ZENSHIN 2006/04/17(No2242 p06)

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週刊『前進』(2242号1面1)(2006/04/17)

 自民・公明が政府案の4月国会提出を狙う

 教育基本法改悪絶対粉砕へ

 労働者階級の底力を爆発させ改憲阻止決戦の巨大な創造を

 入管法改悪と共謀罪阻止しよう

 教育基本法と憲法の改悪に反対する3・31全国集会と国会デモは、日比谷野音に4000人が結集して圧倒的に闘いとられた。この成功に続き、国鉄1047名闘争の勝利とJR採用差別事件の勝利解決をめざす4・4全国集会が、同じく日比谷野音に4600人を結集してかちとられた。国労、全動労、動労千葉の闘争団・争議団・原告団を先頭に、国鉄闘争勝利の闘う大同団結が、力強い前進を示した。この二つの集会は、1〜3月「日の丸・君が代」不起立闘争の爆発と動労千葉の3月反合・運転保安春闘の貫徹の地平をさらに継続・発展させる、素晴らしい闘いとなった。3・14法大弾圧を粉砕した勝利も決定的だ。この4月、法大当局の不当処分と立て看・ビラ禁止攻撃を打ち破り、国鉄を軸として4大産別決戦の前進をかちとろう。そして4〜6月改憲阻止決戦の爆発へ進撃しよう。 

 第1章 世界で労働者が嵐のように決起している

 フランスを始め全世界で、労働者人民の決起が嵐のように起こっている。
 ドイツでは統一サービス産業労組と金属労組IGメタルの2大労組がストに突入し、イギリスでは公務員労働者150万人が80年ぶりという規模のストを打った。アメリカでは移民労働者ら数百万人が、移民を「犯罪者」扱いする攻撃を弾劾し全米でデモに立っている。韓国の民主労総は非正規悪法絶対阻止でゼネストを闘っている。
 そして「歴史上の階級闘争がつねに決着にいたるまで闘いぬかれた国」(エンゲルス)であるフランスで、初期雇用契約(CPE)の撤回を求める労組、学生・高校生の闘いが2カ月にわたって闘われ、3月28日と4月4日には300万人のゼネストとデモが爆発した。交通機関やガス・電力・郵便などあらゆる産業でストが行われ、大学や高校は占拠・封鎖されている。学生・高校生は鉄道や高速道路も占拠し、街頭で警官と激突している。まさに労学一体の実力闘争が政権を追い詰めているのだ。
 イラク・ムスリム人民、パレスチナ人民の民族解放・革命戦争と全世界の労働者階級の決起が結合し、今や帝国主義を揺るがしている。革命的情勢が接近し、世界革命が胎動している。労働者階級こそ帝国主義を打倒し未来を開く主体だ。国鉄を先頭とした日本の4大産別決戦も、完全にこの世界の闘いと連動しているのである。
 こうした情勢のただ中で3・14法大弾圧を粉砕した闘いは、素晴らしい勝利だった。しかし本当の勝負はこれからだ。4月は法大決戦である。怒りの反撃は開始されている。29人の学生が奪還された後も、署名やカンパが継続して寄せられている。広範な労働者人民の怒りと危機感がある。これと結びつき当局の不当処分を絶対に粉砕しよう。立て看・ビラ禁止を打ち破ろう。大学をファッショ的支配が横行する戦争と改憲攻撃の巣窟(そうくつ)にしてはならない。
 フランスの学生・高校生、青年労働者の嵐の決起に続こう。3・14法大弾圧粉砕の勝利をバネとして、全国学生は改憲阻止ゼネストの実現へと突き進もう。

 第2章 4大産別決戦でさらに前進を切り開こう

 1〜3月「日の丸・君が代」強制拒否の闘いは、石原・都教委の10・23通達を無力化し、監視・現認体制を崩壊させつつ爆発した。処分の恫喝がかけられ、不起立しそうな人や担任教師さえ式場外に出される中で、処分を恐れぬ教育労働者の不屈の決起が闘いを牽引し、都高教でも被処分者数を超える人びとが不起立を貫いた。その7割が初めての人だった。
 労組交流センターを始め多くの支援も全高校への卒業式ビラまきに決起した。闘う国労闘争団も立った。弁護士も57校で約70人が弾圧監視行動を闘った。06年の不起立闘争は不死鳥のごとく貫徹され勝利した。
 これに対し危機を深める石原・都教委は3月31日、33人に不当極まる処分攻撃をかけてきた。5度目の不起立を闘った義務制の教育労働者は停職3カ月、不起立者10人が嘱託不採用とされた。ファシスト石原の理不尽な暴挙に、結集した300人が怒りの糾弾をたたきつけ、戦争協力拒否の闘いを貫くことを誓い合った。処分攻撃は根底から破産しているのだ。
 この「日の丸・君が代」強制拒否の決戦と、杉並を先頭とした「つくる会」教科書撤回の闘いは、戦時下の労働運動・階級闘争の最も鋭い戦略的対決点であり、屈服と変質を深める日教組を再生していく決定的な闘いなのだ。
 「日の丸・君が代」不起立闘争と並ぶ3月闘争のもう一方の柱は、動労千葉の反合・運転保安春闘の貫徹だった。動労千葉は「闘いなくして安全なし」を真っ向から掲げ、組合的団結を堅持し、1千人の当局職制の監視をはね返して安全運転闘争を貫徹した。さらに旅客と貨物で春闘ストを断固うち抜いた。この闘いには予想を超える支持と反響が寄せられた。
 動労千葉は生産点から権力・当局資本と全面対決し、戦争・民営化の攻撃と闘ってきた。そして勝利を開いている。この動労千葉の闘いの偉大な戦略的意義をつかみ、この動労千葉の労働運動を全国鉄戦線の、全国・全世界のものにしていくために闘おう。
 動労千葉の不屈の原則的闘いを最先端に、4・4全国集会の闘う大同団結を発展させ、1047名闘争勝利、国労5・27臨大闘争弾圧粉砕へと前進しよう。尼崎事故1周年の4・24集会の大成功をかちとろう。 
 小泉の郵政民営化攻撃は、JPU本部の屈服と妥協のもとで、4月末要員計画発表、7月新会社帰属方針公表、9月帰属決定(本人通知)というテンポで強行されようとしている。しかしこれは郵政労働者の屈服が前提の計画だ。6月全逓大会と代議員選に向け、屈服と裏切りのJPU本部を打倒し、職場からの決起で民営化を粉砕しよう。
 行革推進法案や市場化テスト法案が4月3日に衆院特別委で審議入りした。日帝・小泉=奥田の公務員大量首切り攻撃との闘いは、いよいよ正念場だ。1・19連合中執会議決定の大屈服、「攻めの行革」を求める2・14日本経団連提言の大反動と、今こそ徹底対決しなければならない。自治労5月中央委(長岡)と8月大会に向け闘おう。

 第3章 公務員の大量首切りを狙う行革推進法案

 4〜6月は国会の反動法案との闘いが山場となる。
 第一は、入管法改悪と共謀罪だ。指紋制度復活と退去強制事由新設を柱とする入管法大改悪のための法案は、3月30日に衆院を通過した。共謀罪攻撃に先行している。参院での成立阻止のために全力で闘わなければならない。政府・与党は「現代の治安維持法」=共謀罪を4月中にも審議入りさせようとしている。与党だけでの強行も狙っている。4月の闘いで成立を絶対に阻止しよう。
 第二は、行革推進法案とその関連法案だ。これは国家公務員・地方公務員の大量首切りと公共部門の民営化を推進する大攻撃である。同時に小泉後も行革・民営化攻撃を継続することを狙う。日帝は国と地方を合わせて1059兆円という天文学的な累積赤字にあえぎ、民営化・労組破壊と公務員労働者の大量首切りで危機を反革命的に突破しようとしている。自治体労働者を先頭に行革推進法案を粉砕しよう。
 第三は、自己負担増と病院からの追い出しで高齢者医療を切り捨てる医療制度改革法案だ。日帝自身に責任がある財政危機を口実とした攻撃の、もう一方の柱が社会保障制度の解体と消費税などの大増税である。医療などの窓口負担増、保険料引き上げ、給付削減の攻撃に、労働者の根底的な怒りをたたきつけよう。
 第四は、教基法改悪と国民投票法案だ。自民と公明は教基法改悪の与党案を4月上旬にもまとめ、今月中に政府案として国会に提出し、成立させようとしている。9月の退任まで求心力を保持したい小泉と07年参院選前に懸案を仕上げたい公明党の反動的利害が一致した重大情勢である。改憲のための国民投票法案は、すでに法案提出に向けて31項目の論点整理が始まっている。改憲阻止の前半の一大決戦として、この両法案を絶対に粉砕しよう。

 第4章 9条の破棄と基本的人権の原理的な解体

 百万人署名運動が呼びかけ、集会実行委が主催した3・19イラク反戦国際行動の「憲法9条を変えるな」の叫びをもって、改憲阻止決戦のスタートが切られた。1〜3月闘争の地平を引き継ぎ、今や4〜6月改憲阻止闘争へと本格的に踏み出していく時だ。
 米帝ブッシュはアフガニスタン・イラク侵略戦争で、すでに世界戦争の過程に突入している。日帝・小泉はイラク多国籍軍に参戦し、米帝との日米枢軸政策に踏み切っている。こうした中で米日帝は、北朝鮮・中国侵略戦争と世界戦争のための米軍再編に全力をあげ、日帝は9条改憲の衝動を強めている。教基法改悪は侵略戦争への「国民精神総動員」の攻撃であり、改憲の一環だ。また国民投票法案こそは直接に改憲強行のための攻撃だ。
 日帝が改憲(新憲法制定)でやろうとしていることは、第一に、戦争否定の現行憲法第9条を破棄し、「自衛軍」の保持と海外での「武力行使容認」に大転換することだ。しかし帝国主義国家の「自衛権」や「自衛軍」を容認することは、帝国主義の侵略戦争・世界戦争を認めることだ。第2次大戦の惨禍をまた繰り返すことだ。これは労働者階級人民の命にかけても阻まなければならない。
 第二に、「侵すことのできない永久の権利」と規定された基本的人権を根本的に解体し、憲法を国家を縛り制限するものから、逆に国家が人民を支配・抑圧するものへと原理的に転換することだ。これは近代ブルジョア革命が絶対主義との流血の闘争によって打ち立てた近代憲法の理念の原理的否定である。
 日帝・小泉が狙っている国民投票法案は、自治体労働者や教育労働者の改憲反対の言論と運動を禁止するばかりか、改憲批判のメディアも徹底的に弾圧する、暗黒の法律である。
 日共系の人びとが言うように国民投票法案が成立しても投票で反対多数を示し改憲を拒否すればよいというのは、犯罪的でまやかしだ。改憲が国民投票に掛けられたら権力とメディアが総動員され、昨年秋の小泉の郵政解散―総選挙のような事態がより大規模に演出されるのだ。
 今国会への国民投票法案の提出と成立を絶対に阻止するために、4〜6月改憲阻止闘争の爆発をかちとろう。日本共産党の統一戦線破壊を許さず、9条改憲反対で広範な共同闘争を組織し、集会や署名運動などの大運動をつくりだそう。
 改憲阻止決戦は4大産別決戦の前進を軸とし、それと一体的に結合した闘いである。さらには米軍再編粉砕、名護新基地建設阻止など新たな安保・沖縄闘争、全国基地闘争とも固く結合した、戦後最大の一大階級決戦である。
 フランスの労働者、学生・高校生の壮大な決起に続き、日本の人民も猛然と立とう。その闘いのただ中でプロレタリア自己解放の思想と新指導路線で武装された革共同を建設しよう。

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週刊『前進』(2242号1面2)(2006/04/17)

 4・4国鉄集会 1047名の解雇撤回へ

 勝利めざし当事者が総団結

 “共通の武器手に闘おう”

解雇撤回・J R復帰へ4600人の参加者が一斉にこぶしを突き上げた(4月4日 日比谷野外音楽堂)

 国鉄闘争は1047名の大同団結を実現した大きなうねりの中で、勝利の路線を確立する新たな分岐・流動・再編の過程に入った。
 4月4日、東京・日比谷野外音楽堂で「国鉄労働者1047名の総団結で不当解雇撤回!JR採用差別事件の勝利解決をめざす!4・4全国集会」が開かれ、4600人の労働者が結集した。この集会は36人の学者・文化人らが呼びかけ、2・16集会を契機に結成された被解雇者1047名連絡会が中心となって準備された。4600人の大結集は、国鉄闘争勝利にかけた労働者階級の熱い期待を示している。
 フランスでの300万人スト・デモや韓国・民主労総の闘いを始め、全世界で労働運動は新たな高揚期に突入した。4・4集会は、日本の労働運動がこれに呼応し、真に階級的発展を遂げるための課題は何かを鋭く突き出すものになった。
 集会呼びかけ人の芹澤寿良・高知短期大学名誉教授が「勝利解決まで1047名を全面支援しよう」と集会の趣旨を明らかにした。
 同じく呼びかけ人の中山和久・早稲田大学名誉教授は「1047名の解雇撤回を中心に団結権確立の運動を強めよう」と発言した。
 呼びかけ人の小森陽一・東京大学大学院教授が改憲との闘いを訴え、大内裕和・松山大学助教授は、「日の丸・君が代」強制に不起立で抵抗した教育労働者への処分発令を弾劾し、「国鉄分割・民営化による被解雇者と『日の丸・君が代』の被処分者を中心に新自由主義、戦争政治に対抗する新たな労働運動をつくり出そう」と強調した。

 訴訟に言及しない国労本部

 佐藤勝雄・国労本部委員長の発言は、「政府に解決を求める」と言うだけで、鉄建公団(旧国鉄清算事業団、現鉄道運輸機構)を相手に訴訟を起こす姿勢はみじんもなかった。たまりかねた国労組合員・闘争団・家族から「訴訟をやれ」とやじが飛んだ。佐藤委員長は「国労は組織の混乱を克服した」と言うが、彼らは組合員を警察に差し出した5・27臨大闘争弾圧について居直り続けている。集会に参加した5・27臨大闘争弾圧の被告たちは満面に怒りをあらわにした。
 この日、鉄建公団前での行動を貫き集会に結集した国鉄闘争共闘会議の二瓶久勝議長も、「1047名の仲間すべてがすぐに裁判を打ってこそ1047名の団結強化になる」と訴えた。
 満場の拍手の中で被解雇者が登壇した。国労闘争団全国連絡会議の神宮義秋議長は「政府、鉄道運輸機構の不法を追及し1047名と奮闘したい」と述べた。
 動労千葉争議団の高石正博さんは、「2・16集会で1047名連絡会が結成された。長い闘いが続くが、皆さんとともに闘い続ける」と決意を述べた。また動労千葉の安全運転闘争に対してJR東日本が処分を意図して組合員への事情聴取を始めたことを弾劾し、「安全闘争を主力に闘い、JRを引っ張り出すことが1047名闘争を勝利に導く」と断言した。
 全動労争議団の森哲雄さんは、「切実な要求の実現へ、1047名が力を合わせて闘おう」と訴えた。
 国労闘争団・鉄建公団訴訟原告団の酒井直昭団長は、「大同団結とは共通の武器で相手に向かうということだ。国労の仲間に、裁判という同じ武器を手にして一日も早く立ち上がるよう訴えたい」と強調した。
 呼びかけ人の山口孝・明治大学名誉教授が、「小泉行革のあらしに対し、解雇反対の闘いを大きく広げ、民主主義の危機に立ち向かおう」と集会をまとめた。
 参加者は、「1047名の解雇を撤回しろ」のシュプレヒコールを響かせて、東京駅前を通り常磐橋公園までのデモに出た。
(写真 デモに出た動労千葉の隊列。動労千葉の反合・運転保安春闘は1047名闘争勝利の路線を示した【数寄屋橋交差点】 )

 政治解決路線との決別を!

 国鉄闘争は大きな分岐点に立っている。国労本部は、この期に及んでも鉄建公団を相手にした訴訟に一切言及しない姿勢をとった。「未提訴」の国労闘争団員は、権力・資本に屈した国労本部に自らの命運をゆだねることなく、自身の力で鉄建公団訴訟に立つべきだ。それが1047名の大同団結を維持し解雇撤回を実現する唯一の道だ。
 この3月、安全運転闘争とストライキを闘いぬいた動労千葉は、国労闘争団や全動労争議団とともに会場前方に陣取り、集会を牽引(けんいん)した。大事故を続発させるJR体制にJR内部から立ち向かってこそ、1047名の解雇撤回・JR復帰をかちとることができるのだ。
 全労連中央はこの集会への不参加を決めて脱落し、全労連内の一部勢力は動労千葉排除に躍起となった。国労本部は1047名の闘い全体を政治解決=和解路線にねじ曲げようと狙っている。これらの策動を打ち破り、勝利の路線を打ち立てよう。動労千葉が呼びかける「民営化・規制緩和と闘う4・24労働者総決起集会」に結集しよう。
 国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会は、のぼりを林立させて会場を圧した。権力・資本からの独立は労働組合の絶対的な存立条件だ。国労本部の弾圧加担を許さず、国労を再生させる闘いも正念場を迎えた。
 1047名の階級的団結を打ち固め、解雇撤回を闘いとる決戦に躍り込もう。

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週刊『前進』(2242号2面1)(2006/04/17)

 3・31全国集会 教基法改悪に4000人の怒り

 「愛国心教育」の先は戦争

 卒業式闘争 被処分者に大きな拍手

(写真 石原・都教委の「日の丸・君が代」強制と闘いぬき、ついに「10・23通達」を破綻させた東京の教育労働者に、惜しみない拍手が送られた【3月31日 日比谷野音】)

 3月31日、大内裕和、小森陽一、高橋哲哉、三宅晶子の4氏が呼びかけ人の、教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会が主催する「教育基本法・憲法の改悪をとめよう!3・31全国集会」が東京・日比谷野音で開催された。寒風吹きすさぶ中、会場を埋める4000人の労働者・市民が参加し、急迫する教育基本法改悪案の国会提出を阻もうと誓い合った。
 司会の女性が冒頭、「4回の全国集会を行い、03年3月の中教審答申から3年、教育基本法の改悪をとめてきました。しかし昨日、与党は4月中に教育基本法改悪法案を提出することを決めました。今日は国会デモを行い、一人ひとりの改悪反対の声を国会に届けよう」と訴えた。
 呼びかけ人4氏がそれぞれ発言した。小森さんは「小泉政権は憲法を改悪する手始めに教育基本法の命を奪おうとしている。自公だけで、しかも密室で決めてしまうなど許されない。教育基本法を変えたら、子どもたちは人殺しする物に変えられてしまう。絶対に勝利しよう」と訴えた。
 高橋さんは第2次大戦中の映画「敵は幾万ありとても」を紹介して、「教基法改悪は学校をファシズムの場にしていく」と述べ、日本政府を相手取って賠償と謝罪を求めて提訴した中国・重慶大爆撃の遺族ら原告団を紹介、「愛国心教育の行き着く先は戦死と靖国神社、そして重慶大爆撃だ」と訴えた。
 三宅さんは「都教委が新たな処分を出した。教育基本法10条を書き換えて実施しようとしている、教育行政による教育支配の完成の先取りです。教基法が改悪されたら、国家が教育をとおして国民をつくる法律になってしまう。しかし東京都でも全国でもけっしてあきらめない人びとが抵抗を続けています」と述べた。
 大内さんは「教育現場で戦争協力を拒否する『日の丸・君が代』闘争、陸・海・空・港湾労組20団体の闘い、在日米軍再編・基地強化反対闘争など戦争協力拒否の闘いと連帯し、教基法改悪阻止の闘いを広げよう。合い言葉は『今こそ国会へ!』。ともに闘おう」と呼びかけた。

 “信念貫いて起立を拒否”

 東京の被処分者の会・被解雇者の会・予防訴訟をすすめる会が大挙登壇する中、卒業式の不起立で処分された都立高の教育労働者が発言した。「卒業式の不起立・不伴奏を理由に、本日33人が懲戒処分を受けました。私たちは『日の丸・君が代』強制に対して自らの信じるところに従って起立せず、歌わなかった。東京では03年『10・23通達』以降、三百数十人が処分されています。さらに06年度から学校経営支援センターがつくられ、学校が直接都教委の指導・管理下に置かれる。人事考課制度や強制異動で教員はがんじがらめにされています。東京の闘いは、教育基本法の改悪を阻止し、憲法改悪を阻止する闘いです。ともに闘いましょう」。力強い訴えに大きな拍手がわいた。
 神奈川・愛知・岩手・福岡など各地の闘いが報告され、国会からは日本共産党の石井郁子衆院議員、社民党の福島瑞穂党首があいさつした。
 集会アピールの提案・採択の後、司会が「これから3週間が勝負です。全国で改悪反対の声を巻き起こして、国会提出を阻もう」と訴えて、ただちに国会デモに出た。

 国会提出阻止へ

 教育基本法改悪案の国会提出をめぐって、いよいよ事態は急迫している。自公両党は「教育基本法改正検討会」において、改悪案に新たに盛り込む「愛国心」の表現をめぐって、大詰めの協議を行っている。4月12日の会合で座長の大島理森(元文相)が座長案を提示し、月内にも与党案を取りまとめて、5月連休明けにも閣議決定しようとしているのだ。
 「愛国心」をめぐって与党間で議論されていることは、「祖国日本を愛する心」「郷土日本を愛する心」などの言葉であれば、「『国』が統治機構を意味しないなら、愛国心でも問題ない」とする公明党の主張も取り込めるなどというものだ。こんな密室論議で教育労働者に戦争教育を強制しようとすることなど、絶対に認めることはできない!
 他方、自民、民主、国民新党などの国会議員378人でつくる「教育基本法改正促進委員会」は3月23日、「新教育基本法案」を公表した。そこでは、教育の目標に「愛国心の涵養(かんよう)」を明記し、「宗教的情操の涵養は……教育上特に重視する」という条文まで盛り込んでいる。
 どのように表現しようとも、教育基本法改悪の狙いが戦争教育・愛国心教育の復活であることに変わりはない。さらに教育行政による教育への不当な支配を禁じた現行教基法10条を抹消して、日教組運動を完全に解体することも狙われている。
 日教組が組織の総力をかけて教育基本法改悪阻止へ立ち上がるべきこの時に、日教組本部が掲げているただ一つの方針は「衆議院・参議院それぞれに教育基本法調査会を設置する」ことを求める請願署名である。こんな大裏切りは絶対に許せない。
 今春卒業式において、東京を先頭に全国で教育労働者がたたきつけた「日の丸・君が代」不起立闘争こそ、教育基本法改悪に対する不服従宣言である。衆院の3分の2議席を与党が占めるという恐るべき現実に対して、教育現場から「戦争協力拒否闘争」を巻き起こし、巨万の国会包囲闘争をたたきつけよう。教育労働者を先頭に全労働者の力で、教育基本法改悪案の国会提出を阻もう。
(写真  「教育基本法改悪案の国会提出阻止!」。固い決意でシュプレヒコールを上げた【参議院議員面会所前】)

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週刊『前進』(2242号2面2)(2006/04/17)

 「日の丸・君が代」不起立闘争

 都教委の処分に大反撃

 被処分者先頭に300人抗議

 東京都教育委員会は3月31日、都立高校や養護学校、小中学校の卒業式で「君が代」斉唱時に不起立したことなどを理由に、教育労働者33人に対する懲戒処分を発令した。労働者の戦争協力拒否の正義の闘いを弾圧する暴挙を満身の怒りを込めて弾劾する。
 被処分者の内訳は、高校28人、義務制3人、障害児学校2人。処分の内容は、停職3カ月1人、停職1カ月1人、減給10分の1(1カ月)10人、戒告21人である。また高校卒業式の司会を担当した教員が、その発言内容が「式にふさわしくない」「個人的見解を述べた」として「文書訓告」処分を受けた。
 昨年停職1カ月の重処分を受けながら5回目の「君が代」不起立を貫いた中学校教員Nさんに対する停職3カ月の重処分は断じて許せない。その上に都教委はNさんを、通勤に2時間もかかる学校に異動させた。
 だが、今年初めて不起立した被処分者は20人以上にのぼった。実際の不起立者数は、被処分者の数を大きく超える。式当日の都教委の監視・現認体制が崩れるなど、10・23都教委通達は確実にうち破られつつある。クビ覚悟で不起立を貫く教育労働者の闘いで処分の恫喝は完全に無力化し、また国鉄1047名闘争との合流が進むなど、闘いは大きく前進している。
(写真 都教委に向かって不当処分弾劾のシュプレヒコールを上げる参加者【3月31日 東京・文京区の都総合技術教育センター前】)

  “仲間増やして闘っていく”

 31日午後、処分発令が行われる東京・文京区の都立総合技術教育センター前には「被処分者の会」を中心に300人の被処分者、支援者が集まった。都教委に対する激しい抗議の声が渦巻く中、処分の発令を受ける被処分者は、激励の声に送られて建物の中に入っていった。出てきた時も意気軒高だった。
 停職3カ月の処分を受けたNさんは、「都教委が暴挙をやめるまで、子どもが安心して学校に行けるまで、私はどんなに処分を受けようとも闘い続けます」「行動する人、ノンと言う人の存在が、反動の流れにどれほどブレーキをかけていることか」と語り、ともに闘うことを呼びかけた。
 2度目の不起立で減給処分を受けた都高教の労働者は、「昨年8月に娘が生まれ、家のローンも残っているが、引くわけにはいかない」「都教委が『今回のことについてどのように責任をとりますか』と言うから、『私は教育公務員としての責任を果たしています。私は間違っていません』と告げた。これからも仲間を増やして闘っていく」ときっぱりと決意を述べた。
 抗議闘争には、全国で闘う人びと、教育労働者が続々と合流した。
 また、この処分とは別に社会科の授業内容を理由に研修所送りの処分を受け、都教委や反動都議を相手に裁判で闘ってきた中学校教員のMさんが、まったく不当にも「公務員に不適格」として分限免職された。
 「君が代」不起立の被処分者は4月24日に都人事委員会に対して処分撤回を求める不服審査請求を行おうとしている。この間の人事委闘争は反動都議・古賀俊昭が「人事委が無法地帯と化している」と嘆くほどに都教委・校長を追い詰めている。不当処分を徹底弾劾し、連帯して闘おう。

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週刊『前進』(2242号3面1)(2006/04/17)

 行革推進法案 絶対阻止を

 公務員労働者の首切りと労組破壊こそ法案の狙い

 攻撃の先兵=連合本部許すな

 民営化推進の市場化テスト法案とも一体

 行政改革推進法案が4月3日、衆院行政改革特別委員会で本格的な審議に入った。小泉政権は、@行革関連3法案(行政改革推進法案、市場化テスト法案、公益法人改革法案)、A医療制度改革法案、B教育基本法改悪案、C改憲のための国民投票法案――の4法案を「今国会での最重要法案」と位置づけている。
(写真 石原都政の区移管・民間委託の攻撃と闘う東京清掃の労働者【4・4国鉄1047名闘争のデモ 有楽町】)

 日本帝国主義は今、国家財政の破綻(はたん)と帝国主義間争闘戦の激化、世界戦争危機の中にたたき込まれている。日帝には戦争と改憲、民営化と労組破壊の攻撃を進め、戦争国家への大改造を図る以外に延命策がない。その突破口がこれらの4法案なのである。
 とりわけ行革推進法案は公務員労働者の大量首切りと大幅賃下げ、団結破壊・労組解体を狙い、それをとおして地方自治や公教育、社会保障制度の解体を進め、大増税に道を開く大攻撃だ。
 行革推進法案は、金融資本・独占的大資本の代表、奥田・日本経団連会長らと小泉政権の中枢が経済財政諮問会議で討議し、政府が昨年12月23日に閣議決定した行革推進10項目に基づいて打ち出されている。
 小泉政権は、行革推進法案などで「簡素で効率的な政府を実現するため」と称して「5年間で5%以上の国家公務員の純減」(地方公務員は5年間で4・6%以上)を絶対的目標として掲げ、労働・福祉など労働者階級の生活に直結する部門の公務員を民営化などでどしどし切り捨てる一方、国家権力機構とりわけ治安弾圧を担う公務員を逆に増強しようとしている。
 この行革推進法案とともに市場化テスト法案が提出されている。市場化テストで国家・自治体の事務・業務を大々的に市場開放・民営化し、公務員労働者の職場を奪い、退職に追い込み、行革推進法案の掲げる数値目標を達成しようとしているのだ。
 行革関連3法案は改憲と戦争、戦争国家づくりのための公務員の大量首切り、労組解体の攻撃だ。この狙いと本質をはっきりと見据え、職場の仲間に事態の重大性を訴え、法案成立阻止の闘いに立ち上がろう。
 連合本部は、政労協議で中馬行革担当大臣に「出血整理は行わない」と確約させたと宣伝して、行革関連3法案の最大の核心問題である公務員労働者の首切りが無いかのようなウソ・インチキをふりまいている。
 しかし、想起しなければならない。1987年の国鉄分割・民営化が何であったのかを。40万人いた職員を20万人に、2人に1人の首を切る攻撃だったではないか。この大リストラをテコに国鉄労働運動の解体を狙い、総評を解散に追い込んだのではないか。
 今日の日本帝国主義の危機は、国鉄分割・民営化時の比ではない。国家財政の破綻の中であえぎにあえいでいるのだ。国と地方の債務残高がついに1000兆円を超え、日帝はもはや解決不能の財政危機・体制的危機に陥っている。どんなに体制を危機に陥れるリスクがあろうが、消費税率を上げ、社会保障費、公務員総人件費を削減する道を突き進むしかない。
 日帝には労働者階級に譲歩する余裕など一ミリもない。退職者不補充による削減にとどまることなど絶対にありえないのだ。
 「3人に1人の首を切る」という行革攻撃の核心をごまかす議論は、すべてウソ・インチキである。
 3月21日付の日本経済新聞は、政府と連合の政労協議に関連して小泉政権の狙いを正直に伝えている。「政府の本当の狙いは制度改革よりも公務員の総人件費の削減にある。能力主義を徹底し、市場化テストなど民との競争に勝てない公務員は整理対象にする仕組みづくりをうかがう。(労働)基本権付与をちらつかせるのは、連合に協力させるための布石にすぎない」    
 では実際に小泉政権は何をやろうとしているのか。

 「雇用調整本部」は首切りのための機関

 首相をトップに官房長官ら関係閣僚による「国家公務員雇用調整本部」と地方ブロック単位の「地方推進協議会」を設置し、官邸主導で国家公務員の配置転換や採用抑制を断行する方針を提起している。
 この「雇用調整本部」「地方推進協議会」は、首切り推進本部そのものだ。
 小泉政権は、民間委託に伴う民間企業への転籍も視野に「国の行政機関以外への移籍」も検討するとしている。実際に、市場化テストなどで民営化された職場の公務員労働者は、他の職場への配置転換、地方自治体への出向、民間会社への転籍や再就職を迫られる。
 市場化テスト法案には、公務員が数年間、民間に移籍して業務を続けた後、役所に戻っても、官と民で働いた期間分の退職金が支給される「特別退職制度」の新設が盛り込まれた。政府は3〜5年で省庁復帰を想定していると言うが、「業務の効率化に真剣に取り組むかどうかは本人次第」とも言う。復帰の保証など初めからまったくない。
 そもそも民間会社は公務員の受け入れを拒否することもできる。受け入れた人員が会社の方針に合わなければ退職に追い込まれる。
 小泉政権は、この首切り計画を確実に実施するためとして「配置転換対象者への説明・説得」を打ち出した。「説得」と称して自主退職を執拗(しつよう)に迫っていくのだ。
 このように、「雇用調整本部」はあくまで公務員労働者の首切り推進本部である。政府の行政減量・効率化有識者会議の座長、飯田亮セコム最高顧問は、雇用調整本部新設方針を決めた3月16日、「これで人員削減がやりやすくなる」と述べているのだ。
 連合本部は、雇用調整本部設置で、配置転換などで現場に退職を迫る先兵になろうとしているのだ。

 自らが指導部になり大反撃を組織しよう

 小泉政権の行革推進法案の目的は公務員労働者の大量首切りと労組解体だ。体制的危機を戦争で突破する以外に道がない日帝にとって、その前に立ちはだかる公務員労働者の闘いと団結を破壊し、階級意識を解体し、「国家に滅私奉公する公僕」に仕立てあげなければ戦争国家は作れない。
 この戦慄(せんりつ)すべき事態を打ち破ることができるかどうかは、公務員労働者の職場からの決起にかかっている。
 階級的自覚に燃えた現場労働者が自らを労働者階級の指導部に押し上げ、攻撃の階級的本質を正しくとらえて決起を呼びかけるなら労働者階級は必ずや壮大な決起を開始する。
 フランスや韓国の労働者の闘いがその現実性を示している。「雇用促進」法なのか「労働者使い捨て」法なのか(フランスの初期雇用契約=CPEをめぐって)、非正規職「保護」法なのか非正規職「量産」法なのか(韓国の非正規職保護法をめぐって)――指導部が階級性を保ち、闘う路線・方針を提起できるかどうかで分岐が生じる。
 小泉=奥田と危機感を共有し「新しいリスクに対応する公共サービス」を叫ぶ連合本部のもとでは、公務員労働者は闘えないどころか帝国主義国家の手先にされてしまう。4大産別(国鉄、全逓、教労、自治体)―公務員労働者を先頭に、全労働者の決起で、行革関連3法案、医療制度改革法案、教育基本法改悪案、改憲のための国民投票法案の成立を阻止しよう。
 (山口 修)

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週刊『前進』(2242号4面1)(2006/04/17)

 自己負担増と病院追い出し

 高齢者から医療奪う大攻撃

 医療制度改悪法案阻止を

 日帝の「国と地方の債務残高」が1千兆円を超えた。小泉は「小さな政府」と称して労働者階級への攻撃を強め、社会保障制度解体と増税によって打開をはかってきた。しかし、このとてつもない財政危機は、帝国主義間争闘戦の激化の中で、日帝の耐久力を根底から奪うものになっている。医療制度改悪法案は、財政破滅に陥った日帝の死活的な体制存亡をかけた攻撃の柱としてある。

 医療費の徹底的削減が狙い

 小泉首相は今国会の施政方針演説で「年金、介護に続き、本年は医療制度の改革を進めます」と述べ、2月10日、医療制度改悪関連法案を国会に提出した。その基本内容は以下のとおりである。
 @予防重視、A医療費の「適正化」、B高齢者の患者負担引き上げ、C診療報酬の引き下げ、D75歳以上の高齢者医療制度の創設、E都道府県単位の保険者の再編・統合。
 この改悪法案の狙いは医療費の徹底的な削減と社会保障の解体である。
 この法案のたたき台は、昨年10月に厚生労働省が発表した「医療構造改革試案」である。これは、06年度の医療給付費28・3兆円が、現行制度のままだと25年度には56兆円に膨れるが、今回の改革をすれば7兆円を削減して49兆円に抑制できるとするものだ(医療給付費とは治療費のうち窓口負担を除いた医療保険から支払われる金)。この「試案」には経済財政諮問会議の見解である「マクロ指標」「保険免責制度」「一般病棟でのホテル・コストの徴収」が書き込まれている。
 マクロ指標とは、「社会保障給付の伸び率の管理」として、名目国内総生産(GDP)の伸び率に高齢者増加率を加味した「高齢者修正GDP」という数値を使うものだ。この指標で伸び率を管理すれば、年々3%以上で増加する医療費を、GDPがゼロ成長という理由でほとんど増加ゼロに抑え込むことになる。必要な医療を暴力的に削減することを求めるものだ。
 保険免責制度とは、患者が外来診療1回あたり一定額を保険外として一律に自己負担する仕組みだ。例えば保険免責額が千円ということは治療費のうち千円までは保険が効かなくなる。治療費が3千円の場合なら保険が効くのは2千円だけ。窓口負担は2千円の3割の600円プラス千円で1600円になる。負担率は5割以上だ。免責がなければ3千円の3割で900円であり700円も上がる。「風邪くらいでは医者に行くな」というのだ。
 日本医師会、病院関係者、患者らが、これはもはや医療保険ではなく、認められないと反対署名運動を展開、わずか2カ月で1800万筆を集めた。その結果、マクロ指標、保険免責制度は今回は盛り込まれず、ホテル・コストも療養病棟のみとなった。しかし、その反動的意図は改悪法案に貫かれている。
 まず高齢者の医療費の窓口負担の引き上げがある。現行制度では、高齢者(65歳以上)の窓口負担は、70歳未満は3割、70歳以上は1割負担、70歳以上の現役並み所得者(夫婦世帯で年収620万円以上)の場合は2割負担となっている。
 それを06年10月から70歳以上の現役並み所得者の最低年収額を620万円から520万円に下げる(対象者が約120万人から約200万人に拡大)。窓口負担もこれまでの2割から3割に引き上げられる。
 次の段階として08年度から70歳以上で75歳未満の高齢者の窓口負担を1割から2割負担に引き上げる。そして高額医療費自己負担限度額も引き上げる。
 すさまじい値上げだ。高齢者から医療を奪うものであり、社会的に抹殺するに等しい。将来的には現役並所得者のみならず高齢者すべての3割負担をにらんだものだ。
 また、昨年10月から介護保険制度の改悪で介護施設への入所時の食費、居住費の自己負担化がすでに実施されている。今度の改悪案は、これを医療制度にも拡大し、08年10月から高齢者の入院時の食費・居住費が医療保険からはずされ自己負担化される。ただし1800万人の反対署名の結果、今回は療養病床に入院する70歳以上の高齢者のみとなった。
 だが、療養病床に入院する高齢者は、食費4・6万円、居住費1・0万円、合計5・6万円の新たな自己負担を強いられる。払えなければ療養病棟から強制的に追い出される。

 療養病床の6割削減も盛る

 改悪案は、医療費抑制の柱に平均在院日数の短縮を掲げている。そのひとつとして、6年かけて現在38万床ある療養病床の6割(23万床)削減を打ち出した。その根拠は「半数がいわゆる社会的入院」という厚労省の調査結果だ。社会的入院とは、入院治療の必要がないのに家庭の事情や介護施設が見つからないなどの事情で退院できない状態と言われているが、この言い方自身が政治的なものだ。
 23万床削減の内訳は、介護型の13万床を11年度末までに全廃、医療型25万床も12年度までに10万床減らし15万床にする。15−17万床は老人保健施設、6−8万床はケアハウス、有料老人ホーム、在宅に移す。
 これは、小泉の反革命的突出である。自民党内でさえ「あまりにも乱暴。このままでは“介護難民”を生み出しかねない」などの声が出た。
 2月15日、厚生労働省は診療報酬改定を発表。医療型療養病床については、医療の必要に応じて患者を3区分し、必要度が一番低い患者に対する入院基本料を今年7月から4450円減額し7640円にするとした。これまでは病院が得る入院基本料は1日で1万2090円だった。減額された療養病棟の患者は病院から退院を迫られる。このままでは行くあてのない高齢者の“介護難民”が7月から膨大に生まれかねない。
 療養病棟にいる高齢者は一片の調査結果で、あたかも「社会的入院」罪という国家財政を食い物にする罪人のように仕立てられて病院を追い出されようとしている。高齢者が介護施設に移ることもできず、在宅で医療と介護を安心して受けられるような体制は何一つ整備せずに一方的に排除している。高齢者とその家族を追いつめ悲惨な生活や自殺などに追いやるだけだ。
 改悪案は、平均在院日数短縮のために、病気を抱えて苦しむ高齢者に対して、病院で死ぬな、在宅で死ねと強要しているのだ。
 自民党の久間総務会長は「治療しても治らないようなところにはもう金をかけない。年寄りの多くは病院で死んでいるけれども、在宅で死んでもらうように」(05年10月23日「サンデープロジェクト」)と終末期医療を打ち切ることを宣言した。医療制度改悪法案の根本を貫くのがこのイデオロギーである。
 診療報酬改定では、24時間体制で患者を往診する「在宅療養支援診療所」の創設をうちだし、在宅患者をみとった治療には1万点(10万円)の診療報酬点数を上乗せした。その目的は、終末期の高齢者を病院から追い出して医療費を抑制するためである。
 日本経団連は「リビング・ウィル」(患者選択による終末期医療)の国民への普及」を主張し、奥田ビジョンは「寝たきりで生きているのが幸せと言えない」と言っている。
 リビング・ウィルは「尊厳死の誓約書」と訳されているが、奥田が言っている「尊厳死」というのは「積極的安楽死」、毒薬を与えて殺すことを含んでいる。もともと「尊厳死」自体が高齢者は“生きる価値なき生命”という考え方であり、「障害者」差別と優生思想である。ここには、ナチスのユダヤ人虐殺や「障害者」抹殺と同じ反動的・差別的イデオロギーが含まれている。日本帝国主義が生き延びるためには、高齢者や「障害者」を殺してもかまわないという反動的イデオロギーだ。
 「尊厳死」「安楽死」の合法化を狙っている。実際、富山の射水病院事件をテコに「尊厳死」法案が準備されている。
 もう治らないと判断された高齢者は在宅に戻し、24時間の看護が必要でも家族に任せ、大変な負担を強いるのだ。緊急事態が絶え間なく起きる。そこで24時間体制の「在宅療養支援診療所」を地域につくり、医者と看護師が電話で高齢者宅に駆けつける。しかし、昼夜を問わず痛みを訴える地域の多数の高齢者に対応できるか。これでは高齢者と家族を追いつめるだけだ。
 要するに体よく高齢者を見捨て、治療を放棄し、苦しみながらの死を促進する医療に転換するのだ。高齢者を治療するのではなく、高齢者から医療を奪い、命を奪う医療に転換する。
 さらに診療報酬は、マイナス3・16%という過去最高の大幅な引き下げを実施する。国庫負担は2400億円減となり、医療費全体では1兆円の引き下げになる。一連の窓口負担増による受診抑制と診療報酬引き下げのダブルパンチで、病院経営は悪化し、労働者に大幅なリストラ・賃下げとなって襲いかかってくる。

 国と企業の負担回避を策す

 「前期高齢者医療制度(65歳から74歳)」「後期高齢者医療制度(75歳以上)」の創設が狙われている。とりわけ重大なのが08年から実施予定の新たな独立医療保険制度である後期高齢者医療制度だ。
 対象者は75歳以上の後期高齢者約1300万人、現在の医療費は11・7兆円、医療給付費は10・6兆円、患者負担1・1兆円。医療給付費全体の約3分の1を占めている。
 狙いは、@独立の高齢者医療制度として、高齢者の自己負担を強め、医療給付費を抑制する、A企業負担をなくし、現役世代に高齢者医療支援金という負担を押しつける――にある。
 後期高齢者医療制度の運営主体は「保険料徴収が市町村、財政運営は都道府県単位で全市町村が加入する広域連合」で行う。
 現行制度では、75歳以上の高齢者は老人保健制度から医療給付を受けている。財源構成は、公費5割、医療保険者(国保・健保・政管健保)5割である。高齢者のほとんどが国保加入者なので、保険者の拠出金負担は調整されて、国保の負担は少なくされている。
 新制度では、5割を占めていた医療保険者の拠出金が、約4割の高齢者医療支援金と1割の75歳以上の高齢者の保険料に変わる(図を参照)。この支援金は国保・健保・政管健保の加入者数に応じて各保険が財政支援する。74歳未満の保険加入者は全員が新たな「高齢者保険支援金」の納入が義務づけられる。新たな「医療保険料」である。
 他方で、現役世代の支援金負担から企業負担を除外する策動が続いている。介護保険料(40歳以上)は労使折半が法で定められている。「拠出金」を「現役世代の支援金」に変えたのはブルジョアジー(企業)が高齢者支援の財政負担から逃れるためだ。現役世代からの支援金は「人口構成に占める後期高齢者と現役世代の変化に応じて、それぞれの負担割合を変えていく仕組み」が導入される。高齢者の保険料負担割合は、1割を超えて年々増加し、現役世代の支援割合は約4割を上限として減っていく。団塊世代をにらみ高齢者が増えるほど保険料が上がる仕組みだ。
 保険料は、頭割りの「応益割」と所得比例の「応能割」で算定される。具体的な保険料としては、制度が発足する08年度計算で、全国平均の月額は、応益割が約3100円、応能割が約3100円、合計6200円になる。医療費が膨れ上がると保険料は自動的に上がっていく。介護保険料と同じ仕組みだ。
 これまで被用者保険の被扶養者であって保険料を支払う必要がなかった高齢者250万人からも保険料を徴収する。さらに高齢者の医療保険料を、介護保険料と同じように年金から天引きにしようとしている。
 政府は、医療費適正化対策を都道府県単位で実施しようとしている。そのために、国民健康保険(市町村国保)、政府管掌健康保険(政管健保)、組合管掌健康保険(組合健保)を都道府県を単位として大再編しようとしている。市町村国保を都道府県単位に統合し、国が管理運営している政管健保を国から切り離して公法人として、都道府県単位の財政運営にすることが目指されている。
 医療保険を、都道府県を軸に再編し、国の責任を軽減し、各都道府県で医療費「適正化」を競わせるのが政府の基本的な考え方だ。
 具体的には、高齢者医療費の地域格差が問題にされている。1人あたりの高齢者医療費は最高が福岡県の約92万円、最低が長野県の約61万円、全国平均が約75万円である。これが不公平だと騒いでいる。高いところは全国平均を目指せ、全国平均のところは長野県を目指せと「適正化」の競争をさせられるのだ。その最大の目標が平均在院日数の短縮であり、療養病床の削減と在宅死の推進である。
 介護保険改悪に対し、介護を打ち切られる高齢者が反対運動を展開し、「障害者自立支援法」には国会を包囲するかつてない反対運動が起こった。医療制度改悪に対しても1800万人の反対署名が集まった。そこに共通するものは、介護、医療、生活を奪い、社会保障制度を解体するものへの怒りだ。医療制度改悪法案を阻止しよう。
 (益子孝史)

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週刊『前進』(2242号4面2)(2006/04/17)

 法政大 ビラ・看板禁止粉砕へ

 “無実の学生を処分するな”

 新入生への訴えに大反響

 3・14法政大学弾圧で逮捕された法大生に対して、自宅謹慎に続くさらなる不当処分の動きが強まっている。全国から猛然たる抗議を集中しよう。
(写真 62年館を閉鎖する法大当局。左が安東学生部長)
 釈放をかちとった法大生は3月31日、全員の連名で法大総長の平林千牧、学生部長の安東祐希あての「抗議と質問」をたたきつけた。その場でも驚くべき事実が明らかになった。
 「自宅謹慎処分は何に基づいているのか。学則か」と質問すると、藤村耕治副学生部長は「自宅謹慎は学則に基づいたものではない」と答えた。学生が「では何に基づいて自宅謹慎を命じたのか」と質すと、藤村は「それは総長が命じたものだから学生部にはわからない」「君たちは自宅謹慎中だから、ここに来てはならない」と言い放った。
 4月5日には逮捕された学生への「事情聴取」と称する呼び出しが行われた。警察の手先になって処分強行のためのデッチあげを策しているのだ。大衆的な怒りの高まりに恐怖した法大当局は、事情聴取会場となった法大62年館を立ち入り禁止にし(写真)、逮捕された学生を1時間おきに1人ずつ呼びつけた。学生は、個別の呼び出しを拒否し、一瀬敬一郎弁護士とともに全員が結束して断固たる抗議文をたたきつけた。
 逮捕された法大生は無実なのだ。3・14法大弾圧は、平林総長らが警視庁公安一課と綿密に練り上げてデッチあげた権力犯罪ではないか。この「逮捕」を唯一の理由に、学則にもない自宅謹慎を総長が勝手に命じ、停学や退学などの重大処分まで狙っているのだ。

 学内で堂々と真実を訴える

 この間、大学の正門や裏門には警視庁の公安刑事が張り付き、さながら“警察大学”と化している。デッチあげが暴かれた平林らは警察暴力を唯一の頼りに“自分がルールだ”とばかりに独裁的に処分強行を狙っているのだ。こんなことが許されるのか。はらわたが煮えくりかえる思いだ。
 法政大学では、弾圧に手を染めた法大当局と警察権力への徹底追及と「ビラ・立て看板規制ルール」の撤回を求める闘いが広がっている。4月3日の入学式には、逮捕された学生と連帯して3・14法大弾圧救援会がキャンパス門前でビラまきを行った。新入生が日本武道館で入学式を終えて続々とキャンパスに帰ってくる。反応は上々だ。警視庁の公安刑事と法大当局は、戦々恐々としている。弾圧の真実が知れ渡ることを恐れているのだ。
 「自宅謹慎」の不当処分を受けた法大生は、全員が堂々とキャンパスに登場し、ほかのサークル員らとともに新歓を行っている。学生部の職員が時折、「自宅謹慎処分が……」などと、そばでつぶやくがなんの力も確信もない。どちらに正義があるかはあまりにも明らかだ。
 弾圧をうち破ってキャンパスに登場した法大生の存在と真実の暴露の中で、議論の輪が広がり、新入生の合流が始まっている。
 ビラを見た新入生からは「法政大学新1年生のAと申します。あなた方の不当な逮捕に対して、大変憤りを感じております。国家権力に屈せずに頑張って下さい。私も4月5日の行動に参加する予定です」というメールが寄せられた。多くの教員が逮捕の瞬間の映像を見て衝撃を受け、怒りをあらわにしている。逮捕された学生の呼びかけで「3・14法大弾圧を許さない法大生の会」が結成され、自宅謹慎処分撤回を要求する署名運動が始まった。
 また、法大弾圧救援会の呼びかけた賛同署名は1千人を超え、増え続けている。法大当局の不当処分の動きに対しても「学生の主張を大学が弾圧できるものだとはどう考えても思えない。学生をどういうものだと思っているのか」(都内大学の新1年生)、「なんともひどい話だ。先のビラ配り逮捕といい、戦前の始まりはこういう形でしのびよるのか」と、怒りと驚き、抗議のメッセージが寄せられている。
 法大当局にさらに抗議を集中して不当処分を絶対に阻止しよう。法政大学で起きていることは、国会で審議中の共謀罪法案や国民投票法案の先取りであり、改憲と戦争のための政治弾圧そのものだ。すべての法大生・法大教職員と全国の大学人に突きつけられた大問題だ。平林体制を打倒し、戦争と改憲のための「ビラ・立て看板」禁圧を粉砕しよう。
■抗議先
法政大学総務部
(03)3264−9200法政大学学生部
(03)3264−9471■3・14法大弾圧を許さない法大生の会ホームページ
http://hosei29.noblog.net/

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週刊『前進』(2242号6面2)(2006/04/17)

 入管法改悪参院で阻止を

 外国人の治安管理テコに戦時体制づくり狙う日帝

 4〜5月入管闘争のために

 佐久間 祐

 3月30日、改悪入管法が衆議院を通過し参議院に送られた。今次改悪は戦後入管体制を根底的に転換する歴史を画する攻撃であり、共謀罪に先んじて、共謀罪をも超えて国内治安管理体制を構築しようという攻撃だ。日帝・小泉は、反テロキャンペーンと対北朝鮮・拉致問題を使いながら排外主義・差別主義を扇動し、労働者階級人民を戦争へと動員しようとしている。帝国主義の本質的危機が爆発しつつある中で、その危機を労働者階級の自己解放に向けた絶好のチャンスに転化し、国際連帯の力をより発展させていく闘いとして入管闘争の新たな高揚を創出しよう。改憲・教基法改悪阻止の闘いと結合し、入管法改悪案成立を阻止し、4〜5月入管闘争の高揚を実現しよう。

 指紋復活と追放政策強化

 今次入管法改悪は、「戦争のできる国」「普通の国」をめざす日帝・小泉=奥田の新たな東アジア経済圏構築攻撃の法制的整備という意味も持っている。あまりの超反動性に労働者人民の怒りは高まっている。
 法務省は法案提出の理由として、@テロの未然防止のため、上陸審査時に外国人(特別永住者等を除く)に指紋等の個人識別情報の提供を義務づけ、及びテロリストの入国を規制するための措置を講ずる、A上陸審査及び退去強制手続きの一層の円滑化のための措置、B構造改革特別区域法に規定されている在留資格に関する特例措置等を全国において実施するための規定の整備、をあげている。
 今次改悪の第一の問題点は、日本に入国する16歳以上の外国人(特別永住者は除外)に指紋や顔写真などのバイオメトリクス(個人識別情報)の提供を義務づけることである。
 1999年に在日朝鮮・中国人民を先頭とする粘り強い闘いで全廃された指紋押捺(おうなつ)制度を、「テロ対策」を名目にして復活させようというのである。しかも保有期間について河野副大臣は3月17日の衆院法務委で永久的に保存すると答弁した。この指紋情報は入国管理局がデータベース化し、警察などが犯罪捜査の証拠収集の一環として指紋の照合を求めてきた場合には指紋情報を提供するとしている。これを省令で決めようとしている。
 さらに在日は除くと言いながら、「自動化ゲート」と呼ばれる「指紋採取制度」を創設し、それを水路にして日本に居住するすべての人びとの指紋を登録させようとしているのだ。日本人や定住外国人の「希望者」は入管で指紋登録をすませておくと、鉄道の自動改札機のような機械式ゲートを高速道路のETCのようにスピーディーに通過できるというものだ。この指紋情報は、「本人がゲートを利用する意思を有する間」は保有し続ける。すでに3月20日申請分から日本人の旅券はすべてIC化され本人の顔写真情報がデジタル化されている。
 2000年から01年にかけて、外国人登録原票を公安調査庁が地方自治体に請求していたことが明るみに出て大問題になった。それ以前にも東京・小平署が登録原票を閲覧していた事実が暴露され、激しい弾劾を受けたことがあった。こうした指紋押捺拒否闘争の地平を、日帝は歴史から消し去り、平然と入管と警察が一体となって、外国人を治安管理することを広言しているのである。
 日帝は年間700万人に及ぶ外国人入国者の指紋を採取するのみならず、日本人、在日外国人すべてを対象として指紋を採取し一元的に治安管理しようというのだ。
 第二の問題点は、「テロリスト」と認定された者の退去強制事由が新設されることである。
 そこでのテロの定義は「公衆等脅迫目的の犯罪行為」とされ、退去強制の対象となるのは実際にその行為を実行したものだけでなく、「予備行為」また「実行を容易にする行為」を「行う恐れがある者」としている(01年「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律」)。そして法務大臣が関係省庁(警察庁、公安調査庁など)の意見を聞いてテロリストと認定し退去強制できるとした。法務大臣の裁量によっていつでも自由に退去強制できるというのだ。
 第三に、「退去強制の迅速・円滑化を図るための規定の整備」として、自費出国の場合に第三国出国を認めるとしたことである。この間、難民申請者が仮放免の際に第三国出国を条件にされていることに法的根拠を与えることであり、追放政策の強化である。
 第四に、「構造改革特別区域法による特例措置等を全国において実施するための規定の整備」として研修生の枠を拡大しようとしていることである。
 これは日本経団連・奥田路線による「外国人労働者受け入れ」方針の法制的現れである。ここでは在留期間を「5年を超えることができない」と明記し、「在留資格認定証明書」を義務づけるなどとしている。そして研修生受け入れの規模を、受け入れ機関の常勤職員総数の20分の1と限定していることに対し、同一の業界の場合、複数の法人をひとかたまりとして扱い、研修生を受け入れることができることにしようとしている。
 今回、衆議院では4項目の付帯決議(@指紋採取の実施時期を慎重に、A個人識別情報の保有期間は必要・合理的に、B出入国管理の目的以外の使用は必要最小限に、C法相によるテロリスト認定は厳格に)が採択された。これは人権に配慮するなどというものではなく、より法務大臣の裁量権を強化するものにほかならない。また民主党は政府案の提案理由に全面賛成し、その立場から修正案を提出するなど実に許しがたい対応をした。
 今国会での改悪入管法審議は「共謀罪」審議を先送りして開始された(3・15付毎日新聞)。まさに、入管法の改悪は共謀罪とリンクした形で推し進められている。「テロ対策元年」(河野副大臣)とも言うべき根底的な改悪なのだ。なんとしても参議院での可決―成立を阻止しよう。

 小泉=奥田の「テロ対策」

 小泉は、今年の施政方針演説で再び「不法外国人の半減」を強調し、入管体制の強化を宣言した。小泉は首相就任以来、毎年、施政方針演説の中に入管体制の強化を盛り込んでいる。
 9・11以降、帝国主義各国はテロ対策と称して、徹底した入管体制の強化を行っている。米帝が500人もの人びとをアルカイダやタリバンとの疑惑のみで法律的根拠なしにグアンタナモ米軍基地に無期限で拘禁し続けていることを頂点に、帝国主義権力は「テロリスト」と見なしたら人権のかけらも省みることなく人びとの人生を破壊し続けている。
 日本では「犯罪に強い社会のための行動計画」(03年12月)=犯罪対策閣僚会議、「テロの未然防止に関する行動計画」(04年12月)=国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部という形で、テロ対策が具体的に発動されている。また、昨年3月、第3次入管基本計画が明らかにされ、ここでバイオメトリクス活用を打ち出した。この計画を受けて、自民党が「新たな出入国管理施策への提言」(05年6月)を行い、あらためて「不法滞在外国人の半減」を打ち出し、この問題が治安対策の喫緊の課題であるとした。「善良な外国人と悪質な外国人」という二分法による外国人管理を徹底化させようというのである。法務省は05年6月に「出入国管理業務・システムの見直し方針」を明らかにし、今回の入管法改悪案に盛り込まれている内容を、「E−ジャパン」計画に基づく見直しとして提出した。さらに同月、犯罪対策閣僚会議と都市再生本部が合同でバイオメトリクスの義務化を提言した。
 こうした「テロ対策」は来年の通常国会への「テロ対策基本法」制定策動へと上り詰めようとしている。
 08年までに「不法滞在外国人を半減させる」ことを至上命題にすえた小泉政権は、外国人に対する徹底した治安管理・治安弾圧を日常化させてきているのである。
 難民認定申請者の出身国への強制送還を強行したり(3月、クルド人兄弟)、日本人の夫の暴力から逃れているタイ人女性を「不法滞在」として収容するなど、収容と送還を乱発している。
 また在日朝鮮人に対しては、徹底した反北朝鮮キャンペーンを展開し、拉致の主犯と関係したなどとして25年前のことを口実に大阪の商工会館などを家宅捜索した。朝鮮総連関係の施設に対する課税問題などによって、在日の既成組織を解体しようとしているのだ。
 今回の入管法改悪は、戦後、在日朝鮮人・中国人の歴史的存在を治安管理の対象として組み込むために出発した入管体制を、本格的に外国人全体を対象に据えるものとして完成させようとするものである。
 日帝・小泉による外国人に対する入管弾圧に抗して支援・防衛・連帯の闘いを強化しよう。

 全世界で労働者人民が決起

 帝国主義の戦争と民営化攻撃に対する労働者階級の怒りが全世界で爆発している。労働者階級は、戦争と民営化・非正規雇用化との闘いに立ち上がっている。労働者階級は、今闘わなくては自らの生命をも帝国主義に踏みにじられてしまうというぎりぎりのところから決起を開始した。帝国主義のグローバリズムに対して、労働者階級の国際連帯が本格的に求められる時代に突入したのだ。
 アメリカでは新「移民法」制定に対して、メキシカンを中心に移民労働者が中心となってロサンゼルス100万人、シカゴ50万人のデモが爆発した。「われわれの存在を法律で認めよ」と訴えながら、ブッシュを追いつめている。
 イギリスでは、ブレアの年金制度改悪に対して、3月28日、150万人の労働者がストライキに決起した。年金受給開始年齢の60歳から65歳への引き上げに対して怒りが爆発している。この決起の主軸は圧倒的に女性が占めている。地方自治体で働く女性労働者の平均年金受給額が、週31ポンド(約6千円)に過ぎないことを知った女性労働者が決然と決起したのだ。
 フランスの闘いもまた激しく燃え広がり、全土ゼネストが闘いぬかれた。26歳までの労働者は就職してから2年間は自由に解雇できるとした反労働者的な新「雇用法」に対して連日、数十万人の若者のデモが街頭に繰り出している。これに連帯して鉄道を始めとする労働組合が連帯のストライキを打ち抜き、全階級の闘いへと発展している。
 韓国でも、非正規法案に対する闘いは、最大の山場となっている。民主労総は国会での審議再開に向けてゼネストを構え、3月、20万人の参加でかちとったゼネストを上回る闘いに突進している。さらに米帝の米軍再編攻撃の中で、平沢(ピョンテク)基地拡張攻撃に対して、農民が、身体を張って強制収用攻撃と闘いぬいている。
 タイでも、インドネシアでも新しい闘いが始まっている。われわれは、こうした闘いと固く結合し、本格的に開始された国際連帯の闘いを一層押し広げていかねばならない。動労千葉の反合・運転保安闘争を先頭に、戦争協力拒否を全力で貫き、労働者階級の団結を強化していこう。
 日帝の戦争と民営化攻撃と全力で闘いぬくためにも、在日・滞日外国人との階級的共同闘争を全力で推し進めることが求められている。労働者階級は、入管体制の過酷な現実によって分断されてきた在日・滞日人民の存在と闘いとの合流を今こそ実現していこう。

 差別・排外主義と全面対決し

 入管闘争の課題の第一は、日帝の改憲・国民投票法案制定攻撃との闘いに全力をあげることである。国民投票法案は、外国人の意見をすべて封殺し、カンパすらも罰則の対象とするものであり、歴史的に蓄積された在日人民の怒りを一切踏みにじろうとするものだ。断じて許せない。「すべて国民は」という形で戦後憲法のらち外に置かれ、その人間的権利、人間的自由を奪われてきた在日人民に対して、一層抑圧を強めるものである。憲法9条を「安全保障」条項に改変し、再び朝鮮・中国−アジアへの戦争の道をつくり出そうとする改憲攻撃は、在日人民とともになんとしても阻止しなければならない。
 第二に、入管法・外登法―入管体制粉砕を貫いて闘うことである。日帝の戦争策動が強まる中で、外国人に対する差別・抑圧、分断・同化・追放の入管体制はさらに強化されている。在日人民は戦後一貫してこの過酷な入管体制と闘いぬいてきた。帝国主義による同化・融和の恫喝をはねのけ、指紋全廃を闘いとったのも、在日人民の営々たる闘いがあったからだ。入管法は、日本人民の密告を奨励し、報奨金制度まで設けられている法律である。法務省はいまだに密告サイトを維持し続け、「不審な外国人がいたらメールで知らせろ」と扇動している。
 また市場化テスト法案で、外国人登録業務を民営化し、入管体制を強化することが打ち出されている。これとの闘いは自治体労働者の団結を守り、外国人の人権を守ることにつながるのだ。
 第三に、入管体制の実体としてある入管収容所に対する粘り強い闘いを断固として推進しよう。東京・品川、茨城県・牛久、大阪・茨木、長崎県・大村を始めとする収容所施設に多くの外国人が収容されている。その中には、日本に庇護(ひご)を求めて入国した難民申請者も多くいる。82年の難民認定法の発足以来23年間で、日帝が難民と認定した数はわずか376人。「難民鎖国」と言われるゆえんだ。入管収容所の中で法務大臣の「自由裁量」の名で行われている一切の非人間的抑圧をやめさせるために、収容所を包囲する地域住民と労働者の粘り強い闘いを組織しよう。
 第四に、戦争責任・戦後補償を実現する闘いに取り組もう。戦後60年を超え、日帝はますます戦争責任への居直りを強めている。小泉は靖国神社参拝を強行し続け、中国や韓国からの抗議に開き直り続けている。日本軍軍隊慰安婦とされた女性たち、強制連行・強制労働の被害者、そして日帝の戦争と植民地政策の中で、民族絶滅的攻撃を受けた南京や重慶などの被害者たちの「恨(ハン)」をわがものとして、謝罪と賠償、真相究明を実現していくために闘いぬこう。
 第五に、国籍条項撤廃のために闘うことである。自治体労働者(都庁職)の鄭香均(チョンヒャンギュン)さんは、憲法の上に置かれた「当然の法理」なる法ならざる法との闘いを貫いた。国籍条項撤廃の闘いは、入管体制との直接的闘いである。「障害者」年金から排除されている問題、入居差別、就職差別など、いまだに厳然として続いている民族差別との闘いの具体的なテーマとして国籍条項との闘いをはっきりとすえきろう。
 以上の闘い全体を貫く闘いとして、排外主義、差別主義と全面的に対決することが必須不可欠である。日帝・小泉は、「外国人犯罪者」キャンペーンを展開し、敵対をあらわにしている。また、アメリカに続いて日本でも「北朝鮮人権法」制定に突き進もうとしている。2月には自民党の法案が出され、今国会で議員立法として制定しようとしているのだ。反北朝鮮・拉致問題での「国民統合」を狙う日帝に対して、この排外主義を打ち破る力は国際連帯闘争の爆発の中にこそあるのだ。
 入管法改悪案を参院でなんとしても阻止しよう! 4〜5月入管闘争の成功をともにかちとろう!

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週刊『前進』(2242号6面3)(2006/04/17)

 入管法改悪案 異議あり!

 4・5国会院内集会

 4月5日昼、「入管法改定案に異議あり!4・5院内集会」が国会議員会館で開かれた。3月27日に超党派国会議員が呼びかけた緊急院内集会を引き継ぎ、アムネスティ日本などが主催、50に上る賛同団体が集まった。日本に入国する年間700万人もの外国人(16歳以上。特別永住者を除く)から指紋などの生体情報を取得、長期に保管・利用、恣意(しい)的な「テロリスト」認定による退去強制など、弁護士が改定案の問題点を指摘。保坂展人議員は「共謀罪と肩を並べるか、抜くぐらいの大型法案だ」と警鐘を鳴らし、85年指紋拒否闘争で逮捕された経験のあるチャンハニョン弁護士は「外国人だからいいでしょ」という日本人の差別意識を利用した攻撃だと鋭く指摘した。最後にあらゆる力を結集し参院成立を阻止しようとアピールを採択した。

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