ZENSHIN 2006/10/09(No2265 p08)

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週刊『前進』(2265号1面1)(2006/10/09)

 安倍政権打倒・11月総決起へ

  青年労働者の決戦アピール

 「あらゆる職場から闘いを起こし、9条改憲阻止! 11月労働者集会へ! 1万人の労働者のデモと国会闘争で安倍政権を打ち倒そう!」「安倍政権をぶっ飛ばそう! 革命やるから覚悟しろ!」――9月26日の国会闘争で私たちの怒りを安倍にたたきつけました。安倍の登場と同時に労働者の闘いが真っ向から激突しています。9月21日、「日の丸・君が代」強制に対して、強制は違憲、違法であるという画期的判決が出ました。教育労働者の不起立闘争が安倍の教育基本法改悪の狙いを阻んでいます。また、9・23改憲阻止労働者集会は460人が結集し、右翼、公安警察・機動隊と対決して「安倍政権打倒」を訴えました。これからが労働者階級と改憲攻撃との全面的激突です。10・8三里塚闘争に青年労働者は立とう。そして何よりも6千万労働者の怒りを11・5の1万人労働者集会として集めよう。1万人の労働者の実力デモを安倍にたたきつけてやろう。11・5集会に1万人の労働者が集まったときに必ず情勢は変わり歴史は動くのです。

 歴史を動かすのは青年労働者の決起

 11・5労働者集会の力で歴史を動かすことができます。それは闘いの先頭に青年労働者が立つからです。私たち青年労働者こそ「改憲阻止・安倍政権打倒」の決定的存在です。
 私たちは革命をやる以外に奴隷のような状態から人間性を取り戻すことはできません。「日雇いで派遣され、正社員とほぼ同じ仕事をさせられているのに、時給はたった700円。『安過ぎる』と文句を言っても取り合ってくれない」「日雇い派遣で週5日・1年間働いたが、雇用保険も社会保険もない。有給休暇を請求したら、即日解雇された」――このように今、違法な低賃金で私たちをこき使う日雇い派遣労働が横行しています。
 一方、トヨタをはじめ大企業は03年〜05年度と、3年続けて過去最高の利益を更新しています。売上高が20%減っても各社が過去最高の利益をあげているのは、労働者の首を切り、賃金をトコトン削り、物のように使い捨ててきたからであり、正規雇用を削減し、低賃金・無権利の非正規雇用に置き換えてきたからです。
 「国際競争」の名のもとで、小泉=奥田の民営化・規制緩和がさらにこれを加速させてきました。「寮費の4万2千円は相場より高い。光熱費も水増しされている気がする」「給料日前、金がなくて水とパンでしのぐこともある」――キヤノンのデジタルカメラ工場で偽装請負で働かされる青年労働者の声です。実態はもっとすさまじい。自分自身、友人、隣にいる仲間の労働者がこうした状況に落としこめられています。また、職を奪われた労働者も大勢います。たとえ社会全体の失業率が5%であっても失業した自分や仲間一人ひとりにとってみれば失業率は100%であり、そのことへの怒りも悔しさも100%なのです。
 政府やマスコミの「景気回復」という宣伝とはまったく逆に、これからますます青年労働者の怒りは高まり、行動を始めます。「偽装請負」の現実は、ちょっと法律を破ったという問題ではありません。「国際競争力」で危機に立つ日本の大企業がそうする以外に生き残れないところに来ているのです。低賃金でこき使われ、社会を支える私たち青年労働者が職場で立ち上がることが、歴史を変える決定的存在になり、社会を変える決定的位置を持つのです。資本家よ、百倍にして仕返しするから覚悟しろ!
 今、資本主義社会全体が労働者を食わせることができなくなっています。膨大な財政赤字を抱えるアメリカのブッシュ政権は、資本家への大減税の一方で公的年金、公的医療保険制度の解体、規制緩和、民営化を徹底して行い、非正規雇用を増大させてきました。また、米帝経済の崩壊を引き伸ばしてきた「住宅バブル」もついに崩壊過程に突入しています。アメリカの労働者は、住宅価格の上昇分を担保に金を借り、消費に充ててきました。消費の冷え込みは米バブルを崩壊させ、労働者には返済不可能な借金と大恐慌が襲いかかろうとしています。また、こうした恐慌防止策の行き詰まりはドル暴落と世界戦争を不可避とさせています。中東の石油支配をかけたイラク侵略戦争は泥沼化し、イスラエル政府を全面的に支援して開始したレバノンへの軍事侵攻も大破産しています。
 日本の支配階級もこれと無縁ではありません。1千兆円という公的借金を抱え、アメリカやヨーロッパとの「国際競争」の中で、東アジアでの独自の勢力圏も形成できていません。このような危機を突破するために、安倍は帝国主義として戦争ができる国家へ飛躍するために9条改憲に突進しようとしているのです。
 民営化・規制緩和、戦争への動きは世界共通であり、労働者の怒りは万国共通です。労働者には国境はない。日本の労働者が全世界の労働者の闘いと一緒になった時に世界が一気に変わる、そういう情勢が訪れています。

 動労千葉の闘いに勝利の展望がある

 だからこそ11・5は決定的なのです。関西地区生コン支部、港合同、動労千葉が呼びかける1万人の集会だというところに展望があります。職場で3労組のように原則的に闘う1万人の労働者が結集するということです。
 確かに安倍の登場は小泉の延長ではありません。日本の資本家たちは戦後の「平和と民主主義」という価値観を暴力的に破壊することになんのしがらみもない政治家を選択したのです。
 しかし、安倍は次のようにも言っています。「貧しい労働者が増えれば、怨嗟(えんさ)の声は日増しに大きくなり、やがてそれは国家に向かう。社会の不安定化は暴動を誘発し、革命にまで発展することもありうる」と(安倍晋三著『美しい国へ』)。安倍が最も恐れているのは労働者の団結し組織された行動です。既成労働運動の指導部はここに対する確信がありません。私たち労働者をめぐる問題の核心は、「労働者は闘っても勝てない」「労働者には世の中を変える力はない」という思想との対決です。連合本部が「格差社会」や「改憲と戦争」に対する労働者の怒りを感じとり、一切の闘いを来年夏の参議院選−民主党支持に流し込もうとしています。民主党に政権交代することが労働者の唯一の展望だと言って一切の職場闘争、国会闘争を押さえ込もうとしているのです。それは連合全体を改憲勢力へと引きずり込むことです。06−07年は労働運動をめぐって本当に勝負の時です。
 今、労働者が団結して闘えば何ができるのか。動労千葉の職場闘争にはその展望があります。動労千葉は合理化という資本の弱点をとらえ、資本主義の根幹を揺るがし、これを打ち倒していく職場闘争を日常的に展開し、JR東日本の労働者支配をガタガタに揺るがしているのです。
 あらゆる職場で労働条件が切り下げられ、安全が切り捨てられ、資本による合理化の矛盾がすべて労働者に転嫁されている現実があります。合理化と闘わない限り、自分の命も仲間の命も守ることはできません。つまり、動労千葉の反合理化・運転保安闘争とは、資本と労働者の絶対的な非和解性をはっきりさせて闘う路線です。安全は利潤を生まないから切り捨てる。しかし資本にとっても安全問題は軽視できない。ここに矛盾があり、資本と闘う労働者が勝利する道があるのです。
 「動労千葉はすごい。しかし私の職場では動労千葉のような闘いはできない」という人がいるかもしれません。絶対にそんなことはありません。動労千葉の核心は、組合員をどれだけ信頼し、その力を引き出し、団結させるかということです。動労千葉も組合員と本音でぶつかることを通じて闘いの路線を築き、団結を固めているのです。
その動労千葉が1万人の集会を呼びかけ、世の中を変えようと訴えています。その核心は何か。「動労千葉の闘いとは実は簡単なこと。労働者としての誇り、節を曲げないから信頼して団結できる。譲れないものをはっきりさせ、仲間を裏切らなければ必ず展望は開ける」。実際に社会を動かしている一人ひとりの労働者の中に社会を変える力がある。労働組合を通じて自分たちの力に目覚め、団結し組織された力になったときに労働者は無限の力を発揮できるのです。動労千葉はそのことを日々実践しているのです。
 動労千葉は「労働者の勝利は団結がいかに強まり、広がったか」ということで総括します。11月集会が「闘う労働運動の全国ネットワークをつくろう」と呼びかけている意味がここにあります。正規・非正規、民間・公務員などあらゆる形で分断されている私たち労働者はどんな形態であっても〈労働力を売って人間性を蹂躙(じゅうりん)されてしか生きられない階級〉としてひとつです。労働者は階級として団結して闘えば、世界を変え、獲得する存在になるのです。闘う労働組合の団結を基礎に「一人は万人のために、万人は一人のために」成り立つ社会がつくられるのです。11月集会はそういう闘う労働者の階級的団結の場です。

 4大産別と民間・未組織の闘い結び

 安倍政権を成立と同時に根底から揺るがしているのは労働者階級の団結です。とりわけ国鉄、教労、自治体、全逓という4大産別の団結と戦闘性を支配階級の側は解体できていません。
 中川自民党幹事長が「安倍政権の最大の抵抗勢力は官公労」だと言いました。逆に青年労働者の側からすれば、〈4大産別決戦〉とはこれまで個々分断されてきたあり方から「階級としてひとつ」に団結する重要な闘いです。4大産別の労働者が、自分にかけられた攻撃を、「6千万労働者への攻撃」としてとらえて闘った時に、民間労働者・未組織労働者は必ず団結して闘います。一方で民間・未組織労働者の闘いは資本主義のあり方を根本から問うすさまじい怒りの闘いです。徹底した規制緩和、合理化に立ち向かい、労働法制も無視した資本の攻撃に対して闘う姿は絶対に4大産別の労働者の魂に響きます。安倍を打倒し、労働者が主人公の社会をつくるという共通の目的に向かって4大産別と結合して闘ってこそ、その力は百倍になるのです。
 各地で4大産別と民間・未組織の闘いが相互に結合し、団結と闘いの輪が広がっています。これからが勝負です。職場闘争を連合中央や全労連本部を打倒して現場からつくりかえる闘いとしてやりぬこう。連合の改憲勢力化を阻止しよう。すべての青年労働者の闘いとして4大産別決戦を闘おう。
(写真 「安倍を打倒するぞ」 9・23労働者集会後、青年労働者を先頭に都心デモ=記事2面)

 職場支配権取り戻す

 労働者が職場で本当に団結し行動すれば、資本家は太刀打ちできません。
 職場闘争をやろうとは、単なる「物とり闘争」のことではありません。資本主義の世の中では、職場は賃金奴隷としての自己を日々再生産していく場なのです。この資本の支配から労働者の自己解放をかちとる職場闘争をやろうということです。職場支配権を労働者の手に取り戻し、「おもしろくない職場」を「行くのが楽しい職場」にしようということです。
 まず職場で資本や当局に対し「『おかしいこと』をおかしいと言う」「『間違ったこと』は間違っていると言う」ことが大事です。労働者の側には圧倒的正義があり、資本の職場支配にはなんの正義性もありません。隣の仲間に「こんなことを言ってもわかってくれるかな」という躊躇(ちゅうちょ)もあるかもしれません。しかし、資本と労働者は絶対に非和解です。逆に私たち労働者同士は腹を割って話せば絶対にわかります。
 職場闘争は、隣で働く仲間を獲得する闘いです。それをめぐって資本や既成労組指導部と激しい党派闘争になります。涙を流すこともあるだろう。泣き、笑い、怒る、これこそ本来の人間の姿であり人間の解放だと思うのです。労働者は闘う労働組合を通じてあらゆる分断をのりこえ、階級的に団結することで社会の主人公へと飛躍することができます。そのことに確信をもって隣の仲間に一歩を踏みだそう。
 最後にもう一点。国会闘争が重要です。教育基本法改悪案、共謀罪新設法案、国民投票法案、防衛庁「省」昇格法案の粉砕を柱とする今秋臨時国会決戦に立とう。
 これまで国会闘争が職場闘争と結合して闘われてきませんでした。だから国会闘争がおもしろくない。国会闘争とは職場闘争と結合してこそおもしろいのです。郵政民営化法は国会で成立しました。しかし、それは職場の闘いで打ち破れるのです。労働者にとって職場闘争と国会闘争は支配階級の権力を打ち倒し労働者の権力を打ち立て、労働者が主人公の社会をつくるということにおいて一体です。こうした国会闘争をこの秋の過程、私たちの力で復権させよう。職場・街頭・国会で荒々しい労働運動を復権させよう。
 これらの闘いの一切を11月1万人結集に結びつけよう。11月1万のデモで6千万労働者の心を揺さぶるような闘いをやって情勢を変えよう!

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週刊『前進』(2265号1面2)(2006/10/09)

 教基法改悪阻止・共謀罪廃案

 9・26国会前 安倍登場に終日怒り

(写真 政権の中枢を「つくる会」派で固めた極右・安倍改憲内閣の発足に対して、「絶対に打倒するぞ! 覚悟しろ!」と怒りのこぶし。青年労働者と学生が闘いを牽引した。夕方の教基法改悪反対集会には全国から750人が大結集し、国会前は終日、怒りが渦巻いた【9月26日昼】)

 臨時国会開会日の9月26日、国会は朝から夜まで1日中、労働者人民の怒りと熱気に包まれた。国会内では「改憲」を真っ向から掲げた極右の安倍内閣が発足したが、国会の外では安倍政権打倒へ、労働者の怒りが終日渦巻き、秋の決戦の大爆発へ、闘いの火ぶたが切られた。
 早朝から国会周辺では共謀罪法案と教基法改悪に反対するビラまきが開始され、この日の闘いに突入した。衆院本会議が開かれる午前10時前には、労働者人民が続々と衆議院議員会館前に座り込んだ。広島県教組の労働者有志は年休を取って駆けつけ、独自のビラをまいた。
 正午から破防法・組対法に反対する共同行動の共謀罪反対集会が開かれた。共謀罪法案は、これで10回目の国会にかかる危機的状況だ。だからこそ政府・与党はあせり、10月第2週から始まる法務委員会の審議冒頭で強行採決を狙っている。この情勢を見据えて絶対廃案へ闘おうと、怒りの発言が続いた。
 午後1時から反戦共同行動委員会の決起集会が開かれた。東北大の学生が司会をし、冒頭、滝口誠事務局長が「安倍は日本資本主義に終止符を打つ政権だ。われわれは絶対に勝利できる」と開会あいさつした。
 織田陽介全学連委員長は、「安倍が言うボランティアは、戦争に行って国のために死ねということだ。やつらは自分たちで法律も憲法も守れなくなって、だから変えてしまえなんて言っている。こんな政権はぶっつぶすしかない。労働者が権力をとろう」と元気に訴えた。
 広島県教組の組合員は「殺人的な多忙化の中で、私たちは『教え子を再び戦場に送らない』と必死で闘っている。60年安保闘争をも超える国会闘争で、教基法改悪・共謀罪法案を阻止しよう」と呼びかけた。関西の教育労働者も訴えた。
 午後1時半すぎ、国会で首相指名選挙が行われた時には、青年労働者の音頭で「労働者をなめるな」「安倍をぶっ飛ばすぞ」と怒りのシュプレヒコールをたたきつけた。
 夜6時からは「教基法の改悪をとめよう!全国連絡会」の主催で国会前集会が開かれた。土砂降りの雨をついて750人が大結集した。北海道や東北、関西、広島、九州などからも参加した。
 全国連絡会呼びかけ人の小森陽一さん、三宅晶子さんらが発言、中でも大内裕和さんは「改悪阻止は私たちの闘いで絶対に可能だ。1日1日が勝負」と訴えた。
 東京地裁で勝利判決をかちとった予防訴訟原告団や「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会の発言に大きな拍手が送られた。被処分者の会の労働者は「判決を武器に、教基法改悪阻止の運動を全国に広げていこう。私たち東京の教職員は闘いの先頭に立つ」と力強く語った。
 参加者は集会後、近くの首相官邸前まで進み、安倍弾劾の声をあげた。

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週刊『前進』(2265号3面1)(2006/10/09)

 「日の丸・君が代」 予防訴訟で全面勝利判決

 10・23通達−職務命令は違法

 この力を教基法改悪阻止へ!

 教育基本法改悪阻止と「日の丸・君が代」不起立闘争の勝利に向かって重大な勝利が切り開かれた。9月21日の「日の丸・君が代」強制に対する予防訴訟の判決公判で東京地裁民事36部(難波裁判長)は、都立校の教育労働者ら原告401人の全面勝利の判決を出した。(前号第一報)
(写真 「勝訴」の知らせに、地裁前に詰めかけた被処分者・被解雇者を始めとする教育労働者が歓喜にわき上がった【9月21日 東京地裁前】)
 正午前から東京地裁前には「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会の会員を始め教育労働者や支援者数百人が続々と詰めかけた。1時半過ぎ傍聴にあふれた大勢の人たちが固唾(かたず)をのんで待ちかまえる中、3人の弁護人が「勝訴」「国歌斉唱義務なし」「画期的判決」と書いた垂れ幕を掲げて走ってきた。「よし」「やった」と歓声が上がり、拍手がわき起こった。ガッツポーズが何度も繰り返され、画期的な勝利の喜びをかみしめた。
 判決は、卒・入学式等における起立・斉唱・ピアノ伴奏の義務がないことを確認し、不起立・不伴奏を理由にいかなる処分もしてはならないとした。また10・23通達による原告の精神的苦痛に対し都に1人あたり3万円の慰謝料の支払いを命じた。「日の丸・君が代」が「皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことは否定しがたい事実」とし、卒・入学式などで「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱することを拒否する者、ピアノ伴奏をすることを拒否する者が少なからずいるのであって」と不起立者が存在することを理由にあげて、「義務を課すことは、思想・良心の自由に対する制約になる」と判示した。
 10・23通達とそれに基づく校長への指導についても「教育基本法10条1項所定の不当な支配に該当する」ため違法だと述べ、違法な通達や職務命令に対して「義務を負うことはない」とした。
 「日の丸・君が代」強制に対し、3年間で約350人もの労働者が、あらゆる恫喝と不利益処分をはねのけ、停職3カ月という重処分にも屈せず不起立・不伴奏で闘い抜いた結果かちとられた勝利である。石原・都教委に対する決定的痛打であり、安倍政権の登場への痛烈な先制攻撃だ。
 興奮さめやらぬ中、弁護士会館で記者会見が行われた。弁護団が判決の内容を報告すると、内容の一つひとつに拍手がわき起こった。尾山宏弁護団長は発言の最後に「明日から都教委攻勢を強め、10・23通達を撤回させる闘いを展開しよう」と訴えた。
 予防訴訟をすすめる会の共同代表は「処分を受け、管理職に抑圧されながら一人ひとりが一生懸命闘ってきた。それが認められた」と、判決が不屈に貫かれた闘いの成果であることを語った。原告の女性労働者は「ここで教育基本法が変えられてしまったら、本当に自由にものが言えない、歴史の真実を教えることができない教育になってしまう。この判決が今の流れに大きなくさびを打つことになる」と勝利の意義を提起した。
 記者会見では国内の報道関係者だけでなく、各国の報道からも熱心な質問が出され、反響の大きさを示した。

 報告集会 労働者に熱気と確信

 午後6時から星陵会館で報告集会が開かれた。判決には来られなかった人たちも勝利判決の知らせを聞いて詰めかけ、会場は満杯になった。
 まず予防訴訟の会の共同代表が、「今日の報告集会を輝かしい勝利で迎えることができたことをほんとにうれしく思います」と勝利の喜びを語り、「この勝利をどう生かしていくのか、都教委と闘い、現場の中でどう闘っていくのか、それが必要だ」と呼びかけた。
 弁護人が判決の内容やその意義を説明した後、教育労働者の発言が続いた。被処分者の会の労働者は「11月の周年行事で職務命令を打破していくことが問われる。校長に職務命令は出すな、出すのは間違っていると追及していく」と決意を述べ、「26日の国会開会日に、教育基本法の改悪をとめよう全国連絡会が国会前集会を開く。国会に押しかけ、教育基本法改悪反対の闘いを現場からつくろう」と訴えた。
 後半は被処分者の会、被解雇者の会、不採用者の会の労働者が決意を語った。また都高教、都障教組、都障労組が連帯あいさつを述べた。
 都知事石原と都教委の暴力的な「日の丸・君が代」の強制に対して、現場の労働者が不起立闘争に決起した力がこの全面勝訴という勝利を切り開いた。この勝利をテコに、職場から闘いを巻き起こし、教育基本法改悪を絶対に阻止しよう。
(写真 勝利の報告集会では、教育労働者がこの勝利をテコに職場で闘うことを熱烈に訴えた【星陵会館】)

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週刊『前進』(2265号3面2)(2006/10/09)

 『教育基本法改悪と戦争国家』 購読と学習のすすめ

 「君が代」不起立闘争こそ勝利判決をかちとった力

 元教育労働者 石崎 彰彦

 『教育基本法改悪と戦争国家』が、3人の現場の教育労働者によって書かれました。今臨時国会で教育基本法改悪を阻止するための絶好の武器として、教育労働者を始め多くの労働者が読まれることを強く薦めます。本稿ではこの本の意義を以下3点にわたって提起します。

 教基法改悪の凶暴性に敵の危機と弱点を見抜く

 この本の第一の意義は、教育基本法改悪が日本帝国主義の未曽有(みぞう)の危機に規定された攻撃であることをはっきりさせたことです。
 教基法改悪とは実に凶暴な攻撃です。教育労働者が掲げてきた戦後の「平和と民主主義」教育を根本からたたき壊し、子どもたちに愛国心をたたき込み、進んで戦場におもむく青年をつくり出す教育につくり変えようとするものです。
 しかし大事なことは、攻撃の凶暴性だけを見て震え上がるのではなく、その凶暴性の中に帝国主義の危機を見抜くことです。日本帝国主義は今、戦後体制をいまだうち破ることができていない現実に直面しあえいでいます。安倍が「戦後体制からの脱却」を叫ぶのは、世界戦争の時代に、いまだに戦争体制を確立することができていない強烈な危機意識の表れです。
 教基法改悪は帝国主義の危機に規定された攻撃であるがゆえに、凶暴であると同時に、矛盾に満ちた、破綻(はたん)的な攻撃です。だから労働者には圧倒的に展望があるし、闘えば勝てる。このことが重要です。
 そのことを象徴的に示したものが、東京の予防訴訟の9・21全面勝利判決でした。弁護団長の尾山弁護士が「教育裁判の歴史上、最も優れた判決の一つだ」と語ったとおり、原告の教育労働者の訴えを全面的に認めた画期的な大勝利です。
 石原は都知事就任以来、「東京から日本を変える」「教育基本法・憲法を否定する」と豪語して、戦争国家づくりの先頭を走ってきました。「日の丸・君が代」強制はその攻撃の中心でした。しかし03年「10・23通達」による「日の丸・君が代」強制は、力ずくで従わせる以外に徹底できないというところに、決定的な弱点があります。9・21判決は、「10
・23通達」こそ石原都政の矛盾の集中点であり、最弱点であることを示したのです。
 ここで何よりも重要なことは、処分を恐れない不起立闘争こそ、裁判官にあの判決を強制したものだということです。
 東京の教育労働者は、「10・23通達」以来3年間、不起立を継続してきました。戒告、減給、そして停職処分までかけられても屈せず闘い続け、ついには「クビをかけて闘う」という労働者を生み出しました。「労働者として譲れないものは絶対に譲らない」という信念を貫いた偉大な闘いです。この力が、徹底的に敵を追い詰めたのです。
 教育労働者が不起立で闘わずに予防訴訟を唯一の「反撃」としていたならば、勝利判決はあり得ませんでした。職場から反撃をたたきつけ、しかもそれを毎年やむことなく継続し、さらに全国に大きく広げる――この力が、9・21判決をかちとったのです。
 危機にあえぐ帝国主義の攻撃は、けっして整合性や展望のあるものではありません。矛盾に満ちたものであるし、労働者の反乱を呼び起こさざるをえず、危機をますます深めて、労働者によって打倒されるしかないところに帝国主義を追い込むものなのです。
 民同・社民や日本共産党スターリン主義は、攻撃の凶暴性だけを見て震え上がります。しかし激動情勢においては、階級的な見方を貫き、敵の弱点を見抜き、その弱点を突いて闘うならば、労働者は勝利することができるのです。
 動労千葉は、敵の矛盾点・弱点を突いて闘っているがゆえに反合・運転保安闘争に勝利し、民営化攻撃を粉砕できる展望を開いています。
 9・21判決も、闘えば労働者は勝利できること、そして今国会で教基法改悪を阻止することは可能だということを示しました。勝利判決を教基法改悪阻止の力として、「日の丸・君が代」被処分者を先頭にすべての教育労働者が国会闘争に立ち上がりましょう。

 被処分者・教育労働者が改悪阻止闘争の先頭に

 第二に、教育労働者が先頭に立って闘わなければ、教基法改悪を阻止することはできないということです。別言すれば、教基法改悪との闘いを教育労働者の自己解放闘争として闘うことが決定的に重要です。
 こんなことを言うと「当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、実は自明のことでもなんでもありません。それどころか、このことこそ一貫して日教組運動の争点だったのです。戦後、勤務評定反対闘争や学力テスト反対闘争、主任制反対闘争など多くの闘いがありますが、いずれも教育労働者の自己解放闘争ということが否定されてきた歴史でした。
 56〜59年の勤評闘争は、教育労働者が全国で職場からの実力闘争に立ち上がった偉大な闘いでした。教育労働者が決起したことによって、総評傘下の他産別の労働者や全学連、部落解放同盟なども含めた闘いとなって広がりました。その闘いの結果、勤評を賃金体系に反映することを、それ以降実に50年間にわたって阻止してきました。
 しかし日教組指導部は勤評闘争を敗北主義的に総括して「これからは教室で教える内容で勝負する」と言い出しました。そして「教育実践主義」や「国民教育論」に向かいました。
 こうした考え方の最たるものが、「教師は労働者である」ことを否定する日本共産党の「教師=聖職者」論です。
 これは過去の話ではありません。今も日本共産党は教育労働者の職場からの実力闘争を否定しています。日教組本部が掲げる「教基法を読み生かす運動」も「国民の関心が薄いから『教基法を読み生かす運動』をやろう」というものです。いずれも教育労働者が中心になって教基法改悪阻止を闘うことを否定しています。
 こうした中、この本が教育労働者の自己解放闘争として改悪阻止闘争を提起したことが重要なのです。

 「日教組解体法」

 第三に、改悪教基法の最大の狙いを「日教組解体法」として断罪したところです。
 教基法改悪の攻撃とは、教育労働者が戦争教育を担う帝国主義の先兵にならない限り貫徹できません。安倍は、教基法改悪と一体で、教員免許更新制を導入することを公言しています。「上」の言いなりにならない教育労働者は免許を奪うということです。教基法改悪の狙いが日教組解体であることを、敵の側から宣言したものです。
 教基法改悪は改憲に直結する攻撃ですが、それは二つの側面から言えます。教基法改悪の中身が改憲に直結していることはもちろんです。しかしそれだけではなく、日教組を改憲勢力にすることによって初めて憲法改悪も押し通せるということでもあります。日教組の解体を許すのかどうか、日教組が改憲推進勢力になることを許すのかどうかという闘いです。
 安倍は「次期政権の最大の抵抗勢力は官公労だ」と公言した中川秀直を幹事長に任命しました。安倍政権の最大テーマに自治労と日教組の解体攻撃を据えたのです。この日教組解体攻撃と激突して教基法改悪阻止決戦を闘おうということを、この本は鮮明にさせたわけです。

 闘う日教組再生

 さらにこの本は、教基法改悪反対闘争を「闘う日教組」を再生する闘いとして提起しています。
 日教組解体の攻撃には闘っても勝てないのか。社民も日共も「闘っても勝てない」論を振りまいています。しかしこの本は「闘えば絶対に勝てる」と提起しました。なぜそう断言できるのか。東京を先頭に全国で「日の丸・君が代」不起立闘争を闘う教育労働者が、闘う日教組の再生へ向けて闘っているからです。
 日教組本部は臨時国会をめぐる方針を何も出していません。9月14日の全国代表者会議で打ち出されたのは、日程もさだかではない「4日間程度の国会座り込み」だけ。春の国会座り込みも、本気で阻止する気など毛頭なく、組合員のガス抜きを狙ったものでした。しかし本部はアリバイのつもりでも、現場組合員には怒りがあり、本気の闘いが広がってしまう。このことに日教組本部は恐怖しているのです。
 全国の教育労働者がこの屈服方針に怒っています。全国代表者会議の内容が各単組に伝わるや、「日教組が方針を出さないなら、独自に国会闘争を闘おう」という声が噴き出しています。
 9・21判決は全国の教育労働者を鼓舞激励しています。この力をバネに、教基法改悪を阻み、闘う日教組を再生する闘いに立とう。
 11・5日比谷こそ、教基法改悪阻止へ闘う労働者が結集する場です。教育労働者がすべての労働者を牽引(けんいん)して、11・5労働者集会1万人結集へ闘おう。その絶好の武器として、『教育基本法改悪と戦争国家』を活用することを心から訴えます。
☆鈴木一久・二本柳実・松田勲 共著
☆発行 労働者学習センター
☆頒価 500円

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週刊『前進』(2265号3面3)(2006/10/09)

焦点 安倍新内閣の超反動性 改憲突撃の極右政権

 9月26日、国会の首相指名選挙で自民党新総裁の安倍晋三が選出され、安倍新内閣が発足した。安倍内閣は、総裁選で安倍勝利に奔走した議員が中心の「論功行賞」で、「身内」の気心の知れた、右翼的な閣僚が並んだ。きわめて単色の極右・改憲突撃内閣である。
 この組閣に先立って、安倍は25日、自民党の新三役を決定した。幹事長にこの間安倍の後見人として動いてきた中川秀直政調会長、政調会長に安倍の盟友、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の中川昭一農水相、総務会長に丹羽雄哉元厚相、幹事長代理に石原伸晃前国交相を起用した。これは小泉「構造改革」路線を引き継ぐと同時に、改憲・教基法改悪に向かって自民党を引っ張っていこうとする意思表示である。
 新内閣の顔ぶれは、安倍がその公約にした改憲と教基法改悪にかける凶暴な決意を示している。

●NSC設置に具体的着手

 第一に、安倍は今回の組閣に際して、総裁選過程から言っていた「日本版NSC(国家安全保障会議)」設置に向かっての具体的な措置を真っ先にとった。
 これは、首相官邸をホワイトハウスのようなあり方に変え、首相権限を大統領的に強化し、直属のスタッフによって独裁的に政治を動かすことを狙うものである。戦争国家体制に向けて統治形態を実質的に変えようとしているのだ。その第一歩として、官房副長官をこれまでの2人から3人にし、首相補佐官をこれまでの2人から一挙に5人にした。その上首相秘書官を5人起用、さらに省庁からの公募で10人のスタッフを集めた。
 首相補佐官は、国家安全保障問題担当で小池百合子、経済財政担当で根本匠(たくみ)、拉致問題担当で中山恭子、教育再生担当で山谷えり子、広報担当で世耕弘成の5人。いずれも安倍の意を体して働く、右翼的・国家主義的イデオロギーを共有する人物である。安倍はこの首相補佐官を閣僚並みに位置づけるとしており、その法制化もたくらんでいる。
 第二に、戦争と改憲に向かって全力で進もうとしている。
 安倍は総裁選の中で言っていた「現憲法の枠内でも集団的自衛権は行使できる」ということを首相就任後も「検討課題だ」と言い続けており、外相に留任した麻生太郎も基本的にその考え方である。この主張を押し貫いたら、日帝自衛隊はイラクで米軍に対する攻撃に対し米軍と共同して武力行使ができるようになる。
 さらに安倍は、26日の記者会見でも、「憲法改正については政治スケジュールに乗せるべく、リーダーシップを発揮する」と明言し、この内閣でそれをスタートさせることを宣言した。
 第三に、とりわけ北朝鮮に対する制裁と侵略戦争に突き進む布陣である。今回、「拉致問題担当大臣」を置き(塩崎恭久官房長官が兼任)、対策本部を設けた。さらに中山恭子を首相補佐官として加え、具体的な行動を起こそうとしている。
 麻生を外相にしたのも、7月5日の北朝鮮のミサイルを口実に国連安保理で制裁決議を上げようと(戦後史上初めての日本外交の突出)画策した際に、安倍と麻生が連携したことを続けようとしているからだ。「拉致問題」で右翼的排外主義の際立った言動によって脚光を浴びた安倍は、いよいよ対北朝鮮政策で侵略戦争発動に踏み切ろうとしているのだ。

●「教育再生」の攻撃

 第四に、安倍新内閣が改憲強行に向けて何よりも優先する課題としている教育基本法改悪と「教育改革」の攻撃である。
 文部科学大臣に根っからの教基法改悪論者である伊吹文明を任命し、官房副長官に「若手議員の会」の下村博文を据えた。
 さらに重大なのは、首相補佐官に入れた山谷えり子である。国会質問で「行き過ぎた性教育」に対するバッシングの先頭に立ち、「ジェンダーフリー教育」を攻撃し、侵略戦争の歴史を教えることを「自虐史観」と言って排斥する、安倍と完全に一体の教育観をもった人物である。この山谷が取り仕切る形で安倍の諮問機関として「教育再生会議」がつくられ、そこに「新しい歴史教科書をつくる会」を中心とする右翼学者などを集めようとしているのだ。
 安倍政権が教基法改悪を突破口に、「教育再生」と称して愛国心教育と差別選別教育を推し進めてくることは明らかだ。

●経団連の要求に応じ

 第五に、安倍新内閣は資本家階級の代表機関である日本経団連の要求に沿った陣容であり、幹事長の中川を先頭に「官公労」=4大産別の労働者と労働組合にリストラ攻撃を集中する体制である。
 日本経団連会長の御手洗は22日、安倍新総裁と会談し、「@イノベーション(革新)による新しい日本型成長モデルの実現、A日米関係を基軸とし、アジア大洋州地域を重視した外交・通商戦略の展開、B歳出入一体改革の着実な実施、持続可能な社会保障制度の確立、雇用・少子化対策の強化、C地域活性化に向けた道州制の導入、D教育再生、憲法改正に向けた取り組み」の5項目を新内閣に要求している。安倍は、基本的にこの要求に従おうとしている。
 具体的には、「骨太方針Y」に基づいて「歳入・歳出一体改革」を掲げ、公務員労働者に対する徹底的な賃下げと首切り、労組破壊、さらに社会保障制度の極限的な解体と消費税の大増税をやろうとしているのだ。
 以上みてきたように、安倍新政権は戦争と改憲、民営化・労組破壊に向かって、小泉以上の意識性をもって突進しようとしている。しかし、安倍政権は実にもろく、危機的な体制でしかない。こんなに極右・国家主義的でブルジョア的な本性をあらわにした内閣の登場で、階級対立がすべての労働者の前に鮮明になった。
 階級的反転攻勢の絶好のチャンス到来である。9・21予防訴訟判決は、安倍新政権の登場の出はなをくじく労働者人民の闘いの結晶である。臨時国会闘争の爆発と11・5労働者集会の1万人結集の力で安倍政権打倒へ進もう。

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週刊『前進』(2265号4面1)(2006/10/09)

 青年労働者が立ち上がればこの資本主義は転覆できる

 強まる労働者の搾取と使い捨て

 いまや2人に1人が非正規雇用 正社員も休みなしの過密労働

 資本の支配を破り自己解放へ

 職場の主人公はいったい誰か 力関係をどう変えるかが問題

 日本の青年労働者の状態はどうなっているか。闘いとその展望を交えて報告したい。資本家による労働力の過酷な搾取にこそ根本問題がある。1人ひとりの青年労働者こそ社会変革=革命の主体だ。(片瀬涼/文中の名前はすべて仮名)

 働いてもなぜ貧しいのか

 剰余労働の搾取が資本の利潤の正体

 資本家の利潤はどこから生まれるのか。資本家は、利潤は彼らの「努力」や「才覚」で稼いだもので、自分の活動に対する報酬であるかのように言う。最近では、小泉政権下で進んだ規制緩和やIT系企業の株式売却益に対する大幅減税などで「新富裕層」が生まれたため、特にそうした風潮が強い。
 昨年のトヨタ自動車の経常利益は1兆円を超えた。だが、この利益は、それに見合うだけの経営陣の「努力」や「労働」によって得られたものでは断じてない。

 賃下げと強労働を狙う資本

 他方で労働者の賃金はどうか。労働者が日々の労働を通じて獲得するのはぎりぎりの生活を続けるのにやっと足りる分にすぎない。労働者は賃金と引きかえに自らの労働する能力を売っている。そして資本の指揮・命令に従って労働する(そういう契約だ)。このようにして資本家は労働者の活動と成果のすべてを自分のものとするのだ。
 だから労働者に賃金として実際に支払われているのは、労働者の労働の一部だけである。残りの部分は不払い労働として資本家のものとなっている。この不払い労働、つまり剰余労働こそが資本の利潤の正体だ。労働者は自分たちがかつかつで生きていくための賃金だけを「支払われ」、残りすべては資本家に「不払い労働」として奪われているのだ。
 資本の利潤の源泉は労働力の搾取にしかない。この社会では資本にとって利潤がすべてで、利潤の獲得という「衝動」しか持たない。どこまでも剰余労働を拡大して、利潤を増やすことができるかどうかだけが問題となるのだ。だから、可能な限り賃金を下げ、労働時間を長くし、密度の濃い労働を労働者に強要するのである。
 現実の社会に目を向けてみよう。大企業が空前の利益を得る一方で、大手製造業の工場で違法な偽装請負が広がり、要らなくなったら簡単にクビを切られる何十万人もの請負労働者。時給300円で酷使される外国人実習生。正社員並みに働くフリーター。食事や休息も満足にできず、リストラの恐怖に脅かされる。ノルマと競争、過労の殺伐とした職場で急増する「心の病」……。
 資本は、労働者を「品物」「商品」と同じように扱う。商品だから安価で濃密に長時間働く労働力が良い商品なのだ。資本にとって労働者の健康や寿命など問題ではないのだ。資本の関心はただひとつ、労働者からいかに搾取するかだけだ。
 エンゲルスは『イギリスにおける労働者階級の状態』で、産業革命が生み出した大量のプロレタリアートの悲惨な状況とそれに抗する労働運動の姿を描き出した。そこでは労働者階級が絶滅の危機に瀕(ひん)し、資本主義が崩壊しかねない過酷な搾取の現実があった。われわれが生きる21世紀の資本主義世界の現実は、この資本主義の創生期にまさるとも劣らない過酷な搾取の現実ではないか。まさに末期の資本主義の危機が生み出す「賃労働と資本」である。
 10年後、20年後の将来を展望できる青年労働者がどれほどいるだろうか。5年10年で働けなくなるほどの「生命力の消耗」を伴う労働。自分の自由にできる時間がまったくない生活。企業の業績が上がれば上がるほど、労働者の労働が苦役となり、暮らしが悪くなる「賃労働と資本」の関係。

 闘うことこそ自己解放の道

 最近、生活保護をうち切られたり、病院に行けない労働者(家族)を描いた報道も多い。まだ一部の人かもしれない。だが多くの労働者にとって明日の自分の姿とならない「保証」がどこにあるのか。大半の青年労働者にとって、これが自分や友人、隣の仲間に起きている現実だ。労働者は自分を破壊するために働いているのではない。
 マルクスは『賃金・価格・利潤』で「労働者は、もし完全に闘う力を失って資本の言いなりになるなら、古代の奴隷よりもはるかに不安定でみじめな状態を強制されるだろう」と言っている。
 青年労働者の状態の根幹にはこの「賃労働と資本」があるのだ。ここを覆さなければ、もはや生きてゆけない。闘いなくして奴隷のような状態から人間性を取り戻すことはけっしてできない。賃金と労働条件をめぐる職場闘争は「賃労働と資本」を覆す基礎的な闘いであり、人間性を取り戻す闘いなのだ。

 青年労働者の過酷な状態 名前も呼ばれず「人材さん」 平均在社年数は5年/自腹購入で給料がゼロに

図 雇用形態の推移 派遣労働者

 古庄寛和(28)は製造メーカーで働く派遣労働者だ。時給は600円。派遣会社は1500円を受け取っている。
 「欠員が出た」。電話1本で2時間前に呼び出され、23時から翌日の15時まで16時間ぶっ通しで勤務したこともある。「携帯電話は本当に嫌ですね」
 隣のラインは請負会社が受注している。請負はどうしても生産効率が落ちる。だがノルマは同じ。週休2日だがノルマが達成できず土日も賃金なしで働く。
 成嶋大輔(32)が初めて工場に入って驚いたのが朝のあいさつがないことだ。派遣労働者は「人材さん」と呼ばれ、名前で呼ばれない。数あわせで手配される。
 「機械の扱いは素人のまま。何年働いても熟練工になれないですね」。最初に簡単な機械の操作を教わるだけだから、機械がトラブると対応できない。ノルマが職場を支配し、「安全第一」は建前だ。若い労働者は、上司の指示を真に受け、調子の悪い機械を無理に回し、事故や不良品を出す。
 この間の製造業などの「復調」の背景は、技術革新などよりも、90年代以降のリストラで正規雇用を非正規雇用に置き換え、低賃金でいつでもクビにできる生産体制を構築したことが断然大きい。
 財務省の統計によると、05年度の全産業の経常利益は約52兆円と01年度の約28兆円に比べ83%も伸びた。その間の売上高の伸びは12%、人件費の伸びは2%にとどまる。賃下げと非正規雇用化が企業収益を支えているのだ。

 偽装請負

 以前は、生産現場への労働者派遣はできなかった。しかし、小泉政権下の03年、労働者派遣法が改悪され、04年3月以降、原則解禁(港湾、警備、建設、医療を除く全業種)となった。
 派遣労働者の割合は00年の0・7%(33万人)から06年の2・4%(121万人)まで一気に上昇した。製造業での請負労働者は約87万人。ここ数年、失業率が下がり、全体の雇用者数は増加しているが、その実態は正規雇用の減少を非正規雇用の大幅な増加が補っているにすぎない。
 この5年間で非正規雇用は300万人増え、06年には1663万人。労働者の3人に1人が非正規雇用だ。15〜24歳の労働者は、2人に1人が非正規雇用だ。
 企業が非正規雇用を増やすのは賃金が抑えやすいからだ。大半の非正規雇用労働者は時給千円、年収200万円程度だ。同世代の正社員の半分の水準。仕事の内容は正社員とほぼ同じである。企業側には厚生年金などの社会保険の負担を避けようという思惑もある。正社員を雇えば厚生年金や雇用保険の保険料の半分を企業側が負担しなくてはならない。
 最近、問題化している偽装請負は、請負会社が労働者をユーザー企業に送り込むだけで作業指示はユーザー企業に任すなど、実態は労働者派遣だが、形式的に業務請負と偽っているものをいう。
 派遣労働者には、正社員と同じく労働基準法や労働安全衛生法などが適用されるが、請負ならユーザー企業は労働安全上の義務を負わない。
 よりコストが安く、安全責任があいまいで、しかも、いくら使っても直接雇用の責任が発生しない業務請負の形をとりながら、実際の生産現場では、自社の正社員に指揮命令をさせるのだ。
 企業は請負労働者を人件費ではなく、外注加工費として扱う。企業や株主が空前の利益を得る中で労働者は「品物」のように扱われている。
 こういう過酷な搾取を行っているのがトヨタやキヤノン、日立、松下などの日本資本主義を代表する大企業である。青年労働者の将来や希望をすべて奪うような搾取でしか成り立たない資本に未来があるはずがない。青年労働者の反乱が始まった時、日本資本主義が転覆されることは間違いない。

 残業代なし

 堀本誠(29)は24時間営業の大手コンビニの正社員。
 「心が休まる時がないですよ」
 会社に持たされた携帯電話に頻繁に指示が来る。深夜に呼び出されることもある。休日はひたすら寝る。食事や映画を見る暇もない。同僚も「なんのために仕事をしているのか」とこぼす。誰も1年後が想像できない。
(写真 製造現場で働く労働者。低賃金で無権利で「使い捨て」にされる派遣・請負労働者が急増している)
 正社員は、全員が管理職扱いで残業代もない。多くの社員が朝7時に出勤し、夜9時すぎまで仕事をしている。社員に配布されるスケジュール表は土日休みになっているが土曜に休むと上司が怒る。
 社員の平均在社年数は約5年。大半は20代のうちに離職する。30代になると体が持たない。資本もそれは折り込み済み、5年の間にいかに搾取できるかがすべてだ。労働者の健康や人生にはまったく興味がない。
 最近、売り上げが落ちている。上司は会議で「お前たちが仕事しないからだ」と締め上げる。堀本は言う。「売り上げを増やすのは簡単。労働者を尊重し、働きやすい環境をつくればいい。ところが忠誠だけを求め、無理なノルマを押しつける。資本は極限的に搾取するしか能がない」
 破壊的な「競争」が強制力として資本に作用するのでこの簡単なことができないのだ。JRの安全問題やさまざまな企業不祥事なども背景は同じなのだろう。ここに資本主義の危機がある。
 ノルマを達成するため自腹で商品を買う。給料は一円も残らない。マイナスになる時もある。ノルマが達成できないと、全員の前で立たされ、罵倒される。「人間性が奪われる感じです」
 過労死、過労自殺も多い。今年に入ってすでに4人が在職死亡した。会社側は仕事との因果関係はないと強弁している。
 最近、年収が一定以上のホワイトカラーを、「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間から除外するホワイトカラーエグゼンプションが論議されている。この制度が導入されれば、事務系、技術系労働者などホワイトカラーの大半が「残業」という概念もなくなり、無制限の長時間労働を強いられることになる。
 「8時間労働」は1886年に米国で38万人の労働者が要求してストライキを行い、射殺や死刑をも恐れず闘い、第2インター(国際労働者協会)の呼びかけで世界中の労働者が要求し(メーデーの始まり)、1917年のロシア革命によって初めて、社会的な「規範」として形成された。
 この労働者階級の血で書かれた歴史をすべて覆し、労働者階級が歴史的にかちとってきたあらゆる権利をブルジョアジーは奪おうとしているのだ。

 規制緩和

 11年前の95年に日経連が出した「新時代の『日本的経営』」報告は、終身雇用制、年功序列賃金、企業別労働組合を変える必要があると強く主張した。特に「人件費が高くて競争力が失われた」として徹底的なリストラを要求した。
 そして01年春に小泉政権が登場し、構造改革路線として、労働法制の徹底的な規制緩和を進め、派遣労働の原則解禁、解雇のルール化、労働時間の規制緩和などを進めてきた。それを容認してきたのが既成の労働組合幹部だ。
 その結果がこのような労働者の現実を生み出したのだ。そして今日の最大の焦点が〈国鉄・教労・自治体・全逓〉の職場だ。激しい民営化や合理化、労働強化の攻撃にさらされているが、そこには「労働者が闘ってかちとってきた権利」が厳然と存在する。4大産別にかけられた攻撃を6千万労働者への攻撃としてうち破り、「階級としてひとつ」に団結することが重要だ。

 職場闘争 その教訓と展望 課長追及「職場おもしろい」 超勤はサービス残業/皆で管理職に抗議

 年休権侵害

 全逓組合員の柳橋和也(30)の職場で、ある日、約30人の組合員が課長を取り囲んだ。発端は、課長が勝手に勤務指定に年休を割り振ったことだ。この課長はJPS(トヨタ生産方式)責任者だ。人員を減らした配置でも仕事は回せることを「証明」するために勝手なシフトを作り、職場を混乱に陥れてきた。労働者の怒りは我慢の限界に達していた。
(写真 配達用バイクの数が減らされ共同使用に。憤りの声が上がっている)
 昼休み、5人の組合員が課長を取り囲んで抗議した。休憩時間には作戦会議をした。5人が10人に増え、ついに30人になった。
 年休権は労働者の権利だ。年休を取らせないのも違法なら、勝手に「取れ」というのも違法だ。
 若い組合員は「毎日、職場がおもしろい」「お祭りみたい。明日もやってやる」と明るく語る。柳橋は「職場の本当の主人公が誰なのか、それをはっきりさせるのが職場闘争」と言う。
 浪岡拓也(26)の職場でもJPSが始まった。今まで座って行ってきた4時間の作業を立ってやらせる。わずかな回数の「立つ・座る」の動作が無駄だというのだ。
 当局は経費削減のため配達用のバイクを減らす方針だ。浪岡が使用していたバイクが取り上げられそうだ。排気量も90tから50tに下がる。「50tじゃ坂は登れない。一軒ごとにエンジンが止まる。こんなの効率化じゃない。労働者の負担」と憤りを隠さない。
 郵便内務の労働者も徹夜の「深夜勤」や「16時間勤務」で休息もほとんど取れない。いつ誰が倒れ過労死するかも分からない。
 そうした結果、遅配・誤配が続き、郵便局に苦情が殺到している。浪岡の職場でも、誤配した非常勤の青年が課長に文句を言われた。青年は「おれは悪くない。絶対に謝らない」と譲らず、仲間みんなで課長を追及した。
 浪岡は「みんな明るく自信を持つようになった。労働者は救済の対象じゃなく、闘う主体」「職場で資本や当局に対し、間違っていることには『間違っている』ということが大事」と語る。労働者の側に圧倒的正義があるのであり、資本の職場支配にはなんの正義性もないのだ。
 彼らは闘いからつかみとった教訓を述べている。「職場の仲間から話を丁寧に聞く、メモをとる習慣をつける。その際に問題点を組合員と討論する。仲間の話を聞いていれば必ず『発見』がある。どんな労働者の話の中にも、怒りや闘う理由がある。組合員が全員参加できる形の闘争をつうじて団結を強化していくことが大切だ」
 「職場闘争の総括軸は『団結がいかに強まり、広がったか』だ。行動や直接の『成果』を自己目的化するのは良くない。仲間とどれだけ討論して、一緒に方針を練り、闘うかだ。そして団結の強化を軸に総括することが重要だ」

 5時退勤は権利

 森永岬(31)は小学校で働く教育労働者だ。教員は4%の教職調整手当が支給される代わり超過勤務手当がない。逆に調整手当が支給されているから、超勤は当たり前という態度の管理職も多い。
 文部科学省が4月に実施した教職員勤務実態調査でも、超過勤務の1週間の平均時間は15時間を超える。持ち帰り残業も約5時間に上り、1週間で60時間を超える教員もいるなど、深刻だ。
 「超勤手当がないから、超勤はすべてサービス残業になる。だから、どうしても労働者という意識が弱くなる。8時間労働という考えが職場にない感じ」
 近年の多忙化で定時に帰宅することはほとんどない。毎日深夜まで職員室の明かりがつく。土日も働く。
 社会見学の時、バスの出発が8時で、いつもより30分早く出勤した。しかし、30分早く仕事を終わろうとはなかなか言い出せない。定時の退勤時間の5時が近づき、思い切って「5時に帰ります」と言うと管理職が大慌て。「ちょっと……待って下さい……」。みんながクスクス笑った。本当はみんなが言いたいことなのだ。
 森永は職場に団結をどうつくるか考えていた。「これを闘争化しよう」。5時退勤は本来まったく正当な権利だ。「これは順法闘争。教育労働者は労働時間という意識が弱いけど、みんなが一番不満を持っているのが多忙化。実際に超勤を拒否できるかどうかという問題もある。でもそれ以上に、みんなで一緒になって管理職に不満が言えたら成功。職場闘争は職場の力関係を変える。そこを総括軸にやっていきたい」

 徹底討論

 動労千葉の中野洋前委員長は著書『俺たちは鉄路に生きる2』で職場闘争についてまとめている。
 @職場闘争は職場支配権をめぐる闘いであり、党派闘争。一番は資本との党派闘争。資本が日常不断にまき散らす思想とどう闘うか。これが一番の闘争。
 A資本や当局に対する怒り、組合の堕落した幹部に対する怒りと組合権力を取ってやろうという意識性があれば、職場闘争のテーマはいくらでもある。
 Bすべての職場闘争は、敵の弱点をつき、味方の団結を強化・拡大する闘い。
 C核心は、労働運動に人生をかけるという活動家の量と質によって決まる。
 D職場闘争は、将来組合指導部になるための能力形成の戦場。
 動労千葉労働運動の核心は、組合員をどれだけ信頼し、その力を引き出し、団結させるかにある。動労千葉も、組合員とものすごい討論をして闘いの路線を構築し、闘う団結を固めている。
 田中康宏委員長は、動労千葉のシニア制度―業務外注化との闘いについて語っている。
 「結論は『こんな協定のめるか』で、はっきりしていた。しかし悩みました。拒否すれば、うちの組合員は、動労千葉であるというだけで全員60歳で首になる」
 「『こんなものは絶対にのめないんだ』という議論をくり返しやりました。実際、定年を間近にして泣く泣く脱退していく人も出た。しかし『どういう思いで分割・民営化と首をかけて闘ってきたのか』『労働者の誇りはどこに行ったんだ』という激しい議論を重ねて、それから4年目、5年目には1人も脱退者が出なくなった。労働者を信頼するというのはそういうことです」
 「始めた時は気が重かった。すぐに展望なんか出ない中でとにかく必死になって議論する。だけどその結果、千葉だけ業務外注化を止めた」
 実際に鉄道を動かしている労働者の中にこそ職場を動かし、社会を変革する力がある。労働者が自分たちの持っている力に目覚め、団結し組織された力になった時に労働者は無限の力を発揮する。動労千葉の闘いは、労働者が怒りと誇りを持った時、絶対に負けないことを示している。
 資本主義社会の中で職場は、資本が労働者を賃金奴隷として働かせる場だ。この資本の支配から労働者が自己解放をかちとる基礎的な闘争が職場闘争だ。労働者が職場支配権を自らの手に取り戻し、闘いをつうじて階級としてひとつになった時、労働者階級は世界を獲得し、変革する存在になる。

 弾圧、党派闘争

 民間職場で働く今津真琴(30)は「労働者は勝てると思わない限り、闘わないし、続かない」と考えている。労働者は働かないと食っていけない。だけど、食っていけない世の中だから闘わないと生きていけない。どんな労働者にも怒りはあり、闘う「きっかけ」はある。「闘う仲間の存在を知り、体を動かして一緒に闘う経験をして初めて労働者は勝てると思うようになる」と言う。
 今津は、資本や既成労組幹部の弾圧、敗北主義との闘いを強調する。「『労働者は勝てない』という思想は労働者の中から出てくる。敗北主義や弾圧と闘わなければ、『労働者を信じる』という言葉は口先だけに終わる」
 連合や全労連など既成労組指導部は「闘うな」「黙れ」と労働者を弾圧する。今津は「連合・全労連の敗北主義者たちは、闘えばさらに大きな弾圧が来ることに恐怖して、労働者の闘いを抑圧する。このことを見抜くことが必要」と言葉をかみしめるように訴える。
 日本の労働者は、資本の過酷な搾取の現実の中で、低賃金で劣悪な労働条件、失業の恐怖にさらされている。人間性を破壊され、将来の希望も奪われている。しかも、既成の政党や労組指導部のもとで、その怒りを集約して政治的に表現することも難しい状況にある。既成労組指導部の抑圧を打ち破り、労働者の人間的感性に訴え、その怒りを呼び覚まし、団結し、社会変革の主体として闘うことを呼びかけなければならない。
 職場闘争は労組役員が労働者の代理となって解決する闘いではない。労働者が闘いの主体となり、階級的に団結して、職場の力関係を変え、資本の労働者支配を打ち破っていく自己解放闘争なのだ。

 11・5へ動労千葉に学ぶ 労働者の階級性に依拠し闘って勝利

 今日の資本家階級による労働者への攻撃は、労資関係を19世紀の工場法以前の状態に戻す攻撃だ。しかも、同じ現象が世界中に広がっている。個々の資本の特殊性や悪意の問題ではない。資本は「国際的競争」という強制から逃れられない。資本家階級には「極限的な搾取と収奪」以外に選択肢がないのだ。だから労働者は、生きるためには資本と闘うしかない。労働者階級の歴史的な反乱は不可避なのだ。
 これに対して資本家階級の労働者支配の基本政策は、労働者階級の上層を買収し、労働者の闘う層を弾圧し、労働者を分裂させ、階級として団結できないようにすることに尽きる。では労働者階級は資本にいつもいいように分断され、支配されてしまう存在なのか。闘っても必ず負けるのか。
(写真 「事故責任の転嫁は許さない」と仲間への処分策動に反対し てJ R干葉支社に押しかけた動労干葉組合員【5月16日】)

 敵の矛盾点を見抜いて闘う

 日本の戦後史は文字どおり階級闘争の歴史だ。
 戦争直後の労働組合の結成と生産管理闘争、600万人の労働者を組織した47年2・1ゼネストとその挫折、レッドパージと50年朝鮮戦争、60年安保闘争と三井三池闘争、70年安保・沖縄闘争、スト権スト、国鉄分割・民営化……。階級闘争の歴史の中では、労働者階級の敗北もあり、後退や裏切りもあった。だが、日本の労働者階級の階級性や闘いが絶滅したことがあるだろうか。
 ノーである。何よりも1980年代に中曽根政権が「戦後政治の総決算」をかけて仕掛けた国鉄の分割・民営化に対し、動労千葉は唯一、2波のストライキを闘い抜き、現在も団結と組織を守り通している。
 確かに支配階級は、総評を解散させ、連合結成を実現した。今日、労働者が民営化・リストラ・賃下げ、非正規雇用化の攻撃のもとで困難な状況にたたきこまれているのは、既成労組(連合)幹部が攻撃に屈服し闘うことを放棄したからだ。
 しかし、国鉄闘争と国鉄労働運動が資本・国家に対する対抗軸、労働運動の結集軸として残り、その根幹には動労千葉が存在する。それと並んで自治労や日教組、全逓などの労働者が現場レベルで連合指導部の転向を打ち破って戦闘性を維持してきた。連合は日本の労働者階級をまったく制圧できていないのである。
 どうして動労千葉は国家権力の攻撃を打ち破りストライキに決起できたのか。動労千葉は、組合員に依拠して、その力で情勢を切り開いていく労働組合観で闘った。そして危機にかられた敵の攻撃に対し、敵の矛盾点を見抜き、労働者が団結して闘えば敵を揺るがすことができる、チャンスだと考えて闘ったからだ。
 動労千葉の存在と闘いは、日本労働者階級の階級闘争の歴史の凝縮であり、支配階級の労働者支配の破綻(はたん)の象徴なのだ。労働者が本来持っている階級性に依拠して闘うならば、国家の総力をかけた攻撃でも団結を破壊することはできない。動労千葉はこれを生身で証明している。

 労働組合を基に階級形成を

 労働組合は、労働者が賃金や労働条件をめぐって抵抗し、要求し、闘うための基本組織だ。労働組合が団結の最も基礎的形態となって、労働者は資本と闘い、団結を発展させ、階級となる。労働者階級は労働組合を母体に、資本主義社会を転覆して支配階級となり階級社会を廃絶する能力を形成するのだ。
 正規雇用と非正規雇用、民間と公務員などの分断をのりこえ、あるいは職場で資本に強いられる労働者同士の「競争」を打ち破って、労働者が階級として団結した時、資本家階級の支配は崩れる。労働者が自ら持つ力を自覚し、団結した時、労働者は無限の能力を発揮するのだ。
 連帯労組関西生コン支部、港合同、動労千葉が「闘う労働組合の全国ネットワークをつくろう」と呼びかける11・5全国労働者総決起集会こそ、労働者が階級的に団結することをオーソドックスに訴える集会だ。動労千葉のように原則的に職場で闘う全国の労働者・労働組合が1万人結集し、呼びかけ3労組と連帯して闘うならば、日本の労働運動、階級闘争の発展が展望できる。
 日本の青年労働者の状態にこそ、労働者が闘いに立ち上がる根拠がある。労働者は意思を持ち、血と肉でできた人間なのだ。労働者の反撃は不可避である。職場の隣の仲間に闘いを呼びかけよう。職場闘争とその展望を動労千葉労働運動と結びつけ、11・5労働者集会への結集を心から呼びかけよう。

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