SANRIZUKA 日誌 HP版   2004/04/01〜30    

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 2004年4月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(4月1日) 成田空港民営化スタート(4/1、4/2全紙)

 新東京国際空港公団は1日、民営化され、成田国際空港株式会社として新たなスタートを切った。同日早朝から除幕式や式典などが行われ、祝賀ムードが漂う中、黒野匡彦社長は記者会見で「着陸料の引き下げと暫定平行滑走路の2500メートル化は二つの大きな課題」と指摘。その上で「着陸料引き下げは避けて通れない」と世界最高水準の着陸料を将来的に引き下げる方針を示した。記念祝賀会では「地域との共生は公団時代と同様、真摯(し)に取り組む」と共生策の継続姿勢を強調した。民営化で経営の自由度は増すが、09年に予定される羽田国際化など空港間競争時代へ課題も多く、黒野社長ら経営陣は積極的に取り組むと表明した。
 成田国際空港株式会社は同日午前7時の除幕式を皮切りに、出発一番機を送り出す式典や幹部社員への社長訓辞、記念祝賀会など民営化初日を祝い式典を相次いで開いた。
 黒野社長は幹部社員らを前にした訓辞で、「民営化は(開港に続く段階の)『フェーズK』。一日も早く政府株をすべて放出し、完全民営化という『フェーズV』を迎えたい」などと述べ、公団職員から社員に身分が変わった約900人の全社員に対して、これまで進めてきたコスト意識の徹底をあらためて要求した。
 コスト削減で世界最高水準の着陸料引き下げの方針を示し、当初計画より320メートル短い暫定平行滑走路の2500メートル化など、民営化後の課題に積極的に取り組む姿勢を示した。
 ただ、引き下げ時期については、記者会見で「少なくとも1年間、株式会社として経営し、決算を見た上で判断したい」と明言を避けた。
 09年に一部国際化される羽田空港など、空港間競争時代に向けては「競争と言うより、羽田国際化を刺激材料として、吸収していきたい」と述べた。
 また、記念祝賀会では祝賀ムードの中にも「(成田空港建設が閣議決定された)1966年以降、激しい闘争があり、多くの涙、汗、血が流された」と空港の歴史を振り返った上で、「地域との共生は成田に空港がある限り永遠の課題で、公団当時と同様、真摯に取り組む」と宣言した。
 空港公団の民営化は、政府全額出資の特殊会社で同日からスタート。07年には株式上場を予定し、その後、政府保有株を順次放出していき、すべて放出後の完全民営化を目指している。

【本誌の解説】
 民営化した成田空港に関して、新聞報道などの最大の焦点は利用料の値下げと暫定平行滑走路の2500メートル化になっている。また、このことは、日本経済の浮沈を握るものとして理解されている。日本が旅客と物流のアジア地域のゲートウェイを確保できるか、それを韓国の仁川、中国の香港、上海などに奪われるのかを決するものとしてある。
 成田空港を取り巻く環境は、厳しいものがある。対外競争だけでなく、09年の羽田国際化、05年の中部国際空港の開港などもある。成田空港が黒字になるか、赤字に転落し、利用料の値下げができるか不可能になるかの決め手は暫定平行滑走路の2500メートル化にある。それも北側延伸による2500メートル化では形だけのものとなり、ジャンボ機の運航はできない。成田空港が黒字化するためには、あくまで南側の2500メートル化によって事実上3300メートル滑走路にすることが絶対条件である。
 しかし、それは不可能である。そのために黒野新社長は、成田の使用料の値下げについて「避けて通れない問題だ」としながらも、「1年を経過して判断したい」と述べただけで、明言を避けた。値下げなど到底ありえないという判断である。
 民営化すれば、総収入約1500億円の中から、政府への返済金が毎年111億円、さらに租税負担が70億年ほど支出項目に加わる。その一方で返済義務のない「真水」の政府予算が約100億円以上が、民営化によってなくなる。そのために、300億円前後の増益にならない限り黒字化は不可能なのである。このままの成田空港のあり方では赤字は確実なのである。これを突破する道は、平行滑走路でジャンボ機が飛べるようにするしかない。暫定滑走路の2500メートル化(南側延伸=実質3300メートル)が、成田空港の命運を決するのである。
 2500メートル化の展望が1年後に開けるとは黒野社長も考えてはいない。そのためか黒野社長はこの間、きわめて乱調気味である。2月の定例記者会見では、暫定平行滑走路の2500メートル化を決定する地権者対策はどうなっているのかの質問に「用地取得を報道陣に時々刻々と報告する義務はない。水面下で進んでいる」と語気を荒げたらしい(3/31毎日新聞特集記事から)。水面下で用地対策が進展していないから、いらついているのである。用地取得が無理ならば、「北延伸」での2500メートル化しかない。記者会見で「北延伸」の判断の時期を執拗に聞かれ、切れたのである。
 成田空港が黒字化できない最大の理由は、年間100億円の警備費と150億円の地元対策費だと言われている。計250億円。これは他の空港の警備費、地元対策費の10倍近い水準だ。これだけの資金があるならば、「東京湾の真ん中にもう一つの空港をつくった方が安あがりになる」とまで成田民営化法案の国会審議で言われたのである(3/31産経新聞特集記事から)。国土交通省は東京湾の真ん中ではないが、それと同じ理由で、羽田空港4本目の滑走路建設を急いでいるのである。成田空港は、民営化によって廃港に一歩近づいたようである。

(4月4日) 反対同盟が団結花見会

 反対同盟は春恒例の団結花見会を三里塚第一公園で行った。満開となった桜が咲き乱れる会場には、動労千葉をはじめ首都圏から多くの支援・共闘団体が参加し、ジンギスカン鍋を囲みながら交流を深めた。主催者を代表して北原鉱治事務局長は「風雪38年目の花見会。反対同盟は健在です。英気を養って今年も頑張ろう」と挨拶した。(詳しくは本紙次号参照)

(4月4日) UA機が緊急着陸(4/5東京千葉版)

 4日午後2時ごろ、成田空港から約15キロ南の上空で、バンコク発成田行き米ユナイテッド航空838便ボーイング747−400型機(乗員乗客364人)の計器に、貨物室での火災が表示された。同機は同空港への緊急着陸を要請。間もなく無事着陸し、乗員乗客にけがはなかった。
 国土交通省成田空港事務所などによると、誘導路に停止した同機を点検したところ、異常はなく、計器の誤作動と判明した。
 空港はテロ対策で厳戒態勢が敷かれており、滑走路には一時、消防車が出動し待機した。同機はけん引車で駐機場に運ばれ、A滑走路は17分間閉鎖された。

【本誌の解説】
 単なる誤作動であったと整理され、事故にはなっていない。しかしこれが大事故に連なるのである。火災表示の誤作動であったとしても、それは整備不良によるものか、ハードが不良品であることが原因である。多くは整備不良である。米航空業界も過当競争で、整備と安全性には十分な経費をあてていない。成田の航空機整備施設とそのあり方も人員削減で極端に悪くなっているという。

(4月5日) 米軍・空自訓練空域、民間機の通過可能に(4/5朝日夕刊)

 民間航空機の航空路を狭めている自衛隊機や米軍機の「訓練空域」について、国土交通省は訓練が行われていない時間帯に民間機が通過できるようにする制度の概要をまとめ、防衛庁や米軍と最終調整に入った。防衛庁と米軍の職員が、05年に同省が新設する管制センターに常駐、訓練のない年間約120日について、利用できる空域や時間帯の情報を事前に受け取り、航空各社に連絡する。民間機の飛行時間の短縮や燃料節約に加え、異常接近(ニアミス)事故の一因でもある「空の混雑」の解消も図れるという。 
 新制度では、05年10月に運用を開始する航空交通管理センター(福岡県)で日本周辺の空域を一元管理する。ここに常駐する自衛隊と米軍の職員から、国交省の管制官が、前日までに自衛隊の訓練空域や米軍以外の飛行を禁止する制限空域の使用状況について説明を受け、通過可能な空域を設定、航空各社に周知する。 
 この結果、航空各社は離陸準備前に最短距離の経路を設定できることになる。訓練空域を避ける必要がなくなるため、「混雑空域の安全性も高まる」(同省航空局)という。防衛庁も米軍も、同省の提案に前向きだという。 
 航空各社の試算では、羽田と九州・沖縄を結ぶ路線では片道10分前後短くなり、年間の燃料費で約30億〜20億円が節約できるという。 
 現在、民間機は訓練空域を避けるために日本上空をジグザグに飛行している。例えば羽田発那覇行きは、静岡県焼津沖で自衛隊空域を避けるため、いったん沖合に抜ける。一方、韓国・釜山から成田に向かう便は日本海上の自衛隊空域を避けるため、島根県上空付近から焼津に向かう。このため、焼津沖は羽田発着便と成田発着便の一部が交差する有数の混雑空域になっており、01年1月には日航機同士のニアミス事故が発生、乗員乗客計100人が重軽傷を負った。 
 国交省によると、自衛隊は週末や盆休み、年末年始には訓練がなく、新制度では年間約120日は訓練空域を通過できることになる。航空各社は「訓練がないのは利用客が多い繁忙期で、新制度の効果は大きい」と期待している。 

【本誌の解説】
 この2〜3年間、米軍は軍事空域の日本の民間機に、軍事行動、訓練などに支障がない限りにおいて解放しつつある。その代表的な例が訓練行動のないウイークエンドなどの休日の解放である。しかし、これは米軍や自衛隊が民間機に譲歩しているということではない。
 むしろ、米軍、自衛隊の軍事管制が強化された結果である。日本の空域は戦後、まず、米軍軍事空域が優先的に設定された。そのあいた領域に民間機の空域と自衛隊の空域が折り重なっている。米軍横田空域と自衛隊百里空域が関東の空域の大半を占めている。その最大の悲劇が、1971年に岩手県雫石町上空でおこった、全日空機と航空自衛隊の戦闘機が空中衝突し、全日空機の乗員乗客162人が死亡した「雫石事故」である。この事故を契機に再発防止を目指して「軍用機と民間機の完全分離」が閣議決定された。その後、軍事空域はそのまま確保され、民間機は軍事空域には進入はできなくなった。しかし、05年から、航空交通管理センターで日本周辺の空域を一元管理することとなった。ここは国交省の管制官が管制する。しかし、自衛隊と米軍に全面的に従うことが義務づけられている。むしろ、日本の上空の空域は米軍と自衛隊に完全に支配されているのである。また、有事体制は首相の権限で特定公共施設(空港等)や通信は米軍と自衛隊が優先的に使用できるようになる。その結果、軍事優先の原則の中で民間機が軍事空域に進入できるのである。また、有事には民間空域も軍用機が優先的に使用できるようになってきたのである。

(4月5日) テロ警戒 小泉首相が成田空港視察(4/6各紙全国版、朝日千葉版、千葉日報)

 小泉純一郎首相は5日午後、国際的なテロの拡大を受けて、テロ警戒態勢を強化している成田空港を訪れ、不審者の入国や危険物の持ち込みを阻止する「水際対策」の現場の警備状況を視察した。‘
 テロ警備に取り組む政府の姿勢をアピールするのが狙い。首相は視察後、記者団に「一般の国民には若干迷惑な面もあるだろうが、安全のためにはやむを得ないと協力をいただきたい」と説明。「万全を期しても巧妙な者もいる。全部阻止するのは難しいと痛感した」と述べ、厳しい検査を続ける必要性を強調した。
 成田空港は2001年9月の米中枢同時テロ以降、「フェーズE」と呼ばれる最高レベルの警戒態勢が敷かれ、イラクヘの自衛隊派遣に伴って今年1月には「空港危機管理官」を配置している。
 首相は、ペットボトルを置くだけで中身が可燃物かどうか識別する「可燃物検知装置」に「大したもんだ」と感心した様子。税関検査では、爆発物探知犬が床に並べた7個のスーツケースから火薬の入ったケースを探し当てる実演を視察し、訓練方法などを職員に矢継ぎ早に質問をしていた。
 首相は記者団に「皆さん非常に緊張感を持って警察、入管、税関が連携を取ってやってくれている」と強調した。
 官邸から成田空港まではヘリで往復した。

【本誌の解説】
 スペインの3・11派兵弾劾列車ゲリラ戦闘から、日本でのゲリラ戦の炸裂も現実化してきた。その最大のターゲットは、新幹線か成田空港と予想されている。小泉首相を迎えたのは機関銃を装備した銃器対策部隊と防護服をきたNBC(核・生物・化学)テロ対策部隊である。さながら、成田は戦場であったとのことだ。
 成田空港を首相が公式に視察したのは、開港以来初めてである。これは、ゲリラ戦を未然に防ぐ有効な手段がないといわれている中での精一杯の国民へのアピールである。首相自身も「全部阻止するのは難しいと痛感した」と述べている。日本での自衛隊派兵弾劾、撤兵要求ゲリラの現実性を政府が認識しているということである。
 また、入国管理のエスカレーションが検討されている。米国では短期滞在者にも指紋採取を義務づけようとしているが、日本も同じことを検討しているのである。

(4月6日) 東峰地区騒音/最大110デシベル記録/成田市、空港の測定終了

 成田市は、暫定B滑走路南端の東峰地区での騒音測定を3月末で終了した。同地区には空港反対派農家が住み、離着陸する航空機が上空約40メートルを飛行していることから、最大で110デシベルを記録したという。
 調査は02年4月の同滑走路供用開始にあわせ、騒音被害を把握するために始めた。騒音のひどさが確認できたことから、開始から2年の節目に終えることを決めたという。同市は調査記録をまとめている。

【本誌の解説】
 騒音の大きさの例として、通常はその最大値が120デシベルとされており、「航空機のエンジンの近く」となっている。その次の110デシベルが「自動車の警笛(前方2メートル)」、100デシベルが「電車の通るガード下」となっている。そして「騒々しい工事の中」(90デシベル)、「地下鉄の車内」(80デシベル)となる。生活騒音の最大値が100デシベルで電車の通るガード下となっている。つまり東峰地区は、生活する環境としては日本で最大値の騒音地域になる。
 成田空港会社は、この騒音を顧みることなく、北側への再延伸計画を予定している。成田市は、この騒音地獄の記録を取ることを終了するとしている。これは、成田空港の現実と北側延伸計画と容認していることになる。

(4月8日) 航空管制システム一時ダウン、全国でダイヤ乱れる(4/9朝日、読売、日経、産経)

 8日午後7時10分ごろ、国土交通省の東京航空交通管制部(埼玉県所沢市)の管制システムが一部ダウンし、断続的に管制画面に航空機の便名や高度などの情報が表示されないトラブルが発生した。
 同管制部では安全確保のために、羽田空港などで航空機の離着陸を通常より長い5〜20分間隔で行った。システムは午後9時32分に復旧したが、トラブルの影響で全国で計120便に遅れが出た。
 トラブルが発生したのは、管制システムの中で「航空路レーダー情報処理システム」(RDP)と呼ばれる装置で、レーダー情報をもとに、航空機の便名、高度情報、目的地などを管制画面に表示する。国交省によると、トラブルはシステムのソフトウエアの不具合が原因とみられている。
 RDPは午後8時5分ごろまでに4回にわたってダウン。同管制部では運用をRDPの予備機に切り替えたが、予備機では空域間の管制引き継ぎが自動的に行われないため、管制作業に時間がかかり、離着陸に遅れが出た。
 同管制部では昨年3月、管制システムのうち「飛行計画情報処理システム」(FDP)がダウン。全国の運航情報がストップするトラブルが発生している。

【本誌の解説】
 空域とその管制問題でのトラブルがこの間、多発し、裁判にもなっている。人為的ミスとコンピュータなど機械のミスの2つがあるが、空域、管制問題の最大の問題点は軍事空域優先でつくられていることにある。ここから、民間航空機管制のミスが多発するのである。軍用機の運航は民間機の10倍以上の安全性で運航されている。そのしわ寄せが民間機に集中することになる。過密な運航計画になっている。それに比べ、軍用機は広大な空域で安全に絶対にミスがおこらないように運航されている。イラク戦争の激化と朝鮮情勢の緊迫で軍事優先は航空業界でははっきりしており、そのために民間機の大事故は必ず起こるといわれている。

(4月9日) 貨物ビル用地に県の土地を購入(4/9朝日千葉版)

 千葉県企業庁は、成田空港近くの成田市駒井野に所有する土地5・9ヘクタールを成田国際空港会社(NAA)に売却した。NAAは同空港での貨物輸送の拡大を見越し、今後、運輸会社が貨物の仕分け作業などを行うビルを建設する予定だ。売却額は土地代に造成費が加えられているが、公表されていない。
 同庁はこの場所に計14・8ヘクタールの土地を所有し、隣接するNAAの所有地9・2ヘクタールとあわせて造成してきた。今回売却した5・9ヘクタールは第1期として分譲した土地。残りは07年度までに造成を終え、NAAに売却する計画という。

【本誌の解説】
 成田空港の貨物基地としての機能はますます充実するようだ。09年に羽田が本格的に国際化する中で、成田の生き延びる道は欧米便と貨物空港の道しかないからである。いままで航空業界の中で、成田空港の位置は太平洋の西端にあり、特殊に有利な位置にあった。それは、ジャンボ機が米国東海岸から中国などアジア大陸への直行運航ができず、給油の必要性から、成田や米国西海岸を経由するしかなかったことである。
 しかし、2001年3月から、米国東海岸から中国大陸へ直行便運航が始まった。コンチネンタル航空は、B777−200IGW型機で、ニューヨーク空港・香港間の直行便を運航している。これがその時の、世界最長のノンストップフライトだった。ユナイテッド航空が1カ月後に、それより3キロメートル長いジョン・F・ケネディー空港・香港間をB747−400型機で運航を開始した。香港のキャセイパシフィック航空もA340−300型機で参入している。
 ノースウエスト航空は、いまでも、成田空港をアジアのハブ空港としている。具体的には、ジャンボ機で東南アジア各都市を早朝に出発し、成田に昼過ぎに到着、その日の夕方には米国の各主要都市に向けて飛び立つのである。ノースウエスト航空は、成田空港を東南アジアでの重要なハブ空港として使っている。
 しかし、ユナイテッド航空やコンチネンタル航空は、「ハブ空港は要らない。乗客は目的地まで乗り換えなしで行けることを望んでいる」とノースウエスト航空の成田空港ハブシステムに対抗している。この勝敗は明らかである。トランジットの時間は、5〜6時間であり、その分、時間が短縮されるからである。
 かつて日本から欧州便の半分以上は、旧ソビエト上空を避けて、アラスカのアンカレッジ空港で燃料補給を受け、北極上空を通って運航されていた。しかし、航空機の性能と旧ソビエトの崩壊もあり、北回り欧州便は直行便が多くなった。貨物便は重量が重く途中給油が必要なので、アンカレッジ空港を使っている。そのため、アンカレッジ空港は貨物専用空港に近い状態になっている。
 このアンカレッジ空港と同じように、香港などからのアジア便の途中給油のトランジット便は成田空港では基本的にはなくなるであろう。また東京−アジア便は羽田に移行する。それは成田空港にとってかなりの数の減便となる。3分の1ともいわれている。そのためか、成田空港は貨物中継地区としての整備に全力をあげているのである。

(4月14日) 元熱田派呼びかけで江藤氏慰労(4/15朝日、読売各千葉版)

 運輸相だった1990年1月、成田空港に反対する空港反対同盟熱田派と直接会談し、成田空港問題の話し合い解決を前進させた江藤隆美・元衆院議員(79)を「囲む会」が14日、成田市内のホテルで開かれ、江藤氏、当時の公団・県職員と元熱田派のメンバーらが思い出話に花を咲かせた。
 江藤氏は89年12月、熱田派が提出した公開質問状に、「地元への説明不十分が問題長期化の原因であることを率直に認め、遺憾に思う」と回答。66年の空港建設閣議決定以来、初めて公式に国の誤りを認めた。翌年1月、熱田派と直接会談して「話し合い路線」へ転換する契機を作り、その後の「成田空港問題シンポジウム・円卓会議」へとつながった。
 「囲む会」は、昨年10月に衆院議員を引退した江藤氏を慰労しようと、元熱田派のメンバーらが呼びかけて開催。元熱田派事務局長の石毛博道さん(54)、元同派幹部の堀越昭平さん(75)ら約30人が出席した。
 石毛さんは「(江藤氏は)成田問題の最大の功労者。ねぎらういい記念になった」と話した。堀越さんは「我々農民をこれ以上いじめないでくれ」と土下座した会談時以来、14年ぶりに江藤氏と再会。「そんなに前のこととは感じないが」と感慨深げだった。

【本誌の解説】
 脱落派の石毛博道氏らの三里塚闘争に対する裏切りと敵対は許すことは決してできない。脱落派は90年決戦過程で完全に敗北主義に陥った。脱落派は、成田治安法による団結小屋の封鎖・撤去と90年天皇決戦での破防法適用による党派の非合法化によって三里塚闘争は何も得るものもなく敗北すると考えたのである。そのために「三里塚闘争の歴史をなんとか後生に残したい」と千葉大の村山教授、東京大学名誉教授の隅谷三喜男氏に泣きつき、89年に成田に来た江藤衆議院議員に政府との話し合いを申し入れた。その結果、脱落派と政府による「話し合い」である公開シンポジウム・円卓会議にこぎつけた。
 しかし、この「話し合い」によっても、反対同盟は屈することなく、三里塚闘争は継続し発展してきたのである。それが今日の日本の航空政策、空港整備計画を完全に破たんさせた。国土交通省も成田空港を中心とする「ハブ・アンド・スポーク」論、すなわち成田空港をアジアの国際ハブ空港にするという考え方を変更させたのである。いまや日本の空港はアジアの周辺諸国の空港に追い越され、経済競争的にも窮地に陥っている。
 成田空港建設推進派に転落した脱落派の石井新二、島寛征、相川勝重(芝山町町長)、石毛博道などは、いまや空港関連の利権屋に転落している。現在、成田空港は民営化されたことによって、そのような利権屋集団との関係を極力排除している。そのために、石毛博道などがあらたな利権にありつくためにこのようなパーティーを開催したのではないか。

(4月16日) 反対同盟/空港軍事使用で成田市などに公開質問状(4/17朝日、毎日各千葉版、千葉日報)

 イラク復興支援に伴い自衛隊先遣隊の成田空港の利用を「軍事利用」として、周辺自治体などに抗議・中止を求めていた三里塚・芝山連合空港反対同盟(北原鉱治事務局長)は16日、「軍事利用にあたらない」とした成田市などの回答を不服として、回答の根拠と見解を求める公開質問状を提出した。
 同空港の建設反対を掲げる反対同盟は先月22日、成田市や富里市など成田空港圏自治体連合協議会の2市6町1村に対し、成田空港の軍事使用の禁止などを求める要望書を提出した。各自治体は先月末までに「空港の利用はイラク復興のための人道支援が目的で、軍事使用にはあたらない。政府・空港公団(現成田国際空港会社)に抗議しない」などと回答した。
 これに対し、反対同盟は「国際法で自衛隊は軍隊として扱われ、自治体が成田空港の利用を容認することは住民の安全を守るべき責任を放棄している」と反発。公開質問状で、「国際社会で自衛隊は軍隊」との認識があるか、軍隊の移動は軍事行動、施設使用は軍事使用ではないか、などを問いかけており、今月27日までの文書回答を求めている。

【本誌の解説】
 反対同盟がに3月22日に、成田市などに成田空港の軍事使用禁止を求めて要望書を提出した(04年3月22日付日誌を参照)。その回答の要旨は以下のとおりであった。
 自衛隊の派遣はイラク復興のための人道的支援を目的としたものと聞いており、成田空港の軍事使用にはあたらないと思っている。抗議はしない。
 成田空港の軍事使用については、歴代の運輸大臣や政府答弁で、軍事使用はありえないとされている。よって今後も軍事使用はありえないと考えている。政府・空港公団に確約させることはしない。
 警備は航空旅客の安全確保のために行われていると聞いており、軍事使用のための警備ではないと考えている。

 この解答は、反対同盟としては認めることのできない内容であった。とりわけ、今通常国会に有事立法関連7法案、3議定書・協定承認案が提出され、そのうちの交通・通信利用法案では、成田空港は、有事とその準備段階に米軍・自衛隊による優先的使用が認められることになる。また米軍行動円滑法案の土地収用などの項目で「首相は緊急時に米軍に提供するため、土地、家屋を使用することができる。家屋の形状を変更も可能、国は土地などの使用による損失を補償」と規定されている。つまり、成田空港を米軍に使用させ、米軍が滑走路を長くしたいと首相に要請すれば、家屋の変更、土地の使用もできるようになる。つまり、米軍の要請として滑走路の延長が法的規制にとらわれることなく、私有権を無視できるようになる。このような成田空港の軍事使用に反対するために、成田市などの成田空港圏自治体連合協議会を構成する2市6町1村に対し公開質問状を提出し、記者会見を行った。

 以下は成田市に提出した質問状(他の市町村も基本的に同じ内容)。
 
■公開質問
成田市長・小林攻殿
三里塚芝山連合空港反対同盟事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115
 自衛隊による成田空港の軍事使用に抗議し今後軍事使用しないとの確約を求める旨の3月22日付け要望書に対する回答書を受け取りました。しかしその内容は到底承服できるものではありません。あらためて当空港反対同盟の見解を述べるとともに質問します。

 要望内容と回答の要旨
1.自治体として政府・空港公団に対して、自衛隊による成田空港の軍事使用に抗議すること
 (回答)
 自衛隊の派遣はイラク復興のための人道的支援を目的としたものと聞いており、成田空港の軍事使用にはあたらないと思っている。抗議はしない。

2.今後、成田空港の軍事使用を一切行わない旨、政府・空港公団に確約させること
 (回答)
 成田空港の軍事使用については、歴代の運輸大臣や政府答弁で、軍事使用はありえないとされている。よって今後も軍事使用はありえないと考えている。政府・空港公団に確約させることはしない。

3.軍事使用のための異常警備をやめさせること
 (回答)
 警備は航空旅客の安全確保のために行われていると聞いており、軍事使用のための警備ではないと考えている。


 回答書に対する当空港反対同盟の見解と質問

(1)「自衛隊の派遣はイラク復興のための人道的支援を目的としたものと聞いており、成田空港の軍事使用にはあたらない」について
 国際法において自衛隊は軍隊として取り扱われており、イラクと世界の人々は自衛隊を軍隊とみなしています。4月8日に発生した邦人拘束では自衛隊が軍隊であるとして、その即時撤退を要求しています。
 回答書は、その目的を「人道的支援」としていることをもって軍事使用ではないとしていますが、イラクと世界の人々は自衛隊のイラク派遣を日本軍による米英占領軍支援として受け止めています。軍隊としての自衛隊による施設使用は軍事使用です。スペイン軍のイラクからの撤退を求めたマドリードの列車爆破事件は成田空港と決して無縁ではありません。成田空港の軍事使用を容認することは、住民の平和と生存を守るべき自治体としての不作為と責任放棄にあたるものと考えます。

(2)「成田空港の軍事使用については、歴代の運輸大臣や政府答弁で、軍事使用はありえないとされている。よって今後も軍事使用はありえないと考えている。政府・空港公団に確約させることはしない」について
 今通常国会で審議中の有事関連法案には、成田空港の軍事使用を制度化する法案が盛り込まれています。交通・通信利用法案で、特定公共施設としての成田空港は、有事に米軍・自衛隊による独占的使用が認められます。10年前の1994年、米軍は朝鮮戦争を想定して成田空港の独占的使用を日本政府に要求しました。有事法制は成田空港を50万来援米軍の兵站拠点とする作戦計画を法制化するものです。
 これらの動きは「成田空港を軍事使用しない」とする政府の公約に反するものであり、「今後も軍事使用はありえないと考える」とする回答書の認識の誤りを示すと考えます。

 以上の見解に基づき以下質問します。
 1、「国際社会において自衛隊は日本の軍隊である」との認識を持っているか否か。
 2、「軍隊の部隊移動は軍事行動であり、その施設使用は軍事使用である」との認識を持っているか否か。
 3、自衛隊による空港使用の継続が成田空港に対する攻撃を招かないとする保証はあるか。
 4、「成田空港の軍事使用はありえない」とするならば、自治体として有事関連法案による成田空港軍事使用の法制化に反対すべきではないか。議会等に反対決議を提案すべきではないか。有事関連法案による成田空港軍事使用の制度化に賛成するならその理由を明らかにされたい。

 4月27日までに誠意ある回答を求めるものです。なお、標記のとおり、この質問状は公開とし報道各社に公表しますのでご承知おき下さい。

2004年4月16日

(4月16日) 成田空港地域共生委/歴史伝承部会移管で初会合(6/17毎日千葉版)

 成田空港の運用や環境への影響を監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」(共生委)内の組織「歴史伝承部会」が、別法人への移管に伴い「歴史伝承委員会」と名称を変更、第1回会合が16日、聞かれた。共生委の代表委員で、歴史伝承委顧問の山本雄二郎・高千穂大客員教授は「従来通り反対運動の記録を後世に残すべく委員万全力を尽くしていきたい」と話した。
 運営資金は、新東京国際空港公団が間接的に出資してきたが、公団が今月、成田国際空港会社になったことから、従来通りの出資が「寄付行為」にあたることに。そのため、同社は財団法人「航空科学振興財団」に委員会の運営業務を委託した。
 この日の会合では、移管の経緯ほか、今後の事業計画などを話し合った。

【本誌の解説】
 共生委員会への成田空港会社の資金提供が縮小する中で、歴史伝承部会は共生委員会から切り離されたものである。そもそも共生委員会は第三者機関と呼べるものでない。住民の中にある空港反対、騒音反対を騒音対策費のばらまきで空港賛成派に買収するものとして、公開シンポジウム、円卓会議の経過の中でできた機関である。しかし、空港が民営化される中でそのような住民対策費も削減されるようになった。そのために、今後は航空科学振興財団に運営とその財源を求めるようだ。しかし、空港関連の資金で空港反対運動の歴史と記録が正しく残せるはずもないのである。

(4月19日) 横田基地 民間機、1日に十数便/横田基地共用 米に提案へ(4/20読売)

 米軍横田基地(東京都福生市など)の軍民共用化を検討する東京都と国土交通省、外務省、防衛庁など関係省庁との連絡会は19日の会合で、当面は1日十数便の民間機を運航するなどとした日本側の計画案をまとめた。政府は米国側に計画案を提案し、本格的な協議を始める。
 計画案の中で、飽和状態に近い首都圏の空港事情を解消するため、横田基地を成田空港や羽田空港を補完する空港と位置づけた。運航させる民間機を国内便に限るか、国際便にも広げるかは、今後の検討課題とした。
 ターミナル施設や交通アクセスの整備、騒音対策については、地元の意見を聞きながら検討していく。
 横田基地の返還は、石原慎太郎都知事が初当選した1999年の都知事選で公約した。石原知事は経過措置として、民間航空との共用化を日米両政府に求めてきた。ブッシュ大統領も昨年5月の小泉純一郎首相との日米首脳会談で、「実現可能性について検討する」と表明している。
 連絡会は都と関係省庁の事務担当者で構成。昨年12月、初会合を開き、今回は3回目。

 【本紙の解説】
 横田基地の民間機使用は日本側の提案であり、最終的にどうなるか分からない。しかし、米国と米軍の考え方ははっきりしている。軍事行動と軍事演習に支障がない限り、空港は軍民共用にする方針である。現在、国会審議されている有事7法案と3協定・条約承認案のアクサ(ACSA)や米軍行動円滑化法案、交通・通信利用法案で明らかなように、米軍は有事とその準備段階に日本の施設、交通手段を全面的に軍事使用することになる。また、米軍専用基地でも軍事物資と兵員輸送には民間機を使用する。すでに横田では航空貨物会社のフェデックス(米軍の軍事輸送を請け負っていたフライング・タイガーの後継会社)の貨物機が定期的に運航されている。民間パイロットにも横田のような軍事専用空港に慣れてもらった方がいいということである。
 朝鮮侵略戦争の際、成田空港が戦域兵站の軍事的起点になるといわれているが、その理由は米国の民間パイロットがもっとも慣れている空港ということである。軍事空港の民間機への「解放」とは、逆にすべての民間空港の軍事化であり、民間航空機とパイロットの軍事使用の布石ということである。

(4月19日)空港閉鎖・運航中止も視野に、テロ警戒レベル拡大へ(4/20日経、4/21読売夕刊)

 航空機や空港設備に対するテロ対策を強化するため、国土交通省は19日までに、空港などで現在取られている最高レベルの警戒措置「フェーズE」を常態化し、さらに厳しいレベルを設ける方針を決めた。風岡典之事務次官は同日の定例記者会見で「空港については最高レベルのフェーズEで対応しているが、最近の保安状況は厳しいものがある。追加的措置が必要になる」と述べた。
 警戒基準は、平時の「フェーズ1」、緊迫時の「フェーズ2」、非常事態の「フェーズE」の3段階。2001年9月の米同時多発テロ以降、フェーズEが続いている。
 あらたな基準は、特定の空港施設や航空機に対するテロ情報があった場合などに対応できるようにするといい、国際民間航空機関(ICAO)が策定した基準に沿うものになる見込み。現在、国交省と航空関係者の間で、具体的な措置内容について検討している。

 【本紙の解説】
 フェーズEの「E」はイマージェンシーのことであり、緊急事態、非常事態である。この非常事態を「フェーズ1」として常態化し、そのうえで厳重警戒レベルの「新フェーズ2」と最高警戒レベルの「新フェーズ3」を新設するという。
 具体的対策は発表されていないが、「新フェーズ3」では、特定の空港や航空機へのテロ攻撃が濃厚な状況と想定し、運航中止や空港閉鎖などの対応を講じるようだ。
 9・11の反米ゲリラ戦闘以降、空港や航空機の軍事的防衛と警戒が軍事の第一級の課題として浮上してきた。つまり、空港はいまや軍事、民間を問わず、最大の軍事出撃拠点であり、防衛拠点になっているのである。
 朝鮮侵略戦争において、成田空港を中心に米本土から50万人の兵員が来日し、軍事行動を起こすことになっている。そのために、日本における最大のターゲットは成田空港となるのである。いまや成田空港は民間空港で軍事使用はしないという政府答弁を反古にして、小泉政権は民間空港の軍事使用を全面的に推し進めようとしている。三里塚闘争は成田空港の軍事使用反対を闘争当初から掲げてきた。いまこそ、このスローガンを高く掲げ闘いぬこう。

(4月21日) 芝山鉄道/利用者100万人突破、1年半がかり(4/22朝日、毎日各千葉版、千葉日報)

 成田空港の建設に伴い、地元への見返り策として02年10月に開業した芝山鉄道(梅田昭文社長、京成東成田駅―芝山千代田駅間、営業2・2キロ)の利用者がこのほど、100万人を突破した。開業当初は半年で達成する見込みだったが、利用客が伸びず、1年半がかりの大台突破となった。
 同鉄道は、1日あたりの平均利用者について、空港に勤務する関係者約4000人に芝山町民を含めた約5400人と試算し、半年で100万人突破を目標にしていた。しかし、自家用車の利用などで客足は伸びず、1日あたり約1800人に低迷。昨年度の決算で約4億円の赤字が見込まれている。
 今月から株式会社化した成田国際空港会社の子会社にあたる同鉄道は、営業の改善が課題。毎週金曜に芝山千代田駅で地元の農産物などを即売する「芝山金曜元気市」を開いており、同社幹部は「100万人突破も素直に喜べない。集客のため社内でさまざまなアイデアを話し合っており、ウォークラリーのようなものを検討している」と話す。

【本誌の解説】
 芝山町にとって悲願の芝山鉄道であったが、芝山町の町民はほとんど乗らない。その理由は、芝山町は農業が主要産業であり、町民の大半が通勤はしないからである。通勤するにしても、そのほとんどがマイカー通勤になっている。また、芝山町の会社や工場などに通勤する人もマイカー通勤がほとんどである。それは、芝山千代田駅から会社までがバスであり、不便だからである。
 また芝山鉄道の料金の高さもその理由である。2・2キロで190円というのも高いが、これは芝山千代田駅から東成田駅までの料金である。この区間だけを利用する人は基本的にいない。成田駅までは東成田駅から乗り継ぎで京成電車区間をのることなる。東成田―成田間は250円である。したがって芝山千代田駅から成田駅までは片道440円、往復880円になる。これではあまりにも高い。ほとんどの人が車を利用するのもうなずける。
 芝山鉄道を利用している人の大半は、整備地区に勤務する空港関係者が中心である。芝山鉄道利用者が増加する要因は当面ない。問題は年間4億円の赤字の補てんをだれがするのかいうことにある。芝山町の人口は約8000人である。1人あたり年間5万円の負担である。一軒あたりだと平均約20万円になる。いま直ちに廃線にした方が、芝山町民のためではないか。

(4月26日) 堂本千葉県知事 県収用委復活「慎重かつ大胆に」(4/27朝日、読売、日経各千葉版、千葉日報)

 88年11月以来、機能停止状態が続く県収用委員会について、堂本暁子知事は26日、機能復活を「慎重かつ大胆に考えたい」と発言した。この日、県庁であった各市町村長との懇談会の中で、質問に答えた。関係者の身の安全にかかわる問題だけに、堂本知事は「今は何も検討していない」と念押しして、誤解しないよう求めた。
 八千代市の豊田俊郎市長が「第2湾岸道路をはじめ、今後の道路問題を考えると、県収用委員会の問題を果たして避けて通れるのか。知事が政権継続するのであれば」と質問した。
 堂本知事は「収用委員会については同感だ。どれだけ不便を被っているか。慎重かつ大胆に考えたい。具体的なことは言えない」と応じた。
 会合後、報道陣に対して堂本知事は「いつまでも慎重のままではいられないという意味で、その時が来れば大胆にやるということだ。今はその時期ではない」「検討はしていないが、聞かれても『ノーコメント』でやっていくよりしょうがない」と説明した。
 成田空港の土地問題を担当してきた県収用委をめぐっては、88年9月21日、当時会長だった小川彰弁護士(03年2月に死亡)が歩いて帰宅中、千葉市内の路上で数人に鉄パイプなどで襲われる事件が発生。
 88年11月に小川氏を含む委員と予備委員計9人全員が辞表を提出して以来、事務局はあるが機能停止状態だ。襲撃事件では、中核派の活動家が強盗致傷容疑で逮捕され、同罪で起訴されたが、今年3月に東京地裁で無罪判決が出ている。

 【本紙の解説】
 堂本知事のこの発言は収用委員会の再建策動である。「慎重、大胆にやる」とか、「その時期でない」と矛盾したことをいっているが、その真意は収用委再建の準備を始めたことにある。三里塚闘争の歴史があって、つまり理由があって千葉県収用委員会の不在がある。国家権力による私有地の暴力的取り上げを法律化したのが土地収用法であり、それを発動させるのが各都道府県にある収用委員会である。土地取得に暴力を発動しないことの確実な担保として千葉県収用委員会は再建されていないのである。その後、すでに16年を過ぎているが、支障はない。
 また、例に出される圏央道などは建設自体に問題がある。そのために土地を手放さない人がいるのである。公共事業がまっとうなものであり、その手続きが適正であれば、土地は当然にも提供するであろう。千葉県はここ30年間、乱開発のために自然破壊と生活破壊が急速に進んだ。それゆえ、収用委員会は不在の方がいいと言える。
 堂本知事が県収用委員会の再建を行うのであれば、千葉県と三里塚闘争との全面的対決になるであろう。反対同盟と三里塚闘争はこの堂本知事の県収用委員会の再建策動を決して許さないであろう。

(4月27日) 知事収用委発言で 黒野NAA社長が明言/「強制的手段はとらない」(4/28朝日千葉版、千葉日報)

 委員不在の県収用委員会をめぐり堂本暁子知事が「慎重かつ大胆に考えたい」と再建に含みを持たせた発言をしたことについて、黒野匡彦NAA(成田国際空港会社)社長は27日、「成田空港に関しては、強制的手段をとらないという約束を破るつもりはない」と、話し合い解決をめざした円卓会議の合意事項を順守する意向に変わりはないことを強調した。
 知事発言について黒野社長は、新聞報道を前提に「過去の経緯で県の各種事業に大変ご迷惑をかけたことは厳然たる事実だが、成田空港については強制的手段をとらないことを約束している」との認識を示し、道路建設をめぐる発言内容にふれて「空港以外の事業でどういう対応されるかは知事のご判断と思うが、(成田空港の建設で)私たちが地域の方々と交わした約束を破るつもりは全くない」と明言した。

 【本紙の解説】
 黒野社長の「成田空港に関しては、強制的手段をとらないという約束を破るつもりはない」という発言は、ウソである。すでに天神峰の反対同盟現闘本部の明け渡し請求の訴訟を起こし、強制手段での撤去を計画している。また、土地収用法ということであれば、成田空港建設に関する事業認定は失効しており、土地収用法による強制手段は百パーセントできない。
 しかしながら、黒野社長は、堂本知事の収用委員会の再建発言に関して、空港以外は知事の判断であるが「成田空港の建設で、私たちが地域の方々と交わした約束を破るつもりは全くない」と明言している。そもそも、 土地収用法による土地取り上げは法律的に不可能なのであり、「約束を守る」とか「約束を破る」とかの選択肢はないのである。そうした選択肢があるかのように言い、成田はやらないと明言することは、堂本知事の県収用委員会の再建を促進する役割を果たしているのである。

(4月27日) 成田市 反対同盟の「成田空港の軍事使用に対する第2回申し入れ」への回答

 反対同盟は4月16日に、成田空港の軍事使用問題で、成田市などに公開質問状を出していたが(04年4月16日付日誌を参照)、その回答が4月26日付で成田市から届いた。他の自治体も回答をそれぞれ寄せているが、ほぼ同じ内容である。
 有事関連法の特定公共施設利用法案(交通・通信利用法案)および米軍行動円滑化法案で特定公共施設に指定されている成田空港は百パーセント軍事空港になる。有事(武力攻撃事態)とその予測段階で民間航空機を排除して、成田空港は米軍と自衛隊の軍事専用空港になりかねないのである。
 このことを反対同盟は「自治体として有事関連法案による成田空港軍事使用の法制化に反対すべきではないか」と質問した。それに対して成田市は「外交防衛に関しましては、国の所管に係わる問題であり、一自治体の長としての発言は控えさせていただきます」と回答してきた。米軍と自衛隊による成田空港の軍事使用は決して外交問題ではない。国内問題である。成田空港の軍事使用を外交問題とすることで容認しているのである。有事関連法は諸外国との条約締結といった外交問題ではない。むしろ、国内の有事体制をつくるという国内問題なのである。また、成田空港の軍事使用が外交問題であるという回答は、地方自治体がそれを容認するための方便である。この成田市をはじめとする回答は反対同盟、三里塚闘争として決して見過すことはできない。
 以下は成田市の回答書である。

■公開質問について(回答)
 成田空港の軍事使用に関する市の考え方は、平成16年3月30日付けで回答したとおりであります。
 また、今回の公開質問でありますが、外交防衛に関しましては、国の所管に係わる問題であり、一自治体の長としての発言は控えさせていただきます。

 三里塚芝山連合空港反対同盟  事務局長 北原 鉱治様
                  成田市長 小林 攻

(4月28日) 衆院特別委員会/成田空港の米軍使用可能(4/29千葉日報)

 井上喜一有事相は28日午後の衆院特別委員会で、「軍事利用をしない」との国と地元の合意がある成田空港の扱いについて「有事対処するために、どうすることが一番国民を守ることになるか、という判断だ」と述べ、米軍や自衛隊の利用はあり得るとの認識を示した。
 申し合わせは1972年に当時の運輸省、空港公団、千葉県知事、地元団体との間で交わされ、昨年の参院国土交通委員会での審議でも当時の扇千景国交相が確認している。増田好平内閣審議官は「経緯は踏まえるが、武力攻撃の排除が必要で、(成田)空港を使わないと、わが国の防衛がまっとうできない時にも、そういう経緯があるから使えない、というのはどうか」と述べた。

 【本紙の解説】
 政府は、「成田は民間専用空港」という成田空港建設の大前提を否定してきた。三里塚闘争は当初より成田空港は軍事空港に使われる。土地の暴力的取り上げとともに、そのことをもうひとつの根拠にして、建設反対闘争が発展してきた。周辺の各自治体も軍事空港反対であった。そのために、政府は1972年に成田空港は軍事使用はしないと確約したのである。それは、政府だけでなく、千葉県、周辺自治体の正式な確認事項であった。そのために、成田空港は民間専用空港であり、決して軍事使用はされないものとして、千葉県と周辺自治体は空港建設に賛成してきたのである。「経緯があること」とは、このことである。
 しかし、政府の確約は戦争が始まれば一夜にして反古にされる。そもそも、国際空港で軍事利用されなかった空港はない。空港が軍事使用された場合にはその周辺を含めて空港の全機能は、対戦国から見て最大のターゲットになる。反対同盟はその立場から一貫して空港建設に反対してきたのである。
 今国会で有事関連7法案と3条約・協定承認案の審議で成田空港に対する米軍(自衛隊)使用が問題になり、いとも簡単に過去の経緯はあくまで経緯にすぎないとして否定され、軍事使用が肯定されているのである。
 今こそ、有事関連法反対と成田空港の軍事使用反対の運動を発展させよう。

(4月28日) 羽田空港 男が車で侵入 一時閉鎖(4/29全紙)

 28日午後7時過ぎ、東京都大田区の羽田空港で、「男に車を奪われた」と空港内でアルバイトをしている女性(48)から110番通報があった。警視庁によると、男はリムジンバスやパトロール車など3台の車を次々と奪って滑走路を横断するなどした後、海側の岸壁に車を止めて海に飛び込んだ。男は間もなく死亡が確認された。
 警視庁によると、男は住所、職業不詳、寺内利明容疑者(32)。水死とみられ、同庁は強盗や航空法違反などの疑いで、被疑者死亡のまま寺内容疑者を書類送検する方針。
 東京空港署などによると、容疑者は東貨物ターミナル地区の路上で、女性が運転する乗用車の前に飛び出し、車を奪った。容疑者は旅客ターミナルビルなどに通じる国道357号を走行。警察官の制止を振り切り、工事用の出入り口を突き破って部外者の立ち入りが禁じられている制限区域に入った。
 容疑者はその後、車を乗り捨て、近くを通りかかったリムジンバスを止めた。運転手ら2人を降ろして乗り換えたが、緑地帯に突っ込み走行不能に。さらに駆けつけたバス会社の安全パトロール車を奪った。その後、容疑者はこの車で3本ある滑走路のうち一番東側のC滑走路を横断するなどしたが、午後8時ごろ、同滑走路北側の岸壁近くに車を止め、海に飛び込んだ。
 容疑者は同日午後6時半ごろ、川崎市川崎区内の路上で盗んだ乗用車で空港に来たとみられる。
 この影響で、羽田空港にある3本の滑走路は午後9時半まで、約2時間にわたって閉鎖された。このため、羽田発着の国内線は大きく乱れ、計5便が欠航。34便が成田空港に到着地を変更するなど、最終便まで100便近くが遅れ、約2万9000人に影響が出た。このため、国交省は全国21の空港で使用時間を延長した。航空会社によると、29日の運航には影響が出ない見通し。

 【本紙の解説】
 この事件は空港警備の強化がおこなわれている中で起こったことで、これがゲリラ実行犯だとしら、航空機は爆破されていた、と衝撃的にニュース報道された。しかし、ゲリラ対策の警備は限界があり、完全な警備は不可能である。決死の覚悟でのゲリラ戦闘を阻止することはできない。空港と航空機に対するゲリラ戦闘を未然に防ごうとしたら、数万人の警備体制が必要になる。現在の空港周辺警備はセンサー警備が中心であり、侵入を阻止する力はない。侵入されたことを察知し、その対策に動くのである。その間、早くても5分であり、その5分間にゲリラ戦は実行できるのである。
 現在の警備は「見える警備」と称して、空港では検問、身体と荷物の検査が中心で、後はこれ見よがしな銃器部隊やABC(核・生物・化学兵器)対策部隊などを徘徊させるぐらいしかやっていないのである。
 そのために、実際にゲリラ戦闘が予測できた場合は空港封鎖しかないとして、空港警備の新カテゴリーをつくったのである(04年4月19日付日誌を参照)。

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