ZENSHIN 2002/10/14(No2073 p08)

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週刊『前進』(2073号1面1)

革共同の10月アピール
イラク人民虐殺戦争許すな 10・13三里塚−10・21国際反戦デーへ
 小泉有事立法突撃内閣打倒せよ 国鉄決戦勝利・資本攻勢粉砕を

 日本の労働者階級は、今秋、イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕の決戦を戦後最大の政治決戦として爆発させ、60年、70年を超える巨万のデモをかちとらなければならない。国鉄決戦を不屈に貫き、全労働者の団結を強化・拡大することをとおして、資本攻勢と対決する闘いと有事立法決戦とを大合流させることが死活的に求められている。10・13三里塚大結集をかちとり、10・21全国統一行動を全世界の労働者階級、被抑圧民族との国際的連帯をかけた闘いとして戦取しよう。拉致問題をめぐる排外主義の嵐(あらし)を打ち破ろう。この10月決戦を跳躍台に、11月24、25日の国労大会決戦を戦端として、03春闘攻防の突破口をこじ開ける一大資本攻勢との大激突に勝ち抜かなければならない。11月の労働者大結集運動は、労働組合の再生と防衛のために闘い抜かれる決戦である。ここに日本労働者階級の命運がかかっている。11月労働者総結集の量的・質的力こそが、11〜12月国会攻防を始めイラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕決戦のさらなる爆発を切り開くのだ。

 第1章 イラク侵略戦争反対 国際反戦闘争の開始

 9・11一周年に、米帝ブッシュはイラク侵略戦争の開戦を宣言した。20日には国家安全保障戦略(ブッシュ・ドクトリン)を打ち出し、世界戦争に訴え米帝が唯一の超大国として世界を制覇し続けると言い放った。全世界に吹き荒れる戦争、恐慌・大失業のおびただしい惨禍と暗黒は、帝国主義の死の苦悶(くもん)である。そうであればこそ、労働者階級は、20世紀が解決するべくして解決しえなかった帝国主義の全面的打倒を、今こそ成し遂げなければならない。
 9・11一周年は同時に、帝国主義の暴虐と真っ向から激突する国際階級闘争の反撃の開始となった。9月27日のワシントンでのG7に対する650人の大量逮捕者を出す実力決起や、28日ロンドンでの40万人大集会など、反戦デモが激発している。イラク侵略戦争反対の闘いは、ベトナム反戦闘争をはるかに上回って爆発するに違いない。またパレスチナでは、アル・アクサ・インティファーダ2周年の壮絶な決起が巻き起こっている。
 日帝・小泉政権は、米帝のイラク攻撃の重圧を背景に、北朝鮮に全面屈服を強いる帝国主義的軍事外交を行っている。賠償請求権を放棄させ、植民地支配と強制連行・強制徴用、日本軍軍隊慰安婦問題、そこでの数百万人の連行、虐待、虐殺の一切を開き直るばかりか、拉致問題を突きつけて「北朝鮮=テロ国家」と規定し、朝鮮侵略戦争へ突入する口実、枠組みづくりを行ったのだ。拉致問題は、日帝の植民地支配とその継続である戦後帝国主義とスターリン主義による朝鮮南北分断体制のもとで、北朝鮮スターリン主義によって引き起こされた反革命的反人民的な軍事作戦の一環である。それは、北朝鮮スターリン主義が、朝鮮の南北分断打破=革命的統一の立場にも、日本の労働者階級に決起を促しともに米日帝の朝鮮南北分断=侵略戦争を阻止する立場にも、まるで立っていない反革命であることをはっきりと暴露する事態である。そうしたスターリン主義反革命だからこそ、金正日は、対日植民地賠償という全朝鮮人民の痛切な願い=血債の要求をいとも簡単に投げ捨ててしまった。そして在日朝鮮人民を日帝社会の排外主義襲撃の前にさらしている。
 今こそ、“朝鮮人民・在日朝鮮人民と固く連帯して米日帝の北朝鮮侵略戦争を阻止し内乱に転化せよ。一切の排外主義襲撃から在日朝鮮人民を防衛せよ。米日帝に屈服し朝鮮統一に敵対する金正日スターリン主義を打倒せよ。朝鮮人民とともに米日帝打倒、南北分断打破=革命的統一をかちとれ”の旗を掲げて闘うときだ。この闘いを、イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕と一体で闘おう。
 米帝のイラク侵略戦争は、イラク人民、アラブ人民、イスラム諸国人民への大虐殺戦争だ。米帝は、91年とその後の10年間、無差別爆撃と一方的な殺りくをほしいままにしてきた。米帝は、再びこうした侵略戦争を「国益」を掲げて強行しようとしているのだ。イラクが思いどおりにならないことをもって民族を皆殺しにし、民族自決権をじゅうりんし、石油を略奪しようとしているのだ。米帝は13億イスラム諸国人民すべてを抹殺しなければ終わらない戦争にのめりこんだのだ。これによって米帝は「勝利」できるのか。断じて否だ。
 この不正義な侵略戦争・世界戦争への踏み込みこそ、米帝の破滅と崩壊の歴史的始まりなのだ。全世界のプロレタリアートと被抑圧民族は、団結した階級的力で、反帝国主義・反スターリン主義のプロレタリア世界革命の早急な完遂へと驀進(ばくしん)しなければならない。
 この中で日帝は、新テロ対策特措法を制定し、米英帝に続いて深々とイラク侵略戦争に参戦しようとしている。これは有事立法攻撃の一層の激化をもたらす。イラク侵略戦争は日本階級闘争、日本の労働者階級の未来と直結しているのだ。
 臨時国会で有事法案は成立見送りという、武装解除を狙った意図的な報道を粉砕して闘おう。そもそも米帝のイラク侵略戦争強行と日帝の参戦策動こそ、有事立法強行の切迫を示している。内閣改造で防衛庁長官に“超タカ派国防族”の石破が抜てきされたことは、有事立法強行のシフトだ。小泉有事立法突撃内閣を打倒し、有事立法を粉砕せよ。
 イラク反戦・有事立法粉砕の重要な環は、5・16連合見解との闘いだ。

 「連合通達」粉砕を

 9月12日、連合は「政策課題をめぐる他団体との共闘について」とする通達を出した。有事3法案について民主党の「修正案」にのる態度を示した上で、「全労連またはそれに関係する団体等からの共闘の申し入れについては、明白な拒否の対応決定をお願いします」と、各構成組織、地方連合会に指令した。20労組陣形への制動にのりだしたのだ。
 それは第一に、5・16連合見解に対する連合内の反乱が巻き起こり、それが連合の瓦解(がかい)につながりかねないことへの恐怖である。5・16連合見解を、あくまでも「有事立法賛成」としてごり押ししようというものだ。第二に、連合内最大単産である自治労の定期大会で大流動が始まったことが決定的打撃となっている。第三に、日帝権力もまた20労組の闘いに大打撃を受けた。連合を抱き込んだ有事立法強行戦略が大破産にたたき込まれることへの、日帝権力のあせりと憎悪がその背後にあるのだ。
 「21世紀臨調」の路線をベースとした5・16見解をもって、連合は帝国主義の先兵として反革命的に純化した。連合の9・12通達は、有事立法攻撃の凶暴なエスカレーションを示している。だがそこにこそ、有事立法攻撃の最大の破綻(はたん)点がある。5・16見解撤回の大運動を巻き起こし、有事立法攻撃をその根幹で粉砕しよう。
 さらに、有事立法攻防の今ひとつの決定的な環は沖縄闘争である。沖縄は革命の砦(とりで)であり、イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕の最大の拠点である。沖縄闘争と強力に結合して、米軍基地撤去=沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒の闘いの新たな発展をかちとろう。

 第2章 戦争・大失業と対決 11月労働者総決起へ

 29年型世界大恐慌の本格化が、世界戦争のプロセスを加速している。世界株安はとどまることなく進行し、世界の株式市場において、この2年半で株式の時価総額は12兆j強(1500兆円)減少した。それは01年の世界の国内総生産(GDP)の4割に匹敵する。米のGDPや日本の個人金融資産を上回る巨大な規模の資産価値が吹き飛んだのだ。
 ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は下落を続け、9月30日には7600jを割ってバブル崩壊後の最安値をつけ、年初からの下落率は40%を超えた。これを受けて東京市場は株、円、債券のトリプル安に見まわれた。日経平均株価は10月3日、終値で9000円を割り込み、今年3月から約20%の下落となった。
 この株安で大手銀行の含み損は半年間で2兆円も増加し、3兆5000億円〜4兆円に膨らんだ。主要13行の不良債権残高は02年3月末で27兆円に達し、01年9月末より6兆円以上も増加した。9月18日には、日銀が「禁じ手」とも言える銀行保有株の購入を決定した。小泉構造改革は全面破産へと突き進みつつある。
 小泉は、柳沢金融担当相を更迭してまで、再び銀行への公的資金の直接投入にのめりこもうとしている。それは、不良債権処理の加速を叫びつつ、倒産と失業を激増させて、労働者階級に一切の犠牲を転嫁しようとするものである。
 こうした中で末期的危機を深める帝国主義は争闘戦を激化させ、侵略戦争と一体の一大資本攻勢を全世界で一層激しく進めようとしている。
 03春闘は、イラク侵略戦争情勢、有事立法情勢のもと、春闘の最後的解体か否か、労働組合の絶滅か否かをかけた一大階級決戦となる。11月労働者大結集運動は、その闘いの突破口である。
 現在の資本攻勢の特徴は第一に、首切り・大リストラ攻撃のさらなる拡大と、不安定雇用労働者の激増だ。8月の完全失業率は5・4%、完全失業者数は361万人となった。正社員(常用労働者数)が前年同月比で42万人減る一方、雇用契約期間が1年以下の不安定雇用労働者が激増している。パート労働者は950万人で、全労働者に占める割合は約22%と過去最多になった。
 一方、8月の企業倒産集計(負債1千万円以上)によれば、倒産企業の負債総額は前年同月比44%増となっている。中小企業の倒産激増は不可避である。厚生労働省「雇用政策研究会」は、06年までの5年間に1900万人が転職(首切り)を強いられるとしている。
 第二に、95年に日経連が打ち出した「新時代の『日本的経営』」路線が全面的に貫徹され、大リストラ・首切り・総額人件費削減の攻撃が終身雇用制解体の本格的激化とともに推進されている。
 その典型が、アウトソーシングによる転籍強要と実質的な50歳定年制を柱とするNTT型のリストラだ。それは、国鉄分割・民営化型の攻撃と併せて、全産業にすさまじい勢いで波及している。その頂点に郵政公社化=民営化攻撃がある。
 80年代から90年代にかけてのアメリカのように、今日、日本でも川崎製鉄とNKKの経営合併・持ち株会社設立に見られるごとく、大企業は大規模合併をとおした全面的なアウトソーシングによって徹底したコストダウンを図り、終身雇用制解体と不安定雇用化を推し進めている。それは同時に、徹底した労組解体攻撃として貫かれている。
 今ひとつは、戦後社会保障制度の解体だ。とりわけ年金制度・企業年金制度の解体は、総額人件費の削減と終身雇用制の解体を激しく促進している。
 また、雇用保険制度も保険料の値上げと「失業認定の厳格化」で解体されつつあり、医療制度改悪も激化している。介護保険料の値上げもすさまじい攻撃だ。
 第三に、小泉の唱える「規制改革」のもとで、労働法制改悪・労働基本権解体・団結権解体の攻撃が激化している。
 「解雇ルールの法制化」、有期労働契約の拡大、裁量制の見直しなどの労基法の改悪、派遣法の見直し、個別労使紛争への対応、解雇の救済手段としての「金銭賠償方式」などの策動が激化している。特に「解雇ルールの法制化」は「整理解雇4要件」を緩和し、解雇の自由を法制化する悪らつなものだ。
 こうした労働法制の改悪は、有事立法攻撃と一体をなしている。特に、5・28反動判決を突破口に推し進められた労働委員会制度の解体、労組法解体の攻撃は、労働組合の団結権をめぐる攻撃として、今なお激しい攻防のテーマである。
 さらに、国際的組織犯罪条約の来年批准を狙う日帝は、「組織共謀罪」を新設して労働組合を治安弾圧の対象にし、圧殺することをたくらんでいる。それは、労働組合の刑事免責・民事免責を取り払い、争議行為を認めず、団結権を徹底的に解体するものだ。
 これらは戦時型司法を狙う司法改革攻撃と一体となって、有事立法下の労働組合破壊攻撃として推し進められている。
 第四に、03春闘が階級攻防の焦点となっている。
 奥田日本経団連会長は、法人税減税を叫んでいるが、それは労働者への大増税としてのしかかる。さらに奥田は、賃金を「一律型賃金体系から多立型賃金体系へ」転換させ、徹底した賃金抑制と成果主義、賃金制度の面からの終身雇用制解体を推し進め、さらには賃金闘争の一掃を狙っている。仕事(職務)を「定型的職務」と「非定型的職務」に分け、昇給も降給もある「定期昇降給」制度を創設し、春闘では「ベースダウン」と「定期昇降給」などの露骨な賃金引き下げを行うというのだ。
 さらに、「多立型」という形で、労働者を分断し、団結を徹底的に解体しようとしている。この新たな賃金体系の特徴は、JR総連カクマル松崎や電機連合など、むしろ労働組合の側が要求してきた「職種別賃金」「仕事給」などを取り込んでいることにある。つまり、大失業と賃下げ攻撃は、労働組合を屈服させ、取り込むことなしには貫徹しえないのだ。
 第五に、これに対して連合はいかなる態度をとっているのかである。
 「日経連」の「多立型賃金体系」に対応して、6月の電機連合大会では「職種別の賃金要求」方針を打ち出した。それは、11職種を設定し、職種別横断賃金を実施しようというものだ。これは、帝国主義間争闘戦が激化する中で、徹底したコストダウンを狙う日帝資本に完全に屈服し、終身雇用制解体・年功序列賃金解体攻撃、リストラ・分社化・出向・転籍攻撃のエスカレーションにこたえるために、労働組合の側から「横断的人事・賃金制度」を提案したということだ。
 要するに資本のリストラをあらかじめ受け入れ、前提化した賃金制度なのだ。
 連合が現在要求している労働契約法やパート・有期労働契約法制定も、実際には不安定雇用化の攻撃にあらかじめ屈服しているものだ。このような連合の全面的屈服をテコに、03春闘は資本攻勢の今ひとつの転換点になろうとしている。
 第六に、自治労をめぐっては、公務員制度改革や人事院制度さえ解体する給与引き下げ、扶養手当・ボーナス・退職金引き下げの攻撃、綱領をめぐる自治労中央の転向との1年間決戦に突入する。
 教労においては、有事立法攻撃の一環をなす教育基本法改悪攻撃との大決戦である。この攻防のもとで、「ながら条例」攻防に示される日教組解体攻撃と全力で対決しなければならない。
 さらに、郵政公社化=民営化攻撃をめぐって全逓決戦はいよいよ激化する。
 以上のすべての攻防は、5・16連合見解との激突と一体となって進行する。
 これらの攻撃は、いずれも労働組合の破壊・解体攻撃であり、11月労働者大結集運動は労働組合防衛の一大決戦だ。

 第3章 4党合意を破棄して1047人闘争の発展を

 11月24、25日の国労大会は、戦後最大の階級決戦の一環として闘われる。資本攻勢との対決の最先端の攻防である。
 国鉄決戦は、国鉄労働運動解体攻撃から国労・動労千葉を防衛し抜く闘いをとおして階級的労働運動の再生をかちとり、プロレタリア革命の戦略的突破口を押し開く階級決戦である。国鉄労働運動の最先端には1047人の解雇撤回闘争がある。4党合意は、この1047人闘争の圧殺をとおして、国労・動労千葉を解体しようとした一大反革命であった。
 国労本部の大会議案(第1次草案)は、破産した4党合意にしがみついて延命を図ろうとするものだ。彼らは自己保身のために4党合意の破棄を絶対に認めようとしない。この議案こそ日共=革同の「再構築」路線の帰結だ。4党合意破棄のためには本部を打倒する以外にない。代議員選に勝利し、本部打倒・闘う執行部確立へ突き進もう。
 4党合意を破棄し、国鉄闘争を勝利させる道は、1047人闘争の再確立と発展以外にないことを熱烈に訴えたい。
 1047人闘争とは、国労・動労千葉・全動労が、解雇撤回・JR復帰の階級的利害をとことん貫く闘いである。4党合意は、国鉄闘争が1047人闘争として発展することへの敵対として登場した。4党合意の破産は、1047人闘争の生命力ある復権を意味している。それは日本労働運動の巨大な流動と再編、躍動の結集力となる。
 今ひとつ決定的な情勢は、カクマル中央派と分裂したJR総連カクマルが、破産と瓦解(がかい)の道を転げ始めたことである。JR東労組東京地本、新潟地本、高崎地本、千葉地本などの松崎カクマル派は破産と分解を深めている。
 これは、分割・民営化以来の資本・カクマルの結託体制が行き詰まる中で成立した昨年8月1日の第4次労使共同宣言もまた破産の危機にあることを意味している。それはニューフロンティア21の大合理化をめぐる資本とカクマルの矛盾と危機の爆発である。JR総連解体・打倒をとおして国鉄決戦の歴史的勝利をかちとる情勢が到来したのだ。
 このような情勢を押し開いたのは、動労千葉の死闘にほかならない。分離・独立以来、分割・民営化以来の動労千葉の闘いが、階級的労働運動の見本として確固として存在してきたことの意義である。動労千葉の闘いに学び、1047人闘争の発展、JR総連解体の勝利を開き、闘う労働運動の新たな潮流を壮大なものとしてつくりだそう。動労千葉を最先頭に、国鉄決戦の突撃路を切り開く11月労働者総決起を圧倒的にかちとろう。

 労働者党の建設を

 9・11以降の世界戦争情勢に対応した本格的な労働者党建設、社・共に代わる労働者党建設を、今こそ徹底的に推し進めなければならない。何よりもレーニンの三つの義務の闘いを、労働者階級の中で全力で貫かなければならない。
 第一に、「労働者の中へ」は、機関紙活動から始まり、機関紙活動に集約される。政治闘争、経済闘争、理論闘争の三大闘争は、党的主体的には機関紙によって体現される。労働者の階級性、階級的団結は、毎週の機関紙によって培われ、打ち固められる。機関紙を軸に細胞会議をかちとり、団結を実現することである。
 さらに6回大会路線での武装をとおして、反スターリン主義・革命的共産主義運動の歴史的総括を深め、それを実践的に生かすことである。同時に、プロレタリア革命・プロレタリア解放の思想と理論、マルクス主義を学習しよう。
 第二に、労働者党建設は、血みどろ汗みどろの実践によってかちとられる、ということだ。細胞・中央委員会の一体性、細胞建設と地区党建設の一体性を、労働運動、大衆運動の実践の中でかちとっていくことである。
 特に職場細胞建設の闘いは、労働組合の防衛と再生、階級的団結の強化と拡大の先頭に立つ、実践に次ぐ実践によってかちとらなければならない。
 第三に、より実践的には革命的大衆行動、労働運動・労働組合運動、革命的議会主義における党派闘争の強化である。
 革共同は、党の歴史、党の労働運動の実践を、動労千葉などの戦略的拠点を形成し、防衛することで物質化してきた。党の戦略的拠点を守り抜き、発展させることの階級的核心は、党派闘争である。それは党的団結を固めることであり、党建設そのものである。さらに、新たな拠点建設、労働組合の権力の獲得こそが、現状の壁を突破するカギとなる。
 急迫するイラク攻撃情勢と対決し、イラク反戦・有事立法粉砕に立とう。今秋決戦の激戦激闘をとおして、強大な労働者党を建設しようではないか。

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週刊『前進』(2073号1面2)

国労代議員選に勝利しよう 裏切り者一掃し大会決戦へ

 国労本部は、第70回国労定期全国大会に向けての代議員選挙を10月7日告示、18日投票として実施するとの指令を下ろした。
 今次国労大会と代議員選は、4党合意を完全に破棄し、1047人闘争の防衛と新たな発展を押し開くのか、4党合意にすがって闘争団を圧殺し、国労56年の歴史に幕を閉じるのかをかけた決戦だ。
 反動革同、残存チャレンジ、東京地本・酒田一派らは、あくまでも4党合意にしがみつき、闘争団を切り捨て、国鉄闘争を終わらせ自ら国労を解体することで延命を図る最後の裏切りに走っている。その不正義はあまりにも明らかだ。
 日共=革同は、「国鉄闘争再構築路線」をめぐる激震の中で、「4党合意依存路線ではだめだが、4党合意の破棄を国労の側からは要求しない」などというペテンで、自己の破産を居直っている。だがそれは、4党合意をここまで推進してきたのは、まさに彼らであることを自己暴露するものだ。久保、山根ら反動革同のこうした新たな裏切りの論理にのっかって、4党合意にしがみつき、闘争団圧殺と連合合流に突き進んでいるのが国労本部−高嶋・寺内執行部や東京地本の酒田、芝崎ら極悪どもだ。
 2002年度運動方針(案)の第1次草案はその産物だ。そこには、「決定した方針に従わない一部闘争団が行っている行動が国労の団結を乱し、方針に基づく解決の大きな障害になっている」「一部闘争団の組織を無視し国労方針を無視した勝手な行動」などという闘争団罵倒(ばとう)の言辞が頻出している。
 だが、日帝が有事立法攻撃と一大資本攻勢・労組絶滅の攻撃を激化させているこの時に、権力にすがって「解決」を図ろうとした本部の政治和解路線こそが大破産を遂げたのだ。
 本部はそれを居直り、自らの破産を闘争団切り捨ての口実に転化して、あらためて闘争団除名へと突進しようとしている。方針案は、「方針に基づく解決を妨害することを許さず規約に基づいたしっかりした対応も併せて行う」と言ってのけた。さらに本部は、「JR7社に分割された以降も、組織等の検討も行わず今日まできている。……組織体制をはかる議論を行う」として、全国単一体としての国労を解体する意図をむき出しにした。
 しかも、このどこまでも反動的な方針案さえ“仮のもの”だとして、「大会を採用差別事件の解決案を討議し、批准するための大会とするために引き続き全力をあげる」「大会直近の状況によって、変更もありうる」と言い放っている。あの宮坂補強案のように、大会当日、より裏切り的な方針を突如提案し強行することも狙っているのだ。
 彼らにとって、4党合意の破棄とはすべてのウソの自認であり、党派的破滅となる。だから4党合意がどんなに破産しようが、自分からは絶対に破棄することはできない。極悪反動や裏切り者は、自ら引き下がることはない。反動どもを打倒する以外に4党合意を破棄する道はない。そうしない限り正義は貫けない。勝利と発展はかちとれない。
 本部の卑劣な自己保身のために闘争団を切り捨て全国単一体を解体する。これが本部の描く定期大会のあり方だ。チャレンジと反動革同による国労の私物化はここに極まった。
 4党合意を推進してきたすべての反動分子を代議員選でたたき落とし、本部打倒・闘う執行部確立へ突き進もう。

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週刊『前進』(2073号1面3)

台風直撃 市東孝雄さん方直ちに復旧作業

 台風21号の直撃で、三里塚反対同盟に大きな被害が出た。暫定滑走路で防風林がなくなった影響だ。市東孝雄さん方では、直径70aのかしの木が倒れ作業小屋の一部が破損、滑走路をにらむ大看板も半分が倒壊した。萩原進さん方もハウスに被害。台風一過の10月2日、早朝4時半から支援十数人が駆けつけ復旧作業。作業小屋が元通りに(写真)。看板も10・13集会までに修復の予定。

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週刊『前進』(2073号1面4)

水嶋同志の保釈決定 検事抗告棄却せよ

 東京地裁は10月2日、89年9・21千葉県収用委会長せん滅戦闘のデッチあげ弾圧被告、無実の水嶋秀樹同志の保釈をついに決定した。この間の水嶋同志、弁護団、救援運動の闘いがかちとった地平である。検事は不当にも東京高裁に抗告を行った。これを粉砕し、高額保釈金(700万円)をはね返して水嶋同志を必ず奪還しよう。無罪判決をめざし、次回公判(10月11日午後1時半、東京地裁)に大結集しよう。

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週刊『前進』(2073号2面1)

“1047名の解雇撤回を” 1000人がJR総行動を展開
 闘争団と共闘会議 鉄建公団訴訟スタート

 9月26日、鉄建公団訴訟第1回口頭弁論が行われ、鉄建公団訴訟原告団と国鉄闘争共闘会議が主催する9・26JR総行動が闘われた。闘争団は北海道・九州から30人が上京。裁判の傍聴を始め終日の闘いが展開され、参加者は延べ1000人、JR本体の国労組合員も多数参加した。国鉄闘争は11月大会へ向け、国労本部の除名処分策動と兵糧攻めを打ち破って決起した闘争団を先頭に、1047名闘争として発展する新たな段階に入った。
 この日、闘争団と共闘会議は、朝8時半からJR東日本本社前と東京地裁前で宣伝行動。ただちに11時から東京地裁で行われる第1回口頭弁論に大結集した。

 “4党合意破綻大会で認めよ”

 地裁前で、国鉄闘争共闘会議の二瓶久勝議長が訴えた。「1047名の不当解雇撤回のためには、裁判闘争と大衆運動が両軸だ。共闘会議は全国で連鎖集会を開催し、『1047名の不当解雇を撤回しろ』と迫る大衆運動を展開する。そして11月の国労大会を4党合意は破綻(はたん)したことを確認する大会にしなくてはいけない。勝利を切り開く闘いを開始しよう」
 地裁103法廷で行われた口頭弁論の傍聴希望者は約300人に及んだ。原告席には20人近い闘争団員と遺族が座った。代理人の加藤晋介弁護士に続き、原告2人が意見陳述を行った。
 1人目は稚内闘争団の上出修三さん。「私の職場だった南稚内駅では、JR会社への移行時、国労脱退者はJRに採用され、国労組合員全員がJRに採用されないという100%の不採用率、歴然とした組合差別が行われた。3年間の清算事業団でも、稚内では事業団のあっせんで再就職ができた職員は1人もいない。この訴訟で、旧国鉄とJRに不当解雇・不当労働行為の責任をとらせたい」

 “今は亡き夫に謝ってほしい”

 2人目は美幌闘争団の遺族、三浦成代さん。「亡き夫の意思を引き継ぎ、人間としての尊厳を取り戻すため提訴しました。16年間も闘ってきたのは、JRに『採用差別がありました』と非を認め、亡き夫に謝ってほしいからです。他界した夫がJRに戻れるわけもありません。名誉回復だけが夫に残されたものです。『2度目の解雇』を受けた時、『このままでは過去の人生をたたきつぶされたようなものだ。自分を取り戻すために闘う』と決めた夫。その夫を8年前、突然病でうしないました。夫の死を早めたのは政府、JRの採用差別です」
 生活と子どもを抱え闘い抜いてきた三浦さんの切々たる訴えに法廷は静まりかえった。
 今後の口頭弁論期日が11月21日、12月16日、来年1月27日と決まった(いずれも10時30分から東京地裁103法廷)。
 午後はJR東日本本社、鉄建公団、国土交通省、厚生労働省に抗議行動を展開。とりわけJR東日本本社に対しては、玄関前まで進出してJRの責任を徹底追及する気迫を示した。
 夕方6時半から労働スクエア東京で行われた裁判報告集会は、法廷を再現する形式で「9・26大衆法廷」を行い、600人が参加、1047名の一員として動労千葉争議団も参加した。
 国鉄闘争共闘会議の代表は「国鉄分割・民営化以降、『全員解雇・選別採用』という『国鉄方式』の大量リストラがまん延している。1047名闘争の早期解決と闘う労働運動の再生をめざして、ともに頑張ろう」と訴えた。国鉄臨時雇用員の解雇撤回闘争を闘う和田弘子さんらの訴えも行われた。最後に鉄建公団訴訟原告団の酒井直昭団長が闘争団員約30人とともに登壇して発言、韓国の労働歌「同志」に合わせて力強くこぶしを突き上げた。
 この闘いは、10月代議員選−11月定期大会へ、決戦開始のゴングを力強く響かせた。社民党の渕上副党首は「9・26鉄建公団訴訟が始まれば4党合意は終わりだ」と公言している。4党合意の破産は今や明らかだ。なおも4党合意にしがみつき、国鉄闘争終結と国労解体を策す裏切り執行部を打倒し、国労の再生をかちとろう。
 そして、国鉄闘争を国労闘争団と動労千葉争議団、全動労争議団が完全に結びついた1047名闘争として再確立することこそ勝利の道だ。今こそ大攻勢へ!

 鉄建公団訴訟とは

 国労本部の最高裁訴訟取り下げの策動に抗して、国労闘争団員・遺族283人が今年1月28日に東京地裁に提訴した。国鉄清算事業団を継承する鉄建公団を相手取り、90年4月1日の清算事業団による解雇の無効と地位の確認、未払い賃金と慰謝料1000万円の支払いなどを求めた。請求総額は109億円を超える。
 原告団は、印紙代だけでも約2000万円に上る訴訟費用の支払い猶予を求めていたが、東京地裁は7月5日、原告全員の支払い猶予を決定した。決定理由として東京地裁は「本件の記録によれば、申立人らが勝訴の見込みがないとはいえないことが一応認められる」とした。

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週刊『前進』(2073号2面2)

4党合意撤回労働委闘争

 “3党声明撤回せよ” 国労組合員が新たに申し立て
 除名を迫る与党に反撃

 国労大会の決戦を前にした9月18日、国労組合員16人が自民党、公明党、保守党、国土交通省、JR各社を相手に、4月26日付の与党3党声明の撤回などを求めて東京都地方労働委員会に救済を申し立てた。申立人は東京、千葉、新潟、秋田、米子地本の組合員で、1人は被解雇者だ。
 午後1時、組合員の代表が申立書を都労委に提出した。闘争団の除名を迫る与党3党の国労への悪らつ極まる支配介入と真っ向から対決する闘いが始まった。その後、申立人らは厚生労働省で記者会見した。
 この日、大阪地労委では4党合意撤回事件の第13回審問が行われた。申立人は与党声明の撤回を救済内容として追加し、南近畿地本の組合員が証言に立った。

 甘利は出頭を!

 大阪地労委は、4党協議の座長であり、4党合意による不当労働行為の張本人である甘利明自民党副幹事長の証人採用を決定したが、甘利は出頭を拒んでいる。このため申立人は、証人出頭の確保、自民党本部への臨検、関連文書の提出命令などの強制権限の発動を地労委に求めた。労働大臣経験者でもある甘利の出頭拒否は許せない。大阪地労委は公労使3者委員の総会でその扱いを審議するとした。攻防は新たな段階に入った。
 闘争団員が申立人となっている福岡地労委では、9月9日に甘利の証人尋問が予定されていたが、ここでも甘利は出頭を拒んだ。申立人が不出頭を激しく弾劾した結果、甘利が地労委に提出した回答書が開示された。それは、「無意味な証言をする暇もありません」と労働委無視の姿勢をあからさまにした上、申し立て自体を「国労に対する反逆行為」と非難し、「国労は申立人らのような反対者は意見を変えない限り除名を含む処分をすると決議した」と事実無根のことまで並べ立てている。福岡でも、申立人は労働委に強制権限の発動を要求した。

 結審策動と対決

 9月18日、「4党合意は不当労働行為ではない」とした中労委命令の取り消しを求める行政訴訟の口頭弁論が東京地裁で行われた。
 前回口頭弁論で裁判長は「4党合意へのJRの関与に関心を持っている」と述べ、「JRの関与の有無を問わず不当労働行為の問題を生じさせない」とした中労委に釈明を促していた。
 しかし、この日の口頭弁論で中労委は一言の釈明もせず居直った。原告は中労委を徹底的に弾劾したが、裁判長は結審の動きを見せている。これとの攻防が次回(11月27日)も続く。
 また、申立人らが4党合意への関与の中止などを国交省に求めた請願に対し、同省は「4党合意成立以降、甘利氏と緊密に連絡し推進している」とあけすけな回答を寄こしている。
 4党合意−与党3党声明は政・官・JR資本が一体となった国家的不当労働行為の集大成だ。その撤回と謝罪を求める労働委闘争は、国鉄分割・民営化以来の国家的不当労働行為の総体を弾劾し、敵にしたたかな打撃を与えている。甘利はこれに追いつめられた。
 この闘いは鉄建公団訴訟や最高裁訴訟参加、生活援助金凍結中止の仮処分闘争と連帯する闘いだ。何より、職場で苦闘する組合員への「闘えば勝てる」というエールである。国労組合員は申立人に加わろう。4党合意を破棄し、裏切り執行部を打倒して国労の階級的再生をかちとろう。

n4党合意の撤回を求める労働委員会闘争
 00年8月、国労組合員と動労千葉が4党合意の撤回などを求め、自民党・国土交通省・鉄建公団・JRを相手に全国各地の地労委に救済を申し立てた。
 大阪・福岡地労委では今も審理が続行中。千葉では地労委の却下決定に対し中労委での再審査に。いずれも甘利の証人出頭が焦点となっている。東京・新潟・秋田・鳥取の4件は、地労委の却下、中労委の棄却を経て東京地裁で中労委命令の取り消しを求める行政訴訟が闘われている。動労千葉の事件は、中労委命令を擁護した東京地裁の反動判決に対し控訴審に入った。

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週刊『前進』(2073号2面3)

有事立法闘争 連合が共闘禁止の通達 20労組陣形への許せぬ敵対

 連合は9月12日、「政策課題をめぐる他団体との共闘について」と題する通達を構成組織・地方連合会あてに出した(別掲)。結論として、有事法制に反対する陸・海・空・港湾労組20団体などとの共闘を「拒否せよ」という断じて許しがたいものである。民主党など野党を巻き込んで有事法制成立を狙う小泉政権に全面協力し、反対運動を抑え込むことを誓ったのだ。その背後には、反対運動に追いつめられた国家権力の、連合への恫喝がある。
 9・12通達は、臨時国会に対する方針は「三役会議で検討中」として、具体的に示していない。5・16連合見解は「緊急事態を速やかに排除」するための「法整備は必要」として、有事法制を完全に認めた。だから臨時国会で一定の「修正」や「国民保護法制」が示されれば全面的に賛成する、戦争動員にも協力するということである。
 そして、「全労連またはそれに関係する団体等からの共闘申し入れ」について「明確な拒否」を決定しろと指示している。特定はしていないが、全労連傘下の労組も含む20労組を指しているのは明らかだ。また、各地でナショナルセンターの枠を越えた共闘が広がっているが、これらをぶっつぶすと宣言しているのだ。
 9・12通達で触れている6・13通達では「連携や共闘については、統一をめぐる過去の経過や連合の『進路と役割』などその基本原則が重要視されなければなりません」と言っていた。「進路と役割」とは、87年に発足した民間連合の綱領だ。それは「自由にして民主的労働運動」という帝国主義的労働運動のスローガンを掲げ、連合結成を「右翼的再編ときめつける団体、組織に対しては、毅然(きぜん)と対応する」というもので、ほぼそのまま現在の連合の綱領=「連合の進路」となった。連合中央は、有事法制反対のうねりを連合結成の原点が揺らぐ事態だととらえ、°連合結成の経過と綱領に従え″と恫喝しているのだ。
 8月の自治労大会では、6・13通達が代議員から問題にされ、本部が「詳しく聞かせてほしい」と答弁する一幕もあった。
 6・13通達は地方連合会あてだったが、9・12通達に「構成組織」が加わっているのは、そうした単産レベルの動向に激しい危機感を持ったからだ。
 連合の下からの闘いが連合中央を確実に追いつめている。5・16見解と6・13−9・12通達を打ち破り、有事立法阻止へ労組の広範な決起をかちとろう。

 連合9・12通達

連合発
第07-00732号
   2002年9月12日
構成組織・地方連合会
書記長・事務局長 殿
 日本労働組合総連合会
 事務局長   草野忠義
 総合組織局長 阿部道郎

政策課題をめぐる他団体との共闘について

 ……第154国会で継続審議となりました「有事関連3法案」につきまして、連合は第8回中央執行委員会で「連合見解」を明らかにし、法案の成立阻止に向けた取り組みを行ってきました。その結果、3法案は継続審議扱いとなりました。しかし小泉首相は今次臨時国会で審議する動きを見せています。今後の臨時国会での対応については、現在、三役会議で検討中です。
 こうした中で、有事法制をめぐって全労連またはその関係する団体等から地方連合会への共闘の要請がなされています。他団体との共闘については、6月13日付け第07−00585号で要請した通りです。従って、全労連またはそれに関係する団体等からの共闘申し入れについては、貴執行委員会において明確な拒否の対応決定をお願いします。

 

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週刊『前進』(2073号2面4)

“高見さんを職場に戻せ” 不当解雇11カ年を糾弾 芦屋郵便局前闘争に30人

 9月10日、11年前の9月14日に「精神病者」であることを理由として兵庫県芦屋郵便局をクビになった高見元博さんと連帯し、不当解雇11カ年糾弾闘争が闘われた。高見闘争は、「精神病者」の労働権を訴え多くの支持を受けてきた。闘争が11年も続いてきたこと自体、多くの支援がなければできないことだ。
 今年の不当解雇糾弾闘争には、11年もたつというのに年休をとって全逓労働者や地域の労働者、「精神病者」ら30人が結集した。この日初めて参加した強制配転に反対する郵政労働者の団体からは、10人が°ともに闘うぞ″と結集した。クビを切った郵便局に向けて、赤旗が4本立ち、そろいの「強制配転反対」の鉢巻きでシュプレヒコールのこぶしが振りかざされた。
 労働者、「精神病者」が次々と発言し、人間を否定する精神病者の首切りを、今郵便労働者を襲っている公社化・民営化への怒りと結び付けて弾劾した。さらに「アフガニスタン・パレスチナの人民を殺害する戦争を許さない」「ともにひとつの課題として労働運動の再生へ闘うぞ」と決意を述べた。
 今や怒りはひとつとなり、°「精神病者」をクビにしても、何の反対も起こらないだろう。誰も文句を言わないだろう″と労働者をなめきっていた郵政当局に大打撃を与えるものとなった。不当解雇は敵の思惑とは反対に、階級の怒りに転化した。労働者と「精神病者」の連帯、階級的団結が実現された。°労働者階級の勝利の根拠ここにあり″と示した闘争だった。

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週刊『前進』(2073号2面5)

国労の誇りかけ (4) ●インタビュー 国労闘争団
 JR組合員と結びつき闘う
 「ぼろは着てても心は錦」。まだまだ頑張れる!
  北海道D闘争団 Sさん、Cさん、Oさん家族。Yさん、Bさん

 基本失った本部

 ――定期大会へ、いよいよ正念場ですね。
 S 本部は大会を「(解決案を)批准する大会に」と言ってるけど、そんなものはありえない。今の本部は、組合としての基本をまったく失ってる。クビを切られても一緒に闘っているのは、長年一緒に苦労しながら支え合って闘ってきたつながりが大きいんです。でも今は「仲間を大事にする」という従来の国労のよさを失っちゃっている。
 それは結局、国労の方針の問題で、JR職場の問題と闘争団の問題が別々になっている。そこを立て直すためにJR組合員に事実を伝えることが必要だよね。われわれはJRの組合員との関係は重視してますよ。
 4党合意はそもそも、00年5月30日、中執で勝手に受け入れを決めたことが問題なんです。しかも7月1日の臨時大会に向けて、宮坂書記長(当時)は、「解決交渉が同時並行で進んでいる」と言っていた。でも臨大では、そのことに一言も触れずに書記長集約に入った。完全にうそをついていたんだから、みんな怒って当然ですよね。
 ――7・1臨大の時の家族のパワーはすごかった。
 B あの時、壇上に上がりたかったもんね。音威子府の家族の藤保さんの「私たちの人生を勝手に決めないで」って言葉は私たちみんなの思い。でもあの後、藤保さんが「私たち家族は困ってません」と言ったことを賛成派が攻撃してきたんだって。ひどいよね。
 Y でもそれは意味が違うんだよ。生活には困っていても「私たちはまだまだ闘う気持ちがある。もっと頑張れる」ってこと。だから私は、藤保さんがそう言ったの、本当に立派だと思う。「ぼろは着てても、心は錦」って言ったんだよ。
 ――2年たって、4党合意では何も進まないことが明らかになってますね。
 S 最近、賛成派でも「何かおかしいぞ」という声が上がり始めた。今まで同じ釜の飯を食ってきた闘争団員を除名処分するという話に、「それはダメだ」と言う人もいる。
 C JRの組合員も変わってきていることは間違いない。本部方針に基づいて今、団員にJR組合員から「鉄建公団訴訟を下ろせ」というはがきが届いてるけど、その中の組合員が一言書く欄に「原告団の訴訟、頑張れ」と書いてあるはがきが舞い込んできている。真実が組合員の中に浸透してきている現れですよね。
 ――清算事業団の時のこと、どう思ってますか?
 Y 「だんなは正しいのに、なぜいじめた人たちが正しいことになるの?」って思った。だからそこで踏みとどまったんだよね。
 O 清算事業団に行ったら「再就職をあっせんする」なんてところじゃなかった。大半の人が「地元JR」や「公的」を希望したけど、個人面談で「JRもダメ。公的もない。民間しかない」と言われる。国会では「延べ2万件に及ぶ再就職あっせんをした」と言ったけど、まったくうそ。徹底的に再就職を妨害されたのが実態です。
 Y 家族で清算事業団を見に行って、みんな「こんなことするの?」ってもう涙ボロボロ。それから家族も抗議行動に歩き始めた。
 でも私は、人材活用センターの時の方がつらかった。人活は誰がJRに残れるかわからない。「血の入れ替え」と言って、国労以外の人が来て、だんなたちが何年もかけてやってきた仕事を1〜2カ月で習う。それで仕事を教えたらだんなはもうお払い箱。
 その時、私が「あんたが仕事を教えたらクビになるんでしょ。なのに、なんでそんなことをやらなきゃいけないの」って言ったら、だんなは「自分は自分の仕事を全うしなくちゃいけない」って。それくらいみんな自分の仕事にプライドを持ってたし、国鉄を愛してたし、仲間を思っていた。
 S もし辞めようと思ったら、あの時辞められた。でも、国家的不当労働行為が許せない、そのこだわりがあるから、ずっと闘ってきた。単に雇用だけの問題じゃないんです。

 原職復帰掲げて

 Y 最近、本部の寺内書記長が「45歳以下の団員が約200人いる。その人たちを優先的に復帰させたい」って言ってる。「なぜ45歳なの!」って思うよ。私らは30歳代でクビ切られたんだよ。15年前を問題にしているんだから、今が何歳でも関係ないでしょ。
 O 革同でも「おれはもうJRには戻れないから、一人でも若い人をJRに戻そう」って言う人がいる。
 Y そういう人には「あんただけ抜けな。私たちは戻るんだから」と言ってやりたい。だけど一番いいのはみんなが戻ることよね。
 S いろんな争議でも金銭解決が多いけど、おれたちは何歳になろうと「解雇撤回・地元JR復帰」の要求は絶対に下ろさないよ。
 ――子どもは親御さんの生き方をどう見てますか。
 Y うちの子は「人らしく生きよう」の映画を観た後、お父さんに質問した。「どうしてお父さんはこういう生活を選んだの? なして国鉄を辞めてほかの仕事に就かなかったの?」って。そしたら「仲間を裏切れなかったから」って。
 B 子どもには恩返ししないとって思う。私もだんながクビを切られてから働き始めた。貸付金が5〜6万でボーナスもない。それでどう子どもを育てるのかって。みんなそうだよ。
 Y だから、もしお父さんたちが裁判で負けたら、お母さんたちが裁判起こすわよ! 鈴木宗男は刑務所に入って、まだ国会議員の給料もらってるんだよ。うちのお父さんたちはただただ真面目に働いて、何も悪いことをしてないのに、こんな目にあってる。こんな社会ってないよね!
 私たちは、だんなをもう一度線路に立たせてあげたい、「自分で見切りをつけて退職する」って思いをさせてあげたいと思う。何年かかろうと、自分で自分の人生を納得できる結果でなきゃ認められない。

 支援拡大に感激

 ――次期大会に向けて、一言お願いします。
 S 生活援助金を凍結されて今、団員は必死で働いています。闘い続けるためには、闘いと生活基盤の両方をやりぬくことが大切だから。鉄建公団訴訟も武器にして、大衆闘争を広げていく。僕らがつながっているJR組合員に事実を伝え、大きな力にしていく。当たり前のことをやるしかないと思っています。
 B 私たちは東京に行くと、国労本部がこんなになっているのに支援者がいっぱいいて、すごく感激するの。支援の広がりにすごく元気をもらってます。
 (聞き手/本紙・上原祐希)

 国鉄闘争関連年表(1985年〜90年)

85年
7月
国鉄再建監理委員会、最終答申。国鉄を7社に分割・民営化、約10万人を「余剰人員」と
 
11月
動労千葉、分割・民営化反対のスト
86年
1月
動労などが国鉄当局と第1次労使共同宣言締結
 
2月
動労千葉、第2波スト
 
7月
国鉄当局、全国1010カ所に人材活用センター設置。87年3月まで増設し、分割・民営化に反対する組合所属の約2万1000人の職員を隔離・収容
 
10月
国労修善寺大会。「労使共同宣言締結」方針を否決、山崎執行部を打倒
87年
2月
新会社設立委員会が1万3754人の不採用を決定
 
4月
JR会社発足。7628人が清算事業団に送られる
88〜 90年
全国17の地労委で、国労組合員の採用差別への救済命令が出る(対象者2816人)。動労千葉、全動労にも
90年
3月
国労、動労千葉がスト
 
4月
1047人が清算事業団から解雇(国労966人、全動労64人、動労千葉9人、その他8人)。1047人闘争始まる

 

◎取材メモ

 「うちの家族のパワーはすごいよ」と言われて会った家族の方たちは、その言葉にたがわずとてつもなくエネルギッシュだった。仕事と子育てと闘争、その中での怒り、悔しさ、喜びのすべてを団員とともにしてきた15年の重みを胸に刻んだ。

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週刊『前進』(2073号3面1)

闘う日教組の再生かちとれ
有事立法と教基法改悪阻む教育労働者の11月総決起へ

 世界戦争突入情勢下の戦時教育との対決

 米帝のイラク侵略戦争の切迫、日帝の対北朝鮮侵略外交として、時代はいよいよ世界戦争への不可逆的過程へと向かいつつある。イラク侵略戦争絶対反対の国際反戦闘争に立ち上がり、排外主義の大合唱と対決して今秋有事立法決戦を大爆発させよう。
 アメリカの公教育は、戦時教育の様相を強めている。公立学校では毎朝、国旗への「忠誠の誓い」、国歌斉唱が行われ、「これは正義と悪の戦いであり、正義は必ず勝つ」という大統領演説を引用した教材が配られている。「若者たちは米国が特別な目的と使命を持つと教えられる」――正義と悪の二分法は、教育の役割に負うところが大きいとパレスチナ出身の米知識人は指摘する。他方、全米教育組合(NEA)は、保守派やメディアの攻撃にさらされながら9・11事件をどう教えるかをめぐって苦悩し抵抗している。
 日帝の侵略戦争突入情勢下で戦時教育体制との激突は不可避である。それは、「日の丸・君が代」をめぐる攻防としてすでに開始されている。そして、有事立法と教育基本法改悪攻撃こそ、教育労働者に戦争協力=侵略教育を強制する大攻撃なのだ。
 中教審は「国際競争の激化」「各国において『国家戦略としての教育改革』が急速に進行して」いる中で「このままでは我が国が立ち行かなくなるとの危機感」をむき出しにして、教育の目的の大転換を果たそうとしている。中間報告素案は言う。「教育には、人格の完成を目指すという目的のもと、個人の能力を伸長し、自立した人間を育てるという役割と、国家や社会の構成員として有為な国民を育成するという役割があり、これらは、これからの時代においても引き続き変わらない」と。
 そして、臨教審の「不易と流行」論を援用した「時代を超えて変わらない価値のあるもの」と「時代の変化とともに変えていく必要があるもの」というロジックを使いつつ「前者を軽視すれば伝統と文化を失うこととなり、後者を軽視すれば画一的な教育が社会の活力を衰退させる」と言う。
 これは、教育の目的を「人格の完成」と「国家有為の人材育成」論に二本建てにした上で、前者を《自己責任で能力開発に励む人間》にわい曲することによって、ともに国家戦略への教育の奉仕を導きだすものである。
 中教審は、争闘戦の世界戦争への転化という「時代の潮流」を踏まえて「大変革の波に挑み、激動の時代を切り拓いていく日本人を育成する」と言い、「21世紀の我が国を担う日本人に必要な資質」として「能力伸長の意欲」「創造性」「リーダーシップ」「我が国の伝統・文化の尊重」「国や郷土を愛する心」「日本人としてのアイデンティティ」などをあげている。争闘戦に勝ち抜くための人材、侵略戦争の担い手づくりを「これからの我が国の教育の目標と位置づけるべき」ということだ。
 「教育の憲法」である教基法の原理転換は、下位法令の大規模な見直しに連動し、教育のありようを根本から変えていくものとなる。
 教基法を棚上げし、得手勝手な行政解釈をこじつけ“学習指導要領は法規だ”と強弁することで国家主義・能力主義を進めてきた文科省は、今度は改悪教基法を振りかざした一斉攻撃をかけてくるだろう。学校教育法の「教育の目標」に「国を守る気概」を盛り込み、同施行規則で奉仕活動を教育課程に位置づけ、学習指導要領に「戦争協力は国民の義務」と盛り込めば国防教育と軍事教練が復活する。「日本人育成」の愛国心教育が「教育の使命と職責」とされれば、「日の丸・君が代」強制への抵抗は「教職不適格」として分限処分の対象となる。
 他方、教基法見直しと一体で進められている教育振興計画の策定は、「国家戦略としての教育」そのものである。教基法を教育振興計画の根拠法とすることは、教育への教育行政の不当な支配を禁ずる教基法10条の趣旨を完全に解体する。東京都教委が主幹制導入の規則改悪で先取りしたように、学校教育法28条の教諭の職務規定に「上司の命を受け」が復活し、教師の教育権は解体される。
 有事立法が指定公共機関をはじめ全産業の労働者に戦争協力を強制するものだとすれば、教育労働者は教基法改悪とそれと連動した下位法令の改悪によって侵略教育が強制されるのである。

 侵略教育強制する「聖職者」攻撃を許すな

 さらに、長期休業中の指定休廃止にかこつけた自主研修権のはく奪、時間内組合活動への弾圧など、組合弱体化、新たな「聖職者」攻撃が強まっている。
 人事考課制度は東京から全国に拡大しつつあるが、東京では特別昇給、「指導力不足教員」認定に続いて、普通昇給に業績評価を反映させ、人事考課でC、Dランクに評価された者は昇給延伸とすることが提案されている。03年度から導入される主幹制度は、新たな職階制であり、主幹は教頭要員とともに主幹級職として特2級が適用される。差別賃金をテコにした教職員の分断と管理統制を断じて許してはならない。
 57年に全国化した勤評攻撃は、特設道徳設置、社会科大改悪など教育課程の改悪、学習指導要領の法的拘束力付与と一体で、安保体制下の愛国心・国防教育を強制しようとする攻撃だった。そして、勤評による日教組破壊の先に、教基法の明文改悪が狙われていた。「勤評は戦争への一里塚」を掲げ、これと激突した勤評闘争こそ、今日まで勤評を形骸(けいがい)化してきたのみならず、教基法改悪を今日まで阻止し、警職法闘争から60年安保闘争を切り開くことで改憲をも阻止してきた原動力だったのだ。
 人事考課制度、主任制強化などの攻撃との闘いを教育の権力支配、戦争に向けた教育改悪との闘いとして位置づけ、教基法改悪・有事立法阻止と結合して教育闘争として発展させていくことが勝利の道である。
 1930年、全協(日本労働組合全国協議会)のもとで非合法下に日本教育労働者組合(教労)が、合法的運動団体として新興教育研究所(新教)が設立された。31年に柳条湖事件が勃発(ぼっぱつ)するや、教労・新教は、「新興教育」で帝国主義戦争反対を宣伝する一方、国定修身教科書を逆用して戦争や天皇制を批判する教壇実践を繰り広げるが、33年2月、「長野教員赤化事件」の大弾圧を契機に壊滅する。「不穏思想を持つ教職員の徹底的掃滅」が叫ばれ、34年には文部省思想局、各県に国民精神文化講習所が設置され、教師に「国体精神」が注入されていく。教育界は「日本精神」を唱道して侵略教育を推進していく。37年、中国全面侵略戦争が開始されるや国家総動員法と一体で国民精神総動員運動が開始され、翌38年には勤労奉仕が始まった。
 34年の全協の壊滅後も、「銃後生産に邁進(まいしん)する」と宣言した37年の総同盟(日本労働組合総同盟)の総罷業絶滅宣言にいたるまで戦闘的労働争議は闘われ、産業報国会化をうちやぶる階級的労働運動の勝機はあった。だが誕生したばかりの教育労働運動は、十分な組織的力量を築けないまま壊滅させられた。生活綴(つづり)方運動などの抵抗はのちまで継続されるが、労働者階級から分断された「聖職者」教師の行き着いた先は、戦場と軍事工場へ子どもを駆り出す死の手配師だった。
 「教え子を再び戦場に送るな」の誓いは、労働運動の産業報国会化を許さない闘いとしてこそ貫かれなければならない。5・16連合見解と陸・海・空・港湾労組20団体の闘い、さらには国鉄1047人闘争を最大の焦点とする労働運動の分岐と激突の帰すうに侵略戦争阻止の成否はかけられている。有事立法・国鉄決戦を闘う中から、11月労働者大結集運動に合流しよう。

 5・16連合見解賛成の日教組中央弾劾する

 有事立法賛成の5・16連合見解を決定した中執会議で、全日本海員組合などが必死に反対する中で、日教組榊原委員長は、終始沈黙を守ってこれを容認した。「連合として通常国会での成立反対でまとまったのはいいことだ」と開き直りつつ、「平和フォーラムは『人間の安全保障』の立場から反対、日教組は憲法9条違反の立場から反対」などと言いくるめてきた。
 だが、5・16連合見解で日教組の取り組みをしばると言うなら、こうした言い逃れは通用しない。連合見解の有事立法必要論を徹底批判し、日教組中央の対応を自己批判させ、撤回させなければならない。
 有事立法必要論にくみする日教組本部は、教育の戦争協力=教基法改悪にも阻止の方針を示さず、反対運動を教育振興計画策定要求にすりかえている。中教審の中でも、前日教組書記長・渡久山は、「『人権尊重の心』を明記すべきだ」と教育目的の見直し論に唱和し、果ては「世界的人材が必要なら財政的裏付けを」などと「国家戦略としての教育」にもろ手をあげて賛成している始末である。
 有事立法阻止、教基法改悪阻止、日教組再生の闘いはひとつである。5・16連合見解を徹底弾劾し、平和フォーラムの侵略翼賛運動と対決し、労働者階級の一員として教育の戦争協力を拒否しよう。今秋決戦への教育労働者の総決起をつくりだし、その力をもって、戦時下の「日の丸・君が代」闘争となる03年卒・入学式闘争を切り開こう。
 〔マル青労同教育労働者委員会〕

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週刊『前進』(2073号3面2)

10・13三里塚に総結集を 反対同盟からのアピール(下)

 前号に引き続き、10・13三里塚全国集会に向けた三里塚芝山連合空港反対同盟のアピールを掲載します。4月の暫定滑走路開港から半年。反対同盟の闘いと存在の前に暫定滑走路の矛盾は深まるばかりだ。10月13日には全国から三里塚現地への大結集を実現し、暫定滑走路の延長=農民追い出しの攻撃を粉砕しよう。敷地内の萩原進さん、市東孝雄さん宅では、10月1日の台風21号で大きな被害が出たが、反対同盟と支援の固い団結力で復旧しつつある。10・13集会の大成功で激励しよう。(編集局)

 敵の弱さが見える 事務局次長 萩原進さん

 先日の一坪共有地の調査で空港の中に入った。素人が見ても一目瞭然(りょうぜん)、危険性も含めて、とんでもない暫定滑走路の供用の現実がある。飛行機の離着陸で車は10〜20分と待たされた。小回りの利かない飛行機では、20〜30分の時間はすぐ待たされる。滑走路の長さが足りない問題などもあるが、決定的なのは誘導路が1本しかないことだ。
 また一方で、滑走路のすぐわきには一坪共有地があり、市東さんの家や現闘本部もある。暫定滑走路は、予想以上の破産性を呈している。
 敵は実際にジェット機を飛ばして、住民を屈服させようとした。しかし、それ以上に住民の怒りの方が大きかった。だから今度は、北側延長でジャンボを飛ばすと脅してきた。それは、住民の怒りの火に油を注ぐだけだ。一方で北側延長でジャンボを飛ばすと脅し、他方で話し合いで解決しようと言う。こんな理不尽は、まかり通らない。
 この半年間の攻防戦をわれわれは勝利的に展開した。そういう中で10月集会を迎える。
 同時に東峰神社裁判が始まった。これも向こうの弱点だ。村の財産であるご神木をなりふり構わず切ったは良いが、その悪行は向こうも自覚している。しかし、まさか東峰部落が一丸となって裁判するとは思っていなかった。土地強奪、生活権はく奪の攻撃に対する反撃の闘いはさらに強化されていく。
 勝てる裁判だ。万が一、不当判決が出ても、人民の怒りは爆発せざるを得ない。どういう形が選択されても火に油を注ぐ結果になる。
 日常的な騒音や排ガスの問題、生活防衛の闘いで、敵の弱さをかいま見ることができる。フェンスのかさ上げも、それをやれば空港の運行に大きな支障をきたす。騒音や排ガスを認めれば、「差し止め」という話にもなる。追撃的に闘っていく。そういう中で、公団は十分対策をとっているような言い方をせざるを得ない。しかし、現実を見れば一目瞭然。こういうことを逐一暴露していく。
 暫定滑走路の矛盾は、現在の4000b滑走路にも支障をきたしていく。彼らの計画どおりにはいってない。自転車操業的にやらざるを得ない。暫定滑走路開港で滑走路が2本になって便数は2割くらい増えたが、乗客の数は増えていない。滑走路を増やした意味がないわけだ。
 世界はいつ戦争が起きてもおかしくない状況だ。力でねじ伏せ、支配していかないと、政治も経済も成り立たない。だから因縁をつけて、戦争を求めていく。
 日本でも戦争のための法律と体制をつくろうとしている。それが有事立法だ。われわれの土地や家や生活権を奪うのはもはや有事立法しかない。2500bの滑走路も有事立法でしかつくれない。われわれはそのようなものは絶対に許せない。物理的に阻止する。三里塚はそういう闘いをやれる。

 一坪共有地の威力 本部役員 鈴木幸司さん

 新しく空港公団総裁になった黒野匡彦という人間はずっと運輸省(国土交通省)で成田空港の建設にかかわってきた人間だ。歴代の総裁もだが、こういう人間はただ空港をつくることしか考えていない。住んでいる人間のことはまったく考えていない。
 環境がうんぬんと言っているが、騒音も排ガスの問題も空港をなくす以外に方法はない。その意味で悪質きわまりない総裁だ。反対同盟は、全国の闘う人びととともに、今後、総裁のなり手がだれもいなくなるような情勢をつくりだす。
 移転した連中は、反対しても空港はつくられると考える。脱落派の石毛博道も、ぎりぎり(最高)の条件を要求して移転しなければならないと主張している。条件をとる。
 こういう考えが、シンポでも円卓会議でも見抜かれていた。シンポ・円卓会議で「今後強制的な手段はとらない」「地権者の合意なしに着工しない」と言いながら、東峰神社の立ち木を強盗のように伐採し、暫定滑走路をつくった。石毛たちは「約束違反」と抗議してもいいはず。ところがいまだに反対運動をする人間が悪いと言っている。
 脱落派の運動は反対運動ではない。何のために闘っているかを忘れたら、残っているのは私欲だけだ。その条件も、反対同盟が闘っているから意味がある。反対運動を金にしようとしている。
 この間、現地調査で空港用地内に入り、一坪共有地を確認した。共有地の部分はすり鉢状で、深さ10bぐらいの底が共有地だ。だから、その数倍の面積が使えない。飛行機が穴に落ちるかもしれない。実際に現場を見て、一坪共有地の威力を再確認した。公団は、平行滑走路に行くための新たな誘導路を画策しているが、私の名義の一坪もあるので、全然展望がない。
 誘導路の「へ」の字も、完全に直角だった。そこに信号が3〜4つあった。危険きわまりない。管制官もパイロットもたまらないだろう。このままでは事故になる。暫定滑走路はだめ。使うべきではない。
 戦争の直前という実感がある。ほとんどの国が反対していても、米国はイラクを攻撃すると言っている。核を大量に持っている米国が、核を持っている「おそれ」があると口実をつけて戦争をやろうとしている。
 9・11だって、問題は米国が引き起こしている。米国は、これまで何千万人も殺してきた。ところが米国や日本の報道は、かつての戦争中の大本営の発表と同じだ。一般市民が知らない情報がいっぱいある。戦争経験者として、大本営発表と今の報道が重なると危惧(きぐ)している。
 小泉政権を打倒する闘いが必要だ。このまま小泉政権が続いたら大変だ。

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週刊『前進』(2073号3面3)

失業労働者の団結へ 被災地・神戸からの報告 (7)

 反戦闘争と反失業闘争を一体で 帝国主義打倒への決起

 対行政闘争を反戦を掲げて

 被災地の失業労働者組織化の闘いは、職場(現場)闘争と政治闘争・反戦闘争を結合し、豊かな発展をとげつつある。
 来る10月15日には、第16回被災地反失業総行動が、被災地雇用と生活要求者組合と、関西合同労組兵庫支部の呼びかけで闘われる。
 今回は初めて「被災地を戦争の街にするな! 失業対策事業を再開せよ」をメーンスローガンにする。被災地の怒れる労働者・住民に、国と兵庫県・神戸市が震災復興事業の破産を軍事都市づくりで突破しようとしていることを正面から暴露し、中央政治闘争への決起を促すとともに、失業反対闘争を軸に、対行政闘争を反失業・反戦闘争として闘い、本格的反戦闘争への発展をかちとる方針だ。
 大企業優先の復興政策によって、震災から立ち直れない労働者は、リストラ解雇、生活不安、慢性的失業、不安定雇用、家庭崩壊、自己破産、発病、自殺に追いこまれている。
 被災失業者の自立支援を名目にした被災地しごと開発事業は、被災者が自立などできていないのに、今年3月で打ち切られた。1400人の被災就労者が一挙に首を切られたのだ。
 被災者は、しごと開発の打ち切りなどで収入が激減しているのに、補助の段階的切り下げによる家賃値上げ、災害援護金の返済、高齢化など厳しい生活を強制され続けている。また、同和対策事業の完全打ち切り、改良住宅の家賃値上げは、大失業に加えて、被災地の部落大衆を困苦のどん底に追いやっている。
 行政の被災労働者・住民見殺しの姿勢に、怒りが充満しているのだ。

 神戸を戦争の街にする行政

 「阪神大震災復興政策」と名付けた被災労働者・住民切り捨て、大企業優先の大型公共事業は、世界大恐慌過程への突入の中で、次々に破綻(はたん)している。兵庫県や神戸市は、ほとんどが売れ残ったポートアイランド二期埋め立て地や、神戸空港建設などの破産を国家の戦争体制づくりにのっかってのりきろうとしているのだ。
 戦時の傷病兵治療に使用される先端医療産業のポートアイランド二期埋め立て地への誘致や、だれが見ても採算性がなく軍事目的への転用しか考えられない神戸空港建設推進など、すべてが北朝鮮侵略戦争につながる動きだ。
 米日帝による北朝鮮侵略戦争攻撃を背景に「非核神戸方式」を破棄せよというアメリカ総領事の再三の要請が行われている。「非核神戸方式」とは神戸港を管理する神戸市が外国艦船に非核証明書の提出を求め、ない場合は入港を認めないシステム。75年に神戸市議会で決議された。神戸港は、それまで米艦船の入港実績国内第1位だったにもかかわらず、それ以降ゼロになっている。アメリカ総領事は、朝鮮半島への侵略戦争出撃基地となる舞鶴と高速道路で直結し、三菱造船や川崎重工などの軍用艦艇の修理ドックがあり、兵員の休養に適当な歓楽街が近い神戸港の重要性を露骨に明言しているのだ。
 兵庫県による住民基本台帳ネットワークの率先実施や、有事立法3法案、個人情報保護法案の攻撃など、労働者の生活の領域にまで戦争が直結してきている。
 また阪神大震災で被災した労働者・住民の防災意識の高まりを利用して、防災訓練や隣組制度の創設など防災を口実に、戦争体制とリンクした国民総動員体制づくりが狙われている。
 兵庫県や神戸市は、「神戸株式会社」と言われ、全国に先駆けて住民切り捨ての大型公共投資を行ってきた。行政がその破産を戦争体制づくりで突破しようとしていることに対して「有事立法に反対し一切の戦争政策に協力するな」と要求書を提出し、行政への抗議行動として反失業総行動を闘うのは決定的に重要だ。

 労働者が自ら反戦闘争提起

 「対行政反戦闘争」という新方針が打ち出されたのは、雇用と生活要求者組合の役員会で、ある役員の「被災者の生活はほったらかして神戸港や神戸空港建設に復興基金をつぎこんで戦争をやる街にする行政は許せん。被災者の生活を守る闘いと一緒に戦争反対の闘争にすべきではないか」という意見がきっかけだ。それは戦争反対の闘いと、失業反対の闘いが、ばらばらになっているのはおかしいという批判でもあった。
 この新方針は、生活の領域にまで戦争が迫っている中で、労働者の命と生活を守る観点から両者を結合して反戦闘争のすそ野を広げる闘いである。それと同時に、反失業闘争の中に「戦争によって雇用を増やす」という帝国主義的労働運動や差別・排外主義の思想を粉砕する内容を形成していく闘いでもある。
 被災地の反失業闘争の8年間の歴史は、労働者が要求で結集し、階級的団結をとり戻し、ついには「戦争反対・被災地を軍事都市にするな」を掲げる反戦闘争をみずから提起し、闘う地平にまで発展してきたことを示している。
 95年阪神大震災直後の、生きんがための雇用保険失業給付要求の闘い、失業給付切れに対する中高手帳発給要求の闘い、労働者企業組合や労働者供給事業など、みずから雇用をつくり出す闘い、労働学校による労働者の権利の学習、沖縄闘争との出会いによる帝国主義国家権力という「根っこは一つ」の認識、事実上の失対事業である「しごと開発事業」をかちとった闘い、反失業総行動をともに闘う中での、部落差別や在日に対する差別など差別・排外主義を許さない立場の確立、しごと開発事業打ち切りへの対行政実力闘争、国家権力の弾圧との闘い、反戦闘争の主体的取り組み。自己解放的に決起する労働者がさまざまな困難を団結してのりこえながら、勇躍として前進している。
 私たちは、「労働者の中へ」を合言葉に、阪神大震災被災地の労働者の中に飛び込んだ。あれから8年、労働者とともに闘いながら、強固な信頼関係をつくりあげ、ともに喜び、ともに悲しみ、失業反対闘争を軸にした労働者の戦闘的な階級的団結の形成に全精力を注ぎ込んできた。
 労働者は、自らを苦しめ人間的あり方を拒絶する資本主義=帝国主義を打倒するために必ず自己解放的に決起する。ともに闘う中でそれを支え促すのが、私たちの任務だと思う。
 (投稿/落合良雄)

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週刊『前進』(2073号3面4)

資本攻勢&労働日誌 2002 9月12日〜27日
 連合、03春闘ベア要求基準否定
 4人に1人パート労働者/マイナス人勧閣議決定

●12日 連合は中央執行委員会を開き、03春闘の基本構想素案を確認。ベア要求基準を示さない方向を提案した。(要旨別掲
◇連合と日本経団連は懇談会を開いた。連合から笹森会長、日本経団連からは奥田会長らが出席。日本経団連が5月に発足して以来、連合との正式な会合は初めて。
◇東京都は、正規の手続きを経ずに、勤務時間中に組合活動を行っていたとする教育労働者に対して給与返還請求訴訟を提起した。(東京都の発表
◇厚労省が発表した01年度社会福祉行政業務報告によると、昨年度生活保護を受けた世帯が過去最高の80万5169世帯に達し、これまで最多だった84年度の78万9602世帯を超えたことがわかった。
◇トヨタ労連が記者会見し、自動車総連提案の職種ごとの個別賃金要求検討の方針を明らかに。
◇厚労省の労働政策審議会職業安定分科会民間労働力需給制度部会が、職業紹介や労働者派遣など労働力需給制度の見直しに向けての検討を本格化させた。
●17日 パートタイム等で働く人が全労働者の4分の1を超え、過去最多になっていたことが厚労省の調査で明らかに。特に男性労働者に占めるパートの割合が9%と95年の前回調査から1.6倍に。
●19日 ゼンセン同盟(61万人)とCSG連合(17万人)、繊維生活労連(約1400人)の3産別が組織統合。「全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟」(略称=UIゼンセン同盟)を発足。79万人を擁し、組織人数で電機連合を抜いて最大の民間産別に。
●20日 総務省が民間企業退職金実態調査の結果を公表。国家公務員の退職金は民間企業の退職金を5.6%上回っているとしている。退職金切り下げ攻撃の前触れ。
◇連合官公部門連絡会は書記長会議で、短時間公務員制度(仮称)の新設を確認した。10月2日の代表者会議で正式に決定予定。
●25日 坂口厚労相は老人保健制度を07年度をめどに廃止する方針を明らかにした。
●26日 民間企業の労働者が昨年1年間に受け取った平均給与(給料・手当・賞与合計)は前年より7万円(1.5%)ダウンの454万円で、4年連続で減少したことが国税庁の民間給与実態統計調査で明らかに。下げ幅は過去最大。
●27日 政府は給与関係閣僚会議と閣議で、02年度の国家公務員の月給を2.03%引き下げるなどとした人事院勧告の完全実施を決めた。引き下げは、48年度に勧告制度が始まって以来初めて。臨時国会に関連法案を提出する。関連法の施行前に支払われた月給については、さかのぼって請求できないため、12月の期末手当で調整する予定。これは「不利益不遡及」の原則を踏み破り不法性が高いと言われており、民間への波及が危惧されている。

9・12連合中央執行委員会提案の03春闘基本構想素案(要旨)

▽ベア要求基準を示さない。
▽生計費をベースとする35歳ポイントのミニマム基準と年齢ポイントごとの参考値を掲げる。(絶対額方式)
▽参考値は@到達目標(30歳、35歳)A最低到達目標(30歳、35歳)B年齢別最低保障(25歳、30歳、35歳)C定昇相当分、の4つとする。
▽具体的な賃上げ基準設定は各産別にゆだねるとしている。
▽従来掲げてきた基準と比べると、統一要求基準としての色合いが一段と薄まっており、事実上、統一的な賃上げ要求基準を見送ったもの。
▽連合は同素案を10月3日の中央委員会に提起し、同月末の討論集会を経て、11月19日の中央委員会で具体的な基本方針として確認の予定。

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週刊『前進』(2073号4面1)

新恐慌対策は資本主義の自己破産 銀行保有株の購入 公的資金の再投入
大銀行が国有化の瀬戸際に
 島崎 光晴

 9月に日米の株価はともに、それぞれのバブル崩壊後の最安値を更新した。29年大恐慌を上回る世界大恐慌が、いよいよ本格化しつつある。そうした状況下、小泉政権は内閣改造を機に、銀行への公的資金の再投入に踏み切ろうとしている。また、日銀は民間大手銀行が持っている大企業の株式を買い取ることを決めた。前例のない非常手段の発動だ。これらは、世界大恐慌の本格化に対応した新たな恐慌対策である。しかし、小泉政権がどんなにあがいても、日本の恐慌は破滅的に激化せざるをえない。今や日本経済は、真にどんづまりの危機を迎えたのだ。以下、日銀による株式買い取りと公的資金再投入の二つを中心に、緊急暴露する。

 銀行の株式含み損4兆円に 世界大恐慌で日銀が禁じ手

 9月18日、日銀は民間大手銀行15行が保有している大企業の株式を、直接に買い取ることを決めた。10月から1〜2年の間に、1〜4兆円規模で買い取る見通し。帝国主義国で、民間企業の発行する株式を中央銀行が買い取るのは初めてのことだ。
 どの国でも、中央銀行は銀行券の発行と通貨政策・金融政策を主業務としている。日銀法でも「業務」がことこまかに決められており、株式買い取りは想定されていない。今回は第43条の例外規定を使うというが、日銀法での「日銀の目的」からも完全に逸脱している。それほどの「禁じ手」だ。
 日銀は従来、このような非常手段に反対していた。それを大転換したのは、今秋、銀行の危機が深まって金融恐慌が再爆発する可能性が強まったからである。
 何よりも、この間の株安が銀行を直撃している。9月初め、米株価の急落と相互に促進しあいながら、日経平均株価は9000円近くまで下がった。バブル崩壊後の最安値を更新し、83年以来19年ぶりの低水準となった。
 この株安で、銀行が持っている株式の時価は簿価を大きく下回った。株式を売れば損失が出るが、売らなくても計算上は損失を抱える。これを含み損と言う。大手行の含み損は4兆円に膨らんだもようだ。大手行が保有する大企業の株式総額は約25・6兆円(今年3月末)。その6分の1近い含み損だ。持っている株式に含み損が出ると、その6割相当の額を自己資本から差し引く決まりになっている。単純計算すると自己資本は2・4兆円減る。大手行の自己資本は約17・3兆円(今年3月末)だから、大変なダメージとなる。
 しかも、時価が簿価を下回った株式については、9月中間決算で損失(評価損)として計算しなければならない。この損失額は、銀行の本来の業務による利益(業務純益)に匹敵するほど巨額だ。この評価損によって9月決算が赤字となる可能性が強くなった。
 このように株安が銀行の資本額や決算内容を直撃する構造になっている。このため、9月中間決算を前にして、株安→大銀行の危機→一層の株安→金融システムの危機という悪循環に入りつつあった。日本経済は97〜98年に金融恐慌に陥ったが、それ以上に深刻な金融恐慌が再爆発しかねない状況を迎えたのだ。ここに至って日銀は、大銀行から株式を買い取る策に出たのである。その狙いは一層の株安を食い止め、大銀行を救済し、金融恐慌再爆発を防ぐことにある。

 株式取得機構の破産の結果

 それにしても、日銀がこのような非常手段に追いこまれたのはなぜなのか。大きく二つの背景がある。
 まず、政府・自民党は昨年から、銀行保有の株式を買い取る政策を実施してきたにもかかわらず、それが完全に破産してしまった。この数年、株安による銀行危機・金融危機が繰り返されてきた。そこで政府は、04年9月中間決算までに、銀行の保有株式を自己資本の範囲内に抑えるという制限措置を決めた(昨年11月成立の銀行株式保有制限法)。銀行の保有株を吐き出させる措置だ。
 この株式保有制限とセットで、銀行から株式を買い取る「銀行等保有株式取得機構」を今年2月に設立した。ところが、この取得機構が思惑どおりに機能していない。日銀が非常手段に訴えざるをえなかったのは、こうした一連の政策、大きくは小泉「構造改革」の破産の結果なのだ。
 もう一つ、米経済が本格的な恐慌に突っこみ始め、日銀は日本経済が受ける衝撃に震え上がった。米ダウ平均株価は9月24日、00年春のバブル崩壊以降の最安値を更新した。無理に無理を重ねた自動車販売や住宅建設も、ついに限界に達しつつある。米経済が本格的恐慌に入ると、日本の恐慌はさらに破滅的になる。日銀の山口副総裁は今回の決定にあたって、「海外から大きなショックが加わった時、日本の金融システムに何が起きるか懸命に考えた」と明言している。
 一方では小泉「構造改革」が破産し、他方では米経済の本格的恐慌が始まる中で、日銀はなりふりかまわぬ策に出ざるをえなかったのだ。その意味で、これは新たな恐慌対策にほかならない。99年の銀行への公的資金の注入、ゼロ金利政策の実施などが第1次恐慌対策。そして昨年から今年にかけての金融の量的緩和、銀行の不良債権処理の促進、銀行保有株式の取得策が第2次恐慌対策。今回は第3次恐慌対策と言える。

 金融資本の力は尽き果てた 日銀資産の劣化で円不信も

 中央銀行が、大銀行から大企業の株式を買い取るというのは、資本主義としての自己破産宣言である。帝国主義経済は、銀行と企業が融合した金融資本を根幹にして成り立っている。特に日本では、大銀行と大企業が株式を相互に持ち合ってきた。その株式を中央銀行が買い取るというのだ。金融資本として存続する力がもはやなくなった、ということではないか。帝国主義としてこれほどの行きづまりはない。
 しかも、帝国主義経済では、株式が資本の主要な調達手段となる。大企業が株式を発行し、その株式が市場で売買されることで帝国主義経済は動く。その大企業の株式を中央銀行が買い取るなどというのは、帝国主義経済の破産以外の何ものでもない。私有財産制を基礎とする資本主義の自己否定に等しい。
 さらに、日銀による銀行保有株の買い取りは、事実上の公的資金の注入である。政府がカネを出すにしろ日銀がカネを出すにしろ、本質的には同じだ。いずれにしろそれは労働者人民の負担になってくる。
 日本帝国主義はついに、資本主義−帝国主義としての自己破産を認めざるをえないほどの危機に転落したのだ。労働者人民は、今回の日銀の新恐慌対策に対して、〈帝国主義としての死〉を宣告し、日帝打倒へ決起しなければならない。
 しかも、この新恐慌対策は功を奏するのかというと、全然違うのだ。そもそも9月中間決算に向けて株価を支えることすらできなかった。さらに、円の信認を低下させる可能性もある。通貨の信用は、中銀の資産内容に左右される。ところが株式は元本保証がなく、価格が変動する。そういうリスクの高いものを買い取るのだから、日銀の資産が劣化する。ブルジョア的に見てもあまりにも無謀だ。実際、日銀決定の後に円安が進んでいる。

 不良債権問題はさらに悪化 血税再投入で銀行救う小泉

 そして最大問題は、日銀が株式を買い取っても、肝心の不良債権問題はまったく改善しないことにある。
 そもそもなぜ、株安が銀行の資本や決算を直撃する構造になったのか。不良債権処理を続けてきた結果、大銀行が体力を使い果たしたからだ。銀行は、簿価より大きい時価となっている株式を売って、それを不良債権処理に充ててきた。売ってすぐに買い戻す操作をし、また売って不良債権処理に使うやり方を繰り返してきた。株式の含み益を吐き出し続けてきたわけだ。その結果、保有株式の簿価はどんどん切り上がり、含み益はなくなってしまった。それどころか、株安が進んだものだから含み損に転じてしまった。
 大手13行は今年3月期決算で、不良債権を5・5兆円処理した。株式が含み損に転じるなかで、どうやってそれだけのカネを工面したのか。国債売買などのもうけを充てても足りなかった。そこで、自己資本の一部である法定準備金を食いつぶすしかなくなった。法定準備金とは、銀行の信用を確保するために、資本金と同じ額まで積み立てるよう義務づけられたもの。自己資本という“蓄え”を取り崩すのは、もはや末期的事態そのものである。「戦後営々として蓄えられてきた蓄積がすべて失われつつある」(三井住友銀行の西川頭取)のだ。
 来年3月期決算でもこの手段を繰り返せるのか。しかも、不良債権はさらに増えている。大手行の今年3月期決算では、新しく発生した不良債権は14・6兆円で、処理した不良債権よりはるかに大きかった。狭義の不良債権残高は、13行合計で1年前より1・5倍の27兆円にも膨らんだ(銀行全体では43兆円)。大手行すべてが赤字決算となった。来年3月期に再び赤字となると、大手行は国有化されかねない。
 99年の公的資金投入は、銀行が発行する優先株を国が買い取る形をとった。優先株は株主総会での議決権はないが、株式の配当は優先して得られる。これで実質上、国が最大株主となった。もし国が持っている優先株に配当できなくなると、優先株が普通株に替わる規定になっている。普通株は議決権がある。赤字決算で配当できなければ、形式的にも国が最大株主となる。大手行がそろって名実ともに国有化されかねないのだ。
 このような八方ふさがりの中で小泉政権は、公的資金の再投入に動き始めた。99年のように、銀行の資本に直接注入することを狙っている。また、銀行から不良債権を買い取る機関として整理回収機構(RCC)が作られているが、買い取り額を高くして銀行を救済する方法も出されている。この場合、RCCの損失を公的資金で穴埋めすることになる。日銀による銀行保有株買い取りも、公的資金の再投入と一体で構想されている。
 しかし、99年に大手15行に対し、各行の年間利益の10倍にも及ぶ総額7・5兆円もの公的資金が投入されているのだ。しかも、各行は経営健全化計画まで作った。それからわずか3年半、またも公的資金を投入するというのだ。人民の血税で大銀行を支え続けるということではないか。小泉「構造改革」は、最大の柱である不良債権問題で大破産したのだ。

 国債バブルの崩壊は必至に

 以上、日銀による銀行保有株式買い取り、公的資金の再投入策動という第3次恐慌対策の破滅性をみてきた。米経済恐慌が本格化し、29年大恐慌を上回る世界大恐慌が現実になる中で、日本経済は真にどんづまりの危機を迎えつつある。どんづまりという点で、あと三点強調しておきたい。
 第一。今年に入って輸出に依存して生産を若干拡大させてきたが、米経済恐慌の本格化に伴って、これが崩れつつある。今年1〜3月期の鉱工業生産は5四半期ぶりにプラスとなったが、輸出に頼ったものでしかない。5月の輸出数量は過去最高水準にまでなっている。
 日本経済は97年秋に恐慌に突入しながらも、99年初めから00年秋まで輸出増加によって小康状態を迎えた。しかし、米バブル崩壊で00年末から01年まで恐慌が再び激化してきた。今年になって、それを再び輸出増大によってしのいできた。米経済が本格的恐慌に突っこめば、この“最後の頼り”が通用しなくなる。
 第二。国債バブルが崩壊する兆しが出始めた。9月下旬に、10年物国債で入札予定額に応札額が満たない「未達」が起こった。10年物国債では初めてのことである。日銀による銀行保有株買い取りの発表で動揺が広がったためだ。
 この間、銀行は国債保有を急増させ続けている。7月末の銀行の国債保有残高は80兆円弱で、銀行の全資産に占める国債の比率は1割を超えた。銀行は株式が含み損に転じる中で、国債の売却益で決算をやりくりしてきた。国債価格が暴落すると、銀行は債券でも巨額の含み損に転じダブル・パンチとなる。国債バブル崩壊は、金融と財政の支えを最後的になぎ倒すほどの破壊力を持つ。
 第三。小泉政権は、来年4月に予定していたペイオフ全面解禁を見直し始めた。ペイオフとは、破綻した金融機関の預金者に、預金保険機構が元本1000万円を上限として払い戻す制度。今年4月に定期預金について解禁され、来年4月には普通預金も解禁となる。政府は「金融機関と預金者の自己責任」などと言って、金融機関の競争をあおってきた。
 しかし、今年4月の部分解禁で大規模な資金移動が起き、弱小金融機関が窮地に立たされた。来年に全面解禁となると、預金の大量移動と金融機関の連鎖破綻が起きる恐れが出てきた。このため、小泉の判断で1〜2年延期しようとしている。いざ実施となるとそのすさまじさにうろたえ、いったんゴーした政策を中途で見直すあるいは延期する、という実に破産的な姿をさらけ出している。
 今後、恐慌の一層の激化は必至である。現在のイラク侵略戦争への参戦、有事立法と資本攻勢の背景にあるのは、こうした日本帝国主義のどんづまりの危機だ。このような日帝は絶対に打倒しなければならないし、必ずできるのである。この深い確信と果敢な闘志をもって闘おう。

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週刊『前進』(2073号4面2)

有事立法徹底批判 (4)

 戦争への総動員体制づくり 武力攻撃事態法C 「国民保護法制」の正体

 武力攻撃事態法案の第3章は「事態対処法制の整備」を規定している。これは基本法、包括法としての武力攻撃事態法をまず成立させた上で、以後いくつもの個別的な有事法制を整備していくことを明記したものである。第22条では、@「国民保護法制」と称する戦争への民間動員・統制、A自衛隊の戦闘行動の自由、B米軍の戦闘行動の自由を確保するための法律の制定をうたい、それを「この法律の施行の日から2年以内を目標として実施する」としている(第23条)。しかし、すでに武力攻撃事態法の成立を待たずに、政府は8月から前倒し的に7つのプロジェクトチーム(表1)をスタートさせ、法案作成に入った。10月18日から始まる秋の臨時国会で「法案の輪郭を示す」としている。内閣改造で極右・石破茂が防衛庁長官になった。攻撃は急ピッチである。
 なかでも22条1項の民間の戦争動員・統制のための諸法律は、労働者人民の生活と経済に直結するので、法案提出は労働者人民の大反撃を引き起こす。そこで政府は、法案をいつでも提出できる準備を進めておいて、米帝・日帝の北朝鮮侵略戦争の情勢が緊迫した時点で一気に提出し成立させるやり方をとる危険性もある。防衛庁が1963年にひそかに行って大問題になった「三矢研究」では、朝鮮侵略戦争緊迫情勢の中で87件の戦時諸法案を、臨時国会召集後2週間で、委員会審議抜きで一挙に、クーデター的に成立させることが練られた。

 “協力は責務”

 政府は22条1項を「国民保護法制」などと呼び、「国民の生命、身体及び財産を保護するため」の措置であると言っている(表2)。まったくの大うそだ。先の国会論議でも議論されたように、その狙いは労働者人民を侵略戦争に強制的に動員すること、国民の生活・経済生活を戦争に従属させ、統制支配するものであり、憲法に保障されている自由と権利を生活の隅々に至るまで奪っていくものである。
 5月8日の衆院有事法制特別委の審議で、自民党の米田健三は質問の中で次のように言っている。
 「戦時になって、軍事組織は何に専念すべきかと言えば、それは、どうやって敵を一瞬でも早く撃滅して国に平和を取り戻すかということ(だ)。……それじゃ、民間人はどうやって守るか。今まで自衛隊がやっていたことを警察や消防がやる、そして警察や消防がやっておったことを民間防衛組織がやるということにならなければ私はうそなんだろうと思います」
 「国防は防衛庁・自衛隊のみで達成できるものではありません。官民一体で実施すべきものである。……一家が強盗に襲われようとしている、家族みんなで闘おうとしているときに、中で一人だけそっぽを向いて、私は関係ないわなんて、そういう家族がいたらどうしますか、親父はげんこつを食らわすでしょう。……私は、国民の協力というものは一体何なのか、本来、責務とすべきだというふうに思うんです」
 ここに「国民保護法制」の正体が示されている。まさに「国民保護法制」の核心は、「国が国民の生命・財産を保護する」というものではなく、労働者人民を侵略戦争に動員し協力させるための法律、いわば国家総動員法なのだ。
 福田官房長官は米田の質問に答えて、「必要な組織や訓練などのあり方、仕組みを考えてまいりたい」と語り、民間人の戦争動員訓練の必要を述べている。中谷防衛庁長官は「自衛隊が敵と対峙して、また戦うという環境をつくっていただくのは、ひとえに国民の皆様方の協力でございまして」などと答弁しているのだ。ここで強調されていることは、ただひたすら「すべての国民は、軍隊に協力せよ。国家に命を捧げよ」ということでしかない。

 スト禁止・投獄

 22条1項「国民保護法制」の中の「ハ、保健衛生の確保及び社会秩序の維持に関する措置」は重大である。さらっと書かれているが、労働者人民の日常生活と権利を侵害する重大問題である。これは明らかに反戦・反政府行動や労働者のサボタージュやストライキ行動への取り締まりをにおわせている。治安維持法とか戒厳令へと直結する内容を示唆している。
 1938年制定の国家総動員法では、「国家総動員上必要ある時」は、労働者の雇用・賃金・労働条件への介入、ストライキ禁止、新聞・出版物の掲載制限・発売禁止、差し押さえなどを定めた(資料参照)。当時の日共スターリン主義の綱領的屈服と、労組幹部の総屈服によって、国家総動員法は日本の労働者人民を侵略戦争に組み込んでいく、決定的なてことなった。いま政府は、戦前と同様の強力な弾圧・言論統制を狙っている。
 「ホ、国民の生活の安定に関する措置」とは、物価の統制や物資・食糧の配給制の実施などである。戦前は内務省によって全国に組織された120万の「隣組」が連帯責任と相互監視の役割を果たし、また生活必需物資の配給をも行った。こうして戦争に協力しなければ物資も配給せず、生活できないような仕組みをつくった。政府は同様の仕組みを狙っている。
 また、「ニ、輸送及び通信に関する措置」の中身は何か。輸送や通信はすべて軍事優先となり、輸送関係の労働者は強制的に軍需輸送に動員されるのだ。
 以上のように、「事態対処法制の整備」とは、まさに労働者人民を国家総力戦的に侵略戦争体制に組み込むことを狙うものである。
 (高村 晋)

 

(表1)「事態対処法制」推進の7チーム
 @国民保護法制
 A自衛隊の行動の円滑化
 B米軍の行動の円滑化
 C捕虜の取り扱い
 D非人道的行為の処罰
 Eテロ対策
 F「不審船」対策

 

(表2)政府が「国民保護法制」として掲げる項目
イ 警報の発令、避難の指示、被災者の救助、消防等
  に関する措置
ロ 施設及び設備の応急の復旧に関する措置
ハ 保健衛生の確保及び社会秩序の維持に関する措置
ニ 輸送及び通信に関する措置
ホ 国民の生活の安定に関する措置
ヘ 被害の復旧に関する措置

 

(資料)戦前の国家総動員法(抜粋)

(解雇、賃下げも政府が命令)

第6条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り従業者の使用、雇入若(もしく)は解雇、就職、従業若は退職又は賃金、給料其の他の従業条件に付必要なる命令を為すことを得

(スト禁止、労組解散も)

第7条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り労働争議の予防若は解決に関し必要なる命令を為し又は作業所の閉鎖、作業若は労務の中止其の他の労働争議に関する行為の制限若は禁止を為すことを得

(新聞発禁攻撃)

第20条 政府は戦時に際し国家総動員上必要あるときは勅令の定むる所に依り新聞紙其の他の出版物の掲載に付制限又は禁止を為すことを得
2 政府は前項の制限又は禁止に違反したる新聞紙其の他の出版物にして国家総動員上支障あるものの発売及頒布を禁止し之を差押ふることを得

 (7条違反者には懲役3年以下、20条違反者には2年以下の罰則規定)

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週刊『前進』(2073号4面3)

日誌 '02  9月25日〜10月2日
 10月下旬、初の治安出動訓練  内閣改造 石破茂が防衛庁長官に

●臨時国会は10月18日から 政府・与党内では幹事長会談を通じ、10月18日に臨時国会を召集し、会期は12月14日までの58日間とすることが固まった。(25日)
●米英軍、イラクへ連日の空爆 米英両軍は、イラク南部バスラの空港を空爆した。米英両軍は同国内に設定した「飛行禁止空域」内への攻撃を断続的に行っているが、最近激化している。29日にも同空港への空爆があった。(26日)
●米が海自活動の拡大・強化を要請 米政府が日本に対し、米英艦船に給油している海上自衛隊の艦船活動地域を、現在のアラビア海からソマリア沖まで拡大するとともに、給油対象を現在の米英に加え、強制措置を伴う臨船検査(臨検)を実施しているドイツなど他国軍にも拡大するよう文書で要請していることが分かった。(26日)
●米が未臨界核実験 米エネルギー省が、ネバダ州の地下実験場で未臨界核実験を行ったと発表した。97年7月から通算19回目、ブッシュ政権下では6回目。(26日)
●キャンプ・ハンセン一晩燃える 沖縄県金武町のキャンプ・ハンセン内のレンジ2付近で火災が発生した。米軍は日没で消火活動をうち切ったため、午後5時から翌朝10時近くまで燃え続けた。(27日)
●ロンドンで40万デモ ロンドン中心街で、イラクへの軍事行動に反対する市民ら40万人がデモ行進、ハイドパークで大規模な抗議集会を開いた。(28日)
●改造内閣発足 小泉首相は、政権発足後初めて内閣を改造した。柳沢金融担当相を更迭し、竹中経済財政担当相に金融担当相を兼任させた。防衛庁長官には、「徴兵制は合憲」などの反動発言の石破茂・元防衛庁副長官が起用された。「拉致議連」会長だった。(30日)
●米兵士、民間人に残虐行為
 アフガニスタンに展開した米軍兵士が、一般市民に残虐行為を働いた、と米ニューズウィーク誌が伝えた。同誌によると、8月19日以降、アフガニスタンのシャヒコットやゾルマット地区に展開した第82空挺部隊員が、特殊部隊が武器を持たないことを確認した民家に乱入、逃げる住民を引き倒したり、女性をこづいたりした。またマルザク村では「精神障害」の男性に手錠をかけて頭に銃を押し当て、写真に撮ったという。(30日)
●米、イラクに細菌提供 米国が80年代、イラクに対して炭疽(たんそ)菌などの病原菌を提供していたことが、米疾病対策センター(CDC)や連邦議会、国連査察団の資料や記録から明らかになった。AP通信などが伝えた。イラクの生物兵器開発は米国の「援助」から始まったと指摘している。(30日)
●沖縄で靖国訴訟 小泉首相の昨年8月と今年4月の靖国神社参拝は、憲法の定める信教の自由や政教分離の原則に反し違憲であるとして、沖縄戦の遺族や宗教者ら81人が首相と国に対し訴訟を那覇地裁に起こした。原告側は「沖縄戦の実態を問う裁判にしたい」と意義を話している。(30日)
●自衛隊、警察権への介入検討 石破防衛庁長官は、自衛隊の「テロ対策」について「治安出動でどこまで対応できるか検証し、足りなければ法整備が必要」と述べ、自衛隊が今後、警察権に積極的に介入していく考えを明らかにした。これまで「テロ対策は警察の役割」としてきた防衛庁の事実上の方針転換となる。(1日)
●陸自と警察が初の治安出動訓練 防衛庁と警察庁は、両庁創設以来初めて、「治安出動」を想定した陸上自衛隊と警察による合同訓練を10月下旬に実施する。訓練は図上演習方式。陸自北部方面総監部(札幌)で行われ、陸自北部方面隊と北海道警察が参加する。読売新聞が報道。(2日)

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週刊『前進』(2073号5面1)

対イラクの侵略戦争・虐殺戦争阻止を
“先制攻撃で政権転覆”を狙う最凶悪のブッシュ・ドクトリン

 9月12日の国連演説で、米帝ブッシュは全世界に対し、公式にイラク侵略戦争を宣言した。米帝は内外でイラク侵略戦争に向けて本格的に動き始めた。米帝は早ければ11月にもイラク侵略戦争を開始しようとしている。これに対し、全世界でイラク侵略戦争阻止の闘いが巻き起こっている。日本の学生、労働者人民は、これと連帯し、イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕に全力で立ち上がろう。

 米英帝(国際帝)の戦争準備が本格化

 ブッシュは9・12国連演説で、イラクが国連決議に違反していると称し、国連が新たな対イラク決議をあげるよう強く要求した。また、国連の態度がどうであろうと、米帝単独でも武力行使すると宣言した。そして、イラクに全面降伏し政権を交代せよ、さもなくば戦争だと最後通牒(つうちょう)を突きつけた。この9・12ブッシュ演説をもって、米帝は新たな国連決議を採択させるために、ロシアやフランス、中国などと駆け引きを行いつつ、イラク攻撃の臨戦態勢づくりを急ピッチで進めている。
 9月24日、米・クウェート合同演習が始まった。米軍1万1千人が参加し、気候変化の激しい砂漠地帯で昼夜の演習を1カ月にわたって繰り返すのだ。これはイラクへの地上軍投入のための実戦訓練だ。中東を管轄する米中央軍は、約600人をカタールに派遣し、指揮機能の一部を移転した。イラク攻撃が始まれば、そのまま「前線司令部」となる。米英軍は、本格的なイラク攻撃の準備作戦として、イラクの防空能力を弱めるために司令部施設やレーダー、軍用飛行場などの爆撃を始めた。すでにイラク攻撃の前哨戦が開始されているのだ。
 とりわけ在日米軍基地の動きと役割は重大だ。すでに在日米軍基地はイラク侵略戦争の出撃拠点となっており、激しい訓練が行われている。嘉手納基地、三沢基地所属の米空軍がイラクを空爆している。米原子力空母リンカーンは8月に佐世保で弾薬・物資を補給し、湾岸地域に展開している。新テロ対策特措法の国会提出を阻止し、日帝の参戦を粉砕すること、日本からの米軍の出撃を実力で阻止することは、日本人民の絶対的責務だ。
 10月1日、国連とイラクは、イラクが「即時・無条件・無制限」で査察を受け入れると合意した。ところがパウエル米国務長官は、「査察団は、新たな国連安保理決議にもとづく新たな指示を得ない限り、イラクに入るべきではない」と、査察の再開は認めないと発言した。米帝は国連の査察が行われ、イラクの「大量破壊兵器開発」問題が決着したら困るのだ。
 91〜98年の査察を行ったUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)のロルフ・エケウス元委員長は、アメリカが査察を利用して「イラク側の妨害を引き出し、軍事行動の正当化に使っていた」ことを認めている。米帝にとっては、査察が戦争の口実にならなければ意味がないのだ。
 ブッシュは9・12演説で、イラクが「80年にイランを、90年にクウェートを攻撃した」「毒ガスを使った」などと他人ごとのように非難している。だが米帝こそがイラン・イラク戦争や湾岸戦争の真の元凶であることを、はっきりさせなくてはならない。
 米帝は79年のイラン革命を圧殺するために、イラクをそそのかし支援する形でイラン・イラク戦争(80〜88年)を進めた。イラン革命から半年後、フセインは反米・反イスラエル路線のバクルに代わってイラク大統領に就任した。フセインは80年9月に自らが締結したイランとの国境協定(アルジェ協定)を破棄し、イランに軍事侵攻した。これは明らかな侵略行為だったが、米帝も、国連もイラクを非難しなかった。
 米帝はイラクの戦況悪化を見て、フセインと事実上の同盟関係を結んだ。米帝はイラン軍の情報をイラク軍に提供し、イラン向け武器輸出禁止の国際包囲網を作った。最後は、ペルシャ湾に大規模な米艦隊を派遣し、米帝の軍事力をもってイランに「毒を飲むよりつらい」(ホメイニ)停戦決議を受け入れさせたのだ。米帝はイラクがイランや国内のクルド人に対して化学兵器を使用し、虐殺することも黙認した。米帝は炭疽(たんそ)菌などの病原菌をイラクに提供し、生物兵器の開発もやらせたのだ。
 その後、米帝は90年8月2日のイラクのクウェート侵攻の直前まで、フセインとの親密な関係を保った。フセインは、クウェートに侵攻する一週間前に、「クウェートのイラクに対する経済戦争をやめさせるために必要なあらゆる手段をとる」と米帝に通告した。これに対し、エイプリル・グラスピー駐イラク米大使は「アラブ諸国同士の紛争には意見はない」と述べて、「良好な対イラク関係を求める」とのブッシュ(父)大統領のメッセージを伝えた。フセインは、米帝が反対しないことを確かめたうえで、クウェート侵攻に踏みきったのだ。
 米帝は中東石油支配のためにフセインを利用し、使い捨てにした。そして今度は、米帝の世界戦争計画の全面的な発動のえじきにしようとしているのだ。

 他国の追随許さぬ「新帝国主義」宣言

 米帝ブッシュ政権は、8月15日の国防報告に続いて、9月20日に米国家安全保障戦略(ブッシュ・ドクトリン)を発表した。
 02年国防報告は、米帝が先制的な戦争で全世界を暴力的に再編していくことを明らかにした。米帝はこの世界戦争戦略の大目標に中国スターリン主義の軍事的転覆をはっきりと定め、イラク侵略戦争、北朝鮮侵略戦争を次々に発動しようとしている。それは歴史的な没落にあえぐ米帝が世界大恐慌下での帝国主義間の死闘戦に勝ち残るための、帝国主義間戦争をも見据えた恐るべき軍事戦略である。
 ブッシュ・ドクトリンは、02年国防報告で示した世界戦争戦略を基礎に、イラク侵略戦争を始めとした「対テロ戦争」を推進するための外交原理をうち出したものだ。
 ブッシュ・ドクトリンは第一に、米帝の「最強の軍事力と政治、経済的な影響力」を行使し、帝国主義的利害を貫徹するための軍事外交政策を強力に展開していくことをうち出した。ブッシュは「(最強の軍事力を)米国の一方的な利益を強制するために用いるのではない」と述べながら、まったく逆に世界に徹底的に干渉して米帝の国益に従わせると宣言している。
 その際の軍事力行使については「脅威が米国の国境に達するよりも前に破壊する」「必要とあれば、単独行動をためらわず、先制的に自衛権を行使する」と公言しているのだ。米帝は「自衛のための先制攻撃」論を02年国防報告で米帝軍事戦略の基本原理に定めた。°相手国が攻撃したとか、攻撃の意図があるかは問わない。アメリカが脅威と認定すれば先制攻撃で政権を転覆する″というのだ。かつてどの帝国主義も強弁できなかったウルトラな侵略の論理だ。歴史的没落と危機にのたうつ米帝のすさまじい凶暴性・侵略性を示すものだ。まさに「新帝国主義」宣言だ。
 ブッシュ・ドクトリンはその最後に、「米国は、自分たちの意思をわが国とその同盟国に押しつけようとする敵のどんな企ても破る能力を維持する」「米国と同等かそれ以上の軍事力を築こうとする潜在的な敵を思いとどまらせるのに十分な、強力な軍事力を持つ」と宣言している。米帝はこうした軍事外交政策をとおして他帝国主義や中国、ロシアを組み伏せて、他国の追随を許さない軍事力の圧倒的な優位を維持することをうたっているのだ。
 ブッシュ・ドクトリンは第二に、「地球規模で活動するテロ組織を妨害し、撲滅する。当面の焦点は、大量破壊兵器の入手、使用を試みるテロ組織あるいはテロ支援国家だ」と述べ、その全文をとおして、米帝の軍事外交政策を貫く原理として「テロ撲滅」を前面に押し出している。ブッシュは、「テロリストとテロを支援するものを区別しない」と米帝の「対テロ戦争」に全世界を従わせることを宣言した。また「貧困が人びとをテロリストにするのではない。貧困や腐敗が弱小国をテロ組織に無防備にさせる」と述べて、若干の「経済支援策」も「対テロ戦争」を進める観点から行うとした。
 とりわけ「テロを推進するイデオロギーがどんな国家にも温床を見いだすことがないように、とくにイスラム世界で、穏健で近代的な政権を支援する」と述べていることは重大である。
 米帝はこれまで「近代的民主主義国家」とはほど遠い湾岸産油国の王制を黙認してきた。ところが最近ではサウジアラビアの体制的危機と反米的な傾向をもはや無視できなくなっている。「サウジアラビアが悪の中核だ」というランド研究所の報告はそれを示した。米帝ブッシュは、テロの温床となっているイスラム諸国の政治制度、文化的土壌を変革し、西欧化された自由で民主主義的な国家に変革するという論理で、イラク侵略戦争を突破口に、サウジアラビア、イランなどを再制圧していくことを狙っているのだ。
 ブッシュ・ドクトリンは第三に、対イラク、対北朝鮮の侵略戦争を世界戦争の突破口にするために、両国が大量破壊兵器を開発していると非難し、「われわれは脅威が現実となる前に抑止し、防御しなければならない」とイラク侵略戦争突入を宣言している。
 中国に対しては「今なお一党独裁を維持し、時代遅れの道を進んでいるがやがて社会的、政治的自由のみが偉大さの源と気づくであろう」と述べた。イラク侵略戦争の政治的条件づくりの観点から遠回しの表現をとっているが、米帝の世界戦争戦略の戦略目標が中国スターリン主義の転覆であることをにじませている。
 ブッシュ・ドクトリンは第四に、「日本と韓国は前例のない水準で軍の兵たん支援を供与した」「日本が地域と世界中で、われわれの共通する利益、価値観と、緊密な防衛・外交協力に基づいて、指導的な役割を果たし続けることを期待する」と、米帝が「対テロ戦争」を進める上での日帝の役割を重視している。独仏帝はイラク侵略戦争に反対し、米帝との対立を深めている。その中で米帝は、日帝については米帝戦略にとことん組み伏せ、イラク侵略戦争、北朝鮮・中国侵略戦争に徹底的に動員しようとしているのだ。

 石油強奪のための人民大虐殺許すな

 米帝(および日帝、英帝など)のイラク侵略戦争は、徹頭徹尾不正義の帝国主義的な侵略戦争である。
 それは第一に、イラク・中東人民に対する一大虐殺戦争である。
 米帝は91年イラク・中東侵略戦争(湾岸戦争)で、30万人ものイラク人民を虐殺した。その後の経済制裁や空爆、ウラン弾被害によって、160万人が死亡した(2001年12月29日、イラク国連代表)。さらに多くの子どもたちが命の危機に直面している。
 イラク人民にとっては「今も湾岸戦争が続いている」のだ。米帝は、こうした過酷な状態におかれたイラク人民に対し、91年当時をはるかに上回る空爆と地上戦で大虐殺しようとしているのだ。米帝はヒロシマ・ナガサキ、オキナワ戦の地獄をイラクで再現しようとしているのだ。こんなことを日本の労働者人民は認めるのか! あなたはこれに加担するのか!
 それは第二に、植民地主義むきだしの民族圧殺・抑圧の侵略戦争であり、民族自決権のじゅうりんだ。米帝は自分の思い通りにならないフセイン政権を始めから打倒することを目的として戦争しようとしている。そして、かいらい政権を作って、長期間軍事占領しようとしているのだ。これほど恐るべき民族圧殺、民族自決権のじゅうりんがあろうか。イラク・中東のあり方は、イラク・中東人民が決めるべきだ。フセイン政権が悪いと言うが、イラク・フセイン体制は米帝のイラン革命圧殺政策の中で生まれ育った政権だ。すべての元凶は帝国主義なのだ。これを許せば全中東諸国、全世界で、諸民族が帝国主義による軍事的な抑圧と支配、虐殺のもとに苦しめられることになるのだ。
 それは第三に、米帝がイラクの石油を強奪し、中東と全世界の石油資源を支配していくための、古典的植民地主義以上に凶悪な強盗戦争である。
 フランスやロシアの石油資本は、経済制裁で米英資本が手を出せないうちに、イラクとの油田開発契約を結んでいる。これらの契約は国連制裁下では凍結状態にあり、制裁が解除されたら開発が始動することになっている。米帝が対イラク制裁解除を渋るのは、フランスやロシアが先行している状態で解除すれば、アメリカがバスに乗り遅れることが明白だからである。
 湾岸戦争から10年以上が経過し、イラクの「食料のための石油」輸出の上限も99年には撤廃され、石油輸出額は湾岸危機前に匹敵するまでになった。00年にはアラブ・サミットへの出席が認められるなど、イラクはアラブ諸国内で、ある程度の発言権も得るようになった。他方で、米英帝が主導する経済制裁への国際的な批判が高まり、査察をテコとした攻撃も行き詰まっている。米帝ブッシュ政権は、こうした手詰まり状況をイラク侵略戦争で逆転的に打開し、世界第2位の埋蔵量を持つイラクの石油権益を強奪し、これを突破口に中東石油全体を再制圧していこうとしているのだ。
 それは第四に、アフガニスタン侵略戦争をもって開始した米帝の世界戦争計画の第2段階であり、米帝が自らの歴史的没落と世界支配の破たんに対し、世界を暴力的に再編しようとする世界戦争への本格的突入である。米軍は大規模な地上戦を行い、イラク全土を軍事占領しようとしている。それはベトナム戦争以来の世界戦争級の大戦争であり、イラク人民と13億ムスリム人民全体を敵にする泥沼の一大侵略戦争となる。
 それは米帝が中東石油を独占的に支配し、帝国主義間争闘戦を軍事的に貫徹するための戦争であり、必ず帝国主義間対立を激化させる。米帝は「戦争自体が連合関係を決める。連合の組み合わせで戦争の目的を決めてはならない」(国防報告)と、戦後的な帝国主義間の協調体制を破壊し、新たな軍事ブロック形成を推進し始めた。イラク侵略戦争は世界戦争(と世界革命)の過程を激しく進めるものとなるのだ。
 歴史的生命力を失い、今や虐殺と破壊の元凶となった米帝を先頭とする国際帝国主義が、イラク・中東、北朝鮮・中国へと侵略戦争−世界戦争を拡大し、全人類を破滅に導くことを許していいのか。労働者階級は資本主義(帝国主義)を打ち倒し、プロレタリア世界革命によって、全人類の解放を担うべき階級ではないのか。すでに欧米やイスラム諸国では、イラク侵略戦争阻止の広範な人民の決起が始まっている。闘うイスラム諸国人民と連帯して、イラク侵略戦争を絶対に阻止し、世界革命に向かって力強く前進しよう。
 日本の労働者人民の責任は重大だ。日帝・小泉政権は、ブッシュ・ドクトリンに積極的に対応し、米英帝のイラク攻撃を支援し、新テロ対策特措法を制定して参戦しようとしている。また米帝のイラク攻撃情勢と一体で、拉致問題での排外主義キャンペーンをテコに北朝鮮への侵略軍事外交を進め、有事立法攻撃を強めている。日帝は米帝の世界戦争計画にぴったりと密着して、自らの利害を戦争的に貫くために、有事立法攻撃を行っているのだ。
 イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕へ、10・13三里塚闘争、10・21国際反戦闘争の大爆発をかちとろう。
 〔早乙女 優〕

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週刊『前進』(2073号5面2)

全学連防衛庁デモ イラク侵略戦争阻止へ 今秋決戦本番に突入

 全学連大会の大成功を受け、全学連はただちに9月27日、今秋2回目の対防衛庁デモに立った。(写真)
 昼休み情宣に続いて、「イラク侵略戦争阻止! 有事立法粉砕!」の横断幕を掲げたデモ隊は法大市ケ谷キャンパスを出発。防衛庁に対して「日帝・自衛隊の参戦を許さないぞ! 臨時国会での有事立法制定を阻止するぞ! 北朝鮮・中国侵略戦争阻止!」の怒りのシュプレヒコールを繰り返したたききつけた。この日は、初参加の学生も加え、排外主義を切り裂く戦闘的デモとして貫徹した。
 全学連は、数万、数十万人の国会闘争、基地闘争、キャンパス1千人集会戦取に向け、いよいよ決戦本番に突入した。排外主義の国家的扇動と対決し、イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕へともに全力で闘おう。

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週刊『前進』(2073号5面3)

 イラク反戦で40万人デモ ロンドン

 9月28日、イギリス・ロンドンで米英帝のイラク攻撃に反対して戦後最大の反戦デモと集会が行われた。主催者発表で40万人が参加し、ハイドパークに向け「イラクを攻撃するな!」「パレスチナに自由を!」とデモ行進した。この闘いは昨年9・11直後に結成された反戦団体「戦争阻止連合」と英国イスラム協会の主催で、各種労組、学生自治会、反核・反人種差別・反女性差別団体や新左翼諸派などのほかに、ムスリム諸団体、ユダヤ人社会主義者やクルド人組織などが参加した。また、アメリカ・サンフランシスコでは28日7千人、ワシントンでは29日3千人、イタリア・ローマでは10万人、フランス・マルセイユでは1万2000人がデモに決起した。

 


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週刊『前進』(2073号5面4)

新刊紹介 コミューン 11月号 爆取4同志の奪還へ

 迎賓館・横田爆取デッチあげ裁判は、16年目に突入した。4同志を一日も早く奪還しなければならない。
 第1章では、3同志に対する超長期16年(福嶋同志も10年目に突入)の拘禁が非人道的拷問であり、はなはだしい人権侵害であることを明らかにし、即時の保釈奪還を訴えている。
 第2章では、この弾圧が政治的なデッチあげであるとを鮮明にしている。検事の起訴が、迎賓館・横田爆取両戦闘と3同志とのかかわりについて具体的特定をまったく欠如していること、具体的な証明がない「嫌疑なき起訴である」ことを徹底的に問題にしている。
 第3章では、13年間もかけた検察側立証が完全に破産したことを暴き出している。検察側は「被告が爆発物の一部を作った」と言うが、「誰と誰が、いつ、どこで、どのようにして」という具体的な要素の一つも立証できなかった。爆発物使用の共謀についても、その共謀が「いつ、どこで、誰と誰の間で、どのように」行われたのかについて立証の対象にさえしなかったのだ。
 第4章では、福嶋昌男同志の裁判について、特に小島筆跡鑑定のデタラメさに焦点をあて、そのひどいデッチあげと福嶋同志の無実を明らかにしている。
 最後に、15年に及ぶ3同志裁判の第1回公判から第167回公判までをまとめ、裁判で闘われたすべてを明らかにした。4同志の奪還と1億円基金運動の絶好の武器に活用しよう。

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週刊『前進』(2073号6面1)

有事立法下の治安弾圧うち破れ
侵略戦争体制構築と革命圧殺 国家暴力むき出しにする日帝
 坂本 千秋

 内外情勢はますます重大化している。米帝はついにイラク侵略戦争突入を宣言し、それを突破口に全世界への侵略戦争―世界戦争に突き進むことを公然と宣言した。日帝・小泉政権はこの米帝と共同・競合して北朝鮮・中国侵略戦争に突き進むことを狙い、対北朝鮮の露骨な軍事外交に踏み出すと同時に、有事立法の早期成立に全力をあげている。この有事立法攻撃を頂点に、世界大恐慌下の大資本攻勢や治安弾圧の激化をめぐって、日本の階級情勢は今やかつてない非和解的激突と大激動の過程に突入した。イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕の一大反戦闘争の爆発は急務だ。さらにその闘いを軸として、諸悪の根源である帝国主義の打倒へ、労働者人民のあらゆる階級的怒りを今こそ徹底的に解き放って闘うことが求められている。本稿ではとくに、有事立法攻撃と一体となって進む治安弾圧の激化を重視し、これへの反撃を有事立法粉砕決戦の重要な柱にしっかりと位置づけて闘いぬくことを訴えたい。

 「テロ根絶」の名で侵略戦争思想・言論・結社の自由奪う

 米帝ブッシュ政権のイラク侵略戦争突入と日帝・小泉政権の有事立法攻撃への突進は、世界史を変える重大事態の始まりだ。このことをまず、一切の基礎とし前提としてしっかりと確認しておきたい。
 ブッシュが9月20日に発表した国家安全保障戦略は、米帝の世界戦争突入宣言である。世界大恐慌の爆発とドル暴落の危機にあえぐ米帝が、米国こそが世界を支配する唯一の超大国であり続けると宣言し、世界最強の軍事力をフルに使った侵略戦争を全世界でどしどし繰り広げていくことを決断した。これは恐るべき事態である。かつてナチス・ドイツによるポーランド侵略は第2次大戦への引き金を引いたが、今や戦後世界を支配してきた米帝が自ら、帝国主義としての生き残りをかけて新たな世界戦争の引き金を引こうとしているのだ。
 米帝のイラク攻撃に始まる戦争は、必ず対北朝鮮・対中国の侵略戦争へと発展する。これに対して日本帝国主義は、戦争放棄をうたった憲法の制約を全面的にかなぐり捨てて、参戦にむけて公然と踏み切った。米帝の世界戦争計画に呼応し一体化しつつ、独自の勢力圏確保のために朝鮮・中国・アジアへの侵略戦争突入に向けて全力で突進し始めたのである。有事立法攻撃とは、まさにこの侵略戦争・世界戦争への扉を日帝の側からこじあけるものにほかならない。
 米帝と日帝のこの動向は、世界と日本の階級情勢を完全に一変させるものとなっている。「テロ根絶」の名のもとに、帝国主義国家の本来の姿である暴力が一切のベールを取り払って前面に躍り出、被抑圧民族と国内の労働者階級に襲いかかっている。
 実際に、「テロ根絶」の名で何が行われようとしているのか。帝国主義のもつ最新鋭の兵器により、イラク人民、アフガニスタン人民や中東・パレスチナ人民、北朝鮮人民などを数万、数十万、いな数百・数千万人規模で大量虐殺することだ。米帝は先制攻撃をやり、核兵器の使用もためらわないなどと言っている!
 そこでは、イラクのあり方を決定するのはイラクの人民自身であるという、民族自決権は頭から否定されている。逆に、米帝(国際帝国主義)の意のままにならない政権は軍事力を使って転覆し、国や民族まるごと抹殺してかまわないという恐るべき論理がまかり通ろうとしているのだ。
 さらに、国内に在住する被抑圧民族人民への排外主義襲撃をあおり、反戦闘争の弾圧のために思想・言論・結社の自由をも公然と奪う攻撃が進んでいる。アメリカ国内ではこの1年間に最低でも1200人を超える人びとが、アラブ系あるいはムスリムというだけで「アルカイダと関係がある」として、証拠もなく逮捕された。その多くが今なお無期限に身柄を拘束されている。「報復戦争反対」を訴えた女子高校生がその思想・信条を理由に退学処分され、裁判所もそれを追認した。イギリスでも、「テロリストの疑いのある人物」を裁判所の令状なしに無差別に逮捕できる権限が警察に与えられた。
 この大反動はしかし、米帝ブッシュなどの単なる一時的な暴走にとどまるものではない。これこそが帝国主義というものの本質だ。帝国主義の末期的危機が帝国主義世界戦争を不可避とするまでに深まる時、諸国家は一個の「軍事的怪物」(レーニン)に転化する。そして、世界を支配するのはどの金融資本か、どの帝国主義かという争いを解決するために、幾百万の人民を平然とみな殺しにしていくのだ。
 日帝もまた、小泉訪朝を契機に「北朝鮮への制裁」を叫んで排外主義を大々的にあおりたて、在日朝鮮人への敵視と卑劣な襲撃を一気に激化させている。そして同時に、革命党=革共同への組織破壊攻撃をますます強め、大資本攻勢として労働運動の圧殺と階級的労働組合の解体に全力をあげている。三里塚闘争、沖縄闘争や部落解放運動を始めとするあらゆる戦闘的な住民運動・解放運動への圧殺攻撃を激化させ、地方自治の破壊や労働者人民の戦後的諸権利を全面的に奪いとる攻撃に一斉に踏み込んでいる。その一つひとつが国家総動員体制形成へのステップであり、有事立法の先取り=戦争への準備そのものだ。
 日本の労働者階級人民は、自分自身の生き死にをかけて、今こそイラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕の一大反戦闘争に総決起しなくてはならない。イラク人民やパレスチナ人民を始めとする闘う中東・イスラム諸国人民、すべての闘う朝鮮・中国・アジア人民、在日・滞日人民と連帯し、自国帝国主義の侵略戦争を帝国主義打倒の内乱に転化する闘いに立ち上がろう。

 個人情報保護法案など急ぐ国家総動員体制支える攻撃

 小泉政権は、9月末の内閣改造で極右勢力の代表である石破茂を防衛庁長官にすえ、武力攻撃事態法案など有事3法案と個人情報保護法案(報道・言論規制法案)の今秋臨時国会での成立をあくまで狙っている。またイラク侵略戦争参戦のための新テロ特措法案を早急に準備し、国会に提出しようとしている。事態は一刻の猶予も許されない。
 同時に、治安弾圧体制の全面的な再編強化の攻撃が有事立法攻撃と一体となって激化している。それは次のような一連の攻撃として展開されている。
 (イ)日帝・小泉政権は、今春の通常国会で有事3法案と並んでいくつもの超重大法案の成立強行を狙っていた。@個人情報保護法案、A人権擁護法案、B心神喪失者等医療観察法案(保安処分新法案)、Cテロ資金供与防止条約の批准に伴うテロ資金提供処罰法案(カンパ禁止法)である。
 @個人情報保護法案は、人権擁護法案とともにメディア規制法案と呼ばれているように、その本質は報道・言論規制法案である。プライバシーなど「個人情報の保護」に名を借りて、実際には政治家や高級官僚、財界人など、国家権力機構と支配階級の内部にかかわる情報の入手や取材を規制するものだ。防衛秘密や外交上の密約、権力者の汚職・腐敗などが人民の前に公表され暴露されることを防ぐものだ。これを基礎に言論・報道機関の国家による全面的な統制に道を開くものである。
 A人権擁護法案も、同じく犯罪被害者などの「人権擁護」に名を借りて取材や報道に厳しい規制を加えるものである。他方で法務省の管轄下に人権侵害の「救済機関」を設置し、部落差別事件などに権力が直接介入して差別糾弾闘争の圧殺を狙っている。逆に公権力による人権侵害はやみからやみへ握りつぶすことを可能にするのである。
 B保安処分新法案は「再犯のおそれ」という証明不可能な認定をもって保安施設に強制収容し、死ぬまで拘禁することを可能にする恐るべき法案である。「精神病者」を社会から抹殺するものであり、さらに権力が「反社会的」とみなした人物を「人格障害」と決めつけて保安処分施設に収容することをも狙っている。しかも犯罪との関係を具体的に立証する必要はなく、処分に対して控訴する権利もない。刑事訴訟法の大改悪にも直結する攻撃だ。
 Cカンパ禁止法は、国家権力と闘う組織への資金カンパ自体を犯罪とし、資金を提供した者と受け取った者に最高10年の重刑を科すというこれまたとんでもない法律だ。提供した資金は没収され、未遂もまた処罰される。
 今春国会ではこの4法案のうち、カンパ禁止法が院内外の反対の声を押しつぶして成立させられた。残る3法案はいずれも継続審議に持ち込まれている。小泉政権はとくに個人情報保護法案を最重視し、有事3法案とともに何がなんでも成立させようとしている。
 (ロ)8月5日には、国民総背番号制のための住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の稼動を、広範な人民や地方自治体の反対を押し切って強行した。プライバシーや思想・宗教・政治的立場をも含む個人情報の一切を国家権力が一元的に掌握し、全社会の治安管理と人民の生活の日常的監視を狙うものである。これと報道・言論統制とが一体化すれば、文字どおりの暗黒社会が出現する。
 (ハ)9月3日には、国際的組織犯罪条約の03年批准に向けて、これまでの破防法や団体規制法にもない「共謀罪」などの新設が法制審議会に諮問された。犯罪の実行行為がなくてもそれを計画し「謀議した」というだけで重罰にする恐るべきものだ。適用対象をほとんど無制限に拡大でき、団体のあらゆる活動を弾圧することができる。まさに究極の結社禁止法だ。年内に答申を得て、来年通常国会への法案提出が予定されている。
 (ニ)続いて9月6日には、法務省が入管法の改悪案を今秋臨時国会に急きょ提出する方針を発表した。滞日外国人への生活実態調査権を新設して、在留資格の取り消しと強制送還をどしどし行うというものだ。97年、99年、01年と3度にわたる法改悪に続いて、在日・滞日人民への退去強制と治安管理を飛躍的に強める攻撃である。これと並んで、有事に来日する難民への徹底した上陸拒否・収容・追放を貫くための入管法改悪も策動されている。

 司法改革粉砕の闘い強化を

 (ホ)これらと並行して「司法改革」攻撃がいよいよ全力で推進されている。昨年11月に成立した司法制度改革推進法にもとづき、その第一弾として、権力と大企業に奉仕する弁護士を大量に生み出すためのロースクール制度導入が、今秋国会に持ち出される。03年には弁護士法の改悪と民事司法改革関連法案が、04年には刑事司法改革関連法案がそれぞれ国会に提出される方針だ。
 民事司法改悪の柱は労働司法の改悪である。現行の労働委員会制度を解体し、労働法の改悪と一体で資本に首切りの自由を与え、戦時下での一切の労働争議の禁圧を狙っている。刑事司法では、裁判員制度の導入と2年以内に判決を下すとする「迅速な裁判」により、基本的人権と適正手続きの保障の上に成り立つ現行司法を解体し、無実・無罪を争うことを実質的に不可能にするものだ。この戦時司法を支えるため、日弁連の翼賛化攻撃が日帝の全体重をかけて進んでいる。
 (ヘ)さらに、死刑廃止運動を取り込んで進められている終身刑導入の議員立法策動がある。また爆取デッチあげ弾圧と闘う4同志への超長期未決勾留が示すように、非転向の政治犯に対する事実上の予防拘禁攻撃が激化している。東京拘置所では窓から外の景色がみえない獄舎が建設されるなど、獄中者への管理・抑圧体制の非人間的な強化が一層進み、獄中弾圧が強められている。
 (ト)これらに先立って99年周辺事態法の制定以来、治安弾圧にかかわる多くの重大攻撃がすでに次々と実施に移されている。99年の@盗聴法など組織的犯罪対策3法制定、A住民基本台帳法改悪、B団体規制法制定、C00年の警察法改悪による警官の大幅増員、01年のD防衛秘密に関する自衛隊法改悪、E爆弾テロ防止条約批准と関連国内法整備、F警察官の銃使用規定緩和などの攻撃だ。
 このうちBは破防法では処分しきれない団体への処分をも可能にする、いわば新破防法とも呼ぶべきものである。Dは「防衛秘密」を漏らした者への罰則を1年以下の刑から5年以下に強化し、民間人も処罰の対象にした。対テロ特措法の成立時に自衛隊法にもぐりこませる形で強行されたもので、事実上の国家機密法の制定だ。Fは職務質問や検問時などに、警官による予告や威嚇射撃なしの発砲を可能にするものだ。
 これらの諸攻撃は、その一つひとつがきわめて重大であると同時に、完全にひとつながりの攻撃なのである。ひとことで言えば、有事立法=侵略戦争突入法と一体となって、国家総動員体制を支える戦時治安弾圧体制構築の攻撃であるということだ。
 そこでは第一に、憲法を頂点とした戦後の法体系をまるごとひっくり返すことが狙われている。これ自体が改憲攻撃そのものだ。
 第二に、これらを総合すれば、戦前の治安維持法を頂点とした弾圧体系とほぼ同じものが確実にできあがってくる。すなわち、かつての15年戦争時には、治安維持法による思想・言論・集会・結社の自由の全面的な禁圧を軸として、内務省―警察が労働者人民の日常生活を全社会にわたって隅々まで掌握・支配・統制するシステムがつくられた。それは同時に戦争動員の機関でもあった。そして国家権力による「大本営発表」と「流言飛語取り締まり」にみられるような、厳重な報道・言論統制と情報操作が、このシステムを維持する強力なテコとして働いたのである。
 第三に、この全攻撃の中でもとりわけ結社の自由の圧殺が決定的位置をもっているということだ。革命運動はもとより労働者人民のあらゆる反体制的・反政府的な運動、労働運動、市民運動などを組織まるごと壊滅させ、階級闘争の根絶一掃を狙う攻撃である。何よりも革共同=革命党の組織絶滅と、階級的労働組合の解体にその焦点が合わされている。
 その一環として、予防検束・予防拘禁の事実上の復活や、「組織犯罪」の名による政治犯・思想犯への重罰・重刑、組織の成員だけでなく支持者への弾圧、即決裁判の導入と弁護権の実質的はく奪など、戦前治安維持法下での弾圧をそっくりよみがえらせることが狙われてきているのだ。
 第四に、いまひとつの重大な特徴は、これらの攻撃が「社会防衛論」を前面に掲げた強烈なイデオロギー攻撃を伴ってしかけられていることだ。その最大のテコとして、排外主義・差別主義の攻撃がこれまで以上に激しい勢いであおり立てられている。「国家と社会の防衛」をふりかざしてそれに抵触する者すべてに「危険分子」のレッテルをはり、基本的人権を奪って社会から排除・抹殺しようとしてきている。
 これは、1930年代のナチス・ドイツや日本の天皇制ボナパルティズムのもとで横行した考え方で、最後は人民の大量虐殺にいきつく。「テロ根絶」論の本質は、ブルジョア民主主義を否定して、人民に対する国家テロルとポグロム(集団虐殺)をむきだしにするものだ。まさしく日帝支配階級による「上からの内乱」なのである。

 帝国主義者の恐怖が根底に 長期獄中同志奪還が突破口

 では、こうした治安弾圧攻撃は、打ち破ることができないのか。そんなことはけっしてない。そもそもこの攻撃の背後には、世界大恐慌の爆発と世界戦争の切迫のもとで激化する階級対立とその非和解化が、帝国主義打倒の革命へと発展することに対する帝国主義者の深刻な恐怖がある。真に追いつめられているのは、むしろ日帝の側なのだ。
 戦前の治安維持法があれほどの猛威をふるったのは、当時の唯一の革命党であった日本共産党が、そのスターリン主義的本質のゆえに帝国主義戦争を内乱に転化することができずに敗北し、指導部の獄中での転向を契機に党組織の無残な壊滅を許していったからである。どんな弾圧にも屈せず闘う非合法・非公然の革命党が存在し、この党を軸に労働者階級の階級的団結を断固として守り、強化し、侵略戦争阻止・日帝打倒への革命的大衆行動を全人民に訴え、懸命に組織して闘いぬくならば、敵の弾圧を無力化し粉砕しつくすことは必ずできる。
 その一環として、激化する治安法攻撃を全人民的な巨大な大衆運動をつくりだしてはね返すことは必ずできるのだ。わが革共同は実際に、破防法攻撃を始めとした70年代、80年代の大弾圧をそのようにして打ち破り、今日の新たな闘いの地平を実力で切り開いてきたのである。
 しかも現在の攻撃は、現憲法の人権条項すべてを取り払い、司法を始めとした戦後的諸制度をいったん解体しつくすことなしには完結しない。現実にはこの点で今、すさまじいあつれきが生じている。何が起きているかが広範な人民に知れわたるならば、巨大な怒りと反撃がまきおこることは必至なのである。
 「自由と民主主義の社会をテロリストから守る」と言いながら、凶暴きわまりない国家テロルの恐怖のもとに全人民を永続的にたたきこむ。「法治国家」の看板のもとで実際には「法」の名による恐るべき無法状態をつくりだす。――日帝が現在強行しようとしている攻撃のもつこの途方もない自己欺瞞(ぎまん)は、こんな国家を許してよいのかという根本的な疑問と危機感を多くの人民の中に必ずや生み出さずにはおかないのだ。闘う人民がここで本気で決起すれば、日帝による治安弾圧攻撃それ自身が支配の重大な危機に転化することはまちがいない。
 ここにおいて、長期獄中闘争を闘う同志の不屈・非転向の闘いが、日帝との激突の最先端で今まさに火花を散らして闘われていることを確認しよう。デッチあげ弾圧を粉砕し、長期獄中同志を実力で奪還することは、全治安弾圧攻撃を根底から打ち破っていく巨大な突破口である。絶対に勝利をもぎとろう。
 イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕の今秋決戦の大爆発をかちとり、その中で治安立法阻止、あらゆる治安弾圧攻撃粉砕の闘いを強めよう。

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週刊『前進』(2073号6面2)

神藤裁判 上告棄却を弾劾する 一審無罪判決逆転を居直り

 9月24日、最高裁判所第3小法廷は、88年9・21千葉県収用委員会会長せん滅戦闘でデッチあげられていた神藤猛雄同志に対して、許すことのできない上告棄却決定を下した。
 神藤同志と弁護団の全力を挙げた闘いに対して、最高裁決定は「事実誤認の主張は上告理由にあたらない」とのみ言って、階級的正義と真実を暴力的に切り捨てた。これは、世界戦争突入情勢下で、神藤同志と革共同と三里塚の闘いに心底恐怖する日帝の凶悪な反革命攻撃にほかならない。怒りを込めて徹底的に弾劾する。
 88年9・21戦闘は、千葉県収用委員会再開、農地の強制収用を狙う攻撃に対して、革命軍が闘ったやむにやまれぬ正義の戦闘であった。この戦闘を突破口に、収用委員への抗議が猛然と繰り広げられた。そして、農民の命に等しい農地を奪うことの犯罪性に直面させられた収用委員全員が辞任するという、画期的事態が生み出された。反対同盟農民の正義の闘い、革命的武装闘争と労働者人民の大衆的な運動が結び付き、日帝の支配秩序の一角である収用委員会を解体し、以来14年にわたって収用委員会の再建を阻み続ける勝利の地平が闘いとられているのである。
 神藤同志は無実である。国家権力は90年3月、まさに三里塚・天皇決戦が火を噴こうとしていた最中、9・21戦闘で神藤同志と水嶋秀樹同志へのデッチあげ指名手配を強行した。
 国家権力は、極悪の裏切り転向分子である正井利明を利用し、正井が神藤同志と水嶋同志を写真で特定したなる虚偽の事実をねつ造したのだ。優れた革命家を狙い撃ちにしたデタラメ極まりないデッチあげ弾圧であった。
 90年3月に不当逮捕された神藤同志は、デッチあげ攻撃と果敢に闘い、95年9月29日、東京地裁で一審無罪判決をかちとった。ところが98年7月7日、東京高裁は新たな「証拠」が何ひとつ出されたわけでもないのに、文字どおり白を黒と言いくるめる逆転有罪判決(6年の実刑)を下した。三里塚平行滑走路工事の再開攻撃が強まる中での政治的判決そのものだった。
 直ちに上告し、保釈をかちとった神藤同志は、高裁判決を覆すために全力で闘い抜いてきた。上告趣意書とその補充書を何度も提出し、新たな無実の証拠をたたきつけてきた。にもかかわらず、最高裁は上告から4年、上告を棄却する反革命を強行したのである。
 また、神藤同志と同時にデッチあげ指名手配され、01年6月に逮捕された水嶋同志の裁判では、今まさに正井と国家権力によるデッチあげのすべてが暴かれようとしている。こうした時に、両同志の無実・無罪が明らかになることに恐怖した国家権力は、追いつめられた末に神藤同志への上告棄却決定を強行したのだ。神藤同志と弁護団は30日、怒りに燃えて異議申し立てをたたきつけた。
 米帝のイラク侵略戦争が切迫し、日帝は中国・北朝鮮侵略戦争のために有事立法4法案を臨時国会で成立させようと攻撃を激化させている。それと一体となって、戦争国家をつくり出すために、革共同の組織破壊、三里塚闘争や反戦闘争、労働運動の一掃を狙った治安攻撃がこれまでと一変する激しさで吹き荒れている。神藤同志への上告棄却は、デッチあげてでも革命家を暴力的に獄にたたき込む凶暴な攻撃であり、断じて許すことができない。
 日帝・国家権力の上告棄却決定を弾劾し、10・13三里塚闘争へ総結集して、三里塚闘争の勝利をなんとしてもかちとろう。イラク侵略戦争阻止・有事立法粉砕の今秋決戦を戦後最大の政治闘争として爆発させ、帝国主義の侵略戦争を労働者人民の力で阻止しよう。
 強大な革共同を建設し、日帝・国家権力のデッチあげ攻撃粉砕、神藤同志への上告棄却決定粉砕をかちとろう。

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週刊『前進』(2073号6面3)

弾圧と闘う 迎賓館・横田爆取裁判 3同志が偽証暴く 違憲立証へ証人決定

 9月25日、東京地裁刑事第11部(木口信之裁判長)で迎賓館・横田爆取デッチあげ裁判の第169回公判が行われた。
 この日の裁判では、元岩手県警技官の宮野孝一証人に対して須賀武敏同志、十亀弘史同志、板垣宏同志が迫力ある尋問を繰り出し、宮野の偽証を徹底的に暴き、粉砕しつくした。
 国家権力は、86年に岩手借家から押収したとされる「物」を使って、須賀同志ら3同志をデッチあげた。ところが、岩手借家の「捜索」とは名ばかりで、警察権力が行ったのは違法・無法な襲撃そのものであり、岩手借家に存在した物すべての強奪であり、3同志のデッチあげ逮捕であった。したがって、裁判で「証拠」として出された「物」はすべて違法収集証拠である上に、実際に岩手借家に存在したものかどうかすらも不明なのだ。
 岩手県警は86年10月12日に岩手借家を急襲すると同時に、家屋や倉庫にあった段ボール箱などを手当たり次第に開け、適正な手続きや現状保存など無視してあさりまくった。証人宮野は、以前、岩手爆取裁判の控訴審では、その時の状況を「12日の午前中に呼ばれて倉庫に行き、鉄パイプ爆弾様のものを点検した」と証言していた。ところが、岩手県警が倉庫の実況見分や写真撮影を行ったのは13日だ。宮野は、実況見分の前に行った12日の「捜索」の事実を隠ぺいするため、「倉庫を点検したのは12日ではなく13日の間違いであった」と突然証言を変更したのである。
 この偽証に対する怒りが爆発し、3同志と弁護団は徹底的に宮野を追及した。宮野は自分の記憶にも反するウソをつき通そうとするが、そのために証言は支離滅裂だ。宮野をなんとか救済しようとする検事は、宮野は高齢であること、事件から16年もの年月がたっていることを持ち出した。
 これに対し3同志と弁護団は、宮野が倉庫の物を調べたのは12日ではなく13日だったと思い直す根拠は何もないことを、あらゆる角度から、逃げ場のないほど明らかにした。こうして4回にわたる宮野への追及でその偽証を徹底的に暴き、岩手県警による岩手借家「捜索」の違法な実態を明らかにした。
 続いて、警視庁警察官原義勝の尋問に入った。
 かつて岩手借家からの押収物と称する物を「立証」する過程で、検察側は「証拠」としている「メモ」がどこにあったものなのか、岩手県警の誰も証言できないというピンチに陥った。そこで検事は急きょ、警視庁公安刑事星隆夫に「警視庁での写真撮影の時、『メモ』を良く見て確認している」と偽証させてこの危機を逃れようとした。原義勝は、星隆夫とともに写真撮影を行った人物で、星の証言が偽証であることを明らかにするための弁護側申請の証人だ。原証人への尋問は今後に継続となった。
 この日の裁判ではさらに、爆取が違憲であることを立証するための学者証人、足立昌勝氏(関東学院大学教授)の採用をかちとった。
 公判冒頭の意見陳述で3同志は、違憲・違法の長期勾留を即刻やめ保釈せよと激しい怒りを込めて訴えた。さらに板垣同志は、頸椎(けいつい)症に関する医療鑑定は決定したが原因不明ののどの痛みについての解明も必要であること、医療鑑定は最低限のことであり、それだけにとどまってはならないと主張した。
 デッチあげ粉砕の裁判闘争と3同志保釈奪還の闘争は、まさに正念場にある。あらゆる力を振り絞り、闘いに立ち上がろう。

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週刊『前進』(2073号7面1)

報道と言論を規制し、人民の管理・監視強化する治安弾圧法
個人情報保護法案を廃案へ

 個人情報保護法案(個人情報の保護に関する法律案)は、「報道・言論規制法案」である。戦後憲法における人民の権利である「表現の自由」「言論の自由」を真っ向から破壊するものだ。侵略戦争に向かっての言論統制を狙い、マスコミなどを翼賛勢力として動員する攻撃である。さらに住民基本台帳ネットワーク・システムの始動(02年8月)と結合して、労働者人民への管理・監視体制の圧倒的強化のための治安弾圧攻撃だ。総じて、有事3法案と一体となって日帝のイラク、北朝鮮・中国侵略戦争参戦を推進するための法案である。今秋、臨時国会決戦に労働者人民の総決起を実現し、有事3法案とともになんとしても廃案に追い込もう。

 乱用し悪用されるのは人民の個人情報だ

 まず、この法案にかけた小泉政権の反動的攻撃の、一連の流れをつかむことが重要だ。日帝の攻撃は、次のようなプロセスでかけられてきている。
◆02年8月、住民基本台帳ネットワークの稼働
 コンピューターの全国ネットワーク・システム(国民総背番号制)による個人情報の一元的集中的管理。
    ↓
◆今秋臨時国会で、個人情報保護法案(プラス行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案)を狙う
 国家権力による、労働者人民の個人情報(政治・思想動向などすべてを含む)の管理体制と監視・抑圧システムの強化。
 表現、言論、報道などへの全面的統制と支配・抑圧の攻撃。
    ↓
◆03年8月、住基ネットの完全実施による、個人情報のICカード化
 侵略戦争に向けての治安弾圧体制の飛躍的強化。
 さて、個人情報保護法案(報道・言論規制法案)が対象とする「個人情報」とは何を指すのだろうか。
 法案では「生存する個人に関する情報」(第2条)となっている。つまり、生まれてから現在に至るまでの個人にかんするあらゆる情報ということだ。また対象となる個人も、労働者人民を始めとして、政治家、官僚、大企業の役員などすべての個人が含まれる。
 では、すべての個人情報は、区別なく「保護される」のだろうか。
 まず行政機関と個人情報との関係を見てみる。
 「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」が個人情報保護法案と一体で審議されている。
 その内容は、行政機関(国、地方公共団体)による個人情報の取り扱いを定めたものである。
 この法案には、第3条で「個人情報の保有の制限」、第8条で「利用及び提供の制限」を定めてはいる。ところが、保有や提供の制限に伴う「義務規定」や違反した場合の「罰則規定」がまったくない。つまり、行政機関にとっては、個人情報の保有や提供の制限は「努力目標」でしかないのである。
 したがって、この法案は行政機関による個人情報の「乱用」や「悪用」の歯止めとしては、まったく役立たないということだ。
 こうして、権力・行政機関によって「乱用」や「悪用」されるのは、誰の個人情報なのか。労働者・人民の「個人情報」であることは明白だ。“労働者人民の個人情報は守られない”のだ。これが第一の確認だ。

 政治家、官僚、財界人の情報は防衛される

 個人情報保護法案の第一の問題点は、個人情報の名のもとに「個人情報を取り扱う者」(3条)はすべて、次の五つの「基本原則」を守る努力義務があるとしている点である。
@利用目的による制限=「当該目的の達成に必要な範囲内で取り扱われなければならない」(4条)
A適正な取得=「適法かつ適正な方法で取得されなければならない」(5条)
B正確性の確保=「正確かつ最新の内容に保たれなければならない」(6条)
C安全性の確保=「安全管理のために必要かつ適切な措置」(7条)
D透明性の確保=「本人が適切に関与し得るよう配慮されなければならない」(8条)
 ここで言う「個人情報を取り扱う者」には、個人からグループ、さらには事業者や団体に至るすべての者が含まれる。行政機関も含まれている。
 ここで、労働者人民の側が国家権力・支配階級に属する人びと(政治家、高級官僚、財界人)の個人情報を入手する場合を考えてみよう。この個人情報には国家機密や防衛秘密が含まれていることもありうる。
 では、前述の五つの「基本原則」を守るということは、どういう結論を生み出すだろうか。
○利用目的による制限
 情報を入手する際(取材の際)に、「これこれの研究のため」と言って情報を聞き出した場合、その情報を政治的な暴露に使用することはできない。
○適正な取得
 ある人をめぐる情報を内部告発を含めてさまざまな方法で入手した時、その情報源を開示しろと激しく反撃されることにつながる。結局、本人が同意しないいかなる情報も入手できない、または暴露できない。
○正確性の確保
 本人が事前に読んで承認したものしか公表できない。
○透明性の確保
 情報入手と情報暴露の一切を、「個人情報」の持ち主=取材対象の立場から見て透明にせよということ。取材者がその意図をさらけ出し、取材結果や公表内容を相手に透明にしたらどうなるか。およそ情報活動や暴露は成り立たなくなる。
 これでは、国家権力や支配階級を批判し、その階級的暴力から人民を守り抜くような表現活動、言論活動はできなくなる。まさに、「表現の自由」「言論の自由」の破壊である。また十分な個人情報の蓄積によって初めて可能となる小説やノンフィクションなどの制作は著しい打撃を受ける。これはまさに言論規制、言論統制そのものである。
 つまり、“支配階級の個人情報だけは徹底的に守られる”ということなのだ。これが第二の確認だ。

 権力や企業の腐敗の暴露は事実上不可能

 個人情報保護法案の第二の問題は、「個人情報データベース等を事業の用に供している者」を「個人情報取扱事業者」として位置づけ(2条の3)、こうした事業者に対してはきわめて厳しい義務と罰則を規定していることである。
 この個人情報取扱事業者には、言論・報道機関はもとより労働組合(活動家)や学生自治会、大学や研究所の研究者、作家やジャーナリストなども入る。
 ただし行政機関は、この個人情報取扱事業者からはあらかじめ除外されている(2条の3)。
 そして、こうした事業者に対しては、以下のような「遵守(じゅんしゅ)義務」が課せられている。
(イ)「利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない」(21条)
(ロ)「偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない」(22条)
(ハ)「利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない」(23条)
(ニ)「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」(28条)
(ホ)「本人から、保有個人データの開示を求められたときは、開示しなければならない」(30条)など。
 そして、これに違反すれば主務大臣から「中止・是正」の「勧告」からさらには「命令」が出される。この「命令」に従わない時は「六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」(61条)に処せられる。
 さらに主務大臣は「個人情報取扱事業者」に対して現状を「報告」(37条)させ、必要な「助言」(38条)をすることができるのである。
 これでは、取材やあらゆる情報網を利用して集めた個人情報が、主務大臣により管理・統制されることになりかねない。国家権力や支配階級にとって都合の悪い情報はすべて握りつぶされてしまう。これでは政府・権力・大企業などの腐敗や不正などの暴露は徹底的に抑圧されてしまう。
 つまり、“労働者人民の保有する個人情報はまったく守られない”のだ。これが第三の確認だ。
 個人情報保護法案は、55条に「適用除外」という規定を設けている。
 その内容は、放送機関、新聞社、通信社などの報道機関や学術団体(大学やその研究者など)、宗教団体、政治団体などが情報を取り扱う時は、「義務規定」や「罰則規定」は適用しないとなっている。
 しかし、これにはただし書きが付いている。「適用除外」を報道目的、研究目的、宗教活動目的、政治活動目的というようにそれぞれの目的なるものに制限するというのである。
 さらに出版社や作家、フリーのジャーナリストなどは、そもそも「適用除外」からはずされている。ノンフィクション形式や「○○の研究」といった形で行われる権力犯罪や政治腐敗などの暴露は、この法律のもとでは圧殺されるのだ。
 つまり、「適用除外」とは、個人情報保護法案の言論統制や報道規制という目的をカムフラージュするためのものでしかない。“適用除外はペテン”だ。これが第四の確認である。
 以上の四つの確認をとおして、個人情報保護法案の本質は明白となった。
 ところで、個人情報保護法案がつくり出す社会は、どのようなものになるだろうか。

 住基ネットと一体で究極の治安管理狙う

 国家権力が、「言論の自由」「表現の自由」を労働者人民から奪い、ジャーナリズムや出版活動を統制・支配する。さらにマスコミを自己の翼賛装置に組み込んでいく。個人情報保護法があるから大丈夫と労働者人民をたぶらかし、住基ネットや国民総背番号制を推進する。まさに個人情報保護法案は国家機密法の再来と呼ぶべきものだ。
 だから、今日、一部の自治体で進行している「個人情報保護法案の成立なくして、住基ネットはスタートさせない」という主張は、きわめて危険なものをはらんでいるのだ。
 その一方で、市民運動、住民運動、労働組合運動、反戦運動、革命運動、すべての自主的サークル活動が一元的に個人情報として集約される。全国どこにいても、警察がお前は誰だと言って背番号をつかめば、「生まれて今日までのあらゆる情報」がつかまれてしまう。まさに、究極の治安管理の社会である。
 さらに有事の際の国民保護法制の中で、「警報の情報伝達」にNHKなどが指定を受ける予定になっている。ここでも報道や言論が規制されかねないのだ。
 すでに、昨年の自衛隊法の一部改悪により、部隊の作戦計画などにかかわる情報は「防衛秘密」に指定されることになった。漏洩(ろうえい)した場合、その報道をした記者も罪に問われることがありうるのだ。
 10月臨時国会は、個人情報保護法案の廃案をかけた正念場となった。個人情報保護法案を武力攻撃事態法案を始めとした有事3法案とともに廃案に追い込もう。

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週刊『前進』(2073号7面2)

臨時国会での入管法改悪許すな
排外主義テロルと対決し入管体制の有事化阻もう
 佐久間 祐

 9・17小泉訪朝を契機として対北朝鮮・中国侵略戦争情勢は一層激化している。在日朝鮮人に向かってすさまじい排外主義が噴き出し、さまざまなテロルが襲いかかっている。われわれは今こそ7・7路線の真価をかけて支援・防衛・連帯の闘いを大きく呼びかけ、具体的実践で示していかなければならない。

 拉致問題で噴出する排外主義許すな

 イラク侵略戦争の切迫情勢の渦中で行われた小泉訪朝・日朝首脳会談と「日朝ピョンヤン宣言」は、日帝の戦争政治そのものであり、北朝鮮・金正日(キムジョンイル)は、そうした帝国主義による戦争重圧の中で全面屈服したのである。日帝は、過去の朝鮮植民地支配責任と強制連行・強制徴用、侵略戦争への動員と戦争犯罪のすべてを開き直り、戦後の南北分断の責任も居直って、「拉致問題」で北朝鮮スターリン主義を万力のように締め上げた。米帝と日帝による戦争政策の中で引き起こされた「拉致問題」は、北朝鮮スターリン主義の反革命性を明らかにしたのである。
 在日朝鮮人との関係で、金正日の屈服を見るならば、それは在日に対する棄民政策の極致であると言わなければならない。金正日は、「拉致問題」を認めれば在日朝鮮人がどのような状況に置かれるか百も承知で、しかも事前に伝えることもなく行ったのである。いわば日帝の前に在日人民を差し出すような行為を平然と行ったと言える。
 日帝は昨年来、朝鮮総連への弾圧を飛躍的に強化しており、朝銀破綻(はたん)問題で金の流れを押し止め、破防法調査など総連への治安弾圧を激化させ、日帝への屈服を迫ってきていた。こうした日帝の動きをすべて承認するものとして、今回の事態があったことは明らかである。
 今、在日朝鮮人民に襲いかかっている排外主義テロルを断じて容認してはならない。9月25日までの時点で全国の朝鮮学校生徒への脅迫・嫌がらせは291件に及んでいる。しかし、実際にはこの数をはるかに超えているはずだ。ボクシングの洪昌守(ホンチャンス)氏のホームページが閉鎖されたのを始め、各地の総連本部・支部や朝鮮学校に対して電話、メールでの脅迫など、有形無形で襲いかかっているのである。
 こうした排外主義テロルと対決し在日人民を支援・防衛する日本の労働者階級の闘いが本格的に求められている。現在、さまざまな形で日本人が激励を寄せているという事実は、排外主義をのりこえる力が生まれてきていることを示唆している。われわれは、危機にある帝国主義の最後の武器である排外主義・愛国主義と対決することが、戦争動員を拒否する闘いの高揚を生み出す源泉であることをはっきりさせ、在日朝鮮人民の支援・防衛を階級の課題として闘いぬこう。

 生活実態調査導入で退去強制を拡大

 日帝・法務省は10月18日から始まる臨時国会に、またも入管法の改悪案を提出することを明らかにした。
 今次改悪は「生活実態が在留資格と異なる場合、在留資格を取り消して国外退去を求めることができる」ようにするというものだ。これは、これまで基本的に踏み込めなかった在留期間中の生活実態調査に踏み切ることで、在留資格を取り消し、はく奪して退去強制をほしいままにするというもので、その核心は治安攻撃の強化そのものである。
 改悪の狙いの第一は、年間5万人を超えるすさまじい摘発と収容・強制送還の現実を開き直り、さらに退去強制を日常化しようとすることである。法務省はこれまで「滞在を保証する原則」を守ってきたと言っているが、現実はまったく逆であることはさまざまな事例からも明らかだ。
 第二に、「日本人の配偶者」資格を含めて27の在留資格すべてを退去強制の対象に据えるということであり、基本的にすべての外国人を退去強制の対象とすることを意味している。
 そもそも在日・滞日外国人177万8千人余の在留資格の中で永住者(約68万5千人)を除けば、「日本人の配偶者」が28万人余、「定住者」が24万人余を占めているのだ。ただでさえ細かな在留資格によって分断されている在日・滞日人民の日本での生活は、入管体制によってがんじがらめにされている。日帝は、この在日・滞日人民を差別・抑圧にさらしながら、「違反」をデッチあげて強制送還している現実を一層強化しようというのだ。
 第三に、入国審査官による生活実態調査権限を盛り込み、日常生活のすべてを調査・監視して摘発・収容を進め、強制送還することを狙っている。
 とりわけ「日本人の配偶者」資格者を狙った攻撃は、今日も先取り的に引き起こされている。これは、97年、99年の「不法滞在助長罪」「不法残留罪」新設などのゲリラ対策に対応して、摘発=逮捕・収容―強制送還するための調査権の新設であることをはっきりさせなければならない。日帝は、ゲリラ・コマンドウ対策として予防反革命的に治安弾圧を強めようとしており、その対象は永住権枠にまで拡大される可能性が大いにあるのだ。
 第四に、こうした「在留資格の取り消し強化」方針に対して法務省は、「個々の事例ごとに判断していく」として「自由裁量」を無制限に拡大していくことを狙っているのである。

 「難民問題見直し」は難民追放が狙い

 今臨時国会での改悪案の提出の動きと連動して、この間、日帝が「難民問題の見直し」を掲げて、新たな難民追放攻撃のための入管法改悪をも策動していることを明らかにしなければならない。
 日帝は8月7日、「難民対策連絡調整会議」を設置し、「瀋陽総領事館事件」以降噴出している「難民問題の見直し」という動きに対応した新たな難民追放攻撃のために入管法改悪に動き出した。 
 調整会議設置に先立ち、自民党政務調査会の「亡命者・難民等に関する検討会」が「わが国のとるべき難民対策の基本的な方針」を発表した。
 一つは、難民認定などの円滑化・迅速化を掲げ、難民認定申請期間を現行の60日から180日に延長することと、収容を前提とした在留資格を付与することとし、難民認定調査官の人的体制の強化を打ち出した。二つは、「在外公館における難民認定希望者への適切な対応」として「いかなる者を保護するか」などの初動対応マニュアルを整備することである。三つは、難民支援体制の拡充、保護施設の整備として品川の国際救援センターを再整備・活用する方針を明らかにしている。また、「脱北者(北朝鮮からの脱出者)」に対する対応の検討も図られている。
 これらの難民対策方針について第一に、この難民問題での入管法改悪が、先述した在留資格はく奪に基づく退去強制攻撃の強化のための法改悪とともに、今臨時国会で一挙に提出・成立されかねないことを危機感をもって確認しなければならない。
 第二に、難民認定についてはこれまでどおり、その基準は変更しないということである。「条約難民(難民条約に該当する)と広義の難民」と規定しているが、そのどちらに対しても受け入れ拒否の方針を貫こうとしている。また「脱北者」を広義の難民としていることは重大だ。対北朝鮮侵略戦争、究極的には北朝鮮崩壊のシナリオの中での大量の難民発生を想定していることを示している。大量の難民の上陸に対して、あくまで難民認定を拒否して、追放―送還しようということである。
 第三に、保護を求めている難民に対して、「難民申請者」として特別の在留を付与し、収容所に隔離しようとしていることである。申請期間を60日から180日に延長するということは、「60日条項」が現状に合わないという訴えに対応しているかのように見えるが、あくまで追放を貫くことが日帝の基本方針であることは鮮明なのである。
 第四に難民問題を、一切の人道的装いを投げ捨て、徹頭徹尾治安問題として据えていくことなのである。そもそも有事立法が対北朝鮮・中国侵略戦争法として立案されていることをみるならば、想定される難民も朝鮮人・中国人であることは明白である。日帝は、在日朝鮮人・中国人と難民が結合することを阻止するために、収容を前提化するという予防反革命的方策を打ち出したのだ。
 日帝は、難民に対しては上陸拒否と退去強制を貫くこと、そして難民以外の「不法入国―不法残留」に対しては生活実態調査権を新設し、収容と追放の体制を確立する、という完全に有事=戦時入管体制への究極的改悪を推し進めようとしているのだ。
 われわれは、97年以来の入管体制の改変・強化に対して、戦時入管体制への転換として位置づけ、日帝の戦争国家化と一体のものとして強化される入管体制との闘いを全力で推進してきた。80年指紋押捺(おうなつ)拒否闘争を契機とした新たな在日人民の入管体制との闘いに学び、連帯しつつ、日本労働者階級の階級性を貫くものとして入管闘争を推進してきた。
 今、有事立法攻撃の中で、なお一層の治安管理・弾圧を強化しようとする日帝・法務省に対して、さらにさらに闘いを組んでいかなければならない。

 有事攻撃のもとで激化する入管弾圧

 以上のような入管法の改悪動向が激しく進行する中で、在日人民に対する入管弾圧は日々激しくなっている。大きく言って滞日中国人に対する「偽装結婚」摘発攻撃と、イスラム諸国出身者に対する有無を言わさぬ収容・送還攻撃の二つを水路にしている。
 在日・滞日中国人に対する動きとしてもう一つ特徴的なことは、日本に帰国した「中国残留孤児」をめぐる入管弾圧が激しく展開されていることである。
 たとえば、王沢来さんは中国残留婦人2世の夫として来日したが、1年後に離婚したため「定住者」の在留資格を更新できず、不法残留状態になった。在留許可を求めて出頭したが2000年に強制退去処分となり、以来、牛久の入管収容所に収容され続けた。ようやく10月1日に仮放免となったが、法務省は在留資格を認めようとはしない。この事例も「偽装結婚」摘発攻撃の一環である。
 また、東京や大阪の入管局が、不法残留者を法定の収容期間を超えて違法に収容し続けていたことが明らかになっている。本来、「不法残留」容疑による収容期間は30日以内とされている(やむをえない場合30日間の延長が可能)のに、そうした法を踏み破って収容を続けたのである。外国人を犯罪者としか見ない日本の入管行政の姿が露呈したと言える。
 アフガニスタン人の再収容を始め、在日・滞日の被抑圧民族人民に対する入管攻撃は一刻の猶予もなく、連日襲いかかっている。イラク侵略戦争阻止・有事立法阻止決戦の一環として、この秋、入管法改悪阻止を全力で闘いとろう。新たな入管収容所建設に反対しよう。労働者階級の国際主義を発揮して、闘う朝鮮人民と連帯し、日帝の朝鮮侵略を内乱に転化しよう。闘うムスリム人民と連帯し、イラク反戦・有事立法決戦の大爆発を実現しよう。

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週刊『前進』(2073号7面3)

有事法廃案へ決意 婦民全国協 総会で秋の方針確認

 8月24、25日、神奈川県相模原市で婦人民主クラブ全国協議会第19回全国総会が開催された。全国から会員・読者が各地の闘いをひっさげて結集し、今秋、有事法制を廃案へ全力を尽くそうと意気高く確認する総会となった。
 1日目、主催者のあいさつに続く連帯のあいさつでは、三里塚芝山連合空港反対同盟、北富士忍草母の会、部落解放同盟全国連合会婦人部、国鉄闘争共闘会議、全国労組交流センター女性部、都政を革新する会などが、婦民全国協への力強い連帯と激励を寄せた。来春に迫った西村綾子代表の相模原市議三選に向け、相模原市民からの熱烈な訴えも行われた。
 総会記念講演は、在日朝鮮人エッセイストの朴慶南(パクキョンナム)さんが「在日から見た日本の有事体制」をテーマに行った。朴さんは「在日は日本社会の危険をいち早く知る『炭坑のカナリヤ』です。最近は命の危険をひしひし感じる。有事立法は、間違いなく戦争法の仕上げ。小泉首相は『侵略されたらどうする』と言うが、怖いと思っているのは朝鮮であり、アジアの側」と語り、「アメリカと一緒になって、再びアジアの人びとを殺す側になるのかどうか問われている。国境を越えて民衆が手を取り合って闘う時」と、熱く呼びかけた。
 朴さんの講演にこたえて婦民全国協から西村綾子代表が特別報告を行った。西村代表は、ベトナム反戦闘争の中で相模原支部を結成して以来30年の反戦と女性解放の闘いの蓄積にかけて有事立法を廃案に追い込み、2003年春の相模原市議選に勝利する決意を明らかにした。
 続いて総括・情勢・方針の議案の提起、キャラバン報告・組織拡大報告が行われた。9・11以降、世界戦争の時代が始まった中で、これと対決して取り組んだ全国キャラバンの成功を確認、そこで掘り起こした全国の女性の反戦の思いを組織拡大へつなぐ展望が示された。夜は交流会、若者・教育・女性の一生の三つのワークショップがもたれ参加者の交流も深まった。
 2日目は、午前の組織拡大を討論する分散会をへて、全体会でも活発な発言が相次いだ。「見える行動でアピールするのが婦民全国協のよいところ。秋は有事法制廃案への正念場、がんばろう」「社会の矛盾激化の中で悲鳴や怒りが噴き出している。それを束ねていこう」――介護問題、職場の問題、国際連帯、差別との闘い、政治犯救援・弾圧との闘い、仲間づくりまで多岐にわたった。すべての議案・討論・特別決議「有事立法廃案へ」を採択し、幕を閉じた。

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週刊『前進』(2073号8面1)

マルクス主義講座 B 『賃労働と資本』を読む(上)
 資本主義社会とは何か−経済的基礎の分析と批判

 本格的な階級形成へ48年革命後の再出発

 『賃労働と資本』は、マルクスが1847年の後半にベルギーのブリュッセルで行った講演をもとにしたものです。
 まず、重要なポイントは『賃労働と資本』を『共産党宣言』と一体のものとしてつかむことです。マルクスの講演は『共産党宣言』の発刊の直前に行われました。活字になったのは『宣言』発表から約1年後の49年4月です。(『新ライン新聞』に連載)
 『共産党宣言』は、46年からプロレタリア運動との実践的かかわりをもったマルクスが、『経済学・哲学草稿』や『ドイツ・イデオロギー』そして『哲学の貧困』などをとおして明確にしてきたマルクス自身の唯物論的歴史観と共産主義論を、プロレタリアートの革命的実践のための綱領として打ち出したものです。その経済的基礎の解明を独自に提起したものが『賃労働と資本』であると言えます。このような形で資本主義社会の経済的基礎を階級的・体系的に批判できるようになったことで、『共産党宣言』が可能になった。そのような意味で『賃労働と資本』は、『資本論』の卵とも言えるでしょう。
 第二のポイントは、マルクスが47年の講演を49年段階であらためて発表したことの意味についてです。
 『共産党宣言』と、それから1年後の『賃労働と資本』発表の間には、ヨーロッパを激動にたたき込んだ48年革命が起きています。結成間もない共産主義者同盟は、フランスからドイツに波及した48年革命に参加して闘いました。
 しかし、この48年革命は敗北しました。フランス労働者の反乱は、ブルジョアジーに徹底的に弾圧されました。ドイツでもブルジョアジーは、封建的支配階級と一体となって人民反乱を弾圧しました。
 48年革命の敗北で、共産主義者同盟の闘いは、根本的にやり直しが迫られました。亡命活動家集団の「狭い活動」の延長ではなく、もっと根本的に、大胆に労働者階級に基礎を置き、根を張った共産主義者の党と運動をつくろう、そのために『共産党宣言』とその理論を科学的に基礎づけて、資本主義とは何かを全面的にはっきりさせて、やり直していこうとしました。その出直しの最初に、マルクスは『賃労働と資本』を据えたのです。
 『賃労働と資本』の前書きにある次の言葉は、このようなマルクスの48年革命の総括であり、新たな出発の決意を示すものです。
 「すべての革命的反乱は、その目的が階級闘争からいかに縁遠いように見えても、革命的労働者階級が勝利するまでは失敗せざるをえない。そしてどんな社会的改革も、プロレタリア革命と封建的反革命とがひとつの世界戦争という形で武力をもって決着をつけるまでは、ユートピアにとどまること。われわれはそのことを証明したのである」
 「わが読者たちは、1848年における階級闘争が巨大な政治的諸形態で発展するのを見たのであるから、今や労働者の奴隷状態の基礎をなすのと同じようにブルジョアジーの存在及びその階級支配の基礎をなす経済的諸関係そのものを、一層詳しく調べるべき時である」
 つまり、階級闘争の物的基礎としての経済的諸関係の分析を行う、そしてこれによって必ずプロレタリア革命に勝利するぞ――というのが、『賃労働と資本』発表の意図であり、ここに込めたマルクスの決意なのです。
 さて、『賃労働と資本』は内容上、5つの部分からなっています。
(第1章)賃金とは何か
(第2章)商品の価格は何によって決定されるか
(第3章)資本とは何か
(第4章)賃金と利潤の関係
(第5章)資本の増大は労働者階級にどんな影響をもたらすか
 なお、この後ろに「救済案」「労働組合」「賃金制度の積極面」という断片が含まれています。もともとの講演の草稿とされるものですが、全体のまとめであり、実践的な結語として読むことができます。

 “人間の血と肉を容器とする奇妙な商品”

 『賃労働と資本』の本文は、「君の賃金はいくらか」と労働者に尋ねてみよう、というところから始まります。これはマルクスが労働者に向かって講演するときの特徴的な方法です。労働者にとって現実の賃金はどういうものとしてあるのか、すなわち資本主義社会の現実の中では、賃金はどういうものとして現れているのか、そこから入って、その本質をつかみだしていくという展開をしています(下向分析)。『資本論』は、商品という本質的なものから始まって、それが資本主義的諸現象をどのように構成し展開していくのかを解明する方法(上向的展開)をとっていますが、それとは対照的です。
 まず賃金とは、資本家が労働者の一定の労働時間、または一定の労働給付に対して支払う(労働者が資本家から受け取る)貨幣額だという点では、すべての労働者が一致するだろうとマルクスは言っています。
 「だから、資本家は貨幣をもって労働者の労働を買い、労働者は貨幣と引き換えに資本家に自分たちの労働を売る」(解説本51n、岩波文庫版41n)という現実があるわけです。
 そうすると、この労働というものは、砂糖と同じように〈商品>であると言わなければならない。
 だが、労働という商品とは、本当は何なのか。労働とは人間の生命活動そのものであり、生命力の発露です。これが商品として売り買いされているということは、労働者はその生命力そのものを売っていることになります。したがって、〈賃金>とは「人間の血と肉を容器とする以外にはない、この奇妙な商品の価格に対する独自の呼び方」である、とマルクスは言っているのです。このマルクスの言い方には、そもそも商品とはなりえない人間の生命力すなわち労働力が売買されているという現実への弾劾が含まれています。
 なお、文庫本などでは、1891年にエンゲルスが手を入れた文章が翻訳されていて、ここでは「労働」は「労働力」と修正されています。49年段階のマルクスはまだ、「労働」と「労働力」の概念的区別を、明確にはしきっていませんでした。それでも、労働を生命活動とし、それをなす生命力として労働能力を措定しているという点で、概念内容としては「労働力」把握にほぼ到達しています。
 マルクスは続いて、この〈労働>という「奇妙な商品」の独自性を、次のような具体的な内容で展開していきます。
 資本家は生産手段として糸と織り機を市場で買うが、それと同時に人間労働力も商品として買う。労働者は市場で糸(原材料)や織り機(労働手段)と同じように資本家に買われて工場にやってきたのである。彼の労働は、資本家が買った商品の消費として行われているわけです。
 つまり、ここが大事なところですが、°賃金は労働の成果の分け前ではない″ということです。労働(労働者)は、資本家的生産のもとでは、他の労働手段(という商品)と同じ位置にあるのです。だから、「……資本家は、自分の持ち物である原料と、さまざまな労働用具を使って生産にとりかかる」「この労働用具の中には、わが善良な織物工ももちろん含まれている。彼が生産物や生産物の価格の分け前にあずからないのは、機械がその分け前にあずからないのとまったく同じことである」(解説本62n、岩波43n)
 「労働の価格」すなわち賃金は、労働者は労働を提供し、一方で資本家は生産手段を提供することによって、それぞれの役割に応じて適正な報酬を受け取るという形を取っています。資本家から言えば、労働者には「労働の価格」を適正に支払っているのであり、資本家もまた資本家として正当な報酬(利潤)を受け取るのだ、というようにものごとを表現します。
 たとえば労働運動のナショナルセンターである連合は、労働者の賃金について「社会的所得配分」「付加価値の配分」とか、「組合員のがんばりに適正な成果配分を」などと、「賃金=成果配分」であることをしきりに強調しています。
 しかし、見かけはそうであっても、ことの本質はそうではないのです。
 皆さん、考えてみて下さい。契約によって賃金が前もって一定の額として決まっているということは、賃金は労働に対する報酬、行われた労働の成果の分け前ではないということを意味します。つくったものが高く売れようが、また逆に売れなかろうが、本質的には賃金には関係ないことです。たくさん売れたからと言って、その分、労働者の賃金が増えるという関係ではありません(一定のボーナスが支払われたりするのは、むしろこの関係をごまかすためのものでしかない)。結局、労働者が受け取るのは、自分の生存を維持するための生活手段を買うための金額でしかない、ということです。
 「だから、賃金は自分の生産した商品に対する労働者の分け前ではない。賃金は資本家が一定量の生産的労働を買い取るのに用いる既存の商品の一部である」(解説本64n、岩波44n)
 つまり、労働者は、生存を維持するだけの金額で自分の労働力を売り渡しているのです。その意味で、賃金とは労働力の価値=価格以外の何ものでもありません。それが賃金の本質です。そこには、商品として売られた(買われた)労働力をどのように消費しても、それは資本家の勝手、という関係が本質的に貫かれているのです。
 現実の賃金(賃金の現実形態)は、あたかも資本家と労働者がそれぞれ役割に応じた報酬を得て生産活動を行っているかのような形をとって、資本家による労働者の搾取を実現する形態なのです。
 先の連合の主張を見ると階級的搾取の問題は完全に覆い隠されています。階級的立場に立った労働運動は賃金に隠されたこの「秘密」を、とことん暴き出さなくてはなりません。

 ただ生存維持のための「疎外された労働」

 では、なぜ労働者は労働力を売るのか。「生きるためだ」。マルクスはそれを『経・哲草稿』で展開した「疎外された労働」論の要約とも言える内容で、次のように論じていきます。
 「労働は、労働者の人間的能力を働かせること、すなわち労働者自身の生命活動であり、労働者自身の生命の発現である。だが、労働者は、必要な生活手段を手に入れるために、この生命活動を他人に売るのである。だから、彼の生命活動は、彼にとっては生きるための一手段にすぎない。彼は生存するために働く。彼にとって、労働は彼の生活の一部ではない。それどころか、労働は彼の生活の犠牲なのである」
 「彼の活動の生産物も彼の活動の目的ではない。彼が自分自身のために生産するものは、自分の織る絹でもなく、自分が金鉱から掘り出す金でもなく、自分が建設する豪邸でもない。彼が自分自身のために生産しているものは賃金である」
 「彼にとっては、絹や金や豪邸は、一定量の生活手段、たとえば木綿の上着や何個かの銅貨、穴蔵のような住居に変わってしまう。労働者にとって……12時間の機織り、紡績、採掘、旋盤回し、建設、シャベルすくい、石割りは、自分自身の生命の発現、自分自身の生活だと言えるだろうか? まったく逆である。労働者にとっての生活は、この活動が終わった時に、すなわち、食卓や居酒屋のイスやベッドで始まる」
 マルクスは、こういう形で資本主義のもとでの賃金労働を、労働の自己疎外・疎外された労働・人間の自己疎外の極限的な姿として描き出したのです。マルクスのこの労働論は、150年後の戦争・大失業下の今日の賃労働と労働者のありようを鋭く射抜いてます。
 マルクスは、さらに第1章の後半部分で、古代の奴隷制や中世封建制社会の農奴の労働のあり方を述べ、人間社会の歴史的発展の中で賃金労働をとらえ返します。そして、労働力が商品となる関係(賃金労働)は、歴史的に特殊な生産関係、資本主義的生産に特有な関係であることを明らかにしています。
 (水井省一)
 (つづく)
 (『賃労働と資本』解説本は、前進社発行「マルクス主義基本文献学習シリーズ2」定価1100円です)

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週刊『前進』(2073号8面2)

無実の星野同志を取り戻そう (9) 再審請求
 虚偽の目撃証言と闘う カギはO証人の事実調べ

 再審闘争の歩み

 星野同志と弁護団は、96年4月17日、七つの新証拠をもって東京高裁に再審請求の申し立てを行った。87年7月17日の上告棄却から9年の歳月を要した。
 星野同志と弁護団は、97年12月5日に新証拠8(A証人の新供述)と補充書を提出した。99年9月3日、荒木友雄裁判長は「求意見書」を出してきた。これを受けて10月25日、星野同志と弁護団は意見書を提出するとともに、O証人及び取り調べ警察官・平松卓也の事実調べを要求した。再審請求書、補充書、および意見書によって、O証人と平松の事実調べが絶対に必要なことは明白であった。
 しかし、00年2月22日、東京高裁・荒木裁判長は、何ひとつ事実調べを行わないまま、再審請求棄却決定を下したのである。同月24日、星野同志と弁護団は異議を申し立て、闘いは異議審へと移った。高裁第12刑事部に対して、同年9月28日には補充書1、さらに12月27日には新証拠9、10、11、補充書2を提出した。同時に、事実調請求書、証拠開示請求書を提出した。

 確定判決の構造

 東京高裁の確定判決は、結局のところ、6人のウソの供述に依拠しているだけである。ここが崩れれば、全内容が崩壊する。
 確定判決の中心に位置するのが、O証人(当時20)の72年2・13引き当たりと2・14供述調書(員面調書)である。権力は、それまでに何人かが供述したバラバラの内容を素材にして、星野同志、奥深山さん、A証人、K証人、AR証人とあと一人の6人を「実行行為者」とするストーリーにまとめあげた。不自然なことに、部隊の大半をなした反戦青年委員会の労働者はひとりも「実行行為者」に入っていない。これは、O証人たちの闘争経験が浅く、労働者の顔を知らなかったためである。これ以降は、O供述に沿う形で、各人の供述が整理されていく。このような証拠の構造が明るみに出ることを恐れて、検察官は一審段階ではこの二つの証拠を隠していた。2月17日のO証人検面調書のみを法廷に提出したのである。
 O供述には致命的な弱点がある。O証人は梅沢米店前に遅れて到着し、実際には機動隊員せん滅の現場を目撃していないのである。2・13引き当たりは、O証人を代々木八幡の現場に連れて行き、あらかじめ密室でつくったストーリーをしゃべらせただけというのが真相なのだ。これは単なる推測ではない。補充書2と同時に提出された「引き当たり再現実験」(新証拠11)により、わずか1時間半で11場面の図面入りの詳細な供述を行うのは到底不可能なことが明らかになった。11の場面で、当日の様子を思い出しながら説明したものを記録し、距離の測定などを行った上、写真を撮っていく作業が1時間半でできるわけがないのだ。
 I証人の新証言によって、O証人がほとんど最後の段階で到着したことも明らかになった。その上O証人は、「A証人がつまずいてひざをついた」、「女性の服に火が付いた」、「K証人が竹竿でなぐってささらのようになった」、「奥深山が馬乗りになって鉄パイプで殴った」といった、明白に事実と違う供述を行っている。
 O証人は、1、2審をとおして異様な証言拒否をくり返し、捜査段階での供述を維持している唯一の証人である。O証人は、本件では訴追されず、「神山交番放火」に関する執行猶予判決で釈放されている。O証人と平松卓也に対する事実調べは、真相解明に不可欠である。ここに再審勝利のカギがある。

 検事の筋書き

 AR証人(当時17)を取り調べた検察官・中津川彰は、法廷の証言であけすけに語っている。
 「取り調べというのは本人の矯正、誨化(かいか)、遷善(せんぜん)ということにある」「はっきり言って自供が事実かどうかといったことは問題ではない。……そうして反省するとおのづと事実を話してくれるようになった」
 われわれは、全身の血が逆流するような怒りなしに、この証言を聞くことができない。取り調べとは名ばかり、転向強要がすべてということだ。そして、いったん転向させればデッチあげは思いのまま、権力がつくったストーリーのとおり何でもしゃべるということではないか。
 中津川は、AR証人を父親に殴らせて筋書きどおりの供述をさせ、彼を実刑(懲役5年以上7年以下)にした。同じ中津川が取り調べたA証人(当時19)は、「争うと不利、控訴はしない」という約束を信じて家庭裁判所では否認した「火炎びん投てき」の自白を維持したら実刑(懲役7年)になってしまった、と利益誘導による虚偽の供述を法廷で明らかにした。K証人(当時18、担当検察官・市川敏雄)、I証人(当時20、検察官・福江馨)、S証人(当時21、検察官・中津川彰) らすべての証人が、O証言を基礎にした虚偽の目撃供述を強要されたのだ。
 こんなものが、今も星野同志を無期の獄中に閉じ込める「証拠」とされているのだ。
 われわれは、全国的な大運動をもって東京高裁第12刑事部・河邊義正裁判長を追いつめ、検察官が隠し持つ全証拠を開示させ、事実調べを開始させなければならない。長期にわたる闘病を続ける奥深山幸男さんを防衛し、免訴(公訴棄却)をかちとろう。異議審に勝利し再審を開始させよう。

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