ZENSHIN 2002/03/25(No2046 p06)

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週刊『前進』(2046号1面1)

米帝ブッシュの「対テロ第2段階」宣言弾劾! 国際反戦闘争の爆発を
 動労千葉・総連合ストに合流し3・30春闘中央総決起集会へ
 ベアゼロ妥結弾劾・日経連路線粉砕

 日帝・小泉政権は危機に突入している。02春闘は今や、大失業と戦争の道を突き進む日帝・小泉政権およびブルジョアジーと対決する階級的大決戦となった。動労千葉・動労総連合の歴史的なストライキ決起は、一大資本攻勢にさらされているすべての労働者に、階級的団結の回復と怒りの総反撃を呼びかけている。連合・JR総連の動労千葉スト破壊を絶対に許さず、全力でストに大合流して春闘総行動を闘おう。全日建運輸連帯関西生コン支部と全国金属機械港合同、動労千葉の闘う3組合が呼びかける3・30春闘総行動中央総決起集会(要項2面)に総力結集しよう。その力で有事立法阻止・教育基本法改悪阻止・改憲攻撃粉砕、小泉政権打倒へ突き進め。

 第1章 賃下げ攻撃の先兵=連合・JR総連打倒

 02春闘が最大の山場を迎えた真っただ中で、動労千葉は、第2の分割・民営化である検修・構内部門の全面外注化と動労千葉根絶を狙う大攻撃に対し、全組合員の総力をあげた徹底抗戦の闘いに突入した。
 2月20日からの無期限の時間外・休日労働拒否闘争に続いて、3月13日、幕張・京葉の両電車区で指名ストに突入した。JR東資本が動労千葉との団体交渉すら拒否したまま、車両の検査体系を抜本的に改悪する「新保全体系」合理化の4月1日強行に向けた訓練開始を一方的に通告してきたことへの、即座の反撃である。3月28日〜31日には72時間の大ストライキを、動労総連合傘下の各組合も合流し、あらゆる反動を突き破って打ちぬく方針が決定されている。
 この闘いは同時に、国労解体攻撃を許さず、1047人解雇撤回闘争の不屈の発展をかちとる決戦であり、02春闘の勝利をかけた決戦だ。日経連労問研報告と小泉「構造改革」を真正面から実力で粉砕する決戦である。米帝ブッシュの世界戦争路線と一体となった日帝・小泉の戦争政治を断じて許さず、有事立法阻止・教育基本法改悪阻止・改憲粉砕、小泉政権打倒にまっしぐらに突き進もう。
 春闘絶滅の危機と大量首切り、賃下げ、終身雇用制解体、労組破壊の嵐(あらし)の中で、この全情勢を根底からひっくり返す労働者階級の渾身(こんしん)の実力決起が、断固として開始されたのだ。すべての闘う労働者は今こそ、動労千葉に続いて立ち上がろう! 日帝・資本のやりたい放題に対する激しい怒りを煮えたぎらせ、新たな団結を求めて総決起せよ。3・30春闘総行動の歴史的大爆発へ突き進もう。
 02春闘は、連合の総屈服と帝国主義的労働運動の全面化のもとで、重大な階級的激突情勢を迎えている。3月13日の金属大手集中回答は、自動車・電機・造船重機・鉄鋼の主要4業種が軒並みベアゼロという異例の許しがたい事態となった。トヨタに至っては、3月期決算で1兆円を超す過去最高の連結経常利益を見込んでいながら、「国際競争力確保のため賃上げはできない」と宣言した。
 さらに定期昇給の凍結・廃止が公然と語られ「ワークシェアリング」の名のもとに、賃下げと終身雇用制解体・全労働者の不安定雇用化の攻撃が猛然と襲いかかっている。他方で鉄鋼労連などがベア取り下げとひきかえに要求していた「雇用安定協定」は、整理解雇への規制も何もなく、逆に資本の首切りの自由を労組として完全に容認するものとなった。
 こんな無残な状況がなぜ生み出されたのか。労働者の階級的団結が破壊され、連合の労働貴族どもの手によって、その支配する組合が労働組合とはおよそ言えないものに変質させられているからだ。JR総連・松崎カクマルのファシスト労働運動は、連合の帝国主義的労働運動の最先兵の役割を買って出ている。
 「帝国主義が生き残るためには労働者人民は痛みをがまんせよ」という日帝・小泉の攻撃に少しでも屈服して、労働者の闘う団結を自ら解体するならば、労働者階級はたちまち一切の犠牲を転嫁され、資本の奴隷として骨まで搾取される地獄に無慈悲にたたき込まれる。一歩の後退が百歩の後退となり、壊滅となるのだ。それが危機に立つ資本の論理であり、帝国主義というものだ。
 実際に日帝ブルジョアジーは、今日、帝国主義間争闘戦における敗退と日帝の没落の危機をまきかえすために、「総額人件費削減」「解雇ルールの法制化」を掲げ、従来の労資関係そのものの反動的転換を決断してきている。終身雇用と年功賃金に代表される戦後日帝の存立を可能にした労資関係を解体し、それを前提とした社会保障制度や労働法制もすべて解体しようとしている。
 その核心は、労働者階級の戦後的諸権利と歴史的獲得物とを根こそぎ奪って、無制限の搾取を可能にする体制を何がなんでもつくりだそうとするところにある。そのために闘う労組の破壊はもとより、春闘そのものを圧殺し、団結権・団体交渉権・争議権という労働基本権の全面解体を狙っている。大失業攻撃にあえぐ労働者の反乱に恐怖し、最後は国家暴力の発動で一切の闘いを根絶しようとしてきている。
 そして、02春闘をこの日経連労問研報告路線の全面貫徹のための最大の決戦場と位置づけ、並々ならぬ決意でこれまでとは次元を画する攻撃に踏みきっているのだ。労働者階級がこれに真っ向から反撃し、自らの組織と団結を実力で防衛し、あるいは新たに創造して立ち上がらないならば、本当に丸裸にされて家族もろとも路頭に放り出される、そういう恐るべき時代が来ているのだ。
 逆にこの階級決戦に、闘う労働者が死活をかけて決起し、連合支配を実力でぶち破る一個の結束した力を登場させることに成功するならば、6千万労働者階級の魂をゆるがす革命的な分岐と大流動が必ず切り開かれる。現に今、倒産とリストラ・首切りが激しく進み、どんな低賃金もひどい労働条件も問答無用にのめと言わんばかりの攻撃が無慈悲に襲いかかっている中で、労働者の怒りは爆発寸前ではないか。
 日帝・資本に虫けらのように扱われ、「お前は死ね」と言われてどうして黙って従えるか! 社会の主人公は労働者だ。そもそも春闘とは何か。全労働者が階級として結束し、その団結した力をもって搾取者である資本家階級を追いつめ、自らの生存と生活を守りぬくための賃金と労働条件を実力で獲得し防衛していく闘いだ。
 帝国主義的労働運動に転落した連合や社・共、全労連などの全党派・勢力はこの闘いを投げ捨て、逆に資本の手先に丸ごと変質するか、無力化を深めている。今こそ帝国主義を打倒する労働運動の新たな潮流が鮮烈な社会的登場をかちとり、6千万労働者の怒りの唯一最大の結集軸となるべき時が来ているのだ。
 動労千葉・動労総連合の春闘ストライキへの大決起と、闘う3組合による3・30春闘総行動への呼びかけは、まさにその巨大な扉を開くものである。歴史的なストに呼応して、3・30への圧倒的な大結集をかちとろう。小泉「郵政民営化」攻撃と闘う全逓労働者、石原都知事による賃金カット、都労連解体攻撃と闘う都労連を始めとする自治体労働者、「日の丸・君が代」攻撃との攻防の最中にある教育労働者、NTT11万人合理化の攻撃と闘う電通労働者、連合の大裏切りでベアゼロ・賃下げを強制される金属などの民間労働者、さらに倒産・工場閉鎖などの攻撃にさらされている中小の労働者、そして失業を強制された労働者。このすべての怒りを結集し、東京・宮下公園から新宿への一大デモをやりぬこう。
 南朝鮮・韓国では、発電産業労組を先頭に、国家基幹産業をゆるがすゼネストがすでに3週間にわたって不屈に闘いぬかれている。民主労総は3月15日、ゼネストの真っただ中で3・21小泉訪韓と韓日投資協定国会批准阻止の闘争に決起し、日帝による侵略の激化と金大中政権の治安弾圧に激しく抗して闘っている。3・30を、この韓国労働者との国際連帯をかけ、日本の階級的労働運動の再生をかけた闘いの日としよう。

 第2章 パレスチナ・アフガン人民と連帯を

 動労千葉ストと3・30春闘総行動は同時に、闘うパレスチナ人民、アフガニスタン人民に連帯し、帝国主義の侵略戦争・世界戦争を実力で阻止する巨大な国際的内乱の一翼を担う闘いだ。何よりも自国帝国主義=日帝の参戦と戦争国家化攻撃を絶対に許さず、有事立法阻止・教育基本法改悪阻止・改憲粉砕の大闘争への突破口を開く闘いだ。
 とりわけ今日、危機と腐敗を加速度的に深める小泉政権を労働者人民の実力で打倒する闘いが待ったなしに求められている。3・30の大結集を新たな出発点、土台として、これらの闘いに断固として攻め上ろう。
 パレスチナ情勢、アフガニスタン情勢はいよいよ重大化している。
 3月に入ってイスラエルは「テロの基盤を破壊する」と称してパレスチナ自治区への大規模な侵攻を繰り返し、見境のない殺りくと破壊にのめり込んでいる。3月10日には自治政府の建物にミサイル30発を撃ち込み完全破壊。11日にはヨルダン川西岸のカルキリヤを戦車とヘリで攻撃し、市街地を制圧、電源を断った上、各家をしらみつぶしに捜索して13歳から45歳ぐらいまでの男性600人を拘束した。同様の襲撃を各地の難民キャンプに対して行っている。
 これに対してパレスチナ人民は、「パレスチナの抵抗運動はもはや後戻りできない段階に達した」と宣言し、民族丸ごとの武装蜂起とも言うべき決死の闘いに次々と立ち上がっている。すさまじい暴力と抑圧にさらされる中で、膨大な血の犠牲をのりこえて闘いぬく以外に生きる道はないと固く決意しているのだ。
 また、アフガニスタンではカルザイ政権の発足が内戦の再発と略奪の復活、人民の生活の一層の困窮をもたらす中で、その元凶である米英帝への憎しみが一層高まっている。米帝はアルカイダとタリバン兵の再結集に危機感をつのらせ、東部山岳地帯に米軍2千人を投入し、「サーモリック爆弾」という新型の大量殺りく兵器をも使って過去最大の攻撃をしかけている。戦闘は終わるどころか、米帝・米軍はベトナム戦争と同じ泥沼に引きずり込まれようとしているのだ。
 こうした中で3月9日付ロサンゼルスタイムズは、ブッシュ政権が中国、ロシア、北朝鮮、イラク、イラン、リビア、シリアの7カ国に対する核使用計画作成を軍部に指示したという重大な事実を報道した。@通常兵器では破壊できない標的への攻撃A生物・化学兵器などによる攻撃への報復B不測の軍事展開という3つの場合には、核攻撃に踏みきるというのだ。アラブ諸国とイスラエルの紛争、中国・台湾危機の爆発、朝鮮半島での戦争突入やイラクの周辺国侵攻などがその対象として具体的に想定されている。
 米帝は「対テロ第2段階」宣言をもって侵略戦争のさらなる拡大を狙い、世界戦争への突入をも想定して、その世界支配の貫徹のためには核戦争にも平然と訴えるつもりなのだ。米帝ブッシュの凶暴性と反人民性はここにきわまった。「テロとの戦い」の名で強行される大虐殺と破壊を絶対に許してはならない。不屈に闘うイスラム諸国人民、全世界の被抑圧民族人民と固く連帯し、国際的な革命的反戦闘争の大爆発をつくりだそう。戦争なしには生きのびられない帝国主義を国際的内乱で打倒しよう。

 第3章 有事立法を粉砕し小泉政権打倒せよ

 日帝・小泉政権は、この米帝との間に「対テロ同盟」を結んで侵略戦争参戦と戦争国家化への道を突進している。だがその政治的、経済的危機は今日、急速に深まり、完全な行き詰まりを迎えている。
 鈴木宗男と外務省をめぐる疑惑の露呈は、政官財の癒着で政治と行政を食い物にしてきた日帝支配階級の、おぞましい腐敗の一端を暴いた。それは、小泉政権の正体を暴露している。森政権末期の自民党支配の絶望的危機の中から「最後の切り札」として登場した小泉政権が、そのペテン性と反労働者性を全面的にさらけだしてきた。政治危機の一層の爆発は不可避だ。
 他方で、労働者人民に未曽有(みぞう)の「痛み」を強制する小泉「構造改革」は今や完全に大破産の局面に入った。何よりも日本経済の危機はますます深刻化し、昨年10―12月期のGDPは3期連続マイナスを記録、とりわけ設備投資は前期比12・0%減(年率換算39・9%減)と、80年以来の最低に落ち込んだ。不良債権のさらなる増大とデフレの深まりの中で、金融恐慌の再激化は避けられない情勢にある。米帝による日帝解体的な対日争闘戦は小泉政権をさらに根底から揺さぶっている。
 だが日帝・小泉政権は、そうであればあるほど、この危機を対外侵略戦争と国内治安弾圧への突進に一切をかけてのりきろうとし、凶暴な攻撃を強める。3月12日からマスコミを動員して開始された北朝鮮「拉致疑惑」キャンペーンの排外主義的展開は、その一環だ。昨年末の外国船への砲撃・撃沈・虐殺事件に続く、日帝の対米対抗的な独自の朝鮮・中国侵略戦争へのあからさまな策動を示すものとして徹底弾劾せよ。
 日帝はこの「拉致疑惑」で北朝鮮に対して最大級の悪罵(あくば)を投げつけているが、そもそも日帝は朝鮮人民に対していったい何をしてきたのか。日帝の植民地支配の歴史は、同時に朝鮮人民に対する無数の残虐きわまりない強制連行の歴史である。1939年〜45年のわずか6年間をとってみても、100万人の朝鮮人が日本に強制連行され、炭鉱や土木工事の現場ですさまじい非人間的労働を強制された。また20万人とも言われる朝鮮女性が田畑や家から暴力的に拉致され、あるいは言葉たくみにだまされて戦場に連れ去られ、軍隊慰安婦として言語に絶する扱いを受けた。
 だが日帝は、自らが犯したこの国家犯罪に対してただの一言でも朝鮮人民に謝罪し、償いをしたか! いまだにほおかむりし、それどころか事実すら認めず公然と開き直っているではないか。このような日帝に、北朝鮮スターリン主義を批判する資格などまったくない。
 日帝は、危機に立てば立つほど対北朝鮮・対中国の排外主義を扇動し、これと結合して「対テロ」の名による国内治安弾圧をますます強めてくる。その最大の攻撃が政府と沖縄県による5月19日の沖縄復帰30周年式典だ。沖縄を基地の島、侵略戦争の島と確認する式典だ。断固粉砕しよう。3月12日には、テロ資金提供処罰法案が組対法改悪案などと一体で閣議決定された。「資金提供罪」や「資金収集罪」の名で、革命運動はもとより戦闘的労働運動や反戦運動、市民運動のすべてを資金面から弾圧・解体することを狙う法案である。さらに有事立法の今国会提出へ向けた攻撃が急ピッチで進んでいる。
 日本階級闘争は今や、あらゆる意味でかつてない大激動、大流動の渦中に突入した。日帝・小泉の大失業攻撃と侵略戦争への突進を許すのか、それとも小泉政権を打倒するのか。前者は新たな世界戦争と全労働者人民の地獄への道であり、後者は帝国主義打倒への歴史的突破口を開く道である。階級的労働運動の復権を土台に、有事立法・改憲阻止の巨大な大衆闘争の爆発をもって、断固として後者の道を突き進もう。
 動労千葉・動労総連合ストに連帯・合流し、3・30春闘総行動の圧倒的成功をかちとり、4月三里塚暫定滑走路開港阻止の大決戦へと進撃しよう。自衛隊の東ティモール出兵阻止に決起し、反軍闘争の新たな発展をかちとろう。反戦共同行動委の闘いと巨万人民の大署名運動を両輪に、有事立法粉砕闘争の大爆発に向かって攻め上ろう。
 全国の「日の丸・君が代」反対闘争の不屈の前進を受け継ぎ、教育基本法改悪阻止の闘いを強めよう。社会保障制度の解体攻撃に大衆的反撃を組織しよう。長期獄中同志の奪還へ、1億円基金を始め真剣な闘いをつくりだそう。
 革共同6回大会の綱領と路線で今こそ武装し、今春闘争の大前進を切り開け。

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週刊『前進』(2046号1面2)

有事立法と闘う三里塚現地へ 反対同盟からのアピール(上)

 三里塚芝山連合空港反対同盟のアピールを今号と次号に掲載します。(編集局)

 暫定必ず粉砕する 事務局長 北原鉱治さん

 三里塚闘争は再び、人民の正義と国家暴力との勝敗を決する闘いになってきている。何が正義であり真実であるのか。これを明らかにするために反対同盟は闘い続ける。われわれは36年間の闘いの中で、終始一貫、現在の国家のあり方を根本から弾劾し、現在に至っている。
 反対同盟は、外郭測量に始まり強制代執行に至る国家の暴力的な土地収奪に抗し闘いを貫いてきた。今日の成田空港の現状を見る時、何が正義なのか明らかだ。何代もこの地に住み農業を営んできた住民の生活を破壊し、山野を荒廃させるなどという極悪非道は許されない。
 住民に一片の通告もなく始めた99年12月の暫定滑走路建設も同様だ。今年5月のサッカー・ワールドカップの開催に追い詰められた政府は、2500bの滑走路計画を2180bに短縮し、位置も北に800bずらし、強引に建設を進めてきた。これこそが成田空港建設の常套(じょうとう)手段だ。これを国家暴力と言わずになんと言うのか。
 ここには人が住み、生活の場がある。農家の頭上40bにジェット機を飛ばして爆音と噴射でたたき出すというやり方をどうして許せようか。反対同盟は「モノや金を求めない」「権力には絶対に屈しない」を原則にして闘ってきた。正義の抵抗として、人間性をかけて闘ってきたのだ。
 暫定滑走路は、実に無様な姿をさらけ出している。反対同盟所有の共有地や建物、開拓組合道路、人家と畑などが点在し、誘導路は2カ所も「へ」の字に曲がっている。2180bの短縮滑走路は、現在の航空産業ではなんのメリットもない。このような国際空港が世界にあるだろうか。政府の不手際、日本の政治の貧しさを、世界にお披露目する結果にしかならない。反対同盟は暫定滑走路を必ず粉砕し、成田空港の廃港を実現することを宣言する。
 現在、小泉政権は、国会に有事立法提出を狙っている。「テロ撲滅」を叫ぶ米国のブッシュ大統領に唱和し、自衛隊をアフガニスタンに出兵させて参戦国となっている。日本は、かつての第2次世界大戦の時と同じような様相を深めてきている。有事立法は、日本中を戦争に引き込むものと断じざるをえない。反対同盟が、なぜ37年間にわたり空港を元に戻せと言い続けてきたのか。反戦の砦(とりで)三里塚は、戦争を止めるために闘わねばならないという信念があるからだ。
 来る3・31―4・14全国総決起集会への大結集を訴えます。

 闘いはこれからだ 天神峰 市東孝雄さん

 テスト飛行の時はYS11というプロペラの小型機だったが、プロペラ機とジェット機は全然違う。暫定滑走路が開港して、実際にジェット機が飛べば、どんな騒音になるのか。反対同盟としても騒音調査などをやって反撃していきたい。滑走路の北側の土室(つちむろ)や久住(くずみ)地区も騒音がひどくて苦情がたくさん出ると思う。あの辺りは地価も大幅下落して、騒音がうるさくて土地も売れないという状況だ。
 騒音だけでなく、ジェットブラスト−排気ガスなどが心配だ。畑にどんな影響を及ぼすのか。農民が住んでいるのに、本当にひどいやり方だ。ここに農民が住んでいることをマスコミは報道しない。暫定滑走路が完成して、開港するということばかり報道する。
 しかし、家の畑や一坪共有地など反対同盟の拠点がたくさんあるので、滑走路をこれ以上延長することは不可能だ。2180bの暫定滑走路で開港するしかない。誘導路は「へ」の字に曲がり、信号をつけて交互通行にするが、すれ違いができない。いつか事故でも起こすのではないか。結局、ジェット機を飛ばして、住民を追い出すことが目的だ。
 最大3700bまで延長を狙っているようだが、反対同盟が存在する限り無理だ。これ以上の延長はできない。爆撃機や大型輸送機などが飛べる3700bの軍事空港が目的なんです。アフガニスタンでの空爆は本当にひどい。あそこには人が住んでいるわけですから。ブッシュ大統領は、「北朝鮮、イラク、イランは悪の枢軸だ」といって戦争を拡大している。われわれが闘わないと成田空港が軍事空港として使われることになる。
 三里塚闘争の存在をもっと社会的にアピールしていきたいと思っています。今度の全国集会で、反対同盟と全国の支援陣形の健在ぶりを、あらためて示していきたい。実際に現地に来てもらって、一緒に闘ってほしい。現地が初めての人にもどんどん来てほしい。三里塚闘争はこれからです。

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週刊『前進』(2046号1面3)

東ティモールPKO派兵 呉・舞鶴で阻止行動

 反戦共同行動委員会は、自衛隊の東ティモール派兵阻止に決起した。

 おおすみ弾劾 3・9 呉 

 中四国反戦共同行動委員会は3月9日、海上自衛隊呉基地からのおおすみ出兵阻止の闘いに立った。
 午前8時、アレイからすこじま公園に結集した労働者・学生は、出陣式を行っているEバースに向け怒りをたたきつけた。「自衛官は出兵を拒否しよう」。シュプレヒコールが港全体にとどろいた。
 抗議集会で労働者や学生が「小泉首相の言う『東ティモールの独立支援』は大ウソです。民族の尊厳をかけて闘う東ティモール人民やインドネシア人民の民族解放闘争圧殺こそ真の目的です。東ティモール人民は自衛隊の出兵に拒否を表明している。アジア人民、イスラム諸国人民虐殺に手を染めるな。侵略出兵を勇気を出して拒否しよう」と熱烈に呼びかけた。
 10時、黒煙を噴きながらおおすみが岸壁を離れる中、さらに激しいシュプレヒコールをたたきつけた。
 前日の8日、呉地方総監部に出兵中止を申し入れた。「自衛隊が武装して戦場に行くことは許せない。自衛官も戦場にいくために入隊したはずではない」と追及。対応した総務課長は「自衛官は入隊時点に誓約書を書いており、全員納得している」とごう然と言い放った。これを徹底的に弾劾し、申入書を基地内に掲示することを約束させた。
 呉基地は、全面的な基地強化が狙われている。現在のEバースを3倍に延長、港を埋め立て、兵たん補給基地やヘリポートなどを建設しようとしている。強襲揚陸艦の二番艦しもきたも3月に配備される。朝鮮・中国侵略戦争の出撃基地としての全面的強化と断固対決し闘おう。

 命令拒否訴え 3・10 舞鶴 

 関西反戦共同行動委員会は3月10日、東ティモールPKO派兵阻止を掲げ海上自衛隊舞鶴基地へ緊急闘争に決起した。舞鶴からはアフガニスタン第2次派兵から1月もたたない新たな派兵だ。99年の「不審船」への出撃もこの舞鶴からだった。舞鶴はまさに出撃基地として動き始めている。
 早朝より舞鶴基地北吸桟橋前に陣取って隊員と家族へ必死の呼びかけを行った。目の前には派兵される護衛艦むねゆきが停泊し、すでに全隊員が乗船している。隊員の表情は不安感にあふれている。
 「息子は海が好きで海上自衛隊に入っただけだった。戦争に参加させられるのなら自衛隊を辞めてほしい」。全学連の女子学生が街頭で出会った舞鶴基地所属隊員の家族の話を紹介し、隊員と家族に対して反戦決起=命令拒否を熱烈に訴えた。
 小泉の有事立法・改憲攻撃と対決する一大反戦闘争を巻き起こし、自衛隊兵士の反戦決起との合流をつくりだそう。

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週刊『前進』(2046号2面1)

全労働者の団結で闘う春闘かちとろう 動労千葉ストに合流し3・30大デモを

 金属大手ベアゼロ妥結弾劾
 労働者支配の反動的転換狙う資本の先兵=連合中央に怒りを

 3月13日、IMF・JC(金属労協)の自動車、電機、造船重機、鉄鋼の4業種大手の集中回答が行われた。日帝・資本は連合のベア要求放棄につけ込んで、春闘史上初めて軒並みベアゼロの賃下げ攻撃を行った。経常利益が過去最高の1兆円にも達するトヨタ自動車のベアゼロ攻撃は、もはや、賃金は企業が利潤を上げているかどうかではなくて、労働者階級と資本との力関係だけで決する時代に突入したということだ。労働者階級は連合中央を打倒し、団結して闘わなければ、賃下げと首切りの嵐にたたき込まれるのだ。これから闘いの本番を迎える公益部門、中小の闘いを爆発させ、小泉政権打倒を掲げて、3・30春闘総行動に職場から総決起しよう。

 春闘根本否定したトヨタのベアゼロ

 これまでの春闘は、3月中旬のJCの集中回答によって全体の相場が形成され、それが中小にも波及するという構図をとってきた。そのJCの集中回答が日産自動車を除いて軒並みベアゼロになった。特に、業績悪化を理由にベア要求を放棄した電機や鉄鋼だけでなく、史上最高の経常利益を上げることが確実なトヨタ自動車やホンダまでがベアゼロを強行したことに対して、労働者階級の中には大きな衝撃と怒りが渦巻いている。
 トヨタは02年3月期の連結経常利益が過去最高の1兆円に達する見通しだ。しかも、輸出好調に支えられ、国内の工場はむしろ人手不足の状態だ。現に期間工は昨年12月にも200人増員し、最高の4100人にも達しているという。これらの事実は自動車工場で労働者が休む暇もなくこき使われていることを示している。史上空前の収益こそ労働者階級を奴隷のように酷使し、搾取・収奪した結果ではないのか。自分たちはぬれ手にあわのぼろもうけをしておいて、なおかつベアゼロとは許しがたい。
 そもそもトヨタ労組は、「国際競争力」を掲げた資本の恫喝に最初から屈服し、昨年比較で定昇を500円も切り下げて春闘に臨んだ(昨年までの定昇7000円を制度維持分と呼び変えて6500円に切り下げ)。ベア1000円要求の真相はこれだ。こんな屈服が資本のベアゼロ攻撃を許すのだ。
 だが、労組の屈服だけでベアゼロが実現されるものではない。そこには、トヨタ会長でもある奥田日経連会長の、今春闘を春闘解体、戦後労働者支配の転換点にしようという凶暴な意図があった。
 3月6日夜までトヨタ経営陣は「ベアゼロでは仕事の活力を弱めかねない」と、定昇を含め賃上げ7000円を示唆していたという。過去最高の1兆円超の連結経常利益を見込むトヨタにとって仮にベアを満額回答しても年間わずか約10億円の負担増でしかない。
 ところが、それを一変させたのが奥田の恫喝だ。奥田は、「トヨタが有額回答」という情報が流れたとたんに激怒し、「まだ従来型の百円玉を積み上げる交渉をしているのか」とトヨタの経営陣を一喝した。これがトヨタ経営陣の態度を一変させた。
 トヨタの動向を息をこらして注視していたホンダなどの自動車資本や、ベア要求を突き付けられた造船資本は「あのトヨタでさえベアゼロ」との論理を振りかざして、次々とベアゼロ攻撃に打って出てきた。
 奥田は、記者会見で「大いに評価できる。点数でいけば90点」などと居丈高に「勝利宣言」を行い、畳みかけるように「日本の高コスト体質の是正が課題で、来年以降もベアはなくてもいい」などとベアを廃止し、二度と賃上げは行わない、さらに賃金水準の大幅切り下げと、終身雇用制の解体、労働者階級総体の不安定雇用化攻撃に踏み込むことを宣言したのだ。
 これらのことが示しているのは何か。現在の29年型世界大恐慌過程にあって、恐慌と戦争への時代に直面した日帝・資本が、今春闘を突破口に労働者支配を反動的に転換し、企業業績が良かろうが悪かろうがそんなこととはまったく関係なく労働組合を解体し、賃金水準を大幅に切り下げ、労働者階級総体を不安定雇用にたたき込むことで生き延びようとしているということだ。今や階級と階級の一大決戦が到来した。3・30春闘総行動の爆発こそが死活的に問われている。

 「首切り自由」をも容認した大裏切り

 この奥田を先頭にした日帝・総資本の凶暴なベアゼロ攻撃を引き出したものこそ、連合のベア要求放棄路線であり、実際にベア要求放棄を決定した電機や鉄鋼の連合指導部である。
 笹森連合会長は、連合が今春闘で初めてベア要求の統一目標を示さなかった点について、「(自動車など)ベア要求組の交渉をやりづらくした面はある」と反省したと報道されているが、語るに落ちるとはこのことだ。連合のベア統一要求放棄を受けて、電機や鉄鋼がベア要求を放棄したことによって、自動車資本も遠慮会釈のないベアゼロ攻撃に踏み込むことが可能になったのだ。この責任を笹森ら連合中央に取らせなければならない。
 業績好調な自動車ですら、多少の一時金アップと引き換えにベアゼロだ。ましてや電機や鉄鋼では、大幅賃下げの嵐が襲いかかる。現に日立は、13日の交渉妥結直後に全労働者の5%賃金カットを提案した。東芝などでは時間外勤務手当の割増率を引き下げるなどの攻撃が激化している。三菱は今春闘で提案した定昇見直しに入る。しかも、一時金は軒並み大幅切り下げだ。このようにひとたび屈服すると資本はどこまでもあくどく屈服を迫ってくるものなのだ。
 では、電機連合や鉄鋼労連が賃上げ放棄の代わりに求めた「雇用安定協定」はどうなったのか。
 鉄鋼労連は、雇用安定協定の締結を求めたが、資本は拒否し、結局、従来の姿勢を追認した「確認書」を取り交わすことにとどまった。電機でも、大半の大手は回答書前文に「従来同様に雇用維持・確保に最大限努力を図る」などと書かれただけだ。その拘束力について電機連合の鈴木委員長自身、「(経営側の)精神的義務」としか言えないありさまだ。資本は、何ひとつ譲歩せず、それどころか「首切り自由」を宣言したということだ。
 賃上げを放棄して、雇用を守ると称した屈服の結果がこれだ。恐慌情勢だからこそ、動労千葉のようにストライキを含む実力闘争で闘うことが問われているのだ。
 連合の屈服を許さず、春闘の爆発をかちとろう。動労千葉のストライキ決起に合流し、3・30春闘総行動に総決起しよう。

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週刊『前進』(2046号2面2)

「郵政民営化」の小泉打倒 反戦春闘の先頭で闘おう
 全逓中央の危機示す116中委

 小泉構造改革への怒り爆発

 日帝政治委員会(政府)の腐敗と危機はとどまることなく深化している。鈴木宗男問題への労働者人民の怒りの噴出は、大失業と戦争を強要してきた小泉「構造改革」に対する拒絶と怒りの現れにほかならない。デマゴギー政治は、その幻想がはがれた時には、蓄積した怒りのエネルギーが一気に解き放たれ、転落に加速度が加わる。小泉政権打倒の情勢が到来したのだ。
 02年の日経連労問研報告は、95年「新時代の『日本的経営』」報告の2千万人首切りと総不安定雇用化路線をあらためて打ち出し、春闘破壊を宣言した。「構造改革の推進によって危機の打開を」をメインスローガンにしているが、「構造改革」とは、戦後的賃金・雇用制度の構造そのものを破壊するということだ。
 これに対し連合は、日経連路線を共同で推進することを宣言し、資本家階級を救済するための組織に転落しているのだ。
 連合の裏切りを徹底弾劾し、3・30春闘総行動に全逓労働者は総決起しよう。

 民営化路線を推進する中央

 このような情勢下で、全逓第116回中央委員会が2月14、15日、伊豆長岡・富士見ハイツで開かれた。
 今中央委で連合全逓中央が意図した目的は二つだ。一つは、連合路線の推進役になること。二つは、「郵便新生」という民営化路線の推進者になることだ。
 一つ目の「連合路線の推進役」については、石川委員長が「本年4月からの高齢者再任用制度の導入にともなって、郵政職場の労働力構成が4構成の複合型労働力構成となる」ことから「企画管理局、郵政事業庁に政策提言を行う」と表明した。
 「複合型労働力構成」とは、本務者、短時間職員、非常勤職員(ゆうメイト)、退職再雇用者の4つを指しており、日経連が95年に打ち出した労働力構成、一部の長期雇用を除いてほとんどを不安定雇用にして総額人件費を削減する攻撃だ。
 地域区分局5千人削減(01年度で終了)、「郵便新生ビジョン」に基づく新集配システムなどによる1万4千人の削減と、次々に人員削減が繰り返されてきたが、全逓中央は、さらなる削減計画を「提言」する立場にまで転落した。
 さらに石川委員長は「賃金引き上げの闘いのみでは私たちの生活を改善することはできず」と、賃上げを要求しないと表明した。
 二つ目の「郵便新生」の民営化推進について。
 小泉政権は昨年末、「03年公社時点での郵便事業への民間企業の全面参入」を確定した。さらには「05年郵便事業の民営化」まで打ち出した。また、総務省に行革基本法の「民営化等の見直しは行わない」という条文の削除を指示した。
 「特殊法人改革」は骨抜きの中身で決着しつつあり、小泉は「郵政民営化」に活路を求めている。
 小泉のこの迫力の前に、郵政官僚と全逓中央は全面的に屈服し、全逓中央は今や、小泉の先兵として明確な踏み切りを行ったのだ。
 116中委議案書では、「総理懇」や、小泉の「05年三事業民営化」動向には「注視する」と言っただけで「批判」を回避している。その上で、大臣研(郵政事業の公社化に関する研究会)の12・20中間報告は「全逓の考え方に沿ったもの」(菰田書記長報告)と、事態をごまかすことに躍起となっている。「三事業一体の国営形態の堅持」方針は、どうなったのか。
 「中間報告」は「国営形態の堅持」とはまったく逆に、「郵便への全面的な民間参入」と「できる限り民間企業的手法を採り入れる」ことを盛り込んでいるではないか。何よりも職場で進行している現実こそ民営化そのものではないか。
 全逓中央は事態をごまかした上で、事実上の「民営化」を推進しているのだ。「郵便事業新生」を「事業改革・柔軟な労働力構成・新たなシステムづくり・意識改革」と位置付け「トータル減員数については受けて立つ」と、115臨中に続き、再度表明した(金子企画部長提案)。

 中央への不満と不信が噴出

 まさに、日経連が推進しようとしているリストラ・不安定雇用化、大量人員削減を全逓中央の手で推進し、帝国主義を支える翼賛組合に純化させることを誓ったのだ。
 そして、その攻撃の手始めに、4月以降「新集配システムの試行」が全国の郵便集配職場に強行されようとしているのである。
 われわれは、昨年10月の「郵便新生ビジョン」承認のための115臨中に際し、「連合全逓は、中央と地方(組織)の乖離(かいり)が進行し、連合全逓が支配の危機に直面している」と指摘した。今回の116中委は、そのことを完全に証明した。11の地方代表が発言したが、ことごとくが中央への不満と不信、怒りの糾弾となっている。
 特に、一貫して連合全逓中央を支えてきた地方本部の離反の強さだ。信越地本の委員が「経営陣に対する対立軸としての労働組合の存在が今こそ求められている」「私たちはもうこれ以上痛い思いをすることは出来ない。感じることの痛みの限界だ」と、悲痛な叫びにも等しい発言をせざるを得ないほど、中央への不満が増大しているのだ。
 82年の「事業防衛」路線への転換以降、相次ぐ人員削減と人事交流の強行、ノルマ営業の強化、退職強要など、数限りない当局の蛮行が全逓中央の承認のもと、繰り返し強制されてきた。それでも現場労働者が耐えてきたのは、「雇用の確保」と「生活の保障」のためだった。
 しかし、小泉内閣が登場し、郵政民営化の流れが強まるや、全逓中央は、「雇用の確保」も「生活の保障」もかなぐり捨て、ひたすら労働代官としての地位と利権の防衛にきゅうきゅうとしている。この現状に現場労働者の根底的な怒りが爆発している。
 すでに東京の主要な普通局では、ビジネス地域の1度配達化により常態的に配達業務が混乱している。どれほど現場労働者が「努力」しても、正常な業務運行は確保できない。このことを体現する現場労働者の自然発生的な順法闘争が始まっているからだ。この動きが加速された時に、連合全逓は中央といわず地方といわず、その支配が根底から吹き飛ぶことは明白だ。
 敵の攻撃に恐怖し屈服した中央と、現場労働者の根底的な怒りに恐怖した地方の中央委員の意見のやりとりとして、今回の中央委を見なくてはならない。
 事態はきわめて鮮明ではないか。連合全逓中央などは、現場労働者の怒りの大海に浮かぶ木の葉に過ぎない。この怒りに路線と方針を注ぎ込み、連合全逓中央を吹き飛ばす激流を組織しよう。

 4・28反処分闘争の強化を

 4・28反処分裁判は不屈23年の闘いと、連合全逓の裁判中止、被免職者の組織からの排除以降111年の激闘を経て、ついに3月27日、東京地裁判決を迎える。戦後労働運動の背骨を支え抜いた全逓4・28反処分闘争は、今日、国労・動労千葉の国鉄1047人闘争とともに、小泉行革の前に立ちはだかる日本労働者階級の先鋭な突撃隊である。
 われわれは、被免職者とともに闘い抜いたことに誇りと確信を新たにする。
 敵が戦後的なものの一掃をめざして、小泉行革を推進している情勢を見る時、楽観は戒めなくてはならない。それゆえに、われわれはより一層の体制の強化を図らなくてはならない。
 われわれの結論はもはや鮮明であろう。
 「4・28反処分闘争を水路に、現場労働者の怒りの先頭に立ち、反合・反マル生闘争を上回る現場の闘いで、郵便新生計画を粉砕し、連合全逓打倒を実現して、職場支配権を現場労働者の手に取り戻そう」ということであり、「春闘を放棄して、労働運動破壊の先兵となった連合を打倒する日本労働者階級の新潮流運動の先頭に立とう。反戦春闘としての3・30春闘総行動中央集会に立とう」ということである。
 〔マル青労同全逓委員会〕

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週刊『前進』(2046号2面3)

春闘歪める全労連
 日経連に屈服し連合に追随 ワークシェアにも賛成

 02春闘での全労連の反階級的役割を暴き、のりこえ、春闘総行動を闘いとらなければならない。

 日共の「資本主義の枠内」の路線で

 今春闘における全労連の第一の問題は、日帝ブルジョアジー、日経連の攻撃に屈服し、連合に追随していることである。
 今年の日経連労問研報告は、「ベアは論外」「定期昇給の凍結・見直し」「ワークシェアリング」の攻撃をかけてきている。トヨタのゼロ回答に見られるように、絶対に賃上げを認めず、「総額人件費抑制」と称して労働者に犠牲を転嫁することを路線化した。
 これに対して、日本の労働組合の最大のナショナルセンターである連合は、昨年10月に日経連と「『雇用に関する社会合意』推進宣言」を出し、賃上げを要求しないことを宣言した。
 だが、全労連は、日経連労問研報告路線と正面から対決せず、また連合のこれへの癒着・屈服に対しても反対していない。つまり、これらの現実を容認することの上に「春闘方針」を出しているのだ。
 全労連中央は、99年の大会で、それまで掲げていた「35000円の大幅賃上げ要求」を引き下ろすことを、圧倒的な反対の声を押し切って決定した。今春闘で連合が賃上げ要求を見送ったことを「批判」しているが、全労連自身が、連合の要求引き下げに追随してきたのだ。
 日経連の攻撃に対して、「全労連2002年国民春闘方針」は、「深刻な不況や雇用の打開にむけたルールが確立される社会」を対置する。
 帝国主義の危機の深さゆえの激しい犠牲転嫁攻撃に対して、労働者はまさに生きるために満身の怒りを爆発させて決起しなければならない。その時に、「ルールの確立を」などと言っていたのでは、攻撃を打ち破ることなどできない。
 全労連は、その「ルールの確立」について、連合とも「一致する共通課題」だと言う。連合の掲げる「ワークルール」とは、電機連合などを先頭にした「解雇ルール」の要求である。全労連も連合と同様に、小泉政権の「解雇ルール」制定の攻撃の流れにさおさしているのだ。
 さらに全労連は「政府・財界の『ワークシェアリング』に反対」とは言うが、ワークシェアリングそのものには賛成なのだ。ワークシェアリングとは、いかなる意味でも賃下げと不安定雇用化、総額人件費の削減なしにはあり得ない。
 日共の「資本主義の枠内での民主的改革」路線のもとで、全労連も最大の危機に陥りながら、全力で階級的闘いの爆発の抑圧者として登場しているのだ。

 国鉄闘争での裏切りとごまかし

 第二の問題は、全労連が今春闘課題から国鉄闘争を排除していることだ。
 「全労連国民春闘方針」では、「国鉄闘争の一日も早い解決」と言っているが、国労の4党合意の受け入れや、2・3中央委での国労闘争団切り捨てのための査問委員会設置の動きなどについて一言もなく、事実上これを容認している。
 国労内の日共勢力である革同は、チャレンジ一派とともに4党合意推進、闘争団切り捨ての先頭に立ってきた。チャレンジ一派が、「分裂ユニオン」の脱退などで危機を深める中で、むしろ反動革同が先頭に立って裏切りを推進している。このチャレンジ・革同の攻撃を真っ向から粉砕することなくして「国鉄闘争の解決」などない。それは国労だけの問題ではなく、全労連としてどうするかが問われる問題でもある。
 全労連国鉄闘争本部などの「3・29国鉄闘争全面解決集会」が行われようとしている。「政府・JRは1047名を職場に戻せ」とうたっているが、それは、国労内の革同が現にやっていることと矛盾する。
 00年夏の全労連大会では国労の4党合意路線に対して批判意見が噴出し、全労連として「4党合意に異議あり」と確認せざるを得なくなった。しかし今、国労が最後的に解体されるかどうかの決定的な分岐点に来ている時、国鉄闘争に対する態度を明確にすることは全労連の空中分解を招きかねないため、国労の問題に触れないまま通り過ぎようとしているのだ。このペテン的のりきりを許してはならない。

 「テロ弾劾」掲げ反戦闘争に敵対

 第三の問題は、日帝・小泉の有事立法・改憲攻撃に対する闘いを項目としては立てているが、その内容は、日帝の参戦と侵略戦争に命がけで反対するものではなく、「テロ弾劾」を叫ぶことで、闘うアジア人民、闘うイスラム諸国人民との連帯を拒否するものである。
 全労連は、日共と同じく9・11反米ゲリラを「地球文明と人類社会に対する攻撃」「どのような弁明も許されない凶悪な犯罪」であることは「どんなに強調してもしすぎることはない」と絶叫している(02年国民春闘白書)。これ自体、帝国主義と被抑圧民族人民の関係を無視し、圧倒的な軍事力・経済力を持つ帝国主義に対する被抑圧民族人民の抵抗闘争を否定する反動的見解であり、報復の名による帝国主義の侵略戦争に加担する反階級的立場だ。
 「テロにも報復戦争にも反対」というのは、現実には帝国主義の戦争を支持するものである。戦争翼賛勢力への転落である。
 韓国の労働者は、公企業の民営化などの攻撃に対してゼネストに立ち上がっている。パレスチナでは、イスラエルの残虐な侵略と虐殺に対して全人民的な抵抗闘争が闘われている。アフガニスタン人民の米帝に対する不屈の闘いも続いている。日本の労働者階級は、血債をかけて被抑圧民族人民の闘いに必死で連帯し、自国の帝国主義と真っ向から対決して闘わなければならない。全労連は、この闘いに立たないばかりか、連合と歩調を合わせてむしろ闘いに全力で敵対し抑圧しているのである。
 全労連をのりこえ、3・30春闘総行動を戦闘的にかちとろう。

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週刊『前進』(2046号2面4)

 国労新橋支部は3月11日から14日まで、支部総行動を展開した。14日は新橋の国労本部から八丁堀の労働スクエア東京まで720人の組合員がデモ行進、「JRは1047名を職場に戻せ」「大幅賃上げ獲得」のシュプレヒコールがこだました。11日から13日の国会前座り込みには延べ500人が参加し、闘争団への統制処分に反対するという現場からの発言が続いた(3月14日 新橋)

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週刊『前進』(2046号2面5)

動労千葉春闘スト方針

3月29〜30日 ストライキ
 旅客の全乗務員(29日非番の者は28日始業時から、30日泊まり勤務の者は31日終業時まで)と旅客・貨物の全地上勤務者が対象
3月28日(木) 採用差別事件行政訴訟判決公判 午後4時、東京地裁
       判決報告集会(弁護士会館)
3月29日(金) スト貫徹動労千葉総決起集会 午後2時、千葉県労働者福祉センター
3月30日(土) 02春闘総行動中央総決起集会 午前11時 JR貨物本社抗議闘争

 

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週刊『前進』(2046号3面1)

石原の賃金カット阻止し「公務員制度改革」粉砕へ
 官民分断のりこえ闘おう

 企業倒産・失業がともに戦後最悪の状態の中で02春闘の攻防が続いている。連合は結成以来、民間と官公労を分断し、官公労の戦闘性を解体しようとして、春闘の統一闘争を解体してきた。公務員の賃金闘争は「秋季確定闘争」を軸に闘われてきたが、今こそ春闘を官民一体となった統一春闘として戦闘的に再生していく必要がある。
 日経連は、「ベースアップは論外」「定昇の凍結」「緊急対応的なワークシェアリングで賃下げを含めた思い切った施策(賃下げ)を」「行政改革は徹底すべきだが、警察官は増員すべき」などと春闘解体と労働組合の団結破壊をぶち上げた。これに対して連合は、統一ベア要求を見送り、「ワークシェアリングによる時短なら賃下げもやむなし」(笹森連合会長)と、企業防衛と首切り・賃下げ容認に走っている。
 今こそ、連合中央を打倒して新しい階級的春闘を再生しなければならない。
 日経連路線に対する連合の屈服と裏切りのもとで、公務員労働者に対する賃下げ、終身雇用制解体の攻撃も激化している。「自治体版ワークシェアリング」と称して、時間外手当の削減や基本給5%カット(鳥取県)などを原資に非常勤職員を採用する動きが広がっている。大阪府枚方市にいたっては全職員の3分の1にあたる1千人の非常勤職員を採用する計画だ。これは正規職員の削減と賃下げの固定化をもたらし、不安定雇用を拡大するものだ。

 都労連つぶしと徹底対決を

 こうした中で、都労連(東京都労働組合連合会)をめぐる攻防が02春闘の焦点となってきた。
 都労連は昨秋の確定闘争において、全国で初めて一般職への成績率導入を認めるという屈服とバーターで「時限的給与削減措置」(基本給の4%を2年間カット)の打ち切りを東京都と労使合意した。しかし石原都知事は、12月議会で「給与削減措置の継続を求める決議」を突きつけられるや態度を豹変(ひょうへん)させ、さらに3月議会で自民・公明両党が「一般職員の給与削減措置の継続」の条例提案を決定したことをもって、この動きに便乗して労使合意の破棄を策動している。
 すなわち「現在実施中の給与削減措置は3月末で終了する。新たな提案として4%以内を限度として削減したい」などというペテンをろうしている。断じて許すことはできない。
 これに対して3月6日、都労連中央委員会は、都側との労使交渉を再開する方針を決めた。約束を破った石原都知事の責任を徹底追及するのではなく、矢沢委員長の方が責任をとって辞任すると表明したのだ。なんということか。
 都労連指導部は、この期におよんで労使交渉を開始し、議会最終日(3月28日)までに労使で一定の受け入れ案をつくって公明党を離反させる戦術を立てているが、まったく認識が甘いと言わざるを得ない。
 石原都知事の狙いは「都労連解体」にある。東京都との唯一の賃金交渉窓口である都労連との労使合意を一方的に破棄することは、石原都知事が都労連を交渉相手と認めず、従来の労使関係を破壊するということだ。この攻撃に対しては、労組の団結の力に徹底的に依拠し、その団結の力をもって闘う以外にない。この原則が都労連指導部にはあいまいなのではないか。この限界を突破し、99年の不退転のストが石原都知事を震撼(しんかん)させたように、今こそ都労連の命運をかけて渾身(こんしん)の実力決起をかちとることを訴えたい。
 どんなことがあっても賃金カットの「合意」をすべきではない。「労使合意の一方的破棄」を明確にすべきなのであり、妥結なき恒常的対決状態への突入を恐れてはならないのだ。倒すか倒されるか、二つに一つ以外に選択肢はない。全面対決しかないのである。
 今日の公務員制度改革攻撃や石原の都庁改革の攻撃の狙いは、都労連の闘う団結を解体し、東交、東水労、清掃など現業部門を一挙的かつ全面的に民営化し、都庁労働者を権力の末端機構として官吏化することにある。
 今や小泉超反動政権は、有事立法制定と戦争体制づくりに突入している。この時、東京の軍都化は待ったなしである。「石原都知事を打倒せよ!」こそ闘いの核心的スローガンでなければならない。都労連労働者は、02春闘の最先頭で、賃金カット阻止へ闘おう。

 国鉄闘争支援陣形の強化を

 都労連をめぐる攻防は、国鉄闘争支援陣形の最大労組の動向を左右する意味でも、きわめて重大である。
 今、国鉄闘争は、国労の解体か再生かをめぐる岐路にある。2・3国労中央委で設置を決定した査問委員会で、闘争団員への統制処分を強行しようかという重大情勢が訪れている。
 これは、国労内の分岐にとどまらず、中央共闘などの支援陣形の激しい分岐をもたらしている。この中から、あくまでも闘う闘争団を支え、国労を階級的に再生させようとする新たな支援勢力が生まれつつある。
 この時、その新しい支援勢力の先頭に都労連が旗を立てることが、国鉄闘争の勝利にとっても、また都労連自身の団結を守るためにも決定的に重要なのだ。だから国家権力は国労解体とともに、都労連に揺さぶりをかけている。石原都知事の都労連解体攻撃を断固としてはね返そう。
 他方で、公務員労働組合の中核=自治労は結成以来最大の危機を迎えている。使途不明金2億円が発覚して以来、歴代委員長の強制捜査や逮捕が行われた。1月31日〜2月1日の自治労臨時大会での「再生プログラム」も組合員激減の歯止めにはならない。ここでも小泉政権=検察・国税当局が自治労に対して猛烈な揺さぶりをかけている。

 国家に忠誠誓う官吏化狙う

 日帝・小泉政権は、戦争と大失業の攻撃の中で、公務員労働運動の解体を策している。昨年12月に「公務員制度改革大綱」が閣議決定され、03年に国家・地方公務員法を改悪する方向で攻撃が激化している。
 昨年3月の「公務員制度改革の大枠」は、その冒頭で「新しい政府で働く者は新しい公務員でなくてはならない」と書き出し、国鉄分割・民営化型の「血の入れ替え」の考え方を示した。従来の人事院や総務省主導の改革とはまったく次元を異にする政治主導の反動的な公務員改革である。
 「公務員に魂を入れる」(福田官房長官)と称して意識改革・行動原理の変革を強調し、労働基本権を制約したままで人事院制度を縮小・廃止し、公務員の分限免職の自由(首切りの自由)を確保し、能力・業績・職責評価をとおして不適格職員をつくり出し、降格・降任・降給制度の導入を図ろうとしている。
 総じて、年功序列賃金と終身雇用制度を堅固に維持する戦後的公務員制度を破壊・解体しようとしているのだ。その行き着く先は、戦後的公務員意識を規定している憲法第92条(地方自治の本旨)の解体であり、憲法改悪にある。
 行政組織目標(国家目標)による公務員管理(目標管理)とは何か。民間私企業のように利潤を上げるか否かではない。国家に対する忠誠にあり、権力の末端機構として率先して戦争遂行に協力する公務員像を確立することにある。
 こうして02年春闘は公務員攻防としても非和解的関係に突入したのである。公務員労働者こそ、有事立法阻止・改憲粉砕を闘おう。

 自治労解体の攻撃うち砕け

 動労千葉・動労総連合のスト方針が決定された。第2の分割・民営化に対する反撃として、そして1047人闘争の勝利に向けて、このストライキは果敢に闘われる。一点の火花が燎原(りょうげん)の火となるように、急速に春闘情勢を揺り動かしている。ストライキこそが労働者の最大の武器であり、団結であり、勝利する道である。
 この闘いに続く自治体労働者の総決起をかちとろう。公務員制度改革、自治労解体・翼賛化策動を粉砕しよう。ファシスト石原による都労連解体攻撃を粉砕しよう。自治体労働者は02春闘の先頭に立とう。3・30春闘総行動中央総決起集会に決起し、JR東日本本社、東京都庁へ向けて巨大な怒りを組織しよう!
 〔マル青労同自治体労働者委員会〕

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週刊『前進』(2046号3面2)

都教委が学校管理運営規則を改悪  「主幹」職の設置弾劾
 「命令による教育」許すな

 3月8日、東京都教育委員会は都立学校管理運営規則の改悪を強行し、2003年度からの都立学校における主幹制導入を決定した。今後、小・中学校においても同時に実施できるよう、区市町村教育委員会に圧力をかけ、主幹制を導入させようとしている。03年度実施に向け、今年11月下旬から12月上旬に主幹選考試験を実施しようとしている。新たな主任制攻撃=主幹職設置を徹底弾劾しなければならない。

 規則改悪で「上司の命受け」と明記

 3月8日に改悪された東京都立学校の管理運営に関する規則第10条の2の3項は、「主幹は、上司の命を受け、担当する校務を統括処理する」とされた。これは実に重大な事態である。
 侵略戦争のただ中の1941年に制定された国民学校令は、第16条で「学校長は地方長官の命を承(う)け校務を掌理し所属職員を監督す」、第17条で「訓導は学校長の命を承け児童の教育を掌(つかさど)る」とされていた。校長も訓導(今の教諭)も、上からの「命」を受け教育を行うものと規定され、「命令による皇国臣民づくりのための教育」が徹底された。
 これに対して戦後、47年に制定された学校教育法は、第28条で「校長は、校務を掌り、所属職員を監督する。教諭は、児童の教育を掌る」とした。核心は「命を承け」という言葉を削除し「命令による教育」を排除したことにある。
 それが今、戦後の教育法令において初めて、「命を受け」という言葉が盛り込まれたのである。まさに主幹設置によって、戦時下の「命令による教育」の復活が狙われているのだ。
 都教委の「主任制度に関する検討委員会」が1月に提出した最終報告は、主幹の「選考」「任用管理」の方針を具体的に打ち出した。選考は業績評価を活用し、監督者としての資質を見極める面接、校長の推薦書で行う。昇任は現在勤務している学校で行う場合もあるが、異動は一般教諭とは別の「異動要綱」に基づく指定異動とする。人事考課も独自の自己申告書で主幹職としての業績評価を行い、主幹研修を実施するという。都教委や校長の方針のもとに教員を従わせ監視する、中間管理職としての「主幹」像を示したのだ。
 そして主幹職設置にあたり、給与表に新たに「特2級」を設置し、一般教諭よりも高い給与を保障することを「エサ」に、主幹志望者を募ろうとしている。
 賃金差別をテコとする管理・統制は、教職員の間に亀裂を持ち込み、平等な協働関係を破壊するものだ。都教委が描く「学校組織のあるべき姿」からは職員会議が消され、一般教員は、校長―教頭―主幹の指示どおりに動く「実践層」とされている。主幹職設置で、教育労働者を徹底的に権力的に管理・統制し、戦時下の「命令による教育」の復活を狙っているのである。

 中間管理職拒む現場の抵抗闘争

 主幹制攻撃は、現在の学校現場のあり方に対する都教委のいらだちと危機感に規定されたものである。
 最終報告は「現在の学校運営組織の問題点」として、学校現場の現状を罵倒(ばとう)している。いわく「学校には、民主的かつ平等の名の下に……管理職も教員も、その経験や力量、職責や職務内容の違いにかかわりなく、対等な立場で学校運営に携わるべきだという、学校独自の慣習、いわゆる『学校文化』が根付いている」「勤続30年のベテランも、新規採用教員も対等という平等意識」「学校がいわゆる『鍋蓋(なべぶた)型組織』になっている……管理職である校長・教頭以外は、主任も含め、職位に差がない教員が大多数を占めている」。都教委は、こうした現場のあり方を解体するため、主幹職設置を強行したのだ。
 主任制は、71年中教審答申において校長―教頭―主任という「管理・指導上の職制の確立」として打ち出された。75年10月、主任制度化が打ち出されたことに対しては、日教組が勤評闘争以来の非常事態宣言を発し、省令による制度化を前に12月10日には午後半日ストライキを打ち抜いた。文部省は、この教育労働者の闘いに追い詰められる中で、文部大臣見解や事務次官通達で「中間管理職ではない」と言い、管理職的色彩を弱めるポーズで主任制度化をともかく強行した。
 しかし、制度化が強行されて以降も、主任制闘争は激しく継続された。76年から78年にかけて、北海道、福岡、兵庫を始め、各県段階で規則制定阻止、続いて手当条例化阻止のストライキが激しく闘われた。文部省は、全国の市町村に規則を制定させるまで実に9年を要したのである。また多くの県で学校運営の民主化をめざす職場闘争が徹底して闘われ、78年の主任手当の制度化に対しては、手当拠出運動―返上闘争が爆発的にたたきつけられた。
 そして今も、全国の教組が主任制をめぐる闘いを継続している。職員会議で主任を決定し輪番制とする、分会役員が主任となり教委には氏名を差し替えて報告する、主任手当拠出金を組合がプールして、奨学金や平和学習等への取り組みに使うなどである。95年に日教組が「文部省とのパートナー路線」に路線転換し、主任制闘争の放棄を打ち出しても、現場での抵抗はいまだ存在している。
 教育労働者の職場支配権を解体しなければ、戦争国家づくりのための「教育改革」=教育目的と教育内容の転換は成し遂げることができない。主幹職設置との闘いは、職場の団結と抵抗の一掃か、職場組合の再生かをかけた闘いである。
 石原は都知事就任以降、都の「教育目標・教育方針」から憲法・教育基本法を削除し、国立市の民主教育つぶし、人事考課制導入、「指導力不足等教員」制度による研修所送り、都立養護学校の「つくる会」教科書採択強行などの攻撃を展開してきた。「教育改革」を東京が率先して強行し、全国化させるものだ。東京における主幹制導入もまた全国に波及させることが狙われているのだ。

 3・30新宿-都庁デモの先頭に

 主幹職設置による給与表への「特2級」新設は、能力等級制度と業績評価制度による「能力・職責・業績給」をもくろむ公務員制度改革の教育労働者版であり、文科省が進めている「教育賃金体系見直し」の先取りでもある。主幹制度粉砕の闘いは、公務員制度改革との闘いや、春闘や有事立法をめぐる階級的攻防との合流をかちとる中で、勝利の展望が開かれていくものである。
 すべての教育労働者は、3・30春闘総行動に総決起しよう。3・30新宿デモで、ファシスト石原―横山教育長のファッショ的な教育支配の野望に、真っ向からノーの声を上げよう。

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週刊『前進』(2046号3面3)

韓国発電労組 “売却撤回までスト貫く”
 連帯闘争が全国に波及

 ゼネスト突入以来14日目の3月10日午後、韓国発電労組(組合員5609人)はソウルの延世大に1200人余、東国大に1300人余を始め、仁川、水原、清州などに奇襲的に集まり、決起集会を開いた。その数、総勢5千人!
 「散開闘争」に入った26日夜以来、5〜10数人がグループで行動し、家にも帰らず、弾圧をかいくぐって職場放棄を続けてきた。握手し抱き合って再会を喜ぶ感動的な場となった。
 意気上がる各会場に、携帯電話でイホドン委員長の声が届けられた。「元気ですか。組合員の小さな子どもたちが、妻たちが、家対委(家族対策委員会)をつうじて力強く闘争戦線に立った。各界各層の時局宣言が続いている。発電所売却撤回、団交争奪、解雇者復職などの要求をかちとる日まで闘争する。健康に留意して勝利の日まで闘争!」
 組合員は一斉に叫び声を上げ、拍手が鳴り響いた。集会後、新たな闘争指針を受けた組合員は再び散開闘争へと去った。
 曹渓寺では組合員200人余りが配備中の警察兵力50人を突破し寺に入った。これをめぐって警察が寺に乱入、暴行を振るい、前面に立った学生を連行した。
 同日午後、ソウルの宗廟公園で開かれた民主労総傘下の公共連盟主催の「発電売却阻止連帯集会」には、発電労組家族、子会社労働者や鉄道労働者など8千人が結集。明洞聖堂までデモした後、曹渓寺に駆けつけ、ともに弾圧と闘った。激しい攻防が夜まで続く中、発電労組150人が曹渓寺構内で座り込みに入った。
 「委員長の復帰命令なしには復帰しない」との組合員の信頼を背負って立つイホドン委員長、37歳。「発電売却撤回なしに職場復帰命令はない」と言い切る。職場結婚した連れあいも散開闘争中の組合員である。
 発電労組の無期限ゼネストは、韓国全土に波及している。10日の集会で公共連盟は第2次連帯ゼネスト突入を決議。この集会に参加した鉄道労組2千人も、鉄道民営化法案が国会に出された時には再ストライキに入ることを決議した。民主労総は散開中の発電労組を宿泊させる運動、募金など総力支援を訴えている。この国際連帯の呼びかけに、ともに闘う決意を込めた熱い檄(げき)を届けよう。
 生存権死守を貫く決死の闘いが続くその渦中に、小泉は訪韓しようというのだ。3月15日、民主労総は国会前で韓日投資協定国会批准阻止闘争決起大会を開催する。3・21小泉訪韓―日韓投資協定批准阻止、闘う韓国労働者人民と連帯し日帝・小泉を打倒しよう。
 動労千葉・動労総連合のストに合流して3・30春闘総行動に決起し、共同闘争の火柱を上げよう。

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週刊『前進』(2046号3面4)

 B 反戦の砦=三里塚 「軍事空港反対」を掲げ

 反対同盟は、〃軍事空港反対”のスローガンを掲げ、36年間闘ってきた。
 成田空港建設計画の出発は、ベトナム戦争による羽田空港の過密化のためだった。米本土とベトナムを結ぶ補給・輸送の中継基地となっていた羽田空港は、兵士と軍事物資を運ぶチャーター便でいっぱいだった。
 北原鉱治事務局長は当時、三里塚から羽田空港に視察に行ったが、その様子を次のように語る。
 「空港内の労働者の案内でなっぱ服を着て労働者の格好をして、あるジェット機の機体近くまで行った。すると翼や胴体のあちこちが破損している。なぜこんなに傷ついているのかと聞くと、このジェット機はベトナムから帰って来て、整備されてまたベトナムへ飛んでいくと言う。その時、成田空港も戦争になれば軍事使用されると思った。三里塚へ帰り、早速、実行役員会で報告し、『軍事空港反対』をスローガンに付け加えるべきだと提案した。反対同盟にも戦争体験者はたくさんいたし、そんなことで『軍事空港反対』を掲げるようになった」
 農民を三里塚の地から機動隊の暴力で追い出し問答無用に空港を建設しようとする国家の暴虐を目の当たりにした反対同盟が、自らの戦争体験を重ね合わせ、反戦の砦(とりで)として三里塚を闘うようになったのは自然なことだった。
 本部役員の鈴木幸司さんは、徴兵で中国戦線に動員され、敗戦後、モンゴルに3年間抑留された。体重40`になって帰国した鈴木さんは、当時を振り返って「あのつらかった抑留が、実は天皇の軍隊として侵略戦争に加担した結果であったと自覚したのも三里塚闘争の中でだった」と語る。北原事務局長も、海軍に入り、乗っていた艦が攻撃されて沈没、九死に一生を得ている。
 71年の強制代執行に対し、反対同盟は地下壕(ごう)を掘り、地中深くに立てこもった。戸村一作委員長は「この地下壕は海を越えて、ベトナムの人民解放戦争の地下壕にまで至る穴であります。三里塚闘争はけっして孤立する闘いではない」と訴えた。ベトナム反戦闘争と70年安保・沖縄闘争の高揚の中で、反対同盟もまた「ベトナムに飛行機を飛ばすな」と闘った。
 こうした闘いで、三里塚闘争は「反戦の砦」と呼ばれるようになったのだ。
 反対同盟の〃軍事空港反対”のスローガンは、今日ますますその真価を発揮している。現代帝国主義の戦争は、空港の確保がその成否を握る。99年のユーゴスラビア侵略戦争ではヨーロッパの主要空港が出撃基地となった。ドイツのフランクフルト空港は、民間定期便を排除し、一夜にして米軍の出撃基地となった。
 アフガニスタン空爆でも、焦点は空港の確保だった。10月7日の空爆開始時は、インド洋のディエゴガルシア島と空母からの出撃だけだったが、ウズベキスタンやタジキスタンなど周辺国の空港を確保するにつれ、空爆が激しくなっていった。
 米韓連合軍の戦争作戦計画5027では1600機の作戦機と50万人の米兵が日本に来援し、日本で最終的な訓練を行い朝鮮半島へ出撃していく。この時、戦略爆撃機や輸送機が離発着するには、4000b級滑走路が必要だ。しかし日本で4000b級の滑走路を持つ空港は3つしかない。沖縄の嘉手納基地が3700b、東京の横田が3350bで、4000bの滑走路があるのは成田だけだ。
 新ガイドラインで日米間の最大焦点のひとつが、成田空港の確保と軍事利用だった。成田空港の確保なしに、中国・朝鮮への侵略戦争はできない。成田空港がユーゴ空爆時のフランクフルト空港の役割を演じることになる。成田空港が中国・朝鮮人民無差別虐殺の出撃基地になるのだ。
 しかし成田空港は帝国主義の自由にはならない。反戦の砦=三里塚闘争に包囲されているからだ。36年間の闘争の中で、反対同盟は「国のため」「国を守るため」という国家主義イデオロギーと対決し、成田空港は軍事空港だと喝破して、国家暴力と実力対峙して闘ってきた。
 帝国主義の侵略戦争を阻む最強の反戦の砦がここにある。反対同盟の言う「反戦」はけっして口先だけのものではない。
(@ジット機でいっぱいの羽田空港/A北原事務局長が立てこもった地下壕/B米軍の出撃基地となったフランクフルト空港/Cアフガン上空から自由落下爆弾を大量投下するB52戦略爆撃機。離着陸には4000メートル滑走路を要する)
 (本紙・水野慶太)

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週刊『前進』(2046号4面1)

米帝ブッシュの核使用宣言と臨界前核実験を弾劾する
 核戦争阻止へ反戦闘争爆発を

 29年型世界大恐慌過程への突入と帝国主義間争闘戦の激化、アフガニスタン侵略戦争の泥沼化のなかで、米帝は2月14日、ネバダ核実験場で第16回目の臨界前核実験を強行した。ブッシュは「核戦力体制の見直し」(NPR)の機密文書で、イラク、北朝鮮、中国、ロシアなどへの核兵器使用を宣言した。全世界人民を核戦争の地獄の道に引きずり込む米帝の核戦争路線を満身の怒りをもって弾劾する。

 核軍拡・核戦争路線つき進む米帝ブッシュ

 ブッシュは昨年9月の「4年ごとの国防戦略見直し」(QDR)で、「米国の国益護持・推進」「国益への脅威の決定的撃破」「すべての大陸での軍事的介入・活動」を叫び、世界戦争への突進を宣言した。そして今年1月の一般教書演説でイラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しし、「あらゆる手段を講じる」「危機が近づくのを座視しない」と、体制転覆を宣言した。この世界戦争路線のもとで、3793億ドル(前年度比14%増)という空前の03年度軍事予算を打ち出した。
 米帝ブッシュは、1月8日にNPRを発表し、この米帝の新軍事戦略の決定的柱として核戦争路線を宣言した。そこで@既存核弾頭の温存、A地下核実験再開、B核兵器の高度化・新開発などの方針を発表し、最凶悪の核軍拡・核戦争路線を打ち出したのだ。
 3月9日にロサンゼルス・タイムズ紙で暴露されたNPRの機密文書は、ブッシュ政権がイラク、イラン、リビア、シリア、北朝鮮、中国、ロシアの7カ国を対象にした核兵器使用計画の策定を国防総省に指示し、小型戦術核兵器の開発・製造を命じたという内容だ。これは超切迫するイラク侵略戦争、朝鮮侵略戦争、そして中国侵略戦争などに核兵器をどんどん使うという恐るべき核戦争命令である。同計画は核兵器を使用する具体的事態として、@通常兵器では破壊できない標的への攻撃、A生物・化学兵器を含む大量破壊兵器攻撃への報復、B突発的な軍事上の展開などを列挙している。同紙は「核が抑止力ではなく、使用するための武器になる」との専門家のコメントを載せ、米帝の核戦略の転換の証拠に「核抑止力があらゆる敵に有効であるとの理論は同時テロで覆された」というボルトン米国務次官の発言を紹介した。米帝ブッシュの世界戦争路線のもとで、今や核兵器使用の敷居が完全に取っ払われたのだ。
 QDR・NPRとして打ち出された米帝の新軍事(核軍事)戦略は、民族抑圧と帝国主義間争闘戦貫徹のための帝国主義戦争の決定的武器として核兵器の実戦使用を強力に押し出している。米軍の前方展開とミサイル防衛(MD)計画などの推進で「軍事的聖域」を一掃し、一方的な先制攻撃を確保すること、あらゆるレベルで核使用・核の先制攻撃が可能な戦力を形成することを決定したのだ。
 それは、@アフガニスタン侵略戦争を契機としたウズベキスタンのハナバード空軍基地など中央アジアの米軍基地群の新設、A日帝を共同研究に引き込み、その核武装阻止をも狙う東アジアでのMD構想の推進、B最前線基地としての沖縄米軍基地の強化、などをとおした中国に対する(核)軍事包囲網の構築として進行している。
 72年ベトナム侵略戦争時にベトナム人民の民族解放闘争に追いつめられた米帝ニクソンは、核兵器使用に手をかけていた。このかんのブッシュ政権による一連の核軍拡路線の打ち出しは、91年ソ連スターリン主義崩壊以降、核戦争の最大の危機を一挙に引き寄せている。

 新型核兵器の開発のための臨界前核実験

 ブッシュは、地下施設破壊のより強力な新型戦術核爆弾をはじめ、さまざまな戦況に適合した小型で巨大な破壊力をもつ核兵器の開発を命令した。臨界前核実験は、ブッシュのこの核戦争路線に基づいたものだ。
 米帝は同実験の目的を、「安全性・信頼性確保」と言いながら、威力の増大と小型化という核弾頭の改造・新開発のための実験を行ってきた。新たな設計条件のもとで核分裂させたプルトニウムの動きを調べ、膨大な核実験データと結合させてスーパーコンピューターでシミュレーション実験する。これは核実験そのものだ。
 臨界前核実験は、ネバダだけでなく、ロスアラモス研究所(広島・長崎へ投下した原爆を開発設計した)でも行われていることを、米反核市民団体が告発した。核分裂しにくい同位体(臨界質量100s)のプルトニウム242を新型設計の核弾頭の模擬実験で使い、実験をとおしてその形状変化を調べるというものである。「爆縮した圧力がプルトニウム内部に伝わる様子を超高速X線カメラで撮影する」。そのための地上実験である。米帝は、さらに「臨界前核実験だけでは完全に新核兵器は完成できない」と、包括的核実験禁止条約(CTBT)を足蹴にし、地下核実験の早期再開へ動きだしている。
 臨界前を含め米帝の核実験はすべて、一握りの米帝支配階級の利益のために世界の被抑圧民族と労働者階級人民を核兵器で大量虐殺するいう徹頭徹尾不正義の目的に貫かれたものだ。ヒロシマ・ナガサキをくり返すな。超切迫する対イラク、対朝鮮の侵略戦争、核戦争を絶対に阻止しよう。

 日帝の核武装、有事立法・改憲攻撃粉砕せよ

 アフガニスタン侵略戦争に参戦し、有事立法・改憲攻撃に突き進む日帝・小泉政権は、米帝の臨界前核実験を「核爆発と違う」と支持し、帝国主義としての生き残りをかけて独自の核武装化を激しく強めている。もんじゅの再開とプルサーマル計画の再起動へ向けた急ピッチの動き、六ケ所での再処理工場建設強行と国際熱核融合実験炉(ITER)誘致推進などだ。
 全国の地元住民・労働者人民の命と未来をかけた原発・核燃サイクル絶対反対の意思を踏みにじり、日帝は核施設の建設・稼働を強行してきた。そして、ついに99年東海村JCO臨界事故を引き起こし、大内さん・篠原さんの2人の労働者を虐殺し数百人もの住民を被曝させた。さらに昨年11月には浜岡原発でチェルノブイリ寸前の配管水素爆発・炉心水漏れ事故を発生させた。しかし日帝は、より大規模な核惨事の危険すら省みず、破綻しきった核燃サイクルにしがみつき独自の核武装国家構築へ暴力的に突き進んでいる。闘う地元住民、闘う被爆者とともに、この日帝の核武装化攻撃をなんとしても粉砕しなければならない。
 決死の反撃に立ち上がっているイスラム諸国人民、そして闘う朝鮮・中国―アジア人民と固く連帯し、血債にかけて、帝国主義の侵略戦争・世界戦争・核戦争をなくす世界革命の闘い、国際的内乱に総決起していこう。
 (有家 治)

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週刊『前進』(2046号4面2)

パレスチナ 全面的激突に突入
 シャロン政権の大虐殺・拘束を許すな

 イスラエル・シャロン政権は、パレスチナ人民の闘いを全面圧殺する凶暴な攻撃に出ており、パレスチナ人民は不屈に武装解放闘争を強めている。パレスチナ情勢は「全面戦争」とも言うべき完全に新たな激突局面に突入している。
 3月12日、イスラエル軍は戦車150両、兵員1万人を投入してヨルダン川西岸の都市ラマラに侵攻した。兵力の動員規模としては82年レバノン侵略に次ぐ規模である。イスラエル軍は連日、パレスチナ自治区への全面攻撃に出ており、無差別に人民虐殺を行い、13歳から45歳までのパレスチナ人男性を無差別に拘束している。この日まですでに2千人を超える人が拘束されており、イスラエルが武装勢力と見なした人物との照合を行っている。11日にはヨルダン川西岸のカルキリアとガザ地区のジャバリア難民キャンプに侵攻してそれぞれ600人を超えるパレスチナ人男性を拘束している。ジャバリア難民キャンプだけで31人を超えるパレスチナ人民が虐殺された。カルキリアでの侵攻の中で、マハムード・サラハ氏が逮捕され手錠をかけられた上で、周りにいたイスラエル兵士が発砲し虐殺したのが目撃されている。
 イスラエル軍の無差別虐殺は3月6日から強化されており、8日には1日だけで60人を超える人民が虐殺された。6日には幼稚園やガザ地区にあるアンヌール盲学校、ヨルダン川西岸のベツレヘム大学も爆撃された。UNRWA(国連パレスチナ難民救済機関)が運営するアンヌール盲学校は託児保育の子どもたちが帰った後で大惨事をまぬがれた。壁が倒れてすんでの所で死をまぬがれたドゥニヤ・セデイシさんは、国連職員に「これがこの世界で起こっていることだ。視覚障害者さえ安全ではなく、F16戦闘機が来て危険が迫っているのを感じても逃げることさえできない罪のない市民を攻撃している。ただイスラエル人とシャロンだけが犯罪者なのではない。国連も同じく犯罪者だ。国連はイスラエルの犯罪を見ていながら彼らを止めるために何もしていないではないか」と糾弾した。
 9日、ガザでデモに参加した人びとは、「8日はパレスチナにとって暗黒の日であった。だがわれわれはこのような暗黒は何度も経験している」「パレスチナはイスラエルの報復を何も恐れはしない」と断固たる反撃を宣言している。
 この日は西エルサレムの喫茶店で自爆闘争が闘われ、12人が死亡し、52人が負傷した。イスラエル中部の町ネタニヤではパレスチナ人2人が銃撃戦に決起し、イスラエル人2人が死亡し50人が負傷した。12日にはイスラエル北部のマツバで銃撃戦が闘われ、イスラエル人6人が死亡した。
 2月以来、パレスチナ武装勢力がイスラエル軍検問所や入植地への攻撃を強めたことでイスラエル軍の動揺が一気に拡大している。シャロン政権の武力による圧殺政策が、逆にイスラエル人の被害を拡大したことで、イスラエルの存立の危機をはらんだものになってきている。その中で、パレスチナ人への抑圧に反対する動きがイスラエル内でも広がっており、こうした事態に追いつめられたシャロン政権がより凶暴な大虐殺に乗り出しているのだ。
 こうしたパレスチナ情勢の緊迫に対して、エジプトやヨルダン、シリアで3千人規模のデモが巻き起こっている。この間イランやイエメン、カタール、南アフリカなどでパレスチナ連帯のデモが闘われてきたが、それが一気に中東アラブ諸国での人民反乱に発展しようとしている。イスラエル内でも連日のようにパレスチナ人民虐殺に反対するユダヤ人のデモが闘われている。パレスチナ人民の不屈の決起が帝国主義の中東支配全体を根底から揺るがしているのである。
 イスラエル・シャロン政権の危機に対して米帝は、ジニ特使とチェイニー副大統領を再び中東に派遣し、パレスチナ人民の闘いを圧殺しようとする策動を強めている。サウジアラビアの和平提案を使い、さらにパレスチナ自治政府のクレイ評議会議長をイスラエルのペレス外相との和平会談に引き込み、和平のペテンによって闘いを圧殺しようと策動している。だが、闘う以外に最早いっさいの生きる道を奪われたパレスチナ人民は、すでに不退転の闘いへと突入しており、いかなる妥協の余地もありえない。どんなに血が流されようとも、どんなに犠牲が出ようとも、後戻りすることのない決死の闘いに突入しているのである。
 帝国主義とシオニストによる史上類例を見ない暴虐がパレスチナ人民の頭上に加えられ続けてきた。全世界が見ている前で公然と大虐殺が行われ、数百万の人々が住んでいた土地を追われて半世紀にもわたる難民生活を強制されている。最新鋭兵器で武装したイスラエル軍の過酷な占領下において、民衆が殺され続け、土地が奪われ、家が壊されてきた。この現実をこれ以上許しておくのか。
 今こそ闘うパレスチナ人民と連帯し、パレスチナ反戦闘争に立ち上がろう。米帝・イスラエルに対して労働者人民の怒りをたたきつけよう。とりわけ3・30春闘総決起行動を、闘うパレスチナ人民やアフガニスタン人民と連帯した反戦闘争として闘い抜こう。
 3月30日は、パレスチナの「土地の日」であり、イスラエル内と占領下の人民、周辺国への難民となった人民が一体となってゼネストの日として闘ってきた日である。
 1976年、イスラエル政府は「ガリラヤのユダヤ化政策」というスローガンを掲げて、イスラエル北部のガリラヤ地方のパレスチナ人の土地を取り上げ、そこにユダヤ人の入植地を建設しようとした。それに対してイスラエル内でパレスチナ人が抗議のゼネストでこたえたのが、同年3月30日の土地の日の闘いである。ゼネスト、集会、デモを行ったパレスチナ人に対して、イスラエル軍が凶暴な弾圧を加え、2日間で6人のパレスチナ人が虐殺された。これ以後3月30日は全人民的な闘いの日として、インティファーダの中でも、ゼネストの日として闘われてきた。
 動労千葉は3・30を反戦・国際連帯春闘として闘おうと呼びかけている。この呼びかけにこたえて3・30をパレスチナ反戦闘争として闘い抜こう。

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週刊『前進』(2046号4面3)

 今こそ「教え子を再び戦場に送るな」を掲げて!

 第7回 滋賀 原直子さん(中学校・養護)

 養護と子どもたち
 “SOS”を発信して保健室に  社会変えないと解決せず

 増え続ける保健室登校や不登校

――保健室に来る子どもの状況はどうですか?

 ここ数年、不登校も保健室登校も増えてます。不登校は大体各クラスに1人から2人います。暴力的なあらわれ方をする子も増えてますね。それから保健室登校とは別に、「別室登校」の子もいます。
 自傷行為の子もいます。自分で壁を殴って手をはらしてきたり、学校でリストカットする子もいます。
 拒食症や過食症など摂食障害の子もいます。拒食症で極端な低血糖で意識不明の重体に陥り、命が危ないところまでいった生徒がいました。親や友達、教師とのコミュニケーションにつまずき、ひとり悩みを抱え込んでいた。あの時はあらためて養護教諭が「命」と向き合っているという重さに打ちのめされそうにもなりました。幸い一命をとりとめ、この3月に卒業し、高校進学も決まりました。
 とにかく学校の中にも家の中にも居場所がない子が、居場所を求めてどんどん保健室に来る。今も「保健室が自分の家みたいや」って言う子がいますよ。子どもにとっては駆け込み寺で、SOSを発信して駆け込んでくるんです。

 ――なぜそんな状況になっているのでしょうか?

  社会の矛盾が今、保健室にも集中しています。親御さんが首を切られたり不安定な仕事になったり、その中で家庭環境も不安定になったり。そういう子どもたちは、今の管理教育の中では切り捨てられていきます。家庭崩壊的になっている子どもたちは、勉強どころじゃないですからね。
 家庭の事情で、ラーメン屋の仕事を夜遅くまで手伝わされて、それがすごくストレスになっていて、「ゆっくり休みたい」と訴えて毎日来室を繰り返す子がいます。毎日、家庭と社会の矛盾と必死に闘って、身体症状を呈するまでに訴えているんです。その生徒たちの怒りが学校には充満していますし、爆発寸前です。
 保健室によく来る子に「今日はお家に帰って休もうか」と言って早退手続きをとっても、なかなか帰ろうとしない。「家にも帰りたくないんやな。教室も嫌なんやな。ここにいたいんやな」と思いますよ。経済事情とか離婚とか、どうしようもない悩みを抱え込んでる。重いものがあるって思いますよね。
 それにやはり勉強が不得意な子は切り捨てられる。勉強についていけない子も多い。「頭が痛い」と言ってきたりしても、授業が嫌なんやなとわかりますけど、今、先生たちも忙しくて、なかなかそういう子たちと付き合って話し込んだりできていない。
 受験のストレスもすごくて、3年の3学期に突然不登校になったりする。早く推薦で決まった子がいる中で、私学受験に失敗したり最後まで決まらない子はものすごいストレスです。

 社会の全矛盾が子どもに集中

 ――「少年事件が多発」と言われますが。

  中学で1年間不登校だったら、その後学校に来れるようになっても、とても授業にはついていけない。だから受験しても失敗して、しかも以前ならそれでも就職できたけど、今の不況の中ではとても無理です。社会のどこにも居場所がなくて、排除される。
 私たちは毎年何人か、「今の社会で生きていくのは難しいな。一体これからどうやって生きていくんやろ」と心配しながら、中学から送りだしてしまっている。だから事件が報道され「無職の少年」と書かれると「あの子ら大丈夫かな」と顔が浮かんできます。
 とりあえず卒業させたというだけでは解決しないし、やっぱり学校だけで解決する問題じゃありません。社会がその子らの生きる場所をつくらないと。本当は生きる場所まで責任もたなあかんのやないかと思ったりもします。

 ――養護教諭の労働という点ではいかがですか?

  生徒が学校にいる間はほとんど保健室に来る子たちと関わる時間になっていて、放課後、4時ころから帳簿整理などの仕事を始める。今までもやってきた健康診断やけがした子の面倒見などの仕事は全然減らない。それに加えてあらゆる矛盾が保健室に持ち込まれて、何でも屋さんになってます。無茶苦茶多忙化していて、労働強化は激しいです。保健室登校の子どもを抱えていると、私らも結構ストレスですしね。
 文科省が、学校にカウンセラーを配置していますが、学校に毎日いるわけじゃない。いくつもの学校の掛け持ちで、週に4時間とか8時間だけです。それでは結局、子どもらと関係をつくるまでが大変で、うまく機能しない。私たちは「それより前に養護教諭を複数配置にすべき」と要求していますが、そういうことは全然しない。保健室の役割は持ち上げるくせに、制度的には何もしない文科省もひどいですよね。

 ――いかに対決していくべきでしょうか?

  そういう子らと付き合っていて、本当に、社会を変える以外に生きていけないって思いますよ。

 団結の力で解決すべき課題山積

 でも中学校の教組の組織率は小学校より低い。小学校以上に忙くて、その忙しさに負けると、組合のことが余計なことという意識になってしまう。しかも組合が闘っていないから存在意義が感じられない。本当は団結の力で解決していくべき課題が山積しているにもかかわらず、です。日教組の養護教員部も、職種に関しては複数配置要求など運動していますが、それだけにとどまってます。社会を変えていくとか、自らが反戦運動の先頭に立つとか、そういう方針は全然ない。
 でも子どもの中にあらわれる学校や社会の矛盾を一番敏感に感じるのが養護教諭ですから、他の教員に問題を投げかけることができる立場にもある。そういう良さを運動につなげて組織していきたいと思っています。子どもたちも今の戦争とか、大人が思う以上に敏感に感じてますし、子どもらに自分の生き方を伝えたいという思いもあります。
 社会の矛盾があらゆるかたちで子どもらに襲いかかっている今、社会を変革する闘いなくして根本的には解決できません。やっぱり階級的労働運動の前進で相対していかなくてはいけないと思っています。
(聞き手/本紙 大西 晶)

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週刊『前進』(2046号4面4)

 3月6日〜12日

 テロ資金処罰法案、閣議決定 米帝が7ヵ国に核使用計画

●小松基地騒音訴訟、国に8億円の賠償命令 航空自衛隊小松基地(石川県小松市)の騒音をめぐり住民1765人が国に自衛隊機と米軍機の飛行差し止めと慰謝料など総額約21億円の支払いを求めた「第3、4次小松基地騒音訴訟」の判決で、過去の騒音被害を認め、国に約8億円の損害賠償を命じた。自衛隊機などの飛行差し止めや将来分の賠償請求は退けた。(6日)
●米軍機が那覇空港に緊急着陸 米軍のC130輸送機が、エンジン故障のため那覇空港に緊急着陸した。滑走路が3分間閉鎖され、民間機の到着便に遅れが出た。(6日)
●陸自ヘリ2機墜落 大分県玖珠町と九重町の町境にある万年(はね)山の上空で、夜間飛行訓練中の陸上自衛隊第8師団(熊本市)第8飛行隊所属の偵察用観測ヘリコプターOH6D2機が無線連絡を絶ち、万年山山頂南東約1`の山中で相次いで発見され、3人の遺体が見つかった。(7日)
●装甲車が海上移動 沖縄県名護市のキャンプ・シュワブ沿岸域の米軍の一般演習で、水陸両用装甲車15台が砂浜から海上移動し、沖合に停泊している艦船に次々と乗り込んだ。住民は「水陸両用装甲車が砂を巻き上げていた。サンゴ礁を傷つけているのでは」と危惧する声があがっている。(7日)
●小泉首相、東ティモール訪問も 福田官房長官が記者会見で、小泉首相の東ティモール訪問を検討していることを明らかにした。5月の連休中が有力。東ティモールには自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に参加している。訪問すれば現職首相としては初のPKO部隊視察になる。(8日)
●7カ国に「核使用計画」 米ロサンゼルス・タイムズ紙は、ブッシュ米政権が軍部に対し、ロシアや中国、北朝鮮、イラク、イラン、リビア、シリアなど少なくとも7カ国を対象にした核攻撃のシナリオ策定を検討するよう指示したと報じた。同紙が入手した国防総省の文章「核戦力体制の見直し」によるとアラブとイスラエルの紛争や中国と台湾の戦争、北朝鮮による韓国攻撃の場合にも、核使用に備えるよう国防総省に指示、限定核攻撃用の小型の戦術核兵器の開発も検討すべきと命じている。(9日)
●安保会議を機能強化 政府は有事法制の中で、現行の安全保障会議の機能強化を明記する方向で検討に入った。米国の国家安全保障会議(NSC)をモデルに、有事や有事に至る前の段階で政府の最高レベルの意見調整の場とすることを目指す。首相が「武力攻撃事態」の発生を認定したり、首相を長とする「武力攻撃事態対策本部」を設置する際に、安保会議への諮問を義務づける。(9日)
●対イラクで米が英軍派遣を打診 英紙オブザーバーが、ブッシュ米政権が英国に対イラク軍事行動で2万5000人にのぼる地上兵力を提供できないか打診していると報じた。同紙によると、米側は@総勢25万人の1割を担う、A特殊部隊を送りイラクの反体制勢力を支援する、Bイラクが大量破壊兵器の国際査察を受け入れない場合、空爆を強化する、の3つの選択肢をあげている。(10日)
●米が比政府に自衛隊機の着陸を要請 米軍がアジア太平洋地域で行う多国間軍事演習チームチャレンジ02で、参加する米兵や装備を日本から輸送するため、日本の自衛隊機の着陸許可をフィリピン政府に求めたことが明らかになった。自衛隊機が実際に米兵を輸送すれば、第3国で行う米軍の合同演習に日本が直接協力することになる。(12日)
●テロ資金提供処罰法案を閣議決定 政府は、テロ資金供与防止条約締結の国会承認を求めるとともに、テロに結びつくことを知りながら資金を提供する行為を罰するテロ資金提供処罰法案など関連法案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。(12日)

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週刊『前進』(2046号4面5)

新潟関山演習場 日米演習に抗議 兵士に侵略拒否の訴え

 新潟県妙高山麓の関山演習場で、日米共同軍事訓練が2月28日から3月13日まで実施された。今回で6回目となり、沖縄第3海兵隊と新発田駐屯地第30普通科連隊の間で実施された。
 中核派は、3月3日に開催された社民党系の日米共同訓練反対共闘会議と共産党系の米軍実弾演習場化阻止共闘会議が共催した抗議闘争に合流し、「自衛隊の侵略出兵を許すな。パレスチナ・アフガニスタン反戦闘争に決起しよう」と訴えて闘った。
 今回、社共による初めての一日共闘の集会・デモとなり、新潟を中心に長野からも労働組合など500人が結集した。新潟県労組交流センターや百万人署名運動も参加した。交流センターが、集会場入り口で「兵士諸君、侵略の銃をとるな」の横断幕を掲げ、「闘うイスラム民衆・アジア民衆と連帯し、日米共同軍事訓練に反対しよう! 有事立法・改憲阻止!」と呼びかけるビラをまいた。
 集会は、アフガン・中東侵略戦争、ブッシュの「悪の枢軸」発言、有事立法の3月国会提出に危機感をもった発言があいついだ。今回は自衛隊が軍事訓練・演習では初めて長野市犀川緑地をヘリポートとして使用した。この有事立法を先取りした攻撃に抗議闘争を行ったとの報告もなされた。
 集会後、「日米共同訓練反対」「有事立法反対」のシュプレヒコールをあげながら、演習場周囲を1時間デモした。

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週刊『前進』(2046号5面1)

侵略戦争遂行する戦争国家へ 戦後憲法秩序の転覆狙う攻撃
 有事立法粉砕闘争を巻き起こせ
 東山 整一

 小泉は2月4日の施政方針演説で有事立法の今国会提出を表明、6月19日の会期末までの残り3カ月がいよいよ戦後史を画する大攻撃との決戦のときとなった。しかもそれは、9・11事件を契機とする米日帝などの侵略戦争がアフガニスタンから全世界に拡大し、パレスチナでは最も壮絶な抵抗闘争がさらに激しく燃えさかる日々である。国際的な反戦闘争の真価が問われている。戦争を推進する帝国主義国の労働者として、人間として、このまま放置すれば確実に第3次世界大戦に行きつくこの情勢の中で何ができるかを問われている。だがわれわれはこの恐るべき情勢の到来がほかでもない帝国主義の死の苦悶(くもん)によって引き起こされていること、だからこそそれがかつてなく巨大な展望をはらんだ情勢の到来であることを確信している。持てる一切の力をふり絞って、今こそ闘うイスラム諸国人民(パレスチナ・中東・ムスリム人民)と連帯し、侵略戦争阻止・有事立法粉砕−日本帝国主義打倒の大闘争を巻き起こそう。ここではこの闘いの一助として、有事立法についてとりあげる。3月初旬の時点で法案の詳細は公表されていない。その具体的・逐条的批判は後日に譲り、本稿では有事立法という問題の基本的特質、その歴史的・階級的構造、そして日帝の戦争政策の現段階について考えていきたい。

 有事立法と新たな世界戦争

 2001年は、第2次世界大戦終了から五十数年を経てまさに累積した戦後世界の危機が新たな世界戦争として噴出する世界史的過程の始まりの年となった。1月に米帝ブッシュ政権が生まれ、4月には日本で小泉が政権を握り、9月に米帝の経済・軍事中枢を直撃するゲリラ戦闘が炸裂(さくれつ)し、10月には米軍等がアフガンへの無差別殺戮(さつりく)戦争=侵略戦争に突入、11月には自衛隊が戦後初めて戦時に戦場に派兵された。
 この戦争は今どうなっているのか。タリバン政権は崩壊した。しかしそれは戦争の終わりではなく始まりだった。アフガンそのものに限っても本格的戦いはこれからだ。そしてこのアフガン情勢に激しく連動しながらパレスチナ情勢が「もはや後戻りできない段階」(ファタハ幹部)に突入したのだ。帝国主義とシオニストの暴虐を打ち破るパレスチナ人民の日々の英雄的・極限的死闘とその絶対的正義性は、9・11そのものに続いて、帝国主義者のどんな反テロキャンペーンも、ハイテク兵器も圧倒する勢いで、イスラム諸国人民だけではない全世界の労働者人民の魂をつかみ決起を促している。
 戦争目的であったビンラディン氏の捕捉もできず、パレスチナ情勢の爆発に震撼(しんかん)しながら米帝はいま血に飢えた狼(おおかみ)のようにフィリピン、グルジア、イエメンなどに兵を進め、さらに次の最大の標的をイラクに定めている。ブッシュは「02年は戦争の年」「対テロ作戦の第2段階」とわめき、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、戦争予算を実に480億jも増やした。2月ブッシュ東アジア歴訪は「イラク包囲 布石の旅」(2・17付朝日新聞)と呼ばれ、3月に副大統領チェイニーが中東を回り、5月にもイラク侵略戦争突入の準備を整えている。2月日米首脳会談の最大の結論は(日帝金融危機への恫喝とともに)中ロはおろか西欧からさえ異論が出ている「悪の枢軸」論やイラク侵略戦争に小泉が「日本は常に米国とともにある」と公然たる支持を国際公約したことである。
 それだけではない。もともとブッシュ政権の世界戦略の最大の特徴はミサイル防衛構想に象徴されるいわゆる単独行動主義と中国脅威論にあった。9・11でそれらは後退したのではなく深化した。特に朝鮮半島と台湾海峡−中国を焦点とする東アジアこそ中東とならぶ世界戦争の火薬庫であるという米帝の認識、またそれに基づく戦力配置・発動で中国を封じ込め、日帝を蹴落とそうという路線は、今回のブッシュ日韓中歴訪過程でさらにはっきりした。
 だが米帝にとって問題はいかに単独行動主義とはいえ、中東での戦争が西欧やサウジアラビアなどの協力なしにありえないように、東アジアでの戦争は日帝の協力なしにありえない。もちろんそのために新ガイドラインと周辺事態法ができた。だがそれだけでは不十分だ。なぜなら朝鮮有事や台湾有事は今日は周辺有事でも、明日は日本有事に転化する。しかし日本にはそれに対応した法制がない。だからいま有事立法なのだ。正確にはこれと後述する「集団的自衛権」の解禁が、日米帝国主義の戦争政策にとって最も死活的課題として浮上している。有事立法が通れば戦争になるなどというのんきな話ではない、すでに戦争は始まり、それが有事立法を一刻の猶予もなしに求め、日帝が対米協力の論理を超えて、独自の侵略戦争遂行能力を持つ戦争国家になろうとしているのだ。それをとおして戦争の世界大的戦争化がさらに急テンポで進もうとしているのである。
 有事立法をわれわれはまず何よりもこの2002年という時点の生きた世界情勢、世界危機のすさまじい戦争的爆発の趨勢(すうせい)という脈絡の中でとらえ、その恐るべき役割をしっかり認識しなければならない。その上で次に有事立法そのものについて、まず憲法との関係、次に安保との関係で見ていきたい。

 「国家緊急権」で憲法を停止

 有事立法とは一言でいえば、有事における憲法の停止である。憲法学的にはこれは国家緊急権と呼ばれる。
 だがそもそも憲法とは何か。一般的にいってそれは絶対王制を打倒して生まれた近代ブルジョア国家の基本法であり、私権(私有財産権を軸とする)の国権からの防衛のために、@統治機構のあり方(権力の分立)、A権利章典(基本的人権)の2本の柱からなる。現日本国憲法では、前者には主権在民、議院内閣制、三権分立、地方自治などがあり、後者には財産権、思想・表現の自由、身体の自由などの自然権と労働、教育、福祉などにかかわる社会権がある。国家緊急権とは、戦争・内乱などの緊急時におけるこれらの停止、つまり権力の集中と私権・人権の抑圧を意味する。英米のように憲法の外か、独仏のように憲法の内かはともかく、どの帝国主義国にも必ずこの緊急時における超憲法的例外権力の規定があるが、これはどんな民主主義国家もそれが国家である限り階級国家であり、その本質は階級独裁にあることから来ている。
 もちろん戦前の日本にもあった。あったどころか帝政ドイツの憲法を手本にした明治憲法には、緊急勅令、緊急財政処分から戒厳、非常大権までことごとくが天皇大権として定められ、憲法外にも治安維持法から国家総動員法まで文字どおり十重二十重の緊急権を張りめぐらした針ネズミのような国家だった。
 だが20世紀世界でこのような国家は例外ではなかった。もともとは緊急権は緊急時の例外権力だった。マーシャルロー(軍法、戦争法、非常事態法、ラテン語のマルス=軍神が語源)がコモンロー(普通法)との対比で語られるように、初めは平時が普通で緊急時は例外だった。しかし資本主義が帝国主義段階に突入し、国家がたえず戦争と革命の脅威にさらされる中で、普通と例外、日常と非常時が逆転し、緊急権国家の恒常化が生じる。つまり現代の帝国主義国家は、一方では社会主義や労働運動から自らを守るために前述のような社会権を憲法に導入、いわゆる「福祉国家」をめざしつつ(それは植民地の収奪の上にのみ可能なのだが)、他方では平時から満身を武装した軍事・警察国家として自己を形成してきたのだ。
 ところが戦後日本国家にはこの国家緊急権にかかわる規定が憲法にはまったくなく、憲法外にも基本的に存在しない(正確には不十分)。憲法第9条において「戦争放棄」を誓った結果(近代憲法で他に例がない)、有事=戦時を想定した例外的法体系を持てなかったためである。教育基本法も憲法と同一の立法精神に貫かれている。もちろんわれわれは第9条を無条件に賛美する立場にない。それは何よりもまず大戦直後における米帝の日帝解体政策の一環であり、日帝にとっては国体護持のための最後のカードであり、何よりもそれは出発点から昭和天皇が深く介在した沖縄の本土からの分離と軍事要さい化に担保された「平和日本」の誓いでしかなかった。
 だがこの第9条が、他面では天皇の軍隊が引き起こした残虐な侵略戦争とその惨たんたる帰結(沖縄・広島・長崎など)の中から、「二度とあのような戦争を繰り返してはならない」という幾多の日本人民の悲痛な願いと決意を体現したものであることも明白なのだ。事実米帝も日帝も、憲法発布のわずか2〜3年後に中国革命と朝鮮戦争を眼前に改憲をけたたましく主張しだすが、それは60年安保に上りつめる50年代をとおした日本人民の反戦闘争、労働運動によって阻まれた。70年闘争以来の今日までの闘いは、基本的に改憲攻撃と有事立法制定攻撃との対決としてあった。
 こうして現憲法はこのわれわれ自身および幾多の先達の血みどろの闘いの上に今も厳存している。われわれに必要なのは憲法の個々の条項うんぬんではなく、背後にあるこの闘いの伝統、「二度と戦争を繰り返すまい」という今なおけっして途絶えることなく日本人民の中に脈うっている誓いと魂を守り、発展・発揚させることであり、9条改憲阻止へ闘うことなのだ。
 有事立法とはこの憲法の第9条を中心とする全体系を根こそぎ解体する攻撃である。20世紀に入ると実は戦争の様相も一変する。戦場も銃後もないいわゆる総力戦化である。これとともに国家緊急権のあり方も変わる。戦争が軍隊同士が戦場でドンパチやる時代の緊急権はせいぜい戒厳令で、一定の地域と時間を限って憲法を停止、軍隊が行政を握る程度だった。だが戦前の日本でも対米戦争前夜の国家総動員法(とその下での高度国防国家)になると、文字どおり国家・社会の全領域、政治・経済・生活・文化・思想などのことごとくが戦争に動員され、軍隊の統制下に入る。
 現在準備されている有事立法について詳述するゆとりはないが、ここで緊急権導入に伴って改定を求められている個別法を列挙する。道路法、海岸法、河川法、森林法、自然公園法、建築基準法、医療法、墓地埋葬法、火薬類取締法、航空法、労働組合法、労働基準法、船舶法、電波法……。これらはこの間出ている有事立法関係文書から拾ったごく一部だが、これだけでもその意味するところは明白だろう。要するに有事立法とは、戦時において全権力を首相(と自衛隊を中心とするなんらかの例外権力)に集中し、人民の全生活領域に軍隊が介入し、それを軍事的に統制するということだ。逆に言えば自衛隊がそのような軍隊に変わるということである。これが戦後憲法と憲法秩序の根底的転覆の攻撃であることは明白である。

 有事立法と「集団的自衛権」

 ところで有事立法はもちろん今日突然出てきたのではなく、戦後日帝の軍事政策の根幹をなす日米安保政策の変遷の中で幾度も焦点化し、しかもそれは常にいわゆる「集団的自衛権」をめぐる議論と一体だった。
 前提として国連憲章に初めて出てくる集団的自衛権という用語について一言。国連(ユナイテッド・ネーションズ)はそもそも正しく日本語訳すれば「連合国」で、あくまで第2次世界大戦の戦勝国の戦後世界支配の機構である。しかしその憲章さえ、前文冒頭で「われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」と述べ、第2条で「すべての加盟国は武力の行使を慎まなければならない」とし、平和の維持はあくまで国連安保理事会の集団的措置に委ねる(第24条)、しかしそれが間に合わない時もあるだろうからその間は加盟国の「個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」(第51条)とした。だがその後の現実は周知のように米ソ対立で安保理は機能を停止し、帝国主義、特に米帝の幾多の侵略戦争を合法化する役割を第51条は担ってきた。集団的自衛権とはしょせん帝国主義の侵略戦争の正当化の論理以外の何ものでもない。
 もともと法的には自衛権と緊急権はメダルの裏表の関係だが、第9条をそのまま読めば個別的、集団的を問わず自衛権そのものを否定していることは明白だ。事実安保や自衛隊の違憲判決は戦後一定の時期まで続いた(59年砂川伊達判決、73年長沼判決)。これと一体のものとして緊急権に関する「憲法の沈黙」もあった。だが52年旧安保条約は国連憲章を根拠に日本は個別的・集団的自衛権をもっているとし、54年には自衛隊が発足、そして60年には占領の延長とも言えるきわめて不平等な旧安保が改定され、米軍の日本防衛義務と極東有事の基地使用などが定められた。
 有事立法の源流はここまでさかのぼる。まず米帝は50年代前半から日本に再軍備と集団的自衛権行使を迫った。ここには東アジアでの反ソ反共戦略においてそれを実際求めていたという面と、日本における米軍の特権的・治外法権的存在(とりわけ沖縄の分離・軍事支配)を居直るための方便という両面があった。前者はその後ニクソンドクトリンから今日のブッシュドクトリンに連なり、後者は「日本の安保ただ乗り論」というきわめてえげつない対日争闘戦的論理として、これも今日まで続く。
 日帝はこれに対して自衛隊の「専守防衛」「海外派兵せず」を50年代後半に決め、ここから「日本は個別的・集団的自衛権をもっているが、後者は第9条がある限り行使できない」という政府見解を出した。ただし日本防衛に限ってであれ自衛隊の軍事行動が課題化した以上、その瞬間から有事立法が求められる。自衛隊以前の保安隊当時から極秘に始めていた有事研究を日帝は60年安保改定とともに立法化をめざす。だがそれは日本の労働者学生の流血の闘いを前に断念、さらに第2の朝鮮戦争を想定して進められた三矢研究が65年に国会で暴かれ袋だたきにあう中で、以降長く有事立法はおろか有事研究自体タブー化した。
 次にこの問題が焦点化するのは、米帝のベトナム敗退(75年)後の78年日米旧ガイドラインが締結される前後である。安保はベトナム戦争と沖縄「返還」で実質的に変わるが、質的・決定的に変化するのはこの時で、これは米帝のベトナム失陥後の動揺する東アジア支配への自衛隊の動員という米帝側の死活的要請と日帝の「アジアを米国だけに任せておけない」という独自の帝国主義的衝動のからみの中で出てくる。日本有事と極東有事における日米防衛分担・防衛協力が語られだし、この時点では前者に作業は集中し、自衛隊による3海峡封鎖やシーレーン防衛が求められ、ここから日米共同軍事演習も始まった。だがそれはまさに集団的自衛権行使の第一歩(おずおずとではあるが)で、だからこそこれと完全に軌を一にして有事研究がこの時から公然と始まったのである。
 90年代に入り湾岸戦争後に自衛隊はPKOという形で初めて海外派兵される。さらに決定的転機となるのが94年朝鮮危機を経た96年安保再定義と97年新ガイドラインだった。ここでは旧ガイドラインが踏み込まなかった極東有事を「周辺事態」などというさらにあいまいな概念に拡散した上でそこでの防衛協力を定め、99年に周辺事態法を成立させる。これはまぎれもない集団的自衛権の解禁で、また同法第9条に見るようにそれ自体が有事立法だった。だが実質はそうでも建前はあくまで「後方支援」で「戦闘ではない、だから集団的自衛権ではない」と政府は強弁し続け、この姿勢は01年テロ特措法でも続いた。
 だがこれに露骨な外圧を加えたのがブッシュ政権の対日政策の先取りである00年10月のアーミテージ(現国務副長官)報告だ。すなわち「新ガイドラインは出発点であって最終目標ではない」「日本が集団的自衛を禁止していることは、同盟の協力にとって制約であり、この制約を除くことによって安全保障上の協力がより緊密かつ効率的になる」。「後方支援」とか「武力行使ではない」などのペテンはもうやめろという恫喝だ。だが日帝にとって集団的自衛権解禁の方法として、改憲は時間がかかり過ぎ、政府見解変更や国会決議では拙速すぎる中で、特に中曽根らが主張しだしたのが国家安全保障法構想である。
 本年元旦付読売新聞は1面で「安保基本法制定へ」と有事立法の動きを派手にぶちあげた。しかし2月5日の政府・与党合意では有事立法を「包括法」として出すことを決めた。これに関する次の報道が注目される。「政府・与党が有事法制に『基本法』という名称を使わず、『包括法』として整備することにしたのは、憲法上禁じられている集団的自衛権の行使をできるようにする『安全保障基本法』の制定を目指す与党内の動きに配慮したためだ」(2・6付朝日新聞)。読売新聞は3月段階の報道でも「安保基本法」をうんぬんしており、そこに有事立法の究極の狙いがあることは明らかだ。ともかくこのように有事立法と集団的自衛権は表裏一体である。

 「不審船事件」 白昼の軍事作戦

 結論を急ごう。昨年12月22日、奄美大島西方の公海上、中国の排他的経済水域で国籍不明の船舶がただ停船に応じなかったという理由だけで海上保安庁巡視船に撃沈され、15人の乗組員が殺された。「不審船」事件は99年3月能登半島沖でも発生している。01年1月に東京で21世紀の日米同盟に関する日米の要人、学者を集めたシンポが開かれ、ここで「不審船」に関する日米情報交換への質問が出たが、西元・元統幕議長は「非常に微妙な問題」「日米間でかなりシステマチックに行われている」「この辺でご勘弁いただきたい」と口を濁した。昨年末の攻撃主体は自衛隊ではなく海保だが、これが日米共同の白昼公然たる戦争行為であることは言を待たない。さらにこれは排外主義扇動の決定的武器にされている。中国侵略戦争での31年柳条湖事件、ベトナム戦争での64年トンキン湾事件を想起せざるをえない。
 有事立法をめぐって「有事」の範囲を日本有事(日本への武力攻撃)とその前段に限定するか、テロや「不審船」まで広げるのかでもめているようだ。だがそれは大同小異だ。日本有事と言っても極東ソ連軍の北海道侵攻を想定していたのは何十年も前まで、今は朝鮮半島と台湾海峡の戦火の日本への波及がすべてと言ってよい。しかも小泉は「備えあれば憂いなし」と言う。だが「憂い」は外からやってくるのか。否、日本が米とともに、周辺事態法やテロ特措法で(さらに集団的自衛権では一切の歯止めを外して)それを朝鮮や中国から中東まで持ち込もうとしているのだ。そして「これだけひどいことをやれば当然仕返しされるかもしれない、だから備えを」というのが有事立法の論理なのだ。とりわけ朝鮮戦争は50年の場合も日本がまだ占領下、GHQという超憲法的権力に支配されていたことで初めて成り立った。60年代初頭の三矢研究は朝鮮有事=日本有事という設定をしていたが、そのことは、ソ連崩壊と中国・北朝鮮の残存スターリン主義の体制崩壊の危機の中で、より切迫した問題としてとらえられている。言い換えれば有事立法は、日帝自身の対朝鮮・中国侵略戦争の本格的発動のためのものなのである。
 現憲法第9条や国連憲章第2条の背後には、20世紀の推定戦死者総数1億5500万人(ある日本人作家の記述)という現実がある。第2次世界大戦の帰すうを決した独ソ戦の一環として「攻防900日」の名で知られるレニングラードの戦いがある。ロシア革命の指導者の名を冠した都市の地上からの抹殺を命じたヒトラーのバルバロッサ作戦に抗し、スターリン体制下とはいえ「革命の首都を守れ」を合言葉に市民は3年に近い英雄的抵抗戦を戦い抜く。だがその過程で300万市民の半数近くが死亡、大半は餓死。今もここには「誰ひとり忘れまい、何ひとつ忘れまい」の碑が立っているという。
 帝国主義が再び世界戦争への暴走を開始した。これをこのまま許せば結末は第2次世界大戦の比ではない。帝国主義を打倒し、回りだした戦争の歯車を止めること――何の誇張もなしにここに21世紀の人類のすべてがかかっている。有事立法と集団的自衛権、そして来年の教育基本法改悪を許した後に残った憲法は外堀と内堀を埋められたぬけ殻の天守閣でしかない。闘いのときは今だ。今をおいてないのだ。この3−4月職場と地域から今こそ全力で反戦・反有事立法の闘い、「有事立法阻止・教育基本法改悪阻止・改憲粉砕」「戦争国家化阻止=改憲粉砕・日帝打倒」の闘いをつくり出そう。

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週刊『前進』(2046号5面2)

 第3部 植民地支配の歴史(6)

 台湾D 霧社事件 台湾先住民の蜂起の衝撃

 総督府による林野調査事業に伴い、土地強奪、国有化政策が強行された台湾の60%を占める山地こそ、狩猟と焼畑農業で生きる先住系諸民族の居住地だった。

 先住系の諸民族

 台湾には、それぞれ独自の言語、文化、社会組織、生活様式をもつ先住系台湾人9民族が存在する。
 台湾総督府は、先住民族の居住地を「蕃地(ばんち)」と呼び、支配が及ぶか及ばないかで「熟蕃」「生蕃」と呼び分ける清朝時代の差別的呼称を継承した。総督府は35年に「戸口調査規定」を公布、前者を「平埔族」、後者を「高砂族」と言い換えたが、これも日帝の皇民化政策を貫く差別的呼称そのものだ。
 *台湾では、1984年に設立された「台湾原住民族権利促進会」が中心となって先住民自身による「台湾原住民族運動」が展開され、94年に中華民国憲法増修条文で「原住民」の名称を認めさせた。この「原住民」という用語には、先住民自身が創造した自称であり、他に束縛されないとの思いが貫かれている。
 1903年、「蕃地」行政が警察機関に一元化された。翌04年には「蕃社台帳」の様式を定め、種族・管轄庁ごとに「蕃社」別の支配的人物、地理、社会組織、物産、慣習、沿革、言語などを記録した。
 第5代総督・佐久間左馬太のもとで、10年から「5カ年計画討蕃事業」が実施された。軍隊と警察力によって先住民族から銃器・弾薬を奪い、帰順を強制することが目的だった。道路や各種の施設は電流を通した鉄条網、土雷、大砲などによって封鎖され、容赦ない戦闘が仕掛けられた。
 各州の理蕃課が中心となった「理蕃行政」は、駐在所が行政機関だった。その警官が蕃童教育所の教師であり、生活指導と称して管轄内の監視体制を固めた。
 さらに強制的な使役義務を課せられ、道路工事・補修、駐在所・学校などの公共施設への使役に駆り出された。これに歯向かう者は家を焼かれ、殺された。
 先祖伝来の土地を自由に往来させず、狩猟は届出制で銃と弾を制限した。生きる場、生きるすべを奪い、総督府の奴隷として生きることを強いる占領政策に、独立心旺盛で誇り高い先住民族は繰り返し激しい抵抗戦を挑み続けた。
 この強権支配下、部族の頭目や実力者の娘と警官の政略結婚が同化政策として行われた。しかし、この婚姻に法的保障はなく、妻を捨てて日本に帰国するケースが後を絶たなかった。
 こうした耐え難い屈辱、蓄積した怒りの爆発として1930年霧社(むしゃ)事件は起こった。29年世界大恐慌下、日帝の台湾植民地支配はその破産をあらわにした。

 日本人総せん滅

 1930年10月27日午前8時、台中州(現南投県)霧社公学校では、年に一度の合同運動会の開会式が始まろうとしていた。周辺の日本人のほとんどが集まっていた。そこをタイヤル族セイダッカの総頭目モーナルーダオが率いる霧社11部落のうち6部落の蜂起部隊が襲撃し、郡守を筆頭に来賓、学童、観客など日本人134人をせん滅した。台湾人は和服を着ていて誤って殺された児童と流れ弾に当たって死んだ2人だけで、標的はあくまで日本人だった。
 午前3時半より300人の蜂起部隊はマヘボ造材所を襲撃して警官を殺害、続いて電話線を切ってマヘボ駐在所を襲撃し、焼き払った。さらに駐在所を襲撃、日本人警察官を殺害しながら運動会場に進撃した。銃182丁と弾薬2万2千発を奪取した。
 事件発生の報を受けた総督府は台中州の全警官に非常召集をかけ、先発隊が現場に向かった。出動命令を受けた台湾軍は討伐隊を派遣、鎮圧に乗り出した。
 蜂起部隊は山岳地帯で徹底抗戦、神出鬼没の遊撃戦を展開。討伐隊は逆に襲撃されて機関銃を奪われるなど、振り回された。
 追い詰められた討伐隊は、飛行機から催涙弾、焼夷弾を投下し火攻め作戦に出た。さらに化学兵器の毒ガスを投下し皆殺しを図った。この毒ガス攻撃によって蜂起部落の家族らは苦しみのあまり集団自殺に追い込まれている。台湾軍参謀部作成の「霧社事件陣中日誌」には11月8日飛行機からガス弾6個を投下した記録が残っている。
 討伐軍に犠牲が広がると、蜂起に参加しなかったタイヤル族を討伐の前線に駆り出し、民族を残酷に引き裂いた。
 300人の蜂起部隊は、軍隊1677人、警官隊1231人と対峙、50日近く山岳戦を戦いぬいた。
 霧社事件では裁判は一切なく、超法規的に処刑された。飛行機からは投降を呼びかけるビラもまかれたが、ビラを信じて投降した者もその場で射殺された。蜂起側はほとんどが殺されるか、自殺した。
  総督府は、蜂起鎮圧後、霧社から蜂起部落の住民を収容所に隔離したが、翌年4月25日、「味方蕃」といわれた親日的部隊をこの収容所に武装襲撃させるという、第二霧社事件が起こった。この事件の生存者278人はさらに僻地(へきち)の川中島に強制移住させられ、徹底した監視下に置かれた。16歳以上の男たちは帰順式をすると呼び出され、帰らなかった。

 「模範生」がなぜ

 総督府にとって、事件が霧社で起こったこと自体が青天の霹靂(へきれき)だった。総督府は理蕃事業が最も成功した模範地区として霧社を宣伝してきた。
 蜂起を率いたモーナルーダオを日本視察に招いたり、優秀な「蕃童」を選んで日本人と共学させ「模範生」を育てた。その典型が、蜂起に参加し、家族とともに集団自殺を遂げた、巡査で蕃童教育所教師のダッキスノービン(花岡一郎)と警丁(警察の助手)のダッキスナウイ(花岡二郎)だった。総督府は彼らを官費で教育し、さも兄弟のように日本名を与えた。日本人小学校を出たオビンナウイ(川野花子)、オビンタダオ(高山初子)との日本式の婚礼を台湾全土に報道したほどだった。
 霧社事件は突発的に起きた事件ではない。モーナルーダオは総督府への帰順をあくまで拒否、屈辱的な植民地支配に屈せず、何度も蜂起の計画をくわだて、ついに蜂起を決行したのだ。総督府のいかなる懐柔・買収、残酷な弾圧も、民族解放の闘いの前には無力でしかなかった。ここに日本帝国主義敗北の必然性がある。
 (室田順子)

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週刊『前進』(2046号6面1)

「(マル特)無期」攻撃を許すな
 検察が通達で終身刑導入 日帝危機に厳罰化で対応

 今日、われわれは国際階級闘争の新しい時代を迎えている。昨年の9・11、10・7をもって、戦争と革命がぶつかり、渦巻く時代に突入したのである。日本帝国主義は、戦争国家の確立に向かって突き進む一方、一切を「治安維持」の観点からとらえ、労働者人民への弾圧を徹底的に強化しようとしている。その一環として、獄中への弾圧が一層強化されている。今年に入って重大な事実が明らかになった。
 1月8日の朝日新聞夕刊が、「無期懲役刑/検察が仮釈放『制限』」と題する記事を掲載した。最高検察庁が98年6月に出した通達は、無期懲役受刑者のうち「動機や結果が死刑事件に準じるくらい悪質」と判断した者を「(マル特)無期事件」と位置づけて、「終身か、それに近い期間」服役させるというのである。
 具体的には、地検や高検は最高検と協議して「(マル特)」指定を決めると、刑務所に対して「安易に仮釈放を認めるべきではなく、……(仮釈放を)申請する際は、事前に必ず検察官の意見を求めてほしい」と文書で伝えるとともに、意見書を作成するための関連資料を保管するのである。
 朝日新聞は、「やり方次第では事実上の終身刑になる」とし、すでに「(マル特)」に指定されている受刑者もいると伝えている。
 その後、「行政文書開示」によって通達の一部が明らかになった。通達は、A4判の大きさで、本文5n、別紙が実質8nである。このうち、内容が開示されたのは最初の1n半だけだ。上の写真のように、大半は真っ黒に塗りつぶされている。これが「開示」か。ふざけるな!
 その核心は、「同じ無期懲役刑の判決を受けた者でも、……終身又はそれに近い期間の服役が相当と認められる者もいる」として、「特に犯情等が悪質な者については、従来の慣行等にとらわれることなく、相当長期間にわたり服役させることに意を用いた権限行使等をすべきである」というところにある。検察官の「権限行使」として「(マル特)」に指定した者を〈死ぬまで監獄に置け〉と言っているのだ。
 これは、現行法にない終身刑を最高検の一片の通達で導入するという恐るべき攻撃である。「(マル特)」の指定を受けた受刑者にとっては、裁判が終わったあとに、もう一度裁判が行われるに等しい。しかも、一切が秘密のうちに行われ、受刑者にはその事実すら知らされないのである。

 侵略戦争下の人民圧殺策動

 通達が出された98年は、どのような状況だったか。
 前年9月には日米新安保ガイドラインが締結され、翌99年には周辺事態法を始め盗聴法、「日の丸・君が代」法、組対法などが成立し、入管法などの改悪が強行されている。日帝は、戦争国家の確立に突進していた。一方、バブル崩壊後の経済は底なしの状況で、一切の犠牲を労働者人民に転嫁する攻撃が激化していた。首切り・リストラ・倒産、そして福祉の切り捨てと大衆収奪。人民の生活苦は激しさを増し、怒りが出口を求めて渦巻いている状況であった。
 日帝・国家権力は、90年代をとおして「犯罪被害者の人権」なるものをことさらに強調し、あらゆる機会をとらえて厳罰化、重刑化を追求してきた。少年法や道路交通法も、この流れの中で改悪されてきた。また石原都知事の「三国人」差別発言にみられるように、アジア人民、在日アジア人民に対する凶悪な排外主義攻撃が激化している。日本帝国主義は、労働者人民に戦争と大失業の攻撃をかけながら、社会的矛盾が噴き出すのを、ただただ弾圧の強化と厳罰、重刑で圧殺しようとしているのだ。
 日本における無期懲役は、仮釈放が表裏一体となって運用されてきた。法曹関係者の中には「無期とは懲役20年のことだ」と言う人もいるが、そんな甘いものではない。無期受刑者に対する仮釈放は、徹底的な屈服と転向を強いる攻撃として使われてきた。非転向の受刑者には、文字どおり期限のない懲役が続くのだ。獄中の一日一日が耐え難い攻撃としてある。
 しかし、日帝・国家権力は、迫り来る階級的激動の中で、これまでどおりの運用では支配秩序を維持できないという危機感にかられている。80年代までは、無期懲役の平均服役期間は約18年であったものが、次第に引き上げられて、現在は20年を超えている。だがそれでも権力者は安心できない。厳罰、重刑で締め上げなければこの社会の秩序が維持できないと考え、法律にもない事実上の終身刑を導入しているのだ。
 また、法務省はあらゆる反対を押し切って、毎年死刑の執行を強行している。日帝・国家権力は、戦争と大失業の時代に死刑の恐怖を不可欠としているのだ。

 星野同志奪還へ全力決起を

 星野文昭同志は、徳島刑務所において無期懲役と懸命に闘っている。
 日帝・国家権力は、70年安保・沖縄闘争の最先頭で闘った星野同志に憎しみを集中し、彼に死刑を求刑した。東京高裁裁判長・草場良八(後に最高裁長官に抜擢された)は、国家権力の意を受けて星野同志を無期懲役とした。東京高裁の判決は、6人の供述調書にのみ依拠したまったく不当なものである。
 すでに獄中闘争は27年目に入っている。星野同志は、無実の政治犯として再審の開始を求め、全力で闘っているのである。
 われわれは、星野同志にも「(マル特)」指定がなされている可能性を見すえなければならない。星野同志は、無期懲役という厳しい上にも厳しい現実の中で無実を訴え、再審を闘っている。それを理由に星野同志を「(マル特)無期」に指定するようなことは絶対に許さない。
 われわれの胸は、怒りで張り裂けそうである。現行の仮釈放制度は、非転向の政治犯を死ぬまで監獄に閉じ込めるものである。転向なき釈放を認めない現在の無期懲役制度と仮釈放制度のあり方全体を、われわれは満身の怒りで弾劾する。
 われわれは声を限りに訴える。無実の政治犯、星野文昭同志を直ちに釈放せよ。そのためにあらゆる闘いをやりぬこう。
 わが革共同は、昨年の12・15集会において、これまでの現実を突破し、なんとしても星野同志を奪還することを宣言した。わが分身が囚われているのである。「(マル特)無期」通達を粉砕し、あらゆる闘いを爆発させて星野文昭同志を奪還しよう。
 爆取デッチあげ弾圧で15年と9年の超長期の不当勾留を強制されている須賀武敏同志、十亀弘史同志、板垣宏同志の3人と福嶋昌男同志の保釈をかちとろう。無実の4同志の無罪をかちとり、すべての獄中同志を奪還しよう。

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週刊『前進』(2046号6面2)

3・27水嶋裁判に結集を 正井のウソ証言粉砕せよ

 無実の水嶋秀樹同志を88年9・21千葉県収用委会長せん滅戦闘の責任者だとするデッチあげ裁判(東京地裁刑事第1部・川口宰護裁判長)は、現在きわめて重要な段階を迎えている。事件と水嶋同志を結び付ける唯一の証拠、転向裏切り分子・正井利明に対する証人尋問が始まっている。
 9・21戦闘の責任者を「A」だと記号で供述した正井は、前回の公判(2月13日)で、「取り調べ時に水嶋同志を写真特定した」と証言した。
 まさにそのことで無実の水嶋同志が今獄中に囚われているのだ。その結果、今、水嶋同志は法廷で正井の目の前にいる。もはや問題は写真特定にあるのではない。正井よ、君には水嶋同志を近くでしっかりと見る義務がある。そして「A」と水嶋同志が別人であることを正直に述べなければならない。
 正井供述によれば、87年8月から89年1月までの1年半の間、正井は「A」と接触があったと言う。しかも一緒に宿泊したことが20日以上もあると言うのだ。さらに「A」から正井自身の人生を左右する命令・指示を受け、戦闘訓練も一緒にやったと言う。これほど密接な関係を持った「A」である。目の前の水嶋同志を見て、声を聞いて、別人と分からないわけがない。
 にもかかわらず、検察は水嶋同志を戦闘の責任者に仕立て上げようと、デッチあげにデッチあげを重ねている。ここで正井証言こそが決定的な意味を持ってくるのである。正井は権力の言いなりになり、無実の水嶋同志に罪を着せようと、目の前の水嶋同志を「この人が『A』です」と断言するのか。それとも「この人が『A』だと言い切れないが、別人とも言えない」などと逃げを打つのか。だがそんな逃げは通用しない。それは明確に権力犯罪に加担するものだ。
 正井よ、自己と正面から対峙せよ。そして堂々と水嶋同志を正視せよ。うつむいたまま権力のデッチあげ弾圧に加担することなど断じて許さない。
 正井が真実を語れば、水嶋同志が「A」とは別人であることは直ちに明らかになるのだ。検察はそれを妨害するために遮へい措置で、正井を水嶋同志から遮断しようとしたのである。デッチあげのためのこの卑劣な策動をわれわれは断固粉砕した。この重大な勝利の地平に立って、なんとしても水嶋同志の無実を晴らし、奪還をかちとろう。
 水嶋同志へのデッチあげ弾圧粉砕の闘いは三里塚闘争と一体である。88年9・21戦闘は千葉県収用委員会を解体し、いまだその再建を許していない。国家権力の暴力支配を許さない地域の存在を日帝に強制している。戦争国家化にしか延命の道のない日帝にとって、絶対に容認できない現実だ。4・18三里塚暫定滑走路開港攻撃は最悪の農民殺しの攻撃である。有事立法攻撃と一体の三里塚闘争破壊の攻撃を許すな。反戦闘争の砦(とりで)=三里塚闘争と、革命的武装闘争の地平を守りぬこう。
 次回公判は、3月27日(水)午前10時開廷。傍聴闘争への全力決起を訴える。正井によるデッチあげを粉砕する決戦だ!

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週刊『前進』(2046号6面3)

牛海綿状脳症 BSE問題を考える (中)
 木崎 隆生

 1920年代から肉骨粉が普及

 肉骨粉の使用が広まり、BSE(牛海綿状脳症)が拡大した背景にあるのは、現代資本主義=帝国主義の資本の論理そのものである。牧場で草を食べ育てられてきた牛が、20世紀のある時点から、ブロイラー鶏舎同然の動物工場に入れられ、生産性・効率性を追求するために肉骨粉を混ぜた飼料で飼育され始めた。
 肉骨粉とは、家畜が食肉として処理された後、残った内臓やクズ肉、骨などから作られたものである。もともとは、セッケンやローソクの原料とするための油脂分をしぼり取った後に残ったもので、廃棄するか、せいぜい肥料として使われていたものである。
 これに目をつけた飼料会社が、家畜の飼料として使うことを考え出したのである。それがイギリスなどで一般に広まりだしたのは1920年代のことだ。
 肉牛や乳牛の飼育に、もともと使用されていた蛋白質飼料は主に大豆などであった。こうした植物性飼料は価格競争の結果、安い肉骨粉に駆逐されていった。本来、ただ同然のものが資本の生産性、利潤追求の論理から飼料にされたのだ。
 そして、つねに価格競争にさらされ、コスト削減に悩む農民・畜産農家に、飼料会社のセールスマンが、肉骨粉や肉骨粉が入った配合飼料を売り込んだ。
 こうして、自然な形で牛が牧草をはむ畜産のあり方は、一掃されていった。母牛の牛乳をすべて商品として出荷するために、子牛に肉骨粉を水に溶いたものを母乳の代用として与えることまで、飼料会社などのイニシアティブで行われた。
 ここでは農業も農民・畜産農家も、基本的には現代帝国主義と資本からこうした現実を強制された「被害者」なのである。EUも全予算の50%(年間約5百億 
 )を農・畜産業に注いでこれに手を貸した。

 高熱でも死なぬ病原体プリオン

 先に述べたように肉骨粉の使用は20年代から一般に行われてきたが、BSEは85年にイギリスで初めて見つかるまでは発症しなかった。羊のプリオン病であるスクレイピーが感染したとする説が根拠薄弱である理由の一つはここにある。
 やはり、牛に牛の肉を飼料として食べさせる「共食い」の同種間リサイクルが、約20年前に一般化したことに事態の核心がある。イギリスのBSE問題の権威であるロンドン聖メアリー病院のJ・コリンズ教授が、BSEとは 「一つの種に属する動物が自らの種を飼料とした時、何が起こるかの教訓にほかならない」(独「ツァイト」紙)と述べているとおりだ。
 一方では、73年のオイルショック後の石油価格の値上がりによって、70年代から80年代にかけ、肉骨粉の製造工程が変わったことが、BSE発生と拡散の原因であると、一般に言われている。つまり燃料が値上がりしたため熱処理の温度が80度に下げられ、また有機溶媒も値上がりしたため、有機溶媒処理も省略された。こうしたコスト削減の結果、BSEプリオンの感染力が排除されないままの肉骨粉が出まわるようになったというわけだ。
 しかしこの説も、異常型プリオンは細菌やウィルスではなく蛋白であり、たとえ360度に熱しても死なない(焼いて灰にする以外にない)という事実からみても、根拠は希薄である。

 日本など80カ国以上に英が輸出

 85年に初めてBSEが発生して以降、88年にイギリス国内では確かに肉骨粉の使用は禁止された。だが、それによって大量の肉骨粉の在庫が生じた。イギリスの業者は、政府が買い上げ処理をしなかったので、その肉骨粉が危険であることを承知で、自国では禁止されているものをヨーロッパに輸出したのである。
 またヨーロッパや日本の業者も、半ば危険を承知で安く買い取り、輸入した。直接、イギリスからではないルートをとおしても輸入されていた。こうして肉骨粉は96年の全面禁輸まで、日本を含む世界80カ国以上に輸出されたのである。
 英関税当局の資料によっても、90年〜96年に日本に対して333dの肉骨粉が輸出されたことになっている。96年3月になって農水省畜産局はようやくイギリスからの肉骨粉の輸入を禁止したが、すでにBSEが発生しているEUからの輸入は禁止しないという実に欺瞞(ぎまん)的なものでしかなかった。
 こうして、いわば人為的にヨーロッパ全域にBSEが広がった。そして、昨年ついに日本でもBSEが発症するにいたったのだ。
 ここで、肉骨粉や牛肉輸入のルートと言われるものとして、たとえば、日本は香港から何万dもの肉骨粉を輸入していることになっている。しかし東京23区の半分の面積の香港では、ほとんど畜産業は行われておらず、こんなに大量の肉骨粉は生まれない。BSEが大発生しているイギリスから、香港のペーパーカンパニーを経由して、肉骨粉を輸入しているとしか考えられないのである。
 あるいは、インドネシアは、91年から英国産の肉骨粉の輸入を突然開始している。ピークの93年には2万d以上である。インドネシアから日本を始めとした他国へさらに輸出されたとしか考えられないのだ。
 これは食肉自体についても言える。「オーストラリリア産」の表示が実はルーツはイギリスであり、EUであることも稀(まれ)ではないのである。

 BSEの元凶は現代資本主義だ

 昨年9月以来、日本国内でBSE発症が確認された3頭の牛の生産者、飼育者は、肉骨粉の使用を否定している。しかし、牛に与える配合飼料に実際は何が入っているか、畜産農家にはわからない。飼料会社にしかわからないのだ。
 日本でも現在、1日に850dもの肉骨粉が製造されている。ここでは病死牛が肉骨粉にされる可能性も指摘されている。政府は昨年10月、肉骨粉の使用を全面禁止したが、業者の要望を入れて、翌11月には早くも豚と鶏を原料とする肉骨粉は使用を認めた。しかし牛や豚は同じラインで製造され、混ざり合っているのが普通だ。禁止と言ってもまったくずさんなのだ。
 雪印食品などが引き起こした食肉すり替え、不正表示事件や、農水省・厚労省のBSE問題への対応の犯罪性、無責任性が示しているように、政府や大企業はまったく信用できない。
 米帝を先頭とする現代資本主義=帝国主義とその政府、そして穀物、畜産、肥料、農薬などの大資本が、農業と農民・畜産農家を支配し、抑圧し、収奪している現実。その中で自然の摂理に反した「共食い」を牛に強制することで、BSEが生み出された。その同じ帝国主義と資本が、農業・農民に化学肥料や農薬漬けの農業を強制し、今や遺伝子組み替え作物まで大量に作り出している。
 BSEの元凶は現代資本主義そのものなのだ。
 (つづく)

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週刊『前進』(2046号6面4)

読者からの手紙
 「裁判の迅速化」は大問題 東京 E

 時々都内の書店で『前進』を買って読んでいます。「『テロ根絶』を口実にした戦時治安弾圧体制づくり粉砕を」(2031号)、「厚木基地撤去へ5000人」(32号)、「井上清さんの逝去を悼む」(35号)、「廃港まで闘い抜く敷地内の決意」(36号)などの記事に共感を覚えました。
 本当にすべての米軍基地を追い出さなければならないし、三里塚の粘り強い闘いがとても大切だと思います。また、私も井上さんの著作から多くのことを勉強させてもらいました。
 ところで、「司法改革」と言われていますが、「裁判の迅速化」は多くの問題を含んでいると思います。権力側が望んでいるのは、結局のところ、罪を認めさせ、早く有罪判決にもっていこうということです。
 無実の者が、その証明をすることはとても難しく、裁判が長くなるのは、今の裁判制度では仕方ないと思います。そのような裁判の場合でも「迅速化を」と言うのであれば、本来無罪判決が出るべきものまで有罪とされてしまうでしょう。権力にとって都合の良い「裁判の迅速化」を許してはなりません。
 皆さんのご活躍に期待している一人です。カンパを同封しました。アフガン反戦闘争の爆発に役立てて下さい。

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週刊『前進』(2046号6面5)

 メールから

 連日報道されるパレスチナ人民の不屈の民族解放の闘いに対して、自分自身帝国主義下にある人民・大衆として何かしなければならないという思いを日々募らせています。
 パレスチナ人民は文字どおり命がけの闘いに決起しています。最新鋭の武器で次々とパレスチナ人民にせん滅攻撃を加えるイスラエルに対して、自爆決起という極限的な武装闘争を敢行し民族解放をかちとろうとしているパレスチナ人民。それに対してわれわれは何をもって連帯するのか。これまでの反戦闘争とは次元を画する闘いが求められているのだと思います。
 全学連を先頭に「逮捕、流血を恐れず」街頭を制圧するような「行動につぐ行動」こそが日本の労働者人民への決起の号令となるのだと思います。ブッシュや小泉を震撼(しんかん)せしむるような闘いを!
 (男性・20歳代) 

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週刊『前進』(2046号6面6)

 訂正

 前号1面の中央労働者組織委員会論文の1段目に「3月20日から無期限の時間外・休日労働拒否闘争に突入」とあるのは、「2月20日から」の誤りでした。

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