ZENSHIN 2007/07/23(No2304 p06)

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週刊『前進』(2304号1面1)(2007/07/23 )

 7・29革共同集会へ

 8月広島・長崎から11月へ進もう

 社保庁・自治体労働者への大リストラに怒りの反乱を

 年金問題の全責任は政府に

 7・29東西革共同政治集会は、日本労働者階級が日帝・安倍政権の攻撃と真っ向から対決し、プロレタリア革命の勝利に向かって、革命の路線と戦闘態勢を打ち固める歴史的集会である。内外情勢は、帝国主義の体制的危機−争闘戦の激化を基底として、〈戦争か革命か>の大激動に突入している。攻撃は激しいが、それは帝国主義が危機だからだ。危機は同時に好機だ。今こそ安倍政権への怒りをたぎらせ、議会主義政党や体制内労働運動の屈服をうち破り、階級的労働運動の大前進の時代を切り開こう。7・29革共同政治集会に大結集し、8月広島・長崎反戦反核闘争から11月総決起へ進撃しよう。

 日本の年金の出発は戦費調達だった

 「不明年金」問題での社会保険庁労働者への責任転嫁は絶対に許せない。安倍は参院選の街頭演説で、社会保険庁とその労働組合を不明年金の「悪の根源」に仕立て上げ、「徹底解体・職員解雇」を叫んでいる。これは1980年代の国鉄分割・民営化の時の「国鉄赤字の原因は労働者が怠けているからだ」という労組破壊攻撃とまったく同じ手口だ。
 さらに安倍は17日、「社保庁監視委員会」の設置を閣議で決定した。社保庁を管轄する厚労省ではなく総務省にこれを設置し、強力な指導権限を持たせる狙いだ。委員長には葛西敬之(JR東海会長)をあてる。葛西こそ国鉄内で分割・民営化攻撃の先頭に立ち、職員20万人首切り、労組破壊を推し進めた極悪の人物だ。安倍はこの経歴を買って葛西を委員長に据え、今度は社保庁職員を対象にして大量首切りと労組破壊を強行しようとしている。
 ふざけるんじゃない! 「不明年金」問題の一切の責任は政府・自民党にある。現場労働者にはなんの責任もない。帝国主義支配階級が年金資金を好き勝手に食い物にして破綻(はたん)させたくせに、その根本問題をおし隠し、盗っ人猛々しく、不明年金の責任を労働者におっかぶせ、首切りと労組破壊の口実に使おうとしている。これが帝国主義だ。腹の底からの怒りを爆発させよう。
 政府・支配階級は、労働者人民にきちんと年金を支払うつもりなど、年金制度をつくった初めからないのだ。日本の年金はもともと太平洋戦争中の1942年に、戦費が足りなくなって戦費調達のためにつくられた。そのことを「労働者年金保険は……その巨大なる資金を国家的に動員することを目標とし……あえて社会保険たることを要しない」と、政府の文書が公然と言い放っている(1944年、『厚生年金保険法大要』)。
 戦後も日帝は、労働者からなかば強制的に集めた金を、財政投融資など帝国主義の延命のために資本家にばらまき、大穴をあけ、年金財政を破綻させたのだ。不明年金問題の根底には、支配階級のこのような労働者無視、無責任がある。
 年金問題は、日帝打倒―プロレタリア革命による以外にいかなる解決の道もない。
 安倍は、社保庁の労働者を「ゴミを一掃する」とののしっている(6月15日)。社会的生産と生活を支えている労働者がゴミなのか! これほどの労働者蔑視をどうして許せるか! 労働者の団結した闘いがどれほど「恐ろしい」ものか、目にものを見せてやらなければならない。
 労働者階級を踏みにじる政治は年金だけではない。日帝・資本家階級は「官より民」と称して、年金・介護・医療など国家が責任をもって行うべき社会保障の事業を次々と投げ出し、それを資本家どもに金もうけの場として提供している。労働者は労働現場のみならず、生活の場でも資本家にむしり取られている。
 青年層の半数が低賃金の非正規雇用の仕事にしかつけず、いつ首にされるかも知れない不安の中で働かされている。「こんな社会はもうごめんだ」と、多くの青年労働者が根底的な変革を求めて立ち上がり始めている。3・18日比谷集会や6・9ワーカーズアクションの高揚は、そうした歴史的な決起の始まりだ。青年ばかりではない。6千万労働者階級の大多数が「食えない」現実、貧困化の問題に直面している。生きるためには闘う以外にないという、戦後革命期以来の大激動が訪れようとしているのだ。
 求められているものは、労働者階級の怒りを結集し、労働者としての誇りを取り戻し、労働者が本来持っている荒々しい自己解放の力をプロレタリア革命に向かって爆発させていく階級的指導部と指導路線だ。

 体制内労働運動の総屈服うち破ろう

 安倍政権は、「戦後レジームからの脱却」の核心的攻撃として「新憲法制定」と「公務員制度の改革」を挙げている。「公務員制度の改革」とは200万人の公務員のリストラと、自治労・日教組の解体だ。
 ところが、この大攻撃に対して連合中央、自治労本部、日教組本部は、労組指導部として完全な破産をさらけ出している。“おとなしくしていれば、嵐が頭の上を何事もなく通り過ぎてくれる”とでも思っているのか。帝国主義の危機の深さを見れば、そのようなことはありえない。闘わないことは敗北の道だ。
 社会保険庁労組の協会派は、「真摯(しんし)に反省」「残業は仕方ない」「一時金の返納にも積極的に応じる」と全面屈服している。組合幹部はこれを「職員の雇用を守るためだ」と合理化している。
 だが、決戦を回避し、当局・安倍にはいつくばることで、職員の雇用が守れるのか! 「日本年金機構」への移行にあたり1万7千人の職員のうち12年度までに4千人のクビが切られようとしているのだ。組合員の怒りを組織し、断固とした反撃に出なければ、労働者の首は切られ、ボロボロに団結を崩されてしまうだけだ。協会派は、国鉄闘争で最後まで反対を貫けず一戦も交えずに組合の団結を崩されていった国労本部の屈服の歴史を、ここでも繰り返そうとしている。

 分割民営化との闘いの教訓

 社保庁を始めとする自治労・日教組の労働者は、今こそ動労千葉の闘いにとことん学び、教訓化して闘おう。動労千葉は国鉄分割・民営化の大攻撃に対して、2波のストライキを闘いぬき、組合ぐるみ、家族ぐるみの闘いで団結と雇用を守り抜いた。80年代の10年間に50人もの組合役員が闘争を理由に不当解雇されながらも、団結を崩されず組合を守り抜いたのだ。その闘いの歴史には、労働者として、労働組合として学ぶべき豊かな内容がある。
 闘った誇りを胸に動労千葉の労働者は、分割・民営化以降20年間、意気軒高と闘いぬき、組合の団結を守りとおしている。さらに階級的労働運動のセンターとしての役割を担い、「動労千葉のように闘おう」という青年労働者、労組活動家をたくさん生み出しつつある。これこそ動労千葉の闘いの勝利性、階級性を示しているではないか。
 闘いを指導した中野洋前委員長の総括、『俺たちは鉄路に生きる2』を見てみよう。
 「(当時の)世の中は、とてもじゃないけど分割・民営化に反対してストライキをやるなんて雰囲気じゃない。ものすごく重たかった。しかし、国鉄労働者はみな、『冗談じゃない。おれたちは朝から晩まで、夜中も仕事をしているのに』『おれたちのせいで赤字になったんじゃない』『一発異議申し立てしなかったら、腹の虫がおさまらない』という気持ちはみんな持っていた。……組合員が『もうここまで来たら首になっても闘う』と腹を固めていたから闘うことができた」
「3人に1人の首切りに対して闘わなかったら、組合の団結は絶対に破壊される。残りたい組合員が仲間を裏切って当局にすり寄り始めたら、組合員同士が疑心暗鬼になる。職場の仲間の連帯感は破壊されてしまう」「闘うことによってしか団結を守れないんだ」
 ここには労組活動家が指針とすべき豊かな教訓があふれている。

 敵の危機は労働者階級のチャンスだ

 攻撃に屈服していたら見えないが、労働者が団結して立ち上がれば、支配階級の危機はよく見えてくる。帝国主義は強いから凶暴な攻撃をかけてくるのではない。支配が危機を深め、これまでのやり方ではもう支配できなくなったから、改憲と労組破壊の攻撃を強めているのだ。
 「支配階級の側が盤石な時には、労働者がどんなに闘っても敵はびくともしない。しかし危機の時代には、われわれの闘いようによって敵を揺るがすこともできる。労働者階級の側から見ればチャンスの時代なんだ」(中野前委員長)
 この腐った社会を変えるのは、国会議員や、体制内労働運動の組合幹部ではない。労働者一人ひとりの闘いだ。私であり、あなたなのだ。
 労働者階級の解放は労働者自身の力と闘いでこそなし遂げられる。団結の中心は労働組合だ。労働組合は、労働者の組織的中心として、労働者階級の完全な解放の大目標を掲げて闘う時である。
 革共同はこの間、党の革命を断固としてやり抜き、労働者階級に深く根を張った革命党に飛躍するため、全力で闘ってきた。労働者細胞を無数に建設する闘い、体制内労働運動を打破し階級的労働運動路線を打ち立てる闘い、および労働者同志が党的階級的指導部として飛躍する闘いを一体のものとして前進させている。この闘いを貫き通す中にこそ、プロレタリア革命の勝利の道がある。
 7・29革共同政治集会に大結集し、11月労働者総決起へ進撃しよう。8月広島・長崎反戦反核闘争と8・15闘争に総決起しよう。

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週刊『前進』(2304号1面3)(2007/07/23 )

 反核東京集会 久間発言に怒り渦巻く

 広島・長崎との熱い連帯

柏崎原発事故の衝撃の中で反戦反核集会が開かれ、パネルディスカッションでは日帝の核政策への怒りが語られた(7月16日 杉並)

 7月16日、杉並区立産業商工会館で「反戦反核東京集会」が、8・6広島―8・9長崎反戦反核闘争全国統一実行委員会の主催で開かれ、115人が参加した。
 広島現地から駆けつけた全学連副委員長で被爆3世の中島敦史さんの訴えは、参加者を奮い立たせた。「久間発言は、資本主義を維持するためには原爆投下も『しょうがない』という支配階級の本音だ。青年たちが“こんな社会をぶっとばそう”と決起している。この闘いが被爆者の怒りと結合した時、原水禁運動の破産をのりこえ、労働者の団結で戦争も核も阻止できる」
 司会の杉並区議・北島邦彦さんは、この日午前の中越沖地震での柏崎刈羽原発の放射能漏れをとりあげ、「核の平和利用などあり得ない」と弾劾した。
 第2次大戦中の日本帝国主義による原爆開発を暴いたビデオが上映された後、パネルディスカッションが行われた。医師の松井英介さんが進行役、第5福竜丸元乗組員の大石又七さん、核問題研究情報センター代表の吉田義久さん、中島敦史さんがパネリストだ。
 大石さんは新たに出版した自著『これだけは伝えておきたい ビキニ事件の表と裏』を紹介し、「仲間が被ばくして死んでいった恨みは忘れない。この事件を参考に、これからの社会について若い人に考えてほしい」と訴えた。また吉田さんは「原爆投下も、安倍が進めようとしている日本の核武装も資本家どもの利害のためだ。これと対決する新しい質の反核運動を」とアピールした。
 冒頭に紹介した中島さんの発言も含め、パネリストの意見をまとめた松井さんは、ヒロシマ・ナガサキやビキニにおける日本政府による内部被ばくの隠蔽(いんぺい)を告発した。
 「とめよう戦争! 隊員家族と元自衛隊連絡会」の小多基実夫さんはPAC3の入間基地配備を弾劾し、「軍事パレードで国民に軍隊を慣れさせ、自衛隊は海外派兵を本務に格上げしている。改憲を止めることはこれと闘うことだ」と力強く提起した。
 また訪米から帰ったばかりの教育労働者が登壇し「『日の丸・君が代』強制に対するたった40秒の闘いで教育労働者が解雇されようとしている。この訴えに対しアメリカの教育労働者は『日本には民主主義はないのか』と激しく怒っていた。教員免許更新制の導入や全国一斉の学力テストなどは、アメリカの状況とまったく一緒だ。現場から国際連帯をつくり出して闘おう」と報告した。
 杉並原発問題研究会の白坂和彦さんや、「原子力空母の母港化に反対し基地のない神奈川をめざす県央共闘会議」代表の大波修二さんがアピール。動労千葉特別執行委員の後藤俊哉さんは「戦争に行かされるのは労働者。動労千葉の“戦争協力拒否宣言”を労組に広げ11月一万人結集で勝負しよう」と訴えた。
 最後に実行委事務局長の三角忠さんが行動提起に立ち、8・6広島―8・9長崎への大結集を訴えた。

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週刊『前進』(2304号2面1)(2007/07/23 )

 団結固め全逓本部打倒を

 郵政民営化攻撃と対決し11月総決起へ進撃しよう

 全逓全国大会闘争の総括

 10月1日の「郵政民営化」を前にしたJPU大会(6月19〜21日 那覇市)で、連合全逓本部は、すでに大きな破産を突きつけられている民営化を資本と一体となってゴリ押しし、一切の現場からの闘いをたたきつぶすことを宣言した。改憲情勢下で帝国主義の危機を救済する立場へと決定的に舵(かじ)をきったのだ。本部は全郵政との統合を大会で強行決定したが、そんなものは現場組合員の声ではない。”民営化絶対反対”をはっきりと掲げ、10・1攻撃と全面的に対決しよう。その闘いをぶち抜いて10・22「組織統合」を現場からの怒りでぶっ飛ばそう。全逓労働者は11月1万人結集に向け闘おう。
(写真 現場を踏みにじり組織統合と民営化推進を進める全逓本部を弾劾し、全逓労働者を先頭に会場を包囲するデモ行進【6月19日 那覇市】)

 現場は本部方針を認めない

 大会では、「要員不足は限界」「ゆうメイトの正規雇用化を」「JPSはスタンディング廃止へ」など、全国から怒りの声が噴出した。地元沖縄から、「『集団自決』は日本軍の命令・強制・誘導なしに起こりえなかった。何らかのアクションを」という声も上がった。しかし、その一切を踏みにじり、@生産性向上を唯一とする全郵政との組織統合、Aさらなる首切りと激しい労働条件低下をもたらす会社側提案の就業規則(本人同意なき出向・転籍)の協約化を認める運動方針案を97%の賛成(反対10票)で承認した。
 そんなものは現場組合員の声ではない。10票の反対票の背後には圧倒的多数の組合員の怒りの声がある。そもそもなぜこのような重大な事態に対して、全組合員の意志を確認する一票投票をしないのか。全郵政との組織統合や民営化賛成とは、本部の言う「組合員に幸せと未来をもたらす」ものではなく、組合員を地獄に突き落とすものだ。
 まず第一に、この組織統合は安倍=御手洗路線のもとで新会社から出された要請であり、組合員に際限ない強労働と団結破壊、競争と分断を強制するものだ。全郵政書記長は「左右の全体主義の排除や、各会社における事業の阻害要因排除は、労使の共通課題」(全郵政大会での総括答弁)とはっきり言っている。「組織統合」とは名ばかりで、完全に全郵政のもとへの吸収・合併なのだ。闘う組合員の排除によって成り立つ組合など労働組合と言えるか! そんなものを絶対に認めない。
 また第二に、「労使経営協議会」の中ですべてを決めていくとして、血と汗の結果かちとった団体交渉権までいとも簡単に投げ捨てた。首切りのための「出向・転籍」を新協約として丸のみした。これが10月以降どのような結果をもたらすのか。NTTや国鉄の分割・民営化を見れば明らかなように、ここからさらなる労働条件の切り捨てや「人減らし」が始まるのだ。すでに、一方では本務者から非常勤への置き換えが進み、他方では1万4480人の要員不足で大混乱に陥っている。非常勤の仲間も「処遇改善」の名のもとに競争と分断に引きずり込もうとしている。こんなことをどうして許せるか。
 さらに第三に、沖縄の地で開催した大会において、平和フォーラムや原水禁から手を引き、反戦の闘いをやらないと決定したことだ。「生産性の向上」とは「国益を守れ」ということと一体であり、企業防衛主義と愛国主義は同根の思想だ。
 すでに現場からのさまざまな反撃の闘いが始まっている。今後、改憲攻撃と民営化の矛盾がさらに拡大し、労働者の怒りが職場生産点から爆発していくことは間違いない。「10・1民営化」と組織統合に向け、1ミリも妥協することなく原則を貫いて闘おう。

 改憲情勢下の4大産別攻防

 日帝・安倍政権は「戦後レジームからの脱却」を掲げ、クーデターとも言えるやり方で改悪教育基本法や国民投票法などを成立させ改憲・戦争に突き進んでいる。その核心は、民営化攻撃によって、労働組合とりわけ自治労や日教組を始め4大産別の闘いをたたきつぶすことにある。労働者の3人に1人が非正規雇用になり、膨大な路上生活者やネットカフェ難民が生み出されたのも、「労働者の9割を非正規雇用にする」と宣言した95年日経連報告の実行の結果である。安倍=御手洗路線は、資本家階級総体をあげた労働者階級への大攻撃である。
 なぜ、これほどまでのすさまじい攻撃に出てきたのか。それは世界中で資本主義・帝国主義の支配が破綻(はたん)しているからである。最大の帝国主義国であるアメリカは、イラク・中東侵略戦争の敗勢にあえぎ、ブッシュ政権はとてつもない危機に直面している。日帝は経済面でも軍事面でもアメリカやEUに大きく後れをとっており、帝国主義の「最弱の環」になっている。だから、なんとしても改憲を実現し、帝国主義間争闘戦に勝ち抜こうとしている。
 安倍や御手洗ら支配階級は労働者の団結を最も恐れている。今こそ労働者の団結した力で安倍を打倒する絶好のチャンスなのだ。
 しかし、連合や全労連、その傘下の既成労組指導部は、この決定的瞬間にとんでもない裏切りの道を突き進んでいる。参院選で民主党へ投票することが、政治が変わる唯一の道であるかのように宣伝している。安倍政権が「労働組合はゴミだ」と労働組合への憎しみを込めて攻撃をむき出しにしているのに、労働組合は一切闘おうとしない。むしろ、労働者の代表を名乗りながら資本の意思を代弁し、労働者の闘いを抑え込んでいる。まさに最悪の抑圧者こそ、この体制内労働運動指導部なのだ。
 労働者階級の怒りは、もはや爆発寸前にまできた。「生きさせろ!」と発せられた青年労働者の声は、もはや革命以外にいかなる出口もないことを示している。腐りきった指導部に代わり、自分たちが新たな闘う指導部として闘おう。

 4・28勝利から職場闘争へ

 79年4月28日、反マル生越年闘争への報復処分(解雇3人、懲戒免職58人、停職286人、減給1464人、戒告1363人、訓告5009人)から28年。今年2月、ついに最高裁で懲戒免職処分取り消しの東京高裁判決が確定した。反マル生闘争の生き証人である被免職者の不退転の決意と、それを物心両面で支え抜いてきた全国の全逓労働者と支援の闘いが切り開いた勝利である。
 総括的に言えば、われわれの4・28反処分闘争の核心的課題は、被免職者の職場復帰をかちとることと同時に、これを連合全逓中央の路線と運動を現場から打ち倒していく全逓改革運動の拡大・強化に結合させることである。郵政民営化攻撃の真っただ中でかちとられた今回の反処分闘争の勝利を武器に、反合理化・反マル生闘争を再構築し、帝国主義を支える連合全逓中央打倒をかちとり、階級的労働運動を再生させよう。
 反マル生闘争も4・28反処分闘争も、全逓中央と現場との路線をめぐる激しい激突の中で、現場からの闘いで切り開いてきた。総評の75年スト権ストの敗北、77年名古屋中郵ストに対する5・4反動判決、同年全電通の公労協統一ストからの脱落、78年全逓中央の公労協統一ストからの脱落として、反マル生闘争は厳しい局面を迎えていた。当時の石井−保坂執行部は、協会派が闘わない口実としてそれまで路線化していた「長期抵抗大衆路線」から、「事業立案闘争」「全逓敵視の労務政策は変わった論」「全郵政との組織統合」「公明党との支持・協力関係」を含めた完全屈服の「中期路線」への転換を画策していた。
 当局による全逓労働者を敵視した労務政策に対する人間的・自己解放的怒りとともに、統一ストから逃亡した全逓中央に対する怒りが現場から爆発し、本部の思惑をのりこえてかちとられたのが78〜79年の反マル生越年闘争だ。年賀取り扱いを拒否して4億3000万通の滞貨を実現し、全逓史上最大の闘いをつくりだした。
 全産別にこの闘いが波及することに恐怖した支配階級は、東京の現場の集配青年労働者を狙い撃ちにした懲戒免職処分攻撃に出たのである。そして、この処分攻撃と闘う組合員に対する91年の全逓第99回臨時中央委員会での組合員権のはく奪決定という、とんでもない本部の裏切りをのりこえて闘ってきた。
 反マル生闘争に示された超勤拒否・物ダメ闘争こそ、職場の団結を固め資本・当局や体制内労働運動を打ち倒す最も有効な闘いだ。民営化決戦のただ中でこそ、この闘いがものすごい威力を発揮する。この時のために反処分闘争を闘ってきたと言っても過言ではない。今こそ物ダメ・ストライキを復権して闘おう。

 動労千葉労働運動の実践を

 民営化攻撃は絶対に打ち破ることができる。その最大の核心は、資本と非妥協で闘い「労働運動の力で革命をやろう」という立場で闘うのか、それとも「会社あっての労働組合」「闘っても勝てない」「闘えば会社が他社との競争に負ける」という体制内労働運動がふりまく敗北主義に屈服してしまうのか、というところにある。
 民営化を前にした郵政職場の現実は、毎日仕事を回している労働者が正規・非正規で分断され、「生産性向上」「品質管理」「自己責任」など強権的な労務管理の中で、労働者の誇りも人間性も日々破壊されている。ただ働きを強制される中で現職死亡まで出ている。まさに職場自体が今の社会の縮図だ。現場の若い組合員は「ここまでやられて、なぜ組合は闘わないのか」と怒りをぶつけ、機動隊が導入された70年代の全逓ストライキの話をすると「オレ、ストライキやってみたい」と声を上げているのだ。
 今こそ動労千葉の闘いに学び、これに続く労働運動を実践することである。どんな激しい攻撃に対しても、その激しさの中に敵の危機を見てとり、現場労働者の自己解放的決起に百パーセントの信頼をもって闘っているのが動労千葉だ。階級的団結を一切の総括軸にして、原則を曲げずに敵の攻撃を日々打ち破って闘うならば、必ず民営化攻撃を破綻させることができる。「10・1民営化」攻撃と全面的に対決し、”民営化絶対反対”を貫いて闘おう。
 全逓労働者は11月労働者総決起の先頭に立とう。この集会への組織化自身が激しい党派闘争であり、体制内労働運動との激突である。
 10月民営化攻防を職場で徹底的に闘い、その力を11月結集につなげよう。1万人結集を何としても実現し、労働組合が社会変革の主体として登場しよう。11月総決起の中に、この社会を転覆し、国境を越えた団結で世界を獲得する現実性があるのだ。
 青年労働者が生きることすら許されないこの社会の現状に激しい怒りを燃やして3・18―6・9へと決起し、職場での闘いを開始した。全逓大会でも青年労働者が闘いの先頭に立った。07年前半の闘いをとおして、「新たな革命の指導部」が登場しつつある。青年労働者はマル青労同に結集しともに闘おう。
 〔革共同全逓委員会〕

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週刊『前進』(2304号2面2)(2007/07/23 )

 地域医療の拠点つぶし狙う2病院への不当弾圧粉砕へ

 被逮捕者2人の即時奪還を

 管轄外の公安が弾圧の軸に

 7月11日、大阪府警・公安3課は、労働者医療・地域医療の拠点である高槻市の二つの病院に対してとんでもないデッチあげ弾圧をしかけてきた。富田町病院とうえだ下田部病院に対し、7月8日、休日で職員が少ない日をわざと狙って捜索という名の襲撃を行った。11日には、両病院が医療廃棄物を「無許可業者に委託していた」などとデッチあげ、富田町病院の事務長とうえだ下田部病院の総務課長を「廃棄物処理法違反」容疑で不当逮捕した。
 この弾圧は、6月13日の部落解放同盟全国連への弾圧と一体の、許すことのできない卑劣な政治弾圧である。「廃棄物処理法違反」と言うが、保健所などの行政がこれまで両病院を問題視したり、注意や指導を行ってきたという事実はまったくない。しかも管轄の違う公安警察がなぜ捜査の中心にすわるのか。部落解放運動つぶしと同時に病院つぶしを最初から狙ったフレームアップ弾圧であることは明白だ。
 すでに高槻医療・福祉労働組合を先頭に、病院の全職員、患者、守る会など地域住民が一丸となり、労働者医療・地域医療の拠点を守るために怒りを爆発させて立ち上がっている。今こそ全関西はもとより全国の力を結集し、労働者階級の総決起でこの卑劣な弾圧を徹底的に粉砕しよう。不当逮捕された2人の即時奪還をかちとり、弾圧粉砕の勝利を逆に階級的労働運動の飛躍的前進のバネに転化して闘おう。

 危機の日帝の絶望的凶暴化

 今回の大弾圧は何よりも、革命的情勢の急接近、労働者階級の大反乱の切迫に対する日帝の非常な恐怖と、そこからくる絶望的な凶暴化の表れである。
 安倍政権への労働者の怒りは今や極点に達している。年金や介護の破綻が示す社会保障制度の全面解体、大増税。首切り・リストラと低賃金・非正規雇用が増大し、過労死が横行する労働現場。貧困の拡大。他方で大企業は空前の利益をあげ、資本家階級の不正・腐敗が満展開している。こんな社会はおかしい、もうがまんできないという声が青年労働者を先頭に続々とあがり、安倍による戦争・改憲と民営化・労組破壊の攻撃への怒りと結びつき、革命を求めて大流動を始めている。
 安倍・自民党が社会保険庁解体攻撃を始めとして自治労・日教組つぶしに全体重をかけて襲いかかっているのも、この革命の現実性への恐怖にかられているからだ。今回の弾圧はこれと完全に一体のものとしてしかけられている。07年前半の動労千葉を先頭とする階級的労働運動の大前進が部落解放闘争の新たな前進をも切り開き、今秋11月へ向かって大きく発展しようとしていることへの、恐怖に満ちた予防反革命にほかならない。
 とりわけ病院へのむきだしの攻撃に踏み込んできたことは決定的だ。年金・介護・福祉という社会保障制度と医療制度は、今日の日帝による階級攻撃の最大の矛先であると同時に、その矛盾・破綻の集中点だ。安倍政権は「骨太方針07」で、日帝ブルジョアジーが帝国主義間争闘戦に生き残るためには、雇用政策(労働者支配)の転換とともに、戦後的な社会保障制度と医療制度の解体が不可欠だとはっきり打ち出している。
 そのためにはまず、富田町病院やうえだ下田部病院のような、労働者階級が自ら守り支えてきた地域医療の拠点を破壊することが日帝にとって死活の課題となっているのだ。逆に医療・福祉労働者を先頭に、闘う全労働者階級の力でこの攻撃を打ち破るならば、日帝を追いつめ、打ち倒していく闘いへの大きな突破口が切り開かれる。ここに圧倒的な確信をもち、弾圧への猛反撃に立とう。

 完黙・非転向が階級的原則

 勝利のかぎは、獄中と獄外が一体となり、完全黙秘・非転向の闘いを1ミリのあいまいさもなく百パーセント貫き通すことにある。弾圧との闘いは敵権力との死闘そのものだ。資本との妥協や取引に終始してきた体制内労働運動は、弾圧を受ければひとたまりもなく屈服する。だが資本・権力との絶対非和解を貫く階級的立場に立ちきって、そのもとに不屈の階級的団結をつくりだして闘えば、どんな弾圧も必ず打ち破れる。その核心が完黙・非転向である。
 完黙・非転向とは「自分の生死は全労働者階級の生死とともにある。仲間を絶対に裏切らない」という思想を徹底的に貫くことだ。「一人の首切りも許さない」という労働組合の原則と同様に、労働者階級の階級的団結を守るための絶対不可欠の原則だ。革共同は階級の党としてこの原則を最も非妥協的に貫き、日帝権力の超ド級の大弾圧をも次々と実力で粉砕し勝利してきた。この経験と教訓を今こそ全労働者階級人民の中に持ち込み、生かし切って闘おう。
 不当逮捕された獄中の仲間とその家族を全力で守り、支え、即時奪還の闘いに立とう。労働組合を中心に病院全体、地域住民が心をひとつにして総決起しよう。労働者人民の燃え上がる怒りで大阪府警を重包囲し、弾圧完全粉砕へ突き進もう。

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週刊『前進』(2304号4面1)(2007/07/23 )

 住民の「集団自決」を軍が命令 記述削除の教科書検定撤回を

 不起立と沖縄の闘い一つに

 革共同沖縄県委員会

 日本帝国主義・安倍政権の「戦後レジームからの脱却」が、新たな戦争(朝鮮侵略戦争から世界戦争)への絶望的な道であることが日々明らかとなっている。久間前防衛大臣の「原爆投下はしょうがなかった」発言こそ安倍政権の本音だ。
(写真 3500人が結集した「沖縄戦の歴史歪曲を許さない! 沖縄県民大会」)
 〈改憲・戦争と民営化・労働組合つぶし>の安倍政権への労働者階級の回答は何か。〈闘う労働運動を再生させよう>〈労働運動の力で革命をやろう>でなければならない。
 沖縄は今、まさに「第二の沖縄戦」前夜とも言うべき情勢だ。辺野古新基地建設への海上自衛隊の投入、東村高江区へのヘリパッド建設強行攻撃……。しかし他方で、この情勢を覆す沖縄の労働者階級人民の闘いが激しく闘われている。
 その最先端の攻防は、高校の日本史教科書でのいわゆる「集団自決」に関して、軍命があったという記述を削除するという攻撃だ。戦後沖縄の原点に対する暗殺攻撃に対して、沖縄の教育労働者を先頭に全県民が怒りの決起を開始している。
 この教科書問題は確かに「沖縄問題」だ。だが、そういうとらえ方はやはり一面的である。日本の労働者階級にかけられた大攻撃なのだ。とりわけ教育労働者への攻撃であることを曖昧(あいまい)さなくはっきりさせなければならない。
 沖縄の教育労働者と本土の教育労働者の力で教科書検定を覆す闘いをつくり出そう。それは同時に、文科省との「パートナー路線」にしがみつき「教え子を再び戦場に送るな」の誓いを投げ捨てようとしている日教組本部を打倒して、闘う日教組運動を再生させる闘いそのものだ。

 沖教組・高教組の決起を軸に島ぐるみの闘い

 「集団自決」における軍命の記述が削除された問題は、すべての沖縄県民に衝撃を与えた。とりわけ、この教科書で子どもたちに教えなければならない教育労働者が受けた衝撃と怒りはすさまじいものがあった。
 沖教組と高教組を軸とする「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」は直ちに緊急抗議集会を開催。4月17日には「沖縄戦の歴史歪曲を許さない教職員・OB緊急集会」を400人の結集で実現した。高教組の書記長は「この問題は文部科学省、安倍政権とのケンカだ。売られたケンカは買おう。相手に不足はない。やってやろうじゃないか」と戦闘宣言を発した。本気で検定を撤回させるために全県民を巻き込んだ闘いを開始した。6月9日の県民大会は、県民広場を埋め尽くす3500人の大結集がかちとられた。

 議会をも動かす

 さらには県議会と41市町村議会で検定撤回の決議があがった。これらは自然発生的に「沖縄の怒り」が高まって実現したのではない。沖教組・高教組が労働組合として目的意識的に、そして沖縄の教育労働者の誇りをかけて立ち上がった。これが情勢を決定的に揺り動かしたのだ。この情勢に追いつめられた沖縄自民党も県議会決議を採択せざるを得なくなった。
 だが安倍政権と文科省は、「門前払い」という態度に終始。ますます沖縄の労働者階級の怒りを逆なでした。県議会は7月11日に再度の決議を採択。同一の定例会期内に同じ問題で県議会が二度の決議をあげたのは初めてだ。塩崎官房長官は即座に検定撤回の考えはないことを表明。沖縄の怒りの火に油を注いだ。
 県議会の文教厚生委員会は、渡嘉敷・座間味の「集団自決」遺族からの聞き取り調査を行った。座間味では当時の村助役の妹が「兄は『軍からの命令が下った』と言っていた」という決定的な証言を行った。
 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」は、「つくる会」などが進める沖縄戦の歴史歪曲(抹殺)に反対し、何よりも渡嘉敷・座間味の元戦隊長(とその遺族)が岩波書店と大江健三郎氏を訴えた裁判で被告側を支援するために設立された団体だ。
 「隊長が『集団自決』の軍命を下した」というのは虚偽であり、名誉毀損(きそん)――これが連中が提訴した主張だ。文科省は、この裁判を理由にして記述を削除したのだ。
 確かに渡嘉敷・座間味の元戦隊長が「軍命を下した」という具体的な証言はなかった。しかし問題の核心は「軍官民共生共死の一体化」という沖縄戦の本質にある
 「敵用に一発、自決用に一発手榴弾が配られた」という数多くの証言が物語っている。まぎれもなく「自決せよ」という軍命を示している。しかし、提訴は元戦隊長が具体的に軍命を下した証拠がないことを理由に起こしたのだ。
 それに対し、戦後62年を経て初めて、当該が決定的な証言を行った。45年3月25日夜、座間味で元戦隊長は「自決命令」を出し、村助役は「軍からの命令で、敵が上陸してきたら玉砕するように言われている。間違いなく上陸になる。国の命令だから潔く一緒に自決しましょう」と語っていたのだ。
 「岩波裁判」も今回の教科書検定も、敵はその主張の土台が否定された。だが、そんなことは始めから分かっていたことだ。文科省は「死人に口なし」とばかりに死者を二度殺し、その体験のあまりの凄惨(せいさん)さから口を閉ざしてきた遺族たちに唾を吐きかけてきたのだ。
 その一方で、元戦隊長は投降して「捕虜」となり、戦後も生き延びてきた。座間味では、住民は元戦隊長に「たくさんの部下を死なせた上に島の住民を死に追い込んだ」と石を投げつけた。そんな彼を米軍が助けている。こういう輩(やから)を卑劣漢というのだ。
 今日の情勢の中で、半世紀以上も口を閉ざしてきた遺族たちが声を上げ始めたことを労働者階級の魂で受け止めなければならない。彼らが声を上げ始めたのは、高教組を先頭とする沖縄の労働者階級の闘いに励まされてのことだ。同時に、これをしっかり確認する必要がある。

 日教組つぶしを狙う安倍政権の攻撃と対決

 今回の問題は、けっして沖縄だけの問題ではない。高教組の組合員は次のように語っている。
 「沖縄では沖縄戦の証言者がいるから、こんな教科書はでたらめだと子どもたちもすぐにわかる。しかし、この教科書は全国で使用される。沖縄戦の証言者の話を聞くことのできない本土の子どもたちは『これが沖縄戦だ』と教えられることになる」
 「集団自決」と「住民虐殺」は沖縄戦の本質を示す決定的事象だ。「軍隊は住民を守らない」という沖縄戦の本質を抹殺した後には何が残るのか? 「沖縄県民は老若男女が打って一丸となってお国のために敵と戦った」となってしまう。
 「その結果として県民の4人に1人が死んだことはしょうがない」とでも言うのか! こんな教科書で子どもたちに何を「教える」というのか。
 82年の「住民虐殺」削除の問題では、当時の鈴木政権と森文部相は沖縄の怒りにたじろぎ、記述を復活させた。しかし安倍政権はどこまでも居直り続けようとしている。これこそ安倍政権の「戦後レジームからの脱却」攻撃であり、その核心である日教組つぶしの攻撃だからだ。この問題は「教え子を再び戦場に送るな」を掲げる日教組に突きつけられた刃なのだ。一人ひとりの教育労働者が(そしてすべての労働者が)歴史選択を突きつけられている。
 同時に最も重要なことは、沖縄の教育労働者や遺族たちを先頭とする全県的な怒りによって、安倍政権が出した日教組つぶしの刃が、逆に安倍ののど元に突きつけられていることだ。
 ここで絶対に引いてはならない。教科書問題では、「つくる会」などが一貫して「南京大虐殺」「軍隊慰安婦」「沖縄戦」の記述の抹殺を狙ってきた。「南京大虐殺」も「軍隊慰安婦」も教科書から消えた、後は「沖縄戦」だ、と襲いかかってきているのだ。久間発言をみれば「ヒロシマ」「ナガサキ」すら抹殺されかねない。それは日本帝国主義・安倍政権が「同じことをもう一度やる」と決断しているからにほかならない。
 教育労働者が労働者階級としての責任にかけて立ち上がることが求められている。教科書問題にとどまる問題ではない。こういう形で教育労働者に対する「支配と服従」の攻撃が進められきたのだ。教育労働者の階級性が曇らされ、団結と職場支配権が切り崩されてきたのだ。それは教育労働者を再び「教え子を戦場に送る」聖職教師へとつくりかえる攻撃だ。

 戦争は学校から

 「日の丸・君が代」は天皇制への「支配と服従」を、儀式をとおして教育労働者と子どもたちに強制する攻撃だ。教科書問題は、教室の中で教育労働者と子どもたちを戦場へ駆り立てる攻撃だ。学校が戦争一色に染め上げられる。「戦争は学校から始まる」のだ。
 沖縄の教育労働者と本土の教育労働者がひとつの階級として立ち上がった時に、この教科書問題は安倍政権を打倒する巨大な展望を切り開く。東京の教育労働者を先頭に全国で不屈に闘われている不起立の闘いと、沖縄の必死の闘いがひとつにつながった時に、沖縄と本土の教育労働者の連帯と団結が生み出される。
 この闘いこそが「教え子を再び戦場に送るな」という教育労働者の魂を揺さぶり、安倍政権による日教組つぶしの攻撃を跳ね返す21世紀の教育労働者の新たな闘いを生み出す。それは改悪教基法、改悪教育関連4法を自らの闘いで一片の紙切れと化し、改憲を打ち砕く闘いそのものなのだ。

 森越執行部を打倒し30万組合員の総決起を

 全国の教育労働者が沖縄の闘いに熱い視線を寄せている。組合員数3000人あまりの高教組が組織の誇りと存亡をかけて闘い、60万の沖縄の労働者階級と130万県民を率いて闘っている中に労働組合の持つ無限の可能性が示されている。日教組30万組合員が全国で声を上げれば、こんな検定をひっくり返すことはまったく可能だ。
 だが、日教組・森越執行部は何をしているのか? 確かに6・9県民大会には荘司副委員長を先頭に全国の日教組の代表が参加した。日教組本部は沖教組・高教組の要請を受けて撤回署名の取り組みを全国に下ろしてはいる。
 しかし今の現実は、率直に言って沖縄の両教組と労働者の闘いの域をいまだ突破できていないのではないのか。その最大の障害物こそ今の日教組本部だ。昨年の教基法改悪阻止闘争からの逃亡、今春の教育関連4法案改悪阻止の闘いからの完全逃亡と、この教科書問題での日教組本部の対応は同じ問題だと言わなければならない。
 日教組本部こそが、沖縄と本土の教育労働者の分断を固定化する最悪の役割を果たしている。徹底的に断罪しなければならない。
 いや、すでに95年段階で「パートナー路線」のもとで文科省の軍門に下った日教組本部に、教科書問題で文科省との闘いを組合員に呼びかけることなどできるわけがない。教育4法案の採決が強行される時に、日教組本部は改悪を前提に文科省との交渉という大裏切りを行っている。
 こんな日教組本部が、安倍政権の全体重をかけた組織壊滅攻撃と、その重大な攻防である教科書問題で文科省とケンカができるわけがない。日教組本部は参院選の民主党選挙にうつつを抜かしているが、県議会で検定撤回を求める請願署名を採択しないという与党の決定に追随したのは民主党ではないのか!
 「復帰」闘争の中軸を担った沖縄の教育労働者の闘いは、労働者階級として日本(本土)と全世界の労働者階級との連帯の中で「基地の島」の現実を覆そうとした誇り高い闘いの歴史だった。
 「復帰」以降の教育公務員特例法の適用によるスト権の剥奪(はくだつ)、80年代の沖縄国体を前にした「日の丸・君が代」強制の攻撃。これらと血を流して闘い団結を守り抜いてきた沖縄の教育労働者の闘いが、21世紀に不死鳥のようによみがえりつつある。
 80年代の「日の丸・君が代」闘争当時、日教組は「400日抗争」の渦中にあり、その結果として日教組指導部が右翼労戦統一にかじを切る中で、沖教組・高教組への裏切り的な「指導」が沖縄の教育労働者の闘いにどれほどの困難をもたらしたか。同じ歴史を再び繰り返すのか。それとも闘う教育労働者の輝かしい歴史を切り開くのか。
 臨時国会と教科書の印刷期限であるといわれる秋に向かって、沖縄では新たな闘いが提起されている。県民大会を8月6日か9日にという声も出ている。今年の8・6ヒロシマ―8・9ナガサキ闘争は沖縄の闘いと文字どおり一体化して闘われようとしている。そして11月労働者集会へ、沖縄と日本(本土)の教育労働者の団結した新たな闘いを開始しよう。日教組本部を打倒して闘う日教組の再生をともにつくり出していこう。

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週刊『前進』(2304号5面1)(2007/07/23 )

 日本以上の格差社会アメリカ

 新自由主義政策が元凶だ

 島崎 光晴

 米国の労働者階級の貧困化と格差社会は日本をはるかに上回る。その具体的要因をみると、新自由主義政策こそが元凶であることが分かる。これに対し米労働者階級は、30年代以来の「第2の高揚」と呼ばれるような歴史的な反乱を開始している。日米韓労働者の連帯のために、米国の労働者階級の現状に肉薄したい。日本での民営化・労組破壊攻撃と闘うためにも、アメリカ帝国主義の新自由主義の実態を知る必要がある。また、米帝を検証すると、新自由主義が階級対立を先鋭化させつつ大恐慌と世界戦争を引き起こすものであることがはっきりする。なお島崎著『現代帝国主義論U』第T部第3章を参照してほしい。
(写真 今年のロサンゼルスのメーデー。移民労働者が中心に)

 全米で5千万人が貧困層

 米労働者階級の貧困化は、もはや我慢の限界を超えている。貧困層は5千万人で、韓国の総人口に匹敵する。ここで言う貧困層は、18歳未満の子どもが2人いる家族の場合では年間所得が2万j(240万円)以下。60年代の古い計算方式による統計なので、実際はもっと多いと推測される。米国の全人口の11%強、1210万世帯が「食料不足」の状態にある(02年調査)。
 貧困の最新の特徴は、従来の中間層が貧困層に転落していることだ。かつては貧困層が都市部に集中し、中間層は郊外に拡散する傾向だった。ところが今や郊外に住む中間層がどんどん貧しくなり、郊外に住む貧困層の人口が都市部のそれを上回った(05年調査)。
 例えば、妻が働いていたスーパーから解雇されたうえ、夫も病気で仕事を休まざるをえなくなると、たちまち住宅ローンの支払いに四苦八苦する(2・28付ニューズウィーク誌)。NHK番組で、白人の世帯主が低賃金の仕事に変わったことで所得が減り、住宅ローン支払いのために食費を切りつめるしかなく、食卓にはマカロニだけ、子どもが「ピザを食べたいよ」と嘆く場面が映されていたが、家の感じから郊外のようだった。
 統計上でも中間層が所得総額に占める割合は70年の17%から05年には15%にまで低下した。ただし、実感としては“中間層はもういなくなった”という雰囲気だ。“米国は、特権階級、プロフェッショナル階級、貧困層、貧困ライン以下(アフリカンアメリカン・ヒスパニック・ネイティブアメリカン・難民・移民など)の4階層に分かれている”との指摘もある(参考文献@)。昨年来の1千万人もの移民労働者の決起は、こうした現状への激しい怒りの噴出だ。
 もう一つの特徴は、貧困層では職業、医療保険、住宅事情、職場への交通手段、育児、学校教育などすべての問題が絡み合っている。一つ悪ければ全部が悪くなる関係だ。「諸要因の全配列に手をつける場合にのみ、貧困の淵から抜け出せる」(参考文献A)。貧困の「諸要因の全配列」を変えること、つまり革命以外に解決しないのだ。
 他方、資本家階級はますます裕福になっている。まず所得で見ると、上位2割の層が所得全体に占める割合は50・4%に及ぶ(05年)。さらに純資産では、上位1%の世帯で3割強、上位10%の世帯で約7割を占める(図1)。全体の6割の世帯は金融資産がなく借金があるだけだ。
 貧困層が鎮痛剤に頼りながら時給7j(840円)ほどの二つの仕事を掛け持ちしている一方で、裕福な者たちは塀で囲まれた広大な居住区域でのうのうと暮らしている。その隔離された居住区域は全米で5万以上もあり、2000万人が住む(参考文献B)。

 図1 階層別の純資産所有率(04年 %)
 下位50% 2.5%
 中位40% 27.9%
 上の下位5% 12.0%
 上の中位4% 24.1%
 最上位1% 33.4%

 60%もが「生活賃金」以下

  労働者階級の貧困化と貧富の格差の極大化は、直接には以下の要因による。
 第一に、80年代以来の政府・資本家による労働組合の破壊、労働市場の改編と非正規雇用化、賃金水準の大幅切り下げである。
 実質賃金は73年をピークとして今にいたるまで低下しつづけ、過去50年間で最低水準になっている(図2。連邦最低賃金は60年代末がピーク)。貧困レベルの賃金(平均時給7j)以下の労働者が約2800万人、全労働者の23・3%を占める(03年統計)。また、最低の生活ができる「生活賃金」は時給にすると14j(約1600円)と試算されるが、全労働者の60%もが時給14j以下という統計もある(参考文献C)。
 特に、日本より先行して80年代から非正規雇用化が進められてきた。非正規雇用は04年時点で全雇用労働者の約4割を占めた。なかでも、「雇用関係を回避する究極形態」と言われる「独立契約者」、つまり個人請負が急増している。労働法はまったく適用されない。最近の移民は「独立契約者」という扱いをされて、最初の3カ月間は賃金がまったく支払われない。その他、派遣などさまざまな形態の膨大な非正規労働者がいる(参考文献AC)。「ウォルマートで働いている人間が、ウォルマートの、それも汚れのついたクリアランスのシャツさえ買えないような給料しかもらえない」(参考文献C)

 規制緩和と税制度の大改悪

  第二に、規制緩和・民営化である。70年代末から運輸・金融・通信・電力・農業などの部門で事業への参入規制が撤廃された。既存企業に比べて労組の弱い新規参入企業は、低コストで競争をしかけることができた。これに対抗して既存企業も労組の弱体化に躍起になった。その結果、トラック運送業では、組合組織率が77年の60%から95年の20%にまで低下し、実質賃金は30%も下がった。長距離通信業でも、組織率は83年の55%から96年の29%に落ちた。規制緩和→競争激化→労組破壊、という攻撃が大々的に行われたのだ。
 さらに、連邦・州政府の公的部門の民営化は、第2次大戦後の労組組織化の中心が公務員だったことからして、労働組合の力をますますそぎ落とした。実際にも公務員を民間市場に投げ出して、労働者総体の賃金切り下げと非正規雇用化を促進するものとなった。
 第三に、80年代以来、米国の税制が、資本家階級を徹底的に優遇し労働者階級から収奪する制度に大改編されてきた。所得の最高税率は大幅に引き下げられた。一方、貧困ライン以下の賃金でも同率で支払わなければならない社会保障税(給与税)は大幅に引き上げられた。日本と違い、老後の年金給付の基金が課税によって徴収される仕組みだ。
 特にブッシュ政権は、相続税の軽減、株式の配当や値上がり益(キャピタルゲイン)への減税など、資本家階級への減税を繰り返している。01年・02年に決められたこの二つの減税だけで、円換算でなんと34兆円! ブッシュ政権による減税を総計すると、01年から10年までの平均の減税額は、所得下位20%では768j(9・2万円)なのに対し、最上位1%では50万j(6000万円)近くに達する見込みだ(表 参考文献D)。

 母子家庭補助は3分の1に

 第四に、社会福祉の解体をはじめとした社会保障の削減である。特に重大なのは二つ。
 一つは、1935年の社会保障法以来、18歳以下の扶養児童を持つ貧困世帯に無期限で補助金を出す制度(要扶養児童家庭扶助)が解体された。米国で「社会福祉」と言えばこれを指すほどの重要な制度。母子家庭の急増で受給者は93年には1400万人を超えていた。ところが96年の「福祉改革法」で、受給期間に制限がつけられ、給与を受けるには働くことが義務づけられた。これによって受給者が3分の1に激減し、とくにシングルマザーの圧倒的多数が最低賃金労働に就くしかなくなった。ワーキングプアのいる世帯の4割が母子家庭、という調査もある。福祉解体と超低賃金労働者の大量排出が同時に強行されたのだ。
 もう一つは医療保険の問題。近年、医療費が上昇し、平均的なサラリーマン世帯の保険料(会社と共同負担)は年間1万j(120万円)を超えた。自己破産の半数以上が高額な医療費がきっかけ、という調査もあるほどだ。そうした負担増に耐えかねた企業が医療保険を放棄するケースが続出している。このため国民の16%に当たる約4600万人が無保険者だ(05年)。無保険者は医療を受ける場合、集団医療センターや救急救命室に行くしかない。ところがブッシュ政権は企業の保険負担を減らす狙いから、「医療貯蓄口座」という個人責任の制度に移し換えようとしている。公的医療の民営化だ。

 中米や中国の低賃金と一体

  第五に、低賃金諸国に対する米帝を始めとする帝国主義の投資・貿易の拡大に伴い、帝国主義国の労働市場と中南米や中国・アジアの労働市場とが事実上結合され、それが米国内の賃金や生活の水準を下降させている。
 何よりも、膨大な移民と出稼ぎ労働者が流入しつづけている。米国内の「不法移民」は1200万人。その「不法移民」が今や、清掃などのビル・住居サービス、食品加工、家具製造、建設業、農業などで中核的な労働力となっている。移民の大半を占めるヒスパニックの39%もが貧困レベルの賃金だ。
 さらに、中南米や中国・アジアなどへの直接投資、低賃金による現地生産、より安価な製品・部品の輸入が、米国内の賃金を押し下げている。メキシコの工場労働者の日給は約4j(480円)。しかも電機・自動車という帝国主義の基幹産業さえも、中南米・中国などで現地生産されるにいたった。80年代までは軽工業にとどまっており、帝国主義国と新植民地主義体制諸国の生産は区分されていた。それが今や米帝・日帝を筆頭に、新植民地主義体制諸国で帝国主義本国と同じ生産力水準で生産をしている。だから当然にも、世界の賃金が新植民地主義体制諸国の賃金水準に収斂(しゅうれん)していく傾向にある。こういうのは資本主義史上初めてのことだ。
 米国の、そして日本の格差社会は「一国」的に生じているわけではない。中南米や中国などの低賃金労働と表裏一体で起きている。そこでは現に今、児童労働や無償労働など「工場法」以前の状態が日常だ。だからこそ、米国や日本の労働者に対し「工場法」以前に戻すような攻撃が襲いかかっている。米国・日本の格差社会は、こうした全構造の変革、つまり世界革命以外には変えられない。

 大恐慌と世界戦争へ帰結

 以上のような労組破壊、規制緩和・民営化、資本家への大減税、社会福祉の解体と社会保障の削減、対外投資・貿易の大拡張などが、新自由主義の具体的な政策である。18世紀イギリスの古典的自由主義は、封建的な抑圧に対して資本家階級が自由を求めるものだった。現在の新自由主義は、国家による市場への介入、企業への規制、労働者の保護を敵視し、資本家階級としてそうした国家的制約から自由になろうとするものだ。
 現代帝国主義は、第2次大戦前後の革命的危機に震えあがり、革命を予防するための階級協調的な政策体系を築いてきた。経済政策では、国家による市場への介入、市場や企業への規制、公共部門の直接運営が基本となった。労働者の権利も一定認め、社会福祉も一定容認した。この総体を国家独占資本主義(国独資)政策という。戦後の帝国主義はそうした階級協調策が可能な経済力、物質的基盤をもっていた。
 ところが、70年代に戦後発展が終わり長期不況が始まるとともに、米帝が没落し帝国主義間争闘戦が激化し始めた。階級協調策を可能とした物質的基盤は失われた。従来は一定の効果を持った国独資政策は阻害物となり大破綻(はたん)した。それは帝国主義の体制そのものを崩壊させかねない深刻さをもっていた。
 こうした長期不況、争闘戦激化、体制的危機という新しい時代に直面した現代帝国主義は、延命するために新たな変容をとげていった。それが新自由主義だ。国独資政策を完全否定して市場原理主義に、階級協調策からむきだしの搾取・収奪策に転じたのだ。
 80年代初めの米レーガン政権を筆頭にイギリスのサッチャー政権、そして日本の中曽根政権が、新自由主義政策を本格的に導入した。91年のソ連解体後、崩壊したスターリン主義や残存するスターリン主義を始め世界市場の再分割闘争が激化した。こうした「グローバル化」は、帝国主義諸国をますます新自由主義政策に駆り立てた。
 しかし、新自由主義は資本主義の矛盾をむき出しにし、帝国主義の危機を極限にまで深めるものでしかない。

 資本主義の最後のあがき

 何よりも、新自由主義は労資の階級対立を歴史的に先鋭化させる。新自由主義は、労働者を少しでも保護することを憎み、労働者を使い捨てにし、労働者種族として何世代にもわたって再生産することを放棄する。賃労働と資本の原理的関係がそのまま現れるのだ。現時点からとらえ返すと、労働者の権利や社会保障を一定認めていた時代こそ、特殊で例外的なものだった。
 体制内労働運動は、そうした特殊な時代に存在しえたにすぎない。しかし、新自由主義のもとではそうはいかない。体制内労働運動はどこまでも屈服を深め、結局は帝国主義的な労働運動に転落していく以外にない。
 新自由主義は無制限の搾取のために、「自己責任」と称して、あらゆる社会的連帯を破壊しようとする。労働者の団結につながりそうな社会的きずなのひとかけらすらも絶滅しようとする。そのためにますます差別・抑圧の社会構造を強める。だからこそ労働者の団結が、新自由主義に対決し帝国主義を打倒する最高の武器となるのだ。
 新自由主義はまた、世界大恐慌を引き起こす。新自由主義によって再び成長軌道が戻ったわけではない。むしろ、「小さな政府」を掲げながら実際は財政赤字を大膨張させた。しかも経済規制のうち最も緩和されたのは、銀行業と証券業の分離など大恐慌を防ぐためにとられた金融面での規制だった。大恐慌に対する防波堤を自ら取っぱらったのだ。すでに帝国主義経済は80年代以来、投機ブームとその崩壊を繰り返している。結局、歴史的大局的にみれば、新自由主義は大恐慌を準備するものでしかない。
 新自由主義はさらに、世界戦争を促進する。規制緩和・民営化は、各部門での企業の集中と一層の独占体制をもたらし、独占企業間の死闘戦を世界的に拡大させ、世界市場の再分割と再分割戦=世界戦争を急速に引き寄せることとなった。また、新自由主義は新保守主義とも結びつきながら、イラク侵略戦争のような軍事的な世界再編、絶望的な世界再分割戦を現実化させている。
 新自由主義は総じて、階級対立を先鋭化させつつ、帝国主義を大恐慌と世界戦争に引きずりこむ。第2次大戦もベトナム戦争も、米帝は国内的には階級協調策をとりながら行った。国内で階級戦争をしかけながら世界戦争をやるというのは初めてだ。世界中に革命的情勢が到来するのは確実だ。その意味で、新自由主義は資本主義の最後のあがき、帝国主義の最末期のあり様でしかない。世界革命の勝利へ、階級的労働運動が真価を発揮する時だ。
    ◇
〔参考文献〕
@『超・格差社会アメリカの真実』小林由美 日経BP社
A『ワーキングプア』デイビィッド・シプラー 岩波書店
B『新自由主義』デヴィッド・ハーヴェイ 作品社
C『ニッケル・アンド・ダイムド』バーバラ・エーレンライク 東洋経済新報社
D『現代アメリカの経済政策と格差』坂井誠 日本評論社

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週刊『前進』(2304号5面2)(2007/07/23 )

 米帝経済が抱える“爆弾”

 住宅バブルの崩壊によりサブプライム問題が噴出

 住宅金融会社ばたばた倒産

 米帝経済は大きな「爆弾」を抱えて危機を一層深めている。住宅バブルの崩壊と、それによるサブプライムローン(低所得者など信用力の低い層を対象にした住宅ローン)問題の再燃だ。これがヘッジファンドの破綻や金融機関の危機に連鎖し始めている。
 今年3月に、ニューヨーク証券取引所がサブプライムローン大手を上場廃止にした。これをきっかけにニューヨークと東京の株価が大幅下落した(世界同時株安の第2局面)。ショックはいったん沈静化したが、その後もサブプライムローンの焦げ付きが拡大、6月には米大手証券会社ベアー・スターンズ傘下のヘッジファンドがサブプライムに絡む運用に失敗し投資家の資金引き出しを停止したことが明らかになった。7月に入り、大手の米格付け会社が、サブプライムローンを組み込んだ住宅ローン担保証券(RMBS)の大量格下げに踏み切った。これでニューヨーク市場のダウ平均株価は大幅に下げた。その後、株価は反発しているが、水面下で危機は進行している。
 何よりもこの間、米帝経済をかろうじて牽引(けんいん)してきた住宅バブルが、ついに崩壊したことが米経済全体に打撃を与えている。
 米帝の住宅バブルは、00〜01年のITバブルの大崩壊が、米帝経済を29年型大恐慌へたたき込むものとなることに米帝が恐怖し、ブッシュ政権が空前の大減税・財政投入と歴史的な低金利政策を行うことによって、つくりだされた。この間、00年から05年にかけて住宅価格は年平均6・4%も上昇した。これは第2次大戦直後を除いて、最長かつ最高である。この住宅バブルが資産効果をとおして個人消費を拡大し、次第に全産業的な設備投資の拡大をももたらし、米経済全体の浮揚とバブル化を生起させていった。しかし、それもついに行き詰まったのだ。
 60近くの住宅金融会社がばたばたと倒産し、新規の住宅建設は大幅に減っている。住宅建設最大手のDRホートンは、4〜6月期の住宅販売実績が昨年同期を40%も下回った。1〜3月期のGDP統計では、住宅投資が前期比マイナス15・4%と大きく落ち込み、これが全体を下に引っぱって、GDP成長率は0・6%(年率換算)にとどまった。これは02年10〜12月期の0・2%以来の低さだ。住宅バブルの崩壊が米経済全体に打撃を与えている。

 低所得層を対象に高利貸し

 住宅バブルの過程では、低所得層に金を貸して住宅購入を誘導することが行われた。このサブプライムローンはローンを組むにあたって、安定収入、職業、資産などを問わない。その代わりに金利は高い。最初は低い金利(年6%強の一般金利に1〜2%を上乗せ)でスタートし、4年後に17%まで跳ね上がるタイプもある。低所得の労働者層を食い物にする高利貸しだ。住宅バブル末期には、頭金までローンで貸すということも行われた。金利が低下した03年以降に急増し、昨年末には住宅ローン全体の14%弱を占めるまでになった。
 それが今、バブル崩壊、住宅価格の下落で ローンが払えなくなり、家を差し押さえられる労働者が続出している。そしてサブプライムの破綻と住宅価格の下落が相互に拍車をかけている。1〜3月には、金利変動型サブプライムの延滞率が16%弱と過去最高を記録した。最初の数年間だけ金利を抑えるローンは、来年あたりから支払金利が高くなるので、返せなくなる労働者が続出する。サブプライムの残高は昨年末時点で1・3兆j(約160兆円)。これは米の名目国内総生産の1割に相当する。破綻の影響は深刻だ。
 ローンの焦げ付きはヘッジファンドの破綻をつくりだしている。サブプライムローンの半分以上はRMBSなどの金融商品に組み込まれ、売りに出された。利回りが高いのでヘッジファンドなどが多くこれを購入した。ところがこれが裏目に出て、高配当を狙った投資家どもは今、真っ青だ。

 ヘッジファンド、銀行に波及

 ヘッジファンドに投資(融資)している銀行、証券会社に損失は連鎖的に波及する。そこには日本の金融機関も含まれる。破綻が広がれば「円借り取引」の縮小→ドル安・円高の進行→ドルの大暴落→世界経済の大混乱にも発展しかねない。
 こうして戦後世界体制の基軸国としての米帝国主義は、経常収支・財政収支の巨額の赤字を膨らませながら、ドル大暴落、世界大恐慌の危機を一層深めているのだ。
 これに対する労働者階級の革命的回答は、階級的な労働運動の強力な発展と、国際的団結だ。その力をもって帝国主義打倒−世界革命の勝利をかちとることだ。

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