ZENSHIN 2002/09

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ホームページ企画 「有事立法3法案を全面的に暴露する〈上・下〉」 法案対照版を作成。

『前進』第2065号、第2066号に掲載された上記の論文を法案の条文を対照してご覧になれるように作成いたしました。

逐条ごとに比較対照して条文案を確認しながらこの法案への批判と暴露をより深め認識できます。廃案へのたたかいとその基礎をガッチリと作り上げよう。また、【参考  国家総動員法と有事立法】として国家総動員法(昭和13年法律第55号)の法律条文とコメントを追加しました。

有事立法3法案
全面的に暴露する〈上〉〈下〉
武力攻撃事態法案(全文)(武力攻撃事態における国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(案)) 『前進』第2065号掲載〈上〉
  第1章 総則(第1条〜8条)
 日帝の侵略戦争突入を合法化し武力行使と国家総動員を規定
  第2章 武力攻撃事態への対処のための手続き等(第9条〜20条)
 政府の独断で侵略戦争の全般的方針決定、全権力を首相に集中
  第3章 武力攻撃事態への対処に関する法制の整備(第21条〜23条)
 自衛隊と米軍の軍事行動は自由 労働者人民の自由と権利は制限
  第4章 補則(第24条)
 「緊急事態」も武力攻撃事態の法的枠に入れ戦争始める
安保会議設置法改正案(全文)(安全保障会議設置法の一部を改正する法律(案)) 『前進』第2066号掲載〈下〉
  安全保障会議改悪案
戦争方針策定と最高指導会議の設置で首相が戦争大権を発動
自衛隊法一部改正案(全文) (自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律(案)) 『前進』第2066号掲載〈下〉
  自衛隊法改悪案
 自衛隊の権限拡大で武力行使と生産過程含め社会を軍事支配へ
  おわりに
   
国家総動員法(昭和13年法律第55号)  
  【参考  国家総動員法と有事立法】

 日帝は第2次大戦時、国家総力戦体制を築いて中国侵略戦争―全面的なアジア侵略戦争―対米戦争に突入していったが、その総力戦体制を築く上で「国家総動員法」(1938)の制定とその発動は重大な画期をなした。
 そして、戦後の日帝・自衛隊も、たとえば1963年の「三矢作戦研究」では、明白にこの国家総動員法をモデルにして有事立法研究を行った。
 自衛隊法改悪(もともと103条は防衛出動時の自衛隊の極めて強大な権限を規定しているが、それが今回さらに拡充され、また防衛出動待機命令時〔武力攻撃が予測される場合〕の自衛隊の権限も圧倒的に強化された)や、いわゆる「国民保護法制」なるペテンで進められようとしている総力戦体制がどのようなものか――を考える上で参考になる。抜粋的に紹介し、コメントを付す。有事立法攻撃の暴露・弾劾の中身として活用して下さい。

有事立法3法案を全面的に暴露する〈上〉・〈下〉
日帝の北朝鮮・中国侵略戦争突入のための法案を粉砕せよ
 戦争遂行・動員の基本法−武力攻撃事態法案

 本稿は、有事立法3法案の全面的な分析と暴露を目的としている。有事立法3法案が現実には北朝鮮・中国侵略戦争のための法案であることの暴露を中心に据えていくことは依然として決定的ポイントだ。その上で、3法案の条文をよく読めば読むほど、この法案そのものが北朝鮮・中国への米日帝国主義の侵略戦争をきわめて具体的に想定した実戦のための法案であることがより明白となる。3法案は一体のものとして構成され、侵略戦争遂行のための戦争法案そのものなのである。@「武力攻撃事態法案」(武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案)は、戦争遂行・戦争動員に関する基本法で、首相に戦争遂行・戦争動員の最高権力(戦争大権)を一元的に与え、首相直属の武力攻撃事態対策本部のもとで侵略戦争を遂行するための法案である。A「安全保障会議設置法改正案」(安全保障会議設置法の一部を改正する法律案)は、侵略戦争方針策定会議法案であり、首相自ら自分に戦争大権を付与する諮詢(しじゅん)機関(装置)を設けるための法案である。B「自衛隊法改正案」(自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案)は、武力攻撃事態法案の「対処基本方針」=戦争方針をただちに自衛隊が遂行するための有事自衛隊法=戦時自衛隊権限法であり、国民総動員法である。今号では〈上〉として武力攻撃事態法案の全面的な分析と批判を行いたい。

第1章 総則(第1条〜8条)  日帝の侵略戦争突入を合法化し武力行使と国家総動員を規定

◇武力攻撃事態法案(全文)(武力攻撃事態における国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(案))
有事立法3法案を全面的に暴露する

◇武力攻撃事態法案(全文)(武力攻撃事態における国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(案))

法案提出の理由

 我が国に対する外部からの武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態または事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態への対処について、基本理念、国、地方公共団体等の責務、国民の協力その他の基本となる事項を定めることにより、武力攻撃事態への対処のための態勢を整備し、併せて武力攻撃事態への対処に関して必要となる法制の整備に関する事項を定め、もって我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することとする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

目次

 第一章 総則(第一条―第八条)

 第二章 武力攻撃事態への対処のための手続き等(第九条―第二十条)

 第三章 武力攻撃事態への対処に関する法制の整備(第二十一条―第二十三条)

 第四章 補則(第二十四条)

 付則

 侵略戦争法案隠しのペテン的構造見抜け

 武力攻撃事態法案の本質は、米帝の北朝鮮・中国・アジア・世界(アフガニスタン・パレスチナ・イラク・イラン)侵略戦争に呼応し協力して遂行される、日帝の帝国主義的侵略戦争のための戦争法案にほかならない。この法案はきわめてペテン的で複雑な法律作成技術を駆使しているため、法案の侵略戦争としての本質・基本的組み立てがきわめてわかりにくいものとなっている。このペテン的構造をうち破って、本質をしっかりと見抜いていかなければならない。

 なぜ「武力攻撃事態」概念を拡大するのか

 第1章は「総則」という抽象的なタイトルとなっている。また、法案の「目的」を規定した第1条の主な内容は「武力攻撃事態への対処のための態勢を整備」するとしていて、きわめて抽象的である。
 この「武力攻撃」とは、第2条の「定義」によれば、「我が国に対する外部からの武力攻撃」のことであり、「武力攻撃事態」とは「武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態または事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう」としている。
 この中に、この法案の侵略戦争法案としての本質があらわれている。何よりも「武力攻撃事態」を「外部からの武力攻撃が発生した事態」にきわめて狭く限定したとしても、非常にあいまいでいくらでも拡大解釈できるものでしかない。政府が5月16日の衆院有事法制特別委で示した「武力攻撃事態に関する政府見解」では、この点について「武力攻撃を加えてくる主体としては、国だけでなく、国に準ずる者もあり、攻撃の規模の大小、期間の長短や攻撃が行われる地域、攻撃の態様等も様々であり、武力攻撃の態様は一概に言えない」としている。
 これでは、「武力攻撃事態」はとてつもなく広い範囲を含むものとなってしまう。小規模なゲリラであっても、あるいは日本の船舶への攻撃(領海を越えたり、すれすれの接近行動をとる時も含めて)であっても、すべて外部からの武力攻撃として、武力攻撃事態の発生ということになってしまう。
 こうしたことは歴史上、帝国主義が侵略戦争の発動に際して常に使ってきた口実なのだ。帝国主義は、被抑圧国(民族)に対してありとあらゆる重圧を加え、それに対して被抑圧国(民族)の側から少しでも反撃があると、これを重大な国益侵犯として戦争発動の口実としてきた。
 ところが、今回の法案の場合、まだなんら軍事的・武力的攻撃が加えられていない時点でも、すでに武力攻撃事態と規定して対応しようとしているのだ。
 それどころか、「武力攻撃のおそれのある場合」に加えて、さらに「武力攻撃が予測されるに至った事態」もすでに゛武力攻撃事態に突入した″と宣言できるというのである。
 この点でも、5・16政府見解は重大な問題をつき出している。これによれば、「武力攻撃のおそれのある場合」とは「ある国が我が国に対して武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃のための多数の艦船あるいは航空機を集結させている」場合などとしている。また、「予測されるに至った事態」というのは、ある国が日本攻撃のために「予備役の招集や軍の要員の禁足、非常呼集を行っているとみられることや我が国を攻撃するためとみられる軍事施設の新たな構築を行っていること」などの動きがある場合だとしている。
 武力攻撃事態の概念をここまで拡大するということは何を意味するのか。現実の国際情勢の中でみれば、武力攻撃事態の考え方というものが「日本が侵略を受けた場合」などではまったくなく、逆に日帝の側が侵略戦争へと突入していくことをあらゆる口実で合法化するためのものであることは明らかである。現実には米帝の北朝鮮侵略戦争と共同した日帝の北朝鮮侵略戦争のためのものなのである。法案の骨格をとらえ、この3法案全体を分析すればするほど、それらが北朝鮮侵略戦争のための法案であることがよく分かるのである。

 武力攻撃事態への対処とは戦争突入だ

 さて、第1条(目的)の「武力攻撃事態への対処のための態勢を整備」するとは、一見しただけではあまりに抽象的で何のことか分からない。「対処のための態勢を整備」などというと、この法案では「対処」そのものは中心問題ではなく、「そのための態勢づくり」が問題であるかのように聞こえる。
 ところが、この法案の第1章(総則)では、第2条(定義)と第3条(武力攻撃事態への対処に関する基本理念)によって、「武力攻撃事態」(広く拡張されたそれ)に対して、国の総力をあげて武力行使に突入すること、そして、日米安保条約に基づく米軍の軍事行動を全面的に支援していくことをうたいあげている。つまり、全力をあげて戦争に突入することを宣言しているのだ。
 この場合、この武力行使=軍事行動=戦争行為のことを「対処措置」などと言って、ことの本質を隠蔽(いんぺい)しようとしていることが重要だ。これは自らの行為の正当性を主張しきれないことを問わず語りに明らかにしている。第2条(定義)という条文をテコに、武力行使=赤裸々な軍事力行使=戦争への突入そのものを「対処措置」にすり替えるというペテンを、怒りをもって暴かなくてはならない。
 この点で、第3条の見出しが「武力攻撃事態への対処に関する基本理念」となっていて、ここでも問題の中心が「武力攻撃事態への対処」をできる限り必要不可欠で最低限なものにすべきだということにあるかのような雰囲気を醸し出そうとしていることも見抜かなければならない。第3条自体があたかもそうした武力行使への制限条項であるかのようにみせかけているのである。ところが実際には、第3条こそが武力行使=軍事力行使=戦争行為への突入を宣言し、「武力攻撃事態への対処」とは戦争突入のことだとしているのであって、この法案の中軸中の中軸をなすものなのだ。
 したがって、第3条は「武力行使への突入」という見出しをつけなければならない条文なのだ。実際、第3条は憲法第9条を踏みにじって、日帝が戦争行為に突入することをすべての項目において規定している。
 すなわち第3条第1項は、国・地方公共団体・指定公共機関、そして何よりも国民の協力と連携による「万全の措置」を確認し、国をあげての総力戦を規定している(これを第4条〜8条でさらに規定している)。

 武力行使による「武力攻撃の排除」うちだす

 そして第3条第3項はストレートに「武力行使」による「武力攻撃の排除」をうちだしている。「速やかな終結を図る」というのは、全力で戦い、速やかに敵を粉砕するという意味以外にはない。断固たる武力行使の宣言だ。
 また第3条第2項は「武力攻撃が予測されるに至った事態」において、「武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない」と言っているが、事実はまったく逆だ。「予測されるに至った事態」で、日帝はただちに戦争態勢に入り、各種の戦争動員を開始し、軍事対決情勢を一挙にエスカレートさせていくのである。回避の努力をうんぬんしながら、その後に続く条文には、外交的・政治的努力というような表現はまったくない。この文言のままだと、先制的に攻撃して相手国の対日攻撃力を奪うことも「回避」する行為に入るのである。実際、中谷防衛庁長官や福田官房長官はミサイル発射前に相手国の基地をたたくことも許されると言っている。
 次の第3条第4項では、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利に制限が加えられる場合」があると言っている。「制限は……必要最小限」などと、あたかも、この条文がその制限の必要最小限化のためのものであるかのようにみせかけているが、憲法に保障された自由と権利を制限する内容をうちだしている法律の本質を、こんなペテン的な言い方で押し隠そうとしているのである。

 米軍と自衛隊を戦争遂行主体と位置づけ

 さらに第3条第5項は、「武力攻撃事態への対処」=武力行使=戦争において、日米安保条約に基づいて米帝と軍事的に協力することを主内容としている。ここでも、あたかも国連などの「国際社会の理解及び協調的行動が得られるように」するなどという話に重点をずらしている。この条項も米日帝の対北朝鮮侵略戦争を百パーセント前提としているものである。つまり、米軍が、自衛隊とともに「武力攻撃事態への対処」のもうひとつの主体として明確に法案の中に位置づけられているのであり、そこにこの法案の特徴がある(第2条第六号イ〔2〕、第22条第三号でも)。
 第4条から第8条までは、まごうかたなき国家総力戦、国民総動員戦の方針をうちだしているものだ。

 戦時の中央行政権力への権力集中を宣言

 第4条(国の責務)は、国の「組織及び機能のすべてを挙げて」戦争を遂行することが必要であるとしている。また、その際「国全体として万全の措置」をとるべきだとして、地方公共団体、指定公共機関、国民が、国のために国の指揮に従って行動することをうたっている。そして第4条が、第5条から第8条までの内容をも規定しているのである。
 第5条(地方公共団体の責務)は、「地方公共団体」も国と一体となって全力で戦争に協力するのが責務であるとしている。
 第6条(指定公共機関の責務)は、「指定公共機関」も国・地方公共団体・その他の機関と協力して戦争を遂行するのだとしている。それが「責務」だと言っている。実質的に戦争動員・協力の絶対命令を規定しているのである。
 第7条(国と地方公共団体との役割分担)は、戦争において戦争遂行上の主体は国であり、地方公共団体は国の方針(地方的任務の部分)を忠実に実行するのだと言っている。これは戦時下の中央行政権力への権力集中の宣言であり、地方自治体の権限の否定と解体にほかならない。
 第8条(国民の協力)は、戦争への国民の全面的協力の義務を確認するもので、国民総動員体制の宣言だ。「国民は……必要な協力をするよう努めるものとする」というペテン的言辞にだまされてはならない。

 第一章 総則

 (目的)

 第一条 この法律は、武力攻撃事態への対処について、基本理念、国、地方公共団体等の責務、国民の協力その他の基本となる事項を定めることにより、武力攻撃事態への対処のための態勢を整備し、併せて武力攻撃事態への対処に関して必要となる法制の整備に関する事項を定め、もって我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。

 (定義)

 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。

 二 武力攻撃事態 武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態または事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。

 三 指定行政機関 次に掲げる機関で政令で定めるものをいう。

 イ 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項及び第二項に規定する機関並びに国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関

 ロ 内閣府設置法第三十七条及び第五十四条並びに宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第十六条第一項並びに国家行政組織法第八条に規定する機関

 ハ 内閣府設置法第三十九条及び第五十五条並びに宮内庁法第十六条第二項並びに国家行政組織法第八条の二に規定する機関

 ニ 内閣府設置法第四十条及び第五十六条並びに国家行政組織法第八条の三に規定する機関

 四 指定地方行政機関 指定行政機関の地方支分部局(内閣府設置法第四十三条及び第五十七条<宮内庁法第十八条第一項において準用する場合を含む>並びに宮内庁法第十七条第一項並びに国家行政組織法第九条の地方支分部局をいう)その他の国の地方行政機関で、政令で定めるものをいう。

 五 指定公共機関 独立行政法人(独立行政法人通則法<平成十一年法律第百三号>第二条第一項に規定する独立行政法人をいう)、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、政令で定めるものをいう。

 六 対処措置 第九条第一項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体または指定公共機関が法律の規定に基づいて実施する次に掲げる措置をいう。

 イ 武力攻撃事態を終結させるために実施する次に掲げる措置

 (1) 武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動

 (2) (1)に掲げる自衛隊の行動及びアメリカ合衆国の軍隊が実施する日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という)に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設または役務の提供その他の措置

 (3) (1)及び(2)に掲げるもののほか、外交上の措置その他の措置

 ロ 武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するため、または武力攻撃が国民生活及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるようにするために実施する次に掲げる措置

 (1) 警報の発令、避難の指示、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧その他の措置

 (2)生活関連物資等の価格安定、配分その他の措置

 

 (武力攻撃事態への対処に関する基本理念)

 第三条 武力攻撃事態への対処においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならない。

 2 事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない。

 3 武力攻撃が発生した事態においては、武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。この場合において、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。

 4 武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続きの下に行われなければならない。

 5 武力攻撃事態への対処においては、日米安保条約に基づいてアメリカ合衆国と緊密に協力しつつ、国際連合をはじめとする国際社会の理解及び協調的行動が得られるようにしなければならない。

  (国の責務)

 第四条 国は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、武力攻撃事態において、我が国を防衛し、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護する固有の使命を有することから、前条の基本理念にのっとり、組織及び機能のすべてを挙げて、武力攻撃事態に対処するとともに、国全体として万全の措置が講じられるようにする責務を有する。

  (地方公共団体の責務)

 第五条 地方公共団体は、当該地方公共団体の地域並びに当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産を保護する使命を有することにかんがみ、国及び他の地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し、必要な措置を実施する責務を有する。

 (指定公共機関の責務)

 第六条 指定公共機関は、国及び地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。

 

(国と地方公共団体との役割分担)

 第七条 武力攻撃事態への対処の性格にかんがみ、国においては武力攻撃事態への対処に関する主要な役割を担い、地方公共団体においては武力攻撃事態における当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施その他適切な役割を担うことを基本とするものとする。

(国民の協力)

 第八条 国民は、国及び国民の安全を確保することの重要性にかんがみ、指定行政機関、地方公共団体または指定公共機関が対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努めるものとする。

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第2章 武力攻撃事態への対処のための手続き等(第9条〜20条)
 政府の独断で侵略戦争の全般的方針決定、全権力を首相に集中

◇武力攻撃事態法案(全文)(武力攻撃事態における国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(案))
有事立法3法案を全面的に暴露する

 第二章 武力攻撃事態への対処のための手続き等

 (対処基本方針)

 第九条 政府は、武力攻撃事態に至ったときは、武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針(以下「対処基本方針」という)を定めるものとする。

 2 対処基本方針に定める事項は、次のとおりとする。

 一 武力攻撃事態の認定
 二 武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針
 三 対処措置に関する重要事項

 3 対処基本方針には、前項第三号に定める事項として、次に掲げる内閣総理大臣の承認を行う場合はその旨を記載しなければならない。

 一 防衛庁長官が自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第七十条第一項または第八項の規定に基づき発する同条第一項第一号に定める防衛召集命令書による防衛召集命令に関して同項または同条第八項の規定により内閣総理大臣が行う承認

 二 防衛庁長官が自衛隊法第七十五条の四第一項または第六項の規定に基づき発する同条第一項第一号に定める防衛召集命令書による防衛召集命令に関して同項または同条第六項の規定により内閣総理大臣が行う承認

 三 防衛庁長官が自衛隊法第七十七条の規定に基づき発する防衛出動待機命令に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

 四 防衛庁長官が自衛隊法第七十七条の二の規定に基づき命ずる防御施設構築の措置に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

 4 対処基本方針には、前項に定めるもののほか、第二項第三号に定める事項として、第一号に掲げる内閣総理大臣が行う国会の承認(衆議院が解散されているときは、日本国憲法第五十四条に規定する緊急集会による参議院の承認。以下この条において同じ)の求めを行う場合にあってはその旨を、内閣総理大臣が第二号に掲げる防衛出動を命ずる場合にあってはその旨を記載しなければならない。ただし、同号に掲げる防衛出動を命ずる旨の記載は、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合でなければ、することができない。

 一 内閣総理大臣が防衛出動を命ずることについての自衛隊法第七十六条第一項の規定に基づく国会の承認の求め

 二 自衛隊法第七十六条第一項の規定に基づき内閣総理大臣が命ずる防衛出動

 5 内閣総理大臣は、対処基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

 6 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、直ちに、対処基本方針(第四項第一号に規定する国会の承認の求めに関する部分を除く)につき、国会の承認を求めなければならない。

 7 内閣総理大臣は、第五項の閣議の決定があったときは、直ちに、対処基本方針を公示してその周知を図らなければならない。

 8 内閣総理大臣は、第六項の規定に基づく対処基本方針の承認があったときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。

 9 第四項第一号に規定する防衛出動を命ずることについての承認の求めに係る国会の承認が得られたときは、対処基本方針を変更して、これに当該承認に係る防衛出動を命ずる旨を記載するものとする。

 10 第六項の規定に基づく対処基本方針の承認の求めに対し、不承認の議決があったときは、当該議決に係る対処措置は、速やかに、終了されなければならない。この場合において、内閣総理大臣は、第四項第二号に規定する防衛出動を命じた自衛隊については、直ちに撤収を命じなければならない。

 11 内閣総理大臣は、対処措置を実施するに当たり、対処基本方針に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。

 12 第五項から第八項まで及び第十項の規定は、対処基本方針の変更について準用する。ただし、第九項の規定に基づく変更及び対処措置を構成する措置の終了を内容とする変更については、第六項、第八項及び第十項の規定は、この限りでない。

 13 内閣総理大臣は、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるときは、対処基本方針の廃止につき、閣議の決定を求めなければならない。

 14 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、速やかに、対処基本方針が廃止された旨及び対処基本方針に定める対処措置の結果を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない

 閣議決定だけで戦争突入の命令が可能に

 第2章は「武力攻撃事態への対処のための手続き等」というタイトルだが、これもまたきわめてペテン的である。このタイトルからだと、「対処基本方針」すなわち武力行使=軍事活動=戦争についての基本方針の国会承認などが中心のように勘違いしかねないが、それはとんでもないミスリードなのである。
 第2章の第9条(対処基本方針)は実にわかりにくく、法律作成上の技術を駆使して、いったいここでは何を言っているのかがよくつかめないように書かれている。しかし、よく読めば明白となるが、この第9条においては、武力攻撃事態への対処基本方針の内容とは、まず何よりも「武力攻撃事態の認定」(第2項第一号)と「武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針」(第2項第二号)だとしているのである。さらに、第2項第三号は「対処措置に関する重要事項」となっている。
 そして、この第三号にかかわる事項として、第3項以下、対処基本方針に記載すべき事項として、閣議決定事項、国会承認事項、対処方針の公示、対処方針の実施にあたっての内閣総理大臣の指揮監督権、基本方針の変更・廃止などの諸問題について規定している。
 これらは確かに、基本方針の作成や閣議決定、国会承認など、つまりある意味で手続き問題が規定されているようにみえる。したがって、方針が形成され、国会が承認して、それから実施に移っていく流れが規定されているようにみえる。そして、その一面はあるといえばある。
 しかし、よく検討すると、国会の承認によってはじめて基本方針が動き出すという構造にはなっていないのである。第9条第3項の第一号から第四号および第4項の第一号と第二号は、形式上「対処基本方針」に記載するべき事項の列挙である。ところが、第3項の各号は、予備自衛官を招集する「防衛招集命令」(第一号)、即応予備自衛官を招集する「防衛招集命令」(第二号)、自衛隊の全部または一部に対して発せられる「防衛出動待機命令」(第三号)である。これらは防衛出動命令が発せられることが予測される場合に発せられるものである。実質的な防衛出動の第一歩である。同じく防衛出動命令が発せられることが予測される情勢下で自衛隊法(今次改正案)第77条の2(防御施設構築の措置)に基づいて行われる「防御施設構築の措置の承認」(第四号)が規定されている。そして、これらについて内閣総理大臣が承認した場合には、これを対処基本方針に記載せよと言っているのだ。
 つまり、これらの事項はすでに実行に移されているのである。対処基本方針が国会承認されてから実行されるのではない。ちなみにこれらの事項は、日本と対立する国家がこれらの行為を行った場合には「武力攻撃が予測されるに至った事態」となると政府見解が言っていることがらである。日本に対立する国家の側からみれば、日本政府のこうした行動は〈自国への武力攻撃が予測される場合という武力攻撃事態にたちいたった〉ということを意味する。つまり、相手国に戦争的・軍事的重圧をかける行為をすでに開始しているということだ。
 さらに重大なことは、第9条第4項の問題である。ここで記載すべき事項として言われていることは、「緊急の必要がある」として、国会の承認なしに、自衛隊法第76条(防衛出動)第1項の規定によって内閣総理大臣の命令で防衛出動がすでに発動されている場合のことである。この場合は、たんに防衛出動命令が出ているというだけにとどまらず、当然にも軍事活動=戦闘行為へと自衛隊は突入しているのであり、日本は戦争に突入しているのである。
 「緊急の必要がある」場合というのはきわめて政治的裁量の余地がある条件である。例えば、米軍が北朝鮮に最後通牒(つうちょう)をつきつけ、軍事的攻撃(爆撃または艦船の臨検・拿捕〔だほ〕・撃沈など)をもって脅迫する中で、北朝鮮が対抗的に、「もし米帝による爆撃を受けた場合には日本の米軍基地を攻撃する」と表明したり、ミサイルを日本に向けてセットしたり、あるいはそうした情報が米帝・米軍からもたらされた時には、日帝・自衛隊は米軍とともに、自らも北朝鮮に先制攻撃をかけることが今日の軍事情勢のもとでは十分にありうるとされているのだ。この場合、一手遅れればミサイル攻撃を受けるという意味で「緊急の必要がある」と主張しうるのである。
 したがって、この法案とりわけこの第9条によって、政府は「対処基本方針を決定」するとともに、ただちに武力攻撃事態への突入を宣言し、戦争を開始することが完全に合法化されるのである。

 対処基本方針は国会承認前に実施される

 ここで再び、第9条の冒頭の第1項において「政府は、武力攻撃事態に至ったときは、武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針を定めるものとする」と言っていることの意味をはっきりとつかまなければならない。つまり、この「対処基本方針」は政府が「定める」ものであって、形式的には閣議決定をもって決定となる。そして、国会承認の前にもすでに基本方針として一部または全部は実施に移されるし、国会承認を受ければ゛承認された決定″となるのである。ここに行政権の決定的な優先性が明らかとなる。
 このことは第10条(対策本部の設置)以下に規定されている「武力攻撃事態対策本部」(戦争遂行最高指導機関といえる)が、「対処基本方針が定められたとき」はただちに閣議決定だけで設置されるとしていることにも通じている。「対処基本方針が定められたとき」というのは政府が決定した時であって、国会が承認した時ではないのだ。
 ここに「対処基本方針」の政府決定即実施ということがありありと示されている。そして、「対処基本方針」の「国会承認」は、実際にどんどん軍事行動を起こし武力行使にいたるどの時点であっても、国会に求めてもいいのである。
 また、米軍の作戦の開始や切迫、北朝鮮などの激しい反応という国際情勢の中で、ミサイル被弾の危機感の扇動や9・11型ゲリラの大都市圏での発生の危険などの排外主義的扇動で、国内政治情勢や野党の動きなどを大いに左右する力を、権力が持つ可能性が大きい。そうした中ではむしろ、国会承認事項が戦争への国民的な意識の高揚の手段に使われることさえある。
 なおこれに関連して、この第9条でさらに問題なのは、一旦承認された「対処基本方針」すなわち戦争遂行方針の「廃止」に関する規定である。第13項および第14項がこれを規定しているが、この「廃止」=戦争終結の一切のプロセスが政府=内閣総理大臣の権限となっていて、国会自体に「廃止」を決定する権限がないのである。したがって、開始した戦争をいつやめるかは、すべて内閣総理大臣の権限にかかっているのである。
 第9条には今ひとつ重大なことがある。それは「対処基本方針」の実施に関して内閣・閣僚などの全権限が内閣総理大臣に集中することだ。こうした問題は第11項で定めている。すなわち「内閣総理大臣は、対処措置を実施するに当たり、対処基本方針に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する」となっている。内閣総理大臣のもとに戦争遂行に関する一切の権限が一元的に集中され、いわば首相独裁体制が敷かれ、首相に戦争大権が付与されるのである。そして、この首相の戦争大権発動の中心的・基軸的機関となるのが、次の第10条から第20条にいたる諸条文において規定されている「武力攻撃事態対策本部」である。

 首相独裁のもとでの戦争指導の最高本部

 第10条(対策本部の設置)によって設置される「武力攻撃事態対策本部」は戦争遂行上の全権限を首相に一元的に集約した首相独裁のもとでの戦争遂行・戦争指導の最高本部である。戦争の遂行が国家をあげての事業となる中で、戦争遂行上の全権限が首相に一元的に集約され、いわば戦争大権が首相に与えられるのである。これは、戦時に名を借りて実質的に、日帝権力構造自体が首相独裁体制に移行するに等しいことである。
 また、ここで注意し確認しておくべきことは、対策本部という名称や、第10条以下の条文が一見戦争上の動員(総動員)、人的・物的・精神的動員に関わる本部のように書かれていることから、この対策本部が調達本部・動員本部のように受けとられかねないが、実際にはそうではないということである。このことは第10条をきちんと読めばはっきりする。
 第10条では、内閣総理大臣は「当該対処基本方針に係る対処措置の実施を推進するため」対策本部を設置するとなっている。「対処措置の実施」とは戦争行為の実施、戦争の遂行ということであって、その調達・動員だけを意味しない。つまり対策本部は対処基本方針の実施・貫徹の機関なのであり、戦争遂行・戦争指導の最高の権力機構というべきものなのである。
 これに関連して第10条で留意しておくべきことがさらに二つある。第一は、この対策本部は、対処基本方針が定められた時、ただちに設置されることになっていることである。つまり国会承認後ではない。しかも、国会承認以前にもどしどし諸方策を実施できるのである。
 第二は、この対策本部はきわめて重大な任務を持つ機関にも関わらず、法律(内閣法第12条第4項の規定では別に設置法が必要。人事院、内閣法制局、安保会議などはすべてそれぞれの設置法によって設置されている)によらず、閣議にかけるだけでただちに設置しうるとしている点である。つまり、首相が戦争開始を決断した時点で、対処基本方針の決定と同時に設置されるのである。これはこの対策本部が戦争実施本部であることをいかんなく示している。
 第11条では、「対策本部の組織」を規定しているが、ここにも重大な特徴が見いだされる。第11条は、対策本部の本部長は内閣総理大臣を、副本部長(複数も可)には国務大臣を、そして本部員には正副本部長以外の国務大臣全員を充てるとしている。つまり、閣僚全員が本部員となるのである。さらに、対策本部には本部の職員が置かれる。この職員は「内閣官房の職員、指定行政機関の長(国務大臣を除く)その他の職員または関係する指定地方行政機関の長その他の職員のうちから内閣総理大臣が任命する」となっている。

 閣僚の権限は一元的に首相に集中される

 ここでは次の重要な点に留意しなければならない。ひとつは、この「対策本部」は内閣構成の全メンバーを含んでいるが、いわゆる閣議ではなく首相の一元的な指揮監督の下での一つの「対策本部」としてある。そして各閣僚が持つ権限や閣議の機能はすべて首相に吸い上げられている。
 今ひとつは、ここでいう本部の職員というのはきわめて重要な権能を有するということだ。これは第13条(指定行政機関の長の権限の委任)で規定されているが、本部職員は、自らの出身母体である指定行政機関や指定地方行政機関の長がその「対処措置を実施するため必要な権限の全部または一部を……委任することができる」存在なのである。簡単に言えば、対策本部長は、全閣僚によって構成される本部員および行政機関の長の対処措置上の権限の一部または全部の委任を受けた職員や一般職員を統一的に指揮監督して、戦争遂行上の一切の措置を実施できるのである。このことが第11条の第2項の「対策本部長は、対策本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する」ということの意味である。
 さらに重要な点は、この対策本部の本部長・副本部長・本部員(国務大臣)が事故や不在の時は、あらかじめ誰を代行に任命するか決められていることである。副本部長が2人以上の時は、本部長の代行となる順序さえ決めている。まさにここに、この対策本部が一瞬の空隙(くうげき)もあってはならない、戦争遂行・戦争指導の最高権力機構であることがよく示されている。
 第12条は、「対策本部の所掌事務」についての規定である。所掌事務という官庁用語(または法律用語)にごまかされてはならない。それは国家権力、地方公共団体、指定公共機関のすべてが実施する対処措置(=戦争遂行上のすべての行為)を、対処基本方針に基づいて総合的に推進する、つまり総合的に一体的に実施する任務を行うということだ。
 第13条(指定行政機関の長の権限の委任)は、先に言及したが、対策本部の職員が対処措置上の必要な指定行政機関の長の権限の全部または一部の委任を受けることができるという条項である。これによって、対策本部は本部長の指揮監督のもとに国家の全機構・機関を戦争遂行に向かって組織することができるのである。

 対策本部長は強制権持つ戦争最高指揮官

 第14条は、「対策本部長の権限」の規定である。この規定によれば、本部長=首相は全行政機関・全地方公共団体・全指定公共機関に対して「実施する対処措置に関する総合調整を行うことができる」。ペテン的な言い方をしているが、本部長=首相は戦争遂行上の諸課題をこれらすべての行政機関・地方公共団体・指定公共機関に実施させることができるということだ。まさに、これは戦争遂行上の全権限の一元化を確認するものだ。実際、この本部長の方針・指示に対しては、それを受けた者は「意見を申し出ることができる」のみであって拒否権はないのである。
 第15条は、「内閣総理大臣の権限」という見出しになっているが、実質的には対策本部長の権限と同じである。ただ、前記第14条での本部長の地方公共団体等に対する総合調整=実施命令が遂行されない時、法律に定めるところによって実施を指示できるとしている。
 さらに、第15条の第2項は強烈である。ここではこうした指示を地方公共団体や指定公共機関が実施しない時は、内閣総理大臣の権限で自ら実施したり実施させたりできるとしている。内閣総理大臣の強制権を確認しているのだ。またこの第二項では、地方公共団体などの実行・不実行にかかわらず「緊急を要する」時は内閣総理大臣の権限で必要な措置を実施したり実施させたりすることができるとしている。
 これらについては「別に法律で定めるところにより」となっているが、その内容はきわめて反人民的であり、かつ地方自治権を否定するものなので、卑劣にも今回は具体案を出していない。しかし、実際には戦争上必要なことはすべて強制するというところに本質があるのだ。
 なお、第15条に基づく強権発動は、第15条の第1項の冒頭で「国民の生命、身体若しくは財産の保護または武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって」と言っているが、ここでいう「武力攻撃の排除」というのは、「武力攻撃」に対して自ら武力行使によってせん滅・撃退することを意味する官庁用語である。つまり、戦争の全面的な遂行ということであり、労働者人民・住民の全生活を戦争に巻き込み、戦災にさらすことだ。そして、その際に地方公共団体や公共機関に実施を強制する内容は、すさまじい質と量をもっているのである。
 朝鮮戦争あるいはベトナム戦争という米軍の大規模侵略戦争の例や、最近のイラク侵略戦争やアフガニスタン侵略戦争が示しているように、米軍・自衛隊の大規模な移動、膨大な軍需物資の調達と輸送、医療活動への人的・物的動員などはとてつもない規模になる。陸・海・空・港湾労組20団体や医療関連労組の有事立法に対する危機感と闘いは、このことをすでに肌で感じとっていることによるのである。
 第16条で規定している「損失に関する財政上の措置」は、戦争方針の実施にともなう地方公共団体・指定公共機関の損失も巨額・膨大なものに及ぶことを明確に示している。
 第17条で規定する「安全の確保」の問題も同じである。そもそも軍隊や軍需物資の輸送は、常に攻撃対象であり、かつ戦争的にも危険な地域へと突入していくものとしてある。それがミサイル攻撃やゲリラ攻撃の重要な対象となることは明白である。こうした業務に労働者人民を動員しようというのである。
 第18条(国際連合安全保障理事会への報告)は、国連への報告の項目であるが、ここで「自衛権の発動」のみならず、日米安保でいう「共同防衛」のケースをあげていることに注目しなければならない。
 日米安保条約では、日本の領域でいずれか一方への攻撃があれば、共同防衛に突入する。例えば米帝の北朝鮮への攻撃が在日米軍基地や領海・領空内の船舶・航空機への反撃を生むならば、これをもってただちに共同防衛体制発動へ進むということである。
 第19条(対策本部の廃止)は、「対処基本方針の廃止」とリンクして規定している。しかし、先に言及したが、「対処基本方針の廃止」は国会の決議によっても廃止されるようにはなっていないのである。
 第20条(主任の大臣)は、対策本部の「主任の大臣は、内閣総理大臣とする」というものである。対策本部という強大な権力装置の主宰者が内閣総理大臣であることを明記し、その権限の所在を確認しているのである。
 

(対策本部の設置)

 第十条 内閣総理大臣は、対処基本方針が定められたときは、当該対処基本方針に係る対処措置の実施を推進するため、内閣法(昭和二十二年法律第五号)第十二条第四項の規定にかかわらず、閣議にかけて、臨時に内閣に武力攻撃事態対策本部(以下「対策本部」という)を設置するものとする。

 2 内閣総理大臣は、対策本部を置いたときは、当該対策本部の名称並びに設置の場所及び期間を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない。

 

(対策本部の組織)

 第十一条 対策本部の長は、武力攻撃事態対策本部長(以下「対策本部長」という)とし、内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは、そのあらかじめ指名する国務大臣)をもって充てる。

 2 対策本部長は、対策本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 3 対策本部に、武力攻撃事態対策副本部長(以下「対策副本部長」という)、武力攻撃事態対策本部員(以下「対策本部員」という)その他の職員を置く。

 4 対策副本部長は、国務大臣をもって充てる。

 5 対策副本部長は、対策本部長を助け、対策本部長に事故があるときは、その職務を代理する。対策副本部長が二人以上置かれている場合にあっては、あらかじめ対策本部長が定めた順序で、その職務を代理する。

 6 対策本部員は、対策本部長及び対策副本部長以外のすべての国務大臣をもって充てる。この場合において、国務大臣が不在のときは、そのあらかじめ指名する副大臣(内閣官房副長官または法律で国務大臣をもってその長に充てることと定められている各庁の副長官を含む)がその職務を代行することができる。

 7 対策副本部長及び対策本部員以外の対策本部の職員は、内閣官房の職員、指定行政機関の長(国務大臣を除く)その他の職員または関係する指定地方行政機関の長その他の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。

 

(対策本部の所掌事務)

 第十二条 対策本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置に関する対処基本方針に基づく総合的な推進に関すること。

 二 前号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務

 

(指定行政機関の長の権限の委任)

 第十三条 指定行政機関の長(当該指定行政機関が内閣府設置法第四十九条第一項もしくは第二項もしくは国家行政組織法第三条第二項の委員会もしくは第二条第三号ロに掲げる機関または同号ニに掲げる機関のうち合議制のものである場合にあっては、当該指定行政機関。次項において同じ)は、対策本部が設置されたときは、対処措置を実施するため必要な権限の全部または一部を当該対策本部の職員である当該指定行政機関の職員または当該指定地方行政機関の長もしくはその職員に委任することができる。

 2 指定行政機関の長は、前項の規定による委任をしたときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。

 

(対策本部長の権限)

 第十四条 対策本部長は、対処措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、対処基本方針に基づき、指定行政機関の長及び関係する指定地方行政機関の長並びに前条の規定により権限を委任された当該指定行政機関の職員及び当該指定地方行政機関の職員、関係する地方公共団体の長その他の執行機関並びに関係する指定公共機関に対し、指定行政機関、関係する地方公共団体及び関係する指定公共機関が実施する対処措置に関する総合調整を行うことができる。

 2 前項の場合において、当該地方公共団体の長その他の執行機関及び指定公共機関(次条及び第十六条において「地方公共団体の長等」という)は、当該地方公共団体または指定公共機関が実施する対処措置に関して対策本部長が行う総合調整に関し、対策本部長に対して意見を申し出ることができる。

 

(内閣総理大臣の権限)

 第十五条 内閣総理大臣は、国民の生命、身体もしくは財産の保護または武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、前条第一項の総合調整に基づく所要の対処措置が実施されないときは、対策本部長の求めに応じ、別に法律で定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に対し、当該対処措置を実施すべきことを指示することができる。

 2 内閣総理大臣は、次に掲げる場合において、対策本部長の求めに応じ、別に法律で定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に通知した上で、自らまたは当該対処措置に係る事務を所掌する大臣を指揮し、当該地方公共団体または指定公共機関が実施すべき当該対処措置を実施し、または実施させることができる。

 一 前項の指示に基づく所要の対処措置が実施されないとき。

 二 国民の生命、身体もしくは財産の保護または武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、事態に照らし緊急を要すると認めるとき。

 

(損失に関する財政上の措置)

 第十六条 政府は、第十四条第一項または前条第一項の規定により、対処措置の実施に関し、関係する地方公共団体の長等に対する総合調整または指示が行われた場合において、その総合調整または指示に基づく措置の実施により当該地方公共団体または指定公共機関が損失を受けたときは、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 

(安全の確保)

 第十七条 政府は、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない。

 

(国際連合安全保障理事会への報告

 第十八条 政府は、国際連合憲章第五十一条及び日米安保条約第五条第二項の規定に従って、武力攻撃の排除に当たって我が国が講じた措置について、直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。

 

(対策本部の廃止)

 第十九条 対策本部は、対処基本方針が廃止されたときに、廃止されるものとする。

 2 内閣総理大臣は、対策本部が廃止されたときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。

 

(主任の大臣)

 第二十条 対策本部に係る事項については、内閣法にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

   

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第3章 武力攻撃事態への対処に関する法制の整備(第21条〜23条)
 自衛隊と米軍の軍事行動は自由 労働者人民の自由と権利は制限

◇武力攻撃事態法案(全文)(武力攻撃事態における国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(案)) 有事立法3法案を全面的に暴露する
 

 人・物を徴用・徴発、拒否した者には罰則

 第3章「武力攻撃事態への対処に関する法制の整備」もきわめてペテン的な方法・内容となっている。
 この間、政府やマスコミは、あたかも有事において「国民の生命と財産を保護する」ための法制の整備の必要性が最大の核心のように宣伝し、そのために有事法制を今から定めておくことが必要であると言ってきた。ところが、ここには二重三重のペテンがある。
 まず第一に、今回の有事3法案の基本が、戦争法、戦争基本法、戦争遂行法であり、それもあたかも防衛戦争の形態を装って侵略戦争を合法化するための侵略戦争遂行法だということである。つまり、憲法第9条を事実上破棄する戦争法(侵略戦争法)だということを隠蔽していることである。
 第二に、第22条(事態対処法制の整備)第1項第一号、第二号で言及していることのペテン性である。第二号では次のように言っている。「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する行動が円滑かつ効果的に実施されるための次に掲げる措置その他の武力攻撃事態を終結させるための措置」。つまり、自衛隊が全面的に武力行使をするために、その行動の自由と諸権限を定め、そのために労働者人民の自由・権利・生活・職場などをそれに沿って制限し、従属させ、犠牲にするということだ。続く第23条では、そのための法律を2年以内に整備すると言っているのだ。
 ところが、これに続く具体的な項目には、イ捕虜の取り扱いに関する措置、ロ電波の利用その他通信に関する措置、ハ船舶及び航空機の航行に関する措置――の3つの措置について法整備の必要があると言っている。
 確かにこれらは重大な問題であるが、本来この項目において言及されるべきことは、第2条(定義)の第六号において規定している「武力攻撃の排除」=戦争の遂行、武力行使のための自衛隊・米軍への「物品、施設または役務の提供その他の措置」の全ぼうである。そして、そのうちのかなりの部分が今次「自衛隊法改正案」において提起されている。この自衛隊法改正案は「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」などという抽象的でペテン的なタイトルをつけて提出されているが、その内容は自衛隊が「武力攻撃事態法」にのっとって戦争に突入していく際の行動の自由、土地・物・人についての使用・徴用・徴発の権利と、それを拒否した者への罰則規定なのである。
 したがって、武力攻撃事態法案の第3章第22条においては、自衛隊の有事における武力行使にともなう諸法制と今次自衛隊法改正案が、自衛隊をめぐる有事法制整備として行われていることに言及し、なおかつ以下(前記のイロハ)の法制化が必要となると言うべきなのである。立法技術を巧みに駆使して、人民をペテンにかけようとしているのである。

 米軍関連の有事規定は項目さえも出さず

 第三は、第22条第1項第三号の問題である。いわゆる有事において、労働者人民の権利・生活その他を侵害し破壊し制限する最大のものは、具体的には米軍の行動の問題であろう。ところが、この米軍の「必要な行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置」について、問題となる具体的な項目の列挙さえしていないのである。
 米軍はすでに日米安保条約や日米地位協定などによって巨大な特権をもっているが、有事においてはさらに大きな、さまざまな動きを示すのであって、新安保ガイドライン関連法(改悪米軍用地特措法)ですでに言及している諸項目を始め物資・役務の提供、土地の収用・使用、陸海空の輸送の膨大化とその従事命令、とりわけそれらの沖縄での適用・実施と、有事法制上からいえば最大級の諸問題がはらまれているのだ。
 第四は、有事において「武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するため」と言っている第22条第1項第一号の問題である。これは「国民の保護」などと言っているが、実は国民の戦争への協力を要求(強制)し、「国民の生活・経済生活」を戦争に従属させ、統制支配しようとするものであり、憲法に保障されている自由と権利を生活の隅々にいたるまで奪っていくものとしてある。
 第3条(武力攻撃事態への対処に関する基本理念)で「憲法の保障する国民の自由と権利に制限が加えられる場合」について言及していながら、第21条から第23条、つまり第3章全体をとおして、この「国民の自由と権利の制限」に言及していないというのは破廉恥である。

 自衛隊法改悪と表裏一体で軍事優先強制

 第3章のペテン性の暴露は、すでに第21条、第22条などに関して内容的にも言及しているので、各条の問題点については以下、簡単に確認しておくにとどめたい。
 第21条は、「事態対処法制の整備に関する基本方針」と称して、「国際人道法」にのっとるとか、対処措置の内容に応じて「安全の確保」を図るとか、「被害の復旧」についての「財政上の措置」をとるとか、「国民の協力が得られるよう」とか、「損失」に対して財政上の措置を講ずるとか――いろいろと言うことによって、国民にそれほど負担をかけないもののように言いなそうとしている。
 これは事態を180度ひっくり返している。「基本方針」でこのようなことを強調するのは、「対処措置」とは戦争であり、それは攻撃すると同時に攻撃されるものであり、その結果、さまざまな負担・被害・危険を強制するものであることを示している。しかも、憲法の保障する「国民の自由と権利」も制限されるのである。しかし、この肝心の点に言及していないのだ。
 第22条(事態対処法制の整備)は、その第1項第一号で「国民の生命、身体及び財産を保護するため」とか、「国民生活及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるようにする」とか言って、イロハニホヘの事項を掲げているが、これらはすべて侵略戦争に際して、国民を戦争遂行に協力させ、生活を変更させ、さらに爆弾やミサイルの攻撃を受け、人が死に、家が焼かれ、必要不可欠の施設が破壊されることを意味しているのだ。
 日帝は、イラク・アフガニスタンへのようにありとあらゆる攻撃を北朝鮮や中国に行うつもりだから、その必死の反撃の結果としてミサイル攻撃を受けたり、ゲリラ攻撃を受けたりすることを想定しているのだ。
 ニの「輸送及び通信に関する措置」の中身は何か。輸送や通信はすべて軍事優先となり、一般の利用はそれに従属させられる。輸送関係の労働者は強制的に軍需輸送に従事させられることを意味する。
 ホの「国民の生活の安定に関する措置」も、項目だけであるが、物価の統制や配給ということがすでに第2条(定義)で言及されている。
 さらに重大なことは、ハの「保健衛生の確保及び社会秩序の維持に関する措置」の項目だ。これは明らかに反戦・反政府行動や労働者のサボタージュやストライキ行動への取り締まりをにおわせている。治安維持法とか戒厳令へと直結する内容を示唆している。
 第二号は、有事法制の中軸のひとつをなす。船舶および航空機はすべて戦争のために優先的に動員される。労働者は攻撃を受ける危険な作業(軍需物資・兵員の輸送など)に強制従事させられる。自衛隊法とその改悪によって、鉄道輸送も軍事動員体制に組み込まれる。
 指定公共機関は、武力攻撃事態法案の第6条(指定公共機関の責務)や第14条(対策本部長の権限)、第15条(内閣総理大臣の権限)などで国の命令に従う以外にないようにされているのだ。地方公共団体は、その管理する空港や港を軍隊が使用することを強制され、拒否できなくされる。
 「電波の利用」も内容は恐ろしいものとなる可能性が大きい。徹底的に軍事統制を受けるし、民間人の自由な利用はさまざまに規制されるのだ。
 ここでの問題は、すでに述べたように自衛隊法および今次自衛隊法改正案が持っているものすごい有事立法性である。これらはまさに人的・物的資源の総動員を定めているに等しいものである。今次自衛隊法改正案は、戦時における自衛隊の自由な行動の権限を付与する戦時自衛隊行動権限法であり、国家総動員法であることを同時に暴露していかなければならない。
 第三号は、武力攻撃事態=戦時における米軍の行動の自由、物資の補給や人・物の輸送の保障などの問題を内包しており、有事法制の最大級の対象である。この問題を、こんなところに、こんな抽象的なかたちで押し込んでいることはまったく許せない。
 第23条(事態対処法制の計画的整備)では、第3章(第22条第1項第一〜三号)であげている事態対処法制(有事諸法)の整備について「その緊要性にかんがみ、この法律の施行の日から二年以内を目標として実施する」と言っている。
 これについて油断せずに構える必要がある。ひとつは、この法案が成立し施行される事態となれば、日帝権力はかさにかかって一挙に2年以内にこうした諸法案の攻撃をかけてくることは明白だ。しかし、重要なことは、今次有事立法3法案との闘争そのものの中に、この第3章の内容をも引き込んで闘い、3法案そのものを粉砕するために全力をあげることがもっとも正しい闘い方であろう。
 また、第22条がらみの諸法制は、労働者人民の生活と経済にストレートに大きくかかわり、法案の提出は大反撃を引き起こす可能性があるので、「三矢研究」で検討された方式(百近い戦時諸法案を、委員会審議を省略していきなり本会議にかけ2週間ですべて成立させる)で、情勢が緊迫した時点で一気に短期決戦で国会を通過させる方法をとる危険性もある。この点も暴露していこう。

 

 第三章 武力攻撃事態への対処に関する法制の整備

 (事態対処法制の整備に関する基本方針)

 第二十一条 政府は、第三条の基本理念にのっとり、武力攻撃事態への対処に関して必要となる法制(以下「事態対処法制」という)の整備について、次条に定める措置を講ずるものとする。

 2 事態対処法制は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施が確保されたものでなければならない。

 3 政府は、事態対処法制の整備に当たっては、対処措置について、その内容に応じ、安全の確保のために必要な措置を講ずるものとする。

 4 政府は、事態対処法制の整備に当たっては、対処措置及び被害の復旧に関する措置が的確に実施されるよう必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 5 政府は、事態対処法制の整備に当たっては、武力攻撃事態への対処において国民の協力が得られるよう必要な措置を講ずるものとする。この場合においては、国民が協力をしたことにより受けた損失に関し、必要な財政上の措置を併せて講ずるものとする。

 6 政府は、事態対処法制について国民の理解を得るために適切な措置を講ずるものとする。

 
 

(事態対処法制の整備)

 第二十二条 政府は、事態対処法制の整備に当たっては、次に掲げる措置が適切かつ効果的に実施されるようにするものとする。

 一 次に掲げる措置その他の武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するため、または武力攻撃が国民生活及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるようにするための措置

 イ 警報の発令、避難の指示、被災者の救助、消防等に関する措置

 ロ 施設及び設備の応急の復旧に関する措置

 ハ 保健衛生の確保及び社会秩序の維持に関する措置

 ニ 輸送及び通信に関する措置

 ホ 国民の生活の安定に関する措置

 ヘ 被害の復旧に関する措置

 二 武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する行動が円滑かつ効果的に実施されるための次に掲げる措置その他の武力攻撃事態を終結させるための措置(次号に掲げるものを除く)

 イ 捕虜の取り扱いに関する措置

 ロ 電波の利用その他通信に関する措置

 ハ 船舶及び航空機の航行に関する措置

 三 アメリカ合衆国の軍隊が実施する日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置

 
 

(事態対処法制の計画的整備)

 第二十三条 政府は、事態対処法制の整備を総合的かつ計画的に実施しなければならない。

 2 前項の事態対処法制の整備は、その緊要性にかんがみ、この法律の施行の日から二年以内を目標として実施するものとする。

 

 

 

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第4章 補則(第24条)
 「緊急事態」も武力攻撃事態の法的枠に入れ戦争始める

◇武力攻撃事態法案(全文)(武力攻撃事態における国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(案))
有事立法3法案を全面的に暴露する

 第四章 補則

 (その他の緊急事態対処のための措置)

 第二十四条 政府は、我が国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保を図るため、武力攻撃事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への対処を迅速かつ的確に実施するために必要な施策を講ずるものとする。

 第4章「補足」の第24条(その他の緊急事態対処のための措置)では、「武力攻撃事態」以外の、そうした「事態」とまではいえないが、「国家の安全」にとっての「緊急事態」が発生した時の対処をあげている。武力攻撃事態の定義そのものにあてはまらないとしても、それに準じる「緊急事態」として武力攻撃事態法の法的枠内に取り入れ、第24条として規定しているのだ。このことは実質的には、いわゆる「領域警備」といわれる範疇(はんちゅう)のものや9・11型またはそれに相応するような中小のゲリラなどの際にも、武力攻撃事態法の精神で対処する、つまり戦争的・軍事的に対応することを確認しているのである。また、それが戦争挑発の手段となることもきわめてありうることである。
 これは安保会議設置法改正案で第2条第1項第七号として新たに規定されている「重大緊急事態」への対処と呼応するものだ。しかし、同案では内閣総理大臣の諮問すべき事項としてあげられているが、武力攻撃事態法案では「対処を迅速かつ的確に実施するために必要な施策を講ずるものとする」というように、すでに施策の実行が法的に根拠づけられている。
 もちろん、この第24条関連の有事立法が行われることもありうる。
 重要なことは、いわゆる「不審船」問題のようなケースも、すでに武力攻撃事態の範疇に引き込んで対処するということであり、それは、一種の前哨戦的形態をとった軍事行動・戦争行為の遂行であり、戦争挑発や威力偵察活動ということだ。これは侵略戦争行為の始まりである。 (つづく)
 付則
 この法律は、公布の日から施行する。
 

 

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有事立法3法案を全面的に暴露する〈下〉
最高戦争指導会議設置と絶大な自衛隊権限強化で侵略戦争突入

 安全保障会議設置法改悪案
   戦争方針策定と最高指導会議の設置で首相が戦争大権を発動

◇安保会議設置法改正案(全文)(安全保障会議設置法の一部を改正する法律(案))
有事立法3法案を全面的に暴露する
法案提出の理由

 武力攻撃事態等への対処における安全保障会議の役割を明確にし、かつ、強化するため、内閣総理大臣の諮問事項を改めるとともに、議員の構成を見直し、常置の議員以外の国務大臣を議員として臨時に会議に参加させることができるようにすること等により、会議の機動的な運営を図ることとするほか、会議の審議及び意見具申に資するため、必要な事項に関する調査及び分析を行い、その結果に基づき、会議に進言する事態対処専門委員会を置く必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 安全保障会議設置法(昭和六十一年法律第七十一号)の一部を次のように改正する。

 

 軍事方針を具体的かつ迅速に策定

 安保会議設置法改正案は第一に、今回の改正の「理由」として「武力攻撃事態等への対処における安全保障会議の役割を明確にし、かつ、強化するため」ということをあげている。つまり、安保会議は一般的な「安保方針」や「国防計画」を審議する機関にとどまらず、武力攻撃事態に対処して具体的な戦争方針・軍事方針を審議・策定する機関、すなわち首相を議長とし最高指導者とする戦争方針策定の最高指導会議へと役割を明確化し強化することを宣言しているのだ。
 第二に、そのために内閣総理大臣による安保会議への諮問事項そのものを大きく改変している。これは第2条(内閣総理大臣の諮問等)でなされていることだが、現行の第2条での諮問事項は「国防の基本方針」や「防衛計画の大綱」「関連する産業等の調整計画の大綱」などが前面におしだされ、四番目に初めて「防衛出動の可否」があらわれるが、きわめて一般的に規定されているだけである。
 これに対して改正案では、「武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針」「武力攻撃事態への対処に関する重要事項」がむしろ中心におしだされている。戦争は、対北朝鮮・対中国を措定してきわめて具体的に実践的に切迫した問題として提起されている。つまり、戦争方針・軍事方針の具体的策定が、百パーセント前面に出てきているのである。
 第三に、この目的のために、安保会議の議員構成そのものも大きく見直している。一方で総務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣なども新しく議員として加えて、戦争遂行方針策定上の体制を強化するとともに、常置の議員以外の国務大臣を随時、議員として組み込めるようにしている。さらに、審議を集中的にするためとして、総務大臣、経済産業大臣、財務大臣を抜きにしたコンパクトな会議も設定している。大きく集まったり、小さく集まったりして、機動的に運用することを狙っている。
 さらに安保会議に「事態対処専門委員会」を設置して、分析・調査等を集中的に行う体制をとり、会議としての戦争指導方針策定と意見具申の迅速化をはかるとしている。
 以下、改正案の条文を軸にこうした諸点をより具体的に見ていこう。
 @第2条(内閣総理大臣の諮問等)第1項は改正案で、内閣総理大臣が会議に諮問しなければならない事項として以下、第一号「国防の基本方針」、第二号「防衛計画の大綱」、第三号「前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱」、第四号「武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針」(現行では、第四号「防衛出動の可否」となっている)、第五号「内閣総理大臣が必要と認める武力攻撃事態への対処に関する重要事項」(この第五号は新設された項目)、第六号「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」と続いている。
 さらに、第七号として「内閣総理大臣が必要と認める重大緊急事態(武力攻撃事態及び前号の規定により国防に関する重要事項としてその対処措置につき諮るべき事態以外の緊急事態であって、我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるもののうち、通常の緊急事態対処体制によっては適切に対処することが困難な事態をいう)への対処に関する重要事項」がくる。
 この第七号は、現行の第2条第2項と基本的に同じ文言(一定の調整的変更はある)だが、第1項へとランクアップの変更が行われている。第1項は「会議に諮らねばならない」となっている諸項目であり、第2項は「諮るものとする」という項目となっている。
 なお、この「重大緊急事態」とはどのようなことをさすのか。内乱的事態や9・11ゲリラ戦型の事態の発生、ハイジャック、いわゆる「不審船」、巨大規模の災害などであろう。つまり、武力攻撃事態とは言えないが、単に警察的対処の対象とも言えない問題が対象となる。

 すべての国政部門をあげて戦争体制構築

 第5条(議員)第1項は改正案で以下のよう安保会議のメンバーを規定している。第一号「内閣法第9条の規定により(臨時内閣総理大臣代理として)あらかじめ指定された国務大臣」、第二号「総務大臣」、第三号「外務大臣」、第四号「財務大臣」、第五号「経済産業大臣」、第六号「国土交通大臣」、第七号「内閣官房長官」、第八号「国家公安委員会委員長」、第九号「防衛庁長官」。
 法律改正のややこしい形式で書かれているが、新しく総務大臣と経済産業大臣、国土交通大臣を加えている。要するに平時型の編成から、戦争遂行上、戦争動員体制づくり上必要な議員構成にしたということである。
 改正案で新設される第5条第2項には、「議長(=内閣総理大臣)は、必要があると認めるときは、前項に掲げる者(前述した防衛庁長官などのメンバー)のほか、同項に掲げる国務大臣以外の国務大臣を、議案を限って、議員として、臨時に会議に参加させることができる」としている。これはすべての国政部門をあげて戦争体制を構築するという狙いであり、会議が計画・方針の作成即実践=実戦化をテーマとして開催されることを規定している。
 同じく改正案で新設される第3項は、「議長は、前2項の規定にかかわらず、第2条(内閣総理大臣の諮問等)第1項第四号から第七号までに掲げる事項に関し、事態の分析及び評価について特に集中して審議する必要があると認める場合は、第1項第一号、第三号及び第六号から第九号までに掲げる議員によって事案について審議を行うことができる」としている。この第3項の新設は注目すべきものである。要するに、武力攻撃事態などへの対処措置、すなわち戦争方針・軍事方針の策定については、会議を実務的に、よりコンパクト化して開催することを確認しているのだ。つまり、総務大臣、経済産業大臣、財務大臣を抜きにして会議をもつと言っているのである。
 第7条は、改正案で見出しが「関係国務大臣等の出席」から「関係者の出席」へと変更され、「議長は、必要があると認めるときは、統合幕僚会議議長その他の関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができる」となっている。これは現行の第7条との条文的整合によるものだが、会議が一般的な安保方針・国防方針といったテーマを対象とするにとどまらず、武力攻撃事態などへの対処措置=戦争方針・軍事方針の策定へと重点が変化している中で、統幕議長などの出席の意味は大きい。今回の安保会議設置法改正が戦争指導方針策定上の最高会議の設立を意図することを示す。
 第8条(事態対処専門委員会)は、改正案で条文全体が新設される。第1項は「会議に、事態対処専門委員会を置く」、第2項は「委員会は、第2条(内閣総理大臣の諮問等)第1項第四号から第七号までに掲げる事項の審議及びこれらの事項に係る同条第2項の意見具申を迅速かつ的確に実施するため、必要な事項に関する調査及び分析を行い、その結果に基づき、会議に進言する」。第3項は「委員会は、委員長及び委員をもって組織する」。第4項は「委員長は、内閣官房長官をもって充てる」。第5項は「委員は、内閣官房及び関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する」となっている。
 武力攻撃事態などに際して、基本方針の審議と方針の策定を迅速に実施するために、官房長官を長とした事態対処専門委員会を設置するというのである。常置性と実践性の向上のためである。
 安保会議設置法改正案の狙いは何か。安保会議を武力攻撃事態に対応して、実践的=実戦的に、また迅速かつ機動的に「対処基本方針」を作成・策定するための会議として強化し、これを受けて内閣総理大臣はただちに武力攻撃事態を宣言し、武力攻撃事態法に規定されている「武力攻撃事態対処基本方針」を決定して、戦争遂行体制へと突入していく。安保会議とは、首相(内閣総理大臣)がかつての天皇大権に等しい戦争大権を発動するための前提的な機関である。北朝鮮・中国侵略戦争突入・遂行の戦争方針策定のための最高会議にほかならない。
 

第二条第一項第四号を次のように改める。

 四 武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針

 

 

第二条第一項中第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。

 五 内閣総理大臣が必要と認める武力攻撃事態への対処に関する重要事項

 

 

第二条第一項に次の一号を加える。

 七 内閣総理大臣が必要と認める重大緊急事態(武力攻撃事態及び前号の規定により国防に関する重要事項としてその対処措置につき諮るべき事態以外の緊急事態であって、我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるもののうち、通常の緊急事態対処体制によっては適切に対処することが困難な事態をいう。以下同じ)への対処に関する重要事項

 

 

第二条第二項を削り、同条第三項中「前二項」を「前項」に改め、同項を同条第二項とする。

 

 

第三条中「第五条各号」を「第五条第一項各号」に改め、「議員」の下に「(同条第二項の規定により臨時に会議に参加する議員を含む)」を加える。

 

 

 第五条中第七号を削り、第六号を第九号とし、第五号を第八号とし、第四号を第七号とし、第三号を第四号とし、同号の次に次の二号を加える。

 五 経済産業大臣

 六 国土交通大臣

 

 

第五条中第二号を第三号とし、第一号の次に次の一号を加える。
 二 総務大臣

 

 

第五条に次の二項を加える。

 2 議長は、必要があると認めるときは、前項に掲げる者のほか、同項に掲げる国務大臣以外の国務大臣を、議案を限って、議員として、臨時に会議に参加させることができる。

 3 議長は、前二項の規定にかかわらず、第二条第一項第四号から第七号までに掲げる事項(同項第六号に掲げる事項については、その対処措置につき諮るべき事態に係るものに限る。第八条第二項において同じ)に関し、事態の分析及び評価について特に集中して審議する必要があると認める場合は、第一項第一号、第三号及び第六号から第九号までに掲げる議員によって事案について審議を行うことができる。ただし、その他の第一項または第二項に規定する議員を審議に参加させるべき特別の必要があると認めるときは、これらの議員を、臨時に当該審議に参加させることを妨げない。

 

 

 第七条の見出しを「(関係者の出席)」に改め、同条中「、関係の国務大臣」を削る。

 

 

第十一条を第十二条とし、第八条から第十条までを一条ずつ繰り下げ、第七条の次に次の一条を加える。

 (事態対処専門委員会)

 第八条 会議に、事態対処専門委員会(以下「委員会」という)を置く。

 2 委員会は、第二条第一項第四号から第七号までに掲げる事項の審議及びこれらの事項に係る同条第二項の意見具申を迅速かつ的確に実施するため、必要な事項に関する調査及び分析を行い、その結果に基づき、会議に進言する。

 3 委員会は、委員長及び委員をもって組織する。

 4 委員長は、内閣官房長官をもって充てる。

 5 委員は、内閣官房及び関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。

 付則
(施行期日)
 この法律は、公布の日から施行する。
 

 自衛隊法改悪案
   自衛隊の権限拡大で武力行使と生産過程含め社会を軍事支配へ

◇自衛隊法一部改正案(全文) (自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律(案))
有事立法3法案を全面的に暴露する

法案提出の理由

 我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、防衛出動を命ぜられた自衛隊がその任務をより有効かつ円滑に遂行し得るよう、防衛出動時及び防衛出動下令前における所要の行動及び権限に関する規定を整備し、並びに損失補償の手続等を整備するとともに、関係法律の適用について所要の特例規定を設けるほか、武力攻撃事態に至ったときの対処基本方針に係る国会承認等の手続が新設されることに伴い、防衛出動命令の手続について所要の整備を行い、併せて防衛出動を命ぜられた職員に対する防衛出動手当の支給、災害補償その他給与に関し必要な特別の措置を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 これは自衛隊法の単なる一部改正案ではない。これは有事=戦時=武力攻撃事態に対応する自衛隊の権限拡大法案である。有事または戦時自衛隊権限法案と言うべきものである。
 自衛隊が実際の戦争に出動することを想定して、その時に必要とする各種の権限を自衛隊に与えるという法案である。本来独立の法案として、例えば有事自衛隊権限法といったものとして提出されるべきものである。今次自衛隊法改正案の基本的な内容は、武力攻撃事態法案=侵略戦争法案に対応して、自衛隊が実際に出動し、行動を起こすことを想定して、その際の自衛隊の権限をはっきりと拡充している。

第一条 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第九章 罰則(第百十八条−第百二十三条)」を「第九章 罰則(第百十八条−第百二十六条)」に改める。

 

 第103条を実戦に向けて圧倒的に強化

 

自衛隊法改正案の第一の柱はまず、自衛隊法第103条(防衛出動時における物資の収用等)がより実戦に向けて圧倒的に拡充されたことである。
 この第103条の第1項では、自衛隊法第76条(防衛出動)第1項の規定により、内閣総理大臣が自衛隊に防衛出動を命じた時、防衛庁長官などの要請にもとづき、都道府県知事(緊急時は防衛庁長官)は「当該自衛隊の行動に係る地域において」「病院、診療所その他政令で定める施設を管理し、土地、家屋若しくは物資を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資の保管を命じ、又はこれらの物資を収用することができる」としている。
 また、第2項においては、当該地域以外でも「施設の管理、土地等の使用若しくは物資の収用を行」うことができること、また「当該地域内にある医療、土木建築工事又は輸送を業とする者に対して、当該地域内においてこれらの者が現に従事している医療、土木建築工事又は輸送の業務で長官又は政令で定める者が指定したものに従事することを命ずることができる」とされている。
 さらに新たに改定される第103条第3項では、第1項、第2項の規定により土地を使用する場合、立木等(実はこれは立ち木その他、土地に定着する物件のこと。ただし家屋は除く)の移転または処分を行うことができるとしている。
 この第103条第1項と第2項、第3項をあわせてみるとき、防衛出動時における自衛隊は恐るべき権限が与えられていることが明白となる。
 要するに、自衛隊は防衛出動時には必要とするどんな施設でも、土地・家屋でも管理し使用できるのだ。また、必要とする軍需物資については、生産、集荷、販売、配給、保管、輸送の全過程をとおして、それぞれの物資の保管を命令し、収用することができるのだ。
 マスコミなどで言っている保管命令うんぬんは詳しく説明しなければ、実にささいなことのように歪曲されて理解されてしまう。実際には保管命令というのは、生産過程の全段階での物資の保管を指しているのであり、生産過程そのものも含めて支配するのである。
 今ひとつは、自衛隊はこの第103条第2項によって、当該地域において、医療、土木、建築工事、輸送の業務に携わっている者に対して、同種の業務について、指定された場所で働くことを強制できるのである。
 ところで、自衛隊法改正案では、この第103条について圧倒的な拡充を図っている。すなわち、第103条第13項という新しい項をつくり、都道府県知事は、施設を管理し、土地等を使用し、取扱物資を保管を命じ、物資を収用する場合には、当該施設、土地、家屋に立ち入り、状況検査させることができるとしている。同じく第14項では、保管させた時は、保管を命じた者に必要な報告を求め、当該物資を保管させてある場所に立ち入り、当該物資の保管状況を職員に検査させることができるとしたのである。

 これだけではない。第124条第125条第126条が新設されて、違反した者には重い罰則が科せられることになった。すなわち、@立入検査を拒んだり、妨げたり、虚偽報告をすれば、20万円以下の罰金が科せられる(第124条)。A保管物資を隠匿、毀棄(きき)、搬出した者は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる(第125条)。B前記の124条、125条の違反の場合、直接の違反者のみならず、法人そのものも罰金が科せられる(第126条)。
 こうして、保管命令(くり返すが、生産、集荷、販売、配給、保管、輸送の全過程における物資の保管である。製品だけのことではない)は、完全に強制力を持つものとなる。
 今回は従事命令違反については罰則規定が見送られたが、現実の資本制社会の企業を前提とする時、保管命令の罰則規定はここでも同じような迫力で強制力をもってくるのである。このように、保管命令、従事命令の問題というのは、戦争動員体制の中では、まさに圧倒的な中軸にあるものであって、そこでこうした大改悪が強行されることは重大きわまりないことなのである。

 防衛出動待機の段階から戦争行動に突入

 

自衛隊法改正案の第二の決定的な柱は次の点にある。武力攻撃事態法で言う「予測されるに至った事態」と自衛隊法の「武力攻撃が予測される場合」とはほぼ対応しているが、この時、内閣総理大臣の命令で(国会の承認なしに)発せられるのが防衛出動待機命令である。今回の改正案においては、この防衛出動待機命令下令(かれい)の時点で、これまではできなかったさまざまな軍事活動がただちに実行できるようにされているのである。

 この点でまず出発点となるものが、第77条(防御施設構築の措置)という新しい1条の新設である。武力攻撃事態法案によって自衛隊法第77条(防衛出動待機命令)は、「武力攻撃が予測されるに至った事態」における内閣総理大臣の権限で出される防衛出動待機命令を規定するものとなる。これまではこの規定は基本的に自衛隊を待機態勢に入れることとしてあった。ところが、今回の改正案では、この時点で、自衛隊は戦争行動に突入できることになったのだ。
 新設される第77条の2(防御施設構築の措置)は、防衛出動待機命令下(=「武力攻撃が予測されるに至った事態」にほぼ対応している)において、部隊を展開し、陣地その他の「防御施設」を構築することができるとしたのである。自衛隊の戦争行動というのは、直接の戦火を交えるまでは、いわば基本的に「防御施設」の建設などが大きな任務となる。北朝鮮・中国との関係では、それは大きな戦争重圧を加える明瞭な軍事行動である。それは戦争の開始にほかならないのである。
 実際、これが戦争行動そのものであることを示しているのが、第92条の3(展開予定地域内における武器の使用)の1条の新設である。これは第77条の2によって、展開予定地域内で陣地等防御施設の建設の任務にあたる者は、自衛のためなら「武器を使用することができる」としているのだ! 防御施設づくりに抵抗する者には必要な武器を使用して排除せよとしているのだ!
 また、第103条の2(展開予定地域内の土地の使用等)という新しい1条においても第77条の2(防御施設構築の措置)にもとづく任務遂行のために、「土地を使用することができる」「立木等(土地の定着物件)を移転または処分することができる」ということが確認されている。
 防衛出動した自衛隊が(あるいは防衛出動待機命令下の自衛隊が、防衛出動時と同じように)、防御施設をつくり、道路工事を行い、土地・河川等を利用できるようにするために、今回の改正案では、第115条の3以下に18の条文が追加されて自衛隊への法律の適用除外や特例措置が圧倒的に拡充されている。すなわち、以下の諸条文の新設である。
 消防法の適用除外(第115条の2第3項、第4項)、墓地、埋葬法の適用除外(第115条の4)、医療法の適用除外等(第115条の5)、漁港漁場整備法の特例(第115条の6)、建築基準法の特例(第115条の7)、港湾法の特例(第115条の8)、土地収用法の適用除外(第115条の9)、森林法の特例(第115条の10)、道路法の特例(第115条の11)、土地区画整理法の適用除外(第115条の12)、都市公園法の特例(第115条の13)、海岸法の特例(第115条の14)、自然公園法の特例(第115条の15)、道路交通法の特例(第115条の16))、河川法の特例(第115条の17)、首都圏近郊緑地保全法の適用除外(第115条の18)、近畿圏の保全区域の整備に関する法律の適用除外(第115条の19)、都市計画法の適用除外(第115条の20)、都市緑地保全法の特例(第115条の21)

 以上に列挙した新設の条文は、これまでの規定と合わせてすべて防衛出動時だけではなく、防衛出動待機命令下において、すでに自衛隊が陣地・軍事施設の構築や各種工事その他の活動をどんどん進めることを許可するものである。
 ここで再び注意しておきたいことは、「陣地などの構築」ぐらいというようなとらえ方をしてはならないということである。自衛隊が直接の戦火を交える前の大半の活動はこうした陣地や道路の建設、物資の備蓄などのことがらであって、今回の改正案によって、これがいわゆる「予測される事態」という段階で完全にできるということだ。いわば戦争体制の準備がほぼ全面的にできることを意味しているのだ。
 以上が今回の自衛隊法改正案の意義と主な内容であるが、重要なことはこの改正こそ、自衛隊がただちに北朝鮮・中国侵略戦争の発動に向かって動き出すことを可能にする有事自衛隊法であり、戦時自衛隊権限法だということだ。要するに、武力攻撃事態法にもとづき、武力攻撃事態対処基本方針にそって、武力攻撃の排除=武力行使に突入することを可能にする軍事立法なのである。つまり、戦争突入のための有事法制として、自衛隊をめぐっては決定的に整備されるのである。

 第七十六条第一項中「わが国」を「我が国」に改め、「、国会の承認(衆議院が解散されているときは、日本国憲法第五十四条に規定する緊急集会による参議院の承認。以下本項及び次項において同じ。)を得て」を削り、同項ただし書を削り、同項に後段として次のように加える。
 この場合においては、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十四年法律第   号)第九条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。
 第七十六条第二項を削り、同条第三項中「前項の場合において不承認の議決があつたとき、又は」を削り、同項を同条第二項とする。
 第七十七条の次に次の一条を加える。
(防御施設構築の措置)
第七十七条の二 長官は、事態が緊迫し、第七十六条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、同項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の部隊を展開させることが見込まれ、かつ、防備をあらかじめ強化しておく必要があると認める地域(以下「展開予定地域」という。)があるときは、内閣総理大臣の承認を得た上、その範囲を定めて、自衛隊の部隊等に当該展開予定地域内において陣地その他の防御のための施設(以下「防御施設」という。)を構築する措置を命ずることができる。
 第八十六条中「第七十六条第一項」の下に「、第七十七条の二」を加える。
 第九十二条の二を第九十二条の四とし、第九十二条の次に次の二条を加える。
(防衛出動時の緊急通行)
第九十二条の二 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の自衛官は、当該自衛隊の行動に係る地域内を緊急に移動する場合において、通行に支障がある場所をう回するため必要があるときは、一般交通の用に供しない通路又は公共の用に供しない空地若しくは水面を通行することができる。この場合において、当該通行のために損害を受けた者から損失の補償の要求があるときは、政令で定めるところにより、その損失を補償するものとする。
(展開予定地域内における武器の使用)
第九十二条の三 第七十七条の二の規定による措置の職務に従事する自衛官は、展開予定地域内において当該職務を行うに際し、自己又は自己と共に当該職務に従事する隊員の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
 第百三条第二項中「基き」を「基づき」に改め、「、前項の規定の例により」を削り、同条第三項を次のように改める。
3 前二項の規定により土地を使用する場合において、当該土地の上にある立木その他土地に定着する物件(家屋を除く。以下「立木等」という。)が自衛隊の任務遂行の妨げとなると認められるときは、都道府県知事(第一項ただし書の場合にあつては、同項ただし書の長官又は政令で定める者。次項、第七項、第十三項及び第十四項において同じ。)は、第一項の規定の例により、当該立木等を移転することができる。この場合において、事態に照らし移転が著しく困難であると認めるときは、同項の規定の例により、当該立木等を処分することができる。
 第百三条第六項中「又は第二項」を「から第四項まで」に改め、同項を同条第十八項とし、同条第五項中「前四項」を「前各項」に、「第七十六条第一項の規定により自衛隊が出動を命ぜられた場合における施設の管理、土地等の使用、物資の保管命令、物資の収用又は業務従事命令」を「第一項から第四項までの規定による処分」に改め、同項を同条第十七項とし、同条中第四項を第五項とし、同項の次に次の十一項を加える。
6 第一項本文又は第二項の規定による処分の対象となる施設、土地等又は物資を第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の用に供するため必要な事項は、都道府県知事と当該処分を要請した者とが協議して定める。
7 第一項から第四項までの規定による処分を行う場合には、都道府県知事は、政令で定めるところにより公用令書を交付して行わなければならない。ただし、土地の使用に際して公用令書を交付すべき相手方の所在が知れない場合その他の政令で定める場合にあつては、政令で定めるところにより事後に交付すれば足りる。
8 前項の公用令書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 公用令書の交付を受ける者の氏名(法人にあつては、名称)及び住所
二 当該処分の根拠となつたこの法律の規定
三 次に掲げる処分の区分に応じ、それぞれ次に定める事項
イ 施設の管理 管理する施設の所在する場所及び管理する期間
ロ 土地又は家屋の使用 使用する土地又は家屋の所在する場所及び使用する期間
ハ 物資の使用 使用する物資の種類、数量、所在する場所及び使用する期間
ニ 取扱物資の保管命令 保管すべき物資の種類、数量、保管すべき場所及び期間
ホ 物資の収用 収用する物資の種類、数量、所在する場所及び収用する期日
ヘ 業務従事命令 従事すべき業務、場所及び期間
ト 立木等の移転又は処分 移転し、又は処分する立木等の種類、数量及び所在する場所
チ 家屋の形状の変更 家屋の所在する場所及び変更の内容
四 当該処分を行う理由
9 前二項に定めるもののほか、公用令書の様式その他公用令書について必要な事項は、政令で定める。
10 都道府県(第一項ただし書の場合にあつては、国)は、第一項から第四項までの規定による処分(第二項の規定による業務従事命令を除く。)が行われたときは、当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない。
11 都道府県は、第二項の規定による業務従事命令により業務に従事した者に対して、政令で定める基準に従い、その実費を弁償しなければならない。
12 都道府県は、第二項の規定による業務従事命令により業務に従事した者がそのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は障害の状態となつたときは、政令で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
13 都道府県知事は、第一項又は第二項の規定により施設を管理し、土地等を使用し、取扱物資の保管を命じ、又は物資を収用するため必要があるときは、その職員に施設、土地、家屋若しくは物資の所在する場所又は取扱物資を保管させる場所に立ち入り、当該施設、土地、家屋又は物資の状況を検査させることができる。
14 都道府県知事は、第一項又は第二項の規定により取扱物資を保管させたときは、保管を命じた者に対し必要な報告を求め、又はその職員に当該物資を保管させてある場所に立ち入り、当該物資の保管の状況を検査させることができる。
15前二項の規定により立入検査をする場合には、あらかじめその旨をその場所の管理者に通知しなければならない。
16第十三項又は第十四項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
 第百三条第三項の次に次の一項を加える。
4 第一項の規定により家屋を使用する場合において、自衛隊の任務遂行上やむを得ない必要があると認められるときは、都道府県知事は、同項の規定の例により、その必要な限度において、当該家屋の形状を変更することができる。
 第百三条に次の一項を加える。
19 第一項から第四項まで、第六項、第七項及び第十項から第十五項までの規定の実施に要する費用は、国庫の負担とする。
 第百三条の次に次の一条を加える。
(展開予定地域内の土地の使用等)
第百三条の二
第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等の任務遂行上必要があると認められるときは、都道府県知事は、展開予定地域内において、長官又は政令で定める者の要請に基づき、土地を使用することができる。
2 前項の規定により土地を使用する場合において、立木等が自衛隊の任務遂行の妨げとなると認められるときは、都道府県知事は、同項の規定の例により、当該立木等を移転することができる。この場合において、事態に照らし移転が著しく困難であると認めるときは、同項の規定の例により、当該立木等を処分することができる。
3 前条第七項から第十項まで及び第十七項から第十九項までの規定は前二項の規定により土地を使用し、又は立木等を移転し、若しくは処分する場合について、同条第六項、第十三項、第十五項及び第十六項の規定は第一項の規定により土地を使用する場合について準用する。この場合において、前条第六項中「第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊」とあるのは、「第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等」と読み替えるものとする。
4 第一項の規定により土地を使用している場合において、第七十六条第一項の規定により自衛隊が出動を命ぜられ、当該土地が前条第一項又は第二項の規定の適用を受ける地域に含まれることとなつたときは、前三項の規定により都道府県知事がした処分、手続その他の行為は、前条の規定によりした処分、手続その他の行為とみなす。
 第百十五条の二に次の二項を加える。
3 消防法第十七条の規定は、第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として新築、増築、改築、移転、修繕又は模様替の工事を行つた同法第十七条第一項の防火対象物で政令で定めるものについては、第七十六条第二項若しくは武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律第九条第十項後段の規定による撤収(以下第百十五条の十七までにおいて単に「撤収」という。)を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による命令が解除されるまでの間は、適用しない。
4 長官は、前項の規定にかかわらず、同項に規定する防火対象物について、消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設の設置及び維持に関する基準を定め、その他当該防火対象物における災害を防止し、公共の安全を確保するため必要な措置を講じなければならない。
 第百十六条に次の一項を加える。
2 前項の部隊が第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた場合における麻薬及び向精神薬取締法の規定の適用については、前項後段に規定するもののほか、当該部隊が撤収を命ぜられるまでの間は、当該部隊の医師又は歯科医師は、麻薬施用者とみなす。
 第百十六条を第百十五条の三とし、同条の次に次の十八条を加える。
(墓地、埋葬等に関する法律の適用除外)
第百十五条の四 墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)第四条及び第五条第一項の規定は、第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の隊員が死亡した場合におけるその死体の埋葬及び火葬については、適用しない。
(医療法の適用除外等)
第百十五条の五 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)の規定は、第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の規定により出動待機命令を受けた自衛隊の部隊等が臨時に開設する医療を行うための施設については、適用しない。
2 前項の医療を行うための施設は、医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第二十四条第二項、歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第二十三条第二項、診療放射線技師法(昭和二十六年法律第二百二十六号)第二十六条第二項、歯科技工士法(昭和三十年法律第百六十八号)第二条第三項ただし書及び第十八条ただし書、採血及び供血あつせん業取締法(昭和三十一年法律第百六十号)第四条第一項ただし書、臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律(昭和三十三年法律第七十六号)第二十条の三第一項、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第五項ただし書、第二十六条第三項、第四十六条第二項及び第四十九条第一項ただし書、薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)第二十二条ただし書並びに救急救命士法(平成三年法律第三十六号)第二条第一項及び第四十四条第二項ただし書の規定の適用についてはこれらの規定に規定する病院と、麻薬及び向精神薬取締法第五十条の十六第一項第一号及び第二項の規定の適用については同条に規定する病院等とみなす。
(漁港漁場整備法の特例)
第百十五条の六 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が漁港漁場整備法(昭和二十五年法律第百三十七号)第三十九条第一項の規定により許可を要する行為をしようとする場合における同条第四項の規定の適用については、撤収を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による命令が解除されるまでの間は、同法第三十九条第四項中「協議する」とあるのは、「その旨を通知する」とする。
2 前項の規定により読み替えられた漁港漁場整備法第三十九条第四項の通知を受けた漁港管理者は、漁港の保全上必要があると認めるときは、当該通知をした部隊等の長に対し意見を述べることができる。
(建築基準法の特例)
第百十五条の七 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が行う破損した建築物の応急の修繕又は応急仮設建築物の建築については、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第八十五条第一項本文及び第三項の規定を準用する。この場合において、同項中「その建築工事を完了した後三月をこえて」とあるのは「自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第七十六条第二項若しくは武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十四年法律第   号)第九条第十項後段の規定による撤収を命ぜられ、又は同法第七十七条の二の規定による命令が解除された後においても」と、「特定行政庁の許可」とあるのは「当該撤収の命令又は命令の解除があつた後、速やかに特定行政庁に申請し、その許可」と読み替えるものとする。
(港湾法の特例)
第百十五条の八 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第三十七条第一項又は第五十六条第一項の規定により許可を要する行為をしようとする場合における同法第三十七条第三項(同法第五十六条第三項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定の適用については、撤収を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による命令が解除されるまでの間は、同法第三十七条第三項中「とあるのは「港湾管理者と協議し」と、前項中「許可をし」とあるのは「協議に応じ」」とあるのは、「とあるのは、「あらかじめ、その旨を港湾管理者に通知し」」とする。
2 前項に規定する自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為であつて港湾法第三十八条の二第一項の規定により届出を要するものをしようとする場合における同条第九項の規定の適用については、同項中「同項の規定による届出の例により」とあり、及び「第四項の規定による届出の例により」とあるのは、「あらかじめ」とする。
3 前二項の規定により読み替えられた港湾法第三十七条第三項又は第三十八条の二第九項の通知を受けた港湾管理者又は都道府県知事は、港湾の利用又は保全上必要があると認めるときは、当該通知に係る部隊等の長に対し意見を述べることができる。
4 港湾法第四十条第一項の規定は、第一項に規定する自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為については、適用しない。
(土地収用法の適用除外)
第百十五条の九 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第二十八条の三第一項(同法第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定は、第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為については、適用しない。
(森林法の特例)
第百十五条の十 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第十条の八第一項の規定により届出を要する立木の伐採に対する同項の規定の適用については、同項中「伐採するには、農林水産省令で定める手続に従い、あらかじめ」とあるのは「伐採したときは」と、「森林の所在場所、伐採面積、伐採方法、伐採齢、伐採後の造林の方法、期間及び樹種その他農林水産省令で定める事項を記載した伐採及び伐採後の造林の届出書を提出しなければ」とあるのは「その旨を通知しなければ」とする。
2 森林法第三十一条の規定は、前項に規定する自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為については、適用しない。
3 第一項に規定する自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為であつて森林法第三十四条第一項又は第二項の規定により許可を要するものをしようとするときは、これらの規定にかかわらず、あらかじめ都道府県知事にその旨を通知することをもつて足りる。
4 前項の通知を受けた都道府県知事は、保安林の保全上必要があると認めるときは、当該通知をした部隊等の長に対し意見を述べることができる。
(道路法の特例)
第百十五条の十一 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の部隊等が、破損し、又は欠壊している道路を通行するために応急措置として行う道路に関する工事については、道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二十四条の規定にかかわらず、同条本文の承認を受けることを要しない。この場合において、当該部隊等の長は、当該道路に関する工事の概要を着手後速やかに当該承認の権限を有する者に通知しなければならない。
2 前項前段に規定する自衛隊の部隊等が行う道路の占用に対する道路法第三十五条の規定の適用については、撤収を命ぜられるまでの間は、同条中「道路管理者に協議し、その同意を得れば」とあるのは、「同条第一項又は第三項の許可の権限を有する者にあらかじめ同条第二項各号に掲げる事項を通知すれば」とする。
3 道路法第九十一条第一項の規定は、第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為については、適用しない。
4 前項に規定する自衛隊の部隊等が行う道路予定区域の占用に対する道路法第九十一条第二項において準用する同法第三十五条の規定の適用については、撤収を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による命令が解除されるまでの間は、同法第九十一条第二項において準用する同法第三十五条中「道路管理者に協議し、その同意を得れば」とあるのは、「第九十一条第二項において準用する第三十二条第一項又は第三項の許可の権限を有する者にあらかじめ同条第二項各号に掲げる事項を通知すれば」とする。
5 第二項の規定により読み替えられた道路法第三十五条又は前項の規定により読み替えられた同法第九十一条第二項において準用する同法第三十五条の通知を受けた者は、道路の管理上必要があると認めるときは、当該通知に係る部隊等の長に対し意見を述べることができる。
(土地区画整理法の適用除外)
第百十五条の十二 土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)第七十六条第一項の規定は、第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為については、適用しない。
(都市公園法の特例)
第百十五条の十三 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が行う都市公園又は公園予定地の占用に対する都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第九条(同法第二十三条第三項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定の適用については、撤収を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による命令が解除されるまでの間は、同法第九条中「第七条各号に掲げる工作物」とあるのは「工作物」と、「と公園管理者との協議が成立すること」とあるのは「があらかじめ公園管理者に占用の目的、占用の期間、占用の場所及び工作物その他の物件又は施設の構造を通知すること」とする。この場合において、同法第十一条(同法第二十三条第三項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
2 前項の規定により読み替えられた都市公園法第九条の通知を受けた公園管理者は、都市公園の管理上必要があると認めるときは、当該通知に係る部隊等の長に対し意見を述べることができる。
3 都市公園法第十八条の規定に基づく条例の規定は、第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為については、適用しない。
(海岸法の特例)
第百十五条の十四 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第七条第一項、第八条第一項、第三十七条の四又は第三十七条の五の規定により許可を要する行為をしようとする場合における同法第十条第二項(同法第三十七条の八において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定の適用については、撤収を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による命令が解除されるまでの間は、同法第十条第二項中「協議する」とあるのは、「その旨を通知する」とする。
2 前項の規定により読み替えられた海岸法第十条第二項の通知を受けた海岸管理者は、海岸の保全上必要があると認めるときは、当該通知に係る部隊等の長に対し意見を述べることができる。
(自然公園法の特例)
第百十五条の十五 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為であつて自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第十七条第三項、第十八条第三項、第十八条の二第三項又は第二十条第一項の規定により許可又は届出を要するものをしようとする場合における同法第四十条の規定の適用については、同条第一項中「協議しなければ」とあるのは「その旨を通知しなければ」と、同条第三項中「これらの規定による届出の例により」とあるのは「あらかじめ」とする。
2 前項の規定により読み替えられた自然公園法第四十条第一項又は第三項の通知を受けた環境大臣又は都道府県知事は、自然公園の保護上必要があると認めるときは、当該通知をした部隊等の長に対し意見を述べることができる。
3 第一項に規定する自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為が自然公園法第四十二条第一項の規定に基づく条例の規定により許可又は届出を要することとされる場合における当該条例の規定の適用については、前二項の規定の例による。
(道路交通法の特例)
第百十五条の十六 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為であつて道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第七十七条第一項の規定により許可を要するものに対する同項の規定の適用については、撤収を命ぜられるまでの間は、同項中「の許可(当該行為に係る場所が同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長の許可。以下この節において同じ。)を受けなければならない」とあるのは、「にあらかじめ当該行為の概要を通知しなければならない。この場合において、当該行為に係る場所が同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長に通知すれば足りる」とする。
2 前項の規定により読み替えられた道路交通法第七十七条第一項の通知を受けた警察署長は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要があると認めるときは、当該通知をした部隊等の長に対し意見を述べることができる。
3 第七十六条第一項の規定による防衛出動命令又は第七十七条の規定による出動待機命令を受けた隊員が受けている都道府県公安委員会の運転免許に係る運転免許証の有効期間及びその更新については、道路交通法第九十二条の二第一項から第三項まで及び第百一条第一項の規定にかかわらず、政令で特別の定めをすることができる。
(河川法の特例)
第百十五条の十七 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第二十三条から第二十五条まで、第二十六条第一項、第二十七条第一項、第五十五条第一項、第五十七条第一項、第五十八条の四第一項又は第五十八条の六第一項の規定により許可を要する行為(同法第二十七条第四項に規定する一定の河川区域内の土地における土地の掘削、盛土又は切土を除く。)をしようとする場合における同法第九十五条(同法第百条第一項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定の適用については、撤収を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による命令が解除されるまでの間は、同法第九十五条中「国と河川管理者との協議が成立することをもつて、これらの規定による許可又は承認があつたものとみなす」とあるのは、「これらの規定にかかわらず、国があらかじめ河川管理者に当該行為をしようとする旨を通知することをもつて足りる」とする。
2 前項の規定により読み替えられた河川法第九十五条の通知を受けた河川管理者は、河川の管理上必要があると認めるときは、当該通知に係る部隊等の長に対し意見を述べることができる。
(首都圏近郊緑地保全法の適用除外)
第百十五条の十八 首都圏近郊緑地保全法(昭和四十一年法律第百一号)第八条第一項及び第三項の規定は、第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為については、適用しない。
(近畿圏の保全区域の整備に関する法律の適用除外)
第百十五条の十九 近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和四十二年法律第百三号)第九条第一項及び第三項の規定は、第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為については、適用しない。
(都市計画法の適用除外)
第百十五条の二十 都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四十二条第一項、第五十二条の二第一項(同法第五十七条の三第一項において準用する場合を含む。)、第五十三条第一項及び第六十五条第一項の規定は、第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為については、適用しない。

都市計画法第五十八条第一項の規定に基づく条例の規定は、前項に規定する自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為については、適用しない。
(都市緑地保全法の特例)
第百十五条の二十一 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられ、又は第七十七条の二の規定による措置を命ぜられた自衛隊の部隊等が応急措置として行う防御施設の構築その他の行為であつて都市緑地保全法(昭和四十八年法律第七十二号)第五条第一項の規定により許可を要するものをしようとする場合における同条第八項後段の規定の適用については、同項後段中「協議しなければ」とあるのは、「その旨を通知しなければ」とする。
2 前項の規定により読み替えられた都市緑地保全法第五条第八項の通知を受けた都道府県知事は、緑地の保全上必要があると認めるときは、当該通知をした部隊等の長に対し意見を述べることができる。
 第百十六条の二を第百十六条とし、第百十六条の三第二項中「ととのえる」を「調える」に改め、同条を第百十六条の二とする。
 第百十六条の四中「及び第二項並びに」を「から第四項まで、第六項、第七項及び第十項から第十五項まで、第百三条の二、」に、「第百三条第三項において準用する災害救助法第二十三条の二第二項及び第三項、第二十三条の三、第二十四条第五項並びに第二十九条」を「第百十五条の十第四項」に、「事務は」を「事務(第百十五条の十第四項の規定により処理することとされているもののうち民有林に係るものにあつては、森林法第二十五条第一項第一号から第三号までに掲げる目的を達成するための指定に係る保安林に関するものに限る。)は」に改め、同条を第百十六条の三とする。
 本則に次の三条を加える。
第百二十四条 第百三条第十三項(第百三条の二第三項において準用する場合を含む。)又は第十四項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
第百二十五条 第百三条第一項又は第二項の規定による取扱物資の保管命令に違反して当該物資を隠匿し、毀棄し、又は搬出した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
百二十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

第二条 防衛庁の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号)の一部を次のように改正する。

 第三条第一項中「以下「出動」を「第十二条第二項において「出動」に改める。

 第十五条を次のように改める。
(防衛出動手当)
第十五条 自衛隊法第七十六条第一項の規定による出動(以下「防衛出動」という。)を命ぜられた職員(政令で定めるものを除く。)には、この条の定めるところにより、防衛出動手当を支給する。
2 防衛出動手当の種類は、防衛出動基本手当及び防衛出動特別勤務手当とする。
3 防衛出動基本手当は、防衛出動時における勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤労条件及び勤務の危険性、困難性その他の著しい特殊性に応じて支給するものとする。
4 防衛出動特別勤務手当は、防衛出動時における戦闘又はこれに準ずる勤務の著しい危険性に応じて支給するものとする。
5 防衛出動基本手当が支給される職員には、第十四条第一項の規定にかかわらず、単身赴任手当、超過勤務手当、休日給、夜勤手当、宿日直手当及び管理職員特別勤務手当は、支給しない。
6 第十四条第二項において準用する一般職給与法第十一条の九第一項第三号の規定の適用については、防衛出動を命ぜられた日の前日において同号の規定に該当していた職員で、前項の規定の適用がないとしたならば同日後も引き続き単身赴任手当の支給要件を具備することとなるものは、防衛出動手当を支給されている間、同号の規定に該当するものとみなす。
7 前各項に定めるもののほか、防衛出動基本手当及び防衛出動特別勤務手当の額その他防衛出動手当の支給に関し必要な事項は、政令で定める。
 第二十七条第二項中「単身赴任手当及び管理職員特別勤務手当」を「単身赴任手当、管理職員特別勤務手当及び防衛出動手当」に、「宿日直手当及び管理職員特別勤務手当」を「宿日直手当、管理職員特別勤務手当及び防衛出動手当」に、「航空手当」を「特殊勤務手当、特地勤務手当、管理職員特別勤務手当、防衛出動手当、航空手当」に、「、営外手当」を「及び営外手当」に改め、「、特殊勤務手当、特地勤務手当及び管理職員特別勤務手当」を削る。
 第三十条を削り、第三十条の二を第三十条とする。

  附則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
一 第一条中自衛隊法本則に三条を加える改正規定 公布の日から起算して三月を経過した日
二 附則第三項の規定 自然公園法の一部を改正する法律(平成十四年法律第   号)の公布の日又はこの法律の公布の日のいずれか遅い日
三 附則第四項の規定 薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律(平成十四年法律第   号)の公布の日又はこの法律の公布の日のいずれか遅い日

(地方自治法の一部改正) 
2 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
 別表第一自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の項中「及び第二項並びに」を「から第四項まで、第六項、第七項及び第十項から第十五項まで、第百三条の二、」に、「第百三条第三項において準用する災害救助法第二十三条の二第二項及び第三項、第二十三条の三、第二十四条第五項並びに第二十九条」を「第百十五条の十第四項」に、「事務」を「事務(第百十五条の十第四項の規定により処理することとされているもののうち民有林に係るものにあつては、森林法第二十五条第一項第一号から第三号までに掲げる目的を達成するための指定に係る保安林に関するものに限る。)」に改める。
(自然公園法の一部を改正する法律の一部改正)
3 自然公園法の一部を改正する法律の一部を次のように改正する。
 附則中第八条を第九条とし、第七条を第八条とし、第六条を第七条とし、第五条の次に次の一条を加える。
(自衛隊法の一部改正)
 第六条 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
 第百十五条の十五第一項中「第十七条第三項、第十八条第三項、第十八条の二第三項又は第二十条第一項」を「第十三条第三項、第十四条第三項、第二十四条第三項又は第二十六条第一項」に、「第四十条」を「第十五条第三項ただし書又は第五十六条」に、「同条第一項」を「同法第十五条第三項第一号中「第五十六条第一項後段の規定による協議」とあるのは「自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第百十五条の十五第一項の規定により読み替えられた第五十六条第一項後段の規定による通知」と、同法第五十六条第一項」に改め、同条第二項中「第四十条第一項又は第三項」を「第五十六条第一項又は第三項」に改め、同条第三項中「第四十二条第一項」を「第六十条第一項」に改める。
(薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律の一部改正)
4 薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律の一部を次のように改正する。
附則第一条第一号中「及び第二十四条」を「、第二十条(自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第百十五条の五第二項の改正規定中「採血及び供血あつせん業取締法(昭和三十一年法律第百六十号)第四条第一項ただし書」を「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和三十一年法律第百六十号)第十三条第一項ただし書」に改める部分に限る。)及び第二十五条」に改める。
附則中第二十四条を第二十五条とし、第二十条から第二十三条までを一条ずつ繰り下げ、第十九条の次に次の一条を加える。
(自衛隊法の一部改正)
第二十条 自衛隊法の一部を次のように改正する。
 第百十五条の五第二項中「採血及び供血あつせん業取締法(昭和三十一年法律第百六十号)第四条第一項ただし書」を「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和三十一年法律第百六十号)第十三条第一項ただし書」に、「薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第五項ただし書」を「薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第十一項ただし書」に改める。

 おわりに

有事立法3法案を逐条批判的に見てきたが、われわれは、この3法案が一体であること、一体となって日帝による北朝鮮・中国侵略戦争を可能とする法案であることを全面的に暴露していこうということである。日帝・小泉の「備えあれば憂いなし」「日本が攻められたらどうする」という反革命ペテンとその帝国主義的反動的イデオロギーを、まさにこの有事立法批判の中身をもって断固打ち砕いていこうということである。米帝の対イラク攻撃が切迫し、それと連動して北朝鮮空爆―北朝鮮侵略戦争、ひいては中国侵略戦争が展開されようとしている。だからこそ日帝は、激化する帝国主義間争闘戦での生き残りをかけて、米帝の世界戦争路線に全面協力する形で自己自身の北朝鮮・中国侵略戦争遂行とそのための戦時体制を一挙につくりあげようというのだ。今秋の有事立法粉砕の闘いを戦後最大の政治決戦としてなんとしても戦闘的・大衆的に大爆発させよう。

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【参考  国家総動員法と有事立法】

 日帝は第2次大戦時、国家総力戦体制を築いて中国侵略戦争―全面的なアジア侵略戦争―対米戦争に突入していったが、その総力戦体制を築く上で「国家総動員法」(1938)の制定とその発動は重大な画期をなした。
 そして、戦後の日帝・自衛隊も、たとえば1963年の「三矢作戦研究」では、明白にこの国家総動員法をモデルにして有事立法研究を行った。
 自衛隊法改悪(もともと103条は防衛出動時の自衛隊の極めて強大な権限を規定しているが、それが今回さらに拡充され、また防衛出動待機命令時〔武力攻撃が予測される場合〕の自衛隊の権限も圧倒的に強化された)や、いわゆる「国民保護法制」なるペテンで進められようとしている総力戦体制がどのようなものか――を考える上で参考になるので、以下に抜粋的に紹介し、コメントを付す。有事立法攻撃の暴露・弾劾の中身として活用して下さい。

国家総動員法(昭和13年法律第55号)
コメント
   
第1条 本法ニ於テ国家総動員トハ戦時(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ際シ国防目的達成ノ為国ノ全力ヲ最モ有効ニ発揮セシムル様人的及物的資源ヲ統制運用スルヲ謂フ

第2条 本法ニ於テ総動員物資トハ左ニ掲グルモノヲ謂フ
 一 兵器、艦艇、弾薬其ノ他ノ軍用物資
 二 国家総動員上必要ナル被服、食糧、飲料及飼料
 三 国家総動員上必要ナル医薬品、医療機械器具其ノ他ノ衛生用物資及家畜衛生用   物資
 四 国家総動員上必要ナル船舶、航空機、車両、馬其ノ他ノ輸送用物資
 五 国家総動員上必要ナル通信用物資
 六 国家総動員上必要ナル土木建築用物資及照明用物資
 七 国家総動員上必要ナル燃料及電力
 八 前各号ニ掲グルモノノ生産、修理、配給又ハ保存ニ要スル原料、材料、機械器   具、装置其ノ他ノ物資
 九 前各号ニ掲グルモノヲ除クノ外勅令ヲ以テ指定スル国家総動員上必要ナル物資

第3条 本法ニ於テ総動員業務トハ左ニ掲グルモノヲ謂フ
 一 総動員物資ノ生産、修理、配給、輸出、輸入又ハ保管ニ関スル業務
 二 国家総動員上必要ナル運輸又ハ通信ニ関スル業務
 三 国家総動員上必要ナル金融ニ関スル業務
 四 国家総動員上必要ナル衛生、家畜衛生又ハ救護ニ関スル業務
 五 国家総動員上必要ナル教育訓練ニ関スル業務
 六 国家総動員上必要ナル試験研究ニ関スル業務
 七 国家総動員上必要ナル情報又ハ啓発宣伝ニ関スル業務
 八 国家総動員上必要ナル警備ニ関スル業務
 九 前各号ニ掲グルモノヲ除クノ外勅令ヲ以テ指定スル国家総動員上必要ナル業務

第4条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝国臣民ヲ徴用シテ総動員業務ニ従事セシムルコトヲ得但シ兵役法ノ適用ヲ妨ゲズ

※この国家総動員法2、3、4条のあたりの中身の相当部分(物資・人員の徴発・徴用)が、実は自衛隊法103条で可能となっているのだ。
第5条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝国臣民及帝国法人其ノ他ノ団体ヲシテ国、地方公共団体又ハ政府ノ指定スル者ノ行フ総動員業務ニ付協力セシムルコトヲ得 ※4条、5条は武力攻撃事態法第8条(国民の協力)と対応している。
第6条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ従業者ノ使用、雇入若ハ解雇、就職、従業若ハ退職又ハ賃金、給料其ノ他ノ従業条件ニ付必要ナル命令ヲ為スコトヲ得 ※国家が労働者の雇用・賃金・労働条件を直接、強権で統制!
第7条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ労働争議ノ予防若ハ解決ニ関シ必要ナル命令ヲ為シ又ハ作業所ノ閉鎖、作業若ハ労務ノ中止其ノ他ノ労働争議ニ関スル行為ノ制限若ハ禁止ヲ為スコトヲ得 ※労働者の権利の弾圧、労組の解散命令、スト禁止など!
第8条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ物資ノ生産、修理、配給、譲渡其ノ他ノ処分、使用、消費、所持及移動ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
※自衛隊法103条もこれと同様の強制力を持つ!
第9条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ輸出若ハ輸入ノ制限若ハ禁止ヲ為シ、輸出若ハ輸入ヲ命ジ、輸出税若ハ輸入税ヲ課シ又ハ輸出税若ハ輸入税ヲ増課若ハ減免スルコトヲ得

第10条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員物資ヲ使用若ハ収用シ又ハ総動員業務ヲ行フ者ヲシテ之ヲ使用若ハ収用セシムルコトヲ得

※自衛隊法103条!
第11条、12条 (省略)  
第13条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員業務タル事業ニ属スル工場、事業場、船舶其ノ他ノ施設又ハ之ニ転用スルコトヲ得ル施設ノ全部又ハ一部ヲ管理、使用又ハ収用スルコトヲ得
2 政府ハ前項ニ掲グルモノヲ使用又ハ収用スル場合ニ於テ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ従業者ヲ使用セシメ又ハ当該施設ニ於テ現ニ実施スル特許発明若ハ登録実用新案ヲ実施スルコトヲ得
3 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員業務ニ必要ナル土地若ハ家屋其ノ他ノ工作物ヲ管理、使用又ハ収用シ又ハ総動員業務ヲ行フ者ヲシテ之ヲ使用若ハ収用セシムルコトヲ得
※自衛隊法103条!
第14条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ鉱業権、砂鉱権及水ノ使用ニ関スル権利ヲ使用若ハ収用シ又ハ総動員業務ヲ行フ者ヲシテ特許発明若ハ登録実用新案ヲ実施セシメ若ハ鉱業権、砂鉱権及水ノ使用ニ関スル権利ヲ使用セシムルコトヲ得 ※自衛隊法103条!
第15条〜19条 (省略)  
第20条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ新聞紙其ノ他ノ出版物ノ掲載ニ付制限又ハ禁止ヲ為スコトヲ得
2 政府ハ前項ノ制限又ハ禁止ニ違反シタル新聞紙其ノ他ノ出版物ニシテ国家総動員上支障アルモノノ発売及頒布ヲ禁止シ之ヲ差押フルコトヲ得
※反戦派の出版物、新聞やビラへの弾圧、記事掲載制限、
 『前進』の発禁攻撃など! 断じて許すな!
 実は「国民保護法制」の名で、日帝が狙っていることはこうしたことだ!
第21条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝国臣民及帝国臣民ヲ雇傭若ハ使用スル者ヲシテ帝国臣民ノ職業能力ニ関スル事項ヲ申告セシメ又ハ帝国臣民ノ職業能力ニ関シ検査スルコトヲ得 ※住基ネット=国民総背番号制で、だれがどのような資格・免許を持っているかを掌握しようとしている
第22条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ学校、養成所、工場、事業場其ノ他技能者ノ養成ニ適スル施設ノ管理者又ハ養成セラルベキ者ノ雇傭主ニ対シ国家総動員上必要ナル技能者ノ養成ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得

第23条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員物資ノ生産、販売又ハ輸入ヲ業トスル者ヲシテ当該物資又ハ其ノ原料若ハ材料ノ一定数量ヲ保有セシムルコトヲ得

※自衛隊法103条!
第24条〜30条 (省略)  
第31条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ必要ナル場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得 ※自衛隊法103条の13項、14項の新設項目!
第32条 (省略)  
第33条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
 一 第7条ノ規定ニ依ル命令又ハ制限若ハ禁止ニ違反シタル者(※労働争議弾圧)
 二 第9条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ輸出又ハ輸入ヲ為サザル者
 三 第10条ノ規定ニ依ル総動員物資ノ使用又ハ収用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル   者
 四 第13条ノ規定ニ依ル施設、土地若ハ工作物ノ管理、使用若ハ収用又ハ従業者   ノ供用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
 
第34〜38条 (省略)  
第39条 第20条第一項ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ニ違反シタルトキハ新聞紙ニ在リテハ発行人及編輯人、其ノ他ノ出版物ニ在リテハ発行者及著作者ヲ二年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
2 新聞紙ニ在リテハ編輯人以外ニ於テ実際編輯ヲ担当シタル者及掲載ノ記事ニ署名シタル者亦前項ニ同ジ
 
第40、41条 (省略)  
第42条 第31条ノ規定ニ依ル当該官吏ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス

第43条 第21条ノ規定ニ違反シテ申告ヲ怠リ又ハ検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ拘留若ハ科料ニ処ス

 
 (以下略)  

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