SANRIZUKA 日誌 HP版   2001/08/01〜31     

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 2001年8月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(8月1日) 羽田国際化構想で成田市長が批判(8/2読売、日経、各千葉版)

 成田市の小川国彦市長は1日、国土交通省が先月31日に羽田空港の国際化構想を明らかにしたことに対し、「尚早に過ぎる」などと批判するコメントを発表した。 
 小川市長は「暫定滑走路の工事も順調に進み、来年5月開港のカウントダウンが始まったところ。この時期の発表は尚早に過ぎ、成田の努力に水を差す」と批判。当初計画の平行滑走路(2500メートル)の完成を、「成田市としては先決の課題として最大限の努力をする」などとしている。 

 【本紙の解説】
 成田市長が羽田国際化の検討を批判しても、千葉県が基本的に了承しているのだから無力感が漂っている。

(8月1日) 関西空港第3滑走路凍結(8/2読売)

 関西国際空港の経営安定に向けて2本目の滑走路をつくる二期工事の総事業費を圧縮する方針を固めた国土交通省と大阪府などが、3本目の横風用滑走路建設にともなった地盤改良工事を凍結する方向で合意した。これにより、滑走路3本を整備する空港全体構想の実現は極めて困難になる見通しだ。
 これまで国が二期計画に含め事業化を認めた工費は約70億円とみられる。しかし、空港会社の金利負担を軽減するため、1兆1400億円の埋め立て工事費を圧縮する考え。資材購入費など約1400億円を削減、埋め立てを必要最小限にとどめ、約1000億円分を2007年以降に先送りする方向だ。
 二期供用後に工事を行う場合は、資材が海面上20メートルも突き出るなどで航空機の運航を止める必要がある。このため凍結解除は困難な情勢となる。
 関空全体構想は1987年に国が調査費を認めた。2030年をめどに計3本の滑走路を造る内容で、府や地元財界などは早期実現を国に求めてきたが、大阪府の太田房江知事は今年2月、見直しを示唆する発言をし、同構想の行方が注目されていた。

 【本紙の解説】
 日誌7月27日付で、関空二期工事の事業費1400億円削減と、大阪府の経営責任投げ出し問題を「迷走し沈没する関空島」と解説した(7月27日付日誌参照)。その続きである。
 これで関空の横風滑走路は完全になくなった。二本目の平行滑走路も完成するかどうか疑問だが、完成し供用されると横風の工事は不可能で、事実上の横風断念である。
 しかしこの関空の横風滑走路と同じ角度で神戸空港の設計図ができており、関空の横風滑走路を神戸まで引っぱっていったとも考えられる。国交省と大阪府には、現在の航空機管制技術で横風滑走路を使うのは年間1パーセント程度なので、これを神戸空港で代替するとの考えもある。神戸空港は神戸市の事業なので国交省は財源の心配をしなくてもすむという思惑も。ただし、両空港の経営は絶対的に成り立たない。

(8月2日) 天神峰で深夜工事/市東孝雄さんら騒音に抗議

 8月2日午後10時ごろ、天神峰でユンボによる掘削作業が強行され、騒音と振動で市東孝雄さん宅は寝られない状態を強制された。ユンボの騒音と振動は昼間でも大変なもの。それを夜間の午後10時以降に行うとは、いやがらせ以外の何ものでもない。安眠妨害で健康を害する意図をもった犯罪である。
 市東孝雄さんの連絡で現闘員3人が駆けつけ、ともに抗議行動を行った。工事車両の出入り口に行き、抗議するので扉を開けろと守衛に要求しているところに機動隊が出動、抗議行動を弾圧してきた。市東さんと現闘メンバーは家にもどり、成田市役所と公団工事局に電話で抗議した。公団は「東京電力の工事で、公団の工事ではない」と開き直った。
 工事騒音もおさまり、「株式会社ナリコウ」から市東さん宅へ電話が入り、「東京電力から頼まれていた土の搬送作業で、今日中に終わらせる予定だったので夜間にやってしまった。申し訳ない」との謝罪が入った。翌日の3日に「ナリコウ」が市東さん宅を訪問、作業の説明と謝罪を行った。
 しかし、公団は東電の仕事というだけで自分の責任を回避し、一片の謝罪もない。東電の配線関係の工事とはいえ、工事現場は空港用地の中だ。暫定滑走路建設にともなう電力工事であり、公団にその責任があることは明白である。
 この農民無視、周辺住民無視の公団の姿勢こそが、空港建設をここまで遅らせ挫折させてきた原因だ。

(8月2日) 成田空港国内線検討会「路線数が少なくツアー企画困難」(8/3千葉日報、毎日、読売、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港で来年春、暫定平行滑走路の供用が開始された後の国内線の需要喚起策を話し合う「成田空港国内線需要創出検討会」の第2回会合が2日、同空港内で開かれた。同会は先月、報告書をまとめて終了した「成田空港国内線充実検討会」の分科会で、国土交通省、空港公団、県、旅行会社、航空会社などの実務担当者16人が出席した。
 大手旅行会社JTBなど4社に実施した国内線需要についての調査結果が公表され、「路線数が少なくツアーが企画しづらい。もっと県内の観光PRが必要だ」などの意見が出された。同検討会は、今回の調査結果をもとに、観光PR推進母体の設置案をふくめ、需要創出策を10月中にまとめる方針。
 調査では国内線の現状について(1)路線数が少ないなどツアーを企画しづらい、(2)国際線乗り継ぎが主で団体枠がとれず、安価な座席を確保できないとの回答があった。

【本誌の解説】
 成田の成田空港国内線充実検討会は中途半端で、問題提起だけで投げ出した格好だが、その分科会である国内線需要創出検討会も同じである。
 結局、成田空港の国内線は採算がとれず、便数は増えない。便数が増えないのでツアー企画が成り立たない。さらに、千葉県は観光需要も小さい。したがって、便数は増えないという悪循環にはまってしまった。10月に需要創出策を出すというが、新味が出ようはずもない。

(8月3日) 羽田夜間国際チャーター便、週70便に(8/3読売夕刊トップ、8/4産経、東京)

 国土交通省は3日、羽田空港の深夜・早朝時間帯を活用する夜間国際チャーター便を、現在の週2便から70便程度へ大幅に拡大する方針を決めた。来年4月から実施する。来年5月末からのサッカー・ワールドカップ(W杯)の日韓共催を控え、観客輸送体制の充実が懸案となっている中で、羽田空港の有効活用を目指す。 
 便数の大幅拡大により、航空各社は、チャーター便を事実上の国際定期便として運航できるようになり、利用者の要望が強い「羽田国際化」への大きなステップとなりそうだ。
 国交省は、今年度内に羽田の国際線ターミナルを増築して、旅客の受け入れ態勢を整える。さらに2002年度予算の概算要求では、入国審査や検疫などを担当する係官が1日10便(週70便)の夜間国際チャーター便運航に対応できるよう、関係省庁に人員の増加を求める。 
 羽田空港は原則として国内線用空港だが、成田に比べ都心からのアクセスが良いことから国際便就航を求める声が根強い。扇国交相も羽田国際化の検討を指示しており、羽田の滑走路再拡張後の2015年をめどに、国際定期便の乗り入れを目指すとしてきた。 
 今年2月からは、夜間国際チャーター便を週2便就航させたが、仕事帰りのOLが手軽に海外に行くなどの需要が高い。国交省は、夜間国際チャーター便の拡大を希望している内外の航空会社から、今後の運航希望をヒアリング、1日10便程度の運航が見込めると判断した。
 現在は、便数が少なく、各航空会社の発着枠は抽選で決められているため、海外へ飛ばしたチャーター機に客を乗せないで国内に戻すなど、効率が悪かった。便数の大幅拡大で、需要さえあれば自由なスケジュールでチャーター機を飛ばすことができるようになり、定期便と同様に運航できる。
 成田空港を抱える千葉県などの反発も予想されるが、チャーター便の運航時間帯は、現行と同じく、成田で国際線が発着していない午後11時―午前6時とすることなどで理解を得られると国交省は判断している。

【本誌の解説】
 昨年12月に千葉県が心ならずも受け入れた羽田の深夜・早朝の国際線チャーター便の内容はかなりのものである(2000年12月1日付日誌参照)。1時間当たり最大発着16回。深夜・早朝だけで1日で112回の発着回数となり、年間計算で4万回発着になる。また、チャーター便の形式も修学旅行などの団体型チャーター便だけでなく、募集型チャーター便(包括旅行チャーター便)を認めたので、事実上の「国際旅客定期便」になるものであった。
 しかし、当時の運輸省の不手際でCIQ体制(税関、出入国管理、検疫)がとれず、週2便になった。CIQ体制の増強と国際線ロビーの改善、拡充次第で来年度から大幅増便の予定だった。
 国土交通省がこの時期に具体的数字を発表したことは、CIQ体制の関係で財務省、法務省、農水省との調整がとれたこと、また「定期的」チャーター便になるので、航空会社や旅行社も便を組みやすくなる。
 ただし、国土交通省の真意は、千葉県の反発を最後的にねじ伏せようということにある。7月31日に首都圏第3空港検討会では、羽田の定期国際線認可を検討していることとあわせ、チャーター便の増便を発表、堂本知事もこれらに賛成した。後は千葉県の幹部職員と自治体であり、成算ありとして今回の連続的発表となった。
 国交省としては、成田空港の建設失敗でここ30年間の空港整備の立ち遅れを羽田の再拡張と北側進入の許可で埋め合わせる考え。羽田の発着枠を増やし、それを国際線枠にまわす以外に方策がなくなっているのが実情だ。しかし、国土交通省や石原都知事の思惑通りにはいかない事情も多い。とりわけ北側進入路での横浜市、川崎市や世田谷区、大田区、品川区の住民への騒音問題は深刻だ。

(8月3日) 羽田/深夜・早朝国際便拡大方針に千葉県自治体は騒音懸念

 羽田空港の深夜早朝国際チャーター便を来年4月から、現在の週2便から70便程度に拡大する方針を国土交通省が決めたことについて、飛行コース近くの県内の自治体からは騒音への不安の声が上がっている。
 今回の増便は、昨年12月に決めた運輸省(現国交省)の“羽田国際化”の方針から外れてはいないが、増便により、飛行コース近くの騒音が増えるのは必至。君津市の鈴木征二企画部長は「現在は飛行コースが沖合にでているので問題はないが、大幅な増便は市民生活への騒音問題がでてくることが心配される」と指摘する。また、浦安市の松崎秀樹市長は「なし崩し的に羽田国際化を進める国交省の姿勢に不快感を覚える。騒音の影響がでる自治体に対しては、国が事前に相談すべきだ」と訴えている。

 【本紙の解説】
 千葉県の自治体が深夜・早朝の航空機騒音を懸念するのは当然である。また「騒音の影響がでる自治体に対して、国は事前に相談すべきだ」と浦安市の市長が訴えていることも当然である。
 しかし、国土交通省にそんな「余裕」はない。むしろ千葉県と関係自治体をねじ伏せることだけを考えている。
 だが、千葉県も千葉県である。羽田の騒音には目くじらをたてるが、成田空港の騒音には「見返り」を要求するだけで、騒音そのものには決して文句をいわない。住民そっちのけで「カネをよこせ」というだけだ。香取郡栗源町にいたっては、羽田が深夜・早朝のチャーター便をやるなら、成田も深夜・早朝便を出すべきだと町議会で決議を上げ、顰蹙(ひんしゅく)を買った。

(8月3日) 羽田再拡張による船舶航行影響調査検討会第2回会合開かれる(8/4読売)

 国土交通省は3日、羽田空港の再拡張が、東京湾内の船舶航行に与える影響を調べる「東京国際空港(羽田空港)再拡張による船舶航行影響調査検討会」の第2回会合を開いた。会議で国交省は「B滑走路平行案以外の再拡張では、欠航が増えるなど欠陥空港になる」と明言、再拡張の手法としてはB滑走路平行案しか念頭にないことを表明した。
 羽田の再拡張をめぐっては、学識経験者らをメンバーとする「首都圏第3空港調査検討会」で、他の案もふくめて検討する方針が確認されているだけに、国土交通省の姿勢が、再拡張自体に難色を示している海運業界などを刺激する可能性もある。
 船舶航行影響調査検討会で国交省は、航空業界や東京都が提案した「C滑走路平行案は航空局として採用できない」として、「B滑走路平行案がだめなら、他の候補地をさがさなければならない」と述べ、あくまでもB滑走路平行案を望む考えを強調した。
 新たに東京湾を埋め立てる羽田の再拡張をめぐっては、海運業界などが、航行海域が狭まり安全の確保が難しくなるなどと難色を示している。さらに、国交省が採用を主張したB滑走路平行案は、滑走路の一部が多摩川の河口部分にかかるため、大雨の時に水流を妨げ、災害を誘発する懸念もあるという。このため、国交省は、多摩川河口の水流への悪影響を軽減するため、現在の空港の敷地とB滑走路に平行な新滑走路を接続する部分を、従来の埋め立て方式から、2本の橋で結ぶ新案を提示した。これにより多摩川の河口部分の水流を妨げる懸念がかなり解消されるとしている。

 【本紙の解説】
 国土交通省としは、羽田再拡張で増便枠をつくり、それを国際化に結びつけることで、首都圏の空港整備の遅れを一挙に取り戻そうとしている。そのために、船舶航行に影響がでようとでまいと、B滑走路平行案でがむしゃらに進もうとしている。A滑走路平行案だと管制の関係で便数が増えないからである。

(8月6日) 関空二期工事、事業費4500億円圧縮(8/7朝日、読売、毎日、東京、日経)

 関西空港に2本目の滑走路を建設する二期工事について、地元自治体と経済界でつくる「関西国際空港全体構想促進協議会」は6日、用地造成費の削減や一部施設の建設先送りなどで、総事業費1兆5600億円のうち計約4500億円を削減・圧縮する見直し案をまとめた。
 2007年の供用開始予定時には滑走路など最小限の施設整備に縮小。第2空港夕ーミナルビルの建設などが先送りされる。国と地元は当初の計画通り出資金と無利子融資を支出。1兆円超の有利子負債を抱える関空会社の金利負担が軽減され、一定の経営改善が期待できる。
 見直し案は二期工事について、(1)用地造成費1兆1400億円のうち1400億円を工法見直しなどで削減、(2)横風用の滑走路建設の地盤改良工事1000億円を供用後に先送り、(3)連絡誘導路を2本から南側の1本にし、旅客施設などを供用後に先送りすることで施設整備費4200億円を半分に圧縮――などの内容。
 国土交通省は地元に無利子融資の追加負担を求める意向だったが、財政危機の大阪府をはじめ各自治体が難色を示したため、事業費圧縮で結果的に無利子資金の割合を高める見直しにとどめた。
 関空会社の経営再建策については、年内に結論を出す方向で検討中。国に対して経営形態の見直しや空港連絡橋の買い取り、交通網充実などの「抜本的改善策」を要請していく方針だ。

【本紙の解説】
 先の7月27日の報道では1兆5600億円の総事業費のうち事業費1400億円削減へとなっていたが、今回明らかになったことは、その1400億円は用地造成費の削減分で、そのほか総計4500億円の削減となるということである。
 事実上、事業費が3分の2になった。二期工事の造成と滑走路は建設するが、旅客ターミナルビルその他は先送りとなった。このような滑走路は営業に適さない予備滑走路的なものとなる。事実上、軍用滑走路としての建設である。韓国の新空港である仁川国際空港の着陸料が30万円前後になったことで、「乗り継ぎ空港」として一定の意味をもっていた関空はまったく太刀打ちできなくなった。将来の営業的見通しもふさがれた格好だ。
 「経営形態の見直し」とは倒産であり、大阪府と関西財界の責任放棄である。「抜本的改善策」「国に要求していく」と威勢はいいが、全面的な破産を認めたことである。

(8月6日) 太田大阪府知事/関空と成田の経営統合要望(8/7朝日)

 太田大阪府知事は6日、成田空港を運営する新東京国際空港公団を民営化したうえで関空会社と経営統合し、新たに「国際ハブ空港株式会社」を設立して両空港を運営するのが望ましいとの考えを示した。同日開かれた「関西空港の事業推進方策に関する検討会議」の終了後、報道陣に対して話した。
 赤字に悩む関空の経営をめぐっては、航空需要が順調に伸びている成田空港の収益をあてて経営基盤の強化を図るべきだとする意見が府庁内部に根強い。太田知事は「国の公共事業見直しや特殊法人改革の動きを見ながら抜本的改革を検討したい」とした。

【本紙の解説】
 関空事業費の削減を決めた協議会後の記者会見での太田大阪府知事の発言である。経営形態の見直しとか、抜本的改善策というのは、関空と成田の経営統合のことであった。あまりに現実性のない改善策なので、協議会では正式に盛り込むことができず、知事会見での公表という形をとったのであろう。現実性のないものを国に要求するのは、責任投げ出し以外のなにものでもない。経営統合をいうのならば、むしろ伊丹空港の民営化要求とそれとの統合の方が若干は現実性が高いのではないか。

(8月7日) 千葉県知事会見「羽田国際化より成田充実優先」(8/7朝日、東京、日経各千葉版、千葉日報)

 国土交通省が羽田空港での本格的な国際線受け入れ方針を決定したことに関連して、千葉県の堂本知事は6日の定例記者会見で、「県としては都心からのアクセス改善が先決。羽田国際化を国や他府県がやろうとしていることを止めることはできない。いつの日か成田空港の処理能力が足りなくなることもある。他の国際空港造りを全否定はできない」と述べた。

【本紙の解説】
 国土交通省がこの間、急速に羽田国際化方針を進めているのは、堂本千葉県知事が反対せず、国際化を承認したことを根拠にしている。しかし、千葉県や成田市はいまだ羽田国際化に反対の立場だ。7月31日の首都圏第3空港調査検討会に出席した千葉県の白戸章雄副知事は、「羽田再拡張にともなう千葉県の騒音被害の拡張をどう解決するのか、成田暫定滑走路の供用開始が来年5月に迫る一方で、本来の平行滑走路計画(2500メートル)早期実現へ努力している時期に、国際化の方向付けはいかがなものか」と、強力な反対はしないが懸念を表明している。小川成田市長は「暫定滑走路の工事も順調に進み、来年5月開港のカウントダウンが始まったところ。この時期の発表は尚早に過ぎ、成田の努力に水を差す」と強烈に批判している。
 また、君津市や浦安市は夜間騒音の拡大で懸念を表明している。この矛盾の中で堂本知事は「国や他府県がやろうとしていることを止めることはできない」として、改めて羽田国際化の承認を国土交通省サイドに表明した。しかし、千葉県サイドには「県としては都心からのアクセス改善が先決」といっている。堂本知事特有の言い逃れである。
 三番瀬埋め立て問題でも、選挙公約であった「白紙撤回」を当選後には「埋め立て中止ではなく、計画の見直し」と解釈がえを行い、第2湾岸道路の建設を承認した。国に対しては、「三番瀬埋め立てをやったうえで第2湾岸道路も建設する」とし、県民に対しては「三番瀬はある程度残す。これは環境保全である」とペテンを弄しているわけだ。
 堂本知事は相手の立場を「受け入れる」ことが上手なのであろう。ひとつの問題で相矛盾する二つの方針を平気で受け入れてしまう。マスコミ時代ならば両論併記の客観報道で済むかも知れぬが、ことは地方自治体の首長の政策だ。ぼろがでるのは時間の問題で、その矛盾は爆発するであろう。

(8月7日) 成田空港第1ビル新装オープン

 新東京国際空港公団が改修工事を行っていた成田空港第1旅客ターミナル中央ビル本館で、南ウイング側に隣接した新店舗街が完成、きょう7日からオープンする。
 医療機関や金融機関、同公団の旅客案内センターなどが移転するほか、4〜5階に飲食店と物販店5店舗が新たに営業を始める。

(8月7日) 航空大手 中国路線を拡充(8/7日経)

 航空大手各社が2002年春の成田空港の新滑走路開業を受け、中国路線を強化する。日本航空が北京、上海線で毎日複数便の運航に乗り出すほか、全日本空輸や日本エアシステムも上海線の新規運航・増便を計画している。従来の国際線の主力であった北米路線は米国景気の減速を受けて需要が伸び悩む一方、中国は世界貿易機関(WTO)への加盟などで今後も需要拡大が期待できると判断、発着枠資源を重点的に投入する考え。
 成田空港の業界全体での年間発着回数は現在13万5千回。新滑走路の供用開始で最大20万回に増える見通し。発着枠の配分について政府が各国と調整しており、各社は政府間交渉の決着を受けて早ければ年内にも路線計画を固める。
 新たに配分される発着枠では、日航は「中国路線に最も多く便数を振り向ける」(兼子勲社長)計画。現在それぞれ1日1便の北京線、上海線を複数便化することを検討しているほか、週に2〜3便にとどまっている大連、青島などの増便を目指す。
 このほかには、韓国や東南アジア路線の増便を予定。アジア以外では英国、イタリア、ハワイを若干増やすが、主力である米本土行きの増便は見送る可能性が大きい。
 全日空も現在は週に2便しかない上海線を1日1便以上にまで増便する計画。今後は上海のほかに、北京、大連、香港などの増便も計画する。来春にはこのほか、シンガポールやフランクフルト、サンフランシスコなどをそれぞれ週2、3便増やす考え。
 日本エアシステムは新たに上海線に就航することを検討。同社成田発の中国路線は西安行きだけだった。このほかの増枠分は関西国際空港から成田空港への便移管などにあてる。同社は99年11月から成田―広州線を運休していたが、今年11月から運航を再開することも計画している。

【本紙の解説】
 暫定滑走路完成後の日本の航空会社の運行計画である。暫定滑走路の使用予測状況は「2万回」を予定していた国内線での需要増加が見込めず、関心は国際線の需要に移っている。
 航空各社がどのくらい暫定滑走路を使う計画なのか見てみよう。
 日航は「それぞれ1日1便の北京線、上海線を複数便化することを検討。週に2〜3便にとどまっている大連、青島などの増便を目指す。韓国や東南アジア路線の増便を予定。アジア以外では英国、イタリア、ハワイを若干増やすが、主力である米本土行きの増便は見送る可能性が大きい」といっている。北京、上海、大連、青島の各路線を2倍化にすると計算して計約19便になる。イタリア、ハワイ便は暫定滑走路の使用は無理である。現行の滑走路を使用している韓国便、中国便などを暫定にまわして、その分をイタリア、ハワイ便にまわす予定か。ただし日航は保有機がほとんどジャンボ機であり、暫定滑走路は使用できないものが多い。いずれにしろ韓国便を除き暫定滑走路使用は週20便ほどになる。
 全日空は、「現在は週に2便しかない上海線を1日1便以上にまで増便する計画。今後は上海、北京、大連、香港などの増便も計画する。来春にはこのほか、シンガポールやフランクフルト、サンフランシスコなどをそれぞれ週2、3便増やす考え」。上海で週7便ぐらいにするのか。北京などの増便数は不明だが、上海もふくめて週10便ぐらいの増便か。
 日本エアシステムは、「上海線に就航することを検討」とあるだけで、週2便であろう。運休している成田―広州線はA滑走路枠である。
 韓国便は、昨年12月の日韓航空会議で、成田―ソウル線は、日韓双方にB767で週21便相当の輸送力を追加。成田―釜山線は、日韓双方にB767で週8便相当の輸送力を追加と決定している。韓国便を最大限に増便したとしても、週29便である。
 日本の航空3社の増便計画は週32便である。それに、韓国便を枠一杯の29便増便したとして、およそ合計週61便になる。
 週約60便で計算すると、年計算で3200便になる。離着陸回数は便数の2倍になるので、年6400回になる。暫定滑走路使用可能な中国、韓国の航空会社が、日本の航空会社に近い利用回数になったとしても、年間1万回を超える程度である。
 他の国で暫定滑走路での使用を決めているのは、べトナム、フィンランド、オーストリア、ニュージーランド、オーストラリアであり、各国とも週2便計算である。暫定の使用方法は着陸だけで、離陸は現行滑走路とか、暫定滑走路で離陸して途中給油のテクニカルランディングを併用する使用方法。これで計週10便。年間で1000回の発着回数になる。
 全日空はアジアへの貨物便をB767機を使用して暫定滑走路を使おうと計画しているが、貨物機の重量では天候により、暫定滑走路の使用は不安定になり、定期化は無理があるとの声がある。そのため、暫定滑走路の使用回数からは便宜上はずして計算する。
 国内線は結局、1万回を切ることは確実だ。結局のところ暫定滑走路が暫定滑走路にとどまった場合は、その年間使用回数は国内・国際線を合わせて2万回程度に止まる。暫定滑走路は年間6万回使用できるといわれてきたが、暫定滑走路のままだと、使用航空機の機種も限定され、飛行距離も限界があり、やはり使い勝手の悪い(問題外というべき水準)滑走路であることは確実である。

(8月11日) 東峰住民全員参加で東峰神社の草刈りと掃除、柵をつくる

 東峰地区の恒例の行事である東峰神社の盆前の草刈りと掃除が今年も11日に行われた。一昨年までは各戸の婦人だけでこの草刈りと掃除は行われていたが、昨年からは夫婦総出で行われるようになった。公団は立ち木伐採の後も神社に勝手に入り込み、竹などを刈り込んでいる。
 孟宗竹(モウソウチク)や太い真竹(マダケ)ならば、太陽光が遮断されている竹やぶでは筍(タケノコ)の時は太陽光を浴びようとして1日で1〜2メートルも伸び、筍の言葉の意味の通り旬日(じゅんじつ=10日間)で20メートル近くなる。ちなみに東峰神社の竹は真竹であるが、残念ながら太陽光を遮断するものはない。しかし公団は竹が生長し飛行を阻止することを恐怖している。
 東峰地区では、この公団の勝手な横暴をやめさせるために今年は神社の柵を共同でつくった。

(8月11日) 羽田・定期国際線1日100便確保へ/国土交通省が検討(8/12毎日)

 国土交通省は11日、現在、4本目の滑走路建設を検討している羽田空港について、再拡張後に1日100便(往復)程度の定期国際線枠を設ける考えを明らかにした。再拡張により現在の年間発着能力27・5万回が41万回に拡大することを前提に、現在チャーター便しか使用していない早朝・深夜の時間帯の活用などをふくめ検討を進める。同省は「羽田は国内線、成田は国際線」とする基本姿勢を堅持するとしているが、現在の成田空港の発着能力が1日185便であり、1日100便の発着枠は事実上の国際化と言える。
 同省による羽田空港の需要予測では、国内線利用者数が99年度の5227万人から15年度は7900万人、20年度には8400万人に拡大。この場合、必要な発着回数は、航空機の小型化を見込まなければ、年間で15年度が37・3万回、20年度が39・6万回になる。このため、15年度ごろをめどに新滑走路(2500メートル)を建設、発着回数を大幅に増加させ、約41万回の発着回数枠を確保。15年度段階で約3万回(1日41便程度)、20年度段階で約1万回(1日14便程度)の余剰枠が生まれるとし、これを国際線にあてる考えだ。
 ただ、余剰枠だけでは世界各地に発着枠を割り当てるには少ないため、1日100便程度が「アジア、欧州、米州など各地域に公平に割り当てる最低限のボリューム」(国交省幹部)として、早朝・深夜の時間帯利用などをふくめ、国際線導入に向けた検討を進める。また20年度段階ではさらに余剰枠が縮小するが、その場合は国内線を削減する対応もあるとしている。

【本紙の解説】
 国土交通省の需要予測はあてにならない。地方空港の建設のための過剰需要予測や、かつては成田空港建設に固執するための国際線の需要予測を低く押さえていた実績がある。また、15年後、20年後の経済状態や政治制度も予測できない中で、どうして空港需要だけ、これほど細かい数字になるのか不思議である。最近の航空需要の伸び率がそのまま続くことを前提にした数字にすぎない。
 国土交通省は、羽田空港の国内線需要の余剰枠ができれば、それを国際線受け入れにまわすと決定した。同省はそれを再拡張(4本目)の滑走路ができる2015年としている。管制方法の変更や飛行ルートの変更で余剰枠は4本目が完成しなくともできる。すでに深夜・早朝は国内線の需要はなく、すべて余剰である。CIQ要員がもっと増員し、国際線ロビーが早急に増築されれば、国際線受け入れはすぐにも可能だ。
 つまり、国土交通省は15年後、20年後という予測数字をとって、事実上、羽田の余剰枠を国際線にまわす方針を明らかにしたのである。
 これは羽田国際化に反対している千葉県対策でもあるが、国土交通省にとっても成田に固執していた運輸省時代からの考え方の転換だ。成田空港建設の破産、異常なまでの遅れを承認し、これに対応した方針でもある。

(8月13日) 空港整備に一般財源を 定期航空協、国交省に要望書(8/14毎日、日経、産経)

 国内航空会社が加盟する定期航空協会(会長・兼子勲日本航空社長)は13日、羽田空港の再拡張をはじめとする大規模空港の整備資金を一般財源で賄うことを求める要望書を扇千景国土交通相に提出した。財政投融資など元利返済の必要な借入金に頼る現行方式は空港使用料を高止まりさせ、最終的に利用者負担を拡大させると強調した。
 定期航空協会は公共事業費に占める空港整備費の割合は今年度予算で0・8%にとどまり、港湾や漁港に比べて極めて低い水準にあると指摘し、大規模空港の拡充は経済効果が大きいと強調した。来年度予算編成が重点項目への傾斜配分を打ち出していることから、空港整備を重点項目の一つである「都市再生」に盛り込むよう求めている。
 成田、羽田、関西、中部(建設中)の大規模空港整備には、すでに財政投融資などから2・5兆円の借入金が投入され、空港整備特別会計の債務残高は1兆円に達し、元利返済額は今年度1054億円に上っている。

【本紙の解説】
 空港整備の財源は、着陸料などの利用者負担からなる空港整備特別会計と一般会計からなり、本年度の予算規模は4850億円(うち一般会計765億円)である。しかし、主力財源は財政投融資などの借入金である。
 今回の定期航空協の要求は、日本の空港利用料の高さが、日本の航空会社の国際競争力を失わせ、オープンスカイ(航空自由化)攻勢を強めるアメリカのメガキャリア(巨大航空会社)に太刀打ちできないという危機感の表明である。さらにアジア極東地区におけるハブ空港の位置を韓国・仁川空港を奪われかねない状況に対応した要望でもある。
 これも運輸省―国土交通省の空港政策の全面破綻の中で起きていることだ。成田に固執せず、第3空港をもっと早くから建設していれば、このようなことは起こらなかっただろう。

(8月18日) 成田・都心間36分の新高速鉄道(日経8/19)

 政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)は18日までに、都心と成田空港を結ぶ新高速鉄道事業を重点プロジェクト(都市再生プロジェクト第2次案)に採択、内閣の看板事業として取り組むことを決めた。月末に開く次回会合で正式決定する。これをふまえ、国土交通省は2002年度予算の概算要求に調査費を計上。
 新鉄道構想は京成本線、北総開発鉄道、都市公団鉄道の路線を経由し京成上野駅と成田空港を結ぶもので、印旛日本医大(千葉県印旛村)―土屋(同成田市)間の10・7キロメートルが未整備。総事業費は1600億円の見通しで、2010年度の供用開始を目指す。
 都心と成田空港を結ぶノンストップの鉄道をめぐっては、当初の新幹線計画を含め30年来の議論となっている。旧運輸省は1977年に新高速鉄道構想を発表したが、採算性の問題などから実現が遅れた。
 JR東日本が運行する「成田エクスプレス」は東京―成田空港間が53分、京成電鉄の「京成スカイライナー」は日暮里―成田空港間が51分かかる。新鉄道は日暮里―成田空港間を15分短縮、36分で結ぶ計算で利便性は大幅向上する。将来は都営浅草線を利用して東京駅まで乗り入れることも検討する。

 【本紙の解説】
 政府が無利子融資を建設事業費の18パーセントから33パーセントに引き上げるということを含んだ決定である。それでも成田新高速鉄道は赤字になる。
 日本政策投資銀行の政策提言でも、「国際都市として喫緊の課題であるが、今後の成田空港需要の伸びを前提としても事業採算性は極めて厳しい」と判断している。そのために、新線整備で事業会社と運行会社を分離する案、ターミナル駅の上部空間を自治体や流通企業などに開放し共同事業を展開する手法などを提示している。
 千葉県がおこなった「成田新高速鉄道事業化推進に関する調査」では「印旛日本医大―成田空港間の輸送人員は、航空需要と都市内需要を合わせて2010年で1日当たり37,400人、平成2015年では1日あたり41,400人と予測された」となっている。これでは、上下分離案にしても運行会社の経費にもならない。線路整備の事業会社への賃貸料などまったく計算できない。
 政府・都市再生本部では、成田新高速鉄道を都市再生プロジェクトにいれることで、羽田国際化を千葉県に飲み込ませることがねらいであり、そのためならば1600億円の3分の1にあたる533億円ぐらいは安いものなのか。

(8月18日) 国際線乗り継ぎや周辺の観光利用で(8/19千葉日報)

 成田経由で海外、東京ディズニーランドヘ。福岡や広島など20空港が、成田空港を国際線の乗り継ぎや、周辺の観光施設を訪ねるのに利用したいと考えていることが18日、新東京国際空港公団の調査で分かった。調査は来年5月の暫定滑走路便用開始で、国内線を成田とつなぐ可能性のある38空港が所在する道府県に聞いた。
 「需要がある」と答えた20空港のうち、仙台や徳島など14空港が新規利用者数を試算しており、年間で計約130万人に上った。国際線の乗り継ぎは新潟が24万人、小松(石川)が8万9千人、国内移動では広島が14万5千人、青森が3万人など。
 「需要がない」と答えたのは帯広(北海道)など15空港、不明としたのは山口宇部。この16空港のうち、将来は需要が発掘できるとしたのは新千歳(北海道)や松本(長野)など10空港。国際線の乗り継ぎで福島は2万人、宮崎は1万人を予想、他の8空港は利用者数を明記しなかった。
 「将来もない」としたのは建設中の中部国際空港、富山、米子(鳥取)、高知、那覇の五空港で「関西空港やソウルなどを経由して海外へ行ける」などの理由をあげた。
 大阪と関西国際空港は未回答だった。

 【本紙の解説】
 公団が都道府県に聞いたアンケート調査であるが、でたらめ極まりない数字である。参考として、成田空港国内線充実検討委員会が出した予測データでも「現在成田発着の国内線と同じ160席以上の大型機の場合なら、現行の千歳、名古屋、大阪、福岡に函館、仙台、新潟、小松、長崎の5路線を増やした計9路線1日12便」「130席の座席の航空機を使う場合は、さらに青森、秋田、広島、鹿児島の4路線が増え13路線」「座席50席以上のリージョナルジェット機利用なら、年間2万回の離発着を上回る52便の需要がある」としているにすぎない。そのうえで、「採算ラインといわれる70%の搭乗率を確保できるのは9路線、1日12便への拡大の可能性がもっとも高いとしている」
 需要を過度に作り上げようとしている国内線充実検討委員会でも採算のとれる新路線は函館、仙台、新潟、小松、長崎だけとしている。そのうえで、観光地もなく乏しい仙台、新潟、小松は採算割れではないかとの声が多く、とりわけ、新潟、仙台は新幹線との競合で絶対に赤字なるともいわれている。「需要がある」とか「将来需要が見込める」とかいうのは、実際に営業する航空会社とは関係ない都道府県の願望でしかない。
 暫定滑走路の国内線は採算とれない。しかし国土交通省は、日本の航空会社がスロット(発着枠)を押さえておかないとアメリカの航空会社に取られしまうとの危機感をもっている。アメリカのオープンスカイ政策で、将来はカボタージュ(国内線を外国の航空会社に解放すること)まで要求されることは必至といわれる。そうした事情から、赤字になろうがスロットを国内の航空会社で埋めることに必死になっているわけだ。これは敷地内に騒音地獄を強制するための方策でもあり、絶対に許せないことである。

(8月20日) 成田・暫定滑走路延長線上の久住中「地区外に移転」/市教委方針 PTA側は反発(8/20毎日新聞)

 来春供用開始予定の成田空港暫定平行滑走路(2180b)北側延長線上にあり移転対象区域内の成田市土室の市立久住中学校(高木繁校長、生徒数95人)の移転をめぐり19日、同市教委と同中PTAらの話し合いが同校で開かれ、市教委は「久住地区外に移転し隣接学区との統合も視野に入れる」との方針を示した。
 移転先は未定だが、市教委は来年度から新校舎完成まで、久住中を約6キロ離れた市立成田中の空き教室に移し授業を行いたいとしている。しかしPTA側は「地区外移転は認めない」との声が多く、今回の市教委方針に難色を示している。
 暫定滑走路北端約5キロに位置する同中は「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法(騒特法)」の「防止特別地区」にあたり移転対象になる。同滑走路を離着陸する航空機の飛行直下で、航空機落下物の危険性も指摘され、市側は移転検討を急いでいた。これを受けて久住地区も今春、区長や同中PTAらで「移転対策協議会」を設立して協議。同協議会では6月会合で「地区内移転」で意見がまとまっていた。
 今回市側は、地区内に移転の適地が見つからないことや、同地区の過疎化が進み生徒減が将来見込まれることなどから、統合を見据えた地区外移転の方針を示したが、PTAらは「地元の意見を無視している。考え直してほしい」としており、今後意見調整が難航しそうだ。

 【本紙の解説】
 空港誘致の悲惨な現実の一つがここにある。空港と人の生活はあいいれない。空港との「共生」はありえない。空港は周辺を無人化することを本質にしている。騒音と事故の想定からそうである。久住地区は特別防止地区と防止地区になっている。成田周辺の農村の宅地化が進む一方、久住地区では新たに転入してくる住民はなく、空港建設後は過疎化が進んでいる。そのために中学校の廃止まで問題になっているのである。

(8月22日) 都市再生プラン―第2次案方針/空港整備など5分野(8/23読売)

 政府の都市再生本部(本部長・小泉首相)は22日、「都市再生プラン」の第2次案として、大都市圏の国際交流・物流機能の強化など5分野の事業を盛り込む方針を固めた。
 同日の与党の「緊急経済対策・都市再生プロジェクトチーム」(渡海紀三朗座長)でこの方針を示した。
 盛り込まれる事業は、(1)国際交流拠点などの整備、(2)大都市圏の環状道路の整備、(3)大阪圏におけるライフサイエンスの国際拠点形成、(4)都市部の保育所待機児童の解消、(5)民間資金で社会資本を整備するPFI方式の具体化の計5分野。
 このうち国際交流拠点の整備は、成田空港の平行滑走路建設や羽田空港の拡張など。
 同本部は、同方針にそって具体的な事業内容を検討し、28日の会合で正式決定する。同プロジェクトの第2次案は今年6月、東京湾臨海部への広域防災拠点整備など3分野が決定している。

 【本紙の解説】
 都市再生本部の狙いは、国際競争力の確保と首都圏の土地の再流動化にある。都市再生本部は「エコタウン(資源循環型都市)構想」とかいっているが、環境問題としては東京湾臨海部の再開発として、リサイクルセンターと称して大規模なゴミ焼却場の建設をやろうとしている。これ自体、エコタウンとはほど遠い政策である。都市再生本部の目的はエコタウンにあるのではない。第1次案と第2次案をみれば、都市再生本部の本質は明らかである。東京湾臨海部の再開発、そのための空港を中心とした国際交流拠点などの整備と、大都市圏環状線の整備である。それはアジア侵略とそのための軍事都市建設である。そこに政府資金を投入し、土地バブルの再興をねらっている。政府としては土地価格を再高騰させる以外に、不良債権処理のための担保価値を高める手段はないと考えている。これ自体が破綻的政策だ。

(8月23日) 羽田空港再拡張、船舶航行に影響/海運業界が反発(8/23産経)

 首都圏の航空需要の高まりに備えて国土交通省が検討している羽田空港の再拡張をめぐり、東京港を利用する海運業界などが不信感と反発を強めている。空港南東への新滑走路建設を目指す同省の提案が船舶の航行に大きな影響を与えるためだ。東京都などの別提案を一蹴しようとする同省のやり方には「強引すぎる」との批判もあり、再拡張論議の行方に影を落としかねない。
 今月3日、羽田空港の再拡張が東京湾内の船舶運航に与える影響を検討する船舶航行影響調査検討会の第2回会合では、メンバーと事務局の間で冒頭から激しい意見の応酬が繰り広げられた。
 「国土交通省案で決定ということなのか」
 「そうではない」
 「しかし、他の案は受け入れられない、という言い方ではないか」
 席上、国土交通省航空局が、あくまでも同省案の影響調査を求め、他の提案を議論の岨上(そじょう)に乗せようとしないことに対して、複数案を比較検討する必要性を訴える検討会メンバーらが一斉に反発の声をあげたのだ。
 羽田空港の再拡張をめぐっては、国土交通省案はB滑走路平行案を、東京都などはC滑走路平行案を提案している。
 日本船主協会は「B案が最終結論といわんばかりに検討を押し付けられても困る。議論の展開が急すぎる」(植村保雄常務理事)と批判。今月10日には同省のやり方を批判する意見書を作成するなど、態度を硬化させている。
 国土交通省がB案にこだわるのは、空港の機能面で優れていると判断するからだ。C案には南風の視界不良時に発着便数が制限される欠点などがあり、同省は「C案では欠陥空港になる」と主張。空港容量確保という本来の目的を達成するためにも、C案は認められないとしている。
 ただ、船舶航行への影響となると話は別だ。B案では、東京港の生命線であるコンテナ船が安全に入出航するのは困難。首都圏経済を支える東京港の海上輸送に重大な支障が生じる恐れがあり、多摩川の船舶航行への影響も考えられるという。
 このため当初は9月上旬の予定だった次回の舶航行影響調査検討の開催日程も見えてこないのが実情で、羽田空港再拡張をめぐる「空」と「海」の溝は簡単にうまりそうにない。

 【本紙の解説】
 国土交通省、旧運輸省航空局の空港建設の基本姿勢は、成田空港の位置決定を一方的に行った35年前とまったく変わらない。
 空港建設は国家の大事業であり、そのためには農民・農業の実情はもとより、船舶運航の安全性なども無視される。成田の農民と違い、港湾関係は国土交通省の行政指導下にあり、海運業界の日本船主協会も最後は認めざるを得ない。しかし、コンテナ船の航行無視は首都圏の物流に大影響を与える。東京港では代替航行案はなく、コンテナ船そのものの排除になる。横浜港とか、別の港に代替した場合、陸送費や港湾建設費用が物価にも反映するといわれている。
 国土交通省航空局が空港建設の遅れを挽回するための「最後の案」である羽田再拡張と羽田国際化にとって、このコンテナ船の航行問題は大きな障害である。また東京都の大田区、品川区、神奈川県の横浜市、川崎市の住民の騒音問題に航空局はどういう対応をとるのか。再拡張工事、羽田A滑走路の北側進入コースの設置は、羽田周辺の住民を大騒音下に置くことになる。このことを国土交通省航空局と東京都は明らかにしていない。羽田再拡張の次の障害は騒音問題である。

(8月24日) 国家公安委員長が成田空港を視察(8/25読売、産経各千葉版、千葉日報)

 村井仁・国家公安委員長が24日、成田空港を視察した。来春供用される第2滑走路の工事現場などを訪れた後、成田闘争警備で殉職した5人の警察官の顕彰碑に献花した。国家公安委員長の成田視察は5年ぶり。
 この日、村井委員長は約1500人の警察官が勤務する空港警備隊を激励し、現地情勢について説明を受けた後、記者団に対し「成田空港は日本の治安の歴史そのもの。多くの犠牲を伴ってきた事業だ。今もいろいろ問題があり、警備の苦労を感じた」と成田空港を取り巻く環境を再認識した様子。また「来年のW杯サッカーも大きな課題。しっかりやっていく」と決意をみせた。
 ゲリラ事件を繰り返す過激派セクトに対する徹底した取り締まりを求める地元住民の声に対しては「日本は法治国家。法と証拠に基づき、キチンと立証しないといけない。その中で警察はベストを尽くしていると思う」とかばった。

 【本紙の解説】
 国家公安委員長が5年前に訪れた96年には、4・17に日米安保共同宣言がだされ、そのもとで第7次空港整備計画を策定し、成田空港二期工事の「2000年度完成」計画が打ち出された年である。平行滑走路建設を決定し、そのために敷地内農民、反対同盟、三里塚闘争を国家権力で叩きつぶそうとしたときであった。
 今回の事態は、暫定滑走路の完成、テスト飛行、供用開始、W杯という今秋―来春の一連の行事のなかで、国家権力が再び三里塚闘争解体攻撃を強めようとの意思を表明したものだ。「成田空港は日本の治安の歴史そのもの」(村井)とは、小泉政権が治安政策の中心を再び三里塚闘争の解体に置いたことを意味している。小泉「構造改革」は、数百万人の労働者の職を奪い、失業と不安定雇用にたたき込む攻撃である。それは階級情勢を激動化させ、労働運動の活性化、政治闘争の発展を促すもとになる。
 これと連動して、警察権力は治安政策の強化に全力を傾け始めたのだ。実際、小泉政権成立後、治安弾圧情勢は各方面で一変し、悪質きわまりない凶暴な弾圧事件が続いてる。千葉県収用委員会会長せん滅戦闘(88年9・21)を口実にした水嶋同志への起訴は100パーセントデッチ上げだ。この事実について警察は百も承知している。
 いずれにしろ、暫定滑走路の開港をめぐって三里塚闘争は再び、国家権力との全面的対決を迎えることになる。

(8月25日) 新石垣空港建設 「早期着工を支援」/尾身沖縄担当相(8/26琉球新報ニュース)

 尾身幸次沖縄北方担当相が25日、初めて公務で石垣島を訪れた。新石垣空港建設予定地を視察し「さんご礁にも十分配慮しながら、できるだけ早く着工するのが望ましい。工事のやり方もふくめて悪影響のないようにしていく必要がある。われわれとしても1日も早い着工に全力を挙げて支援したい」と述べた。26日は竹富町西表島や与那国町を見て回る。
 尾身大臣は大浜長照石垣市長、那根元竹富町長、尾辻吉兼与那国町長と石垣市内のホテルで面談し、新石垣空港の早期建設など地域の諸課題について要請を受けた。
 与那国町は、与那国島上空に台湾の防空識別圏が設定されており見直すよう要請。尾身大臣は「今日初めて伺った。主権国家として大事な問題だ。防衛庁とも相談して考えさせてほしい」と述べた。台湾からの電波障害問題については「具体的な方策をするように(事務方に)話をして返事をする」と言明した。
 石垣市から要請のあった赤土流出防止対策事業に関しては「長年の懸案で、10月からは沖縄総合事務局に農水省から担当者を派遣すると聞いている。一つ一つ着実に実行して海洋資源が守られるよう全力で頑張る」と述べた。

 【本紙の解説】
 8月23日に、国土交通省が地方空港について、来年度予算で4空港の新設(移転を含む)と7空港の滑走路延長を先送りし、多くが凍結されると朝日新聞夕刊トップで報道された。具体的には新設が、びわこ、播磨、小笠原、新石垣の4空港、滑走路延長が新千歳、秋田、山形、福島、新潟、佐渡、福井の7空港であった。
 しかし、国土交通省はその報道を「新石垣空港は地元で空港整備計画を策定している最中で、そもそも来年度に予算要求できる段階にない。また新石垣空港はこれまでの計画の延長であり、新設には当たらないと考えている。小笠原空港は離島であり、離島以外の地方空港の新設は抑制するとの方針によれば、抑制の対象にはならない」と否定した。
 そのほかのびわこ空港や播磨空港の新設や、新千歳、秋田、山形、福島、新潟、佐渡、福井空港の滑走路延長に関してはコメントを避けているので、先送り・凍結は確実であろう。
 小泉内閣の公共事業の見直し、財政削減の中での国土交通省の対応であったが、石垣島と小笠原については激甚に反応し、石垣島には2日後に尾身沖縄担当大臣を送っている。
 国土交通省はその理由を新石垣島も小笠原も離島空港のため地方空港抑制の適用外と説明している。しかし、実は両空港とも軍事空港の位置付けが高いことが本当の理由である。
 今年の4月28日に沖縄県の下地島(伊良部町)と波照間(竹富町)の両空港にフィリピンでの合同演習に参加する在沖縄米海兵隊の普天間飛行場所属の給油機、ヘリコプター計13機が給油のため着陸している。昨年の2月15日にも石垣市の石垣空港に米軍機の給油機1機とヘリコプター4機が飛来している。
 このように日米新安保ガイドライン体制下での米軍の要請であり、日本政府としては新石垣島空港の新設は凍結できないのである。また小笠原も米軍にとってグアム島の米軍基地が爆撃された場合の避難基地のひとつである。
 両空港とも、自然破壊で空港建設反対の運動の強いところである。新石垣空港建設は赤土流出で白帆の珊瑚礁を全滅させる。小笠原は「小笠原諸島は生物進化の実験場」ともいえる地域であり、学術的価値も高い。小笠原の時雨山に空港を建設したらこのような貴重な動植物を全滅させると反対運動が起こっている。
 財政削減、地方空港抑制という中でも日米新安保ガイドライン下で軍事空港の建設は反対運動を押し切ってやろうとしている。

(8月28日) 第2次都市再生プロジェクトを決定=都市再生本部(8/29全紙)

 小泉首相が本部長となっている政府の都市再生本部は、官邸で第3回会合を開き、羽田空港の再拡張や成田空港へのアクセスの利便性向上などを含んだ、第2次都市再生プロジェクトを決定した。
 このプロジェクトでは、大都市の空港の機能強化について、「成田空港の平行滑走路の早期完成を図るとともに、国際化を視野に入れつつ、羽田空港の再拡張に早急に着手し、4本目の滑走路を整備する」としている。
 また、空港へのアクセス利便性向上では、「都心と成田空港間、さらに両空港間を短時間で結ぶ、新たな鉄道アクセスルートの早期整備」を盛り込んだ。
 今回の第2次案プロジェクトで予算の重点配分分野としては(1)大都市圏の国際交流・物流機能の強化、(2)大都市圏の環状道路体型の整備、(3)大阪圏での生命科学の国際拠点形成、(4)都市部の保育待機児童の解消、(5)PFIの一層の展開――の5つとした。

 【本紙の解説】
 都市再生プロジェクトの第1次決定は(1)東京湾臨海部の基幹的広域防災拠点の整備、(2)大都市圏におけるゴミゼロ型への再構築、(3)中央官庁施設のPFIによる整備――にとどまっていたが、第2次決定で本格的なテーマが出されてきた。
 その中で、首都圏の空港整備が最重要課題として設定された。空港建設の遅れが日本経済の危機の一要因になっているとして、その突破を図ろうとしている。
 成田の完全開港までは、首都圏第3空港建設問題、羽田空港の国際化問題は「成田空港の建設の妨害になり、空港反対派を勢いづける」としてタブーになっていた。暫定滑走路の工事を開始した99年12月頃から、旧運輸省は羽田国際化に政策を転換し始めたが、今回「国際化を視野に入れつつ」という言い方で政府見解としてはじめて羽田の国際化を公言した。
 羽田国際化に反対してきた千葉県も、今度の第2次プロジェクトで「アクセスの利便性向上」として、「成田高速鉄道、東京外かく環状道路の東側区間の早期整備と北千葉道路の計画の早期具体化、都営浅草線の東京駅接着及び追い抜き線新設の早期実現」などが盛り込まれ、羽田国際化に反対できなくなっている。
 しかし、都市再生のプロジェクトは「バブルのつけ」である不良債権の処理のため経済競争をうたい、また軍事都市の建設にほかならないが、まさに再びバブルを再興するかのような政策である。
 都市再生本部の政策はいろいろ多岐にわたっているが、その手法はPFIに代表される。PFIとは、プライベート・ファイナンス・イニシアチブの略であり、道路や橋などの社会資本の整備を民間にゆだねる手法の総称で、1990年代初めに英国で広がったものである。中曽根首相が80年代後半に採用した民活方式をより発展させたものといえる。本来の公共事業まで民間資本にゆだねる手法である。この手法で、バブルの傷あとになっている都心部と臨海部を中心とした虫食い状態の地域などの低未利用地を開発しようということにある。
 これは不良債権の処理どころか、より一層の経済破綻を拡大するだけにおわることは確実である。

(8月29日) 国土交通省 来年の成田空港の概算予算を要求(全紙8/30)

 国土交通省と新東京国際空港公団は29日、成田空港に関する総額1399億円の来年度予算概算要求を発表した。本年度比874億円の減。建設事業費は790億円(同165億円減)になった。
 建設事業費790億円の内訳は、第1旅客ビル改修や貨物施設の整備、エプロン(駐機場)と誘導路の新設などの空港整備費に計550億円、移転補償や防音工事の助成など空港周辺地域との共生事業に計119億円、管理費が121億円。
 おもな建設事業は第1旅客ビル整備が計262億円で、中央棟本館改修に32億円、第3サテライト増築に100億円、第5サテライト増築に45億円、第4サテライトと南ウイング増築に43億円、第4と第5サテライト間を結ぶトンネル工事費に6億円の計画になっている。第2旅客ビル整備はチェックカウンターの増設、南北カーブサイド、北側出発ロビーの増設、エプロン整備などをふくめて94億円。貨物の施設整備に40億円。
 一方、共生事業関係では周辺住民への防音工事の助成や移転補償、緩衝緑地帯の整備などを行うが、今年より72億円少ない要求額。公団では「必要な事業は積み上げてきた。十分な対応が可能」としている。

 【本紙の解説】
 予算案をみると、暫定滑走路は暫定滑走路にとどまり、来年度には2500メートル、3300メートルへの拡大工事の予定はない。工事はターミナルビルの補修、増築工事にが中心である。また、遅れに遅れている千葉県の国際物流複合基地に業を煮やして、公団が直接に芝山町岩山にある日航のグランドを買収し貨物地区の整備に乗り出している。

(8月29日) 空港公団の昨年度決算 9年連続赤字(東京千葉版8/30)

 新東京国際空港公団は29日、2000年度決算を発表した。収支は、経常ベースでみると、過去最高となった業務収入などで128億円の黒字になったが、過去7年間の暫定滑走路建設関連費150億円を一括処理するなどしたため、全体の損益は44億円の赤字。損失分は回収財源調整準備金(積立金)から戻し入れる。積立金残高は62億円、公団の赤字は1992年度から9年連続となった。
 公団によると、2000年度の収入総額は、1473億円(前年度比48億円増)。このうち業務収入は、過去最高の1432億円(同17億円増)だった。
 内訳でみると、航空会社が公団に支払う空港使用料などは、前年度比計10億円減となったが、国際線の旅客数が2692万人(同7%増)と過去最高を記録。旅客サービス施設使用料は230億円(同15億円増)、貨物施設の賃貸料などの施設使用料も457億円(同12億円増)と、それぞれ増えた。
 一方、支出総額は1517億円(同89億円増)。業務費は985億円と、電力料金値下げの影響で前年度から12億円減少した。しかし、工事が中断していた93―99年度の暫定滑走路建設に絡む人件費や施設維持費などを特別損失として2000年度決算で一括処理するなどしたため、業務外費用は399億円(同73億円増)に膨らんだ。

 【本紙の解説】
 公団収支は赤字をつくっている面が強いが、日本では空港事業は割に合わない。空港には適さない地形である。工事費の高さと、諸外国と比べたらどの空港も人口密集地になることからくる周辺補償費の大きさから、空港利用料を世界一にしていても赤字ぎりぎりである。採算がそれなりにとれているのは羽田と成田ぐらいである。
 しかし、本格的な航空自由化時代に入り、アメリカやアジア各国の航空会社と日本の航空会社の競争の結果が日本の完敗になることは確実であり、成田・羽田も周辺諸国の空港に将来的に太刀打ちできないことは明らかである。また、成田空港では暫定滑走路が供用開始した場合には、暫定滑走路の維持管理費に見合う利用料の増加は見込まれず、赤字は増える見込みである。
 日本政府はそのことを見越して、アジアの周辺空港との競争にうち勝つために空港経営の徹底合理化をやろうとしている。そのための「空港の民営化」を検討している。国鉄の分割・民営化で雇用人員を半分に減らしたやり方である。
 石原行革担当大臣はすでに「羽田空港の売却金は1兆円から1兆5000億円になる。成田空港は3000億円から4000億円になる」と外国特派員協会の講演でのべている。

(8月29日) 成田空港暫定滑走路 供用開始 来年4月20日(読売8/30)

 新東京国際空港公団は29日、成田空港の2本自の滑走路となる暫定平行滑走路の供用開始について、当初予定の来年5月20日から1か月前倒しして、同4月20日とする方針を固めた。建設工事が予定より阜く進んでいるためで、今後、管制業務を担当する国土交通省、税関、入管など関係当局と調整して、年末までに最終決定する。
 公団では、工事遅延の原因となりかねない梅雨の時期が過ぎた今月下旬、工事の進ちょく状況を点検したところ、当初より1か月早い今年10月末には工事を完了できる見通しが立った。工事完了後は国による検査、試験飛行などを経て供用開始となる。各航空会社から要望が強かったゴールデンウイーク前の供用開始となり、需要の多い時期にアジアなどの近距離国際便の増便が見込まれる。

 【本紙の解説】
 公団が暫定滑走路の供用滑走路開始を早める理由は、発着回数を増やし、敷地内農民を騒音でたたき出すことを目的にしているからである。予定の5月20日では、4月1日に夏の航空ダイヤに変わっており、ゴールデンウイークも終わり、本格的な定期便の運行開始は冬ダイヤへの改訂の10月になる。暫定滑走路が2180メートルに終わり、それだけでも使い勝手が悪く、国際線や国内線の乗り入れが少ない中で、できる限り多くの航空機を飛ばし、騒音で敷地内農民を追い出すためにゴールデンウィークのチャーター便を当て込んでの1か月の前倒しの供用開始になったのである。
 このような敷地内農民のたたき出し、三里塚闘争の解体を目的にした暫定滑走路の建設とその供用開始に絶対にうち勝ち、スト飛行阻止、慣熟飛行阻止、4・20供用開始粉砕闘争を闘いとっていかなければならない。

(8月31日) 2500メートル「W杯前は困難」(9/1朝日)

 新東京国際空港公団は31日、成田空港で建設中の暫定滑走路を来年4月21日前後に供用開始することを決めた。工事が順調で予定をーカ月早めた。同公団は、来年5月31日開幕のサッカーのワールドカップ(W杯)までに、当初計画の2500メートル滑走路を間に合わせることを目標としていたが、空港予定地内に住む反対派農家との用地交渉が不調で、W杯までに造るのは不可能と判断した。
 2本目の滑走路ができることで、空港公団は、現在の発着枠年間13万5千回を段階的に増やし、最終的には20万回にする予定だ。国内線は現在の4倍増の2万回となる。しかし滑走路が短いため、国際線の主役であるジャンボ機の発着ができないなど、国際空港としての制約は依然大きい。

 【本紙の解説】
 公団がついに暫定滑走路が暫定にとどまることを正式に明らかにした。2500メートルの既存計画への延長を当面のうちは断念し、騒音地獄にたたき込んでからの切り崩し攻撃を強めるという宣言でもある。
 国土交通省と公団は、暫定滑走路の工事を最後の最後まで、2500メートルの平行滑走路の建設であると言ってきた。2500メートルの断念の正式の表明ははじめてである。
 具体的には、供用開始日の決定、来年度予算の請求などがあり正式な表明を求められていたのに延ばしに延ばしてきたのである。この9月から各航空会社は来年の夏ダイヤの運行計画の策定に取りかかるので、公団としてももうこれ以上延ばせなくなり、正式表明となった。
 ではなぜ公団は、暫定滑走路が暫定にとどまることを正式の表明を遅らせたのか。その理由は敷地内農民をなにがなんでも切り崩し、既存計画の平行滑走路にしたかったという一点である。暫定滑走路では、基本的に国際空港としては使い物にならない。三里塚闘争に対する対抗の面も強い。しかし、この公団の基本姿勢、つまり、「なにがなんでも、国策である国際空港を建設する」という姿勢が敷地内農民と周辺農民や住民の生活を無視してきたのである。また、滑走路を暫定であれ建設すれば地権者は売却するという考えなのである。軒先工事の考え方である。「軒先まで工事をしてお見せして、納得してもらう」という考えである。この暫定滑走路の工事はこの公団の地権者無視、工事させ先行させれば地権者は屈服するという権力者特有の手法を典型的に使ったものなのである。
 暫定滑走路が暫定におわることは、この公団の手法の全面的破産を意味しているのである。そのために、暫定滑走路におわることの正式表明をここまで引き延ばしてきたのである。
 暫定滑走路の供用開始過程とその後は再び、この公団の切り崩し攻撃との全面的対決になる。2002年4・20暫定滑走路供用開始をめぐる決戦が火蓋を切った。三里塚闘争の新たな決戦の開始である。

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