ZENSHIN 2007/11/05(No2318 p08)

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週刊『前進』(2318号1面1)(2007/11/05 )

 世界革命へ5700人の団結 日韓米連帯で戦闘的大デモ

 沖縄の怒りに続き本土で決起

 “闘う労組の全国ネットを”

 今日は新たな出発の日

 

【写真】 「団結ガンバロー!」。戦争・改憲と民営化・労組破壊の帝国主義打倒へ、参加者の決意がひとつの叫びとなった(11月4日 東京・日比谷野音)

11月4日、日比谷野外音楽堂で開かれた全国労働者総決起集会は、闘う労働運動の再生へ巨大な一歩を切り開いた。全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部、全国金属機械労働組合港合同、国鉄千葉動力車労働組合の3労組呼びかけによる11月労働者集会は今年で10回目。その節目の集会に5700人が参加し、圧倒的な解放感と戦闘的な息吹があふれた。(関連8面)

  米韓の闘う労働者と合流

 秋晴れの好天気に恵まれ、正午前には参加者が続々と会場に結集した。港合同の中村吉政副委員長が開会のあいさつに立ち、「生存権をかけて立ち上がる青年層とともに闘おう」と強調し、関西地区生コン支部への弾圧や中曽根不当労働行為発言への反撃を訴えた。
 動労千葉の長田敏之書記長が11・4アピールを提起した。「労働者が団結して歴史の最前線に登場しなければならない時代がやってきた」「闘う労働組合が中心になれば、全国の至るところから大反乱が起きる条件が生まれています」「団結した労働者の闘いこそ社会を変革し、歴史をつくる力だ」「全国各地に闘う労働組合の共同センターや労働学校を」と力強く訴えた。
 集会には韓国とアメリカの戦闘的労働者が参加した。韓国の民主労総ソウル地域本部副本部長のチェジョンジンさんは、非正規労働者を大量に生み出した新自由主義を告発、11月11日に非正規悪法廃棄と韓米FTA批准阻止を掲げ労働者大会を開くと宣言した。不当解雇に職場占拠で闘うイーランド一般労組の律動グループ「セビョク(夜明け)」が律動を披露した。
 アメリカからは、UTLA(ロサンゼルス統一教員組合)CAMS(校内の軍国主義に反対する連合)代表のアーリーン・イノウエさんが発言。軍の募兵官による校内での募兵活動を制限させる闘いに取り組んできたと報告し、「『日の丸・君が代』による軍事化に抵抗している皆さんの勇気に感謝する。教え子を再び戦場に送るな」と声を強めた。
 ノースウエスト航空の解雇攻撃と闘い444日間の長期ストを貫いたAMFA(航空整備士労組)ローカル33のテッド・ルードウィック委員長、愛国者法による弾圧と闘うILWU(国際港湾倉庫労組)ローカル34のラッセル・K・ミヤシロさんが発言し、米日韓の労組の国際連帯をさらに強める決意を述べた。
 特別アピールとして、沖縄県高等学校障害児学校教職員組合の松田寛委員長のメッセージをNTT労組の労働者が代読した。沖縄戦における日本軍による集団自決の強要という歴史的事実を教科書から抹殺する文科省の検定意見に抗議し、その撤回を求めて9月29日の12万人決起を実現したのは、沖縄高教組を先頭とする労働組合の力だった。松田委員長のメッセージは、県民大会の会場に行けなかった人びとも含め、40〜50万人が憤りの声を上げた沖縄の怒りの大きさに触れ、「戦争政策にあらがうためにも、全国の仲間、県民とともに検定意見撤回まで奮闘する」と明確に述べている。そのメッセージに会場から熱い拍手が巻き起こった。

  解雇恐れず闘う決意示す

 「日の丸・君が代」不起立被処分者の根津公子さんが発言に立った。根津さんは「貧困層を国家政策として生み出し、そこから募兵に応じさせるアメリカの現状は、明日の日本の姿だ」と訴え、来春、不起立を貫けば解雇される恐れがある中で、「子どもたちを戦場に送らないために理不尽な命令には従えない」ときっぱり述べた。
 国鉄1047名の解雇撤回に向けて、国労小倉地区闘争団の羽廣憲さん、動労千葉争議団の高石正博さんが発言した。羽廣さんは、「解雇撤回・JR復帰」を投げ捨てる4者・4団体路線を激しく批判し、高石さんは「動労千葉争議団は、原則を絶対に曲げずに闘いぬく」「今こそ分割・民営化攻撃に最後の決着をつける闘いに立ち上がる」と決意を表明した。
 決意表明では、自治体労働者を代表して愛媛県職の労働者が発言。また全金本山労組の中野七郎委員長は、解雇を撤回させ職場復帰してから2年半になると報告し、「多数派組合を目指して闘おう」と訴えた。全逓労働者は、郵政民営化を超勤拒否で迎え撃ったと述べ、「解雇・処分を恐れず体制内組合の重圧と対決すれば勝利することができる」と確信に満ちて呼びかけた。
 連帯あいさつでは、国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会発起人代表の佐藤昭夫弁護士が弾圧との闘いを訴え、憲法と人権の日弁連をめざす会代表の高山俊吉弁護士が、裁判員制度との闘いを呼びかけた。とめよう戦争への道!百万人署名運動事務局長の西川重則さんは、「新テロ特措法」阻止と9条改憲反対署名の取り組みを訴えかけた。
 さらに、三里塚芝山連合空港反対同盟事務局次長の萩原進さんが登壇。市東孝雄さんの農地を奪おうとする成田空港会社との闘いを訴え、農業と農家を切り捨てる新農政に労農連帯の力で立ち向かおうと強調した。
 青年のリレーアピールは、社会を変革する新たなエネルギーが力強く登場していることを印象づけた。人事評価制度を容認する体制内指導部と激しくぶつかる自治体の青年労働者、闘いで解雇を撤回させた東京西部ユニオンの青年の熱意ある発言が続いた。全逓の青年労働者は、超勤拒否闘争を「逃げ出したくなる自分を変える闘いだった」と総括、広島の教育労働者は「不起立は体制から自らを解き放つ闘いだ」と断言した。沖縄のNTT労働者は、12万決起のかなめを担ったのは青年だったと指摘し、青年労働者こそ先頭に立つと宣言した。東北大生の織田陽介さんは、「法政大弾圧はますます革命を引き寄せている。学生が団結し闘えば資本主義は終わる」と言い切った。
 閉会のあいさつを関西生コン支部の高英男副委員長が行い、同支部にかけられた弾圧を弾劾した上で、「地域に闘う労組の共同センターをつくり、本当の意味で闘う労働組合の全国ネットワークをつくり上げよう」と呼びかけた。11月労働者集会は、この課題に本格的に踏み出したのだ。
【写真】 闘う教育労働者が登壇。根津公子さんの「『君が代』不起立を戦争協力拒否の闘いとして誇りをもって貫こう」の訴えに熱い連帯の拍手

  銀座を解放区にしたデモ

 集会後、参加者は意気高くデモに出た。警察が弾圧し、右翼が妨害を試みる中、デモ隊の闘志はますます燃え上がった。途中、警察が一人の仲間を不当にも逮捕した。怒りに燃えたデモ隊は、銀座通りに出ると道路いっぱいに広がった。デモ隊の渦の中に警察の指揮官車が孤立する。何梯(てい)団かに分かれた隊列はいつしかひとつにまとまった。長蛇の列が続き、銀座は解放区と化した。警察の規制をはねのけ、デモ本来のあり方を実力で取り戻したのだ。戦闘的デモを貫徹し、どの参加者も晴れ晴れとした表情だ。11・4は革命に向かう歴史的一歩を確実に切り開いた。

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週刊『前進』(2318号8面1)(2007/11/05 )

 世界革命へ5700人の団結 日韓米連帯で戦闘的大デモ

 労働者こそ歴史の最前線に

 

【写真】 銀座・数寄屋橋交差点を解放区に変え、警察車両をも飲み込む勢いで道いっぱいに広がって進撃するデモ隊。機動隊によるデモ規制は完全に粉砕された(11月4日)

11・4全国労働者総決起集会の呼びかけ3労組による開会のあいさつ、「2007年11・4アピール」、閉会のあいさつの要旨を掲載します。(その他の発言などは次号に詳報。編集局)

【写真】 〔上〕登壇した韓国民主労総ソウル地域本部の労働者 〔下〕UTLA、ILWU、AMFAなどアメリカ労働者

 職場から闘い組織しよう

11・4アピール 国鉄千葉動力車労働組合書記長 長田敏之さん

 11月労働者集会は今年10周年を迎えました。私たちが訴え続けてきたのは、労働運動のどうしようもない現状を現場の労働者の力で変革しよう、闘う労働組合の全国ネットワークをつくりあげ、現場の労働者が情勢の主導権を握ろうということです。
 私たちの闘いは、いまだ小さな力に過ぎません。しかし着実に全国に根を張り、時代をとらえて大きく発展しようとしています。
 今、私たちは「国境をこえた労働者の団結こそが世界を変える」と揺るぎない確信をもって語ることができます。
 10周年にあたり、すべての仲間に訴えます。「あらゆる制動や反動を打破して職場から闘いに立ち上がり、全国各地に闘う労働組合の共同センターや労働学校を網の目のように組織しよう」。
 もう一点、冒頭、連帯労組関西地区生コン支部へのたび重なる刑事弾圧を弾劾し、これを粉砕することを本集会の共同の決意としたい。
    ◇
 9月29日、沖縄では11万6千の怒りの声が結集しました。11万6千という結集は数十年に及ぶ沖縄闘争の歴史上最大の規模です。日米安保体制と対決する「基地の島」沖縄から積もり積もった怒りの声が噴出し、反撃が開始されたのです。
 この闘いを先頭で組織したのは、沖縄県高教組の仲間たちです。闘う労働組合が中心になれば、至るところから大反乱が起きる条件が生まれています。
 沖縄の怒りに続こう。われわれは、本集会の全参加者の名をもって要求します。直ちに教科書検定意見を撤回せよ。すべての基地を撤去せよ。
    ◇
 自民党支配が崩れ落ちようとしています。小泉−安倍は、すべての労働者に耐え難い苦しみや痛み、貧困と格差を強制し、年金や医療制度を破壊し、農業を破壊し、労働者をワーキングプア、ネットカフェ難民という現実に突き落としました。改憲国民投票法制定や教育基本法改悪を強行し、自治労・日教組を「国民の敵」と呼んですべてを労組破壊攻撃にすり替える卑劣な総攻撃を組織しました。しかし、我慢のならない怒りの声が噴き出し、参院選で自民党が惨敗し、安倍政権を打倒したのです。労働者が団結して歴史の最前線に登場しなければならない時代がやってきたのです。
 世界中に連鎖したサブプライムローン危機は、帝国主義の世界支配が崩壊しようとしていることを示しました。あくどいマネーゲームが世界中の金融機関を危機に陥れ、G7でもなんの方策も立てられないという現実の中で、200万世帯に及ぶ労働者が住宅を差し押さえられて路頭にたたき出されようとしています。イラク侵略戦争も出口のない泥沼に落ち込んでいます。まさに資本主義体制は瓦解の危機にあえいでいます。
    ◇
 労働者はこれまで、あらゆる方法で団結を破壊されてきました。しかし、ついに怒りの声があふれ、至るところで反撃の火の手が上がっています。時代は動こうとしています。労働者が「われわれこそ社会の主人公だ」と声を上げ、その団結した力を最前線に登場させようとしています。
 根津さん、河原井さんが解雇も辞さない決意で「日の丸・君が代」不起立闘争を貫き、日教組を揺るがす闘いに発展しようとしています。200万人の公務員労働者の民営化攻撃に屈服する自治労本部や、「生産性運動の推進」を綱領に掲げて全郵政と組織統合した全逓本部に対し、現場から激しい怒りの声が上がっています。
 国鉄1047名の解雇撤回闘争は、渦巻く怒りの声、改憲攻撃への危機感をひとつに結合させる決定的な位置にせり上がっています。しかしその一方で、解雇撤回要求を取り下げて政府に「政治解決」をお願いするという屈服が生み出され、闘いの原則をめぐる鋭い衝突が起きています。
 何よりも、未来と希望を打ち砕かれた青年たちが「生きさせろ!」「われわれは奴隷じゃない」と声を上げ、闘いに立ち上がっています。彼らを非正規職に突き落とした責任の半分は、資本との折り合いをつけることだけに汲々とする体制内的な労働組合の幹部たちにあります。だからこそ彼らの闘いは、腐った労働組合の幹部たちからの統制処分や弾圧と激しく衝突し、社会の根本的な変革を求める闘いとなっています。時代に通用しなくなった古いものが崩れ落ち、その渦中から新たな闘いが生まれ出ようとしているのです。
 すでに報告がありましたとおり、全世界で労働者階級の反撃が始まっています。
    ◇
 今求められているのは、情勢に負けることなく怒りを組織し、展望を語り、原則を曲げずに団結を組織することです。労働者が自らのもつ力と可能性を自覚し、誇りと団結を取り戻そう。自らがこれまでのあり方を日々打ち砕き、「団結した労働者の闘いこそが社会を変革し、歴史をつくる力だ」という、ただその一点に依拠して闘いぬくことです。
 われわれは、本日を新たな出発点として、憲法改悪阻止に向けた大闘争を開始する決意です。「新テロ特措法」の制定を阻止しよう。改憲と戦争、民営化と労組破壊の大攻撃を粉砕しよう。
 職場・地域から闘いを組織しよう。全国各地に闘う労働組合の共同センターや労働学校を組織しよう。闘う労働組合の全国ネットワークをつくりあげよう。国境を越えた労働者の国際連帯闘争を発展させよう。

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週刊『前進』(2318号8面2)(2007/11/05 )

 国際連帯で闘うこと誓う

 開会あいさつ 全国金属機械労働組合港合同副委員長 中村吉政さん

 米・韓(民主労総)の海外代表の本集会への出席に感謝を申し上げ、世界の資本主義のグローバリズムに対し、国際連帯で闘うことを誓い合いたいと考えます。
 テロ特措法期限切れに伴い、11月1日、インド洋の海上自衛隊に撤収命令が発令されました。しかし、福田政権はあくまでも再開のために新テロ特措法の成立を狙っています。新テロ特措法を阻止し、イラクからの撤兵へとつなげていこう!
 国を揺るがす沖縄12万人の怒りの決起に続き、ともに闘い検定意見を撤回させよう!
 90年代以降の新自由主義の加速化と強行の中で膨大な非正規雇用労働者、絶対的貧困層が生み出されてきました。倒産、リストラ、非正規雇用化、偽装請負、違法派遣、残業代不払いのまん延。これを促進してきたのがアメリカの対日要求、日本経団連の圧力を背景にした派遣法・労働法・労組法など労働法制と企業法制の改悪です。
 こうした中でわれわれは企業内本工主義を克服し得ない労働組合、労働運動後退の現状を問題にしなければなりません。
 そして今、青年層からも非正規雇用労働者が生存権をかけて、正規化を求め、団結権を発揚して次々と闘いに立ち上がっています。彼らとともに闘おう!
 関西生コン支部に対し、2005年1月以来5次にわたる刑事弾圧がかけられてきました。10月31日、大阪高裁は関生の産別闘争に対する反動的判断には固執したものの、量刑においては実刑を取り消し、5年の執行猶予としました。これはこの間の闘いと力関係によって確保した成果だといえます。
 また在日コリアン・朝鮮総連への弾圧、排外主義との闘いも重要です。
 国鉄1047名闘争の勝利のために、中途半端な和解路線をのりこえて政府・JRの不当労働行為責任追及の闘いを明確にしよう。そのためにも国鉄分割民営化にかかわる86年国会答弁とこれを否定する中曽根・不当労働行為発言への責任追及の闘いが重要です。
 本集会で掲げたスローガンを職場から地域から闘い抜く労働運動を、共同闘争として力強く発展拡大していきましょう!

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週刊『前進』(2318号8面3)(2007/11/05 )

 地域に闘う拠点つくろう

 閉会あいさつ 全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部副委員長 高英男さん

 集会全体の報告をして、2点だけ問題提起をしたいと思います。
 まず本日の集会参加は5700人の仲間が結集しました、これは昨年よりも800人も多い結集です。そして120の労働組合の賛同と、1184人の個人の賛同をいただきました。大変ありがとうございます。先ほどいただいたカンパは138万1300円と10jです。この中には匿名で個人で、15万円もカンパをいただきました。大変ありがとうございます。
 集会のまとめですが、まず初めに、開会あいさつにもありましたが、私ども関西地区生コン支部の武建一委員長の2年6カ月にも及ぶ実刑判決を阻止した。これは今日集会に参加してもらっている仲間、全国の仲間の熱い支援のおかげだと思っています。
 判決そのものはわれわれ生コン支部の産別運動を否定するものではありますけれど、全国の仲間の団結によって実刑を阻止したことについては高く評価をしたいと思います。
 2点目には、全国に闘うネットワークをつくるために何をするのか。ネットワークそれぞれの地域で企業の枠を越えて、地域に拠点をつくろうではありませんか。
 まずやれるところからそれぞれ、お金のあるところはお金を出す、人間がいるところは人間を出し、知恵のあるところは知恵を出して、それぞれの地域で共同事業による共同センターをつくり、各地に拠点をつくり出して、闘う労働組合のネットワークを現場の闘争からつくりあげていこうではありませんか。
 この10回目を迎える集会を節目にこのことを確認し、本集会のまとめとしたいと思います。

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週刊『前進』(2318号1面2)(2007/11/05 )

 おことわり

 11・4全国労働者集会の報道のため、報道特別号として発行を遅らせました。

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週刊『前進』(2318号2面1)(2007/11/05 )

 小沢民主党の翼賛政治許さず対テロ給油新法を粉砕しよう

 4大産別先頭に福田政権打倒へ

 9・29沖縄に続く11・4日比谷での大集会とデモは、日帝・福田政権をますます断崖(だんがい)絶壁に追いつめている。11月1日には対テロ特措法の期限がついに切れ、海上自衛隊はインド洋からの一時撤退を強いられることになった。福田は新法案の制定による派兵継続を必死に求め、小沢・民主党との裏取引を画策してあがいている。世界大恐慌の切迫と労働者支配の破綻(はたん)の中で、体制の延命を求めてもがく福田政権を、労働者階級の力で今こそ打倒しよう。4大産別決戦を大爆発させ、職場から対テロ給油新法制定絶対阻止の国会闘争に立ち上がろう。

 戦争と改憲攻撃が生んだ守屋の腐敗

 日本帝国主義とその支配体制の危機と腐敗はますます深まっている。政府・自民党と高級官僚と民間資本の三者が結託して、労働者階級人民を徹底的に搾取し収奪しながら、自らは国家財政を食い物にして私利私欲の追求に走ってきた姿が、次々と暴露されている。
 防衛省の「ドン」と呼ばれた前事務次官・守屋武昌の汚職事件は、その最たるものだ。守屋はその地位を利用して、軍事予算に群がる業者とのゴルフや宴会に明け暮れてきた。巨額の金が動く自衛隊装備の受注で特定の業者に便宜を図り、億単位の水増し請求をさせ、一緒になって甘い汁を吸ってきたのだ。
 労働者階級には「国のために命をささげよ」と要求する一方で、自分は人民大衆からしぼりとった税金を湯水のように使って私腹を肥やす。しかもこうした連中が、自らの犯罪行為を棚に上げて年金や国家財政破綻の責任をすべて労働者階級に押しつけてきた。公務員労働者を「泥棒」呼ばわりし、「自己責任」を叫んで人民から福祉や医療を奪ってきたのはこいつらではないか! まさに罪万死に値する。絶対に許すことができない。
 重要なことは、こうした不正・腐敗が、日帝が戦争と改憲攻撃に突き進んでいる中でこそ、これまで以上に大々的に展開されていることだ。
 守屋は、小泉・安倍政権下で旧防衛庁・現防衛省の実権を握り、有事法制の制定や自衛隊のイラク派兵を先頭に立って推し進めてきた張本人だ。沖縄では普天間基地の移設先として名護市辺野古への新基地建設を率先して主導した。海自の米軍艦船への給油をめぐる隠蔽(いんぺい)工作も、彼の指導下で発生した。それらを守屋は、同時に巨額の利権を伴う「戦争ビジネス」として、歴代の防衛庁長官始め政府首脳と一体となって推進してきたのだ。
 「国際貢献」とか「国益」とか言いながら、実は戦争をも資本の金もうけの手段にする。これが今、日帝が現にやっていること、これからますます大々的にやろうとしていることだ。資本主義・帝国主義の支配は今やここまで腐りきっている。こんな体制をもはや一日も許しておくことはできない。

 小沢・民主党との取引にすがる福田

 福田政権と日帝は、参院選で火がつき沖縄で燃え広がった労働者階級人民の怒りが、守屋問題でさらに決定的に爆発することにおびえている。この怒りの包囲網にさらされる中で対テロ特措法の期限が切れ、海上自衛隊がインド洋からの撤退に追い込まれたことは、政府・与党に大打撃を与えている。
 11・4の労働者大集会と戦闘的デモは、福田をさらに直撃した。青息吐息となった福田は唯一、民主党・小沢との党首会談による裏取引にすがって延命の道を打開しようとあがいている。労働者階級の総反乱の開始を前にして、自民党と民主党との「大連立」によって支配階級全体の危機突破を図ろうとする動きも始まっている。
 だがそれは、小泉・安倍から福田政権へと引き継いできた日帝の労働者階級に対する攻撃が、いささかでも弱まることをなんら意味しない。逆に民主党や連合をも動員して一層必死に、帝国主義者としての執念をもって貫こうとするものだ。
 10月31日、防衛省は、米軍再編に伴う基地負担の代償として支払う交付金の支給対象となる地方自治体を指定した。米原子力空母の母港化を受け入れた横須賀市などが指定される一方で、沖縄の名護市始め4市町村、岩国市、座間市は対象から除外している。国策に従わないものはバッサリ切り捨てるという「アメとムチ」の攻撃だ。
 教科書問題での沖縄の怒りの噴出に対しても、あれこれと言葉を濁して逃げ回りながら、検定意見の白紙撤回には絶対に応じようとしない。逆に産経新聞などの右翼メディアを動員して、12万人の決起を「ウソだ」と否定する許しがたいデマをばらまいている。
 そして当面する戦争と改憲攻撃の最大の突破口として、海自の派兵再開を可能にするための対テロ給油新法案の国会成立に必死になっている(6面参照)。イラクとアフガニスタン侵略戦争への参戦継続は、石油資源の略奪をめぐる帝国主義間争闘戦の激化の中で、日帝の死活にかかわるからだ。また、ここで派兵が断念に追い込まれたら、9条改憲など不可能だという激しい危機感が福田政権をとらえている。

 御手洗ビジョンの貫徹に賭ける日帝

 こうした中で、日本経団連会長の御手洗が、10月23日に秋田で行った講演は重大である。(要約別掲)
 御手洗はそこで「『希望の国、日本』の実現に向けて」と題し、本年1月の御手洗ビジョンを、安倍政権倒壊後の今日の情勢下であらためて、日帝ブルジョアジーの総路線として貫き通すことを宣言した。そのために当面の最重要課題として、@経済の成長力強化A道州制の導入B働き方の改革C社会保障制度の大改革、の四つを挙げた。
 @の成長力強化とは第一に、労働者一人当たりの労働生産性の引き上げである。労働者をより徹底的に酷使すること。第二に、世界経済のブロック化が進む中で、大きく立ち遅れている東アジアの勢力圏化にいよいよ必死に突き進むことだ。
 Aの道州制導入は、戦後の地方自治制度を解体し、自治体をつぶして新たな独裁的な中央集権国家をつくりだすものだ。御手洗自身が「究極の構造改革」というように、統治形態の大転換=改憲に直結するものである。
 Bの「働き方の改革」とは、現在の雇用破壊・賃金破壊の攻撃をもっと極限的に推し進め、非正規・低賃金の労働者をさらに膨大に生み出すものである。6000万労働者のほとんどをワーキングプアにたたき込んでいくものだと言っていい。
 Cの社会保障制度改革では、年金などの企業負担を外し、社会保障費の全額を大衆課税でまかなえと主張し、足りなければ消費税率を大幅に引き上げろと言っている。国も企業も労働者の生活にもう責任など持たない、生きられなければのたれ死にせよということだ。
 御手洗講演は、世界金融恐慌とドル暴落・世界大恐慌の危機が迫る中で、存亡のふちに立つ日帝ブルジョアジーが、労働者階級への全面的な階級戦争にうって出る以外にないとあらためて決断したことを示している。労働者階級にとっては、真っ向から革命に立つ以外にない情勢がいよいよ成熟しているのだ。

 労働者の団結した力こそが勝利開く

 

11・4で開始されたプロレタリア革命への総進撃の第一歩は、危機にあえぐ福田政権の完全打倒だ。福田を倒せるのは唯一、11・4に結集した、闘う労働者階級の団結した力だ。とりわけ動労千葉を始めとした11・4呼びかけの3労組や、9・29沖縄の12万人決起を実現した高教組・沖教組・自治労の闘いが示すように、闘う労働組合が今こそその底力を発揮し、先頭に立って全情勢を切り開くことにある。
 何よりも決定的なのは、国鉄・教労・自治体・全逓の4大産別における階級的労働運動の大前進である。4大産別は、日帝ブルジョアジーにとっては労働者の戦争動員の支柱となるべきものだ。だがプロレタリア革命の側から見れば、ソビエトの形成と労働者権力樹立への拠点だ。この4大産別を革命の側が獲得するのか、敵階級の側が反革命的に制圧するか、ここが今日、最大の攻防点になっている。
 ここで絶対に勝ちぬき、体制内労働運動を打倒して、4大産別の労働運動の下からの革命的再生を切り開こう。
 全逓で始まった産業報国会運動との全面対決をやりぬき、郵政民営化を粉砕しよう。社保庁をめぐる福田・舛添との激突に勝利し、道州制による国家大改造と対決して自治体労働者の総決起をかちとろう。沖縄の教育労働者の不退転の決起と連帯し、戦争協力拒否の「日の丸・君が代」不起立闘争を圧倒的に拡大しよう。国鉄1047名闘争の解体と幕引きを図る4者・4団体路線を粉砕し、国鉄闘争の再生をかちとろう。
 これらの闘いと結合して、対テロ給油新法粉砕の国会闘争に全力で立とう。職場と街頭で、侵略戦争参戦阻止と福田政権打倒を訴えて闘おう。とりわけすべての青年労働者と学生に、革命の時代が来たことを真正面から訴え、未来をわれとわが手で切り開く闘いにともに立ち上がることを呼びかけよう。
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 経団連・御手洗が示す「4つの最重要課題」

――10月23日、東北経営者大会・人事労務管理者大会での講演
@成長力の強化
 「一人当たりの労働生産性を引き上げる」
 「法人税率を国際水準並みに引き下げる」
 「EPA、FTAの締結促進」
A地域経済の活力向上
 「全国一律で底上げを図るというやり方は困難」
 「道州制の導入は、言うなれば究極の構造改革」
B働き方の改革
 「自らのライフスタイルに合った働き方を」
「国民の働き方に対する意識改革が必要」
 「年功カーブを描く処遇制度から、『仕事・役割・貢献度』を基軸とした処遇制度へ見直していく」
C社会保障制度と少子化
 「社会保障個人番号と社会保障個人勘定の創設を」
 「消費税の引き上げにより必要な財源をまかなっていく」「全額を税でまかなうことも考えられる」

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週刊『前進』(2318号3面3)(2007/11/05 )

焦点 防衛省・守屋の汚職と腐敗

 派兵強行し私腹こやす

 守屋武昌前防衛事務次官をめぐる贈収賄事件は、日帝の腐敗しきった姿を全面的にさらけ出している。守屋は防衛省官僚のトップに座り、自衛隊のイラク・アフガニスタン侵略戦争参戦を中心になって進めてきた人物だ。その守屋が、軍需専門商社「山田洋行」から200回以上ものゴルフ接待を受け、月100万円以上にもなる宴席に12年間も招かれてきたというのだ。
 しかも、守屋だけでなく複数の防衛庁長官経験者がそうした宴席に同席していたことも明らかになっている。
 日帝がすでに侵略戦争に突入している中で、防衛省官僚と軍需資本とのここまでただれきった腐敗と癒着が暴かれたことは、まさにロッキード事件を超える重大な事態である。
●1億8000万円の水増し請求
 山田洋行が防衛庁に納入した自衛隊の装備品に関して、その代金が水増し請求されていたことも暴かれている。水増し請求されたのは、防衛庁と山田洋行が01年3月に契約した「チャフ・フレア・ディスペンサー」計24セット(契約金額約8億1000万円)。水増し額は1億8000万円にも上る。
 山田洋行が02年から06年に防衛庁から受注した実績は総額174億円で、その9割が競争入札によらない随意契約だった。つまり、守屋ら防衛省の高級官僚や自民党の政治家、軍需資本が国家財政をいくらでも食い物にすることができたということだ。
 次期輸送機CXのエンジン調達をめぐっても、守屋は今年7月、山田洋行元専務の宮崎が設立した軍需専門商社「日本ミライズ」に便宜を図り、「随意契約すればいいじゃないか。どうして日本ミライズじゃいけないのか」と部下に迫っていた事実が判明している。
 CXエンジンの選定にあたっては、03年の装備審査会議の議長を事務次官だった守屋が務め、同年8月に山田洋行が代理店となっているゼネラル・エレクトリック社を納入業者に選んでいる。
 CXエンジンは1基6億円で、CXは双発機のため2基が必要、最大で40機調達する予定になっている。部品などを含めると総額では1千億円を超えると言われる。守屋は、こうした巨大な軍事費にたかり、食い物にしてきたのだ。
●自民党幹部も汚職に関与
 10月29日、衆院テロ対策特別委員会で行われた証人喚問で、守屋は、自衛隊員倫理規定に違反して山田洋行の元専務・宮崎から200回以上のゴルフ接待を受けていたことを認めた。だが、接待の見返りに山田洋行に便宜を図ったかどうかについては、一切否定する態度をとった。
 しかも、複数の防衛庁長官経験者が同じ宴席にいたことを認めながら、その名前を伏せることによって政府・自民党に脅しをかけた。守屋がこれらの政治家の名前を明らかにすれば、福田政権も新テロ対策特措法もすべて吹き飛ぶ大問題となるからだ。
 守屋は、自衛隊補給艦が給油した燃料がイラク戦争に使われた事実を押し隠すための工作を進めた中心人物でもある。
 イラク侵略戦争開戦前の03年2月25日、自衛隊補給艦「ときわ」が米海軍補給艦ペコスに80万ガロンの燃料を給油し、それが空母キティホークに給油されてイラク戦争開戦に使われた。この事実が同年5月に国会で追及された際、政府は「給油量は20万需ガロン」と虚偽の答弁をし、燃料がイラク侵略戦争に使用されたことを否定した。この時、国会対策のかなめを担ったのも、当時、防衛局長の任にあった守屋だった。
 さらに、沖縄の米軍普天間基地の移設先として辺野古新基地建設を主導してきたのも守屋だ。06年5月に日米政府が最終合意した直前の日米協議で、米側は戦闘機装弾場や214bの岸壁を要求していた。日帝はこの事実をひた隠しにしてV字沿岸案を決定し、実際には新基地建設でこれを強行しようとしている。その交渉・決定の中心には守屋がいた。
●腐りきった帝国主義を倒そう
 軍事予算は巨大な金が動く。ロッキード事件に見られるように、それはしばしば政権を揺るがす汚職事件の舞台になってきた。
 だが、今回の守屋汚職事件が重大な意味をもつのは、自衛隊がイラク・アフガニスタン侵略戦争に現に参戦している中で引き起こされたということだ。日帝が戦争と改憲の攻撃に突き進めば進むほど、防衛省の高級官僚や政治家と軍需資本の癒着と腐敗は深まっていく。
 国家財政に群がり、甘い汁を吸い尽くしてきたこうした連中こそ、労働者階級を徹底した貧困に突き落としつつ、社会保障を解体し大衆増税を強行してきた張本人だ。年金破綻(はたん)、財政破綻の責任を公務員労働者に押しつけて「泥棒」呼ばわりしてきたのも、こうしたやからだ。揚げ句の果てに、「愛国心を持て」「国のために命をささげよ」と労働者に強要し、侵略戦争に動員しようとしているのだ。
 彼らにとって、戦争もまた私利私欲を満たす手段になっている。膨大な人民の命を奪う侵略戦争を強行しながら、宴会に明け暮れる守屋の腐敗しきった姿はなんだ。
 これこそが帝国主義の正体だ。一刻も早く、帝国主義を打倒しなければならない。その力を労働者階級は持っている。
 守屋の汚職問題をうやむやにして逃げ切ろうなどという政府・自民党の策動を絶対に許してはならない。新テロ対策特措法を断固粉砕し、福田政権を打倒しよう。

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週刊『前進』(2318号4面1)(2007/11/05 )

 階級的労働運動の貴重な教訓

 陶山健一『反戦派労働運動』刊行に寄せて

 中野洋動労千葉前委員長に聞く

 70年闘争は革命のエネルギーとパトスが最も激しく燃えた

 青年労働者の熱気とロマンを復権させて革命を切り開こう

 「陶山健一重要著作集1『反戦派労働運動(上)』」刊行に際し、同書を推薦する中野洋動労千葉前委員長にインタビューした。中野さんは、70年安保・沖縄闘争当時、動労千葉地本の労働者として千葉県反戦青年委員会議長の任に就いており、反戦闘争と国鉄闘争の先頭に立って闘っていた。中野さんは、若き日の故陶山健一同志が戦闘的青年労働者に向かって提起したアピールが、きわめて今日的な意義を持っていることを強調した。(聞き手は本紙・高田隆志)

 青年労働者の闘い

 ――この本の今日的意義についてどうお考えですか?
 反戦青年委員会運動が果たした役割について今日的に正しく総括することが、青年労働者の闘いをこれから大きく切り開いていく上で非常に大切だと思います。
 それは階級的労働運動についてはっきりさせるためにも必要です。階級的労働運動というのは、本質的には資本主義を否定する運動です。それが60年代の反戦青年委員会の闘いには明確に貫かれていた。そのことをこの本の中からつかみ取ってほしい。
 69年と言えば、僕は29歳。陶山さんは32歳でしょ。当時の革共同政治局はみんな30代前半で、激しい闘いを日々指導していた。
 僕も若かったから、毎日が闘いに次ぐ闘いでした。昼は仕事をして、それから東京にデモに行って、夜帰ってきて職場に寝泊まりし、翌日また総括集会やって、その日の晩また東京に行くとか。そういう夜も昼もない日常の繰り返しでした。
 革共同は56年ハンガリー革命を契機に誕生するわけだけど、大衆的に登場したのは60年安保です。60年の全学連を中心とした大衆的闘争の爆発で、社会党・共産党に代わる新左翼運動が日本に台頭した。この新左翼運動の特徴は、とにかくみんな年が若いことです。
 反戦青年委員会の運動は、既成の社・共、総評が闘争をネグレクトしていく状況の中で20代の青年労働者・学生が中心になってつくりあげた闘いです。これは歴史上かつてなかったことです。だからすごく稚拙なところはたくさんあるけど、革命に向けたエネルギーやパトスが、歴史の中で最も激しく燃えた時です。
 こういう時代だから、指導部は路線を要求されたわけですね。陶山さんなど当時の革共同の政治局は大変だったと思う。労働運動ではそれまでの蓄積は何もないんだから。この本をみていると、陶山さんがその要請にこたえて、ランニングシャツ、ねじり鉢巻きで、四畳半のちゃぶ台の前で、書き殴っているイメージが浮かんでくるんですよ。短期間に書いたと思いますね。
 毎日毎日、「この問題どうすりゃいいんだ、この次どうすればいいんだ」という無言のプレッシャーが全国・全産別の青年労働者から突きつけられてくる。それに必死で答えなくちゃならない。そういう中で生まれたのが、この本であると思います。
 当時、労働運動について勉強しようと思っても、他党派の書いたものしかない。戦後労働運動を勉強するのも、総評取り巻きの学者が書いたものなんかを買って読んでいた。それをどういう立場で読むかということが重要で、どういう闘争を組むのかを考えながら読む。僕は、読む時に、もし自分がその立場にいたらどういうことをやったのかなということを考えながら読んだ。たとえば、日鋼室蘭闘争とか、全自動車の闘争とかね。

 社民と統一戦線

 ――反戦青年委員会は当初、総評、社会党がつくったんですね。
 当時の民同労働運動、人格的には太田薫さんや岩井章さんに代表される民同左派運動は、毛沢東が「世にも不思議な社会民主主義」と言ったように、したたかな独特な社会民主主義です。彼らは「階級的労働運動」と言っているわけです。
 その中で陶山さんが、66年に『日本型社会民主主義』という本を書いた。これはすごいと思いましたね。それまで社民と言えば、スターリン主義で育った世代の中では裏切り者として蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われていた存在です。それに対して「日本型社民」と規定して、初めてある種のスポットライトを当てて正面から取り上げた。
 労働運動に関して言えば、社民は日共よりもはるかに左翼的な闘いをやってきた。現に歴史的に見ても、日共がやった闘争なんかあまりない。60年三池闘争だって、日共は何もかんでない。
 当時総評の太田薫議長が、総評労働運動の沈静化の中で「青年よ、ハッスルせよ」という有名な演説をする。それと前後して、65年に総評の青対部と社会党の青少年局と社青同を軸にして反戦青年委員会をつくったんです。明確に日共がつくっていた青年学生共闘に対抗してつくった。
 当時、革命的左翼と社民の統一戦線ということが問題になって、本多さん(当時革共同書記長)は、「社民に悪質も良質もない。労働者を社民、民同が握っているじゃないか。だから一緒にやるんだ」と言った。それで反戦青年委員会運動に全力で取り組んだ。
 それからあっという間に、67年10・8羽田闘争もとおして、全国的に中核派が一気呵成(いっきかせい)に全国の各地区反戦の中に抜きがたい影響力を持つし、社青同解放派もブンドもやり始めて、それで反戦青年委員会が新左翼運動の温床みたいになったんです。
 それで総評青対部が「反戦青年委員会はもうだめだ。トロツキストのたまり場になっちゃった」と言い始めるわけですよ。それに対して社会党の青少年局は、けっこう抵抗していた。
 そういう中で、既成の社・共、総評などとは対抗関係を持ちながら、反戦青年委員会運動が日々、時代に合った闘いを提起して、がんがん広がっていったわけです。

 悪戦苦闘の中で

 僕なんかも反戦青年委員会運動の中で育った。動労千葉の闘いの源流は、60年代の反戦青年委員会運動にあるんです。
 そういう点では、この『反戦派労働運動』は、当時の状況からすると、本当に若い日本の左翼運動、階級的労働運動勢力が自ら民同や日共に代わる具体的な戦略・路線をめざして、必死になって実践をしながら、過去の他党派のやった歴史を学んで悪戦苦闘している中で出された本ですよ。
 僕が一番重要だと思うのは、本多さんが革共同の創立の根拠として三つ挙げていることです。ハンガリー革命、日共の6全協、もう一つは国鉄新潟闘争だと。孤立を辞さず新潟で闘争を開始して、20名ぐらい首を切られる。国労新潟地本は、革同指導下の戦闘的組合主義ですね。でもあの闘いの中に社・共に代わる一つの運動のあり方を本多さんは見たんじゃないかな。
 何しろ新左翼には経験と実績がないわけだから、その中で常に、民同や日共に対抗してどういう路線で闘いぬくのかということを暗中模索しながら提起していたんですね。また、それを現場は要求するわけです。それで陶山さん、これを作ったんじゃないかと思う。
 ――現場の闘いに学んでいるところがありますよね、それを吸収して。
 うん、あるある、そうだと思いますよ。それと、自分が勉強した歴史を含めて、それで一つの「反戦派労働運動」という、反戦青年委員会の進むべき道を示していったんじゃないか。
 内実は、多くは若い10代、20代の青年労働者が、それぞれの産別の地区の青年部なんか握りながらバンバン現場で職場闘争を開始していたころでしょ。
 60年代のころ、若い反戦派労働者が三多摩の中小企業で組合を握って団体交渉やった時、向こうは「わが社はどうのこうの」と弁解する、それに対して若い労働者がすっくと立って、「『賃労働と資本』にはそんなこと書いてない」って反撃した。会社はグーの音も出なかった(笑い)。会社がもうかっているかどうかなんて関係ないと。食っていけるだけ寄こせってことだから。
 当時の動労千葉でも、学習会やるとストレートなんです。学習会の翌日には、ナッパ服に「疎外された労働粉砕」と書いて働いているなんてことがありました。(笑い)
(写真 1969年11月16日、反戦青年委員会と全学連は、沖縄「返還」交渉のための佐藤首相訪米を阻止する闘いに立ち上がり、蒲田から羽田にかけて街頭で機動隊と大激突した)

 学生と労働者

 ――学生運動と労働者の関係はどうですか。
 当時の学生運動出身の人たちは、みんな「学生運動は一日も早く卒業して、労働運動をやらなければいけない」と考えていました。
 陶山さんも青年労働者の激しい要求にこたえる形で必死になって書いたんです。そのパトスを受け継がなければいけないと思います。70年決戦の渦中の息吹、革命に向かっての情熱を感じます。僕なんか、この本を読んで、当時の状況や情景がわっと出てきます。
 ――この本は、4・28沖縄奪還闘争に破防法が適用されて本多書記長や東京地区反戦の藤原さんが逮捕される弾圧の直後に書いているわけですね。
 そう。それで陶山さんは、11月に至る過程で、必死になって書いた。
 この過程は、ベトナム侵略戦争の真っただ中です。ベトナムで戦争が激しく起こっている時に、日本であれだけの反戦闘争が盛り上がっているというのは初めてのことです。ベトナム戦争は日本が兵站(へいたん)基地になっている。その最大の基地である沖縄をめぐって、沖縄奪還が初めて日本の階級闘争のテーマになった時です、70年というのは。その時に、今までの常識に縛られていない青年だったから、何のしがらみもなく70年安保・沖縄闘争、ベトナム反戦闘争をやりきったということですね。
 69年は高度成長の最末期だった。その中でわれわれは、戦後世界体制の危機を見抜き、帝国主義とスターリン主義がともに危機を深めているという明確な時代認識を持って、70年闘争を闘ったわけです。そしてあれだけの10代、20代の青年労働者・学生が決起して、日本の帝国主義の体制を揺るがした。
 ベトナム戦争などで世界的な闘いが起こっていた時だったけれども、僕はあの闘いの延長上に革命になるとは思わなかった。けれど、70年代の10年で社・共に代わる労働者党建設は可能であると確信していました。
 だから、カクマルが突如として襲いかかってくるのも、権力が破防法をかけてくるのも、敵としては当然ですね。日本帝国主義国家権力としても、この反戦派の連中がこれから社会のあらゆるところに散って、この調子で闘いを始めたら空恐ろしいという危機感を持ったと思う。
 ――この本の中でも「11月決戦は激動の70年代を切り開くんだ」と強調しています。
 革共同は労働者を大事にしてやっていたんだけれど、69年の4・28や11月闘争から全部ぶっ込んだわけですよ。労働者全員が角材や火炎瓶を持って激しい街頭闘争を闘った。陶山さんが「激動の70年代を切り開く」というのも、70年代のための11月決戦ということを意識していたんですね。この決戦をもって本物の労働者党になっていくという展望を持っていたんです。

 反戦闘争と国鉄闘争

 マル生攻撃粉砕

 ――安保・沖縄闘争と国鉄闘争が同時並行的に闘われましたね。
 69年は国鉄の生産性向上運動(マル生運動と言っていますが)が始まった年です。
 街頭における激しい闘争、これが職場・生産点と結びついたら大変なことになっちゃうと思ったのが、日本のブルジョアジーです。
 特に国鉄はようやく赤字問題が起こってきた時期だった。1964年に東海道新幹線が開業して「減価償却後赤字」で初めて赤字になります。そういう中で、国鉄の合理化攻撃が60年代後半から始まるわけです。
 その中心が5万人合理化と言って、機関助士廃止・一人乗務問題です。その闘争を動労は組織を挙げてやる。これを担ったのが、60年代に採用された若き労働者です。
 鉄道貨物輸送というのは、当時すごかった。新小岩、大宮、新鶴見などのヤード(操車場)が365日貨物列車で満杯、新小岩機関区から総武線の電車が見えなかったくらいいっぱいで、その過程で機関助士がどんどん養成される。動労千葉地本1500人くらいのうち、750人から800人くらいは30歳未満の青年労働者になった。
 動労は、全国的な機関助士廃止反対闘争で50〜60人首を切られた。その時に、68年に動労千葉地本の滝口誠君が首を切られた。
 マル生攻撃は、千葉の場合はほかよりも早く68年に始まっています。それでカクマルと激しく対立するわけです。対カクマル戦争の発端は動労の場合早いんですよ。68年の滝口君の解雇をめぐって、これをどう見るか、で始まった。要するにカクマルは「お前らみたいに非組織的なことをやるから悪いんだ」と。首切られるのは首切られた者が悪いんだとカクマルは言った。
 千葉でのカクマルとの闘いは、労働者として動労本部のやっていることは許せないということだったんです。だから、そこを争点にどちらが正しいかという闘いを10年がかりでやって、79年に分離独立に至ったんです。
 権力は、国鉄労働運動と70年安保・沖縄闘争が結合することを誰よりも恐れた。だからマル生攻撃を始めたわけですよ。国労、動労を脱退させて、鉄労という第2組合を増やすというやり方です。当初は鉄労にかなり持っていかれたんです。
 当時、「座して死を待つより立って闘おう」と国労委員長が演説したりして、反撃に立ち上がってはね返しました。
 ただその主力になったのは、やはり安保・沖縄闘争を闘った青年労働者です。この青年労働者の闘いのいいところは、処分に対する恐怖感をなくしたということです。
 マル生攻撃に勝って攻撃を打ち返した。これで右翼労働戦線統一、国鉄分割・民営化が10年は遅れたと言われているし、実際に遅れました。
 カクマルの果たした反革命的犯罪は許しがたいものです。松崎明もマル生攻撃と闘う中から動労東京地本書記長、委員長になっていく。ところが、73年に上尾暴動が起こった時、彼はたまげちゃったわけですね。あれから「謀略」論が出てくるんです。「権力の謀略」だと。それ以来、動労東京地本は順法闘争をやらないと宣言した。そしてどんどん屈服していって、行き着いた先が80年代国鉄分割・民営化の先兵になることでした。

 青年への期待

 ――今日のわれわれの闘いに受け継ぐものは?
 革命運動をオーソドックスに進めて、青年労働者の熱気とロマンを復権させたいですね。革命は若者たちの事業です。どんどん若手が方針を形成し、先頭切ってやっていくあり方を意識的につくらなければいけない。
 「労働運動の力で革命をやろう」というのは、厳密に言えば理路整然としたスローガンではないかもしれない。しかし、そんなことを言ったらきりがない。小泉が登場して以来、また95年の日経連プロジェクト報告以来、何にやられてきたか。敵の「改革」というスローガンなんです。「聖域なき構造改革」、今でも「改革の継続」と言っています。
 改革というのは何か良くするというイメージがある。それを危機に直面した敵資本家階級(小泉−奥田)の側が積極的に主張し、本来なら改革を叫ばなければならない労働者階級の側がそれを言わない、という逆さまな事態になっています。
 だから「労働運動の力で革命をやろう」というのは、小泉の「聖域なき構造改革」、つまり民営化と労組破壊、改憲と戦争の攻撃に対する労働者階級のスローガンなのです。遅ればせながら青年労働者の中から出てきたと考えるべきです。
 今年の11月労働者集会が今までと違うのは、そういう青年学生が先頭に立って、「おれたちの11・4」を目指して頑張ってきたことだと思います。

 沖縄に続こう

  最後に、9・29沖縄県民大会12万人の大高揚の核心は、沖縄の労働組合が軸になって革命的な情勢をつくりだしたことです。70年闘争の過程で「沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」の戦略的総路線が打ち出されましたが、まさにこれが実践的に開始されたと言えます。また、4大産別決戦方針の正しさもここに示されています。沖縄労働者階級の切り開いた偉大な情勢に続いて立ち上がる時です。

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●中野洋(なかのひろし)さんの略歴
1940年生まれ、59年国鉄入社、63年動労千葉地本青年部長、69年千葉気動車支部委員長、千葉県反戦青年委員会議長。73年地本書記長、79年動労本部から分離・独立、国鉄千葉動力車労働組合(動労千葉)結成に参加、同書記長、83年同委員長、2001年退任、同常任顧問に。89年以来、全国労組交流センター代表運営委員

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週刊『前進』(2318号5面1)(2007/11/05 )

 切迫する世界金融恐慌

 サブプライム破綻が引き金 労働者は革命で未来開こう

 貧困層を襲う帝国主義倒せ

 サブプライムローン(低所得者向け高金利型住宅ローン)問題を契機とするアメリカの住宅バブルの崩壊は、米経済と世界経済全体を底知れぬ破局にたたき込みつつある。ついに世界金融大恐慌の現実化の時代が始まったのだ。一切の矛盾と犠牲を労働者階級に押しつけて延命を図る帝国主義を、階級的労働運動の大前進の力で打倒しプロレタリア革命に勝利しよう。本紙2311号(9月17日付)の島崎光晴論文に続き、この問題を考える。

 暴利狙って大損失新自由主義の破産

 サブプライムローンを組み込んだ証券を抱え込んでいたことで、帝国主義各国の主要な金融機関が軒並み大損失を出している。(表参照)
 なぜ、アメリカのサブプライムローンの焦げ付きが、これほどの世界的な金融危機に波及したか。ここに今日の帝国主義の危機性、腐朽性がはっきりと現れている。
 住宅ローン会社は契約を取ったサブプライムローンの債権を自分で抱え込まないで証券化し、住宅ローン担保証券(RMBS)や債務担保証券(CDO)にして、高利回りをえさに売り出した。各国の金融機関が、高い利益を期待して、これにとびついたのだ。
 これは1990年代以降進められた金融と企業のグローバリズム、新自由主義政策がもたらしたものだ。帝国主義の延命策としての新自由主義政策が、何ひとつ資本主義の危機を救うものではなく、逆に自分で自分の首を絞めるものであることがはっきりした。
 サブプライムローンは住宅バブルの末期に登場した。帝国主義ブルジョアジーは、低所得者層の「自分の家を持ちたい」という願いにつけ込み、詐欺的なやり方で契約を取った。「契約者の多くが、分厚い契約書に訳も分からずサインさせられた」という。本来なら通常の固定金利を受ける資格がある借り手も、強引にサブプライムローンに引き込まれ、被害を膨らませた。
 最も貧しい層の労働者階級から金を巻き上げ、あげくには返済不能に追い込み、家屋を差し押さえて街頭に放り出すという、こんなことがどうして許されようか! 日本でも年金記録の消失や大手保険会社による多額の保険金未払いなどが明るみに出ているが、今や世界中の帝国主義者が、とてつもなく汚い詐欺的やり方で労働者階級を食い物にし、搾取・収奪を強めている。帝国主義の支配と経済は、そんなやり方でしか成り立たなくなっているのだ。
 サブプライムの破綻(はたん)はこれから本格化する。今後2年間に、200万人の借り手が高金利への移行期を迎える。残高では約3500億j(41兆円)。金利や返済負担が2倍に跳ね上がる人が多い。住宅価格の下落で、格付けが1ランク上のオルトAにも焦げ付きが広がっている。今後2〜3年のうちに170万世帯が家を差し押さえられる危機にある。

 貸し渋り、景気後退とドル暴落の危機

 米住宅バブルの崩壊は大手金融機関の巨額損失、実体経済の下降、ドル信認の低下と暴落の危機として、一段と進展している。
 第一に、住宅バブルの崩壊が、金融市場での信用収縮に加え、表に見るように大手金融機関の巨額損失という〈金融面での第2幕〉に入りつつある。放置すれば、金融機関の貸し渋りが起きかねない瀬戸際にある。
 金融機関同士で資金を融通しあうための短期資金CP(コマーシャルペーパー)の金利は、高止まりしたままだ。これは”担保物件が焦げ付かないか、貸した相手がつぶれないか”と、信用不安がそれだけ拡大していることを示すものだ。
 FRB(米連邦準備理事会)は9月、10月にフェデラルファンド(FF)金利を連続して利下げしたが、景気対策や恐慌回避のためにFF金利を下げることは、別の危機を引き起こす。膨大な余剰資金が依然、あふれかえっている中で低金利政策を続ければ、ますますドルが市中にあふれ、インフレとドル大暴落というもっと恐るべき破局を引き寄せることになるのだ。
 そして投機資金は今、原油や金、資源商品に流れ込んでいる。原油は1バーレル=96jを超え、史上最高値を更新した。全世界的にガソリンや穀物、食料品などが上がり始めている。これが長期化すれば、確実にインフレ化する。そして、労働者階級の生活を破壊し、激しい景気後退を引き起こす。
 第二に、バブル経済の崩壊、実体経済の落ち込みがはっきりとしてきたことだ。
 住宅価格は下落し、今後さらに最低10〜15%の下落は避けられないと言われている。新規住宅需要も急速に縮小しつつある。9月の米住宅着工件数は、前年同月と比べて3割も減少した。14年半ぶりの低水準だ。
 住宅産業はすそ野が広いから、住宅需要の落ち込みは、自動車・家電その他さまざまな分野に影響し、賃下げ・首切り・リストラの嵐が吹き荒れ、消費は一層後退し、経済全体を落ち込ませる。ポールソン財務長官は「米経済にとって最も深刻なリスクだ」と危機感をあらわにしている。

 米帝の没落でドル離れ進む

 第三に、ドル大暴落の危機だ。根底にはアメリカの巨額の経常赤字がある。すでに各国でドル離れが進み、外貨準備に占めるドルの比率が低下し、ユーロの比率が上昇している。ドルは対ユーロで史上最安値を更新している。(10月19日)
 イラク侵略戦争の泥沼化に示される米帝の世界支配力の決定的な衰退が、ドル離れを一層促進しているのだ。
 10月19日ワシントンで開かれた主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、実質的に何も決められず、対応不能をさらけ出した。各国帝国主義ブルジョアジーがそれぞれ分裂して動きだそうとしている。帝国主義世界経済の分裂化、ブロック化、争闘戦の激化は不可避だ。

 生存かけた闘いに立ち上がるときだ

 

サブプライムローンの破綻は、何よりもアメリカ労働者階級にとって、このままでは生きていけない攻撃として襲いかかっている。(別掲参照)
 かつて隆盛を極めた米自動車業界の本拠デトロイトでは、労働者階級は自動車産業の衰退によって失業と住居からのたたき出しに直面している。
 失業率は15・1%で、全米平均の3倍だ。サブプライムローンの延滞率は20・8%。市内の「29世帯に1世帯」が差し押さえの危機にある。「この州で起きていることが全米に広がる可能性がある」(ロムニー大統領選立候補予定者)。クライスラー労働者は9月に全米規模のストライキに立ち上がった。
 仕事を奪われ、家を奪われ、ローン返済に追い立てられ、医療保険からは締め出され、さらにガソリン高騰、物価高が襲いかかる。これはアメリカだけのことではない。世界の労働者階級が直面している現実だ。帝国主義の階級支配は完全に破綻している。
 世界金融恐慌の現実化が意味するものは、全世界の労働者階級が失業と生活の苦しみの中で、帝国主義打倒に向かって闘い抜くことにしか生きる道がなくなっている、ということだ。
 見方を変えれば、これは革命的情勢の一層の成熟だ。限界を超えた強搾取・強労働、雇用と生活の破壊の中で、労働者階級は青年を先頭に根底から怒りを爆発させ、闘いに立ち上がりつつある。革命の要求がどんどん労働者の心をつかみ闘いが広がっていく情勢なのだ。
 11・4労働者集会が実現した日米韓労働者国際連帯の地平を打ち固め、4大産別を先頭に階級的労働運動を大前進させよう。
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■家も仕事も奪われる労働者

 (1)オハイオ州クリーブランドの労働者ハロルド・オクマンさん(34)は10月末までに自宅を差し押さえるという通知を金融業者から受け取った。4年前、自宅購入のために組んだローンは11万2000j(約1310万円)。金利は当初の年8・25%から年11・25%に上昇し、月々1300j(約15万円)の返済が滞った。
 3年前に生まれた次男は生まれつきの心臓病で、妻は介護のために仕事を辞めた。収入減を補うために物流の仕事に加えてウォルマートでも働き始めたが、次男の医療費の自己負担分だけで累計1万3000j(152万円)かかり、ローンの返済計画は破綻した。(10・18付東京新聞)
 (2)ミシガン州デトロイトの労働者ブランデン・ハリエンさん(34)は、この夏、住み家から強制退去させられ、いま市民団体が運営する避難施設で暮らす。家主がサブプライムローンを払えず、一軒家が競売にかけられ、一緒に追い出された。家主はクライスラー系の工場で働いていたが、クライスラーの業績不振で一方的に解雇され、ローンの金利上昇で支払いができなくなった。
 「ちゃんと家賃を払っていたのに」と怒るハリエンさんも4月から失業中だ。建設下請けだったが、住宅着工が急減して失業。今は臨時雇いの仕事でしのぐ。食料や部屋代など毎月の生活費を500j(5万8000円)に抑えるため、携帯電話も解約した。(10・16付朝日新聞)

【写真】 ローンが返済できず競売に出された住宅群(オハイオ州クリーブランド)

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 【表】世界に波及した金融危機

 アメリカ/大手銀行・証券10社で290億j(3兆3000億円、4半期決算)の損失。証券大手メリルリンチは79億j(9000億円)で赤字転落、会長辞任。
 日本/野村証券1450億円(1〜9月)、みずほ500億円、農林中金400億円の損失。
 イギリス/ノーザンロック銀行の取り付け騒ぎ(9月)。英中央銀行が緊急融資。HSBC1100億円損失。
 フランス/大手銀行BNPパリバが傘下ファンドの資金を凍結(8月)。直後にECB(欧州中央銀行)が金融機関に15兆円の緊急資金供給〔この時、FRB(米連邦準備理事会)、日銀なども各国で同様の措置〕
 ドイツ/IKB産業銀行、巨額の損失(7月)。ザクセン州立銀行が資金繰り危機で政府救済(8月)。ドイツ銀行3600億円の損失。
 スイス/最大手銀行UBS、4000億円の損失。
 その他/カナダで投資銀行の資金繰り悪化。南・東欧州にも波及の兆し。

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週刊『前進』(2318号6面1)(2007/11/05 )

 日帝の侵略戦争参戦法=「対テロ給油新法」阻止を

 小沢民主党の法案協力許すな

 守屋の腐敗と一体の福田倒せ

 海上自衛隊をインド洋・ペルシャ湾に派兵してアフガニスタン・イラク侵略戦争に参戦していたテロ対策特措法が11月1日で期限切れとなり、派兵部隊に撤収命令が出される事態となった。日帝の戦争国家化への突破口として行われたイラク・アフガニスタン侵略戦争への参戦は、陸自サマワ部隊の撤収に続いて、海自も一時撤退を強いられるという決定的な挫折が強制されたのである。11・4労働者総決起集会の大成功を受け、国会闘争に決起し、日帝・福田政権による対テロ給油新法制定を絶対に阻止しよう。戦うイラク・アフガニスタン人民と連帯し、空自を含めた自衛隊の全面撤退へ断固闘い抜こう。

 参戦継続へあせる日帝 海自一時撤退で窮地に

 対テロ給油新法は、日帝が米帝のイラク・アフガニスタン侵略戦争への参戦を継続するための戦争法案そのものである。この本質を塗り隠し、民主党を初めとする野党の協力を取り付けるために第1条の「目的」では国連に8回も言及している。だが、米帝ブッシュ政権の戦争目的が石油の強奪と中東支配、帝国主義間争闘戦=米帝世界支配の再編のためであることは明らかである。このイラク・アフガン侵略戦争に日帝は帝国主義としての存立をかけて、戦争のできる帝国主義への飛躍をかけて参戦してきたのである。
 だが、イラク人民、アフガン人民の不屈の戦いと全世界の労働者階級人民の反戦闘争によってイラク・アフガン侵略戦争は泥沼に陥り、占領支配は完全に破産している。イラクでは米軍は、闘う人民のゲリラ戦争に追いつめられ、ますます凶暴化して攻撃機や戦闘ヘリからの空爆でイラク人民の無差別虐殺を絶望的に拡大している。アフガニスタンでは首都カブールでさえも地域的にタリバンが制圧しているといわれるほどだ。
 こうした中、イラクに派兵されていた陸上自衛隊は06年7月、完全撤退した。これはイラク人民のゲリラ戦争が南部でも激しくなって撤退に追い込まれたものであり、敗走にほかならない。今回、海上自衛隊も一時撤退に追い込まれたことは、日帝の帝国主義としての脆弱(ぜいじゃく)性を全世界にさらけ出したのだ。
 日帝は完全に追いつめられている。対テロ給油新法も実際には未だ成立のめどさえ立っていない状態だ。そういう中で、すでに福田や町村官房長官が自衛隊派兵恒久法に言及し始めた。どんなことをしてでも侵略と戦争に突き進もうという焦りに駆られた策動に出ている。この攻撃を絶対許さず、対テロ給油新法を阻止し、空自を含め自衛隊を完全撤退させよう。

 補給は武力の行使と一体だ

 対テロ給油新法は、「海上阻止活動」を行う外国軍隊への「補給支援活動」に「限定」したと言われているが、これはまったくのペテンだ。これまでも燃料等の補給が主要な活動であったのであり、限定でもなんでもない。活動範囲も公海の中にペルシャ湾が含まれており、これまでどおりイラク侵略戦争を行っている米軍への補給を継続するということなのだ。
 物品・役務を提供する対象も「艦船若しくは艦船に搭載する回転翼航空機の燃料の給油又は給水」となっており、イラクで人民を無差別虐殺しているヘリコプターの燃料も含めてこれまでどおり供給するのだ。
 対テロ給油新法は、補給支援活動は「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」としているが、燃料の補給そのものがまさに武力の行使と一体なのだ。また、国会承認という「シビリアンコントロール」のペテンも投げ捨て、政府が勝手に戦争をエスカレートできるようにしているのだ。

 「転用なかった」はウソ 政治家・官僚らが隠蔽

 海自による他国艦船への給油は8月末までで計777回に上っており、そのうち613回がオマーン湾、2回がペルシャ湾内、北アラビア海やアデン湾などが157回となっている。ペルシャ湾内の給油だけでなくオマーン湾での給油も含めて提供された燃料がイラク侵略戦争に使われたことは明らかだ。「イラク戦争への転用はない」などという政府の主張は、言い逃れのための見え見えのウソにすぎない。
 イラク戦争開戦時の給油量80万ガロンを20万ガロンとウソの発表をし、事実を組織的に隠蔽した米空母キティホークへの給油をめぐっては、福田や石破ら政府答弁のウソは完全に明白である。キティホークは2月25日にオマーン湾のホルムズ海峡近くで給油を受けてから直ちにペルシャ湾に入って、クウェート近海まで行き、そこに何日もいたのだ。燃料が「不朽の自由作戦」に使われたのであり、イラク戦争への転用はなかったなどという政府のウソが成り立つ余地はまったくないのだ。
 この事実をごまかすために給油量80万ガロンを20万ガロンと意図的に偽ったのだ。その後の隠蔽(いんぺい)も守屋を中心とする防衛庁幹部と政府が一体となって行ったものであり、海上幕僚監部の担当者が誤りを報告・訂正しなかったなどという問題ではあり得ない。
 03年当時官房長官だった福田は「キティホークの燃料消費は1日20万ガロンで」と言い、そういう意味のあるものとして20万という数字を持ち出したのであり、石破に至っては「アメリカに確認した」とまで言ったのだ。しかも今年9月に事実が暴露されるや「誤りだった」とごまかし、都合よく補給艦「ときわ」の航海日誌は7月に破砕機にかけられた後だったというのだ。
 こんなデタラメのウソ八百を絶対に許すことはできない。その一方で政治家や政府役人は軍需産業のばく大な利潤に群がって私腹を肥やしているのだ。山田洋行や守屋は氷山の一角だ。防衛予算約4兆9千億円、そのうち物件費が約2兆7千億円。こうした膨大な予算に資本家どもが群がりつつ、戦争によってさらに利益を上げようと狙っているのだ。
 問題の核心は、日帝が帝国主義として生き残るために侵略と戦争に突き進んでいることにある。そして帝国主義ブルジョアジーたちはこの侵略戦争の中で戦争政策に加担することによってばく大な利益をせしめようとしているのだ。その一方で、労働者人民には低賃金の不安定雇用が強制され、生きられない状態に追いやられているのだ。
【写真】 洋上給油を行う補給艦「ときわ」(左から2隻目)。右奥は「みょうこう」

 恒久派兵へ小沢と密談 兵士犠牲に資本が暴利

 アフガン・イラク侵略戦争に動員された自衛官の04年度から現在までの死亡者は少なくとも28人に上っている。内訳は海自が16人、陸自が11人、空自が1人である。そのうち半数の14人が自殺で死亡している。自殺は、海自が7人、陸自が6人、空自が1人だ。10万人あたりの死亡率は180人以上で、自殺率は90人以上になる。日本全体の自殺率が27人であることと比べればいかに高率であるかが分かる。
 この数字は在職中の死亡であり、退職後の死亡は入っていない。実際に派兵が原因で死に至ったケースはさらに多いということだ。また、自殺に次ぐ死亡原因は「事故・不明」が8人で、「傷病」が6人となっている。傷病の6人はすべて海自であり、艦船任務の過酷さを示している。さらに上官によってエアガンで撃たれたり、恐喝されたり、女性自衛官が暴行されたりといった事件が相次いでいる。日帝が侵略戦争に突入した中で、かつての日本軍と同じように自衛隊兵士の命が使い捨てにされる状況に入っているのだ。それは、労働者が物としてしか扱われず、使い捨てにされている状況と表裏をなしている。米帝のイラク侵略戦争でイラク人民100万人が死亡したとも言われている。200万人を超える人びとが難民となって国外に逃れ、イラク国内で難民となっている人も200万人を超えると言われている。
 民主党・小沢が10月30日、福田の要請を受けて国会内で密談した。対テロ給油新法をめぐっては「平行線」だったと言われているが、この時期に密談を持ったこと自身が重大な裏切りだ。そもそも福田も小沢も、日帝が帝国主義として生きていくために戦争のできる国家への転換を図っているのであり、その路線が国連中心主義による対米対抗的な道か、日米枢軸路線かというところに違いはあるが、本質的に帝国主義的国家主義である点では変わりがない。それは小沢がアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊派兵を主張していることにもはっきりと示されている。福田は、こうした小沢を国家主義・国益主義的に取り込んで戦争の道を突き進もうとしているのだ。
 10月30日の福田・小沢会談は、03年のキティホークへの給油問題を乗り切るための取り込みを図ると同時に、恒久派兵法への小沢の取り込みをも狙ったものである。11月2日に行われる福田・小沢会談でも恒久派兵法問題が取り上げられようとしている。小沢・民主党は帝国主義ブルジョアジーの先兵であり、侵略と戦争の道を掃き清めようとしているのだ。このことをはっきりさせ、これと徹底的に闘わなければならない。労働者階級人民の階級的闘いこそが帝国主義の侵略と戦争の攻撃を打ち破る力だ。労働者階級の怒りの決起を巻き起こし、対テロ給油新法を粉砕し、福田政権打倒へ突き進もう。

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