ZENSHIN 2005/08/22(No2210 p06)

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週刊『前進』(2210号1面1)(2005/08/22)

 衆院解散−総選挙の反革命と対決し小泉打倒へ労働者は総決起しよう

 教科書・靖国・郵政民営化の攻撃粉砕を

 8月12日の東京・杉並区教委による「つくる会」歴史教科書採択の暴挙(別掲記事)を徹底弾劾し、小泉の8・15靖国神社参拝を絶対阻止し、8月闘争を猛然と闘い抜こう。郵政民営化法案が8月8日に参院で否決され廃案となった。これに対し日帝・小泉は即座に衆院解散−9・11総選挙という暴挙に打って出た。これは、戦争と民営化(労組破壊)のための大攻撃であり、労働者階級人民に対する新たな一大反革命である。今こそ猛烈な怒りと危機感を燃やして、小泉打倒に総決起しよう。11月労働者1万人大結集ヘ闘おう。

 第1章 戦争突入と民営化強行を狙う大反動

 帝国主義間争闘戦の激化のもとで、日帝は未曽有(みぞう)の体制的危機と凶暴化を深めている。そして危機の反革命的突破をかけて、日帝・小泉は戦争と民営化(労組破壊)の大攻撃、構造改革路線推進という戦後史上かつてない一大反革命に打って出ている。
 小泉は衆議院を解散した8日夜、誰に会うよりも真っ先に日本経団連=奥田と会合し、郵政民営化−「小泉改革」に無慈悲に突き進むことを両者で確認した。そして小泉は自民党造反議員について「法案に反対した議員は一人も公認しない」「反対派議員のいる全選挙区に対立候補を立てる」と宣言して9・11総選挙に突入した。こうしたやり方で小泉は、自民党の内部から戦後体制的要素を残した勢力を一掃し、安倍らファシスト的極右勢力を軸にして自民党を戦争と民営化(労組破壊)、「つくる会」教科書と靖国参拝を強行する反革命政党につくり変えようとしている。帝国主義の危機の時代に、侵略戦争と、労働者階級に対する上からの内乱的な大攻撃を容赦なく強行できる権力政党として自民党を再編しようとしているのだ。
 武部幹事長は「自民党の中には、これまでどこか体質的に社民的な人たちが結構入っていた。そういう体質を今こそ一掃しないと、これからの激動期をのりきれない」と語っている。まさに、今日、日帝がイラク侵略戦争に参戦し、日米枢軸を形成し、北朝鮮・中国侵略戦争に突き進んでいく上で、自民党をも解体的に再編し、国内階級関係を反革命的につくりかえることが不可欠となっていること、その天王山が郵政民営化攻防であることを敵の側から明らかにしているのだ。この日帝・小泉の危機と凶暴性をはっきりと直視して、全力で小泉打倒、郵政民営化−小泉構造改革粉砕の一大階級決戦に総決起しなければならない。
 何よりも確認しなければならないことは、日帝が陥っている危機の深さ、激しさである。敗戦帝国主義としての制約を突破しきれず、帝国主義間争闘戦での敗勢にあえいでいる。
 だからこそ、憲法9条に示される敗戦帝国主義としての制約を突破し、帝国主義的軍事国家体制を早急に確立し、帝国主義間争闘戦、侵略戦争−世界戦争に勝ちぬく国家体制を確立しようとしているのである。それが「小泉構造改革」であり、「つくる会」教科書の大攻撃である。郵政民営化を突破口とする戦争と民営化(労組破壊)の大攻撃なのである。
 小泉・奥田の経済財政諮問会議は、6月の「骨太方針X」で、「ここ1、2年の構造改革の進展が(日本の経済社会の)成否を決める」と語り、「いよいよ『攻めの改革』に踏み出す」と宣言した。まさに05〜07年過程が、労働者階級の未来を決する一大階級決戦になったのだ。
 そして、その一切の突破口として、「郵政民営化関連法案の成立を期す」としている。郵政民営化攻撃はあらゆる構造改革(公務員制度、行財政、年金、教育など)の突破口であり、これを貫徹・強行する以外に日帝は生き延びられないのだ。しかも、これは日帝の戦後体制、戦後的階級関係、戦後的価値観(平和、人権、民主主義、平等など)のあらゆる戦後民主主義的なものを一掃しない限り、貫徹できないのである。まさに「つくる会」教科書と一体の大攻撃である。
 もしも9・11総選挙で小泉・自民党が勝利すれば、自民党が完全に「つくる会」的な反革命政党に再編され、労働者階級に対する決定的な攻撃を強めてくることは必至である。また、イラク侵略戦争の泥沼化、国連安保理常任理事国入りや6者協議での行き詰まりの突破をかけて、日米安保−米軍再編(トランスフォーメーション)への全面的協力を水路に、戦争国家化の大反革命に出てくるだろう。

 第2章 「小泉改革」粉砕が労働者の生きる道

 だから、絶対に小泉・自民党を何がなんでも打倒しなければならない。そのために9・11総選挙過程でのあらゆる闘いを展開しよう。小泉改革、郵政民営化の恐るべき反革命的狙いを暴露し、労働者人民の怒りを組織し、小泉打倒の一大闘争を巻き起こそう。
 小泉は「改革を止めるな」をスローガンに掲げて総選挙を闘うと公言した。財界やマスコミは「いま、改革しなければ21世紀の日本は立ちゆかなくなる」と叫び、こぞって小泉改革をたたえ、尻押ししている。
 だが、いったい「小泉改革」とは何なのか。彼らはこれをいかにも日本経済や国家財政を立て直す切り札であるかのように言いなしている。だが、日帝が今日陥っている経済・財政の破綻(はたん)的危機は、帝国主義の矛盾と危機の爆発であり、日帝が日帝である限り、本質的に解決不可能である。
 そもそも日帝・金融独占ブルジョアジーこそが、高度成長過程やその後のバブル期、長期不況期をとおして国家財政をさんざん食い物にしてきた元凶ではないか。その連中が今や国家財政の破綻を口実にして「構造改革」や「民営化」を叫び、「年金や医療・社会福祉費を減らせ」「公務員の数を減らせ」「公務員の賃金を下げよ」「痛みに耐えよ」などと言って犠牲を強要しているのだ。
 結局、日帝には国と地方を合わせて1000兆円という天文学的な借金を尋常な方法で解決することなどまったくできない。日帝がとりうる道は、ひとつはインフレーションを激化させて国債を紙くず化してしまうことである(戦時下で可能となるような措置)。もう一つは、反革命的な暴力的手段に訴えて階級闘争を圧殺し、大増税とリストラと社会保障費の大幅削減、各種保険料の大幅引き上げを強行することである。
 いずれにせよ「小泉構造改革」とは、「戦争ができる国家」への反動的改革であり、労働者階級から一切の権利を奪い取り、日帝国家に屈服させ、極限的な犠牲を押しつける攻撃なのだ。さらに、帝国主義戦争で天皇のために死ぬことを価値あることと教える教育改革であり、イラク侵略戦争を拡大し、北朝鮮・中国侵略戦争へ突撃する体制づくりなのだ。
 「小泉改革」と闘い粉砕することこそが、労働者階級人民が生きていく道なのである。

 第3章 民営化は首切りと労働組合の解体だ

 小泉は衆院解散直後の記者会見で、「今回の解散は郵政解散だ。郵政民営化に賛成か反対か、これをはっきりと国民に問いたい」と語った。自民党内の反対派はもとより、民主党も「民営化そのものに反対しているわけではない」などと弁解し屈服している。これで小泉反革命に太刀打ちできるわけがない。
 はっきりさせなければならない。郵政民営化は徹頭徹尾、反労働者的・反人民的であり、完全粉砕あるのみだということを。
 郵政民営化は第一に、郵政労働者27万人(非常勤を含め40万人)を非公務員化し、しかも民営化後の「雇用継続は保証しない」という国鉄型のリストラ・大量首切りである。郵政民営化を前にして、すでに激しい労働強化と人員削減の攻撃が現場労働者に襲いかかっている。
 第二に、全逓労働運動の解体と戦後的な公務員労働運動の根底的な一掃の攻撃である。小泉と奥田は、郵政、公務員、教育、国鉄(JR)の労働者に攻撃を集中し、日本の労働者階級の中で戦後労働運動の成果を最も強く残し、階級的戦闘力を保持している官公労系労働者の労働組合的団結を、戦時下において一挙に全面的に破壊しようとしてきているのである。
 自民党の安倍幹事長代理は、「全逓や労働組合に支持された民主党が改革を妨害し、郵政民営化法案を廃案にした」と労働組合、労働運動への憎悪をあおっている。まさに戦時下にあって、かつてのナチス・ドイツのように労働組合・労働運動を「国家の敵」「国家を危機にさらす元凶」として圧殺する攻撃が決定的に強まっているのだ。
 郵政民営化は第三に、「民」の論理で利潤と効率を最優先し、「深夜勤」に象徴される極限的な強労働・強搾取を一層激化させる攻撃だ。さらには「効率」を基準に地方・過疎地の郵便局などを廃止していく攻撃である。
 第四に、郵貯・簡保の330兆円の膨大な資金を、すべて銀行や生命保険などの金融独占ブルジョアジーと米帝ファンドのえじきとする攻撃である。
 このような小泉改革と郵政民営化攻撃は絶対粉砕あるのみだ。6月に奈良で開かれたJPU(旧全逓)全国大会では、郵政民営化攻撃と郵政公社のアクションプランに、現場組合員の怒りが大爆発した。連合全逓中央(JPU中央)がどんなに腐っていても、職場には怒りと、闘いの意欲が脈打っている。郵政公社と一体となって大リストラ、極限的な労働強化攻撃を推進する連合全逓=JPU中央を打倒し、職場から総反撃に立とう。全逓労働者は職場の団結を打ち固め、物ダメ・ストライキで闘おう!

 第4章 小泉=奥田路線と闘い11月総決起へ

 革共同は戦闘的労働者と連帯して郵政民営化絶対阻止を闘い、05年決戦前半戦を、日帝権力の大弾圧と闘いつつ全力で闘ってきた。この闘いが階級闘争圧殺攻撃をうち破り、労働者階級の決起と流動化を深部からつくり出してきた。
 JR尼崎事故は、民営化攻撃の反人民性をはっきりと突き出した。これに対する動労千葉の安全運転行動は、労働者階級の中に大きな支持と共感をつくりだし、全逓労働者は一層、確信も固く郵政民営化反対に決起した。こうした闘いが翼賛国会に風穴をあけ、自民党の分裂と危機をつくりだす大きなインパクトとなり、法案を廃案に追い込んだのだ。
 「闘えば、必ず粉砕できる!」「これからが正念場だ!」。いま職場には労働者の闘いの息吹、戦闘的エネルギーが生み出されている。まさに日帝・小泉との本格的な階級決戦はいよいよこれからだ。日帝の体制的延命をかけた小泉反革命を粉砕するためには、「今こそ帝国主義を倒す時だ」という、労働者階級の嵐のような階級的総決起が絶対に必要なのだ。
 はっきりと確信を持とう。今日進行している日帝の超反動的資本攻勢、すなわち労働者階級が19世紀以来の血と汗の苦闘をとおしてかちとってきた地平や獲得物を根底から転覆し、労働者の組合的団結や戦闘力を破壊しさろうとする攻撃は、絶対に一方的にのみ進行することはありえないのである。必ず労働者階級の必死の反撃を引き起こし、労働組合の防衛と階級的再生へのうねりをつくり出すのだ。21世紀のプロレタリア革命の勝利を切り開く力がそこに存在しているのである。このことに不動の確信をもって闘おう。
 日帝・小泉の国家主義、愛国主義、排外主義の大攻撃に対して、労働者国際連帯の思想と実践をもって大反撃しよう。労働者を弱肉強食の生存競争に駆り立てようとするあらゆる攻撃を粉砕し、「一人は万人のために。万人は一人のために」の階級的団結の思想と闘いを、力強く前進させていこうではないか。
 8月下旬の自治労大会、国労大会が重大な決戦になった。自治労中央は改憲阻止をまったく闘わず、今大会で改憲容認へ決定的にかじを切ろうとしている。連合・自治労中央の改憲勢力化を許さず、公務員制度改悪・改憲攻撃と真っ向から闘う自治労運動をめざして闘おう。また、国労中央の闘争終結策動を粉砕し、1047名の解雇撤回闘争の勝利をめざして闘おう。
 日帝・小泉の改憲と教育基本法改悪の攻撃、米軍再編と沖縄基地強化の攻撃、米陸軍第1軍団司令部の座間移転や、イラク参戦=派兵継続などの攻撃と断固闘い、労働者階級の反戦闘争を強めよう。
 民主党は、命脈尽きた日帝の延命に手を貸す政党である。改憲を叫び、自衛隊の海外派兵を容認し、「国家公務員人件費の2割削減」(政権公約)を叫んでいる。こんな「第2自民党」に労働者の未来を託すわけにはいかない。
 民主党・日本共産党・社民党では、日帝・小泉=奥田やファシスト石原の大反革命と闘えない。帝国主義打倒の立場に立った路線と闘いのみが唯一、これと対決し勝利できるのだ。
 帝国主義と闘う階級的労働運動の力こそが、小泉・奥田路線を粉砕する最大の力である。労働者階級の未来は、労働運動の戦闘的・階級的再生に一切かかっている。小泉打倒を真っ向から訴えて闘い、全逓、国鉄、教労、自治体の4大産別を軸に、11月労働者1万人総決起をなんとしても実現しよう。その中から、プロレタリア革命に勝利する労働者党の建設を全力でかちとろう。
 本紙夏季特別号を学習し、これを武器に今夏・今秋決戦に勝利しよう。

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週刊『前進』(2210号1面2)(2005/08/22)

 8・12杉並 「つくる会」歴史教科書採択弾劾

 「公民」は大阪書籍 山田区長と区教委に反撃を

 8月12日の杉並区教育委員会臨時会は、「つくる会」歴史教科書(=扶桑社版)の採択を強行した(公民は大阪書籍版を採択)。山田区長と「つくる会」が結託して、区内外からわき起こる「『つくる会』教科書を採択するな!」の声を踏みにじった大暴挙である。採択撤回へ総力で闘おう!(関連記事6面)

 必ず撤回させる

 「こんな採決は絶対認められません。必ず撤回させます」。杉並区教委が「つくる会」歴史教科書を採択した直後、区役所前で抗議集会を開催した「つくる会」の教科書採択に反対する杉並・親の会のメンバーは、きっぱりと宣言した。怒りに震え、次々とマイクを握る区民たち。「こんなのは八百長だ」「子どもたちを二度と戦場に送らせないために闘う」。怒りのシュプレヒコールをたたきつけ、ただちに闘いの新たなラウンドに突入した。

 反対委員を脅迫

 4日の区教委が「継続審議」を決定すると、「つくる会」は「杉並で採択実現を」とうごめき始めた。まず、4日に「つくる会」教科書を「戦争に向かう教科書」と述べた安本ゆみ教育委員に対し、「つくる会」教科書執筆者の藤岡信勝と八木秀次の2人が連名で「公開質問状」を発した。脅迫行為そのものである。
 さらに「つくる会」ホームページで山田区長・納冨教育長への激励と12日杉並結集を呼びかけ、全国動員で圧力をかけてきたのだ。
 そうして迎えた12日、早朝から「つくる会」教科書に反対する人びとが区役所前に集まった。「扶桑社教科書を支持します」とノボリ旗を立てた右翼勢力も区役所前に陣取った。
 午前8時、親の会が集会を始めると、「つくる会」派が「扶桑社賛成」と大合唱を始める。しかしまったくひるまず、親の会のメンバーは訴えを続けた。
 9時前、第5次署名提出行動を行い、署名は実に2万9912筆になった。
 傍聴希望者は950人を超えた。わずか20人の傍聴が決まると、反対派が多数を占める中で、藤岡信勝も傍聴に入っていった。
 10時過ぎ、歴史教科書の審議が始まった。大蔵雄之助・宮坂公夫の2人が扶桑社版を推す。これに対して安本委員が「『日本の将兵は敢闘精神を発揮してよく戦った』と書くなら、家を失い家族をなくし、食べる物もなく苦しんだ人びとのことも書くべき」と発言。すると宮坂や大蔵が安本委員に攻撃を集中した。
 2時間近い議論をへて、納冨善朗教育長が「あえて順位をつければ、扶桑社が1位」と初めて表明。この一言で、扶桑社を1位に推す委員が3人となり、扶桑社採択が決定された。「歴史は扶桑社を採択」と宣言されると、猛然と抗議と弾劾の声が上がった。
 続く公民教科書の審議では、歴史教科書には計4時間かけたにもかかわらず、ほんの20分で「大阪書籍を採択」と結論を出した。

 山田区長と結託

 4日の審議で扶桑社版が不採択寸前まで追いつめられた山田区長と「つくる会」は1週間、採択強行へ総力を挙げ、“公民はあきらめて歴史だけ押し通す”という方針で臨んだのだ。
 採択後に記者会見を行った杉並・親の会は、「民主主義も何もない。区教委に寄せられた声は『つくる会教科書反対』ばかりなのに、区長の言いなりの教育長の一声で強行された」「来年4月に杉並の中学校に『つくる会』教科書を持ち込ませない闘いにただちに入ります」と表明した。
 杉並区民の必死の闘いにこたえ、「つくる会」教科書採択撤回へ闘おう。
 (本紙・上原祐希)

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週刊『前進』(2210号2面1)(2005/08/22)

 安全運転行動に大きな反響

 動労千葉を支援する会05年総会 田中康宏動労千葉委員長の提起

 労働組合の団結こそ核心 11月集会に1万人結集を

 動労千葉を支援する会は、7月23日に千葉市のDC会館で2005年度の定期総会を開き、動労千葉支援・連帯の闘いを強め、動労千葉に学び、闘う労働組合の新しい潮流運動をつくり出し、会員を拡大することなどの方針を確認した。この総会の場で、「尼崎事故と動労千葉の闘い」と題して、田中康宏委員長が動労千葉からの提起を行った。不当処分をはね返して闘われている安全運転行動の意義を明らかにし、国鉄闘争の勝利と11月労働者集会の大結集を訴える内容だ。その要旨を紹介する。(編集局)

 不当処分弾劾し安全運転を継続

 今年は、国鉄分割・民営化に反対した第1波のストライキから20年になるわけですが、私たちは昨日のような思いで闘っています。あの時から何も思いを変えていない。これも皆さんのご支援のおかげです。
 昨日、支援する会が市川駅でビラをまき、ものすごい反響だったと聞いています。ビラは「市川駅のレールがガタガタになっている」というものです。今朝、市川でビラを受け取った若い女性から電話がありました。ビラを持ってすぐ駅長室に怒鳴り込んだそうです。安全運転行動は、これまでにない反響を呼んでいます。動労千葉がこれほど周りから支援された闘いは結成以来初めてです。
 さて、7月19日から21日に、安全運転行動に対する不当処分が出されました。本部執行部8名に対する「厳重注意」でした。「厳重注意」とは就業規則上で一番低いランクの処分で、しかも現場を処分することができずに、執行部だけの指導責任を問う処分です。もちろん、どんな軽い処分でも満腔(まんこう)の怒りを込めて弾劾しなければいけないのですが、結局、JRはこの処分で墓穴を掘った、社会全体に恥をさらしたと考えています。
 尼崎事故で107人の命が奪われた。それに対して動労千葉がやったことは当たり前の闘いでしかない。回復運転をしないとか、無線で運転の通告があった時には列車を止めてメモをとって受ける、最高速度を厳守しよう、特にレールがひどいところは減速、安全運転をやりなさいということを2カ所やっただけで、遅れは1分程度です。
 つまり、安全そのものを処罰したというのが特徴です。8名が処分されたわけではない。労働組合が安全問題で必要最小限の努力をすることを認めないのですから、「どんなに危険だろうと、会社の命令どおり走っていればいいんだ」という意味を込めた処分です。ここにJR東日本の「安全よりも組合つぶし」「安全よりも営利優先」という腐りきった経営姿勢が一番鮮明に現れています。
 その一方で、今度の処分は、動労千葉の主張し続けてきたことの正当性を満天下に明らかにしました。動労千葉の運転士が出勤すると「あなたのやろうとしている行為は違法行為です。厳重に処罰します」という点呼を受けて乗務することが毎日続いています。2名の管理者が運転台に乗って、後ろで速度メーターをのぞき込んでメモをとって、監視、恫喝するという中で乗務する。もうすでに2カ月ですから、少なくても数千人の管理者を朝の4時ぐらいから夜中の12時過ぎまで動員している。
 その結果の処分が本部執行部8名に対する「厳重注意」ですから、これはどう考えても釣り合いようがない。

 「尼崎事故」は民営化の結果

 ですから、本来なら処分のしようのないものだとJR自身が社会に明らかにしてくれたと思っています。今日、電話をいただいた若い女性の方も「処分された運転士さんがかわいそうです」と言うので、「僕らは大丈夫ですから」と答えておきました。
 動労千葉は一昨日、この処分に対する抗議集会をこの会場を満杯にしてやり、これからも処分が積み重なろうが安全運転行動は断固継続することを全体で確認しました。
 さて、尼崎事故という大変な現実が私たちに突きつけたことは何だったのか。
 原因は数限りなくあります。結局は労働組合の問題です。つまり、労働者の団結がつぶされて、小泉や奥田が市場原理で突っ走る。競争原理で弱い者は全部切り捨てる。これはJR西日本だけの問題でも、JRだけの問題でもない。例えば今、生活保護世帯が100万世帯、143万人、100人に1人以上です。この10年間で無権利の非正規雇用に突き落とされた労働者たちが数百万人。10年前から比べると倍になっている。膨大な労災事故はもちろん、結局、労働組合の団結が破壊された結果、世の中全体がこうなっている。その象徴が尼崎事故です。だからこれに対する闘いは普遍的な意味を持ちます。
 尼崎事故で問われたのは、動労千葉自身でもあったわけです。尼崎事故は国鉄分割・民営化という犯罪的な政策の結果、必然的に行き着いた事故です。マスコミだって多少は批判している。「営利優先が事故を起こした」「安全軽視の経営姿勢が起こした」と。だけど百万遍そう言ったところで物事は一歩でも前進するのか。つまり単なる「口舌の徒」に終わるのかどうかということです。
 ですから、動労千葉としては具体的な行動を起こさなければ労働組合の看板を降ろすしかなくなる、口先で批判することは簡単だが、それだけでは問題は何ひとつ解決しない、という思いで安全運転行動を開始しました。

 「闘いなくして安全なし」掲げ

 その中で動労千葉が掲げてきた「闘いなくして安全なし」というスローガンはこれから先も絶対に変えないスローガンです。
 このスローガンは、炭労という炭鉱の労働者たちが掲げてきたスローガンだった。落盤とか炭塵(たんじん)爆発で、仲間が無数に殺され続けた炭労の仲間たちが、このスローガンを掲げて闘いを起こして団結して本当に強い労働組合に生まれ変わり、「労働組合が危険だと判断した時には労働者は炭坑に下りなくていい」という労働協約をかちとった。その炭労も、あの60年の三池闘争でガタガタに団結を崩された結果、3年後には三池の閉山を免れた三川坑で大炭塵爆発を起こして、500名近い労働者の命が奪われている。
 だから、事故、安全という問題は、労働組合の死か再生かという問題です。そういう重みを持ったスローガンが「闘いなくして安全なし」だということを、あらためて確認しました。戦争と民営化、労組破壊攻撃が社会全体に蔓延(まんえん)していることを考えた時に、かつての三池闘争の時以上の本当に痛切な問題を突きつけています。
 JRの職場の現状ついてですが、世間では、たぶん「日勤教育のように非人間的に労働者を痛めつけて、回復運転に駆り立てるようなことは多少は緩んでいるんだろうな」と見ていると思うんですね。だけど職場で起きていることは逆です。千葉運転区で、25歳のJR東労組の若い運転士が、運転台で携帯電話のメールをやっただけで解雇になりました。尼崎事故以前だったらあり得ない。
 尼崎事故は、分割・民営化政策の大破産です。JRは分割・民営化政策が破産したことを絶対に認めることはできない。その結果、徹底的に労働者を締め付けるという道しか残らない。つまり職場の状況は完全に非和解的になっている。
 これを国家という観点から考えたら、国家としての破産を認められない以上、徹底的に労働組合運動を破壊して、戦争に突き進むというのとまったく同じです。だけど矛盾を抱えているのは向こうの側であり、いつ足元から崩れてもおかしくない。ここには大きな展望が開かれています。

 大きな成果上げ若い仲間が結集

 闘いは大きな成果を切り開いています。去年以来2年間、2回のストライキと2回の安全運転闘争で千葉支社管内の総計20`のレール交換を確認し、大変な勢いで工事が始まっていますけれども、「闘いなくして安全なし」だということを再度確認しました。
 レールを交換させたところで、根本は解決がつかない、業務の全面的外注化をやめさせなければ成果とも言えないと考えていたんですが、7月15日の1047名闘争の集会の時に、立山学さんというJRの安全問題を追及して本も出している人に、「委員長、これはすごいことなんですよ」と言われました。「これはイギリスの国労だってできなかったことですよ」と言うんです。
 イギリスの国労(RMT=鉄道海運労組)の委員長があいさつに来ていましたけど、イギリスでは民営化された結果、レールが折れて脱線・転覆事故が起きて、何十人という死者を出す大事故を繰り返した。その結果、民営化された鉄道会社は、損害賠償に堪えきれず倒産した。今、再国有化という問題になっている。その過程で、RMTは民営化で徹底的に団結を破壊されたが、息を吹き返して、200万人をロンドンに集めた反戦集会などを組織した中心になった。つまりイギリスの戦闘的労働運動の牽引(けんいん)車になっているんですが、実際には自分たちの闘いでレールの交換をさせることはできなかった。
 それと、もう一つはこの闘いの渦中で19歳の若い仲間が動労千葉に結集したことです。7月21日の集会に本人も来てくれ、明るく歓迎しましたけれども、やはり労働者の気持ちが動いている。19歳ですから級が一番下で、動労千葉に入ったら賃金が上がらないことを承知で、腹を決めて来たということはすごいことです。「給料よりも仲間が大事ですから」と言ってくれた、その思いに僕ら自身が大きな責任を負ったわけですから、絶対にこんなJR体制を打破して「給料を上げてやるからな」と約束もしましたから、これに続く流れを絶対につくりたいと考えています。
 労働者は損得で動くんじゃないんです。動労千葉にいたら処分もされる。配転もされる。それを百も承知で来てくれた。労働者は、仲間を蹴落としたって一銭でも賃金がほしいという思いも持っているはずです。だけど胸を張って生きるためには命をかけるというのも労働者です。僕らがどっちを引き出せるのかということだと、新組合員の加入から感じました。
 それともう一つは、ものすごい反響の闘争になったことです。これを否定できる労働組合はどこもなくなった。だから「動労千葉は過激派だ」と言われてきたイメージが、これで一新されたと思いますから、全力で11月集会に結集していきたいと思っています。

 国鉄労働運動の危機とチャンス

 1047名闘争も含めた国鉄、JRにおける労働運動の現状についてです。
 実際上は大変な危機にあります。国労も、JR総連、JR連合、あらゆる労働組合がなすすべなく展望を失っています。例えば国労も、4党合意などでチャレンジグループや共産党の幹部たちが、ゴリゴリ反動的に突っ走っていたころはまだしもだったんです。そういうものすら一切なくなっている。東労組もそうです。カクマル的にゴリゴリと、逆らう人間を徹底的に「反組織分子」なんてやっていたころはまだしも、何の方針もなくなっている。労働組合の崩壊過程が全部で起きている。帝国主義の危機という情勢で、あらゆる勢力がふるいにかけられて分岐するという状況の中で、自分で瓦解(がかい)し始めている。
 しかし、国鉄労働運動の再生ということを考えた時に、一回全部崩壊しなかったら、再生しない。その意味で国鉄、JRの労働運動が新しい一歩を踏み出すのかどうか、解体されて分割・民営化は成功だったと言って終わるのか、本当に新しい芽が出るのかというところにいよいよ来たと感じています。ここにはすごく大きな可能性がある。
 こういう状況の背景にあるのは何なのか。それは「国鉄分割・民営化の総決算」という状況です。再来年4月で分割・民営化20年です。結局、政府の側も決着をつけなければいけない。国鉄分割・民営化反対闘争は今でも延々と続いている。動労千葉も小さいながら存在している。つまり決着がつかなかった。20年を見すえて、完全に決着をつけるということを始めています。だから国労東日本エリア本部とJR東日本が和解することが起きている。和解して国労を完全に連合化する。分割・民営化の時につぶしきれなかった労働組合をつぶすということです。国労も東労組も、1047名闘争も、もちろん動労千葉も、全部つぶすということです。
 今、郵政民営化の問題で自民党は大変な危機に陥っている。だけどあれを突破口にして、国、地方自治体のあらゆる業務を全部民営化する。弱肉強食の世の中にたたき込んで、労働組合を破壊する。行政権力機構の中に労働組合の存在なんか認めないということをやる時に、国鉄分割・民営化反対闘争が1047名闘争という形で継続していることを認めるはずがない。
 動労千葉はこんな小さな力で、皆さんの支援を受けながらここにいるということは、考えてみたら本当に大きなことじゃないか。ここが結集軸になって国鉄労働運動を再生することは、不可能じゃないと実感するんです。そういう危機とチャンスがせめぎ合っている中で、動労千葉はこれまでの闘いの旗を絶対に譲らずに頑張り続けたいとあらためて決意したい。

 1047名の団結に展望が

 焦点の1047名闘争ですが、7月15日に国労闘争団、動労千葉争議団、全動労争議団の3争議団の団結を中心にして、日比谷野外音楽堂で5800名が集まって、大きな闘いの成功をかちとりました。実はそれまで、口先では1047名の団結と言いながら、「動労千葉排除」だった。これは国労闘争団の中にもあった。あるいは共産党系、全労連などは露骨にやっていた。動労千葉としては柔軟かつ非妥協的に「被解雇者が団結すること以外に勝利の展望はないじゃないですか」という論争を続けてきて、去年の12月の集会では、集会が開会されて、まだ楽屋裏でそういうことをやっていたんです。その時に「千葉動労とは一緒にできない」と言う人たちがいて、周りから「いい加減にしろ」と、動労千葉についてくれる関係になった。
 だけど今回の集会は、中心になった呼びかけ人の人たちが「動労千葉の言うことはまったく正しい」と言う。同じことが、例えば教育基本法改悪反対の統一戦線の中で起きています。陸海空港湾20労組でも同じことが起きている。われわれの言っていることは正論です。「ナショナルセンターの枠を越えて団結しよう」と言っていることが社会を動かし始めている。
 つまり激しい分岐の中から新しいものが生まれ出ようとしている情勢です。今度の尼崎事故反対闘争もそうです。小泉「骨太方針」は、公務員労働運動解体ですけれども、敵の側はぐらぐらで、郵政民営化法案が通らなければ自民党が崩壊し、民主党も割れますから、大政界再編が起きる。われわれはそこまで闘いを前進させてきた。言ってきたことが通用し始める時代に来たということです。
 最後に、11月労働者集会に1万人を集めることを訴えたい。1047名、20労組、教育基本法改悪反対、そして11月集会勢力と、日比谷野音に1万人ぐらいずつ集められる勢力が四つ集まったらこれは相乗効果で、10万人ぐらいで都心デモをやって小泉政権を倒そうぜ、というところまで今日、私たちの闘いは来ているんじゃないかということを最後に訴えます。

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週刊『前進』(2210号2面2)(2005/08/22)

 尼崎事故弾劾・鉄建公団訴訟勝利へ総決起態勢固めよう

 国労全国大会に向け訴える

 8月30、31日、熱海ニューフジヤホテルで開かれる国労第73回定期全国大会は、尼崎事故後、初めての大会であり、鉄建公団訴訟判決を前にした重大な大会だ。それは人事大会でもある。今次大会には、総選挙に打って出た小泉の戦争と民営化(労組破壊)攻撃と対決し、尼崎事故を引き起こしたJR体制への怒りを結集して、1047名の解雇撤回と分割・民営化体制打倒の闘う方針を確立することが求められている。だが、民営化反対を投げ捨てた国労本部は、闘う方針を何ひとつ提起せず、1047名闘争に公然と敵対している。裏切り執行部を打倒し、今大会を国労再生に向けた組合員の総決起の場としよう。その力で11月労働者総決起へ突き進もう。

 戦争と民営化めぐる決戦はさらに白熱化

 運転士と乗客107人の命を奪った尼崎事故は、民営化攻撃が労働者階級に何をもたらすのかをまざまざと示している。
 尼崎事故を機に、小泉政権が進める戦争と民営化(労組破壊)攻撃への労働者階級の怒りはふつふつとたぎり始めた。8月8日の郵政民営化法案の参院否決という情勢の基底に、こうした事態があることは間違いない。だが小泉は、自民党分裂の危機を逆手にとり、一大民営化攻撃を貫徹するために衆院解散−総選挙の反革命に訴えてきた。尼崎事故のような大惨事を何度繰り返そうと、小泉改革を押し貫く以外に日帝の延命の道はない。だから奥田・日本経団連もマスコミもこぞって、「改革を後退させるな」と小泉を全力で後押ししているのだ。
 小泉は、総選挙の過程で自民党内反対派や野党勢力を圧伏し、それをとおして労働者階級の闘いを根絶しようと狙っている。それは、日帝がイラク侵略戦争を継続・激化・拡大し、北朝鮮−中国侵略戦争をも決断していることと一対をなす。だから小泉の攻撃は、かつてなく凶暴なものとなっている。小泉は敗戦60年の8月15日に靖国公式参拝を強行する構えでいる。
 郵政民営化法案の否決に先立つ8月4日、「つくる会」教科書をめぐり全国的な焦点となっている杉並区で、労働者・市民の重包囲の中、区教委は中学校社会科教科書の採択を見送った。「つくる会」一派は、巻き返しをかけてあらゆる反革命策動を繰り広げている。階級闘争は、動と反動が死力を尽くして争う激烈な決戦過程に突入した。
 05年決戦は、戦争と民営化を許すのか否かをかけた大攻防として、一挙に白熱化したのである。
 だからこそ労働者階級が自らの階級的利害を真っ向から掲げて立ち上がることが必要なのだ。階級的激動情勢の進展は、他方で労働者階級の主体的危機を鋭く突き出している。
 連合は7月14日の中央執行委員会で露骨な改憲方針を打ち出した。彼らは、連合最大の単産である自治労を改憲派に転向させ、10月連合大会で改憲方針を押し通そうと策している。それは労働者階級総体を侵略翼賛体制に組み伏せようとする、ただならない攻撃だ。これを許したら、労働者階級は再び侵略戦争に動員されてしまうのだ。11月1万人大結集を実現し、この大反動を根底から打ち破らなければならない。
 4大産別の先頭で国鉄労働運動がどこに向かうかに、労働者階級の命運がかかっている。国鉄闘争は民営化絶対反対の旗幟(きし)も鮮明に、小泉の反動的突進に真っ向から立ち向かうべき位置にある。分割・民営化以来19年、これと不屈に闘いぬいてきた国鉄闘争が、今ほど真価を問われる時はない。

 安全運転行動貫く動労千葉に続く闘いを

 動労千葉は、尼崎事故から1カ月の5月25日を期して安全運転行動に立ち上がった。回復運転はしない、危険個所では減速する、無線通告は停車して受ける、などの行動は、安全のために運転士がなすべき基本的事柄を実践するということにほかならない。
 だが、JR東日本はこれに対して延べ数千人の管理者を動員し、運転室に乗り込んで闘いを圧殺しようとたくらんだ。そして、動労千葉の本部執行部8人に「厳重注意」の不当きわまる処分を下したのだ。だが、動労千葉はこれに屈せず、今も安全運転行動を貫いている。この闘いの渦中で、「平成採」の青年労働者が東労組と決別し動労千葉に結集した。
 JR資本には、“尼崎事故を教訓に労務政策を改めよう”などという姿勢はさらさらない。尼崎事故が分割・民営化政策の破産を突き出したからこそ、JR資本は分割・民営化体制を護持するために、闘う労働組合を解体し、労働者の抵抗を押しつぶそうと全力を挙げているのだ。
 そのJR資本との「労使協議」で安全を守ることなど断じてできない。「闘いなくして安全なし」は絶対的な真理である。だから今次国労大会で、動労千葉に続く闘いの方針を打ち立てることが必要なのである。
 だが国労本部は、尼崎事故で窮地に立ったJRの救済者に転じることで、「労使正常化」を図ろうと夢想している。それは、労働者の命を資本に差し出す断じて許しがたい裏切りだ。

 『前衛』で上村がJR体制への屈服を表明

 その最先兵こそ、西日本エリア本部委員長の上村ら反動革同だ。彼らは「イラク鉄道復興支援」運動で帝国主義の侵略戦争の手先となることを決断し、さらに「分割・民営化は尼崎事故の原因ではない」と言い切ることで、JR体制への最後的な屈服を表明した。
 日本共産党中央委員会機関誌の『前衛』8月号に掲載された上村のインタビューは、彼らの裏切りを示して余りある。そこで上村は、「利益優先・安全軽視のJR西日本の企業体質……を変えることが必要ですが、たとえそこまでいかなくても、今回の事故は回避できたはずだ」と述べている。つまり、“JR体制のもとでも事故は防げた”と言うのである。これほどあからさまなJR体制賛美の言辞がほかにあろうか。
 上村はまた、「私たちは……『日勤教育』そのものを否定するのではなく、再発防止のための教育は必要であると考えます」と強調している。本来、労働組合は“運転士に責任は一切ない”という立場に立ちきり、資本の事故責任を徹底追及すべきである。それ以外に労働者の命と安全を守ることはできないからだ。「日勤教育を否定しない」と言い張る上村は、“事故の責任は労働者にある”という資本の言い分に根本的に屈しているのだ。
 その上村が、「今回の事故で私自身、これまで国労組合員としていったい何をしてきたのかと考えさせられました。労働組合として、本来のチェック機能をもっと発揮できたのではないかと責任を痛感しています」とうそぶいている。何が「責任を痛感」だ! 上村革同が最先頭で強行した4党合意路線こそ、JRの極限的な合理化を促進し、強権的労務管理を勢いづかせ、尼崎事故への最後の引き金を引いたのだ。
 日共中央は、『前衛』誌上で上村に恥ずべき居直りを展開させることで、その裏切り・転向を全面的に容認した。7・15集会を妨害した全労連中央一部幹部の策動とともに、日共中央は労働者階級の統一を妨げ、闘いを抑圧するスターリン主義反革命としての正体をむき出しにしたのだ。
 東日本エリアのチャレンジ一派も上村革同に追随し、JRとの屈辱的「和解」を求めて動いている。分割・民営化20年を前に「国鉄改革の総決算」を唱える権力・資本に呼応して、国鉄闘争を内部から破壊しようとしているのだ。
 今日の情勢下で、戦争と民営化(労組破壊)の攻撃に階級的に反撃する路線を持たない者たちは、敵階級の手先へと急速に転落するほかにない。国労本部は、「最高決議機関で決定した方針を逸脱した別方針・別行動等は団結を阻害する最大の要因であり、早期に克服されなければならない」(運動方針案)と絶叫し、鉄建公団訴訟への敵対を強めている。敵と通じて敗訴を願う腐敗の極致だ。

 裏切り執行部打倒し国労の階級的再生へ

 7・15日比谷野音集会を転機に、国鉄闘争は新たな高揚期に突入した。1047名の大同団結と、尼崎事故弾劾のJR本隊の決起こそ、国鉄闘争の勝利を押し開く。国鉄闘争はついに勝利の大道を見いだしたのだ。7・15への5800人の大結集は、国鉄闘争が戦争と民営化(労組破壊)攻撃に立ち向かう基軸的位置にあることを鮮明にした。
 7・15はまた、国労本部の凋落(ちょうらく)を突き出した。国鉄闘争の主導権を握っているのは、当該を先頭とする7・15勢力である。酒田・吉田・革同ら現執行部は、国労組織を食い物にし、利権をあさることしか眼中にない。こんな執行部は一刻も早く打ち倒さなければならない。
 何よりも彼らは、闘争団切り捨てに反対する国労組合員を警察権力に売り渡して執行部を奪いとったやからなのだ。5・27臨大闘争弾圧裁判はすでに43回の公判を重ねた。公安警察と結託し弾圧を仕組んだ酒田・吉田・鈴木らの所業は、毎回の公判ごとに暴き出されている。「許さない会」運動を押し広げ、国労再生の突破口をこじ開けよう。
 国鉄闘争は、9月15日の鉄建公団訴訟判決を前に、正念場にさしかかった。勝利判決戦取へ総力で闘おう。折しも9・15に向かう過程は総選挙と完全に重なった。1047名闘争は、民営化攻撃を根源から撃ち続ける闘いだ。民営化攻撃にのめり込む小泉と激突し、攻勢的に闘ってこそ国鉄闘争の勝利はある。
 JR体制とそれに屈した執行部への現場の怒りを結集し、国労再生をかけて今次大会決戦を闘おう。11月労働者総決起に向け、動労千葉に続く不抜の大隊列を国労の中から生み出そう。
 〔革共同国鉄委員会〕

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週刊『前進』(2210号6面1)(2005/08/22)

 8・4杉並 戦争教科書の採択押し返す 区教委ゆるがす人間の鎖

 区民の怒りが強行を許さず

 8月4日の杉並区の臨時教育委員会は、中学校教科書採択で、社会科の3教科(歴史・公民・地理)について異例の「継続審議」とすることを決定した。この日、1千人近い労働者・市民が集まり、「『つくる会』教科書を採択するな!」と区役所を包囲し、「つくる会」の歴史・公民教科書の採択を阻んだのだ。追いつめられた山田区長と区教委は巻き返しに出て、1面報道のように12日、「つくる会」歴史教科書採択を強行した。
 いよいよ採択当日。緊張が走る中、午前10時過ぎから区役所前で集会が始まった。「つくる会」の教科書採択に反対する杉並・親の会のメンバーが次々マイクを握る。「4年前からさまざまな壁をのりこえて運動をつくり出し、団結の力を取り戻してきました」「今回集まった署名は2万6千筆、4年前の約2倍です。4年前は1回だった区役所包囲行動も、今回は3回行うことができました。区教委はこの声を聞くべきです」「日本が中国や韓国を侵略したという歴史の事実は消せない」「『危ない』と言われた採択区で次々『つくる会』教科書が不採択になっている。杉並も不採択に」
 都高教の労働者は「『つくる会教科書が採択されても使わなければいい』というのは甘い考え。今の教育行政は処分、業績評価、賃金、あらゆる力で『教科書どおりに教えろ』と強制してくる。『つくる会』教科書を採択させるわけにはいかない」と訴えた。
 午前11時、区役所前に集まった人びとが手を結び、「人間の鎖」行動を行い、青梅街道側まで長くつながった。さらに高校生や沖縄出身者、動労千葉などの発言が続き、正午、親の会が第4次署名提出行動に向かった。前回の提出行動からわずか1週間で4230筆の反対署名が集まり、計2万5939筆となった。
 開会時間の午後1時を前に傍聴券の抽選が始まった。傍聴希望者は499人、傍聴席はたったの20席。約200人の会議室に審議の音声を流したが、それでも入りきれない人たちが傍聴の拡大を求めて区教委前の廊下に座り込んだ。
 午後1時半、審議が始まった。国語、書写に続いて歴史教科書の審議が始まると、冒頭発言した「つくる会」派の宮坂公夫委員は、「歴史を学ぶことは当時の人びとがどう考えていたのかを学ぶこと」「神話が一番多く出てくるのは扶桑社」「扶桑社以外は、江戸時代の百姓一揆を取り上げていてよくない」「『大東亜戦争』と記すべき」と、言葉遣いまで「つくる会」そのものである。
 大蔵雄之助委員も、「歴史は科学ではない」「大日本帝国憲法は当時としてはよい憲法」「北朝鮮による拉致や日本の伝統・文化についてよく書いているのは扶桑社」などと述べた。
 他の2人の教育委員が、「扶桑社の教科書には世界とのかかわりが少ない」「戦争の被害があまりに少ない」「現場教員が調査報告書で『使いやすい』と評価した教科書にすべき」などの意見を述べたが、その後発言した納冨善朗教育長は明確な態度表明をしない。明らかに区内外で高まる「戦争教科書反対」の声に押されているのだ。
 「つくる会」教科書を押し通すことだけを意図した宮坂・大蔵委員の発言はなんの説得力もない。これに対して「扶桑社の教科書には、戦争に向かうことが書いてある」と厳しい批判の声が上がる。納冨教育長は「どれでもいい」と言いだす始末で、2時間近くたって議論は杉並区で今使っている教科書の採択に向かった。そこで唐突に大蔵委員が「もう1回全社の教科書を読みたい」と言い出して納冨教育長が了解、「社会科3教科は継続審議に」と決定された。あまりに唐突な「継続審議」決定。“扶桑社不採択が決まってしまう”と焦った「つくる会」派の逃げの一手だった。
 ただちに区役所前で報告集会を行った。「さらに反対運動を大きく広げ、12日には完全に不採択とさせよう!」と力強く確認した。
 反対運動の大きな力が、「つくる会」教科書をなんとしても採択しようとする山田区長や一部教育委員の横暴にストップをかけた。「つくる会」教科書を採択した採択区は全国でまだ一つだけ。7月28日の都教委に続き、8月4日に杉並で採択して全国に波及させようとしていた「つくる会」の思惑は頓挫した。

 不当に逮捕の北島氏を奪還

 この日午前9時過ぎ、都政を革新する会の北島邦彦事務局長が不当逮捕された。区役所前をうろつきビデオ撮影をしていた右翼に北島氏が抗議したところ、警察が突然襲いかかって警察車両に連れ込み、そのまま逮捕したのだ。容疑は「暴行罪」。「つくる会」と警察が一体となった、あまりにもでたらめなデッチあげ弾圧である。裁判所が検察の勾留請求を認めなかったため、北島氏は2日後の6日夕方、釈放された。

 教員が会見で教委の不正暴く

 杉並区教委が教科書調査報告書の書き換えを指示するという重大な不正が明らかになった。歴史教科書8冊の報告を書いた区内の中学教員は「つくる会」教科書の「総合所見」に「適切でない」と記入したところ、区教委指導室から書き換えを指示された。別の教員は「つくる会」教科書について「誤りがある」と記したところ、校長に「“疑問がある”にしてほしい」と指示された。
 杉並区教職員組合(杉教組)は7月27日に記者会見を行い、「このような指示は、教育基本法10条が禁じた不当な強制にあたる」と弾劾し、書き換え指導をやめるよう求める要請書を区教委に提出した。
 (本紙・上原祐希)

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