ZENSHIN 2002/09/16(No2069 p06)

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週刊『前進』(2069号1面1)

9・22有事立法闘争の爆発を
9・11反米ゲリラ戦1周年にあたって
 米日帝国主義のイラク侵略戦争突入と対北朝鮮侵略戦争準備を粉砕せよ
 革共同の新たな戦闘宣言

 第1章 13億ムスリム人民と連帯し

 9・11反米ゲリラ戦の1周年を迎え、すべての労働者人民がまず第一に確認すべきことは何か。それは、アメリカ帝国主義・ブッシュ政権が、全世界の労働者人民・被抑圧民族の前であからさまに公言し、今まさに実行に移そうとしているイラク・フセイン政権転覆の侵略戦争を阻止するために全力で闘わなければならないということである。
 米帝ブッシュ政権は今、その国家的総力を挙げて、イラク侵略戦争とそれによるフセイン政権の暴力的転覆の暴挙を発動しようとしている。
 チェイニー副大統領が、8月26日に「フセイン政権が核武装という一線を越える前に軍事行動を起こすべきだ」と激しく扇動している。
 アジア諸国を訪問したアーミテージ国務副長官が、8月27日に「フセイン政権をとりのぞくこと、フセインが米国や近隣諸国を攻撃する前に手段(大量破壊兵器とその運搬手段)を奪うことが必要だ」と明白な戦争宣言をし、翌28日にも「最終的にはイラクの大量破壊兵器について説得力のある説明をして事態を前に進める」と一片のあいまいさもなく明言している。
 ブッシュ政権はイラク攻撃のためには新たな国連決議は必要ない、米議会の承認は後からでいいと声明している。
 そしてブッシュは9月11日の1周年演説で「イラクは世界の脅威だ。武装解除が必要」「米国は単独での軍事行動を辞さない」という、イラク侵略戦争発動の事実上の宣戦布告を行おうとしている。
 だが、ある国が非民主的政府であるからと言い、米帝に刃向かっているからと言って、それを理由にして、外側から暴力をもって政府転覆をはかること、そのためにその国の人民を無差別空爆・生活破壊の地獄にたたき込むことのどこが正義か、どこが法か。危険なものは芽のうちに軍事力でつぶすという論理のどこに道義性、正当性があるというのか。どこにもない。
 米帝のイラク侵略戦争は、9・11反米ゲリラ戦とそれに連なるパレスチナ・中東・ムスリム人民の民族自決の切実で烈々たる思いと願いを真っ向から踏みにじるものである。パレスチナ解放の戦いを始めとする武装闘争に対する反革命せん滅戦争であり、現在も激しく継続されているアフガニスタン侵略戦争の延長・拡大の戦争である。それは13億イスラム諸国人民総体を敵とする侵略と虐殺の戦争である。かの9・11は、実にこのような米帝―帝国主義のイスラムへの大暴虐に対する怒りの大爆発にほかならなかった。
 加えて、ドイツ、フランスの帝国主義者が米軍単独行動に疑義を唱え始め、イギリス帝国主義の中でもきしみが走っていることは何を意味するのか。それは、米帝のイラク侵略戦争が、米帝のもとへの世界の暴力的・一元的再編、すなわち他帝国主義に対する排他的世界支配のための戦争であり、中東石油支配と帝国主義間争闘戦の勝利をかけた戦争だからである。イラク攻撃は、同時に帝国主義間対立を激成するものとなり、ひいては第3次世界大戦に発展せざるを得ない恐るべき戦争なのだ。
 ところが、この中で、日本帝国主義・小泉政権は、イギリス帝国主義ブレア政権とともに米帝を支え、「湾岸戦争の際に後手に回った失敗をくり返すな」を合言葉に、ブッシュが対イラク攻撃のボタンを押すのを今か今かと待ち構え、即時の支持・支援に乗り出そうとしているのだ。実際、アーミテージ訪日の際の日米次官級戦略対話という公式の会議で、日本側は「イラクは核査察に応じよ、日本はイラクの大量破壊兵器をなくすために努力を惜しまない」と確認している。
 そして、何よりも、米帝の世界戦争計画に対応し、ブッシュの「イラク、イラン、北朝鮮は悪の枢軸」論を日帝自身が実行するものとして、本格的な自前の侵略戦争突入法案(北朝鮮・中国侵略戦争突入3法案)を早期に制定しようとしている。
 仮にこの法案が成立するならば、すでにある周辺事態法、テロ特措法と合わせたれっきとした戦争法体系を持ち、世界第2位の軍備を擁する自衛隊と強大な沖縄基地でがちがちに武装した巨大な軍事大国=派兵国家日本が出現する。それは全アジア人民・在日アジア人民およびイスラム諸国人民にとって最悪の脅威以外の何ものでもない。
 われわれ日本の労働者人民は、このような世界反動の砦(とりで)=日帝の足下にいる。である以上、われわれは、第一に、米帝の血塗られた世界戦争計画とその実行である対イラク攻撃を断じて許してはならない。第二に、その米帝と同調して日帝が遂行しようとする北朝鮮・中国侵略戦争、そのための有事立法4法案(武力攻撃事態法など3法案と個人情報保護法案)をどんなことがあっても断固として阻止しなければならない。日帝足下で巨大な反戦闘争を起こすことの絶大な意義をしっかりと確信して闘おうではないか。この実践的立場を抜きに語られる巷(ちまた)の9・11論は、どのようなものであれすべて欺瞞(ぎまん)である。

 第2章 不屈に貫かれる9・11精神

 9・11の1周年を迎え、第二に訴えたいことは、9・11はけっして終わっていないということである。
 その後も無数の9・11決起が闘われている。アフガニスタンで、パキスタンで、カシミールで、チェチェンで、グルジアで、フィリピンで、新彊ウイグルで、そして何よりもパレスチナの地で、闘うムスリム人民が命をかけた解放戦争をやり抜いている。おびただしい犠牲を出しながら、戦士の屍(しかばね)をのりこえて続々と決起している。そこには、まさにあの19人の若き戦士たちが命を投げ出して示して見せた9・11精神が脈々と貫かれているのだ。
 闘うパレスチナ・中東・ムスリム人民は、世界革命における民族解放・革命戦争の最前線部隊である。同時代に生きる全世界の労働者人民には、依然として、いやますます強く、この9・11と連帯して闘う側に立つのか、それとも米帝を主導力とする「反テロ戦争」の側に立つのかが問われている。
 今こそかの厳粛な問いにすべての人びとが答えを出さなければならない。すなわち、19人の戦士たちが命を投げ出して闘いとった9・11反米ゲリラ戦とは何であったのかという問いにほかならない。それは、パレスチナ解放の流血の闘いとは何であるのかという問いに重なるものである。
 米帝を始めとする帝国主義は、とりわけここ80数年間にわたって、パレスチナ・中東・ムスリム人民に対して、その土地を奪い、追放し、石油を強奪し、イスラムを差別・侮辱し、弾圧し、幾多の侵略戦争で虐殺の限りを尽くしてきた。それに対して真っ向からたたきつけられた9・11は、13億イスラム諸国人民の民族解放の叫びであり、特殊的・極限的な形態をとった解放戦争の火柱である。
 だが、われわれはあまりにも知らな過ぎた。13億イスラム諸国人民において、帝国主義とその侵略と差別・抑圧への積年の怒り、憤りがいかに深くて激しいものなのかを。それに屈した反動的支配階級に対する対決がいかに非妥協的なものなのかを。スターリン主義とその裏切りへの憎しみがどれだけ強く、それがどれほどマルクス主義への絶望となっているかを。そして、帝国主義足下の労働者階級への不信が、連帯を求めていたがゆえに、どれだけ根強いものであるかということを。これらのことについて、われわれは自らの血を流して償う階級的自己批判の立場をもって真正面から受けとめ返さなければならない。
 19人の闘いは、アメリカ・プロレタリアート3千人の死をともなった。その死の重みを、右の意味で、わが革共同は真っ向から引き受けなければならないと考える。何よりも強く問われているのは、帝国主義足下の労働者階級が、全世界の被抑圧民族と血債をかけて固く団結して、帝国主義打倒の根源的で烈々とした決起をかちとること、帝国主義打倒・スターリン主義打倒の最終的決着力をもった階級的蜂起戦に決起すること以外ではありえない。

 第3章 有事闘争は戦後最大の決戦

 9・11の1周年を迎え第三に訴えたいことは、世界戦争情勢がすでに始まっている中で、日帝の有事立法4法案制定の攻撃とそれを軸とするあらゆる戦時型の諸攻撃に対して、戦後最大の政治闘争として有事立法粉砕決戦を爆発させようということである。
 日帝が小泉の訪朝、金正日との会談、そして日朝国交正常化交渉の展開をもってもくろんでいることは何か。それは、日帝としての戦争外交であり、あわよくば北朝鮮への新植民地主義的介入・制圧をなしとげ、何よりも対北朝鮮攻撃を加える外交的枠組みをつくろうとする有事立法攻撃そのものである。あらゆるペテン的な「平和と友好」キャンペーンをうち破り、反北朝鮮の排外主義の鼓吹をうち破り、猛然と有事立法粉砕闘争をつくりださなければならない。9・22闘争は決定的な飛躍をかけた闘いである。9・22を突破口に臨時国会決戦―今秋決戦を大爆発させよう。

 北朝鮮・中国侵略戦争突入法案

 まず一つには、有事立法とは何か。それは、日帝が米帝の世界戦争計画に沿い、その一翼を担って日帝としての「対テロ戦争」−「悪の枢軸」論を国家戦略にしようというものである。9・11とそれに連なるパレスチナ・中東・ムスリム人民およびアジア人民の民族解放闘争に対して、日帝自身が被抑圧民族虐殺戦争に乗り出そうというものにほかならない。とりわけ対北朝鮮、対中国をはっきりと想定した侵略戦争突入法案なのである。
 武力攻撃事態法案、安保会議設置法改正案、自衛隊法改正案をつぶさに解明すれば明らかとなるが、それらは、米日帝の戦争重圧を受ける北朝鮮や中国の動向をとらえ、それを口実として、盗人たけだけしくも「自衛」の名で、実は日帝の側から積極的に侵略戦争を仕掛ける法体系的枠組みをつくるものなのである。
 「武力攻撃を受けた事態」、「そのおそれのある事態」に加えて、新たに「予測されるに至った事態」なるものを設定し、「予測」というようなあいまいでどうにも情報操作でき、かつ非常に初期的な動きの段階で、自衛隊の防衛出動=戦時出動ができるようにしようというのだ。
 そして、自衛隊が実際に戦争行為に突入することを先行させ、その状態の既成事実化と国家主義的国民結集の大キャンペーンの中で、防衛出動の国会承認を取りつけるからくりをつくりあげようとしている。
 実際にはどうなるか。米軍が対北朝鮮の戦争恫喝を加え、北朝鮮が追いつめられビリビリと反応すると、それをとらえて米軍は踏み込んだ軍事行動に出る。同時に周辺事態法が発動され、自衛隊がその米軍の後方支援で動く。北朝鮮の側はそれに反応、反撃しようとする。そうすると「予測された事態」として、自衛隊が決定的戦争行為を展開し始め、事実上朝鮮半島は戦争的緊張の中にたたき込まれる。自衛隊自身が北朝鮮に攻撃を加えるための条件ができたとされ、日帝の北朝鮮侵略戦争が本格的に推進されるのである。

 連合5・16見解と真っ向対決を

 二つには、有事立法攻撃が打ち出されたことは、ただちに日本の階級情勢を一変させている。沖縄では、SACOにもとづく名護での新基地建設について大きな踏み込みがなされ、代替協がリーフ上埋め立て・2500b滑走路という巨大な基地を建設すると決定した。米日帝は沖縄をイラク・北朝鮮・中国侵略戦争の最前線基地としてますます強化しつつある。三里塚では、空港公団・千葉県が暫定開港に加え、滑走路の北側延伸を宣言した。
 また住基ネット=国民総背番号制と結びついた個人情報保護法案が有事立法第4法案として強行制定されようとしている。
 70年代以来の日帝の懸案としてある保安処分新法が国会に提出された。人権擁護法案の名で部落解放闘争―糾弾闘争を全面禁圧する攻撃が打ち出されている。「共謀罪」「参加罪」を新設するために、国際的組織犯罪条約の批准とその国内法化を急ごうとしている。「難民対策見直し」を口実として入管法の新たな改悪が策動されている。
 有事立法による戦時体制構築の絶対的土台こそ労働者階級の戦争動員であり、そのための階級性の解体、労働組合の産業報国会化である。日帝は、日本労働運動の柱である国鉄闘争において、4党合意路線と与党3党声明を強制し、国労のチャレンジ・反動革同を屈服させ、闘争団を査問委にかけさせ、除名処分にさせ、ついには国労を解体しようとしている。
 同時に、日帝の意を受けた連合は5・16見解をもって有事立法に原理的に賛成、国家の自衛権発動に率先協力の路線を押し通そうとしている。日本労働運動がその基幹部から帝国主義の侵略戦争への動員装置に変質することほど、戦慄(せんりつ)すべき事態があろうか。

 急速に激化する世界戦争情勢

 三つには、有事立法攻撃が、米帝―帝国主義の世界戦争がついに始まっており毎日毎日それが火を噴き、数限りない民衆を殺戮(さつりく)している中で打ち出されていることである。
 米帝の01年QDR、02年国防報告、そして今秋発表される新たな国家安全保障戦略は、言語に絶する破壊的な、すさまじい「米国の国益」むき出しの世界戦争戦略である。
 それは、米帝が唯一のスーパーパワーとしてほしいままに振る舞う一方的な破壊と虐殺の世界を現出させるものであるだけではない。むしろ逆に、超大国・米帝の没落の運命をはっきりと突き出すものなのだ。なぜなら、アフガニスタンやイラクや北朝鮮などに対して掲げられる「テロ根絶」などという抽象的で茫漠(ぼうばく)とした戦争目的が米帝を自ら縛ってしまっているからである。果てしない泥沼戦争に米帝ははまり込んでしまったのであり、勝利なき軍隊の疲弊と破産は不可避である。しかも、それは他帝国主義の生き残りをかけた競合、対抗を呼び起こし、帝国主義間対立を激化させ、必然的に第3次世界大戦を引き寄せるものとなっていかざるを得ないからだ。
 今、世界は、1939年(ドイツ帝国主義のポーランド侵略)や1914年(第1次世界大戦勃発)の歴史的時点に等しい時代状況の中にあるのだ。

 臨時国会攻防の巨大な決戦性

 四つには、有事立法粉砕の闘いを、60年安保闘争、70年安保・沖縄闘争を超える政治決戦として爆発させなければならない。
 すでに述べたように、イラク侵略戦争阻止を真っ向から掲げ、それと結びつけて有事立法粉砕闘争を闘うことだ。10月初旬からと言われる臨時国会において、小泉政権は「政治に休止なし、有事3法案と個人情報保護法案を優先課題とせよ」と檄(げき)を飛ばしているのだ。
 この中で職場・労組において連合5・16見解弾劾・撤回の運動を下から起こして闘うことだ。また沖縄の怒りを始め日本人民の中に広範に大衆的に存在する15年戦争―太平洋戦争―第2次世界大戦をくり返すな、という願い、決意をとことん引き出して闘うことである。
 ここには、ありとあらゆる祖国防衛主義の攻撃と対決し、革命的祖国敗北主義を貫くという革命党の階級的使命がある。同時に、9・11が帝国主義の圧制に苦しむすべての人びとを激励し鼓舞し、帝国主義を打倒するまで終わることのない戦争を戦う新たな軍勢を大規模につくり出したことに真正面からこたえて、帝国主義足下から帝国主義を決定的・最後的に打倒する内乱に決起していく使命を絶対に果たすのだ。
 有事立法粉砕決戦は、本質的にも実際にも党の命をかけた闘いとならざるをえない。断固闘おう。

 第4章 社共に代わる労働者党建設

 9・11の1周年を迎え、第四に訴えたいことは、今こそ世界革命の党、マルクス主義・レーニン主義の党、社・共をのりこえた労働者党を建設するために、革共同に結集して闘おうということである。
 戦争と恐慌や大失業、植民地主義と民族抑圧、階級戦争と賃金奴隷の極限的強化、あらゆる差別の扇動、労働者の分断支配という非人間的事態は、どうすればなくすことができるか。
 その実現は、帝国主義を打倒し、残存スターリン主義を打倒し、資本主義的なもの一切を根底から転覆し、プロレタリアート独裁権力の樹立をテコに、人類史を社会主義・共産主義に推し進める闘い以外にありえない。その党は、帝国主義の世界史的転覆=プロレタリア世界革命を基軸にしっかりと据え、プロレタリア解放闘争と民族解放闘争を、血債論の核心的貫徹として、革命的に統一していくという綱領的立場に立った党、徹頭徹尾プロレタリアート自己解放の思想を体現した党でなければならない。レーニンの三つの義務――@革命的情勢の到来の明確化、その宣伝・扇動、A実際の国内戦の可能的な着手・開始、Bそれを担う党の非合法・非公然体制の確立――をやり抜ける党こそが、これらの全任務を遂行できるのだ。
 わが革共同は、ファシスト反革命カクマルを黒田・中央派と松崎JR総連派とに分裂させ、彼らの最後の牙城(がじょう)である黒田哲学を木っ端みじんに打ち砕く勝利の地平をかちとって今ここにある。今やカクマルを完全打倒に追い込みつつ、日本共産党スターリン主義打倒の新たな闘いに踏み込んでいる。
 直面する有事立法粉砕闘争と国鉄闘争こそ、革共同の党的飛躍と挑戦をかけた決戦を展開する一大ステージである。労働戦線を始めすべての戦線で闘う労働者、活動家、青年をこの党のもとに獲得し、党の倍増を本当になしとげるかどうかをかけた党の決戦である。連合を内部から、下から、揺さぶり、政治的・組織的分岐をつくり出し、その中から階級的労働運動の再生を切り開こう。日帝の最後の番兵としての姿をますますあらわにする日本共産党スターリン主義を打倒し、全労連傘下の労働者を大胆に獲得して闘おう。
 国鉄決戦をますます強力に展開し、戦略的水路にして、労働戦線の革命的再編の闘いをくりひろげ、新たな労働運動潮流を主流派に押し上げる闘いを担い抜こう。
 世界戦争と国際的内乱とが激突する9・11以後情勢の中で、反帝国主義・反スターリン主義世界革命と日本帝国主義打倒の勝利に向けて全世界の労働者・被抑圧民族と団結しよう。革共同は、この闘いの勝利に真に責任をとって決起する。
 すべての皆さん。革共同に結集して、プロレタリアート自己解放の世界史をともに闘い生き死にしようではありませんか。

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週刊『前進』(2069号2面1)

小泉訪朝は国交正常化交渉の名で北朝鮮侵略戦争を狙う戦争外交だ
 日朝首脳会談に対する革共同の声明

 (一)

 8月30日、日帝首相・小泉は9月17日に北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を訪問し、金正日総書記との日朝首脳会談を行うと発表した。
 小泉訪朝は、北朝鮮侵略戦争のための戦争外交そのものである。9・11反米ゲリラ戦以後の米帝の世界戦争計画を促進する攻撃の一環であり、日帝が帝国主義的な存亡をかけて米帝に全面的に協力・共同し競合しつつ遂行する軍事外交政策―対北朝鮮・中国侵略戦争の発動のための重大な布石である。
 第一に小泉訪朝は、一方では、米帝と日帝が一体となって北朝鮮に対する軍事重圧、戦争恫喝、経済制裁を加え続けていること、他方では、米帝(日帝)がいよいよイラク侵略戦争シフトをとったこと、それ自体が北朝鮮つぶしであり、戦争的破壊力をもった大重圧になっていること、その中で北朝鮮・金正日が追い詰められ、従来の手法でもあるスターリン主義的な瀬戸際政策を展開する余地も余裕も奪われていること――そうした中で行われることになったものである。さらに、米帝がイラク侵略戦争に総力を傾注するために、10月江沢民訪米―米中首脳会談の設定など、中国や北朝鮮を押さえ込む陣形をつくろうとしている中で行われるものである。
 切迫するイラク侵略戦争は、第2次世界大戦後の最も激烈な戦争とならざるをえない。だからこそ米帝はそれを北朝鮮に波及させ、対中国戦争に発展させるという01年QDR―02年国防報告的な世界戦争戦略からして、さしあたり中国や北朝鮮との間で一定の流動的な関係を形成するかのような政策展開をしている。その一翼を日帝が担い、対北朝鮮の新たな軍事外交に打って出たのである。
 したがって、小泉訪朝は、「悪の枢軸」論による北朝鮮への戦争重圧の一環であり、形を変えたイラク侵略戦争攻撃であり、戦争外交そのものである。
 米帝のイラク侵略戦争の切迫は、それ自体が北朝鮮政権に対するすさまじい軍事重圧である。そのもとで金正日は小泉訪朝を受け入れたのである。
 小泉は、国交正常化と言いつつ何をするのか。それは徹底した屈服要求であり、新植民地主義的侵略政策の遂行である。

 (ニ)

 第二には、日帝が臨時国会で有事3法案と個人情報保護法案を最優先で強行成立させようとしている中で、それを貫徹することと一体のものとして訪朝しようとしていることである。有事法制とは北朝鮮・中国侵略戦争法である。その有事立法の最中に訪朝をセットしたことは、これが侵略戦争を前提にした戦争外交であることを示している。
 日帝・小泉は、米帝に全面的に協力・共同してイラク攻撃を行おうとしている。同時に、米帝の対北朝鮮軍事重圧の中で、日帝が帝国主義的な対北朝鮮外交を展開し、北朝鮮に対して日帝・米帝への屈服を要求しようとしている。
 つまり、日帝が有事立法に基づいて北朝鮮攻撃を仕掛けるための外交的枠組みづくりなのである。米帝が94年10・21米朝合意枠組みを持ち、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)の展開をテコとして、米帝の都合のいい時に、都合のいい形で北朝鮮侵略戦争に打って出る政策を持っているように、日帝も自前の対北朝鮮の外交的枠組みをつくりたいのだ。だから国交正常化、拉致問題、ミサイル問題、不審船問題を焦点に日帝として初めての軍事外交を開始したのである。
 世界第2位の軍事力、経済力を持つ帝国主義日本の首相が、有事法案をかざして窮地に立つ北朝鮮と交渉する、これは戦争外交以外の何ものでもない。そして、日帝は北朝鮮との間で交渉関係を成立させ、その上であれに違反した、これを履行していないと難癖をつけ、そのことで北朝鮮を追い詰め、あわよくばそのまま北朝鮮を屈服させ、新植民地主義的介入・制圧を狙うこと、また北朝鮮への軍事攻撃の仕掛けと口実づくりを狙っている。この過程全体が、「北朝鮮=悪玉」論の排外主義攻撃のエスカレーションである。そこには、日帝の米帝への共同・同調と同時に競合的な軍事外交の展開がある。
 小泉訪朝は、有事立法発動体制の外交的枠組みの構築を狙うものである。しかも「平和と友好」の幻想を振りまくことで広範な労働者人民の有事立法阻止闘争を武装解除し、解体するための攻撃なのである。

 (三)

 第三に、日帝の植民地支配責任、戦争責任・戦後責任を追及し、謝罪と国家賠償を要求する南北朝鮮人民、在日朝鮮人民と固く連帯して、国交正常化交渉の名による小泉訪朝の狙いを暴露しなければならない。
 小泉訪朝の全過程が、朝鮮人民、在日朝鮮人民に対するすさまじい排外主義の嵐(あらし)として吹き荒れている。「北朝鮮に謝罪させろ」などという本末転倒した議論が右側から吹き荒れている。小泉は、これらの排外主義的・侵略的なキャンペーンをも「追い風」として、北朝鮮に乗り込もうとしているのだ。
 だがいったい、日本帝国主義は、朝鮮と朝鮮人民に対して何をしてきたのか。1910年から36年間にわたってあらゆるものを奪った植民地支配。強制連行と軍隊慰安婦政策。関東大震災時の朝鮮人大虐殺。しかも日帝は、戦後五十数年間、この歴史に対する謝罪も補償も何ひとつ行ってこなかったのである。
 しかも、戦後日帝は、朝鮮半島の南北分断に加担し、対北朝鮮敵視政策を強行し、入管法・外登法―入管体制をもって在日朝鮮人民に対する差別・抑圧、分断・同化・追放の攻撃を加えてきた。朝鮮総連へのすさまじい差別的・排外主義的弾圧を加えてきた。
 この最大問題が不問に付され、こともあろうに国交正常化交渉の名で北朝鮮への新植民地主義的な介入・制圧と侵略戦争の突破口を開くために日帝の首相が北朝鮮に乗り込むことなど絶対に許されない。
 南北朝鮮人民、在日朝鮮人民は民族解放、南北統一への沸き上がる要求を突きつけている。日帝・小泉は、これを逆手にとって北朝鮮に乗り込み、その願いとは逆の新たな植民地主義外交を展開しようとしているのである。
 排外主義の洪水と闘い、闘う南北朝鮮人民、在日朝鮮人民と連帯して、日帝の有事立法攻撃粉砕、北朝鮮侵略戦争阻止の闘いを全力で闘おう。

 (四)

 日本共産党の志位和夫委員長は、小泉訪朝と日朝首脳会談について、9月2日、談話を発表し、「直接対話の決断を歓迎」「必要な協力は惜しまない」という態度を表明した。わが革共同は、この日共の超反革命的「歓迎・協力」表明を怒りを込めて弾劾する。
 日共は、小泉訪朝の侵略的・脅迫的な本質と狙いを覆い隠し、日朝首脳会談が緊張緩和と平和の道であるかのような幻想をあおりたて、自らこの小泉の戦争外交に積極的に翼賛する決意を表明したのである。
 志位は、何よりも現在の日帝の北朝鮮・中国侵略戦争のための有事3法案の攻撃を貫徹するためにこそ小泉は訪朝するのだという核心問題にまったく触れていない。談話のどこにも有事立法への言及はない。日共指導部は、有事立法反対闘争を武装解除し、解体する日帝・小泉の攻撃に加担しているのである。
 志位は、「国益」「世界平和」という帝国主義の言葉で語っている。国益にかなう訪朝とは何か。それは北朝鮮を屈服させ、制圧することである。北朝鮮が抵抗したら、戦争に訴えて北朝鮮を屠(ほふ)るということである。日朝首脳会談を美化する日共・志位は、米日帝の北朝鮮侵略戦争に完全屈服し、協力する勢力に成り下がったのである。
 「有事立法反対勢力」を装いながら、愛国主義・国益主義・排外主義の旗を振り、帝国主義のもとに人民を動員しようとしている日共を許してはならない。帝国主義の最後の番兵、有事立法推進勢力に転落した日共中央を弾劾し、今こそ日帝の戦争外交と対決して、イラク侵略戦争阻止、北朝鮮・中国侵略戦争阻止、有事立法粉砕の大闘争を巻き起こそう。

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週刊『前進』(2069号4面1)

9・22全国総結集で有事立法粉砕へ
米帝の北朝鮮・中国侵略戦争に全面的に参戦する侵略戦争法案
 有事3法案 暴露のポイント 〈上〉

 有事3法案(武力攻撃事態法案、安全保障会議設置法改正案、自衛隊法改正案)の本質は、米帝の北朝鮮・中国侵略戦争に、日帝が全面的に協力・共同し、積極的に国をあげて参戦するための侵略戦争法案という点にある。有事3法案の批判と暴露において、この点を徹頭徹尾、貫いていかなければならない。「備えあれば憂いなし」などというまやかしを徹底的に粉砕しなければならない。読めばすぐわかるが、有事3法案は、国をあげての戦争突入体制をつくり、戦争の政治的・軍事的指導の体制をつくり、国家と国民を戦争に総動員していく法案だ。しかもこれは、米日帝が北朝鮮・中国に先制的に攻めかかることを戦略の土台に据えており、これに対する被攻撃国の反撃がミサイル攻撃やゲリラ戦に発展することもあることをとらえ、想定して、「自衛権」なるものの発動による全面的戦争へと突入していくことを狙っている。まさに、侵略戦争の合法化を狙った法案そのものなのだ。有事3法案の逐条批判を踏まえ、宣伝・扇動上の重要ポイントを提起する。

 米帝の世界戦争計画とイラク侵略戦争の切迫

 世界は今、大変な危機に突入している。米帝・ブッシュ政権は、9・11反米ゲリラ戦を契機として、圧倒的な軍事力で世界を暴力的に再編しようとして全力で動いている。米帝は唯一のスーパーパワーといえるが、「世界帝国」としては没落の危機にあえいでいる。帝国主義諸国間の矛盾と争闘戦は激化している。さらに、全世界の新植民地主義体制諸国の人民は、パレスチナ・中東・ムスリム人民を先頭に、抑圧と貧困に苦しみながらも帝国主義に対する反乱に立ち上がっている。9・11はそうした反乱の〈特殊的・極限的形態〉として爆発したものであった。
 こうした現実の中で、米帝は今やひとつの世界戦争計画をたて、強引にそれを実行に移しつつある。もちろんこれは世界人民のあらゆる方面からの反撃を受けジグザグすることは不可避である。だがそれは、没落する帝国主義大国が「世界帝国」としての位置と権益をなんとしても守ろうとする限り(帝国主義を打倒しない限り)避けられない動向だということをはっきりさせなければならない。
 しかしまた、これは米帝だけのことではない。米帝はその巨大な軍事力で世界を制圧し、他の帝国主義諸国をも解体・再編することで生き残ろうとしている。したがって、他の帝国主義諸国も必死で米帝の侵略戦争に協力・共同し、その中で帝国主義としての力を示し、既存の地位と権益を防衛し拡大しない限り生き残れない。世界はこうした歴史的な危機の時代に入っている。そして、それはさしあたって米帝・ブッシュの世界戦争計画の強行実施として進行しつつあるのだ。
 すでにアフガニスタン侵略戦争は恐るべきかたちで強行された。そして今も続行中である。また、中東では米帝とイスラエルが、パレスチナ人民への大々的な攻撃をくり広げ、パレスチナ解放闘争圧殺の狙いを公然と掲げて、植民地主義丸出しの侵略戦争を激化させている。さらに米帝・ブッシュは、イラク・イラン・北朝鮮は「悪の枢軸」であると決めつけ、その体制を転覆する戦争の権利があると強弁している。
 この中で、今日の世界政治は、米帝のイラク侵略戦争がいつ、どのように発動されるかをめぐって動いている。この米帝の対イラク侵略戦争は、ベトナム戦争をも超える対中東・対アラブ・対イスラム諸国人民の大戦争の引き金を引くものとなることは避けられない。
 さらに米帝・ブッシュは、この対イラク戦争にとどまらず、QDR(4年ごとの米国防計画の見直し)をみればわかるように、その世界戦争計画の中で北朝鮮・中国に対する大戦争を戦略化している。今日の米帝の世界軍事政策は基底的・基軸的に対中国の戦争に据えられている。そして、その決定的一環として、対北朝鮮戦争が位置づけられている。重要なことは、対イラク戦争の動向いかんでは、北朝鮮をめぐる情勢は一挙に切迫してくる可能性があるということだ。
 このようにして今日の世界−アジア・極東をめぐる情勢はきわめて切迫し、戦争の危機をはらんだものとしてある。日帝・小泉政権が必死になって有事3法案を強行しようとしているのはまさにこうしたことのためだ。つまり、有事3法案に賛成ということは、米帝の北朝鮮・中国侵略戦争に、日帝が国家総動員で突入することに賛成ということなのだ。

 周辺事態法と結合し戦争体制構築を狙う

 今回の有事3法案は、前述のような米帝の侵略戦争に、日帝が全面的・積極的に国家総動員で突入するために、99年に成立した周辺事態法などと結合させつつ、しかもそれを超えるような戦争体制を構築するものとして提出されている。
 周知のように周辺事態法は、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」という新概念をつくりあげることによって、米帝のアジア・太平洋における侵略戦争に積極的に協力し、参戦していく道を開こうとするものだった。すなわち、対米協力のための「後方地域支援」という形式のもとで、日帝が対外侵略戦争に参戦していく道を開こうとするものだった。
 しかしながら、米日帝の北朝鮮・中国侵略戦争とりわけ北朝鮮侵略戦争が現実化し切迫化してくる中で、こうした周辺事態法による「対米協力のための後方地域支援」という形式を超えて、いわゆる「自衛権の発動としての日本防衛のための日米共同作戦」の形式をこれと重ねあわせて展開し、日帝の国家総動員戦として全面的に協力・参戦していく体制を一刻も早くつくることが求められてきたのだ。このことを可能にするものとして、今回の有事3法案とりわけその基本法としての武力攻撃事態法案が提出されたのである。

 「予測」の段階で早くも「武力攻撃事態」を宣言

 武力攻撃事態法案の核心は、「武力攻撃事態」という新概念をデッチあげたところにある。
 現行の自衛隊法76条では「外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して……自衛隊の全部又は一部の出動を命ずる」となっている。
 ところが、今回の武力攻撃事態法案では、まったく新しく「武力攻撃事態」という概念をつくっている。武力攻撃事態法第2条(定義)では、「武力攻撃事態」とは、「武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態または事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう」と定義されている。これによると、
 α 武力攻撃そのものが発生したとき
 β 武力攻撃のおそれのあるとき
 γ 武力攻撃が予測されるに至ったとき
 ――という3つのケースが想定されていることになる。
 ここでいう「予測されるに至ったとき」とは何か。「おそれのある場合」とは区別して、わざわざ「予測されるに至ったとき」というケースを設定したのはなぜか。「おそれ」ということそのものが曖昧(あいまい)で恣意的判断の余地が大きいものだが、それとも区別して、わざわざ「予測されるに至った事態」というケースを導入したのは、武力攻撃の発生のかなり以前の段階をも広義の武力攻撃事態に組み込むという狙いがある。純法文解釈的にみても、先のαβγで「α(βを含む)またはγ」となっていて、γで言う武力攻撃事態というのはα(βを含む)を受けているとみるのが妥当である。つまり、「おそれが予測される」ケースもγには含まれるということだ。
 つまり、「武力攻撃事態」というのは、武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合も含む)よりも、さらにより手前の段階(あえていえば「おそれ」が予測される段階も含めて)で、これをすでに武力攻撃事態、つまり広義の武力攻撃が発生した事態と規定することに狙いがあるということだ。
 これについては今年5月16日に出された政府見解も、
◇「予測されるに至った事態」=ある国が日本攻撃のため、「予備役の招集や軍の要員の禁足、非常呼集を行っているとみられることや、我が国を攻撃するためとみられる軍事施設の新たな構築を行っている」などの動きのある場合
◇「武力攻撃のおそれがある場合」=「ある国が我が国に対して武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃のための多数の艦船あるいは航空機を集結させている」場合
 ――と言っている。ここからしても明らかに両者ともに恣意的判断の幅があるが、「おそれ」のケースよりも「予測」のケースの方が時間的にずっと以前の段階であることははっきりしている。
 さて、この「予測されるに至った事態」の導入と一体となっているのが、武力攻撃そのものの定義の変更である。従来、武力攻撃とは「外部からの組織的・計画的な攻撃」とされてきたのであるが、武力攻撃事態法案ではたんに「武力攻撃とは外部からの武力攻撃をいう」と定義されている。これではどんな小さな「武力攻撃」でも武力攻撃となってしまう。要するに、限りなく早い段階で武力攻撃事態を宣言することができるようにされているのだ。
 このように「武力攻撃が予測されるに至った」段階で早くも武力攻撃事態を宣言するのは、この武力攻撃事態法案の制定と同時に自衛隊法を改悪することによって、この宣言とともにただちに自衛隊の事実上の防衛出動を開始することができるようにするためである。

 「自衛隊法改正案」で「第77条の2」を新設

 自衛隊法改正案の「第77条の2」という条文の新設は、日帝および自衛隊にとって決定的な意義をもっている。
 この条文の新設によって自衛隊は「予測されるに至った」段階で、従来のようにたんに「防衛出動待機命令」によって待機するだけではなく、ただちに「展開予定地域」に展開し、防衛出動の際にまず構築する「防御施設」構築の活動を開始できるようになる。
 この条文の新設の意味は重大である。マスコミは、たんに陣地が早めに建設できるとか、今時、上陸阻止でもあるまいとか言って、労働者人民を武装解除するキャンペーンを行っているが、とんでもないことだ。
 「陣地その他の防御のための施設」(=「防御施設」)というのは塹壕(ざんごう)や防塁のようなものだけではない。対空高射砲陣地はもとより対空ミサイル基地、レーダー基地、対ゲリラ用の監視廠(しょう)などがいたるところに建設されるのだ。ミサイル攻撃に対応する最大の防御体制をつくれるだけつくる、対ゲリラの監視と阻止戦闘のための体制をいたるところに張り巡らすのは膨大な作業になるし、現代戦の常識からいえばこうした体制をとるということは先制空爆や先制ミサイル攻撃の開始を条件づけるもので、相手国からすれば重大な攻撃開始の意味をもつものなのだ。
 さらに、この作業と要員・物資の輸送のために、自衛隊は大々的に沖縄・九州・中国・四国・関西・北陸――などを軸に部隊を展開していく。戦争体制としての部隊の展開と集結が行われるのだ。相手国からみれば、これはもはや宣戦布告に等しい事態である。実際、日本政府の定義からしても、このように自国に向けて、ある国が実戦的な防御施設をつくり、ミサイルやゲリラの迎撃体制をつくりあげることは、同時に攻撃体制が百パーセント整ったことを意味するからだ。
 在日米軍を含む米日軍全体として考えてみれば、このことは百二十パーセント正しいことがはっきりするだろう。

 周辺事態法と有事立法3法案はほぼ同時発動

 ここで、こうした武力攻撃事態法案や自衛隊法改正案がどんな現実の中で機能するかをみておこう。この場合、周辺事態法と今度の有事3法案が同時に発動されうるという想定で事態の推移をみることが自然である。
 まず、米軍が対北朝鮮の武力行使の必要を宣言し、そのための軍事行動を開始する。これは新ガイドラインの包括的メカニズムや調整メカニズムによる一定の軍事的協議に基づいて行われる。自衛隊は米軍のこうした戦争体制づくりに全面的に協力して、すでに強力に動き出している。
 さらに事態が進めば、米帝は公然と対北朝鮮攻撃の開始を宣言し、港湾封鎖・海上封鎖を行う。さらに進めば、大規模な空爆を開始する。さらには部隊の上陸や降下が行われる。つまり完全な戦争状態に突入する。
 この全過程において、日帝・自衛隊はあらゆるタイプの補給活動を行う。公海上またはその上空という口実のもとで自衛隊の艦船も航空機もどんどん投入される。そして、その間に周辺事態法による日本での民間の協力の強制、物資と要員(労働者)の徴発・徴用も行われる。これは、強調してきたように、この段階ですでに日本の完全な参戦である。これを参戦ではないなどということは、国際的に言ってもまったく通用しない。
 したがって、包囲され攻撃された国の側(具体的には北朝鮮など)からすれば、日本に対して反撃する完全な権利が生ずる。この場合、まず始めに対日反撃の権利の宣言が行われ、続いてそれが実行に移されるかもしれない。ところが、北朝鮮のこの反撃戦の宣言(意図の表明)だけで、日帝政府の見解では「武力攻撃のおそれのある事態」の要件を満たすことになるのである。
 こうした流れの中で、武力攻撃事態法その他の法律はどのように機能するのか。実際には、米軍が対北朝鮮攻撃に事実上踏み切った時点で、あるいは周辺事態法の適用に踏み切るという時点で、日帝政府にとってはその後の全事態は十分予測されるのであるから、武力攻撃事態法や改正自衛隊法の適用はすでに可能となる。また、米軍が空爆などに踏み切った時点でほぼ完全に「武力攻撃のおそれのある事態」を認定できることになる。
 実際には、戦況の推移により、また日本の国内諸情勢いかんにより、
 イ 周辺事態法の適用を開始する
 ロ 「予測されるに至った」という武力攻撃事態の認定とそれへの対処行動を開始する
 ハ 「武力攻撃のおそれがある」と認定し、対処行動を開始する
 ニ 「武力攻撃があった」と認定し、対処行動を開始する
 ――などがいろいろな組み合わせで選択されていくであろう。
 しかし、かなりはっきりしていることは、周辺事態法の発動と「予測」段階での武力攻撃事態法の発動はほとんど重なって(またはきびすを接して)行われるということである。また、米帝の対北朝鮮攻撃の開始は、本質的にはそれと協力・共同する日帝・自衛隊の全面的な参戦へとたちまち連動していくことであり、その際、武力攻撃事態法こそが、日本を全面的な侵略戦争へと突入させていくための法的武器となることである。
 そして、「予測されるに至った」ことをもって武力攻撃事態を宣言し、事実上の自衛隊の出動を開始し、日本を戦争状態に一挙にたたきこむことができるようになり、たちまちにして「自衛権」の全面発動として合理化していけるようになるということ――ここに今回の有事3法攻撃の反革命的核心が存在するのだ。

 政府の決定で戦争突入国会承認事項を希薄化

 武力攻撃事態法案の狙いが米日帝の北朝鮮・中国への侵略戦争の合法化であることは、武力攻撃事態法案第9条(「対処基本方針」の決定とそのプロセスについての規定)のきわめて作為的で複雑な構成の中にもはっきりとみてとることができる。
 結論からいえば、この第9条は、いわゆる「武力攻撃が予測されるに至った事態」をもって、武力攻撃事態を宣言し、事実上の戦争状態に突入することを狙っているものである。確かに武力攻撃事態法案でも「防衛出動」自体の決定については、国会の承認の必要を形式的に確認してはいる。しかしそれは、すでに戦争状態に突入している中での、戦争が既成事実化しているなかでのドサクサ的な現実の最中(さなか)での承認プロセスへと変貌(へんぼう)させられている。
 まず第9条は、第1項で「政府は、武力攻撃事態に至ったときは、武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針(以下「対処基本方針」という)を定めるものとする」とし、政府が「対処基本方針」を決定することをまず確認している。
 次に、「対処基本方針」の中身として、次の3つをあげている。
 1 武力攻撃事態の認定
 2 武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針
 3 対処措置に関する重要事項
 そして、この3の重要事項に定める事項という奇妙な形式で、次の第3項と第4項を別々に規定している。第3項では、予備自衛官の招集、即応予備自衛官の招集、防衛出動待機命令の発動、自衛隊法「第77条の2」に基づく「防御施設構築」命令の発動などについて記載せよとしている。これらはすべて内閣総理大臣の権限で承認できるものばかりである。したがって、これがすでに実施に移されていることもありうることを前提にしているような書き方をしている。
 第4項では、防衛出動についての記載の方法を書いている。すなわち、ここでは防衛出動について、自衛隊法第76条第1項(もちろん、これは改正案のもの)に基づいて「国会の承認を求め」ることを記載するのと、同76条第1項に基づき内閣総理大臣が命ずる防衛出動について記載する2つの場合を規定している。その際、内閣総理大臣の命ずる防衛出動についての記載は「特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合でなければ、することができない」としている。実に奇妙な書き方だ。「緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合には、国会の承認なしで内閣総理大臣が防衛出動を命ずることができる」とストレートに規定せず、対処基本方針に記載するための条件を規定しているのである。
 そして、注目すべきなのは第9条第6項である。第6項は、「内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、直ちに、対処基本方針(第四項第一号に規定する国会の承認の求めに関する部分を除く)につき、国会の承認を求めなければならない」としているのだ。
 きわめてまわりくどいが、カッコ内の除外規定の意味するものは何か。同じ「防衛出動」の国会承認でも、すでに内閣総理大臣権限で防衛出動を命じてしまって、すでに実働している時は、対処基本方針の他の諸方針(諸事項)と一緒にして承認を求めるが、まだ防衛出動が命じられていない段階で国会の承認を得る(つまり事前承認)時は、対処基本方針を2つの部分に分け、防衛出動の事前承認を得ること以外の部分をまず国会承認にかけるというのだ。そして、防衛出動の(事前)承認の問題はそれとは別個に国会にかけるというのである。

 一刻も早く出動狙う

 どうして、こういうことになるのか。これは要するに、日帝政府が対処基本方針をとにかく成立させ、武力攻撃事態法を一刻も早く発動することを狙っているということだ。そして、一刻も早く第10条以下に規定する武力攻撃事態対策本部を発足させ、戦争状態に国をあげて突入させることを狙っているのである。また、内閣総理大臣の命ずる防衛出動命令の場合は「緊急の場合」ということでないと記載できないというのであるから、緊急の情勢がすでに始まっていることが想定され、すでに戦争に全面突入しているのであるから、戦争突入的意識状態の中で、対処基本方針と一緒にして、防衛出動の国会承認を求めても大体においてすぐ通るとみているのだ。また、この場合はすでに防衛出動は行われていて、積極的に不承認の決議が出ない限り、出動は実効的に行われているという強みがあるということを計算しているのだ。
 今ひとつ決定的に重視すべきは、この第9条では、防衛出動について国会に事前に承認を求めるということが、対処基本方針の決定過程の中に埋没し、本来的な意味において国が戦争に突入すべきか否かについて国会で決定するという国会承認条項の意義がきわめて希薄にさせられてしまっていることである。防衛出動の可否以外の部分の対処基本方針がまず承認され、日本がすでに事実上の戦争状態に突入してしまっている時に、あるいは戦争推進本部=戦争指導最高本部は「対策本部」としてすでに成立している時に、また戦争的な扇動が最高潮に達している時に、防衛出動の国会承認が求められるのである。賛成派に有利で反対派に不利な戦争初期の雰囲気の中で、あっという間に即決に近いかたちで国会承認を得ることさえ狙っているのである。
 (つづく)

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