SANRIZUKA 日誌 HP版   2003/07/01〜31    

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 2003年7月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(7月2日) 羽田空港/国際チャーター運航数が最高に(7/3千葉日報)

 深夜・早朝の時間帯に羽田空港を発着する国際線チャーター便が8月に132便と過去最高の運航数になることが2日、東京空港事務所のまとめで分かった。
 年間便数でも、8月までに計437便が発着する見通しで、昨年1年間の471便に迫る勢いだ。
 航空機を夜間に有効活用し、新型肺炎(SARS)やイラク戦争の影響で落ち込んだ国際線の需要を取り戻すのが狙い。航空会社によっては2009年の羽田国際化を前に実績をつくる意図もあるとみられる。
 132便の内訳は全日空がクアム、ソウル便など計88便、スカイマークエアラインズが18便、日航が2便。海外からもマレーシア航空、オーストラリアのカンタス航空など4社が乗り入れる。
 全日空は8、9の両月、羽田発グアム行きのチャーター便を初めて連日運航し、成田発の定期便を運休する。首都圏とのアクセスや、地方からの乗り継ぎに便利な羽田に焦点を絞り、集客を図る考えだ。乗客はホテルと航空券をセットで購入する必要はあるが、空席さえあれば出発前日でも申し込みは司能という。
 全日空関係者は「成田では発着枠が確保しづらく日航との競争で不利な点が多い。羽田の早期国際化を視野に、チャーター便で実績を重ね、アピール材料にする狙いがある」と話している。

 【本紙の解説】
 羽田空港国際化のポテンシャルの高さがすでに示されている。全日空は「成田は発着枠が確保しづらい」といっているが、成田発のグアム便を運休してまで、羽田の夜間チャーター便にふりかえているのである。今年の10月末から羽田―韓国・金浦便が1日4便のシャトル便で運航するが、満席になるであろう。現在、成田―仁川便は1日約15便あるが、来年にはこの4対15は逆転する。アジア便の近距離便は羽田の発着枠が確保されれば、その分が成田から移行するようになるであろう。
 羽田の4本目の滑走路完成=国際化の年は09年、12年の2つがある。国交省の正式の文書や発表は12年だが、通常は09年になっている。最初の計画では12年であったが、工法が桟橋方式かメガフロートになり、地盤沈下をみる必要がなくなったので、埋め立て方式より工期が短くなることで、事実上は09年になった。
 また成田の民営化が04年で、株式公開を3年後の07年としているのは、羽田国際化にあまり接近しないようにとの配慮があるかもしれない。株価に深刻な影響が及ぶ恐れがあるからだ。それで羽田の新滑走路も12年完成としているのか。いずれにしろ、羽田―金浦の運航が開始され実績がでれば、羽田全面国際化の実施は09年を待たず、より前倒しになることは確実である。

(7月2日) 暫定B滑走路が機体故障で一時閉鎖(7/3朝日、東京各千葉版)

 2日午後3時半分ごろ、成田空港の暫定B滑走路で中国東方航空の旅客機(エアバスA310)が着陸して誘導路に入ろうとした際、主脚の車輪が動かなくなり立ち往生した。同滑走路は牽引車が同機を移動させるまでの約45分間、閉鎖された。この影響で、同滑走路を使う予定だった出発2便と到着4便がA滑走路に変更した。

 【本紙の解説】
 旅客機の故障は中国東方航空の整備不良に責任がある。しかし、その故障で滑走路が45分間も閉鎖したのは、暫定滑走路の構造のためである。通常は出発便の誘導路と到着便の誘導路は別であるので、到着便の故障で誘導路がふさがれても、出発便は基本的に影響を受けない。また故障した航空機を基本誘導路から2本目の誘導路(国際空港クラスでは通常2本ある)に待避させれば到着便も影響はうけない。
 しかし、暫定滑走路は到着便も出発便も1本の誘導路を使っている。したがって、故障機を誘導路から脱出させないかぎり滑走路が使えなくなるのである。いまはSARSで航空機が少ないこともあり、A滑走路が空いていたので混乱が少なかった。やはり暫定滑走路は完全に欠陥滑走路である。事故・故障に対応できない滑走路である。

(7月3日) 成田空港 新型肺炎の終息で、厳戒態勢を緩和(7/4毎日千葉版)

 新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の終息をうけ、渡航延期勧告対象国や感染指定地域から到着した直後の旅客に行われてきた検疫の強化体制が3日、ほぼ終了した。世界保健機関(WHO)は5日にも、感染指定地域として残っている台湾を解除する見通しで、厚生労働省成田空港検疫所は約3カ月にわたる厳戒態勢を緩和させることになる。
 同検疫所はWHOによる渡航延期勧告(4月2日)をうけ、サーモグラフィー(体温測定カメラ)などによる検疫強化を開始した。5月12日からは、渡航延期勧告の対象国や、感染指定地域から到着した航空機から降りた直後の旅客から質問表を回収したり、発熱の有無を直接聞くなどしていた。
 しかし、SARSの終息とともに、WHO指定の渡航延期勧告は6月24日の北京でなくなり、感染指定地域だったカナダ・トロントも解除され、感染者の報告がなければ台湾も5日に解除される見通し。
 ただし、同検疫所は当面、サーモグラフィーによる体温測定は続ける方針で、佐野友昭・検疫課長は「(体制の緩和は)とりあえずの処置だが、引き続いて警戒したい」と話している。

 【本紙の解説】
 SARSの今後の動向を終息に向かうと予想するのは難しい。一般的にインフルエンザなど呼吸器感染症のウイルスは、気温と湿度が上昇したときいったん減少する。ほとんど死に絶えて、再び、気候が涼しくなってまた戻ってくる。風邪やインフルエンザが冬から春に流行するのはこのためである。
 したがって、この間SARSに感染の広がりがなくなっているのは事実であるが、このまま終息はしない。この夏を過ぎ、より耐性が強くなったSARSが猛威をふるうのは今年の12月から来年5月だと予測する方が自然である。
 その時期までにSARSウイルスのワクチンが完成していないと大変な事態に突入する。
 冬から秋には、全人口の10〜20パーセントがインフルエンザに感染し、その結果、300万〜500万人の重症例と25万〜50万人の死亡がでているとWHOは報告している。このインフルエンザとSARSの症状は極めて似ている。したがって、SARS「疑い例」が多くでて、その接触者の隔離、接触者追跡調査、検疫といったことで、社会的にパニックになるともWHOは予想している。
 つまり、インフルエンザなどの疾病の初期段階でSARSだけを摘発し、他の疾病時にSARS対策はとらないということができないのである。つまり現段階では迅速で簡易なSARSの初期診断検査の方法がないので、インフルエンザとSARSの区別がつかない。従ってすべてのインフルエンザ症例に対して、SARS対策が必要になる。
 日本での発病例がないので、今年はその必要がなかったが、来年はそうとも断言できない。むしろ来年こそ、SARS大流行の危険は大きいともいえる。

(7月5日) B滑走路北延撤回決議 成田空港騒対協総会

 成田市内の騒音下の住民らでつくる「成田空港騒音対策地域連絡協議会」(平山正吉会長)の03年度総会が5日、成田国際文化会館で約60人が出席して開かれ、暫定B滑走路の北延ばし撤回を求める03年度の決議文を採択、02年度活動報告や決算報告などを承認した。
 決議文には「暫定B滑走路の北側延伸による2500メートル化の撤回と本来計画による整備」や「住民が納得する騒音区域の指定線引きの見直し」など、5項目が盛り込まれた。
 また、来年4月に民営化される空港公団に対しては「空港施設の整備建設と地域共生策・騒音対策などについて、騒音下の住民との信頼関係を大切にし、地域と共にある空港づくりを強く望む」と要望した。
 北延ばしについては、出席者から「新聞報道などで見るが、国としての現実性はどうなのか」と国側の来賓出席者に対して質問があったが、事務局側が「公団があらゆることを考えて検討している」と報告して収めた。

 【本紙の解説】
 騒対協としては、当然であるが、暫定滑走路の北側再延伸に反対の決議文の採択となった。成田商工会議所や成田空対協とは対照的な決議である。商工業界は、本来計画の完成が見込めないなら、北側再延伸を急げというものである。しかし、これは騒音直下の住民の生活を顧みない自分勝手な立場である。
 今回の決議文には「住民が納得する騒音区域の指定線引きの見直し」など、5項目が盛り込まれた。騒対協としては来年4月の公団の民営化で騒音対策の取り組みに不安を表明している。
 しかし彼らは民営化された空港会社に裏切られるであろう。成田空港での騒音地区一軒当たりの騒音対策と、周辺対策費の総額は他の空港と比べて比較にならないほど多い。それは空港反対闘争を周辺から孤立させ、空港を完成し開港させるためであった。成田空港建設は国策であり、また三里塚闘争が日本の階級情勢と治安情勢を決定する問題となっていたからだ。
 そのために国家の威信をかけてふんだんに財政をつかってでも三里塚闘争を解体し、成田空港の完成を追求してきたのである。しかし今後、民営化された成田空港会社にとって、滑走路整備の可否その他の判断は、その建設経費と営業収入の関係だけで決まる。収入に見合った整備しか行わないのは資本の論理である。暫定滑走路の完全化と言う場合、その経費に北再延長のための建設費の増大や騒音対策費の数倍化という問題も考えなければならない。その結果として、完全化は不可能という結論が出ることもありうる。
 国交省も、暫定滑走路の完全化は、国が株式を保有する特殊会社でいるうちに終わらせるといっている。完全民営化後は、収益第一主義の民間会社になるので、暫定滑走路の完全化はできないという認識だ。国交省も暫定滑走路の完全化を「無駄な公共事業」であると認識しているのである。
 騒対協もこれまでのような公団との「友好」関係だけでは騒音対策費は取れない。環境対策費、騒音対策費も空港会社との闘争として取り組んではじめてかちとれるのである。今年の総会決議文では、この点の明確化が必要ではなかったのか。

(7月8日) 成田闘争35年余 石井武さん死去(朝日、読売、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港予定地内に農地を持ち、空港反対闘争の第1世代として35年以上にわたり闘争にかかわった三里塚・芝山連合空港反対同盟熱田派世話人の石井武さん(78)が8日夜、亡くなった。成田闘争のリーダーがまた1人逝き、ゆかりの人たちから惜しむ声が聞かれた。
 長男の恒司さん(55)は「ごくろうさまといってやりたい」と話した。同派の熱田一・元代表(84)は、「農地死守ということで、(同派の)世話役としてこれまで一緒にやってきたので寂しくなる」と語った。
 石井さんは戦後、同市堀之内地区から東峰地区に入植。66年7月、国が一方的に空港建設を決めたため反対同盟に加わった。71年の強制収用では地下ごうに潜って抵抗し、公務執行妨害などの疑いで3回逮捕された。
 国と熱田派が91年から空港問題で議論した「成田空港問題シンポジウム」「円卓会議」では、国との話し合いは若手に任せ、後見人役を務めた。国がシンポで、過去の強引な建設手法を謝罪した時、会場に親友の遺影を抱いて姿を見せ、当時の運輸相と握手した。
 しかし、円卓会議後も2本目の滑走路建設には反対を貫き、空港予定地内にある約0・2ヘクタールの土地は手放さなかった。国は99年、未買収地を避け、当初計画滑走路より約300メートル短い暫定B滑走路の建設を始め、昨年4月に供用を開始した。
 供用開始の前日、同滑走路南側で熱田派の支援者が抗議の横断幕を掲げるのを見守りながら、石井さんは「完全な滑走路は造られてはおらず、負けたとは思っていない。特別な思いはない」と強気な発言をしていた。
 同反対同盟北原派の北原鉱治・事務局長(81)は「(同盟が)83年に分裂以降、路線が違ったので話し合う機会がなかったが、いろんな意味でそれなりによく頑張ってきたと思う」とコメントした。

(7月11日) 成田民営化法案が成立/「暫定」解決、明言避ける(7/12全紙)

 新東京国際空港公団を来年4月に民営化し、国が全額出資した特殊会社にする成田国際空港株式会社法が、11日の参院本会議で与党3党と民主党の賛成多数で可決、成立した。2007年には株式を上場し、完全民営化を目指す。しかし暫定滑走路の延伸や着陸料の引き下げが当面の課題とされる中で、これまで国や公団が約束してきた騒音対策や地域振興など共生策の確実な履行も、地域にとっては積み残された形となっており、厳しい環境下での新たな“船出”となった。
 同日、国交省内で記者会見した空港公団の黒野匡彦総裁は、用地交渉が難航している暫定滑走路(2180メートル)について「2007年予定の株式上場時点で、工事を始めるか、最悪でも地権者の了解は取り付けたいが、完全にできているのはかなり難しい」と述べ、株式上場時での滑走路延長は困難との見通しを明らかにした。
 また滑走路南側に住む東峰地区住民との用地交渉が難航しているため、滑走路を北に延長する案も浮上しているが、黒野総裁は「北延ばしを採用すれば、東峰地区住民との対立を生むなどマイナス面もある。カードは捨てていないとしか申し上げられない」と述べるにとどまった。

 【本紙の解説】
 民営化のもうひとつの問題は、暫定滑走路の「2500メートル化」である。民営化政策は、国の財政改革の必要からスタートしたものであり、関空の経営失敗から空港空港特別会計の1兆円ほどの赤字をどう埋めるのかが焦点になっていた。当初の3空港(成田、中部、関西)一体上下分離案は、成田の収入を関空に振り替える方策であった。しかし、経済界などの批判で成田の上下一体単独民営化となった。その場合、政府所有の株式の上場・売却益を1兆円にするのが国交省の次の方策であった。そのためには、暫定滑走路の欠陥解消がポイントになる。しかし、未買収地取得による本来計画への復帰がいよいよ絶望的であり、成田空港の資産価値評価の下落は確実である。黒野は「上場までに最悪でも地権者の同意を取り付けたい」としているが、これは上場までに平行滑走路の完成がなければ額面1000億円の株の額面割れもあり得るからである。しかし、三里塚闘争37年の歴史の中で、公団総裁としてこれほどの弱気の発言はこれまでにない。黒野は東峰区住民を脅す最終手段として北側延伸を「カードとして残す」というが、運航上はまったく意味のない工事への予算支出(約350億円)が民営化後の経営をさらに圧迫することにもつながるだけに、公団内部でさえ批判の声が上がり始めた。
 新会社の経営難航も公然と語られている。新滑走路が09年に完成する羽田空港に成田のアジア便、韓国、上海、台湾線の全面的羽田移管は内定している。成田の地盤沈下はもはや避けられない。
 地元対策の後退も必至だ。黒野は7月11日の記者会見で「(地元対策は)常識的に見て必要があれがやるが、必要がなければやらない」などと早くも責任逃れの予防線を張った。成田市の小林市長は「民営化で地元対策が切り捨てられるのではないか」(同日)と懸念を語ったが、空港からの税収増を目当てに完全民営化を主張し、周辺対策の責任を国から引き離す結果を招いたのは成田市自身(前市長・小川国彦)だ。彼らは今後その責任を厳しく問われるだろう。

(7月12日) 旅客機の貨物室に穴 成田空港、作業車が接触(7/13毎日)

 12日午後1時45分ごろ、成田空港の駐機場で、韓国・仁川から到着した大韓航空703便(ボーイング747−400)に荷降ろしのため近づいた作業車「ハイリフトローダー」が誤って航空機に接触した。運転手の男性(34)が頭に軽傷を負い、貨物室のドア近くに幅3センチ、長さ50センチほどの穴が開いた。
 新東京国際空港公団によると、同機は旅客便で乗客は乗り込む前だった。代替機が用意された。空港グランドサービスなどが原因を調べている。

 【本紙の解説】
 この事故そのものは、人の被害はなく、空港では小事故といえよう。しかし、暫定滑走路を供用開始してから、このような小事故が激増し、中事故といえる誘導路上での接触事故(02年12月)、暫定滑走路でのオーバーラン(03年1月)が起こっている。航空機事故、それも離着陸の「魔の11秒」を含む空港内事故は、このような小事故が積み重なり、それが引き金となって、乗員・乗客のほとんどが死亡するような大事故に発展するのが通例である。理由は空港機能、とりわけ管制機能と航空機整備の破綻が原因で事故が発生するからである。航空管制に死角やスキができること、滑走路の設計ミス、飛行コースに問題があること、航空機整備が人員削減などで手抜き状態に陥ること――などの原因が重なって事故は起こるからである。
 成田空港では暫定滑走路の設計そのものに欠陥があるうえ、飛行コースも自衛隊空域、米軍空域に挟まれた複雑な構造になっている。また、暫定滑走路が新たに供用されたにもかかわらず管制官の人員補充が十分でなく、管制官が重労働によるストレスで疲弊しているとも伝えられている。また、航空機整備はリストラによる人員削減が進行しており、満足な整備状態になっていない。いま成田空港は大事故寸前の情勢が静かに進行している。

(7月15日) 新東京国際空港警備隊が25周年式典(産経千葉版、千葉日報)

 千葉県警新東京国際空港警備隊(渡辺統洋隊長)の創設25周年式典が15日、千葉県成田市三里塚の同隊庁舎前の中庭で行われ、三谷秀史県警本部長による査閲(さえつ)が行われた。
 空港警備隊は、1978年7月、成田空港開港直前の空港反対派による管制塔占拠事件を契機に設置されたもので、全国の警察から集められた1500人が24時間体制で成田空港警備に当たってきた。
 来賓として訪れた佐藤英彦警察庁長官も「空港警備隊はわが国の治安の根幹だ。成田の地では6人もの警察官の尊い命が奪われた。哀悼の意を表するとともに、後世に伝えていかなければならない」と話した。

 【本紙の解説】
 空警の年間維持費は1500人の人件費を含め150億円前後といわれている。この財源は千葉県警予算であり、人件費は派遣した都道府県警の負担である。この警察予算とは別に公団が負担しているガードマン会社などの警備費が年間100億円である。合計で250億円前後である。公団の年間総収入が1200億円である。総収入の2割強が成田空港の警備費という計算になる。25年間この警備は続いている。現在の貨幣価値換算で約6250億円である。地方空港が2つできる金額だ。「空港警備隊はわが国の治安の根幹だ」と警察庁長官が発言しているが、積年の農民無視が招いた結果がこの膨大な警備費であることを忘れてはならない。高くついたものだ。
 しかし、来年度から公団は民営化し成田空港会社となり、警備費は負担しない方向で現在検討されている。警備費に含まれる「ゲリラ保険」への拠出削減は決定しているといわれている。「ゲリラ保険」は88年から始まり、正式名称は「施設所有者賠償責任保険」といい、ゲリラ戦闘の対象者に「見舞金」を出す保険である。公団は掛け金の約半分を負担していたが、「不況」と「民営化」を理由に負担を打ち切るとのことである。

(7月17日) 夏休み期間航空予約/国際線は前年の8割 国内線は増(7/18毎日)

 日本航空システム(JAL)と全日本空輸(ANA)は17日、今年の夏休み期間(7月18日〜8月17日)の予約状況を発表した。両社とも国内線の予約人数は前年同期をやや上回る一方、国際線は新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の影響がアジアを中心に残り、前年の8割前後にとどまる。国内線の予約のピークは下りが8月9、10日、上りが8月16、17日。
 JALの国内線予約数は、前年同期比2・7パーセント増の456万1047人、国際線は同21・7パーセント減の99万6019人。ANAは国内線が同0・6パーセント増の439万3834人、国際線は同17・8パーセント減の28万7812人となっている。国際線は中国線の落ち込みが大きく、JALの予約数は前年の4割強、ANAが6割強にとどまっている。

 【本紙の解説】
 外国旅行の2割減は当面、定着しそうである。しかし、SARSウイルスが高温と多湿のため弱っている夏でも2割減ということは、SARSの蔓延が予測される今年の冬は、5割以上の落ち込みとなりそうだ。冬にSARSが再流行する恐れが強いことについてWHOでも中国衛生部でも確実視されている。成田空港にも、航空会社にも致命的な大打撃となることは確実である。

(7月18日) 自民党国土交通部会が提言/航空会社に支援/自助努力前提に(7/19朝日)

 自民党国土交通部会は18日、航空会社の自助努力を前提に政府が支援をおこなうことなどを柱とした航空事業に関する緊急提言案をまとめた。
 航空会社に運航乗務員の人件費の削減や機材の見直しによる運航費の低減などを求める一方で、イラク戦争や新型肺炎SARSによる航空会社の経営悪化に対しては、政府が緊急融資や着陸料の軽減のほか、固定資産税の軽減や税制上の優遇などの措置を講じるよう求めている。

 【本紙の解説】
 自民党の国土交通部会の航空会社支援は、航空会社の意向を反映したものであるが、それ以上に海外への侵略戦争における民間航空機の重要性からでている。自前の航空輸送力は軍事力の主要な構成要素なのである。公共的性格をもつ事業でも、国からの直接的支援をうける事業は「国益」そのものに直接関係しているものだ。そうでなければ、国内航空会社が倒産しても外国航空会社で代用できる。危機だというだけでは政府の支援対象にはならない。民間機の軍事利用は自国の航空会社であることが絶対条件なのだ。
 米国では9・11の反米ゲリラで大打撃をうけた航空会社に、政府が5兆円にもおよぶ、直接・間接の援助を与えた。それまで米国は「航空戦争」の自由競争を建前に、各国の航空会社への政府援助を批判し続けてきた。ところが9・11以後、米国は一変した。巨大航空会社はいまや軍隊の一部であり、官営会社の様相すら呈している。
 日本もイラク侵略戦争への自衛隊派兵、朝鮮侵略戦争情勢の切迫の中で、航空会社の危機・倒産は避けなければならない課題となり、政府援助が声高にさけばれだしたのである。

(7月19日) 成田空港検疫所/西ナイルウイルスに警戒(7/19毎日千葉版)

 成田空港検疫所は、4年前から米国で猛威を振るう「西ナイルウイルス」の日本国内への侵入に警戒を強めている。米国で今月、今年初の惑染者が報告されたからだ。日本で感染例はないが、昨年は全米で4156人が感染・発病し、うち284人が死亡している。
 西ナイルウイルスは日本脳炎ウイルスの仲間で、37年にアフリカのウガンダ・西ナイル地方で初めて患者が確認された。鳥類と蚊の間で伝染し、蚊を通じて人間にも感染する。致死率は3〜15パーセントで、治療法はまだ確立されていない。
 同ウイルスはアフリカ、欧州など広範囲に分布。99年から米国で爆発的に広がっている。今年も7月に入り、3州で6人の患者(17日現在)が発生した。
 このため、成田空港検疫所は今月から「ウエストナイル情報」と題したポスターを張る一方、米国への出発客に蚊に刺されない服装の着用を呼び掛け、到着客には発熱や蚊に刺された記憶のある人に健康相談所に立ち寄るよう促している。また、検疫所衛生課も今月から患者発生地域から到着する航空機内の蚊の有無などを調べている。
 佐野友昭・検疫課長は「蚊や鳥が海を渡り日本へ入ることはないと思うが、出来るだけの注意はしていきたい」と話している。

 【本紙の解説】
 SARSの死亡率は14〜15パーセントに達するという推計をWHOは発表している。西ナイルウイルスの死亡率も7パーセント前後であり、SARSに匹敵する感染症である。
 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱などの感染症がここ20年間で頻発し、猛威をふるっている。その理由はさまざまいわれているが、ウイルスの自然界の宿主がいまもって不明というのも特徴のひとつである。宿主の動物から何らかの理由でヒトに感染し、ヒトからヒトへ感染が拡大し、多数の死者を出すことがもう一つの特徴である。
 感染症の頻発の理由は、自然破壊で動物の生息状況が一変し、ヒトとの関係が変化したことである。特に航空機による交通手段の拡大が感染症の世界的拡大につながっている。
 感染症の拡大の直接的理由ではないが、必要以上に自然破壊し、必要以上に交通手段が発展したことに、医学、衛生学が追いついていない。しかしその責任は医学、衛生学にはない。必要以上の自然破壊や開発側の責任である。
 また一地域の風土病は、その土地の住民は抗体をもっており、死亡率は高くない。しかし、それが航空機の発展で世界的に感染すると、ほとんどの人は抗体をもっていないので死亡率が高い感染症となることも多い。いずれにしろ、感染症の拡大は航空機の発展の結果である。

(7月23日) 航路下の横芝中移転用地、住民アンケート(7/23千葉日報)

 横芝町が計画を進めている「町立横芝中学校移転予定地」で、「航空機の飛行直下であり安全性に疑問がある」という指摘をうけて、同校建設推進委員会委員長の伊藤斉紀町長は、約5050の全世帯を対象に賛否の住民アンケートを実施することを決めた。準備が終わり次第、8月中にも実施され、結果次第では見直しとなる可能性も出てきた。
 老朽化による同校の移転建設は、これまで96年度に同校建設問題検討委員会、同校建設推進委員会などで協議。98年度に4候補地から現在地北側の農地約5・1ヘクタールで決定し用地買収の同意折衝に入っているが、4月の町議選から5月の町長選で争点にもなり、「安全性に問題がある」という声が強くなっていた。
 伊藤町長は、町長選前には推進という立場であったが、選挙戦などを通じて当選後は「町民の声を聞き意向を尊重したい」に変わった。そして建設委員会や推進委員会で、賛否地の地権者に対して文書を配布し現状理解を求めている。

 【本紙の解説】
 横芝中学校の移転候補地は暫定滑走路南端から約15キロの地点である。飛行コース直下の問題点は3点ある。騒音と落下物と航空機そのものの墜落の危険である。15キロ地点の騒音は補償の対象外となっている。日常的に問題になっているのは落下物である。落下物にも3つの種類がある。一番多いのは氷塊である。氷塊とは航空機の翼、おもに主脚格納部にできる霧氷が発達して巨大になったものである。地上落下時点で数キロにおよぶもので、人間が直撃されたら即死する。航空機が空港に近づき主脚格納部を開けた時に、航空機から落下、空中で完全に溶解しないで地上に落下する。航空機が洋上で「脚下げ」を行えば、氷塊は基本的に海に落下する。これは成田などの内陸空港では規則であるが守られていない。
 落下物で危険なものは航空機部品の落下である。金属製で20キロ近い落下物もあった。ぶつかれば完全に即死であり、建物にあたってもかなりの損傷になる。最後の落下物はジェット燃料である。航空機は着陸時に燃料タンクを空にする。着陸失敗の時に炎上することを防ぐためである。航空機事故などで離陸失敗で大炎上することが多いが、着陸は胴体着陸でも炎上することが少ないのはこの処置を行っているからだ。余ったジェット燃料を着陸直前に空中に放出するのである。そのために、ハウス栽培のビニールが油でべとべとになることもある。金属落下物や氷塊とはちがい、直接的損傷はないが、これも大問題である。そして落下物より怖いのは航空機そのものの墜落である。
 滑走路の飛行コースで20キロまでは危険地帯である。人口密集地の内陸に飛行場は決してつくってはならない。騒音問題だけでなく、様々な危険性ゆえに人口密集地に空港を造ってはならないのだ。羽田空港北側への離発着はとてつもなく危険である。
 横芝中学校の飛行コース直下の建設はきわめて危険である。しかし、飛行コースの左右に数百メートルはずしただけではその危険性は基本的には変わらない。やはり、成田のような内陸空港は廃港にする以外ない。

(7月23日) JALの国際線運航当初計画に/新型肺炎終息うけ(7/24毎日、日経)

 日本航空システム(JAL)は23日、新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の終息をうけ、9月から国際線の運航をほぼ当初計画に戻すと発表した。
 成田―ロンドン線を週10便(往復)から13便、成田―パリ線を週8便から10便、運休していた福岡―香港線を7便と、いずれも当初計画通りにする。成田―ホノルル線、成田―香港線など一部路線の減便は続ける。

 【本紙の解説】
 中国などでSARSの終息宣言を出し、再び観光客を呼び込むことに躍起になっているが、この夏の海外旅行は前年比20パーセント減である。当面これが定着化しそうである。中国、台湾、香港へのツアー旅行は異常なまでの激安で、若干の回復が見られるだけである。そのため、国際線の復活は航空会社の赤字をより拡大しかねない。そのため、成田−香港線など、これまでのドル箱線でも運休のままである。
 問題は今年の晩秋からのSARSの再発である。中国政府・衛生部も衛生環境の整備と衛生感覚が進まないと、来年は今年以上の流行になると警戒を強めている。すでに終息宣言した香港で7月24日に、18人がSARSに感染した疑いが浮上し、現在検査入院している。予備検査ではインフルエンザ陽性で、SARSは陰性と判定されたが、正確な診断を下すには、さらに詳しい検査が必要で、結果が分かるにはあと数日必要だとしている。
 ワクチンが完成しないかぎり、今秋からSARSの再発・流行は確実のようである。

(7月23日) 成田空港で爆発物騒ぎ/出発ロビーに不審な箱(7/24毎日)

 23日正午すぎ、成田空港第一ターミナルビル4階の出発ロビーで、カートに不審物があるのが見つかった。灰色の透明プラスチックケース内に電気コードがあり、金属探知機も反応した。このため空港警備隊などから爆発物処理班や警察犬が出動する騒ぎになり、一時は「プラスチック爆弾では」などの憶測も流れ、近くにいた旅行客らが避難する騒ぎになった。
 新東京国際空港公団によると、不審物の発見後に、警察側から「警察犬2頭を出動させる」などの連絡があり、公団側も警備員を配置した。新東京空港署などによると、中には電気コードが入っていただけで、持ち主の特定につながるようなものはなかったという。

 【本紙の解説】
 米軍によるイラクの領土占領は、新たな戦争の始まりという様相を呈している。連日、米軍に対するゲリラ戦闘が数カ所で敢行されている。間違いなく60年代のベトナム戦争の二の舞になりつつある。そのイラクへ日本の軍隊である自衛隊、それもいわゆる歩兵の普通科連隊を派兵するのである。領土侵略そのものである。そのイラク侵略のためのイラク新法が国会成立の直前であり、成田空港に対するゲリラ戦闘が起こっても当然という状況が、単なる透明プラスチックケースの中に電気コードがあったというだけで爆発物と間違えさせたのである。
 しかし、自衛隊1000人のイラク派兵は成田空港から出発する可能性が高い。成田空港は国際的にもゲリラ戦闘の第一級のターゲットとなっている。こんどは「間違い」ではすまなくなりそうだ。

(7月28日) 成田空港共生委員会「住民に分かりやすい説明を」(7/29東京、8/1日経各千葉版)

 成田空港の運用などを監視する「成田空港地域共生委員会」(代表・山本雄二郎・高干穂大教授)の第55回委員会が28日、成田市の事務所で開かれ、新東京国際空港公団は2002年度の騒音測定結果や空港周辺の大気・水質汚染測定結果を提出した。
 公団側は大気質と水質については「暫定滑走路の供用開始以前と大きな変動はない」と説明。騒音測定結果については、測定デー夕の報告だけだったため、共生委員からは「具体的にどういう影響や変化があって、どう対応するのか、地域の人が分かるように説明することが必要だ」と要望した。

 【本紙の解説】
 共生委員会は「測量データ報告だけで説明はなにもない」として、その説明を公団に要望している。共生委員会がこのような事態になったことは、当然の結末である。公団と国土交通省が01年2月から委員会の構成員として加わり、そのことによって、従来ペテン的ではあるが形だけは「第三者機関」的装いを取っていたが、それすら投げすて、あからさまな官製の空港建設翼賛団体となったからである。
 それ以降、委員会の運営も公団任せになっていった。住民と空港の間に立つ「第三者」的緊張感はまったくなくなっていた。構成員である周辺自治体も公団の騒音対策費を多くとろうという魂胆だけで参加しており、住民の生活などまったく顧みないものになっていたのである。

(7月30日) 機内でナイフ発見/米機、成田に緊急着陸(7/31朝日、東京各千葉版)

 30日午後零時40分ごろ、ニューヨーク発成田行きアメリカン航空167便ボーイング777−200型旅客機から「機内でナイフが見つかった」と、国土交通省新東京空港事務所に連絡があった。同機は同2時ごろ、成田空港に緊急着陸した。乗客乗員170人にけがはなかった。
 新東京空港署によると、ナイフは長さ7センチ、幅3センチのライターに組み込まれており、ボタンを押すと長さ5センチ、幅8ミリの刃が飛び出す仕組み。操縦室の後ろにある乗員用休憩室のベッドに置いてあり、休憩中のパイロットが触ったところ、刃が飛び出したという。休憩室は乗客が立ち入ることができないため、同署は乗員が持ち込んだ可能性もあるとみている。
 着陸した機内では同署員が立ち入り、乗員らから事情を聴くなどしたため、同空港は一時騒然となった。

 【本紙の解説】
 ライターに組み込まれた刃渡り5センチメートルのナイフとは基本的にオモチャである。しかし、そのオモチャのナイフに反米ゲリラではないかとの疑いで緊急着陸し、その後、厳重な捜査が行われたようだ。
 このようになった理由は、米国安全省が先週末に、アルカーイダによる航空機をターゲットにした反米ゲリラの警戒を各航空会社に呼びかけていたからだ。
 ブッシュ米大統領も、30日の記者会見で、「アルカーイダがハイジャックなどによる新たなテロを計画している」との情報について「現実味のある脅威だ」「国際線(航空機)を使うことを示唆するデータがある」と発表している。また、マイヤーズ米統合参謀本部議長も30日、訪問先のアフガニスタンのカブール近郊バグラム空軍基地での記者会見で、「イラクでの作戦で、アルカーイダに関する非常にいい情報を得ている」と語った。
 つまり、イラク情勢のベトナム化の中で、アルカーイダをふくむ反米ゲリラがイラクと全世界の航空機に対して行われようとしているのである。この警戒感が、オモチャのナイフだけでの緊急着陸騒ぎになったのである。
 しかし、この航空機ゲリラの警戒は米国だけでなく、全世界で航空需要をさらに一段と落ち込ませそうだ。実行された場合の航空需要は半減どころではない。

(7月31日) 一坪共有地訴訟で公団勝訴(8/1朝日、読売、毎日、日経、産経、読売各千葉版、千葉日報)

 成田空港内の一坪共有地引き渡しをめぐる訴訟で、千葉地裁の31日の判決は、新東京国際空港公団の主張を全面的に認めた。長年続く空港用地問題の解決を、公団は民事訴訟という手続きに求めたことになるが、係争中の訴訟すべてに勝訴しても入手できる土地は約1000平方メートル。未買収地は約5万2000平方メートルである。
 公団は昨年12月、共有地8カ所の地権者16人(延べ17人)に、公団による買い取りに応じるよう提訴した。うち1カ所の2人、今回判決のあった1カ所の1人と和解。残る1人が判決を受けたが、ほかの12人(延べ13人)は、三里塚芝山連合空港反対同盟北原派の弁護士を代理人に立てて本格的に反論しているため、反対地権者が明確に争わなかった今回と同じ判決が下るとは限らない。
 また、公団は初めて訴訟という手法を選択したが、その主張の基礎になっていたのは、一坪共有地の「公団の持ち分が9割以上」という特殊事情にある。未買収地の大半を占める反対派の所有地については、同種の訴訟を起こすこと自体が困難だ。公団も「提訴に踏み切ったのは、話し合いそのものに一切応じない地権者に限っている。空港用地問題はあくまでも話し合いで解決するしかない」としている。
 新東京国際空港公団の話 一坪共有地を成田空港の事業用地として有効に活用するために、公団が持ち分を全面取得することを認める判決の意義は大きいと考えている。
 三里塚芝山連合空港反対同盟北原派・北原鉱治事務局長の話 われわれの権利を守るために徹底的に争う。一坪共有地は空港反対運動として有効に利用している。

 【本紙の解説】
 この一坪共有地の所有者は、菱田地区東部落の小川征一郎氏(59歳)である。小川氏は83年の3・8分裂以降から空港反対運動から脱落している。小川氏は和解には応じなかったが、裁判で原告・公団側とまったく争わなかった。民事裁判で被告側が基本的に争わない場合は、原告側主張がほとんどそのまま判決になる。今回の判決はそういう性格のものである。
 反対同盟の被告は全面的に公団と争い、強靱にこの裁判闘争を闘い抜く決意である。

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