ZENSHIN 2006/02/06(No2232 p06)

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週刊『前進』(2232号1面1)(2006/02/06)

 国民投票法案粉砕、「日の丸・君が代」不起立貫徹

 2〜3月決戦に総決起しよう

  連合中央が公務員制度改革に屈服 日共は改憲阻止の統一戦線に敵対

  4大産別決戦で小泉−奥田打倒を

 

自治労臨大で改憲阻止をアピール 大会参加者に訴える全国労組交流センターの労働者(1月26日 東京)=記事次号

「日の丸・君が代」不起立の闘いを先頭とする4大産別決戦は、日帝・小泉=奥田体制と真っ向から激突するすさまじい死闘に突入した。1月20日の小泉の施政方針演説は、行政改革推進法案―公務員制度改革を突破口に、教育基本法改悪と国民投票法案を強行して改憲に突進する強烈な意志を示した。これは、4大産別労働者への全面的なリストラ・首切り、改憲反対の政治活動の圧殺、戦争協力の強制という戦慄(せんりつ)すべき大攻撃である。同時に連合中央に全面屈服と階級圧殺の先兵化を迫る攻撃だ。これに呼応しているのが日本共産党スターリン主義だ。すでに連合は、1・16政労協議で労働基本権協議と引き換えに公務員制度改革を受け入れ、1・19中央執行委員会で国民投票法案に事実上、賛成した。だが現場労働者は1・26〜27自治労臨時大会で、公務員制度改革と国民投票法案を丸のみする自治労中央を激しく弾劾する闘いに立った。これをのろしとして2〜3月、4大産別決戦を猛然と闘おう。

 第1章 小泉政治の矛盾が全面爆発し始めた

 帝国主義の危機と矛盾があたかもブルジョア社会の底が抜けたかのように全面的に爆発し始めている。小泉構造改革、小泉・奥田路線の矛盾が爆発し、それへの労働者人民の怒りが噴出している。小泉打倒、小泉・奥田体制打倒のまたとない情勢が到来している。
 われわれは、昨年の8・8−9・11の小泉大反革命
にもかかわらず、「小泉体制は本質的に脆弱で、ガラス細工のようなものだ」と言い切り闘ってきたが、今やそれが全面的に現実のものとなってきている。
 日帝・自民党やブルジョアジーも「年が明けてから運気が変わった。逆風だ」「小泉政権は前途多難だ」などと動揺を深めている。 耐震偽装問題では、労働者人民の住居の安全を奪い膨大な借金を背負わせた詐欺師まがいのマンション建設業界の実態が明るみに出、さらにヒューザーと小泉後継の安倍晋三との癒着さえも明るみに出ている。
 そして、この間株価つりあげのための株式分割、企業買収、粉飾決算などで不正なマネーゲームを展開し、ついに逮捕に至った堀江・ライブドア問題が起きた。その根源は、まさに独占金融資本のための民営化と規制緩和を推進してきた小泉改革、小泉・奥田路線にある。堀江こそ小泉改革のシンボルであり、小泉や武部は、堀江を「君のような若者が政治に入ってくるのは素晴らしい」「若者の模範」と持ち上げ、8・8−9・11の大反革命では徹底的に活用したのだ。
 1月20日、小泉は施政方針演説で「改革なくして成長なし」は正しかったと居直った。しかし民営化・規制緩和の結果もたらされた経済の内実とは、一連のJR事故であり、耐震強度偽装建築であり、ライブドア事件であった。
 数百億円とか数千億円稼ぐ詐欺師まがいの成長企業のメダルの裏側に、膨大な非正規職の月給10万円台とか、あるいはサービス残業で徹夜で働く膨大な労働者群が生み出されてきたのだ。日本経団連が言うところの「工場法以前の状態」がすでにできあがっているのだ。日本資本主義は一社会としてまさに破産し、プロレタリア革命によって打倒される以外にないところに行き着いている。
 小泉は施政方針演説で、@郵政民営化を称揚し、A国・地方の公務員の総人件費削減のために今後5年間で国家公務員5%削減、大幅賃下げのための行政改革推進法案と「市場化テスト」法案を今国会に提出すると述べ、B教育基本法について「速やかな改正を目指し」とし、C改憲に向かっての国民投票法案について「憲法の定めにしたがって整備すべき」と早急な国会提出を表明した。
 日帝は、内外の帝国主義の矛盾の爆発の中にあり、何ひとつ日帝が思うように解決できるものはない。米軍再編は、沖縄の辺野古新基地建設をとっても労働者人民が絶対受け入れることはできない問題だ。座間、相模原、横須賀、岩国などの米軍基地再編も同様だ。米国産牛肉問題で安全無視で輸入再開したら、即座に問題が起きて輸入停止となった。国連安保理常任理事国入りは米帝が承認しない。東アジア自由経済圏構想などは米帝との関係でどうにもならない。靖国神社問題で小泉は強硬姿勢をとり、中国・韓国を強引に屈服させようとしているが、こんなことを中国や韓国の人民が認めるわけがない。米帝ブッシュと一体化しイラクに自衛隊を派兵したが、英豪軍撤退の動きの中で、駐留継続か撤退か、二進も三進もいかない局面に立たされている。
 国内においても、日本経済は破滅的危機に陥っている。日帝にはなんの展望もない。延命のための戦争・改憲と民営化=労組破壊の小泉改革がさらにその腐敗をいっそう促進し、労働者階級人民の怒りの決起を呼び起こしている。
 4大産別の労組を解体し、連合を通じて労働者を支配する策動も、この間の教労の「日の丸・君が代」闘争、国鉄1047名闘争の前進、全逓労働者の郵政民営化反対の決起、自治労大会での沖縄県本部の決起など、4大産別決戦の展開で、事態は日帝と連合の思うようにはまったく進んでいないのだ。
 4大産別を軸とした労働者の階級的団結と総決起で、小泉=奥田体制を打倒する情勢が、今や完全に到来している。

 第2章 連合の改憲勢力化阻止する勝負の時

 連合中央執行委員会は1月19日、「国の基本政策に関する連合の見解(案)」についての取り扱いについて協議した。この内容の核心は「国民投票法案」を今国会で通過させることへの合意を与えようとするものだという点にある。事実上改憲賛成で連合傘下の労働組合、とりわけ日教組、自治労を組織していくことである。徹底的に弾劾し、この反動的策動を粉砕しなければならない。
 1月19日、「再発防止研修」に対する抗議行動が東京都総合技術教育センターで闘われた。被処分者の会は「最後まで闘い抜く」との抗議声明を発した。「日の丸・君が代」不起立闘争は、労働者の「戦争協力拒否闘争」であり、何よりも職場での実力闘争である。これが階級情勢を揺り動かすのは、当局との激突を恐れぬ職場生産点からの決起だからだ。
 教育現場から06年「日の丸・君が代」不起立闘争をかちとろう。2・5都教委包囲・首都圏ネット総決起集会への全力結集を呼びかけて闘おう。
 3月21日の日教組臨時大会は、今国会に提出される教育基本法改悪案と国民投票法案について日教組の条件闘争への転向・屈服を図ろうとするものだ。「日の丸・君が代」決戦を柱とする現場労働者の総反乱でこの日教組本部の裏切り策動を粉砕しよう。
 国鉄闘争は、4大産別決戦の土台をなす闘いであり、戦争と民営化に対決し、改憲阻止決戦の勝敗を決する闘いだ。
 現在、国鉄分割・民営化体制は安全問題で根底的な危機をさらけだしている。尼崎事故、そして羽越線事故。さらには1月24日、JR西日本の伯備線で保線作業中の労働者3人が特急にはねられ死亡する重大事故が起きた。国鉄分割・民営化体制は土台から揺らぎ、国鉄労働運動は分岐・流動・再編過程に入った。
 しかもこの間、川越線、総武線でレールが破断した。動労千葉は直ちに反合・運転保安闘争を再強化し、06春闘の闘争宣言を発した。反合闘争は職場生産点の闘いだ。それは資本との激突を引き起こすが、そこには資本の支配を転覆するプロレタリア革命の萌芽が宿っている。
 動労千葉の反合・運転保安闘争を国鉄労働運動全体の闘いへと拡大し、職場闘争として拡大していこう。 2月16日、鉄建公団訴訟を闘う国労闘争団の原告団、全動労争議団の原告団、動労千葉争議団の原告団と国労闘争団全国連絡会議が主催者となって総決起集会が開かれる。国鉄分割・民営化から19年にして初めて、1047名全体を糾合した統一陣形が生み出された。鉄建公団訴訟と国労5・27臨大闘争弾圧裁判を両輪として1047名闘争の発展をかちとろう。国鉄戦線に今こそ動労千葉派をつくりだし、動労千葉の組織拡大と国労本部打倒・国労再生の闘いを発展させよう。
 小泉・奥田が一体となった公務員制度改革・改憲攻撃に対して、ついに自治体労働者の反撃が始まった。北海道、新潟、兵庫、香川で、大幅賃下げと査定給・地域給導入の人事・給与制度の暴挙に反対してストライキ、時間内職場集会が闘われようとしている。
 自治労臨時大会は、公務員制度改革、平和基本法、国民投票法案が焦点だ。公務員制度改革については連合がすでに政府との協議を開始した。連合中央(高木剛会長と岡部謙治自治労委員長)はスト権を含む労働基本権の公務員への付与に関する政労協議会の設置と引き換えに、民間に準じた能力・実績主義の導入論議や人件費削減論議に応じる姿勢を表明した。
 小泉の公務員総人件費削減と称する大量首切りと大幅賃下げの行政改革推進法案や市場化テスト法案に闘わずして屈服する道を進んでいる。絶対粉砕しなければならない。
 さらに昨年8月大会で「入り口は平和基本法、出口は自衛隊の縮小」と言い逃れて改憲への道を敷いた平和基本法を白紙撤回させよう。「拙速な法制定には反対」という国民投票法案への容認姿勢を徹底弾劾し、国民投票法案絶対反対を貫徹しよう。
 2・9〜10JPU(日本郵政公社労働組合)臨時大会は、連合全逓中央本部が郵政民営化賛成=推進を公然と掲げてアクションプラン2と「働こう運動」を全組合員に強制し、JPUを改憲勢力化する狙いをもって開催されようとしている。
 アクションプラン2では1万2千人の減員と全国の1千の郵便局の合理化が計画されている。郵政民営化は、雇用については〈いったん全員解雇・選別再雇用〉を通じた大量首切りと活動家パージ、労働組合破壊を最大の狙いとしていることは明らかだ。改憲についても本部議案は「7・14連合見解」を全面支持していることは明白だ。
 臨時大会に向けて、全国の全逓労働者のつもりにつもった怒りに火をつけ、連合全逓中央を打倒する闘いを職場からつくりだすことだ。職場での団結を打ち固め、超勤拒否、物ダメ・ストライキの職場生産点での闘いをつくりあげよう。日帝・小泉と連合中央、全逓中央本部が心底から恐れているのはそれだ。

 第3章 沖縄の怒りを先頭に米軍再編粉砕へ

 1月22日、名護市長選挙が行われ、自民・公明推薦の条件派候補が当選した。しかしこれで辺野古への基地移設が決まったわけではまったくない。逆に沖縄の怒りはいよいよ高まっている。3・5県民大会の大成功を突破口に、米軍再編による日米共同の北朝鮮・中国侵略戦争体制づくりに絶対反対しよう。米軍再編と沖縄基地強化に絶対反対し、沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒へ前進しよう。さらに本土の座間、相模原、横須賀など基地闘争の前進をかちとろう。三里塚、北富士、関西新空港闘争はますます重要になってきた。全力で闘いぬこう。
 そして4大産別決戦と結合し、全国で改憲阻止闘争の前進を切り開こう。9条改憲阻止の一点で大統一戦線をつくって闘うことへの日本共産党の敵対は絶対に許せない。日共スターリン主義の敵対を粉砕し、憲法闘争を発展させよう。
 すべての闘う青年・学生と労働者人民は、革共同に結集しともに闘おう。

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週刊『前進』(2232号1面2)(2006/02/06)

 ライブドア問題の根源は小泉=奥田路線にある

  腐敗・腐朽を極める帝国主義

 民営化・規制緩和の帰結だ 

 ライブドア事件は、小泉の民営化・規制緩和の政策が引き起こしたものである。小泉「構造改革」、奥田経団連路線、堀江貴文の経営はいずれも市場原理主義と弱肉強食的な価値観でまったく同じであり、これこそ今回の歴史的な経済詐欺事件の核心問題である。
 ライブドアの偽計・粉飾は次のような仕組みで行われた。
 @ライブドア(あるいはライブドアマーケティング。以下同じ)が実質支配する投資事業組合(*1)を使って他企業を買収する。
 Aしかし、すでに買収した事実を隠し、ライブドアが株式交換(*2)で企業を買収すると発表する。
 Bほぼ同時に、交換に使うライブドア自社株の分割(*3)を発表する。
 C急騰したライブドア株は、交換先の被買収企業を経て投資事業組合に渡る。投資事業組合はこの株を、資金の流れを見えにくくするため海外で売却して莫大な利益を稼ぐ。
 Dこの利益をライブドアに還流させ、ライブドア本体の売上高に算入して粉飾する。04年9月期決算では、計24億円を自社の利益に還流させ、10億円の赤字を14億円の黒字に粉飾していた。
 つまり、投資事業組合というダミーを経由させつつ、株式交換による他企業買収と株式分割という手法を使って、株売却利益を売り上げに算入していたのである。03年以降、このやり方で計6社を買収し、総額で約90億円もの株売却益をライブドアの売り上げとして粉飾していた。こうした手法で、00年の上場時には50億円にすぎなかった株式時価総額を約7700億円にまで膨張させてきた。ライブドアによるプロ野球参入の動きやニッポン放送株の買い占めなどは、この粉飾による株高を背景にしている。ライブドアの経営すべてが、偽計と粉飾で成り立っていたのだ。
 これほどの”錬金術”を可能にしたのは、小泉「構造改革」だ。金融面での規制緩和が必然的に招いた事態にほかならない。
 まず投資事業組合は、04年の「ファンド法」で組合員の資格制限や人数制限が撤廃された。株式会社のように登記の必要もなく情報開示の義務もない。やりたい放題になるのは当然ではないか。
 株式交換による企業買収は、99年の商法改定で認められた。97年の独占禁止法改悪で持ち株会社が解禁されていたが、持ち株会社による子会社設立や企業買収を容易にするために導入されたのが株式交換方式だ。
 株式分割も従来は、株式分割後の額面総額が資本金額を超えてはならない、株式分割後の1株当たり純資産額が5万円を下回ってはならないという規制があった。01年の商法改定でこの規制が撤廃された。ライブドアは1年間で当初の1株が1万株になるほどの膨張が可能となった。
 このように金融制度が資本のやりたい放題に規制緩和されてきた。だから、ライブドア一社の問題にとどまらない。
 小泉は「官から民へ」と言うが、これこそ「民」の正体だ。これこそ資本と資本家の本性だ。民営化・規制緩和は昨年、尼崎事故と羽越線事故、そして耐震強度偽装を引き起こした。そして今、日本経済の中枢での偽計と粉飾という歴史的な詐欺事件となって噴出している。小泉が”郵政を民営化すれば世の中がすべて良くなる”かのような大ペテンで総選挙をやってわずか半年、民営化・規制緩和の恐るべき真実が暴き出されたのだ。

 優勝劣敗の市場原理主義

 小泉の民営化・規制緩和がライブドア事件を引き起こしただけではない。もっと重大なのは、小泉、奥田経団連会長、堀江の価値観がまったく同じであることだ。一言で言えば市場原理主義、弱肉強食、優勝劣敗である。「堀江はルール違反」などと言われているが、堀江の「経営哲学」は小泉「構造改革」、奥田経団連路線と完全に同じものなのだ。この三者が同調しあったところで、今回の事件は起きている。
 昨年の総選挙の際、小泉は堀江を「新しい時代の息吹」「若者の模範」と絶賛し、武部自民党幹事長は「わが弟です、息子です」と持ち上げた。この時、堀江は広島6区で争っている亀井静香に対し、「あの人の話を聞いていると、まるでコミュニスト」と非難した。少しでも弱者救済的な要素があると、それをコミュニストと批判する、それが堀江の思考だ。昨年7月の愛知万博での堀江講演では「格差社会を社会が容認しなければならない」とも公言している。そして、これこそが小泉「構造改革」の主義でもあるのだ。
 小泉「構造改革」のもとで貧富の格差が拡大し、本当に生きていけない労働者人民が膨大に生み出されている。その一方で、「構造改革」の恩恵を受けて、堀江に代表される資本家連中がやすやすと大金をせしめている。これこそ、小泉・奥田・堀江がつくりだしている現実にほかならない。
 堀江は「古い経営者」を非難し、「不道徳というのは価値観の違いだ」とまで言い、旧弊を打ち破るかのようなスタイルをとってきた。もちろん日本の資本主義体制はあらゆる面で行き詰まり、人民の将来不安は広がりつづけている。特に青年・学生は、非正規雇用化の中で、”ニートになりたくなければ堀江のような起業家になれ”という圧力にさらされてきた。「堀江人気」なるものは、そうした体制的どんづまりを背景にしていた。小泉のファシスト的政治の所産そのものでもあった。しかし堀江の実像が暴かれ、「夢」が砕かれた今、資本主義の体制的行き詰まりという現実を直視する以外に道はない。
 青年・学生にとって、資本主義の打倒こそが唯一の未来である。資本主義のもとでは資本にこき使われるしかない。労働組合のもとに団結して闘うなら、必ず自らを解放できる。動労千葉のように闘おう。マルクス主義を武器に帝国主義を倒すために闘うことがライブドア問題への回答だ。
 06年冒頭、ライブドア事件が象徴する形で、小泉改革の矛盾が全社会的に噴出し始めた。4大産別決戦と改憲阻止闘争の展望を開く時が来ている。
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*1 投資事業組合
 複数の投資家から資金を募って運用するファンドのこと。運営の責任を持つ組合員と出資者の間で契約書を交わすだけで設立できる。
*2
 株式交換 現金を使わずに、買い手側が新たに株式を発行するなどして、自社の株式を被買収企業の株式と交換するやり方。被買収企業が債務超過に陥っていても”価値ある企業”とごまかし、新株をたくさん発行する。
*3
 株式分割 1株を複数株に分け発行株式数を増やすこと。理論的には株価は下がるが、実際に新株が発行されるまで50日前後かかるため、一時的に品薄状態となり株価は急騰する。

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週刊『前進』(2232号2面1)(2006/02/06)

 “すわって示そう戦争反対” 「不起立宣言」運動を呼びかけ

  関西の教育労働者のアピール

 大阪では、全国に先駆けて2月24日から府立高校の卒業式が始まる。1月13日に大阪府教委通知が出されて攻防が開始された。奈良では、「君が代」実施を阻止してきた奈良市内の学校を中心に激烈な闘いの渦中にある。関西の闘う教育労働者は、「すわって示そう戦争反対!」をスローガンに昨年秋から不起立宣言運動を呼びかけ、12・23集会を大成功させて、1月27日に予定されている府教委交渉から2・4決起集会へ、全力で取り組んでいる。卒・入学式闘争を全力で闘おう!

 教職員への起立強要が焦点 大阪

 1月13日に出された大阪府教委通知は、「国を愛する心を育てる」ために「国旗掲揚及び国歌斉唱が適切に実施されるよう格段の配慮を」と言っている。文面は一昨年からほとんど同じだが、「適切に実施」の中身をめぐって、攻撃は年々激しさを増してきている。
(写真 東京の被処分者・根津公子さんを招いた集会に200人を超える労働者がかけつけた【05年12月23日 大阪】)
 府教委は、府立学校長への口頭指導の中で、「旗は演壇正面に。歌は式次第に入れて斉唱で」などと、具体的に「望ましい形」を指示している。さらに、毎年4月に配布する「府立学校への指示事項」(市町村教委向けの「要望事項」も同じ)の中で「教員は教育公務員としての責務を自覚し、国歌斉唱に当たっては起立するとともに節度ある行動をとること」を強調し、今回の通知にもこれを再録して、教育労働者の不起立闘争や抗議発言を抑え込もうとしてきた。
 各学校現場では、これを一歩でも半歩でも押し返すための攻防がすでに始まっている。
 今、全国で教育労働者を始めとする公務員労働者に対する大幅賃下げと、地域間・職種間格差の拡大、査定級の全面導入、中間管理職導入による団結破壊の攻撃がかけられ、4月からの実施に向けた決戦の渦中にある。大阪では、「評価・育成システム」という名の新勤評と「首席・指導教諭」の導入問題が、大幅賃下げをめぐる闘いと一体となって決戦を迎えている。
 闘う教育労働者による広範な自己申告票提出拒否を背景とした闘いによって、昨年末の段階で府教委は、06年度一時金からの評価結果の格差反映を1年間延期するとし、1月に入って、標準以下と評価された者への一時金カットを断念する案を府労連に提示してきた。しかし、小泉政権による公務員労働者への賃金構造改革による大幅賃下げの4月実施と、来年1月からの評価システムの賃金反映による昇給幅の格差づけ開始、再来年度からの一時金への格差導入を絶対に認めることはできない。
 この攻撃と「日の丸・君が代」強制、教育基本法改悪の攻撃は表裏一体のものだ。賃金問題でもっとも冷遇される事務職労働者や青年労働者層を先頭に、大阪教組・府労連の屈服妥結を許さず、「絶対反対」を貫いて闘おう。そして、この怒りを「日の丸・君が代」決戦で解き放ち、総反撃に立ち上がろう。

 百パーセント実施めぐり激突始まる 奈良

 奈良では、昨年の夏休み前後から「君が代」不実施校の校長が市教委から呼び出され、百パーセント実施に向けた強烈な「指導」が水面下で行われてきたが、1月に入って、そのほとんどの学校の職員会議で卒業式での実施方針が校長から出されてきた。これに対して、労組交流センター教育労働者部会の労働者を先頭に、組合の枠を越えて教育労働者たちが総反撃して闘っている。
 奈良県の「日の丸・君が代」実施率が低いとされる背景には、部落解放運動と解放教育の歴史と伝統がある。また、部落解放同盟本部派が裏切りと転向を深めるなかで、差別の歌と戦争の旗を拒否してきた部落解放同盟全国連合会の部落大衆と戦闘的教育労働者の闘いによって、「君が代」を完全に阻止し、「日の丸」も式場内に入れさせないできたのだ。この共同闘争と教育労働者の団結を解体・一掃しようとする攻撃が、改憲と教育基本法改悪の大攻撃の中でうち出されてきたのだ。
 一斉実施攻撃との決戦は、全国を揺るがす位置を持ってくるに違いない。勝利の方針は、教育労働者を先頭に、生徒・保護者を巻き込んだ不起立闘争の広範な組織化と、闘う日教組運動の再生にある。労働者人民の公然たる非協力・総反撃の闘いで、「日の丸・君が代」強制の攻撃を打ち返していこう。

 東京の被処分者に連帯して集会

 昨年12月23日、「すわって示そう戦争反対!12・23集会」が開催された。東京から、昨春の卒・入学式における「日の丸・君が代」不起立で停職1カ月というもっとも重い処分を受け、さらに度重なる「再発防止研修」強要の攻撃を受けながら、不屈に闘う教育労働者・根津公子さんを招いて行われたものだ。大阪市立住まい情報センターのホールには、200人を超える教育労働者と市民がかけつけた。
 根津さんは、免職を含む重処分の脅しにも屈することなく、教育労働者の良心にかけて戦時下の攻撃と闘う決意を90分にわたって語った。
 この発言を受けて、関西各地で「日の丸・君が代」攻撃と闘う教育労働者や保護者から、根津さんへの激励と自らの不起立宣言の表明が次々とかちとられた。式場内で起立を強要された保護者や、来賓席で不起立を貫いたPTA役員。決戦必至の情勢にある奈良の教育労働者。「日の丸・君が代」強制を一歩でも二歩でも押し返そうとして、児童・生徒を中心とした卒業式を提案して、同僚の青年を組合に獲得して頑張る教育労働者。教組の分裂をのりこえて職場組合をつくって団結を守り、改憲・教育基本法改悪の流れをはね返そうと呼びかける教育労働者。
 その他多くの発言を受けて、「日の丸・君が代」被処分者を中心とした「すわって示そう戦争反対!」実行委員会からまとめと行動提起が行われた。集会参加者一人ひとりが根津さんの分身となり、不起立闘争を関西各地でくり広げていくこと、1月27日に多くの団体に呼びかけて府教委交渉に立ち上がること、卒業式を前にした2・4決起集会に再結集し、府下全域で卒業式へのビラ入れを組織して、闘う東京の仲間たちと連帯して広範な不起立闘争を闘うことが訴えられた。

 不起立を貫いて教基法改悪阻む

 昨年春の関西の不起立宣言運動は、3月末までに330人もの広がりを示し、大阪を中心に数万人もの教育労働者・生徒・保護者の抵抗闘争がかちとられた。これが東京での不起立闘争の決戦に全国から連帯する決定的な闘いとなっていった。
 9・11総選挙後の情勢と改憲攻撃の強まりの中で、闘いはいよいよ厳しく激しくなっていく。今春の「日の丸・君が代」決戦は、憲法・教育基本法決戦そのものとして、より広範に闘われなければならない。関西の不起立宣言者は、すでに12月下旬段階で140人に迫り、その後、200人を目指して広がっている。2月5日に、昨年を超える不起立宣言を持って東京の集会に駆けつける。
 全国の闘う教育労働者は、各地で不起立運動を組織して首都決戦に呼応し、30万人の日教組を牽引(けんいん)して、教育基本法改悪阻止・改憲阻止の闘いに立ち上がろう。
 〔森川聡史〕

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週刊『前進』(2232号2面3)(2006/02/06)

 また労働者がJRに殺された 伯備線事故を徹底弾劾する

 またもJRで重大な死傷事故が発生した。1月24日午後1時20分頃、JR西日本の伯備線・根雨−武庫間で、保線作業中のJR西日本社員3人が岡山発出雲市行き下り特急「スーパーやくも9号」にはねられ死亡した。事故で殺された労働者はJR西日本・米子支社の米子保線区・根雨保線管理室に所属し、1人は国労組合員だった。
 JRは、西日本では昨年4月25日に107人の命を奪った尼崎事故を発生させ、東日本では昨年12月25日に羽越線で5人を死亡させた大事故を起こしたばかりだ。国鉄分割・民営化体制下で、鉄道の安全は崩壊の危機に直面している。
 事故の責任は何よりも、線路閉鎖の措置もとらず、列車を走らせたまま、その間を縫うような形で保線作業を行わせたJR西日本にある。事故で殺された労働者は、大騒音を発して振動する「タイタンパー」で線路内の敷石を突き固める作業を行っていた。こうした作業を、列車運行の合間に行わせること自体が、安全無視もはなはだしい。
 マスコミは、現場責任者が次に来る列車の方向を間違えていたことに事故の原因があるかのように報じているが、当日は「スーパーやくも9号」は約15分遅れで運行しており、現場を通過する列車の順序が入れ替わっていた。しかも、特急の遅れは、現場責任者が午後1時12分頃、米子支社の輸送指令に携帯電話で連絡を取った時に初めて伝えられたという。そのわずか8分後に、特急が100`のスピードで現場に突っ込んできたのだ。
 事故が起きた時間帯は、列車の運行間隔は最大で30分しかなかった。ところがJR西日本米子支社は、「作業時間や運行状況の頻度から線路を閉鎖する必要がないと考えた」と述べている。ここでも「定時運行」はすべてに優先され、安全は片隅に追いやられていた。こうしたJRの姿勢が、この事故を引き起こしたのだ。
 この事故では、特急列車とは反対方向にだけ見張り要員が立てられていたことが問題になっている。だがそれも、現場労働者の「ミス」や「勘違い」で済ませられることではない。線路上では、予期せぬ事態は常に起こりうる。両方向に見張りを立てることもできない人員で作業を行わせていたこと、その背後にある大合理化=人員削減こそが、事故の原因なのである。

 反合・運転保安確立へ闘おう

 安全は労働組合の闘いなしに守ることはできない。
 尼崎事故後、JR西日本は大わらわで「安全性向上計画」を策定した。JR連合・西労組はもとより国労西日本エリア本部の上村革同もこれに飛びつき、「労使の信頼なくして安全なし」と言い立て、「労使協議」で安全が確保できるかのようにうそぶいてきた。
 だが、現場においてJRの安全無視の姿勢は根本的には何も変わっていない。今回の事故はこのことをはっきりと突き出した。
 いったい分割・民営化以降、どれだけの保線労働者が触車事故で殺されてきたのか。今回は国労組合員も殺されたのだ。その怒りを今こそ全面的に解き放ち、動労千葉を先頭にすべての国鉄労働者が反合・運転保安春闘に決起し、JR体制を食い破る闘いに立とう。

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週刊『前進』(2232号3面3)(2006/02/06)

 連合中央 公務員制度改革に屈服 春闘方針でも大裏切り

 改憲勢力化の策動強める

 今日、4大産別決戦と06春闘の勝利のために、連合中央のまったく許し難い裏切り、反労働者的な策動を批判し、これと徹底的に対決することは、必須不可欠の課題である。公務員制度改革や06春闘をめぐって、また改憲阻止闘争をめぐって、連合中央は、郵政民営化への全面屈服に続き、断じて許せない裏切りの道を進んでいる。
 連合中央の制動を突き破って、教育労働者の「日の丸・君が代」不起立闘争と動労千葉の反合・運転保安闘争を先頭に、4大産別決戦と06春闘の戦闘的爆発をかちとろう。そして職場からの反乱で連合の労働者支配を突き破り、帝国主義を打倒する戦闘的・階級的労働運動の前進をかちとろう。
 連合の反労働者性は、第一に今年の最大の決戦課題である公務員制度改革の攻撃に完全に屈服し、その先兵に転落したことである。

 公務員改革で政労協議開始

 小泉政権の「公務員制度改革」は、国家・地方公務員に対する大規模な人員削減、賃下げの攻撃であり、あわせて戦後地方自治制度を解体し、新たな中央集権体制を形成して戦争国家への大転換をはかろうとするものだ。しかも、その一切のテコとして自治労など公務員労働運動の解体が狙われているのである。
 この大攻撃に対して、総力を挙げて大反撃に立つべき時に、連合は、公務員の総人件費削減に反対してきたこれまでの方針を大転換し、政府の「行政改革の重要方針」を大筋で承認し、1月16日から政府との政労協議を開始した。これには、岡部自治労委員長(連合副会長)も加わっている。「協議の行方によっては、自ら削減案を打ち出すことも検討する」としている。労働組合の自殺行為に等しい裏切りである。
 日帝は、改憲と戦争国家化のためには、自治労・日教組・全逓・国鉄など旧官公労系労働組合の戦闘力を解体することが不可欠であるとして、決定的な攻撃をかけている。逃れられない決戦であることを見据えて組織の存亡をかけて闘う以外に、自治労の明日はない。その時に、敵前逃亡とは一体何ごとか!
 連合幹部は「肉を切らせて骨を断つしかない」(朝日新聞1・13付)などと大見栄を切っている。だが、背中を見せて逃げ出していて、どうして「骨を断つ」ことができるのか!
 スト権など労働基本権の獲得をバーターでめざすと言っているが、まったくのペテンでしかない。労働基本権は、「公務員制度改革」粉砕の決戦を、組織の存亡をかけて全力で闘ってこそ、その力関係の中で初めて、奪われたものを奪い返せるのである。それなしに、支配階級が、公務員労働者にスト権を付与するなどと期待することは、まったくの幻想でしかない。

 経団連と一体で賃闘を抑圧

 連合中央の大裏切りは、第二に、06春闘方針で日帝・経団連に完全に屈服していることである。官民問わず吹き荒れるリストラと賃下げ、賃金制度改悪、雇用破壊などの大攻撃に対して、連合中央は何ひとつ闘わず、ストライキひとつ打たず、ズルズルと後退と屈服を重ねてきた。
 まったく闘わない連合中央、労組幹部に対して、「組合員の生活も権利も守れなくて、なんのための組合か」と組合員の怒りと不満が高まり、「今年こそ大幅賃上げを」という闘いの気運が高揚している。この中で危機に立つ連合中央は、わずかばかりの「賃金改善」要求で、組合員の怒りと闘いの爆発を抑え込もうとしているのだ。
 1人当たり平均年間給与額は98年以降、年々減り続け、04年(438万8千円)は97年(467万3千円)と比較すると実に30万円近い減収となっている(国税庁「税務統計から見た民間給与の実態」)。そして、06年度は所得税や個人住民税の定率減税半減や厚生年金保険料の値上げ、高齢者医療費窓口負担の値上げなど、負担増の攻撃がこれでもか、これでもかと労働者家庭に襲いかかろうとしているのだ。
 ところが連合中央の対応はどうか。階級的に団結して賃金の底上げをめざす統一ベースアップ要求を否定し、成果主義賃金など格差賃金を全面的に受け入れる立場から、一部の労働者についての「賃金改善」要求を掲げているに過ぎない。しかも労働者への犠牲の転嫁で大企業は空前の利益を上げているというのに、掲げた要求額は基幹労連が3000円(2年分)、電機連合が2000円、UIゼンセン同盟2500円などという低額だ。
 連合・高木は次のように言っている。
 「『少しバランスを改善して』という意味で実質的な賃上げをお願いする」「ヨーイドンで1万円、2万円上げてくれ、という話をしているわけではない。『控えめで理性的な要求』をしているのだから、そこは考えてほしい」(朝日新聞1・14付)。
 なんという、資本家どもに奴隷的に屈服した言い方か。労働者は、資本家によってとことん剰余労働を搾取されている。労働者に支払われる賃金は、労働者が労働力を再生産するための、かつかつの費用でしかない。それすらをも危機に立つ資本家どもが削りこんで、労働者階級を塗炭の苦しみに追いやっている時、労働者は階級的に団結し、ストライキの力を武器にして資本家階級と対決し、職場からの反撃に立つべきなのである。それなのに連合中央は経団連に屈服し、資本の存立を脅かす労働者の闘いの爆発を押さえつけようとしているのだ。
 06年版経労委報告は、「激しい国際競争と先行き不透明な経営環境が続く中、国際的に見てトップレベルにある賃金水準をこれ以上引き上げることはできない」と述べている。連合・高木はあろうことか、この報告を「評価できる」と述べ、経団連と労資一体で労働者を国際競争に駆り立てようとしている。
 経労委報告は、労働者の職場からの反乱を心底恐怖し、労働者の意識改革で資本に忠実な労働者をつくり出そうとしている。そのために「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)という考えを持ち出している。その狙いは、資本にとってもっとも効率よく雇って自由にクビを切れる非正規雇用労働者を大量につくり出すということである。同時に労働組合・労働運動を否定するものである。ところが、連合は経団連と同様にこの考え方を「連合白書」に盛りこんでいる。
 こんな連合の言いなりになっていたら、労働者は一切の権利を奪われ、資本によって身も心もボロボロになるまで働かされ、「使い捨て」にされるだけだ。
 連合中央の屈服と裏切りを粉砕し、一律大幅賃上げ要求を掲げて、06春闘を職場から戦闘的に闘おう。

 国民投票法案に賛成の方針

 第三に、昨年、労働者の闘いによって改憲勢力化を阻止された連合中央が、なんとしても加盟組合全体を改憲勢力化させようと策動を強めていることである。
 連合は、1月19日に中央執行委員会を開いた。そこで、昨年の大会で「承認」を得るに至らなかった「7・14改憲見解」については、「統一的に対応することは現段階では控える」とした。連合内加盟組合から強い反対があるためだ。
 だがその上で、改憲への決定的な攻撃である「国民投票法案」について、「早急に、民主党とも協議しながら具体的な対応を図っていく」と意思統一した。
 民主党はすでに国民投票法案賛成−9条改憲の立場であり、したがって「民主党とも協議しながら」とは、連合が国民投票法案に、民主党とともに賛成するということだ。それは、9条改憲に向かっての重大なステップである。
 日本共産党の「赤旗」1・20付は、この1・19連合中執の決定を報道して、あたかも連合が「7・14改憲見解」の貫徹をいったん止めたかのように報道しているが、それはとんでもない誤りである。連合が国民投票法案の推進を決めたことは、「改憲見解」の線で自治労中央も日教組中央も突き進め、組合内の反対運動を押さえつけろと、号令をかけているのだ。
 改憲は、日帝の体制的死活のかかった延命戦略であるが、日帝は大きな困難に直面している。依然として広範な労働者人民が9条改憲に反対しており、改憲攻撃を粉砕する展望は大きく存在している。06−07年の巨大な大衆的闘いで国民投票法案を粉砕し、敵階級が国民投票に持ち込むことなどできない情勢をつくり出そう。そうして日帝の延命の道を断ち、日帝打倒へのプロレタリア革命の大きな血路を切り開こう。

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週刊『前進』(2232号4面1)(2006/02/06)

 3・5沖縄県民大会 10万人大決起を

 名護市長選の結果について

  新基地阻止へ真に闘う者の団結をつくりあげよう

 1月22日に沖縄・名護市で市長選挙が行われた。この選挙の結果について正しい認識をもつことは、06年の階級攻防、とくに1〜3月の決戦攻防の階級的全構造を理解する上できわめて重要である。4大産別決戦を闘う労働者階級人民と日帝国家権力との関係はこの選挙の結果、どうなったのか。改憲決戦と一体であり、その中身そのものでもある米軍再編と日米安保同盟の大強化、新たな安保・沖縄決戦にとって、それはどんな意味をもったのか。

 名護市民が示した強固な反対の意思

 結果はすでに報道されているように自民・公明推薦で岸本現市長の後継者として出馬した島袋吉和氏(元名護市議会議長)が16764票で勝利した。名護新基地反対を掲げ、社民・共産・社大の3党と反自公の立場で自民党から離脱した下地幹夫(衆議院議員)が推薦し、北部地区労や自治労北部総支部など労組3団体も推薦した我喜屋宗弘氏は11029票。また、同じく新基地反対を掲げて単独立候補した大城敬人氏は4354票をとった。我喜屋、大城両氏の得票をあわせると島袋に1381票の差である。政府と自民党はこの選挙結果を、〈名護の基地誘致派が反対派に大差で勝利〉したものとして描き出そうとしている。沖縄においても〈大差で島袋氏が勝利〉という表現もなされてはいる。しかし、これはどう分析しても大差の勝利とはいえない。8年前の名護市民投票のときの票差(2372票差)を大差ではないと言って無視した連中が、今度は基地反対派に対する大差の勝利と強弁しているだけのことである。4年前の市長選では、住民投票の時の代表者・宮城康博氏が現在の岸本市長にダブルスコアで敗北した。その選挙戦は、沖縄サミット直後の最悪の状況をはね返して、3分の1の絶対反対派がぎりぎりの存在を示した意義ある闘いであった。
 今度の選挙結果が示していることは、この4年間で名護における絶対反対派が増大したという事実である。それは、政府を破綻(はたん)に追い込んだ辺野古の実力闘争、とりわけこの2年間展開された海上攻防戦の勝利が作り出したものである。反対派陣営としては候補者が2つに分裂したままで行われた選挙であったにもかかわらず、名護市民は保守・自公派に僅差(きんさ)の勝利しか与えなかった。それは、まさに現地の実力攻防の勝利が作り出した結果である。
 OTV(沖縄テレビ放送)などの事前の世論調査において、名護市の有権者の54%は名護新基地絶対反対だった。36%が条件による反対(賛成)、無条件賛成は3%強しかいなかった。その数字におびえた島袋(岸本)陣営は、昨年10月の日米合意(「中間報告」)にたいして候補者全員が反対だから米軍再編・新基地問題は争点ではないと必死で宣伝した。島袋は、自分も新基地建設の現在案には反対、問題は今後の名護市とやんばる(沖縄本島北部)の経済振興である、その点において県と一体で国と対応していくことが自分のスタンス、と主張した。現在の政府案に反対という建前をとっている稲嶺知事が名護に乗り込み必死で島袋を応援する一方、自民党中央や政府関係者は誰も応援に現れないという「異様」な選挙だった(現れたらマイナス)。
 このような状況のもとで、しかも辺野古の「命を守る会」やヘリ基地反対協としても誰を支持するか明らかにできない(しない)という状況の中で選挙は行われた。現地闘争主体は、真剣な討論を経て、闘争主体の団結を守ることを最優先にするという結論に到達し、それを実践しぬいた。
 選挙戦の過程では、頭越しの候補者決定(現地闘争主体無視)に対する怒りや、選挙での分裂が闘争現場に持ち込まれることに対して、辺野古の実力闘争陣形を守り発展させる立場でどう対応するかが問われ続けた。辺野古の闘争主体は、この厳しい試練の時を見事にのりこえつつある。それは完全にのりこえられなければならない。
 今度の選挙は、そのようなものとして「わかりにくい」複雑な選挙であった。にもかかわらず、島袋はわずか1万6千票しかとれなかった。かつての岸本の得票を大きく減らした。この事実が重いのである。基地誘致派ははっきり後退したという事実が突きつけられているのだ。
 沖縄県民レベルでは依然として、8割以上が県内移設に絶対反対である。その中で、名護現地において、しかも複雑な構図の選挙において、強固な反対の意思表示が再びなされたのだ。
 したがって、政府と自民党が、「反対派2人を足した数よりも多いのだから大差だ」「名護市民は基地を選択した」などと言っているのはどんな現実的裏づけもない空虚な言葉でしかない。

 始まった3月「最終報告」を巡る大攻防

 たしかに島袋陣営は選挙戦の最中から、飛行経路をずらす位置の修正を行えば名護市として受け入れ可能というサインを出している。公式にも、島袋は、当選直後の談話で、現行案には賛成しないが、もし政府から修正案が提案されれば協議に応じるという態度を表明した。
(写真 “基地は絶対作らせない”と56隻の抗議船で大浦湾を海上パレード【05年12月23日 名護市】)
 防衛庁などが、飛行経路の若干の変更案を示すことによって名護市を手玉に取ろうとしていることに警戒感をもっている稲嶺知事は、すぐにも政府側との交渉に引き込まれかねないこの島袋の言動に対して、あくまで県とともに一致して進むことを確認させた。
 日帝・政府は、3月の「最終合意」までに政府案で名護市を屈服させようと直ちに動きだしている。自民党の山崎拓は25日には名護に入った。山崎は傲慢(ごうまん)な態度で「3月までにはたっぷり時間はある」などと語っている。
 一方、この選挙の直後に小泉は、通常国会冒頭の施政方針演説を行った。そこで、小泉は、「現在のところ、沖縄特措法は検討していません」と言明した。これは、3月までになんとかして名護市を落とさなければいけない、新市長をそのための交渉に引き込まなければならないという追いつめられた立場からのだましの政治的発言である。小泉は「現在のところ検討していない」と言ったにすぎない。日帝・小泉は基本的に問答無用で沖縄を屈服させるという脅しの態度を崩していない。
 言うまでもなく、昨年10月の日米合意は、けっして「中間的合意」などではなく、今度の米軍再編に関する最終的な合意としてなされた。「中間報告」という表現自体がペテン的なのである。しかも沖縄普天間基地移設に関する現在の「沿岸案」は、日米のぎりぎりの交渉を経てようやく合意にこぎ着けたもので、それを日本側から動かすことはほとんど不可能だ。実際、小泉や防衛庁・政府関係者は「現在案を修正することはできない、名護市との話し合いは政府案に賛成してもらうためのもの」と強調している。
 この点で、選挙の直後に上京した稲嶺知事に小泉が相変わらず会おうとしなかったことには意味がある。稲嶺に会ったのは、額賀防衛庁長官と小池沖縄担当相、安部官房長官であるが、彼らは、稲嶺が出した「米側に嘉手納のF15の訓練中止申し入れを政府として行ってほしい」という要求をその場で拒否した。
 これは現在の沖縄と日帝政府の関係(「溝の深さ」)をよく現している。沖縄を屈服させるとか取引に引き込むといっても、普通の方法ではできないのだ。単なる「話し合い」では不可能だと言っていい。日帝・小泉はファシスト的・強権的な手法で押し切ることをすでに決断しているのだ。

 労働者の力で全島ゼネスト的決起へ

 こうした形で、名護市長選挙後の政府と名護市・沖縄県との駆け引きが直ちに始まった。全国の米軍再編関連の各自治体は、緊張してそれを見守っている。名護市との「交渉」いかんで各自治体と政府の「取引」にも大きな影響が出てくるのは明らかだからである。だが言うまでもなく、問題は各自治体と政府の駆け引きにあるのではない。日米関係と日帝の国家存亡、改憲の成否をかけた決戦、戦後革命期のような階級的人民的大決戦がこのようにしてついに始まったということだ。それは4大産別決戦を闘う日本労働者階級の決戦テーマそのものである。
 3月の日米の米軍再編「最終合意」の期限を前に、沖縄を先頭にしたギリギリの階級的対決が全国で一気に煮詰まる。今度の名護市長選は独特の形でその始まりを告げた。重要なことはこの選挙は何事をも決定せず、帝国主義と労働者階級人民の非和解的対決構造をさらに深めただけということだ。あらゆる意味で勝負はこれからだ。しかし、3月までの攻防で歴史的な階級決戦の位置取りは大きく決まるのである。
 この3月までの「期限」の中で、沖縄で準備されている3・5県民大集会の位置が決定的に大きい。稲嶺と自民党はこの県民大会を超党派県民大会とすることを拒否した。したがって、95年の大田知事を先頭にした10万人大集会とはその構図は違っている。だが日帝政府との階級的対決における位置という点では、95年を超える。95年と同じ会場で開かれるこの県民大集会を文字どおり10万人大決起としてかちとらなければならない。
 3月「最終報告」を不可能にたたき込もう!
 昨年の8月自治労大会にたたきつけられた沖縄の怒りは全国の労働者階級の階級としての魂を揺さぶった。それは沖縄にもはねかえり、島ぐるみゼネスト決起を労働者階級の力で切り開こうという気運が高まっている。基地労働者は、全軍労のように闘おうという合言葉を掲げ始めた。3・5沖縄は全国闘争である。全国の労働者階級の力で全島ゼネスト的決起へ闘おう。学生、青年労働者はその先頭に立とう。

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週刊『前進』(2232号5面1)(2006/02/06)

 改憲阻止へ反撃態勢を構築しよう

 4大産別軸に職場・地域・学園から巨大な憲法闘争の隊列を

  東山整一

 2006年の日本階級闘争は、卒・入学式における「日の丸・君が代」をめぐる闘いを最先端に、教労、自治体、全逓、国鉄の4大産別をめぐる、それぞれの大会、中央委員会をはさむ熾烈(しれつ)な攻防戦として火ぶたを切った。これらの闘いはそれ自体が政治的に言えば連合の改憲勢力化を阻止する闘いであり、現在の改憲攻撃における最大の火点をめぐる闘いということができる。改憲情勢は、通常国会への国民投票法案提出の動き、さらに米軍再編と連動した9条改憲の切迫化として、新年とともにさらに急を告げている。この中でいまわれわれは、4大産別決戦を徹底的に闘い抜くと同時に、それと並行して、全国の職場、地域、学園に憲法闘争としての憲法闘争の柱を立ち上げるという重大な階級的課題に直面している。そしてこの両者を新指導路線のもとで正しく結合して06年の闘いを構築していかなければならない。それは憲法闘争にとって必要であるだけでなく、4大産別決戦を05年の地平を越えてさらに前進させてゆくためにも必須の課題になっている。いまこそ「改憲決戦に断固として踏み込んで行く」(本紙新年号1・1アピール)ことが待ったなしに求められているのである。

 改憲の最大の焦点は第9条の2項にある

 改憲攻撃−憲法闘争の最大の焦点は言うまでもなく第9条(戦争放棄)の改悪である。昨年10月に発表された自民党の新憲法草案では、同条1項には手をつけず、2項の戦力・交戦権の放棄のみを変え、「自衛軍の保持」を定める内容になっている。1項がそのままとなったのは、直接にはこれによって新憲法においても「平和主義」の建前だけは維持し、特に民主党や連合などを改憲派に取り込もうとするためである。だが騙(だま)されてはならない。
 そもそも9条1項の「戦争放棄」の文言は、それだけでは実際に戦争を阻むものとはなりえない。2項とセットになって初めて意味を持つものである。「戦争放棄」を抽象的に謳(うた)うだけでは戦争へのどんな歯止めにもならないことは、すでに歴史が教えている。
 1928年のパリ不戦条約は、「締結国ハ、国際紛争解決ノ為戦争ニ訴フルコトヲ非トシ……国家ノ政策ノ手段トシテノ戦争ヲ放棄スルコト」を宣言したが、それはまったくの空文句でしかなかった。逆に「自衛のための戦争は不戦条約の適用対象ではない」とされることにより、各国帝国主義が「自衛」の名で次々と侵略戦争にのりだすことを正当化していくものとなったのである。
 日本は29年にこの条約を批准しているが、天皇の軍隊はその2年後には柳条湖事件を、さらにその6年後には盧溝橋事件を起こしている。それらはパリ不戦条約との関係で「満州事変」「支那事変」などと呼ばれたが、それは第2次世界大戦への先鞭(せんべん)をつけた中国侵略戦争そのものであった。
 今日の日帝は、自らが準備している戦争を「事態」などというさらに訳の分からない言葉(「周辺事態」「武力攻撃事態」など)を持ち出して糊塗(こと)しようとしている。だが用語をどんなに変えて人民を欺(あざむ)こうとしても、帝国主義の最後の言葉が戦争であることは昔も今も何ひとつ変わらないのであり、現憲法第9条1項などそれだけでは帝国主義者にとってなんの障害にもならないのである。
 問題は2項である。ここで新憲法草案が「自衛軍保持」を打ち出していることについてまず言えることは、「自衛」とか「自衛権」という概念を、その主体である国家の階級的性格と切り離して論じてはならないということだ。近代日本国家はまぎれもなく帝国主義国家として存在し続けてきたのであり、帝国主義とは世界市場の覇権をめぐる経済的・政治的争闘戦の果てに必ず侵略戦争・帝国主義間戦争に行き着くという本質を持っている。かつて「大日本帝国」は、あの「大東亜戦争」をも「自存・自衛のための聖戦」と呼んだのである。
 日本共産党に一貫して見るような、「アメリカの言いなりの戦争には反対だが、真の自衛戦争は必要」などという議論は、日本という国家の階級的・帝国主義的性格を没却し、「北朝鮮の脅威に備えろ」などという転倒した扇動を行う排外主義者に道を明け渡す極めて犯罪的な主張なのである。
 しかも自民党新憲法草案における第9条の二では、このような古典的意味での「自衛」、すなわち「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保」が謳われているのに続いて、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」などが「自衛軍」の任務として列記されている。そしてこれは、昨年10月の米軍再編中間報告「日米同盟・未来のための変革と再編」における「二つの分野」、すなわち「日本の防衛および周辺事態への対応」と「国際的な安全保障環境の改善のための取り組み」に対応した極めて実戦的な規定なのである。「現実と憲法の乖離(かいり)を埋める」などという水準のものではないのだ。
 米軍再編は、在日米軍と日米安保を北東アジアから中東にいたる「不安定の弧」をターゲットにした軍事戦略と軍事同盟に再編し、こうして米帝の世界戦争政策に自衛隊を限りなく融合・一体化しようとするものである。それは60年制定の現行安保条約(78年旧ガイドラインと97年新ガイドラインをとおして大きく変貌してきたのだが)を、「世界の中の日米安保」に実質的・根底的に大改変し、自衛隊の本格的な帝国主義軍隊への決定的飛躍を促すものである。そして辺野古沿岸案に代表される沖縄米軍基地の恒久化=新たな「琉球処分」の大攻撃、あるいは座間への米日陸軍の司令部機能の集中などによって準備されているのは、何よりも中国・北朝鮮侵略戦争態勢の構築である。
 だがこの前に決定的に立ちはだかっているのが憲法第9条なのだ。第9条は2項を持つことによって、パリ不戦条約とも決定的に異なり、いわば帝国主義国家の自己否定に等しい内実を持った。それが日米(帝国主義ブルジョアジー)共同の作業をとおして現行憲法の中核に盛り込まれたのは、制定時(46年)の戦後革命の危機がそれだけ深刻だったからであり、また特にこの瞬間において天皇裕仁の戦争責任を不問にするための「避雷針」としてそれが必要だったからである。
 50年に朝鮮戦争が始まり、52年に旧日米安保条約が登場するや、米帝は早くも日本政府に激しく再軍備=9条改憲を迫るようになる。こうして戦後日本史を貫く憲法と安保の対抗軸が形成され、その後日本政府は9条を無視・蹂躙(じゅうりん)して安保と一体の自衛隊とその増強の道を突き進んできた。だが日帝は安保に依拠する一方で、他方では日本人民の闘いに規定されながら、再軍備に一定のワクをはめ、9条そのものには手をつけることなく今日まできたのである。戦後自民党政府のもとで、憲法第9条と日米安保は一方では鋭く対立しながら、他方ではもたれあってきたのだ。
 だが米軍再編で事情は一変した。その中から今日立ち現れつつある(これまでの安保とはまったく次元を異にする)新安保は、9条改憲とそれによる集団的自衛権の全面解禁を絶対的に必要としている。新安保は新憲法を不可避とし、特に9条改憲を激しくたぐり寄せるのであり、両者は完全に一体にものとしてある。もはやそこにはこれまでのような解釈改憲的な曖昧(あいまい)さが残る余地はなく、米帝の世界軍事戦略への一体化、とりわけ中国・北朝鮮侵略戦争の準備を結論とする9条明文改憲に、日帝は文字どおり死を賭(と)して踏み出そうとしているのである。

 憲法の原則を否定し「国民の責務」を強調

 改憲の核心は9条であり、日帝が今一刻の猶予もなしに必要としているのも9条改憲だが、しかし9条の現行憲法と戦後日本国家において占める位置の大きさゆえに、それはけっして部分改憲にとどまらない全面改憲にならざるをえない。日本経団連は昨年1月の提言で、まず9条と96条(改正手続き)の改訂を突破口とする改憲手法を主張し、最近一部の政治家(船田元自民党憲法調査会長)も「段階的な改正が現実的」などと言い出している。船田発言は、「3年以内、08年には最初の問いかけを実施したい。以降5年に1回ずつ、段階的に、2回か3回かけて新しい憲法の姿にするのが現実的だ」「3党間の非公式な議論でも『一括改正は駄目』がコンセンサス。現憲法の章ごとに、3〜5問にまとめて○×で問うのが一番いいと思う」(千葉日報1・13)という極めて生臭いものである。
 一括か段階的かはもちろん重大な問題だが、いずれにせよそこで目指されているのが全面改憲であることは、昨秋の自民党案が「新憲法草案」と銘打って出されたことでも明らかである。こうしてそこでは、9条だけではなく、前文を含む数多くの条項が全面的に書き換えられているのだが、そこで9条改憲と並ぶ論点を一言で言うとすれば、それは近代憲法の原則の否定ということになるだろう。
 もともと近代憲法は、近代ブルジョア国家成立の中での国家と個人の対峙関係において、基本的人権の保障と権力の分立によって国家権力を縛り、個人の尊厳を守ろうという趣旨で生まれた。現行憲法の前文はこうした憲法原則に昨日までの戦争への反省を踏まえた平和主義をプラスしたものだが、自民党草案はこれを一変させた。
 中曽根の手になる超復古反動的前文案こそ退けられた(これも民主党などを取り込むため)ものの、それに代わって出てきたのはいかにも小泉的な前文である。それはまず「象徴天皇制の維持」を冒頭に掲げ、また現前文の「平和のうちに生存する権利」などの文言を一掃し、さらに小泉的な”戦争と民営化”の政策原理を憲法原則にまで高めるために、国民主権、基本的人権、平和主義と並んで「自由主義」や「国際協調主義」を基本原則とし、「自由かつ公正で活力ある社会の発展」を謳っている。そして一番重要なのは、「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し」と記している点だろう。
 つまり、「国民の権利」と並んで「国民の責務」が前文からゴリゴリ強調されているところに、この草案のもうひとつの決定的な特徴があるのだ。そしてこれに対応するのが草案第12条で、ここでは「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う」とされているのである。
 現行憲法第12条で基本的人権の限界として言及されているのは周知のように「公共の福祉」である。これは少なくとも理論的には、他者の基本的人権を侵さない限り基本的人権は妨げられないという、最低限の制約を意味している。しかもこの「公共の福祉」という制約は、基本的人権でも主に経済的自由権に関わって存在した。
 これが「公益及び公の秩序」に変えられるということは根本的な転換である。それが意味するのは結局のところ精神的自由権を含む基本的人権全体の上に国益と国家の秩序を置くということであり、これは近代憲法の原理・原則の否定以外の何ものでもない。
 旧明治憲法も、一応憲法の体裁をとるために「権利」を掲げた(もっともそれは「臣民の権利」だった)が、そこにはいちいち「法律ノ範囲内ニ於テ」などの制約がついた。たとえば「言論著作印行集会及結社ノ自由」は謳われたが、それは新聞紙条例から治安維持法にいたる無数の言論・表現・結社取締法によってまったく有名無実の存在であった。だが自民党新憲法草案における「公益及び公の秩序」という制約は、ある意味でこれ以上に無茶苦茶である。要するにここにあるのは、人民が国家を縛る憲法ではなく、国家が「国民の責務」を定め、強制し、人民を上から縛ろうという「憲法ならざる憲法」なのである。
 憲法とは言うまでもなく国家の基本法である。そこで問われるのは、国家であり、国体であり、国柄であり、国のかたちである。それを部分的に手直しするというのではなく全面的に変えるということは、つまるところ革命と反革命の問題に関わってくる。実際、明治憲法は、近代日本において未完に終わったブルジョア革命と言うべき自由民権運動を圧殺し、取り込むための予防反革命として登場したのであり、現行憲法はまさに戦後革命を絞殺するためのGHQ主導の「上からの革命」の最大の切り札として誕生した。
 今日の新憲法制定=全面改憲の攻撃もまた、没落帝国主義・日帝の断末魔的危機の中で、その原因を帝国主義の矛盾にではなく、戦後的「平和と民主主義」(これ自体はもちろん天皇制の温存を含むあらゆるマヤカシに塗りたくられたものであったが)に求め、それを根こそぎ一掃しようとする巨大な反革命として立ち現れているのだ。そしてこの一大反革命がそのまま戦争に直結しているものとして、われわれは今日の新憲法制定攻撃をとらえなければならない。「つくる会」派の歴史教科書における15年戦争の賛美、そして公民教科書における「人権のインフレーション」論は、一体のものとしてこのような改憲攻撃のイデオロギー的先駆けの役割を担っている。

 労働者の団結の力で改憲攻撃を打ち破れ

 であるとすれば当然にも、改憲への道が平和的で、民主主義的で、予定調和的なものになどなるはずがない。それは必ず起伏に富んだ、波乱に満ちた激突的攻防局面、本質的に内乱的な、連続的・長期的な攻防過程にならざるをえないのである。
 敵日帝ブルジョアジーの立場に身を移して問題を考えれば、事柄はいっそうハッキリと見えてくる。現在の各種世論調査でも、9条改憲反対は6割を占めている。これを国民投票で大きくひっくり返すことが敵には求められているのだ。確かに昨秋の総選挙で小泉自民党は圧勝した。しかしあれも、結果はあくまで小選挙区制というフィルターをとおして生じたものであって、得票数そのものでは与野党は半々だったのだ。
 しかし憲法をめぐる国民投票で、投票率もかんばしくなく、しかも賛成は過半数ギリギリというのでは、(個別法ならいざ知らず国家の基本法たる)憲法が憲法たりえなくなる。なぜなら憲法とは本質的に権力の問題であり、そこでは基本的にゼロか百かが問われるからだ。まして日本の憲法は天皇をシャッポにいただく憲法である。憲法第1条になんと書いてあるか(ここは現行も自民党案も同じ)。「天皇は日本国民統合の象徴」として「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と謳っているのだ。
 もしこのような条項をもった憲法草案に対する反対票が何割も出るとすれば、それは支配階級にとって何を意味するか。分かりやすく言えば、それは「日の丸・君が代」斉唱のときに何割もの教員と生徒が着席したままであることを意味する。これでは「国民の総意」が看板倒れになる。逆に言えば、改憲攻撃の全過程においては、いま教育現場で教育労働者に襲いかかっているあくまで百パーセントの起立を求める攻撃と同じ質を持った攻撃が、日本の全労働者人民を対象に発動されるということである。だからそれは必ず反革命クーデター的やり方にならざるを得ないのであり、「一括か段階的か」という改憲手法をめぐる議論も、結局のところこのクーデターのやり方をめぐる議論と言ってよいのである。
 一方では必ず翼賛体制づくりの攻撃が進むだろう。この間チラホラ語られ始めている「大連立」が改憲攻撃を射程に入れたものであることは明白である。07年参院選挙までは民主党も応じないだろうが、それ以降は分からない。大きな鍵(かぎ)を握っているのが連合の動向である。他方ではここからはみ出した「非国民」に対する治安攻撃がエスカレートしてゆく。近代刑法の原則と例外を逆転させたような共謀罪はそのための最も凶暴な武器となるだろう。
 そしてこうした新憲法制定という名の反革命クーデター攻撃をいわば合法的に完遂するために今国会にも提出されようとしているのが「憲法改正国民投票法案」である。ここで重刑をもって「国民投票運動」を禁止されているのが、公務員、教育者、外国人であることは、日帝が「国民の総意」を結集する上でどこに障害があると考えているかをよく示しているのである。
 最後に、このような反革命クーデター攻撃が、大なり小なりファシズム運動的な傾向を伴って襲いかかってくることも見逃してはならない。1930年代のドイツ階級闘争に「ヒットラーの匕首(あいくち)伝説」という言葉がある。第1次大戦でドイツは負けた。しかし、それはドイツ軍が弱かったからではない。「内部の敵」がドイツ軍を背後から匕首で脅かしたから負けたのだ。社会主義者、共産主義者、労働組合、そしてユダヤ人こそ「内部の敵」だ!――こうしてヒットラーは、敗戦後の、あるいは大恐慌下のドイツ人民の不満と怒りをここに集中し、そうすることで「第3帝国」の建設と第2次大戦への階段をかけ上っていった。
 すでに明らかなように小泉はヒットラーの手法の立派な後継者である。昨年の総選挙における小泉自民党の圧勝は、「抵抗勢力」と命名された「内部の敵」に対する怒りを扇動することによって、実は小泉構造改革によって最も大きな犠牲を強いられている人民の支持をかすめ取ることに成功した。
 だが同時にこの間のJR尼崎事故から耐震強度偽造問題、さらにライブドア事件などにおいて露呈しているものは、民営化と規制緩和の小泉=奥田路線の矛盾の全面開花である。小泉構造改革の底が割れ、そこから広範な人民の怒りが噴き出しつつある。労働組合、公務員、戦後教育、在日朝鮮・中国人などという「内部の敵」に怒りをそらし、そうすることで自己のアクロバット的延命に突き進もうとする日帝・小泉路線の化けの皮は完全にはがれ落ちた。これに対する怨嗟(えんさ)と怒りの声が爆発的に拡大しつつある。階級闘争の最深部からの転換が始まったのだ。05年における11月労働者集会にいたる、われわれが切り開いた地平はその最先端に位置している。
 だからこそいま、4大産別決戦が重要なのだ。ファシスト反革命をうち破る力は、根本的にただ労働者階級の階級的団結の中にのみある。特に地域からの全人民的な憲法闘争への決起にとって、住民と結びついた自治労と教労の存否はまさに死活的である。そしてだからこそ今、日米韓国際連帯が重要なのだ。憲法問題は必ず国際問題化する。新憲法制定が新たな中国・北朝鮮侵略戦争と直結しているだけに、国際連帯は憲法闘争の生命線である。
 改憲情勢の煮詰まりの中で、広範な労働者人民の中に激しい危機感と闘いへの意欲が急速に高まっている。最大限の統一戦線の形成を望む大衆的な欲求が強まっている。今日、憲法闘争の最大の障害になっているのが、「排除の論理」を振り回して運動のセクト的分断・私物化に専念する日本共産党の存在である。われわれはこの現実を、原則的な党派闘争と大胆な統一戦線を正しく結合することによってのりこえ、うち破り、職場・地域・学園から幾百千万労働者・市民・学生の憲法闘争の隊列を形成するための闘いを今こそ開始しなければならない。

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週刊『前進』(2232号5面3)(2006/02/06)

 習志野 イラク派兵に抗議 極秘の早朝出発に怒り

 1月26日早朝、陸上自衛隊の第9次イラク派兵部隊の習志野駐屯地(千葉県船橋市)からの出兵に対して、ゲート前で抗議行動を行いました。派兵部隊は東京都練馬区の第1師団に合流してから出国する。百万人署名運動千葉県連絡会は、極秘の早朝出発を許さず、集まった市民や議員とともに声を限りにアピールを続けました。そして7時30分、駐屯地内から隊員100人を乗せたバスが出発しました。
 「この戦争は資本家の儲けのための戦争だ」「戦争へ行けと命令する小泉こそ労働者、自衛官共通の敵だ」「隊員のみなさん。勇気をもって命令を拒否しよう」との訴えは確実に自衛官に届いていると思います。習志野駐屯地は「習志野空挺団」と呼ばれる日本版グリーンベレーが配置されており、昨秋以来、百万人署名運動は広範な市民とともに何度も要請行動を続けてきました。これからもいっそう取り組みを強化していきたいと思います。
 一方、100人の派兵だというのに「日の丸」を振って見送りに来たのはたった3人。その中には「新しい歴史教科書をつくる会」で暗躍している右翼議員もいます。日本の労働者からもイラク派兵は完全にそっぽを向かれています。
 (投稿/K・W)
(写真 駐屯地からバスで出発する隊員に「この戦争は資本家のための戦争だ」「命令を拒否しよう」と訴えた【1月26日 船橋市】)

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