆行動の爆発へと転化し、党勢二倍化に結実する重大なかぎがあるのだ。 
 二〇〇一年後半決戦の学生戦線の任務は何か。
 第一に、全学連が先頭にたって小泉反革命と真正面から対決し、九七〜九九年ガイドライン闘争を上回る反戦闘争の大爆発を切り開くことである。
 一つに、教科書決戦―八月闘争を全力で闘いぬき、九・一〜二自衛隊治安出動演習阻止の闘いに総決起することである。
 九・一〜二治安出動演習は、東京都を始め七都県市の合同演習として、昨年をはるかに上回る規模で強行されようとしている。川崎港をメーン会場にした自衛隊の上陸演習、八王子市の都立南多摩高校での高校生の動員、「トリアージ(戦時の選別治療)」など、中国・朝鮮侵略戦争発動に向けた文字どおりの実戦演習として強行されようとしているのだ。
 排外主義襲撃を扇動するファシスト石原と対決し、アジア人民(在日アジア人民)との連帯を貫いて広範な闘いを巻き起こそう。
 二つに、臨時国会闘争―全国結集闘争を闘いぬき、「第二のガイドライン決戦」の爆発を切り開くことである。とりわけ有事法制の「中間報告」(九月)と対決し、有事立法―改憲阻止の大決戦に本格的に突入することである。
 すでに政府・防衛庁は、担当職員を増員するなど本格的な立法化作業に入っており、「有事法制は最終検討段階に入りつつある」(六月日米防衛首脳会談での中谷発言)ところまで来ている。七月十六日には古川官房副長官を責任者とする内閣官房の担当チーム(防衛・外務・国土交通・総務などの各省庁から十五人)を整え、「基本的な設計図というべき有事法制の全体像を示す」ための作業を本格化させている。小泉内閣は、米軍有事法、国家非常事態法などの法案準備を早急に完了させ、九月有事法制「中間報告」から、法案提出―立法化に一挙に突き進もうとしていることは明白である。
 有事法制とは、帝国主義戦争の本質としての総力戦化に対応し、財政・産業諸力・交通機関・人民・物的資源などの一切合切を国家管理・統制の下において戦争に総動員するためのものである。そのために有事=戦時における憲法停止―国家非常大権を明記し、私権の著しい制限、土地や家屋の徴発・解体、戦時型弾圧体制、言論統制などにまで及ぶものである。「お国のためにすべてを差し出せ、死ぬまで働け、生命をも投げ出せ」という小泉反革命は、この有事立法攻撃の正面突破に突き進むものだ。
 さらに与党三党は、PKO参加五原則の見直し―PKF本体業務への参加凍結解除へ、今秋臨時国会での関連法案改悪を明言している。政府・自民党がまとめたPKO協力法改悪案の原案では、紛争当事国の同意なしでも派遣部隊を展開する国の同意で派兵を可能にする、さらに在留邦人や他国部隊を守る目的でも武器使用が可能であるなど、これまでの一定の「歯止め」をも完全に取り払い、実戦に突入するための根本的な大転換が狙われている。
 そして「領域警備」においても、自衛隊艦船・海上保安庁による「相手船舶そのものへの射撃」などを合法化する自衛隊法・海上保安庁法改悪案を臨時国会に提出することを決定している。小泉政権はこれを「有事法整備に先立つ有事対応策の第一段」として位置づけ、九条破棄=改憲の突破口を開こうとしている。
 三つに、反対同盟の烈々たる決意と闘いにこたえ、成田空港暫定滑走路建設阻止の闘いに総決起することである。通常国会で強行された土地収用法改悪と、三里塚現地における日帝国家権力の農地強奪・農民殺しの攻撃こそ、有事立法の正体そのものだ。三里塚闘争は、沖縄闘争と並んで、中国・朝鮮侵略戦争阻止の最大最高の拠点である。十・七三里塚現地総決起集会に全力で結集しよう。
 四つに、切迫する自衛隊の東ティモール派兵を絶対に阻止することである。日帝は、米帝との対抗を貫き、激しい内乱情勢が続くインドネシア、東ティモールに軍事介入しようとしている。九二年カンボジア派兵をはるかに超える重大事態であり、自衛隊の実戦突入は不可避だ。小泉はまさに中国・朝鮮侵略戦争突入への正面突破の攻撃として、東ティモール派兵を強行しようとしているのだ。絶対阻止の広範な闘いを巻き起こそう。
 五つに、小泉反革命の下での戦時入管体制の攻撃と対決し、在日朝鮮・中国−アジア人民への排外主義襲撃を許さず、支援・防衛・連帯の闘いに立ち上がろう。同時に、二〇〇二年組対法改悪―刑訴法改悪の攻撃、デッチあげ弾圧―不当捜索などの戦時型弾圧攻撃の激化と対決し、日帝・国家権力の不正義を暴ききって重要な大衆決起の水路に転化して闘おう。
 第二に、大田選挙闘争を引き継ぎ、沖縄闘争の前進を切り開くことである。中国・朝鮮侵略戦争に突き進む日帝・小泉政権は、沖縄圧殺政権である。六月末の女性暴行事件を始め在沖米軍による事件・事故の続発を目の当たりにしながら、
「在日米軍の駐留こそ、日本の平和を維持してきたことを理解する日本人はまだ少ない」「地位協定を見直す必要などない」なる暴言を平気で言い放つ小泉は絶対に許せない。それは沖縄差別政策の極致としての沖縄戦を、再び沖縄人民に強制するものだ。
 沖縄人民の怒りをわがものとし、名護新基地建設阻止・米軍基地撤去の闘いを沖縄―本土を貫いて大爆発させよう。すべての学友は、全学連沖縄現地行動隊に決起しよう。
 第三に、小泉反革命への既成勢力の総転向・総翼賛を突き破り、革命的祖国敗北主義を貫く反戦闘争の新たな潮流を全学連が最先頭でつくり出すことである。国鉄決戦―教労決戦を切っ先にした階級的労働運動の台頭と、改憲阻止・ガイドライン・沖縄闘争の結合で、全人民的な対決構造を反転攻勢的に形成し、日本労働者階級の「隠された内乱」を公然と解き放つために、学生戦線こそ最先頭で闘おう。

 国立大学の独法化を阻止しよう

 第四に、国立大学の独法化阻止の闘いを中軸とする大学闘争のさらなる前進を切り開こう。小泉反革命の下で、国立大学独立行政法人化攻撃に一挙に拍車がかかってきている。同時に、全国で学生自治の根絶をねらう攻撃が画然とエスカレートしてきている。
 その一切が「国益」や「国際競争力」なるイデオロギーをテコに強行されているのだ。こうした「大学改革」攻撃のむき出しの全面化に対して、改憲阻止・ガイドライン・沖縄闘争と大学闘争を両輪的に闘い、学生自治会の戦闘的再建をさらに全国的に推し進めていこう。
 第五に、黒田ファシスト哲学の国粋主義・愛国主義・排外主義的正体を暴ききり、全国大学からファシスト・カクマルを打倒・一掃しよう。
 カクマルは、改憲阻止・ガイドライン・沖縄闘争の大衆的爆発の予兆におびえ、その介入と破壊のためにのみエセ全学連大会において〈反安保・改憲阻止〉〈中核派一掃〉のスローガンを叫んでいる。カクマルを、三〇年代型の内乱内戦の戦場に深々と引きずり込み、完全打倒に向かって闘いを推し進めよう。
 そして第六に、激動期においてこそ、会議・機関紙・財政の三原則を原則的に貫き、日帝の攻撃の基本路線と真っ向から対決する党のボルシェビキ的あり方を強力に貫くことだ。改憲阻止・ガイドライン・沖縄闘争の大爆発を実現し、学生戦線こそ党勢二倍化の最先頭に立とう。
 八・六−九、八・一五決戦を突破口に、小泉反革命打倒の血路を切り開け!
 歴史選択をかけ、革命的祖国敗北主義の旗を高々と掲げて、学生こそその最先頭に立て! すべての闘う学友は、第六一回全学連大会に結集せよ!

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週刊『前進』(2016号4面2)

2001年日誌 阻もう! 改憲=戦争への動き 7月18日〜24日
 各地で「つくる会」不採択に
 中・韓から参拝中止の要求

●在韓基地10年で半分返還を提示 韓国の国防省が、在韓米軍との基地供与に関する協議で、在韓米軍側が基地移転計画に伴い、二〇一一年までの十年間に約二万四千四百二十fの供与地のうち約五四%に相当する約一万三千二百fを韓国側に返還する方針を提示している、と明らかにした。部隊の大移動など在韓米軍の基地移転計画は、沖縄などの在日米軍にも影響を与える可能性。(18日)
●外相がミサイル防衛を「支持」 訪欧中の田中真紀子外相が十六日のインタビューで米国のミサイル防衛計画について「世界には核兵器を拡散させる恐れがある国家が四十一も存在する。日本は米国の計画を支持する」と明言したことが明らかになった。同計画を「理解する」としてきた日本政府の見解から反動的に踏み込んだ。(18日)
●地位協定、運用改善で合意 田中外相がパウエル米国務長官と会談。田中外相が「起訴前の拘束移転を始めとする地位協定の運用改善に関する米国との協議を推進したい」と提案。日米地位協定の運用改善協議を推進することで合意した。(18日)
●海保も船体射撃可能に
「領域警備」について海上保安庁が、洋上で「船体射撃」を行えるよう海上保安庁法に規制を緩和する新条項を盛り込む方針を固めた。秋の臨時国会に提出する方針。(18日)
●兵力削減計画なしと司令官 米太平洋軍トップのブレア司令官が、在沖米軍基地の兵力構成について「今後も同じ水準が保たれる」と述べ、削減計画がないことを明言した。同司令官は今秋にまとめる四年ごとの防衛見直し計画(QDR)の構成メンバー。(19日)
●外相が9条改憲に言及
田中外相が六月のパウエル米国務長官との会談で、憲法九条について「九条の問題を中心に政府自身が議論し、最後には国民投票になる。ここに至るまでに五十年かかった。やっとここまできた」と述べていたことが外務省の会談記録でわかった。(19日)
●ジェノバ・サミット ジェノバ・サミット(主要国首脳会議)が開幕した。会場周辺は「反グローバル化」を掲げる約二十万人のデモ隊が囲み、警察の発砲で一人が虐殺された。(20日)
●沖縄米兵が放火で現行犯逮捕 米空軍嘉手納基地所属の兵長と米海兵隊普天間飛行場所属の上等兵が器物損壊の疑いで沖縄県警にそれぞれ現行犯逮捕された。沖縄市内の駐車場で乗用車を壊して火をつけ全焼させたなどの疑い。(21日)
●靖国参拝「熟慮断行」と小泉 小泉首相は、八月十五日の靖国神社の公式参拝について「熟慮」すると述べたことについて、「『熟慮してほしい』と言うから『熟慮する』と答えた。『熟慮断行』という言葉もある」と語った。(21日)
●沖縄県が米軍に申し入れ
 米兵の相次ぐ犯罪に対し、沖縄県が、米軍、国との三者連絡協議会の幹事会で、在沖米四軍兵士の公務以外の夜間外出禁止を米軍に申し入れたが米軍側はこれを拒否。県はこれに代わる米軍独自の新たな事件防止策を求めたが米軍からの反応はなかった。(23日)
●パウエル、地位協定改定を拒否 小泉首相とパウエル国務長官が会談。小泉が「日米安保体制の信頼性を失わせてはならない。日米地位協定の運用改善が効果的でなければ、協定の改正も視野に入れていくことになる」と述べたことに対し、パウエルは「今は協定改定の時期ではない。運用改善の協議に引き続き努力したい」と地位協定の改定を拒否した。(24日)
●メガワティ大統領就任
インドネシアの国民協議会がワヒド大統領の罷免を決めた。憲法の規定によりメガワティ副大統領が第五代大統領に昇格した。ワヒド前大統領は大統領府にとどまっている。(23日)
●中国外相が靖国参拝中止を要請 田中外相が中国の唐家■外相と会談した。唐外相は小泉首相の靖国神社公式参拝について「首相が参拝すれば、中国民衆から当然強い反応が出る。国交正常化以来発展してきた友好の基盤が崩れてしまうことを懸念している」と参拝中止を求めた。(24日)
●参拝「総理として当然」 小泉首相が靖国公式参拝について「八月十五日に総理大臣小泉純一郎として参拝する。日本国民、総理として当然の行為だ」と述べ、中国の中止要求を受けても参拝を強行する考えを明言した。(24日)
●国立などで不採択 東京都の国立市、千代田区の教育委員会が「新しい歴史教科書をつくる会」の中学歴史と公民の教科書以外の教科書を採択することを決定した。(24日)
●韓国大使が靖国参拝翻意を要請 韓国の崔相龍・駐日大使が自民党、公明党、保守党の三幹事長と会談し、靖国参拝について「八月十五日の総理の対応を韓国の全国民は注目している」と首相に翻意を働きかけるよう求めた。(24日)

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週刊『前進』(2016号5面1)

米ミサイル迎撃実験弾劾
 ブッシュのミサイル防衛計画は世界戦争・核戦争の攻撃だ
 中国・朝鮮侵略戦争阻止へ闘おう

 七月十四日夜、米国防総省はブッシュ政権下で初めてミサイル防衛の迎撃実験を行った。カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)を標的に、太平洋・マーシャル諸島の実験場から迎撃ミサイルを発射し、ハワイ上空で命中させた。これは世界を戦争、核戦争に暴力的に引きずりこもうとする断じて許せない暴挙だ。全世界人民の反対を踏みにじってミサイル防衛(=核戦争)計画を進め、中国・朝鮮侵略戦争をたくらむ米帝ブッシュを許すな。米帝とミサイル共同研究を行い、中国・朝鮮侵略戦争参戦、改憲と核武装を狙う日帝・小泉政権を打倒しよう。米・日帝国主義の核戦争政策に怒りを燃やし、八・六広島−八・九長崎反戦反核闘争と八・一五靖国闘争に立とう。

 中国の長距離ミサイル無力化を狙う

 ブッシュ政権は、ミサイル防衛計画をアジア重視戦略とともに「新国防戦略」の柱に据えた。来年度予算ではミサイル防衛の開発費を今年度比約六〇%増の八十三億jに増額。ミサイル迎撃実験を相次いで行い、アラスカ州に基地を建設し、既成事実を積み重ねてミサイル防衛を強引に推進する構えだ。
 そのブッシュ政権にとって今回の実験は重大な意味を持っていた。国防総省はこれまでICBM迎撃実験を三回行ったが二回は失敗している。今回の実験が成功したことで、ブッシュ政権はミサイル防衛(=核戦争)計画をますます加速させようとしている。
 ミサイル防衛計画とは、米本土ミサイル防衛(NMD)と戦域ミサイル防衛(TMD)を組み合わせ、地上、海上、空中にミサイル迎撃網を構築するというものだ。その狙いは、敵の核ミサイルを無力化し、米帝が核戦争で一方的な攻撃者になることにある。
 国防総省が十三日に配ったミサイル防衛の説明書には、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と中国の国境付近から発射されたミサイルを日本海の艦船から迎撃するイラストが載った。米政府は「ならず者国家」の脅威を強調しているが、真の狙いは「中国封じ」だとの見方は米議会でも半ば公然と語られている。直接には中国の長距離核ミサイルを無力化しようとしているのだ。
 また、ブッシュ政権が地下核実験再開のための準備期間を大幅に短縮する研究を指示したことも明らかになっている。新たな核兵器開発のための即応態勢を整えようというのだ。ミサイル防衛は、米帝が実際の核戦争に踏み込んでいく恐るべき核戦争計画なのだ。
 国防総省は来年度末までに、今回と同種のICBM迎撃実験を十月、来年二月、六月、秋に予定。海上発射システムの実験は九月、十二月、来年二月、四月に、標的ミサイルを発射直後の上昇段階でとらえる陸上迎撃システムの実験も、八月と十月に予定している。レーザー兵器によるミサイル迎撃実験も〇三年から実施するという。
 七月十二日、米国防総省のウォルフォウィッツ副長官は上院軍事委員会で、「数カ月以内に弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約に抵触する状態になるのは不可避だ」と証言。ABM制限条約は、迎撃ミサイルの基地を一カ所(米はノースダコタ州)に限定し、海上や空中への配備を禁止していることから、同条約に抵触する実験基地をアラスカ州に建設する段階で同条約を離脱せざるを得ないとの見解を示した。
 副長官は同時に、ミサイル防衛(MD)網配備の具体的なプランも発表した。標的となるミサイルを「上昇」「中間飛行」「終末」の各段階で迎撃する多層迎撃システムで、完成すれば陸上、空中、海上に加え、宇宙空間も利用する大規模なミサイル防衛網となる。配備スケジュールも「二〇〇五年の配備すら非現実的」とした前政権に比べ、大幅に前倒しした。アラスカ州の実験基地は、八月中にも森林伐採、整地作業を開始し、〇二年四月着工、〇三年に完成、〇四年には十基程度の迎撃ミサイルを配備するという。

 軍需経済と戦争で延命をはかる米帝

 米帝ブッシュ政権は、二九年型世界大恐慌の始まりの中で、むき出しの争闘戦政策、戦争政策にカジを切った。
 米帝は南北米大陸にまたがる自由貿易圏(FTAA)構築を進めつつ、日帝の構造改革、不良債権処理をテコに日本への直接投資を拡大し、日米首脳会談で設置を決めた日米新経済協議をも活用し、日本とアジアの市場を日帝資本からもぎ取ろうとしている。
 他方では、軍事産業、石油・エネルギー産業の利害をむき出しにした軍事=外交政策を進め、ミサイル防衛計画などの展開による軍需経済化で経済危機の打開を狙い、戦争によって生き残りを図ろうとしている。
 ジェノバ・サミットでも、核実験全面禁止(CTBT)条約の「死文化」やABM制限条約からの離脱を狙うなど、米帝の強硬な態度が際立った。ブッシュは「私は米国の利益を代表している」と「一方的外交(ユニラテラリズム)」を押しだし、露骨な帝国主義間争闘戦を貫いたのだ。
 何よりも米帝ブッシュ政権は、ミサイル防衛計画と「二正面戦略からの転換」(=アジア重視戦略)を柱とする新軍事戦略を打ち出し、本気で世界大戦級の戦争を準備し始めている。それは世界大恐慌の時代における大軍拡政策であり、第三次世界大戦をも視野に入れたものだ。米帝は大恐慌とブロック化、長期大不況の時代への突入の中で、対日争闘戦に重心を置いた帝国主義間争闘戦を構え、何よりも中国・朝鮮侵略戦争を行おうとしているのだ。

 「二正面戦略」からの転換を公式発表

 六月二十一日、ラムズフェルド国防長官は上院軍事委員会で「二正面戦略からの転換」を公式発表した。
 国防長官は、二正面戦略について、ソ連崩壊後の米軍戦略の転換に積極的役割を果たしたが、軍事予算を減少させ、将来のリスクに対処するための先進軍事技術への投資の過小を招くとともに、軍事立案者を中東と朝鮮半島の脅威への対処という短期のことに集中させ、長期的脅威への準備を怠らせるものとなった、と総括した。
 また、@米国の防衛、A同盟国の防衛のための前方展開戦力の強化、B米国の死活的利益を脅かす敵に圧勝するための能力を確保することが必要だとした。そして「結局のところ米国は、敵に決定的に勝利する力を持たねばならない」「必要とあらば、敵の領土を占領し、体制を変えることも含まれる」と述べた。
 そのために宇宙・ミサイル防衛やハイテク兵器など、あらゆる部門への投資を拡大し、次の四つの防衛目標を達成するという。@同盟国に米国との協力が安全かつ有益だと悟らせること、A潜在的な敵が競争への誘惑を覚えることを断ち切ること、B米国や同盟国への潜在的な敵の強要や利敵行為を抑止すること、C抑止が成功しなかった場合には場所と方法を選んで決定的に勝利すること。
 そして真珠湾研究者の言葉を引用するなどして、「米国が現在行動しないなら、新たな脅威が台頭し、米国を奇襲するだろう。過去にもそうだったのだ。過去との違いは、今の兵器ははるかに強力だということだ」と述べた。
 ブッシュ政権が中国を「潜在的敵」として戦争を構えていること、いずれ日本がアメリカとの同盟関係を放棄し軍事的に対立することもあるとの認識を持っていることは明らかだ。
 今年五月十五日に出されたランド研究所報告では、日米関係についてもっと露骨に書いている。
 「日本はすでに前記の諸課題(北朝鮮の核とミサイル計画、中国の軍近代化)に対応する軍事力の建設を始めているし、軍事的にさらに積極的になる意志もすでにある。…決定的問題は、日本の軍事増強が、また日本が軍事力使用を考えることにいっそう意欲的になっていることが、米日同盟のコンテクストの中で起こっていることか、それともこの同盟から決別する一歩として起こっているかということだ」
 これを読めば米帝が日米同盟を強化する意図がはっきりする。アジア情勢の激動と日米争闘戦の激化が、日帝の軍事大国化と侵略戦争の衝動を高めている。この現実の中で日帝の対米対抗的な突出を防ぐためには、日米安保を最大限強化し、日帝を中国・朝鮮侵略戦争に動員して、米帝主導でアジアを再編することが必要だというのだ。

 9条改憲への決意語る田中

 小泉政権は、この米帝戦略に対応し、改憲と戦争国家化を絶対的な課題として登場した政権だ。
 田中外相が六月の日米外相会談で「われわれは憲法について今になってやっと衆参両院で議論し始めた。九条の問題を中心に政府自身が議論し、最後には国民投票になる。ここに至るまで五十年かかった。やっとここまで来た」と、九条改憲に並々ならぬ意欲を示していたことが明らかとなった。また、七月十七日のワシントン・ポストは「現実の世界状況は憲法の解釈変更か定義変更を示唆している」というベーカー新駐日大使の発言を掲載した。
 米帝ブッシュの激しい戦争政策と対日戦略は、日帝の改憲衝動を爆発的に高めており、米帝はこれを抑えつけるのはもはや賢明でないと判断しているのだ。
 七〜八月決戦は、米・日帝国主義の恐るべき戦争政策と真っ向から対決する決戦だ。「中国・朝鮮侵略戦争阻止」のスローガンを掲げて闘おう。八月十五日小泉の靖国神社参拝を実力で阻止し、改憲と戦争の小泉政権を打倒しよう。
 反帝国主義・反スターリン主義世界革命へ、決意も新たに進撃しよう!

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週刊『前進』(2016号5面2)

7・20 反戦反核東京集会開く ヒロシマ大行動を訴え 

 東京の文京区民センターで七月二十日、被爆五十六周年八・六広島−八・九長崎反戦反核闘争全国統一実行委員会の主催で「反戦反核東京集会」が行われ、六十人が集まった。
 この集会は、広島・長崎反戦反核闘争の大爆発のために前段集会的に東京で行われたものだ。この夏の広島・長崎闘争は、小泉反革命の登場で例年になく重大な闘いとなっている。
 集会では、小泉の侵略戦争賛美と被爆者「英霊化」攻撃と対決し、「くり返すな! アジア侵略−−ヒロシマ・ナガサキ・オキナワを」のスローガンを原点に闘おうと訴えられた。
 広島から反戦被爆者の会の下田禮子さんが駆けつけ、ヒロシマ大行動への大結集を訴えた。若い人に広島に来てほしいと話し始めた下田さんは、母を原爆で失ったことなど自らの被爆体験を切々と語り、「当時は大本営発表を信じ日本は負けないと思っていた」と話した。また戦後、レッドパージで職場を首になったこと、おばの小西ノブ子さんのことなどを時折ユーモアを交えながら語った。日米新ガイドラインは日本を再び戦争にもって行こうとしていると感じ、署名運動などを全力でやってきたと熱っぽく話し、八・六ヒロシマ大行動への結集を訴えた。
 相模女子大教授の吉田義久さんは「日本の核武装と教科書問題」と題して講演。帝国主義と核、弾道ミサイル防衛構想、日本の核武装の問題などを話した。
 都政を革新する会の長谷川英憲さんと在日台湾人元日本兵の林歳徳さんが特別アピール。実行委員会の三角忠さんが基調報告で「広島・長崎反戦反核闘争の爆発で小泉政権を打倒しよう」と訴えた。
 最後に全学連と労組交流センターが決意表明を行った。「小泉の靖国参拝はアジア侵略宣言だ。広島・長崎闘争の爆発から参拝阻止へ」と訴えた。

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週刊『前進』(2016号5面3)

被爆56周年/ヒロシマ・ナガサキ、オキナワは、小泉の改革・改憲攻撃を許さない!
8・9長崎反戦大行動への賛同の呼びかけ

 八・六広島−八・九長崎反戦・反核闘争全国統一実行委員会から、八・九長崎反戦大行動への賛同の呼びかけが発せられたので紹介します。(編集局)

〔呼びかけ人〕
 本島等(元長崎市長)高實康稔(長崎大学教授)知花昌一(沖縄反戦地主、読谷村村議)坂井留吉(六ケ所村核燃から漁場を守る会)桜井善作(小新聞「野火」主宰)佐藤芳夫(元中立労連議長)下田禮子(反戦被爆者の会)吉田義久(相模原反核市民の会代表)大野康平(弁護士)三角忠(三一書房労組委員長)
 一九二九年型世界大恐慌を上まわる史上空前の大恐慌・大不況が始まっている。そして、二九年世界恐慌が第二次世界大戦へと直結していったように、世界経済のブロック化と帝国主義対帝国主義の対立は、侵略戦争、第三次世界大戦へと突き進まざるを得ないのだ。アメリカ経済の巨大なバブルの崩壊が始まっている。その中で登場したブッシュ政権はむき出しの戦争政策を展開している。
 米帝ブッシュは、就任前後から米帝の世界政策、世界軍事戦略、核兵器体系の見直しを公言してきた。「新ミサイル防衛構想」はその核心である。四月一日の米軍スパイ機による中国軍機への接触・墜落事件、五月一日のブッシュの新ミサイル防衛構想発表、五月七日のラムズフェルド国防長官によるアジア重視の新戦略発表、五月十五日の米シンクタンク「ランド研究所」による「米国とアジア−新たな戦略と軍の態勢について」の報告書でブッシュの戦争政策が明らかになってきている。それは、ロシアをとり込み中国、北朝鮮を先制第一撃的能力をもって対峙・封じ込め、時期を見て覆す体制を構築しつつ、全世界で侵略戦争を展開し、他帝国主義との争闘戦をも展開せんとするものである。その為に実際に核兵器をも使用せんとするものである。
 こうした大情勢の激動化の中で、危機を深める没落帝国主義・日本帝国主義の延命をかけた政権として、戦争と改憲と大リストラの極右・小泉政権が誕生した。小泉は「特攻隊の気持ちが政治信条だ」と公言する。首相として八・一五靖国神社に公式参拝すると言う。日本帝国主義による朝鮮・中国・アジア諸国への新たな侵略戦争の宣言だ。アジア・太平洋戦争は天皇と日本帝国主義支配階級の利益と延命のために引き起こされた。二千万人ものアジア人民を侵略、虐殺、じゅうりんし、日本の労働者人民もそこに根こそぎ総動員して沖縄戦や広島・長崎の惨禍を強制した最初から最後まで徹底した間違った戦争だった。
 さらに小泉は集団的自衛権行使への踏み切り、有事立法着手、教育基本法改悪をむき出しの形で押し進めている。小泉内閣は、憲法九条を破棄する改憲内閣であり、新たな侵略戦争と世界戦争に日本を突き動かしていく超反動内閣である。小泉政権は「聖域なき構造改革」を叫び、まるでそれが世直しの大改革運動であるかのように見せかけようとしている。これによって今日の危機が一挙に突破され、経済も立ち直り、労働者人民の生活が向上するかのような幻想をあおっている。そのために「今の痛みに耐えて明日をよくしよう」などと言いマスコミも小泉「改革」を後押ししている。「改革」で景気はよくなるのか? 断じて否! それは恐慌、不況をむしろ激化させ、ふたたびみたび戦争への道へと転げ落ちるものでしかない。
 憲法九条が破棄され、新たな戦争の時代が始まろうとしている。沖縄、ヒロシマ・ナガサキをくり返してはならない。今こそ労働者人民自身が立ち上がり政治と社会を変える主人公とならなければならない。団結してデモやストに立ち自民党政治を打ち倒そう。小泉政権を打倒しよう。
 二〇〇一年六月二十日

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週刊『前進』(2016号5面4)

 改憲阻止決戦シリーズ 今、問い直す侵略の歴史
 第2部 15年戦争の末路 (2)
 沖縄戦 (1) 米軍上陸まで
 50万県民を道連れに玉砕戦へ

 沖縄戦は、普通一九四五年四月一日の米軍の沖縄本島上陸から始まり、今「慰霊の日」とされている六月二十三日の牛島司令官の自殺の日をもって終結したとされている。だが、それは正確ではない。米軍は前の年から空襲を始めており、本島上陸前の三月二十六日に慶良間諸島に上陸している。また、六・二三の後も戦闘は続き、九月七日の降伏文書署名をもって終戦となったである。

 対馬丸沈没事件

 一九四四年七月七日に西太平洋マリアナ諸島のサイパン島の日本軍守備隊が全滅した。サイパンは一九一四年以来日本が委任統治領として侵略し、先住民に対する皇民化教育をして支配し、二万五千人の入植者を送り込んでいたが、その大半は貧しい沖縄からの移民、出稼ぎ労働者だった。
 サイパンの戦闘では、チャモロ人、カナカ人など先住民と朝鮮人が戦争に巻き込まれた。非戦闘員である住民は撤退も降伏も許されず、「玉砕」=「集団自決」を強いられた。日本軍による住民虐殺もあった。日本軍約四万と住民約一万、あわせて五万人の命が失われた。沖縄戦の先ぶれがここにあったのだ。だが、これだけの犠牲を強いられても、日帝=天皇は戦争をやめようとせず、なおも戦争を継続し、本土決戦を構えたのである。
 サイパン失陥は、日帝の唱えた「絶対国防圏」の崩壊であり、日本に米軍が乗り込むのは時間の問題になった。この後、連合軍はフィリピン奪回の戦争に突入するとともに、日本本土攻略に向け沖縄への攻撃体制に入った。
 これより前、三月二十二日に大本営直轄の沖縄守備軍・第三二軍が創設されていた。
 日本政府は、沖縄戦必至と見て、沖縄の約十万人の非戦闘員の本土への集団疎開を決めた。「疎開」とは、空襲に備えて、都会から比較的空襲を受けそうにない農村に移動することを言う。だが、沖縄戦でのそれは、沖縄に派遣される日本軍の食料確保と陣地構築が目的であった。軍の作戦上役に立つかどうかが判断の基準で、役に立ちそうなものはすべて動員する。逆に作戦上邪魔と見れば排除する。本土に疎開させ、最後には本島北部に疎開を命じた。だが、山岳地帯が広がる北部は避難すべき自然壕(ごう)も食料もない所なのである。
 すでに沖縄近海は米軍の潜水艦が出没し、制海権は完全に米側に握られていた。六月二十九日には、沖縄守備軍を乗せた富山丸が鹿児島から沖縄に向かう途中に米潜水艦の攻撃を受け沈没、四千人が死亡した。
 それから二カ月後の八月二十一日、軍用船対馬丸は七歳から十五歳までの疎開学童八百二十五人と、引率者や一般疎開者八百三十六人を乗せて那覇を出航した。翌日夜、鹿児島の南西二百六十`(奄美大島と屋久島のほぼ中間)の悪石島(あくせきじま)付近にさしかかったところを米潜水艦の魚雷に直撃され、一瞬にして沈没した。乗客中生き残ったのはわずか百七十七人(学童五十九人)にすぎなかった。千五百人もの死者を出したのである。
 事件後、沖縄守備軍は住民の動揺を恐れ、生存者に対して遭難の事実を堅く口止めした。

 44年10・10空襲

 一九四四年十月十日、沖縄最大の都市那覇を始め南西諸島全域が、米艦載機百九十九機によって五次にわたる猛烈な大空襲を受けた。10・10(じゅうじゅう)空襲と呼ばれた。
 この日朝から、南西諸島の各飛行場が銃爆撃され、また那覇港に停泊中の船舶、港湾施設、さらに那覇市街地に対して爆撃が繰り返された。日本軍はなすすべがなくじゅうりんされるがままとなった。
 米軍は、風上に焼夷弾(しょういだん)を投下し無差別の銃爆撃を繰り返した。九時間に及ぶこの攻撃で那覇市は市街地の約九割を消失させられた。死者五百四十八人、家屋損壊一万千五百余戸、軍の損害は航空機五十一機、船舶百五十五隻、弾薬約百万発、軍用食糧米三十万俵。五万人の市民が被災し、中北部への移住を余儀なくされた。
 この突然の大空襲は、現代戦の無差別殺戮(さつりく)のすさまじさを見せつけ、守備軍の無能、無力を露呈させるものだった。
 このことがあって、疎開に拍車がかかり、米軍が上陸するまで疎開を続け、六万人が本土へ、二万人が台湾へ集団疎開した。

 学徒隊の組織化

 四五年に入って早々、第三二軍は第二次防衛召集を実施して、満十七歳以上四十五歳以下の男子のほとんどが召集された。四五年二月十五日に第三二軍は「戦闘指針」を発し「軍官民共生共死の一体化」の方針を徹底させていった。前年より、勤労動員をもって北飛行場(読谷)、伊江島飛行場を建設していたが、三月には米軍上陸が近いというので、今度はこの重労働でつくった飛行場の破壊を命ずるというデタラメな指令が行われた。
 そして、県下の中学校や農林学校などの生徒は鉄血勤皇隊に組織され、高等女学校や女子師範学校の生徒は従軍看護要員として配属された。
 沖縄における「学徒隊」の組織化は、当時の本土の動員令にも規定のない違法なものだった。このように軍部の都合にあわせてどんどん勝手に沖縄県民の運命が決められていった。
 三月十八日には、文部省は「決戦教育措置」を発表し、四月一日から一年間、全国の学校授業を停止することを決定した。
 こうした中で、四五年三月二十日、大本営は「当面の作戦計画大綱」を発令し、沖縄作戦に重点を置くことを決定したのである。

 米軍の攻撃開始

 米軍の本格的な沖縄に対する攻撃は三月二十三日に始まった。この日、那覇港から数千人を乗せた疎開船が出航しようとしていた。そこに、米軍のグラマンの編隊が出現し、機銃とロケット弾を浴びせた。艦載機の低空攻撃は米軍の機動部隊が近海に接近してきている証拠だった。那覇港と小禄飛行場は黒煙に覆われ、疎開船も撃破された。本土疎開は中断された。
 沖縄戦がついに始まったのである。 (高田隆志)

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週刊『前進』(2016号6面1)

“基地を持って帰れ” 沖縄の怒り、小泉を直撃 自民党演説会前で街宣

 参院選決戦の終盤戦の七月二十四日、小泉が六・二三「慰霊の日」に続き二回目の来沖をした。
 沖縄は今、六・二九女性暴行事件を契機に始まった九五年以来の反基地闘争の新たな高揚過程にある。連合沖縄が「参院選期間中」を理由に七・二〇県民大会の「延期=中止」を決めるなど、既成勢力は「小泉人気」に屈服してきた。これに乗じて小泉が沖縄に乗り込み、六・二九以来の事態を反動的に決着しようとしたのだ。これに対し沖縄県民の怒りが爆発した。
 この日、沖縄選挙区の自民党候補の街頭演説会が午後二時から予定され、弁士として小泉が来沖することに対して、平和市民連絡会の会員を中心に「これ以上、米軍犯罪を許さない市民運動」が緊急抗議行動に立ち上がった。
 午後一時、県庁前に集まった会員たちは、ただちにビラまきと街頭宣伝を開始した。自民党の宣伝カーが止まった真向かいの広場には、すでに自民党・公明党の動員が陣取っている。そのど真ん中で「小泉フィーバー↓基地重圧」「日米地位協定を抜本的に見直せ」というビラがまかれ始め、「地位協定を抜本的に見直せ!」「ウチナーンチュをなめるな! 基地全面撤去!」と書かれたプラカードとのぼりが掲げられた。
 すぐに警察が飛んで来て「ビラまきをやめろ! 五分でやめないと逮捕するぞ!」と妨害を試みた。これを粉砕し、次々とビラが県民の手に渡された。
 ビラを受け取った県民が「あいつらに負けるな! がんばれ」と激励の声をかけていく。自民党のビラと勘違いして受け取らなかったが、小泉批判の街宣と気づいて引き返し、「私にもビラを下さい」と受け取っていく人が何人もいた。
 職場を抜け出して来た女性労働者は「小泉が来ると知りじっとしてられなくて来た。あの車(宣伝カー)の前に行って小泉に『沖縄の基地をどうするつもりか!』と一言いってやらないと気が済まない。がんばって」と声をかけてきた。
 さらにハンドマイクを使っての宣伝戦が炎天下で続けられた。島田正博さん、崎原盛秀さん、宜保幸男さん、西尾市郎さん、島田善次さんらが次々とマイクを握り、県民に訴えかける。
 「小泉が沖縄に来るのであれば、県民の前で『地位協定を抜本的に見直す』と言明せよ」「戦争を賛美する歴史教科書を認めてはならない」「靖国神社の公式参拝をやめよ」
 小泉の矢継ぎ早の反革命攻撃への弾劾と沖縄圧殺攻撃への怒りがたたきつけられた。自民党の宣伝カーの音声は完全にかき消され、一帯が「小泉弾劾!」の声で制圧された。
 そこへ小泉の「テーマソング」が流れ始める。「小泉が来るぞ!」。マイクを握った島田善次牧師が怒りのシュプレヒコールを繰り返す。「小泉は基地を持って帰れ!」「女性暴行事件を許さないぞ!」
 小泉の演説中、激しいシュプレヒコールが繰り返され、小泉の声はかき消されてまったく聞こえない。小泉は約三十分の演説を終わると、そそくさと沖縄をあとにした。
 炎天下三時間にわたり小泉その人と対決して街頭宣伝が闘い抜かれ、約二千枚のビラが配布された。自民党は「一万人も集まっている」と虚勢を張ったが、実数で約三千人。組織動員が中心で、小泉の演説中もほとんどの県民は立ち止まることなく通り過ぎた。沖縄では「小泉人気」などまったくなく、むしろ小泉の沖縄に対するあまりの「無知」と暴言の数々に、怒りが文字どおり「マグマのように」渦巻いている。
 日帝・小泉政権の沖縄圧殺攻撃に県民の怒りの反撃がたたきつけられ、小泉の来沖の思惑はまったく逆のものとなった。
 「小泉フィーバー」なるものの内実がいかに薄っぺらなものであるか。その証拠に、小泉の演説中にその真ん前で小泉批判のビラがまかれても、組織動員の誰ひとりとしてそれをやめさせるどころか文句のひとつも言えなかった。警察権力は「五分で逮捕する」と言いながら三時間におよんだ街宣に手を出せなかった。これらの事実の中に、小泉反革命と真っ向から対決し闘い抜くならば、これを粉砕することはまったく可能であることを示した。
 日帝・小泉の沖縄圧殺攻撃を打ち破り、基地全面撤去へ沖縄闘争の新たな発展をつくり出そう。闘う朝鮮・中国−アジア人民と連帯し、八・六−八・九闘争を爆発させ、小泉の八・一五靖国神社公式参拝を実力で阻止せよ!

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週刊『前進』(2016号6面2)

新刊紹介 共産主義者 129号
小泉との全面対決へ
 ●「構造改革」と労働運動の激突 浜田論文
 ●小泉政権登壇の政治史的考察 大谷論文

 本号は、小泉「改革」との全面的激突を階級的課題としてすえきり、労働者階級の大反撃を呼びかけた。以下、二本が中心企画。

 資本攻勢を分析

 巻頭論文・浜田同志の「小泉『構造改革』と大資本攻勢」は、日帝総資本の産業・労働政策の動向と必然性から、今日の「改革」をとらえきった画期的分析である。
 第一章、二〇〇一年春闘の戦略的総括を踏まえ、各章でそれぞれ九九年「経済戦略会議報告」、日経連の九五年「新時代の日本的経営」から二〇〇〇・〇一年「労問研報告」を鋭く検討し小泉改革に至る資本攻勢とその関連性を考察した。以上の観点から最終章で小泉改革に切り込んでいる。
 その核心は、改革の内実が小泉独自の真新しい特効薬などではなく九五年以来の資本攻勢の露骨な集大成であるという事実、さらにこれらがバブル崩壊以降の経済危機の構造の中で発せられ、米帝の八〇−九〇年代資本攻勢に学んだものだという指摘である。この指摘は、帝国主義間争闘戦に規定された九〇年代日帝の危機の根幹を突くものであり、その全容が独占金融資本救済の一大反革命であることを明らかにしている。
 それらの攻撃が一方的な資本の攻撃としてあるのではなく、九〇年代後半の労働者階級との現実の歴史的攻防を反映しており、労働者階級の闘いの実践こそが敵をこうした絶望的姿に追い詰めているのだというダイナミックな視点が示されている。
 この分析から筆者の結論は鮮明である。「日本再生の七つのプログラム」は、日本社会の戦後的あり方のあらゆる行き詰まりを打破するとし、それらは資本の編成から政治支配のあり方にまで手をつけるものであるが、究極のところどれも労働者階級の抵抗を粉砕することなくして貫徹できないこと、その決戦はまさにこれからであること。そして国鉄・全逓・公務員など、その攻撃の矛先こそ労働運動の戦闘的再生をかけた激突の戦場にほかならないということだ。小泉改革との闘いは、日本人民にとって倒すか倒されるかの「階級間戦争」であると提起し、この打倒に向かって全面的檄を発している。

 自民支配の終焉

 大谷同志の「小泉政権とよみがえる国家主義」は、小泉政権登場が歴史的に意味するものを日帝戦後政治史の中にとらえた。戦後自民党政治の特質とその危機の深まりを的確に描き出し、特に九〇年代の政治過程における五五年体制崩壊と小沢路線の挫折の総括をとおして現在の小泉政権の性格と弱点を探っている。
 結論的に言うならば、自民党支配の破産と終焉(しゅうえん)が政党政治そのものの危機と強権国家への指向を生み出し、人民大衆の政治意識の激烈な流動化を引き出すであろうということである。焦点は、そうした中での日帝の最奥部に生き延びてきた復古的天皇主義的潮流である小泉反革命の超反動的正体と役割である。これらは、情勢の危機的進行を明白に証明しており、革命情勢の規定内容を今日において浮き彫りにするものとなっている。
 筆者の主張は、こうした中での革命党建設の課題と政治的実践的方針を中心に労働者階級の革命的針路と展望を示すことにある。

 実践の呼びかけ

 以下の二論文は、小泉反革命打倒へ向けた実践方針にあたる。今夏・秋の大激突を呼びかけている。
 中村同志の「第二の分割・民営化攻撃とのたたかい」は、三−四月の動労千葉春闘百二十時間ストライキの勝利の総括とその影響のもとにかちとられた五・三〇闘う国労闘争団の三千人集会の歴史的地平を力強く確認。「四党合意」を粉砕する国鉄闘争の意義と勝利の展望を示している。
 荒瀬同志の「被爆五六周年、小泉反革命に反撃するヒロシマ・ナガサキ」は、今夏、小泉の八・六来広を迎え撃ち日帝の英霊化攻撃と対決する被爆者解放戦線のアピール。米帝ブッシュによるアジア政策の転換に伴う日帝のアジア侵略・核武装化政策との対決点を鮮明にした。
 矢剣同志の「松崎ファシスト労働運動論批判」は、松崎のJR東労組会長辞任、顧問就任が意味するものを軸に、JR総連の資本の手先化と同時に、松崎にこびて動揺するカクマルの危機と矛盾を痛烈に看破した。一切が黒田思想の反革命性に端を発していることを指摘し、カクマル打倒へ国鉄労働者を始め全労働者に反撃を呼びかけている。
 インタビュー「中国の日系企業労働者の状態」は、島崎同志が聞き取った電機労働者の貴重な体験談。日系企業の侵略の実態を生々しくリポートし、中国プロレタリアートとの連帯をこめて、その闘いの息吹を伝えている。
 石田同志の「新農業基本法−戦争と農業・農民切り捨て」は、九九年新農業基本法の侵略的・反動的本質を批判。食料安保論が戦後農政の転換と農業・農民切り捨てであることを暴露し、プロレタリアートと連帯する革命的な農民戦線論を追求している。

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週刊『前進』(2016号6面3)

連載 治安国家化との対決を 6
 結社禁止の団体規制法 ガラス張り化と活動規制

 処分合憲

 六月十三日、東京地裁はオウム真理教(アレフに改称)が公安審査委員会を相手に団体規制法の観察処分の取り消しを求めていた違憲行政訴訟に対し、観察処分を合憲と認め、教団側の請求を棄却した。
 団体規制法(第二破防法)は「無差別大量殺人を行った団体の規制に関する法律」という仰々しい名前の法律で、九九年十一月二日に閣議決定・国会提出、国会での審議もほとんどなしに十二月三日に成立、同月二十七日施行と同時にオウム真理教に対して「観察処分」が請求され、二〇〇〇年一月二十八日に発動された。その後、教団は三カ月に一回、報告書を提出、三十数回の公安調査庁・警察による「立ち入り検査」も行われた。
 これに対して、教団は違憲行政訴訟に訴え、昨年六月十五日に東京地裁で第一回審理が始まり、今年三月二十六日に最終弁論があり、判決が出されたものである。
 判決は、団体規制法の観察処分を合憲とした上で、「当該団体が再び無差別大量殺人行為を開始するとの点についての具体的危険すら存在しない場合には、観察処分を行うことは憲法に違反する」との解釈を示した。さらに「無差別大量殺人行為を再度実行するような権限ないし影響力を有していることが必要ではない」とした公安審査委員会の主張を退けたが、「具体的危険」を認定して、団体規制法および観察処分の合憲性、オウムへの適用の適法性を判断したものである。
 司法が結社の禁圧を容認したものとして徹底的に弾劾しなければならない。
 団体規制法は、「より使いやすい破防法」として発動されたが、内容は破防法以上に実効性のある結社禁止の悪法であり、実際そのように機能している。
 団体規制法は広く団体・結社を対象としたもので、その目的は団体の活動のガラス張り化と、極度の活動規制によって実質的に団体の転向強要と解散を狙うものである。「オウム真理教を対象としている」と宣伝されているが、法の中にはオウムを対象とするとはまったく明記されていない。今回の司法判断でも、その点を明確化した。
 破防法で規定する暴力主義的破壊活動であって、「不特定かつ多数の者を殺害し、又はその実行に着手してそれを遂げない」団体に適用されるとの規定である。つまりこれは、オウムを奇貨として、実は暴力革命の思想・綱領をもつ革命党・革命運動は言うにおよばず、実力闘争の方針を貫くあらゆる労働運動、農民運動、学生運動を対象とした治安法ということだ。

 観察処分

 団体規制法は大きくは、現在かけられている「観察処分」(第五条)と、その次の段階に来る「再発防止処分」(第八条)の二つからなっている。
 「観察処分」は「三年を超えない期間を定めて」公安調査庁長官の観察に付するというもの。団体の役員・構成員の氏名・住所の報告、資産(預貯金・有価証券、貸付金・借入金なども)・土地の報告、会議・意思決定の内容の報告、機関紙誌の報告などを三カ月ごとに公安調査庁に行わなければならないとされ、オウムは忠実に詳細に報告して丸裸にされた。さらに、判決に対しても控訴せず「真実の教団の姿を市民に対してありのままに伝えていく努力」を誓い、権力のガラス張り化の攻撃に組織をゆだねた。
 団体規制法では、初めて公安調査庁に強制調査権が与えられ、警察には令状なしの「立ち入り検査」権が与えられ、すでに一年間に三十数回の立ち入り検査が実施された。
 観察処分の後、幾度か検討されたといわれている「再発防止処分」は、@いかなる名義をもってするかを問わず、土地・建物を新たに取得・借り受けることの禁止、A当該団体の所有管理する土地建物の使用禁止、B無差別大量殺人行為の関与者、行為当時の役員の活動禁止、C加入強要、勧誘、脱退妨害の禁止、D現金、金銭債権、有価証券、貴金属の贈与を受けることの禁止などである。オルグもカンパも建物を持っても使ってもダメというのだ。破防法で解散処分を受けた団体が禁止される「団体のためにする行為」の大半が網羅されている。

 住民動員

 さらにこの団体規制法の実施過程が、同時に権力・自治体・マスコミのオウム排斥運動の異様なまでの扇動の中で住民を動員して行われたことに注目する必要がある。銀行口座を開かせない、土地の取得や建物の貸借はおろか、住民票を自治体が受理しない。子弟を就学させない。権力が情報を提供し右翼が扇動しマスコミが大々的に取り上げる。住民が自警団・監視団を設置しデモを組織する。
 しかも、これらが「危険な者から社会を守る」という社会防衛論の波及となって、事件が起きたらすぐ治安法の強化にすり替えられている。そして大阪の児童大量殺傷事件に飛びついた小泉内閣は「保安処分」の新設攻撃を来年の通常国会、早ければ今秋の臨時国会にも出そうとしている。
 すでに、司法審の最終答申が六月十二日に出され、三年間をかけて法制化し、改憲の先取りをしようとしている。PKFの凍結解除、有事法制の中間報告を九月国会に出し来年の通常国会に法案を提出しようとしている。戦争推進内閣の「城内平和」づくりの一環として政治弾圧、治安体制の強化が矢継ぎ早に押し寄せようとしている。すでに始まっている二〇〇二年の国際的組織犯罪条約批准−国内法の整備(組対法・刑事訴訟法の大改悪)との攻防は、労働者・民衆が戦争に反対し自由をかちとり団結を守る、引くことのできない一戦である。 
(立花茂)

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