ZENSHIN 1998/04/06(No1856 p06)

ホームページへ週刊『前進』月刊『コミューン』季刊『共産主義者』週刊『三里塚』出版物案内販売書店案内連絡先English

 

週刊『前進』(1856号4面1)

日帝・橋本の新たな部落差別=同和住宅家賃値上げ粉砕を
生活と団結の破壊をうち破れ

 全国の部落大衆に対して、同和住宅家賃を一方的に六倍から最大二十倍にも値上げする恐るべき攻撃がかけられている。四月から本格化するこの攻撃は、部落大衆を塗炭の苦しみに突き落とし、部落解放運動の根絶・一掃を狙うものである。解同本部派が闘いを投げ捨て、部落大衆を見捨てた中で、部落解放同盟全国連合会は三月の第七回全国大会で、三百万部落大衆の怒りの先頭に立ち、家賃値上げ阻止を全力で闘う方針を決定した。労働者階級人民は解同全国連と固く連帯し、これを労働者階級にかけられた攻撃そのものとして、断固粉砕するために立ち上がろう。

 第1章 公営住宅法改悪し「応能応益制」導入

 大幅値上げの実態をみよう。第七回大会で報告されたところでは、今後数年間のうちに奈良のAさんは現行家賃八千六百円が六万三千四百円に、Bさんは一万円が九万五千円に、兵庫・西宮のCさんは一万千二百円が三万六千円に、広島市の福島町のDさんは一万二千円が八万三千八百円に、というように途方もない値上げである。こうした攻撃が今、同和住宅十二万五千戸に住む部落大衆を襲っているのだ。
 その根拠となっているのは九六年五月になされた公営住宅法の改悪である。改悪の核心点は「応能応益家賃制度」の導入である。これは居住者の収入と、住宅の広さや立地条件などによって、家賃を一世帯=一戸ごとに決めるというものだ。とりわけ、収入に応じて家賃を決めるとしたことが最大の攻撃である。
 公営住宅はこれまで一種、二種の二とおりがあり、二種住宅は低所得者向けに、低額家賃とすることが法律で義務づけられてきた。同和住宅もこの二種住宅のひとつとされた。ところが新公営住宅法は、この一種、二種の区分をなくし、さらに家賃制度を法定限度額方式から、上限のない応能応益制度に変えることによって、これまでの公営住宅制度のあり方を抜本的に変えたのである。
 橋本政権は、この応能応益家賃制度を同和住宅(同和向け公営住宅、改良住宅)にも全面的に適用しようとしているのである。これが部落民に対する激しい攻撃であることは、建設省自身が「(同和住宅については)一般向けの公営住宅と比して家賃の上昇幅が相当程度大きくなる場合が多い」と認めている(二月二十日付の各都道府県あて事務連絡)。家賃の値上げを、一挙にではなく最長で七〜九年間かけて段階的に値上げしていくという「激変緩和措置」が宣伝されているが、この大失業・賃下げの時代に家賃だけは毎年毎年、急激に確実に上がっていくのである。
 政府・建設省の腹づもりでは、応能応益制度によって、世帯収入の一五〜一八%を住宅家賃としてむしり取ろうとしている。これまで同和住宅家賃は、収入の三%以下であったから、単純に比べても五〜六倍になる。しかも、一生懸命働いて収入が増えても、その分だけ家賃が上がり、税金のようにもっていかれるのである。この上に、保育料値上げなど同和対策事業打ち切りによる大変な負担増が襲いかかるのだ。
 また「収入超過者」「高額所得者」にはさらに高額の家賃や住宅の明け渡しが強制される。これまで村の解放運動の中心的担い手となってきた公務員労働者世帯の大部分が、これで入居資格を失うことになる。日帝はこうしたやり方をとって部落民の共同体を破壊しようとしているのだ。

 同和住宅は解放運動の成果

 応能応益家賃制度は、部落民と部落解放運動にとって、どのようなことを意味するのか。
 第一には、同和住宅に部落民が無条件に入居する権利を奪う部落差別攻撃そのものである。
 同和住宅に部落民が住む権利は、収入によって決められるのか? 断じてそうではない。部落民が同和事業を受ける権利は、部落民の部落民としての歴史的社会的な権利であり、部落民である限り(また部落解放運動に必要である限り)無条件に認められなければならない根本的権利である。すなわち部落差別が数百年にわたって今日もなお連綿と続いているがゆえに、部落民にはその部落差別に対する歴史的今日的賠償として同和事業を受ける権利があるのである。
 部落差別は、収入の多い少ないに関係なくすべての部落民に襲いかかる。そして部落差別は部落民の全人格を否定し、命をも奪う。したがってこの同和事業を受ける権利は、部落民それぞれの収入とは無関係に一律無条件に保障されなければならない。差別がある限り、部落民には同和事業を受ける権利があり、国家と行政にはそれを保障する絶対的義務がある。部落民が同和住宅に住む権利は、こうした同和事業を受ける権利のひとつであり、最も重大な基本的権利である。
 それは、けっして国や行政の「恩恵」としてあるということではない。同和住宅は、部落大衆が血と汗で権力から闘いとった獲得物であり、権利であり、部落解放の拠点なのである。応能応益家賃制度はこの部落民の根本的権利を全面的に否定する部落差別そのものである。

 部落民の居住権・永住権侵害

 第二には、その結果として現実的には人間としての最低限の権利である部落民の居住権、永住権、生存権を侵害し、部落民の人間としての尊厳を侵し、平等権をも踏みにじる部落差別であり、憲法一四条、二五条にも違反するものである。
 応能応益家賃制度のもとでは、「高額所得者」とされた部落民は同和住宅を明け渡すか民間マンション並み家賃の二倍を払わなければならない。あるいは行政が一方的に決めた高額家賃を「滞納」したという理由で明け渡しを求められる。
 しかし、住宅とは、言うまでもなく人間の生存の基本である。部落民が人として生きていくこの根本的土台=部落民の居住権・永住権を、行政は応能応益家賃制度をテコにして奪い取ろうとしているのだ。
 しかも部落民にとって同和住宅に住む権利=居住権、永住権は、単に団地が生活の基盤であるというにとどまらないのだ。部落民にとって団地=居住=部落の共同体は、差別と闘う団結と運動の基盤であり、共同体として初めて成り立つ生活の土台である。そこから出ていけということは、部落民を虫けらのように差別の洪水の中に投げ込むことであり、部落解放運動を解体することにほかならない。そんなことをする「権利」が、行政のどこにあるというのか!
 そして、こうした明け渡し請求を恫喝にして、行政は毎月、部落民から生活が成り立たなくなるほどの高額家賃をむしり取ろうとしているのである。
 まさに応能応益家賃制度は、部落民が差別と闘うことも、人間らしく生きるための生存権も、人間らしくあつかわれる権利としての平等権すらもふみにじり、侵害する部落差別そのものである。
 第三には、応能応益家賃制度のもとでは家賃は部落民との話し合いや合意なしに国と行政によって一方的に決められるということである。
 それはまさに部落民を人間あつかいしないのと同じことである。行政が部落民の生殺与奪の権限を握り、「部落民を煮て食おうが焼いて食おうが自由」にしようとしているのだ。
 第四には、同和住宅(同和向け公営住宅、改良住宅)を一般の公営住宅と同じようにあつかうことの問題性である。
 改良住宅は山を崩したり、更地を造成して建設されたものではない。部落差別をなくす目的のために、部落民が自らの家や土地を提供して行政が建設したものである。したがって「公営」という形をとっているが、元はといえば部落民の財産の提供の上に建設されたものである。しかも、それは部落差別をなくすという国と行政の責任において建設されたものであり、したがって住宅の建設に要した費用を部落民から家賃として回収する(限度額方式)ということはもちろんのこと、応能応益家賃制度のように部落民が収入に応じて一般と同じ家賃を払わなければならないなどという根拠は、どこにもない。
 だからこそ、改正された住宅地区改良法でも公営住宅法における応能応益家賃制度を認めていない(準用していない)のである。
 同和向け公営住宅も、本質は改良住宅と同じである。同和対策事業として補助金をうけて建設されているのであり、およそ一般の公営住宅と同じ家賃にすることなど、とうてい認められるものではない。「安くて当然」なのである。
 第五には、減免制度のペテンである。応能応益家賃制度はその考え方において減免制度を認めていない。しかし、住民の闘いに追いつめられて各自治体で部分的な減免が行われている。だが、それさえも一般福祉政策−貧困対策として行われるにすぎない。同和対策事業として、部落民の権利として減免を行うものではけっしてないのだ。
 そもそも減免制度は行政の「恩恵」的措置であって、この場合でいえば応能応益家賃制度を認めることの代償にすぎない。前述したように同和住宅は減免によることなく、一般公営住宅とはまったく別の考え方にもとづいて一律に低家賃でなければならないのだ。
 以上のように、応能応益家賃制度は、これまでの部落解放運動−同和対策事業の原理とあり方の一切をつぶそうとするものだ。この応能応益家賃制度を認めるのかどうかに、部落民のすべての権利、部落解放運動の存亡がかかっている。

 第2章 同和事業の全廃で激化する部落差別

 この攻撃は、新安保ガイドラインと一体の人民圧殺攻撃そのものである。日帝は体制的危機の中で、財政的にも階級政策(人民支配政策)的にも、これまでの部落政策を維持できなくなり、「もう部落差別はなくなった」と称して一切の同和対策事業を打ち切り、部落差別の強化と生活破壊を部落大衆に強制しているのである。そして、差別主義と排外主義を露骨にあおり立て、階級的団結を破壊し、あらゆる階級的な闘いや考え方を一掃して、戦争体制をつくり出そうとしているのだ。
 日帝の同対事業打ち切りと解同本部派の実質的「解散」によって、部落差別はなくなるどころか一層激化している。解同全国連第七回大会においても、部落差別の激化の現実が、強い怒りと危機感をもって報告された。就職差別、結婚差別、教育現場における差別など、部落民の日常生活のあらゆる場面で、差別が激化している。しかも、「差別して何が悪い」といった開き直りや、「部落民を殺せ」「死ね」などという公然たる襲撃の扇動が、今日の差別事件の大きな特徴をなしている。「差別するのは当然」だとする政治や考え方が、露骨に噴き出してきているのだ。
 こうした露骨な差別の扇動が、権力による狭山闘争への敵視、差別糾弾闘争への弾圧、さらに同和事業全廃攻撃によって一層あおられ、組織されているのである。それゆえ、家賃値上げ攻撃は、単に同和住宅に住む部落大衆だけの問題ではなくて、全国六千部落三百万部落民に対する新たな差別攻撃そのものである。
 まさに部落解放運動の命運をかけた、正念場中の正念場が到来したのである。

 第3章 本部派と全解連の全面屈服弾劾する

 この大攻撃に対して、解同本部派も全解連もまったく闘おうとはしていない。それどころか、値上げ攻撃に協力し、部落大衆に値上げを飲ませる先兵の役割を果たしている。
 本部派は昨年十月に「応能応益制」を受け入れた。本部派委員長・上田卓三のひざ元の大阪府連が「部落解放に向けた自立をめざす上で有益」と導入を決定したのだ。差別をなくすためには、権力との闘いではなくて「部落民の自立」こそが問題であるかのように言いなし、しかもそのためには家賃の値上げが有益だというのである。なんという日帝への屈服ぶりか!
 しかも、この部落の団結破壊の攻撃を、本部派は「人権のまちづくり」などと称して美化している。昨年の五四回全国大会で差別糾弾闘争、戦争反対、生活防衛の闘いを綱領的に放棄し、「解放同盟」を実質上解散し、融和運動に最後的に踏み切った解同本部派は、いまや日帝への屈服を底なしに深めているのだ。
 また、日本共産党=全解連は、「応能応益制度は公平性の確保につながる」「家賃は年収の一五%にすべきである」(昨年九月の全解連中執決定)などと日帝・建設省の主張と寸分違わない主張をしている。日共スターリン主義は、全国の選挙で「同和予算を削って福祉の充実を」などというスローガンを掲げ、部落解放運動への差別的反感をあおり立てることで勢力を拡大しようとしている。大恐慌と大失業の時代に、労働者人民が日帝に向けるべき階級的な怒りを、部落民と部落解放運動への差別主義的な憎悪にねじ曲げ、日帝を「左」の側から救済しようとしているのである。日本共産党は最悪の部落差別の扇動者だ。
 こうした解同本部派中央=日本のこえ派と日共=全解連の屈服と裏切りをのりこえて、部落大衆の怒りは全国の村々に渦巻き、闘いは各地で燃え上がっている。福岡や山口で、広島県最大の部落・福島町で、「阪神大震災」被災地の西宮で、そして大阪や奈良で、何百人もの部落大衆が値上げ絶対反対を掲げて立ち上がっている。解同本部派の影響下にあった部落でも、その枠を越えた決起が始まりつつある。本部派が屈服しても、部落大衆の戦闘的エネルギーを日帝は根絶やしにすることなどできない。それどころか、各地の部落で、火を点じるだけで、たちまち大きく燃え上がるような大衆決起の情勢がやってきているのだ。
 ゛闘わなければ生きられない”情勢は、部落大衆と労働者階級総体の、日帝に対する総反乱の条件をつくり出しつつあるのだ。

 解同全国連とともに闘おう

 解同全国連は、家賃供託、全国署名運動、全国組織結成など、あらゆる手段をもって家賃値上げを絶対阻止する決戦態勢に入っている。そして、全国の部落にビラをまき、オルグに入り、数万数十万の絶対反対組合を組織するためにともに闘うことを、全国の労働者人民に呼びかけている。
 全党・全人民は、解同全国連の呼びかけにこたえ、部落大衆の怒りと固く結合して、同和住宅家賃値上げを全労働者階級の共同の闘いで絶対に粉砕しよう。狭山再審闘争と住宅闘争の組織化を、第三次安保・沖縄闘争の全人民的組織化と階級的労働運動の発展の闘いと結合して闘おう。
 戦争と大失業攻撃下の生活破壊攻撃を打ち破れ。「行革」「規制緩和」による公務員現業部門の民営化、部落民労働者に対する差別的な首切り、労働条件切り捨ての攻撃を許すな。戦争と大失業、差別・抑圧の根源=日本帝国主義打倒のために差別・分断支配を打ち破って階級的共同闘争の前進をかちとろう。
 部落解放闘争に敵対する反革命ファシスト、カクマル=JR総連を打倒せよ。


 表 公営住宅法はこう改悪された

家賃制度
 旧公営住宅法(以下旧) 限度額方式
 新公営住宅法(以下新) 応能応益

世帯収入
 旧 関係なし(一律)
 新 収入が多いほど家賃も高い

民間住宅との関連性
 旧 なし(一律)
 新 民間の家賃相場と連動

上限額
 旧 あり
 新 なし

見直し
 旧 なし
 新 毎年、国が値上げする

家計に占める割合
 旧 同和住宅の実態は約3パーセント以下
 新 15〜18パーセント

誰が決めるのか
 旧 地方自治体
 新 国

減免
 旧 あり
 新 なし(病気などの場合を除いて)

入居資格(3人世帯の場合)
 旧 年収の低いほうから3分の1(年収520万円以下)
 新 4分の1(年収463万円以下) 一般を含めて約300万世帯を切り捨て収入超過者への制裁金
 旧 なし(割り増し賃料の徴収は可)
 新 最高家賃(近傍同種)の2倍 (2倍の家賃を払うか、出ていくか)

国の補助率
 旧 3分の2(第2種)
 新 2分の1 

総じて(結論)
 旧 低所得者向け住宅政策
 新 @低所得者、部落民からしぼりとれるだけ家賃をしぼりとる A解放運動つぶし B戦争の費用をかせぐため

(参考資料・解同全国連「解放講座」学習文庫5>

 

 

 

TOPへ