SANRIZUKA 日誌 HP版   2004/07/1〜07/31    

ホームページへ週刊『前進』月刊『コミューン』季刊『共産主義者』週刊『三里塚』出版物案内販売書店案内連絡先English

 

 2004年7月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(7月3日) 天神峰の市東孝雄さん耕作地、小作権解除を申請へ(7/3読売)

 成田国際空港会社は、成田空港の暫定平行滑走路(2180メートル)の誘導路わきで空港反対派の男性(54)が耕作する2か所の畑(計約0・8ヘクタール)について、農地法に基づき小作権の解除許可を千葉県の堂本暁子知事に申請する方針を決め、千葉県と成田市に伝えた。
 誘導路は、この畑を避けるため「へ」の字形に湾曲しており、旅客機同士の接触事故が起きるなど、安全面での問題が指摘されている。誘導路の直線化を目指す同社が、男性に対して事実上の立ち退きを求める初の法的措置で、8月下旬に申請し、年内にも解除許可が出される見通しだ。
 この男性は、過激派の支援を受ける三里塚・芝山連合空港反対同盟北原派に所属。父親の代に地主と賃貸借契約を結び、耕作を続けている。
 これに対し、同社は、畑を含む約1・3ヘクタールを地主から買収。昨年12月に移転登記を済ませ、同派の弁護士を通じて男性に土地の明け渡しを求めてきた。代替地の提供や金銭補償も申し出たが、男性側は拒否。同社は「話し合いでの解決を目指す」としてきたが、進展が見込めないとして申請に踏み切ることにした。
 同社は今後、成田市農業委員会に小作権の解除許可申請書を提出。同委員会が「許可相当」との結論を出し、その内容が送付される県農業会議が「許可相当」を答申すれば、堂本知事名で小作権解除の許可が出される。許可を受け、同社は男性側に賃貸借関係解除を申し入れる方針。
 今年4月に民営化し、2007年の株式上場を目指す同社は、投資家から高い評価を得るためには、ジャンボ機が発着できる滑走路の2500メートル化と、誘導路の湾曲解消が必要と判断。3月には、同じく誘導路湾曲の原因となっている空港反対派の「団結小屋」についても撤去などを求めて千葉地裁に提訴している。
◇小作権=所有者から土地を借り、対価を払ってその土地を自ら耕作し、収益をあげる権利。農地を無償で借りる「使用貸借」と異なり、農地の賃貸借の解約は、原則的に都道府県知事の許可を受けなければ成立しない。

【本紙の解説】
 成田国際空港会社は、市東さんの耕作地の解除許可を千葉県と成田市に申請してきた。三里塚闘争に対する重大攻撃である。実際に審議するのは千葉県農業会議、成田市農業委員会であるが、それを決定するのは千葉県堂本知事であり、小林成田市長である。
 反対同盟と三里塚闘争はこの攻撃を決して許さない。県や市が、NAAの言いなりで「許可」を出すような事態を絶対に許さない闘いを徹底的にやり抜く決意である。県や市がNAAの申請を許可する行為は、自治体が、02年4月暫定開港という国家犯罪の主体に加わる行為である。
 市東さんの畑や現闘本部が「誘導路湾曲の原因」(読売)などという言い草は転倒している。国家暴力による強制収用の挫折。札束で農民たちの尊厳を踏みにじった用地買収の失敗……暫定滑走路は、開港の物理的条件すら整っていなかった。それを無理やり開港した政府・国交省の暴政こそが、欠陥空港の原因である。
 暫定開港は国家犯罪だ。農家の頭上40メートルに航空機が発着し(航空法違反)、市東さんの自宅や畑はジェット機の排ガスが直撃する(同)。農家の立木が滑走路進入表面を破っている(同)。農民たちは、この国の最高法規が保障する生存権すら脅かされているのだ。開港は、農家の屈服を見越した見切り発車だった。暫定滑走路計画の認可自体が違法だった。滑走路や誘導路の欠陥は、完全に国の責任だ。
 また用地を強制的に取り上げる法的根拠だった事業認定も、認可から20年を経た1989年段階で失効・消滅している。農民が買収・移転に応じないからといって、彼らの闘いを「欠陥空港の原因」呼ばわりし、強権発動を云々すること自体が許されない。
 今回のNAAの申請には一片の正当性もない。それを「許可」する権限は千葉県にも成田市にもない。県や市は、NAAの申請をただちに却下せよ。反対同盟と三里塚闘争は、ありとあらゆる闘争手段でたたかいぬく。
 またNAAの申請も、およそ展望なき暴挙であると知るべきだ。将来仮に、県や市の「許可」を暴力的に取り付けたとして、その後少なくとも数年がかりの明渡し訴訟が待っている。NAAの無茶な言い分が通る保障は何もない。「株式上場(07年)までに湾曲誘導路を解消したい」などと身勝手な願望を語っているが、それは百パーセント不可能だ。
 反対同盟は天神峰現闘本部撤去裁判を支援する会の全国レベルの結成を受け、市東さんの畑強奪攻撃に対する闘いも含めた大衆的な裁判闘争を闘い抜く決意を明らかにしている。
 また、成田空港建設の用地取得に関して、政府・国交省は「一切の強制力を発動しない」と確約した経緯がある(公開シンポ=1993年)。国交省が全株を保有するNAA(特殊会社)が、権力を頼んで裁判に訴えるとは、力ずくの農地強奪そのものではないか。
 正当性なき土地強奪への着手がどういう反撃を生み出すか。彼らは三里塚闘争38年の歴史をいまこそ教訓化すべきである。
 われわれは反対同盟とともに、三里塚闘争で培ってきたすべての力を発揮して闘い抜くことを宣言する。

(7月4日) 成田空港/熱射で誘導路の「轍」崩れ一時閉鎖(7/5東京)

 4日午後4時半ごろ、千葉県成田市の成田空港C誘導路を走行中の航空機から「路面の轍(わだち)が崩れている」と成田国際空港会社に連絡があった。同社の調べで、幅約30センチ、長さ約50センチにわたり舗装がはがれた状態になった場所が2カ所見つかり、C誘導路を約20分間閉鎖して応急補修した。閉鎖による運航への影響はなかった。
 同社は「同じ所を走行するため路面に轍ができた。強い日差しで50度近くまで路面の温度が上がり、もろくなったのが原因」としている。同日夜の運用終了後に本格的な補修工事をする予定という。
 C誘導路は、A滑走路と暫定滑走路を結ぶ誘導路。

 【本紙の解説】
 空梅雨のために熱射によって誘導路が崩れたと報道されているが、それだけに止まらない問題である。C誘導路は03年10月30日(03年10月30日付日誌を参照)に完成、供用された誘導路である。使用年数はまだ1年未満であり、劣化しているはずはない。滑走路、誘導路は耐久年数が使用度合い、天候などによって決まっており、改修舗装工事を行っている。まだ、耐久年数がきたわけではない。原因は手抜き工事ということもある。崩れた場所は分からないが、C誘導路は鈴木幸司さんが所有する一坪共有地などあり、曲がっている。そのためにコンクリートが弱くなったのかもしれない。
 いずれにしろ、1ビルの駐機場と2ビルの駐機場の間の誘導路は完全ではない。暫定滑走路が北側に800メートルずれたこと、1ビルと2ビルの航空会社がでたらめに配置されているため、2ビルに配置された日本の航空会社の日航、全日空は、いちいち1ビル、2ビル間の誘導路を経由してA滑走路まで移動しなければならない。先日、暫定滑走路上の誘導路で航空機同士のにらみ合いが起きたが、この2ビルと1ビルの間の誘導路も曲がっていて一方通行であり、きわめて使い勝手が悪いという評判だ。

(7月6日) 芝山鉄道「散策コースマップ」作製(7/6毎日千葉版)

 芝山千代田駅と京成東成田沢駅の2・2キロを結ぶ芝山鉄道(酒井文夫社長)は、起点の芝山千代田駅から成田空港周辺を歩いて巡る「散策コースマップ」(A4判)を作製した。今月中にも、芝山鉄道に接続している京成電鉄の特急停車駅に合計3000枚を渡して乗客への配布を依頼し、芝山鉄道の利用を呼び掛ける。
 芝山鉄道は02年10月、空港建設に伴う地元への「見返り」として開業した。空港周辺には水生植物公園「水辺の里」、航空機にまつわる部品や模型などを集めた「航空科学博物館」、4000メートル滑走路を展望できる「さくらの丘」などがある。マップにそれぞれのスポットを巡る5キロと10キロのコースを設定した。
 芝山鉄道は、当初見込んだ利用客が大幅に下回り、1日当たり約2000人。昨年度は約3億8000万円の赤字だった。散策マップは、観光客誘致を呼び込むのが狙いで、同社は「少ない経費で大きな効果を上げられるよう、これからも知恵を絞りたい」と話している。

 【本紙の解説】
 「散策コースマップ」の制作費をいくらかけたが分からないが、3000枚作成して3000人が芝山鉄道を使ったとしても、運賃収入は、380円(往復)×3000人で114万円しかならなない。また、散策にくるのは多く見ても1パーセントぐらいでしかない。ポスター制作費にもならない収入であろう。
 芝山鉄道の利用者が1日当たり、2000人(片道)というのは芝山鉄道が頑張った数字である。開通直後は1日1000(片道)人前後の乗客しかなかった。
 成田空港の千代田地区にある整備地区で働く空港関係者は4000人であり、芝山町で成田方面に通勤・通学している人は数百人である。つまり、4千数百人のうち、1000人が利用して、往復で1日延べ2000人が使っていることになる。これ以上増やすことは数字的に見て不可能である。
 また芝山鉄道の料金の高さもある。2・2キロで190円というのも高いが、これは芝山千代田駅から東成田駅までの料金である。東成田駅から成田駅までは、京成電車区間である。東成田―成田間は250円である。芝山千代田駅から成田駅は、片道440円、往復880円になる。
 3億8000万円の赤字を解消するために、年間で200万人(片道)の利用客が必要である。この計算で、土日もふくめて1日当たり約5500人(片道)の利用者の増加がないと赤字解消にならない。現在の利用者が2000人であり、5500人の増加、計7500人(片道)の使用がないといけない。これは黒字には絶対にならない数字だ。
 空港の見返りとして造ったのはいいが、維持費がかかりすぎ、赤字分を税金で支払うため、すでに住民が迷惑する電車になっている。

(7月7日) 反対同盟/自衛隊の成田空港使用に抗議のビラまき

 反対同盟は7月7日、成田空港の軍事使用に抗議するビラまき活動を、成田市役所と成田駅頭(京成、JR)で行った。
 陸上自衛隊は7月初旬、イラク占領軍の交代要員80人を成田空港から出発させ、数波に分かれてクウェートの米軍基地入りした。国際法上、軍隊が民間旅客機に搭乗することは、国際民間航空条約に違反する。軍隊を乗せた民間航空機は交戦相手の攻撃対象となるからである。
 「自衛隊は軍隊ではない」という詭弁は他国には通じない。だからこそ防衛庁は、成田空港の軍事使用にかかわる情報を一切公表しないのだ。成田市をはじめとする周辺自治体は、このことを黙認している。反対同盟と三里塚闘争は、成田空港の軍事使用に反対するとともに、これを承認する周辺自治体も弾劾し、闘い抜くものである。
 ビラのPDFファイル

(7月8日) 今夏の成田空港利用客、過去最高となる見込み(7/9朝日千葉版)

 成田国際空港会社(NAA)は8日、7月16日〜8月31日の夏休みシーズンに、成田空港を約378万2400人が利用するとの予測を発表した。イラク戦争や新型肺炎SARSの影響で海外旅行客が激減した前年同時期に比べ、17.32パーセント(約55万8446人)増の過去最高となる見込みだ。
 出国客は約191万7600人(前年同時期比16.64パーセント増)、到着客は約186万4800人(同18.03パーセント増)と予測する。出国のピークは会社員らの夏休みが本格化する今月31日の約4万8600人で、到着は8月16日の約5万1000人。
 NAAや航空会社によると、ハワイやグアムなどのリゾート地が人気という。ツアー料金が安めの今月16日と8月21日も出国ラッシュの次の山場で、休暇の分散化傾向が見られるという。

 【本紙の解説】
 前年比の増加は異常な上昇になっているが、昨年はSARSで航空機利用者が激減した年であり、通常の数字に戻っただけである。「過去最高」と煽っている実態は、アテネオリンピック客などの増加もあるが、大半は激安ツアーの客であり、航空会社にとっては利用者の増加に見合う増収にはならない。また、イラク侵略戦争情勢と航空機、空港ゲリラなどによって一変する予測である。

(7月15日) 成田空港利用客 過去最高378万人予測(7/15産経千葉)

 成田国際空港会社は、今年の夏休み期間(7月16日―8月31日)中に成田空港を利用する旅客数について、前年度比で17・3パーセント増加し過去最高の約378万2000人となる予測を発表した。新型肺炎、イラク戦争の影響で落ち込んだ昨年を大きく上回り、過去最高(約370万2000人)だった一昨年も上回る見通し。
 出発のピークは7月31日の4万8600人、到着ピークは8月16日の5万1000人、合計のピークは同15日の9万1000人。同社によると、方面別ではハワイ、欧州のほか、北米、特にカナダが好調という。

 【本紙の解説】
 過去最高と喧伝しているが、実際は過去最高だった一昨年より8万人増に過ぎない。国交省の国際旅客輸送量予測は、02年に出されている。01年9・11反米ゲリラ戦争の影響もあり、03年度0・8パーセント増、2004、2005年度1・5パーセント増、2006年度1・6パーセント増、2007〜2010年度1・9パーセント増といままでの予測と比べて低く抑えている。01年、02年の合計実績はマイナス成長なのである。
 国交省は01年9・11前には、毎年7パーセント前後の成長を予測していた。その予測に基づいて、関空二期工事や中部国際空港が計画された。バブルが崩壊し、経済が長期停滞に陥っても、航空産業だけは高度成長が続くと予測していたのである。
 その予測と計画は、01年9・11によって大幅に変更となった。しかし、それでも、まだ右肩上がりの予測である。大幅に下方修正した予測より、現実はさらに低いのである。03年が予測を下回り、前年度よりマイナスになり、04年度も前年比では増加になっているが、一昨年とほぼ同じ数字で推移している。予測ではゼロ成長である。夏休みという一定期間のデータでの過去最高といっても、年間ではそういう状況なのである。
 航空産業は戦後経済の牽引車であり、毎年10パーセント近い高度成長を続けたことは事実だが、その終焉が01年から始まったのである。

(7月15日) 成田の発着機また鉢合わせ(7/17朝日、毎日千葉版、千葉日報)

 成田空港のA滑走路の誘導路で15日夕、全日空機とJALウェイズ機が鉢合わせし、全日空機の出発が約1時間遅れていたことが16日に判明した。
 成田空港では、6月にも今回とは別の暫定滑走路の誘導路で2機が鉢合わせし、滑走路が約50分間閉鎖されるトラブルがあった。
 国土交通省成田空港事務所によると、15日午後6時ごろ、滑走路に向かっていた、いずれもジャンボ機の全日空の伊丹行き2179便と、サイパンから到着し第2ターミナルに向かっていたJALウェイズ948便が誘導路上で向き合った格好で立ち往生した。
 旅客機は自力で後退できないため、全日空機を牽引車で移動。ほかの便に影響はなかった。
 現場には誘導路が3本あり、全日空機が管制官から指示された誘導路と違う誘導路に入ったとみられる。

 【本紙の解説】
 成田空港は誘導路内の航空機のにらみ合いと接触事故の世界的名所になっている。暫定滑走路の誘導路は一方通行であり、曲がっている。管制塔からの視界が悪いことは世界的にも評判になっている。
 成田の1ビル、2ビル間の誘導路は3本あるが、通常の誘導路とは様相が異なっている。最初はR誘導路1本であり、通称「梅の木の一坪共有地」があり、片側通行であった。いまは、本来の横風滑走路部分をつかったD誘導路とC誘導路があり、R誘導路の一部はエプロン工事のために封鎖している。しかし、C誘導路は一坪共有地のために曲がっている。また、D誘導路も熱田一氏の田んぼによって、途中で中断され、2ビルのエプロンに入るにはC誘導路を経由しなければならない。事実上1本の誘導路として運営しているのだ。そのために、にらみ合いが発生するのである。交互通行ならば、にらみ合いは起こりえないのである。それに航空会社の配置の不合理と暫定滑走路の800メートル北側ずらしによって、航空機の誘導はさらに複雑になった。

(7月16日) 成田空港、出国審査後の制限区域内に初の書店(7/16日経)

 成田国際空港(千葉県成田市、黒野匡彦社長)は20日、出国審査を終えた旅客が飛行機への搭乗を待つ「制限エリア」内に初の書店を開く。ガイドブックや雑誌など約3万冊を用意し、出発までの時間を有効利用してもらう。今年4月の民営化に伴う顧客サービス向上、収益強化策の一環として取り組む。
 店舗の名称は「Fa―So―LaBOOKS」で、空港子会社のNAAリテイリング(同市)が運営する。主に英米系航空会社が利用する第一旅客ターミナル中央棟3階の制限エリア内で営業する。店舗面積は約100平方メートル。
 世界各地の旅行ガイドブックや機内で手軽に読める雑誌、新刊書などをそろえる。全体の3割程度は外国語の書籍、雑誌を扱う。営業時間は午前8時―午後10時。

 【本紙の解説】
 成田空港株式会社は航空外収入を増やすために、本屋を開設する。しかし、これは空港内のテナントにある流水書房、千葉日報、ブックショップという3軒の本屋の経営を圧迫するだけである。
 成田空港株式会社は、お土産物や食べ物、アクセサリーなどのワゴン販売を呼び込みとともに始めた。売り上げはたかが知れているが、航空外収入増加のモデルケースとして宣伝していた。
 しかし、そのことに対し、空港内の飲食店など151店舗でつくるテナント連絡協議会が抗議した。抗議の理由は、空港公団が数年前に「テナントに宣伝用チラシの配布や呼び込みなどを、空港の雰囲気に合わない」と禁じ、同協議会がワゴン販売を提案した際は、「販売は契約スペースのみ」として許可しなかったことだ。テナントには禁じた販売方法を自らが行うのは、ルール違反であると批判、弾劾が強まっている。
 それに対して、成田空港株式会社は、「説明が遅れて申し訳ないが、理解頂きたい」とのみ釈明し、ひきつづきワゴン販売を続けている。
 本屋は搭乗前の退屈になる制限エリア内の販売であり、テナントが入っている本屋の経営を圧迫する独占販売になることは確実である。
 本屋もワゴン販売もテナントの収入を奪う形の「空港外収入の増加」しか、成田空港株式会社にはできないのであろう。

(7月23日) 反対同盟記者会見/闘争本部の建物、事務局長名義に(7/24朝日、読売、毎日、各千葉版、千葉日報)

 成田空港会社が成田空港・暫定滑走路の誘導路脇にある反対派の活動拠点「天神峰現地闘争本部」(成田市天神峰)の明け渡しを求めた訴訟を巡り、被告の三里塚・芝山連合空港反対同盟北原派(北原鉱治事務局長)は23日、建物の名義を反対運動に生前かかわった旧社会党代議士の故人から北原事務局長に変更した、と発表した。
 今年3月に同社が千葉地裁に起こした訴訟は、建物の撤去と土地(約67平方メートル)の明け渡しを求めており、名義変更によって争う姿勢をより鮮明にしたものだ。故人の親族を説得、今月1日、無償で土地と建物の譲渡手続きを済ませたという。
 闘争本部を巡っては、反対派の過激な活動を防止する「成田新法」で使用禁止命令が出ており、建物は事実上、休眠状態。誘導路は、同本部と、反対派の男性が小作権を持つ畑を避ける形で「へ」の字にわん曲している。
 同時に反対同盟は、同派の農家が暫定B滑走路脇で耕作する2ヵ所の畑について、「8月にも成田国際空港会社(NAA)が小作権の契約解除を申請する」と一部で報道された問題で、NAAの黒野匡彦社長が「このような方針を決定した事実は一切ない」と全面否定する文書を同派の顧問弁護士に送付していた事実を明らかにした。
 焦点の土地はともに天神峰地区の空港用地内で、暫定B滑走路の「へ」の字形に曲がった誘導路の近くと、同農家前にある計約7600平方メートル。
 農家は父親の時代に当時の地権者と耕作の契約を結んだが、NAAが地権者から土地を買い取った。NAAは農家に対し、金銭補償や代替地などを提案して立ち退きを求めていたが、有機農業に取り組む農家は拒否している。
 文書で黒野社長は「NAAとしては農家と話し合いをさせていただきたいという考え方に変化はない」としており、弁護士に対しても、農家との話し合いの場を設定してもらえるよう求めている。

 【本紙の解説】
 天神峰現闘本部の建物登記は、建設当初、当時の地元社会党代議士の故小川三男氏名義にした。その理由は、反対同盟の顧問格にあった小川代議士にした方が、国家権力との闘いで有利だということだった。しかし、すでに小川氏は亡くなり、地代を払っているのは北原鉱治氏(反対同盟事務局長)である。建物登記と地代支払い者が分かれてしまっていた。今回の北原名義での登記で、反対同盟が名実ともに土地を利用する権利があることが明確になった。
 NAAは何か勘違いして「未登記」としている。今回の書き換えはコンクリート3階建ての中にある木造の旧現闘本部のことである。コンクリート部分は未登記である。公団はコンクリート建てに立て替えられているので、旧現闘本部はなくなっているとでも考えているのだろうか。旧現闘本部はそのままの形で現存しており、成田治安法裁判と本裁判はそれを前提に闘われている。
 今回の書き換えにより、天神峰現闘本部裁判闘争の勝利の展望が大きく切り開かれたのである。
 黒野社長の「小作権解除手続き申請」報道の否定はどういう経過のものなのか。読売新聞社といえども、根も葉もない事実無根のことを報道(04年7月3日付日誌を参照)はできない。空港会社内で最終確定していない方針を勝手に事前報道したのか、航空会社が方針を確定する前に新聞社にアドバルーン記事を書かせ、関係各方面の反応を見るためのものであるか、どちらかである。
 三里塚闘争に関する商業紙の記事ではどちらのケースも多いが、今回の件は後者の可能性が高い。その理由は、この小作権解除のことは、天神峰現闘本部裁判が提訴された前後から噂になっていた。空港会社が強力に推し進めていたことは明らかである。小作権解除は誘導路の「へ」の字解消が理由になっているが、それは現闘本部裁判に公団が勝訴して現闘本部が撤去されなければ、小作権が解除されても意味がないことなのである。つまり、天神峰現闘本部撤去の提訴と小作権解除は一体の攻撃なのである。
 では、なぜ、それが打ち消されたのか。それは、反対同盟の怒りと反撃が大きく、本紙週刊三里塚などが激しく弾劾したことにより、成田市農業委員会、堂本千葉県知事、千葉県農業会議など、関係者が悲鳴をあげたのであろう。そのため、NAAでは方針を確定できなかったのである。「国の失策を代執行で千葉県に回されたのではたまらない」と言ったのは、71年三里塚第一次、第二次代執行の矢面に立った友納千葉県知事であった。今回はそれと同じ構図で行われようとしたのである。
 以下は、同盟記者会見要旨と黒野社長の葉山弁護士への手紙である。

■反対同盟記者会見要旨 2004.7.23

三里塚芝山連合空港反対同盟事務局
顧問弁護団事務局
(1)天神峰現闘本部の登記名義の変更について
・7月1日をもって天神峰現闘本部建物の登記名義を、反対同盟事務局長の北原鉱治名義に変更した。
・同建物は、1966年12月16日に、当時、反対同盟副委員長だった石橋政次が提供した土地の上に、同盟員が資材を持ち寄り建設したものである。翌67年9月20日に、当時、空港反対同盟の顧問を務めていた元社会党代議士の小川三男氏を名義人として建物登記した。
・今回の登記名義の変更は、建物の所有権が反対同盟にあり、土地を利用する正当な権利があることをあらためて明確にするための措置である。
・NAAの不当提訴は棄却されることが相当であり、その公正な判決を求めて引き続き闘うものである。

(2)NAAによる「小作権解除手続き申請」について
・7月3日、NAA(成田国際空港会社)が天神峰の市東孝雄同盟員が耕作する土地の小作権解除申請手続きを行う旨、報道された。
・その後、7月15日付で同氏の代理人である葉山岳夫弁護士に対して、黒野匡彦NAA社長から、報道内容を全面的に打ち消す旨の書面が送付された。
・問題の農地は、孝雄氏の祖父・市太郎さんの代に御料牧場の原野を開墾し、以後、90年近くにわたって耕作されたものである。戦後の農地解放で自作地とされるべき土地であったが、孝雄氏の父・東市氏の復員の遅れからできず、戦後に旧地主との間で賃貸借契約を結び耕作してきた。一部契約外の農地についても市東家が開墾したことから、これまで問題なく耕作しており、権利が時効取得されている。
・NAAの前身である空港公団は、1988年に旧地主から土地を買収したにもかかわらず耕作者の市東さんには告知せず、昨年突如マスコミに公表し、今回、小作権解除に動いたものと受けとめている。
・暫定滑走路は、空港建設の不当ゆえに用地が取得できなかった欠陥滑走路であり、「へ」の字誘導路はその象徴である。この誘導路が運用に支障をきたし採算があわず、民営化した会社の経営に影響するからといって、農地を強奪しようとするのは本末転倒である。
・また、農業委員会ならびに県農業会議は本来、農地と農民を守ることを旨とする機関であり、このような不当な小作権解除請求を受理すべきではない。NAAの申請行為自体が権利の侵害となるべきものである。
・黒野社長の書面は、その行為の不当・不法を象徴する事態であると受けとめる。
・また、空港公団の脅迫行為の一端を担う読売新聞の報道姿勢に強く抗議するものである。

■黒野社長の葉山弁護士への手紙

前略
 葉山先生におかれましてはご健勝でご活躍のこととお慶び申し上げます。
 さて、7月3日付一部報道において、「小作権解除申請へ」なる見出しの記事が掲載され、私どもが、市東様の賃借地に対し「農地法に基づき小作権の解除許可を千葉県の堂本暁子知事に申請する方針を決め」、「8月下旬に申請し、年内にも解除許可が出される見通し」との報道が為されました。
 結論から申し上げれば、私どもにおいて、このような方針を決定した事実は一切ございません。
 昨年末の本件土地の取得以降、市東様と話し合いをさせていただきたく、再三にわたり手紙を送付するとともに、葉山先生には仲介の労をおとりいただけないかとお願いしてまいりました。私どもとしましては、市東様と話し合いをさせていただきたいという考え方に、些かの変化もございませんし、引き続き、問題の解決のため、葉山先生にご尽力をお願いしたいと考えております。
 今回の報道により、市東様はもとより、葉山先生にもご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありませんでした。
 葉山先生におかれましても、今一度ご再考いただき、市東様と私ども双方の考えを開陳する場の設定について、市東様とご相談していただけますよう重ねてお願い致します。このことにつきましては、誠に恐縮ではございますが、文章にてご回答いただけますようよろしくお願い申し上げます。
  草々
平成16年7月15日
葉山岳夫 様
成田国際空港株式会社
代表取締役社長 黒野匡彦
…………………………………………………………………………………………

(7月25日) 反対同盟恒例の「海辺の集い」

 猛暑が続く中、反対同盟は九十九里浜・野栄町にある堀川浜海水浴場で恒例の団結海水浴をおこなった。バーベキューなどを楽しみながら英気を養った。詳しくは本紙参照。

(7月26日) 成田管制トラブル 12便の発着に遅れ(7/27読売、毎日各千葉版、千葉日報)

 26日正午過ぎ、成田空港の管制塔で、航空機の便名などを示すレーダー画面から、航空機の位置を除き、全表示が消えるトラブルがあった。7分後に回復したが、北京発成田行きのパキスタン航空852便など発着の12便に最大25分の遅れが出た。成田空港周辺では正午過ぎから降雨や雷鳴などがあり、国土交通省成田空港事務所は雷の影響の可能性もあるとみて原因を調べている。
 トラブルがあったのは「ターミナルレーダー情報処理システム」(ARTS)で、成田空港を中心に半径約150キロを飛行する航空機の便名、高度、速度、位置などを常時表示している。

 【本紙の解説】
 今回のトラブルの原因は「降雨と雷鳴」らしいが、そもそも成田空港は地形からみて空港適地ではなかったのではないか。成田空港周辺の気候の特徴は千葉県全体として言われている海洋性気候ではない。芝山までは海洋性気候の影響を受けているが、成田は基本的に内陸性気候であり、成田空港はその境目に位置する。その結果、成田空港は霧の名所でもある。霧は航空機の視界を妨げるので、飛行機とは天敵の関係にある。また、同じ理由から雷も比較的多い。今回のトラブルの原因はこの雷鳴と推測している。
 また、航空機の運航を危険に陥れるダウンハザードが利根川流域に発生する。
 成田空港は米軍空域、自衛隊空域、羽田空域に挟まれる地域に位置決定した経緯がある。天候的特徴などを検討する余裕がなかったのであろう。

(7月26日) 成田空港圈自治体協/騒音評価方法を国に改善要望(7/27朝日千葉版)

 9市町村でつくる「成田空港圏自治体連絡協議会」(会長・小林攻成田市長)は26日、空港周辺の騒音問題について地域の実情に合った騒音評価方法へ改善するよう求める要望書を国土交通相や環境相、堂本知事らに提出した。
 要望書では、成田市が03年度に騒音を調査した際、実際の騒音発生量が増加しているのに、測定地点によっては数値が減少していたため、「現実とかけ離れた結果が出ている」としている。
 そのため、地域の実情に合った騒音評価方法に改善し、適正な基準値にするよう求めている。

 【本紙の解説】
 WECPNL値(うるささ指数)は、航空機が通過していないときの騒音を「闇騒音」とし、これを基礎数にしてその乖離を数値化したものである。
 暫定滑走路の延長上の騒音地域ではA滑走路の騒音は通常騒音として「闇騒音」としてしまうので、基礎数が高くなり、暫定滑走路発着の騒音との乖離が比較的低くなるという「逆転」現象のことが問題になっている。
 これは、WECPNL値計算方法の問題点もあるが、計測方法が間違っているのである。暫定滑走路の延長上でも、A滑走路の騒音を航空機騒音として計算すれば、簡単にすむことなのである。
 では、なぜ、そうしないのか。理由は騒音コンターにある。騒音コンターは滑走路延長上を流星状に長く走っている。70WECPNL以上は騒音対策費を空港がだすことになる。そのために、騒音値をできる限り低く押さえようとすることになる。そのために、暫定滑走路直下にとっては、A滑走路の航空機騒音は航空騒音でなく、一般騒音に組み込まれてしまうのである。
 A滑走路の騒音も暫定滑走路直下の騒音測定で航空機騒音として計算すればいいのである。

(7月26日) 成田空港地域共生委/設置要綱改訂(7/27読売、毎日各千葉版)

 成田空港の運用や環境への影響などを監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」(山本雄二郎代表委員)が26日、開かれ、成田空港会社や関係地域の代表ら約40人が参加した。
 委員会は、4月の同社の株式会社移行後2回目。民営化に伴って改正した委員会設置要綱によると、周辺地域の騒音や環境問題、電波障害、深夜便の運航状況など、これまで7項目22事項だった点検内容について、移転に関する項目などを統廃合し「中心となる課題」として5項目17事項を公表した。
 騒音やエンジン噴射など、空港が地域住民にあたえる影響内容から「マイナス」という表記などが削除された。具体的には、改正前は「空港からマイナスの影響を受ける地域住民」と表記した個所を改正後は「空港から影響を受ける地域住民」に変更した。
 山本代表は「(マイナスと表記することで)空港と地域住民との関係が悪いという間違った印象をあたえる」と削除した理由を説明。「民営化で監査の機能は変わらないが、今後は空港と地域住民の双方向の対話に重点を置きたい」とも話した。
 また、共生委の業務内容について、国土交通省と成田国際空港会社は、「同委の改善要請を基本的に受け入れ改善を実施できない場合文書での理由の回答を求める」としていた設置要綱を「(両者は)要請を真摯に受け止め、誠実に答える」と訂正したことも報告された。

 【本紙の解説】
 共生委員会の変節は、監督される側の国交省と空港公団(現NAA)が共生委の構成員になることなど、いままでもすさまじいものがあった。共生委が、空港からの「マイナスの影響」という中心テーマを削除してしまった。具体的には、空港が周辺住民の生活を、騒音、事故、落下物で脅かす現実を否定し、空港を絶対的存在とし、騒音などの加害者性を薄くするためである。歴史的転向といえる。
 このことは、設置要綱の変更にも表れている。改善要請を実施できなくても、その理由を明示する必要もなくなり、ただ「要請を真摯に受け止め」ればいい、となった。共生委は完全に成田空港会社(NAA)の宣伝機関になった。
 共生委は本来、自治体が問題にしている騒音コンター、うるささ指数や、その逆転問題をもっと取り上げる必要がある。しかし彼らは、騒音下住民がもっとも関心があることを決して取り上げない。

(7月29日) 旅客ターミナルに「除細動器」(7/30千葉日報)

 心停止した人に電気ショックを加え救命を図る「自動体外式除細動器」(AED)を、7月から一般の人も使用できるようになったことを受け、成田国際空港会社は29日までに、AEDを空港旅客ターミナルに設置する方針を決めた。
 成田空港では病院や救急車にAEDを置いているが、旅客ターミナルでは初めて。8月中に設置に向けた手続きに入り40台前後を置く計画だ。
 同社によると、成田空港では年に2−4人ほどの旅客が急性心筋梗塞などの病気で死亡している。心臓の心室が震えて血液が送れなくなる「心室細動」は、5分以内にAEDを使えば半数が救命できるといい、同社は空港職員や警備員らに使用法の講習を受けさせる方針。
 AED使用は医師や救急救命士らだけに認められていたが、厚生労働省の検討会が一般人への解禁を決めた。米国の空港では配備が進み、日航など航空会社も旅客機に搭載している。

 【本紙の解説】
 「自動体外式除細動器」(AED)を空港に設置することが世界的に定着しているらしい。航空機が一般化し、病弱な人も乗るようになったからか。そうではないらしい。「急性心筋梗塞など」と航空機と関係ないような記事なっているが、血栓症は航空機につきまとう病気のひとつである。
 下肢静脈血栓症と肺塞栓症の合併症であるエコノミークラス症候群のことである。エコノミークラスだけに発病するわけでないが、乾燥した機内で狭い座席スペースに長時間座り詰めのため、エコノミークラスの旅行者に多くこの症状がみられることからこのように呼ばれるようになった。
 エコノミークラス症候群とは、血流が徐々に悪くなり下肢静脈に血栓(血の固まり)ができ、身体をうごかしたときに、この血栓が血流に乗って上昇し肺まで達すると肺動脈の血管が詰まり、胸の痛みとなり最悪の場合呼吸困難によって死亡するのである。この症状は航空機だけでなく、長時間、車や長距離バス、新幹線内で同じ姿勢で座り詰めの場合も発生することがある。しかし、航空機での発生率は群を抜いている。世界的には訴訟にまで発展している(01年7月17日付日誌を参照)。
 それにしても成田空港に40台設置とはすさまじい数字である。年に2〜3人死亡としているが、01年に発表されたデータでも、「成田空港において8年間で25人死亡」と、日本医科大・新東京国際空港クリニックの牧野俊教授が発表している。航空機に長時間乗ることは命がけのことである。

(7月30日) 成田空港の事故調査/遅い速度での離陸原因で接触(7/30日経新聞夕刊)

 昨年10月、成田空港で日本貨物航空のジャンボ機が離陸の際、胴体を滑走路にこすった事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は30日、誤ったデータに基づき、適正な速度より遅い速度で機首上げを始めたのが原因と推定されるとの報告書をまとめた。
 報告によると、航空機関士が離陸重量のデータ表を読み違え、正しい離陸速度より50キロ程度遅い速度データを作成。機長は、そのまま速度計の目印を合わせ、十分な速度が出ないまま機首上げを始め、離陸に時間がかかったため胴体が滑走路に接触した。

 【本紙の解説】
 事故調査報告書をみないと分からないが、「航空機関士による離陸重量のデータの読み違え」だけに事故の原因を求めるのは納得できない。
 貨物機では重量計算と貨物の航空機内での配置はきわめて重要な数値であり、これを間違えることはないはずであり、またそれは自動的に計器に出るはずである。離陸重量と離陸速度も計算できているはずである。決して間違えないところで、事故が起こっている。その理由がはっきりしないでは事故の真相究明にはならない。
 問題は航空機関士の存在にありそうだ。かつてコックピットの編成は機長、副操縦士、航空士、機関士、通信士であった。しかし、通信士、航空士がなくなり、現在では、機関士がいなくなりつつある。
 B747の旧型の100型、200型、300型などは、航空機関士はいる。機長、副操縦士、航空機関士の3名編成である。しかし、新型機の400型、400D型は、機長、副操縦士の2名編成である。事故機はB747−200機であり、航空機関士は乗務していた。
 航空機関士はかつて、大型機には必ず乗務していたが、コンピューター関連技術の発達により機械化され、特に監視業務は半導体の急速な発達で自動化され、航空機関士は合理化されている。
 そのような技術革新の中で、旧型機といえども計器はレベルアップしており、ほとんどが自動化している。つまり、航空機関士は乗務しているが、事実上はすべて機械で自動化されている。
 自動化した計器の整備ミスか、操縦ミスにことの真相はありそうだ。それを隠すために、航空機関士ミスとしていると勘ぐりたくなるのは本紙だけだろうか。
 航空業界の競争激化で航空各社は経費削減を極限的にやっている。そこに事故の原因がある。

(7月30日) 成田着陸料 国内線新規路線50パーセント割引へ(7/30朝日夕刊、7/31毎日各千葉版、千葉日報)

 成田国際空港(NAA)は30日、成田空港の国内線地方路線の着陸料を、8月以降に新規に乗り入れた路線や、既存の路線の増便分に限り、開設から1年間、正規料金の半額に値下げすると発表した。
 50パーセント引きの対象となる既存の地方路線は、現在は成田−仙台、成田−広島の2路線。現行でも着陸料は正規の33パーセント引きだが、来年2月の中部国際空港(国内線は29路線)の開港をにらみ、引き下げることにした。
 国内線の乗り入れ便を増やし、国際線への乗り継ぎの悪さを改善しないと、地方から中部空港経由で乗り継ぐ利用者が増えると判断したためだ。
 成田空港の国内線の基準着陸料はジェット機の場合、重量1トンあたり1000〜1800円。

 【本紙の解説】
 成田空港の着陸料の値下げとしているが、その内容は、国内線の新規、増設分につき、しかも1年間の期限付きでの割引である。また、国内線は暫定滑走路供用開始以降、割引率が33パーセントであったものを1年間だけ、50パーセントに引き上げるだけである。
 これで呼び込もうとしているのは、50人乗り小型ジェット機である。1回あたりの正規着陸料が3万3200円であり、現行約2万2100円が1万6600円になる。5500円分の特別割引になる。それでも小型ジェット機を運航する航空会社は小規模の会社が多く、毎日1便で年間約200万円にもなる割引は大きい。しかし、これで成田空港に路線を開設する便数は数社である。かりに増加が毎日5便であるとしても、成田空港株式会社(NAA)にとっては3000万円の収入増にしかならない。
 このような措置を取ったのは来年開港する中部国際空港への対抗である。中部国際空港が日本で初めての国際線と国内線をつなぐハブ空港になる。大阪では伊丹空港(国内)があり、新関西空港がハブ空港と銘打って開港したが、失敗した。中部国際空港が成田空港分のシェアを奪う勢いであり、その対抗措置であるが、成功する見込みはない。

(7月30日) 滑走路脇農地「小作権」/黒野NAA社長「話し合い」強調(7/30朝日千葉版)

 成田空港の暫定B滑走路脇にあり、誘導路を「へ」の字に曲げている農地の小作権解除問題について、成田国際空港会杜(NAA)の黒野匡彦社長は30日の記者会見で、「用地問題は従来通り、話し合い路線でいく。直ちに農業委員会にアクションを起こすことはない」と語った。

 【本紙の解説】
 黒野社長の記者会見の発言だが、「直ちに農業委員会にアクションを起こすことはない」という言い方は絶対に許されない。
 これは、戦術的には「従来通り、話し合い路線でいく」、そのために「直ちに農業委員会にアクションを起こすことはない」という意味である。「話し合い」が成り立たないと判断したら、小作権解除申請をだすという趣旨である。
 黒野社長の葉山弁護士への手紙(04年7月23日付日誌を参照)で、「(小作権解除申請)このような方針を決定した事実は一切ございません」とあったが、検討はしているが、決定はないということなのか。ANNで検討したが、部内と関係方面の反対があり、決定にはならなかった、それまでは「話し合い」路線で行かざるをえないということなのか。つまり、関係各方面、千葉県、成田農業委員会、千葉県警などの同意を取り付け、時期が来たら小作解除申請を行うという宣言である。
 反対同盟と三里塚闘争は、この黒野社長と全面的に対決し闘い抜く。

(7月30日) 暫定B滑走路再評価/投資効率13倍 NAAが試算(7/31朝日千葉版)

 成田空港を管理、運営する成田国際空港会社(NAA)は30日、着工から5年を経た暫定B滑走路を2500メートル化した場合の投資効率を再評価し、国土交通省に提出した。04年に着工し、07年に供用を開始すると仮定した場合、整備にかかる費用は1130億円、今後50年間にえられる便益は費用の13・1倍の1兆4820億円と試算している。
 2500メートル化で、現在は同滑走路を使えないジャンボ機が発着できることによる旅客の増加が大きく貢献するとNAAは予測している。

 【本紙の解説】
 2500メートル化の仮定は、本来計画の2500メートルであろう。北側再延長が叫ばれているのだから、北側延長した場合の工事費と便益も計算し、対照表をだしてもらいたかった。
 まず、北側延伸工事は、結局、東関道の北側への付け替え工事も必要となり、今後50年間でえられるという便益を超える費用になる。また、今のままの誘導路で2500メートル化しても、ジャンボ機はICAO規則では誘導路を通過できない。したがって、北側延伸は黒野社長のポケットの奥深くにあるだけで現実化はありえない。
 また、南側への既存計画での2500メートル化は、もっとありえない。東峰神社の「総有」は法律的にも確定し、東峰地区の全員の賛成がない限り移転はできない。墓地も同じである。現に農業などをして生活している住民がいるのである。
 そのことを、また空港建設における用地取得に関しての経済的試算はしているのか。成田空港の建設計画では、この用地取得に関わる経済的試算がなく、政治的、国家的威信の面目だけでやってきたことが、航空産業、空港間競争でアジアに完敗する結果を生んだことを教訓化しているのだろうか。
 しかし、成田国際空港会社(NAA)が暫定滑走路の2500メートル化について試算し、国交省に提出したということはどういうことか。国交省は羽田の再拡張に中心的関心があり、成田はどうでもいいという風潮なので、暫定滑走路の2500メートル化にすこしでも振り向いてくれという要求なのか。民営化の結果、成田空港は国交省への隷属化がより強まっているのであろう。

(7月31日) 成田空港発着/6月、過去最高508回(8/1千葉日報)

 成田国際空港会社が31日までにまとめた6月の「空港運用状況」によると、1日あたりの航空機発着回数は508・6回で開港以来、過去最高を記録し、3カ月連続で500回を超えたことが分かった。昨年、新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群)の影響を受けた国際線は、中国での回復がめざましく暫定平行滑走路(B滑走路)での発着が前年同期比51パーセント増と大きく伸びた。
 単月の発着回数は1万5218回で23パーセントの増加。中国路線が80パーセント増と勢いづき、一昨年との比較でも22パーセントの増加となった。これに伴い、航空旅客数が52パーセント増の258万2742人で過去最高を記録。一昨年比でも6パーセント増と盛り返したほか、海外旅行を控えていた邦人旅客が81パーセント増え全体を押し上げた。
 一方、不況知らずの航空貨物量は中国、米国向け輸出に支えられ、11パーセント増の19万1022トン。発着、旅客数に続き、貨物も6月としては過去最高を記録した。

 【本紙の解説】
 成田空港の発着回数は過去最高となっているが、これは、暫定滑走路が供用開始されたことによる当然の成り行きである。暫定滑走路は2002年4月に供用開始されたが、翌03年からSARSが本格化し中国便をはじめとして減便につぐ減便となった。今年から暫定滑走路供用開始による通常の便数になっただけである。したがって昨年比の増加など問題にならない。そのために2002年とも対比して6パーセント増としているが、2002年は2001年の9・11ニューヨークゲリラがあり、航空需要が落ち込みきった年であった。日本航空と全日空の今年1−6月の国際線旅客数はともに前年比2割以上の伸びを示しているが、9・11前年の2000年1−6月との対比では1割減なのである。
 侵略戦争とそれに対決する反米ゲリラ、各地でおこる各種の感染症の流行などで、航空業界の発展は右肩下がりになっているのである。とりわけ、国際線旅客便は激減情勢に入っており、航空会社の倒産も相次いでいる。

(8月3日) 空港脇農地の小作権解除問題/反対同盟 話し合い拒否(8/4千葉日報)

 成田空港の暫定平行滑走路脇にある農地の「小作権解除問題」で三里塚芝山連合空港反対同盟北原派(北原鉱治事務局長)は3日、話し合いの場を求めた成田国際空港会社(NAA)の要請に対し、代理人の顧問弁護士を通して「一切の話し合いはあり得ない」と回答したことを明らかにした。
 空港反対派の男性(54)が耕作する問題の農地(畑2カ所、約0・8ヘクタール)は天神峰地区の空港用地内にあり誘導路を「へ」の字に曲げる原因ともなっている。旅客機が立ち往生したり接触事故を起こすなど安全面での欠陥が指摘され、直線化を目指すNAAが周辺の土地約1・3ヘクタールを地主から買収したうえで、金銭補償や代替地を提案して立ち退きを求め今年3月に提訴している。
 男性の耕作権をめぐっては、NAAが農地法に基づく小作権解除の許可申請を成田市農業委員会を通して県知事に行なう方針が取りざたされ、反対派が反発を強めていた。NAAは黒野匡彦社長名で反対派の代理人弁護士に「方針決定の事実はない」と7月16日付文書で憶測を否定、男性との話し合い解決に向けた「場の設定」の仲介をあらためて要請した。
 今回の回答で代理人弁護士は「農民を巻き込んだ一大対決を差し控えたことは賢明」と評価する姿勢を示したが、話し合いには「B滑走路の供用停止が解決への前提」として応じる考えのないことを表明した。反対同盟北原派は、問題の農地は男性の祖父が御料牧場時代の原野を開墾して以来、90年以上にわたって問題なく耕作を続け「権利は時効取得されている」とし、「安全な野菜、自然農法を追求して守ってきた畑を他に代えることはできず、机上の論理にすぎない」と話している。

 【本紙の解説】
 これは、黒野NAA社長の葉山弁護士への書簡(04年7月23日付日誌を参照)に対する葉山弁護士の返答を紹介している記事である。黒野社長は書簡で「今回の報道により、市東様はもとより、葉山先生にもご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありませんでした」と言っておきながら、今後解除手続きなどの強硬方針はとらないとは言明しなかった。
 むしろ7月末の記者会見(04年7月30日付日誌を参照)では、当面は話し合い路線で行くがそれが失敗し、関係者の同意が取り付けられれば、小作権解除の強硬路線をとることもありうるという含みを持たせる発言をしている。
 このような脅迫まがいの発言に対して、反対同盟と葉山弁護士が「話し合い拒否」を返答したことは当然である。
 以下は、黒野社長への葉山弁護士の書簡全文。
 ………………………………………………………………………………
 前略
 貴殿からの本年7月16日付書面を受け取りました,市東孝雄氏の小作地の件につき「小作権解除申請へ」との方針を決定した事実がないことにつきましては、千葉県知事、農業委員会をもまき込んだ全国の精農農民らとの一大対決を差控えられた点において賢明なことと存じます。
 さて、貴会社におかれては、市東孝雄宅や農地にジェットブラストを吹きつけ、周縁地区住民の頭上40メートルにジェット機を離発着させ、騒音をまき散らし、多くの勧告方式、標準に違背し、シカゴ条約に違反して、B’滑走路の供用を続けておられます。これは不法行為というべきであり、直ちに供用を停止されるべきであります。
 B’滑走路の供用停止が解決へ向けての一切の前提であります。
 当方といたしましては、この件の先履行があれば格別、そうでない限り一切の話合いはあり得ません。宜しく御理解下さい。
                      草々
                     2004年8月2日
 成田国際空港株式会社
 代表取締役 黒野匡彦様

 市東孝雄氏代理人
  弁護士 葉山岳夫

(8月4日) テロ防止で水際強化/空港到着前に不審乗客確認(8/5千葉日報)

 政府は4日までに、外国から日本へ向かう航空機に乗った乗客の名前などの情報を航空会社から通報を受け、到着前に不審者がいないかチェックする「事前旅客情報システム(APIS)」を2005年度からスタートさせることを決めた。増加する外国人犯罪対策とテロ防止のため、水際対策を強化するのが狙い。
 航空会社からの情報を集約する「情報分析官」(仮称)を警察、入国管理局、税関に新たに置く方向でも検討する。
 APISは警察、法務、財務の3省庁が共同で開発。外国から航空機で日本へ向かう乗客が外国の空港でチェックインした段階で、乗客全員の氏名や性別、国籍、生年月日が専用回線で日本国内に送信される。
 これを警察庁、入管、税関のコンピューターがそれぞれの不審者リストと照合し、航空機が日本に到着する前に該当する名前がないかチェック。不審者の名前が見つかった場合は、到着する空港に情報分析官が連絡し、係官がその人物への入国審査を念入りに行なう。

 【本紙の解説】
 「増加する外国人犯罪対策とテロ防止」としているが、APISは、9・11の衝撃を受けて作り上げたものである。世界各国で既に導入が始まっている。ゲリラ戦闘員の個人情報をプロファイリングし、国家間でデータを交換しようというものである。出国する際、航空会社から事前に情報を到着空港の出入国管理当局に送り、航空時間内にチェックを行なってしまうもの。
 また、数人のゲリラ実行者が乗っていれば、航空機を爆破する判断にも使われるということである。民間航空機が侵略戦争の手段に使われるのは現代戦争では常識になっているが、民間航空機そのものが、戦争の最大のターゲットになり、攻撃手段にまでなっている。

(8月4日) 成田空港滑走路 猛暑に負け/成田空港で無数のひび割れ(8/5朝日社会面、毎日、東京各千葉版、千葉日報)

 成田国際空港会社は4日、A滑走路(4000メートル)の北端部分約1000平方メートルの範囲で、連日の猛暑による乾燥や航空機の荷重などで、ひび割れが複数見つかり、同日から8日まで夜間工事で舗装し直すと発表した。
 補修するのは傷みが激しい長さ70メートル、幅12メートルの部分など計3カ所で、ひび割れが拡大して航空機の発着に影響しないよう予防するのが目的と言う。
 工事は劣化している表面を10センチほどの厚さで削り取り、アスファルトで再舗装する。滑走路を使わない午後11時から翌日午前5時20分までの工事で、発着に影響はないと言う。
 気温が30度以上の場合、滑走路の表面温度は50度以上になる。同空港では猛暑の影響で7月にも2度、誘導路の舗装が一部はがれ、舗装し直している。

 【本紙の解説】
 滑走路は10年ごとにアスファルトを改修している。今年はその8年目と言っている。今年の猛暑に滑走路も勝てなかったようだ。目に見える劣化や破損はすぐ補修することになるが、民営化されたNAAは、安全性より利益追求に走らざるをえず、危険は増す。
 航空も鉄道も民営化された結果、安全性が無視されることが多くなっている。民営化と安全性は相容れないのである。

(8月7日) 「成果を残せた」 イラク復興支援の佐藤隊長ら帰国(8/8読売、東京、産経各千葉版)

 イラク南部サマワに派遣されている陸上自衛隊イラク復興業務支援隊の初代隊長、佐藤正久・1等陸佐(43)が現地での任務を終え、7日夕、20人の隊員とともに成田空港着の民間航空機で帰国した。
 「ひげの隊長」としてサマワの人々に親しまれた佐藤隊長は、「満足のいく成果を残せた」などと半年余りの活動を振り返った。
 1月19日に先遣隊長としていち早く現地入りした佐藤隊長は、「サマワは私の2番目の故郷」と繰り返し発言。さらにアラブの伝統服姿で記者会見に臨むなど、現地の文化を尊重する姿勢を示し続けたこともあって、市民から「サミール」(アラビア語で仲間の意味)の愛称で呼ばれた。
 7月末には、地元の有力部族長たちを回って離任を報告。陸自の宿営地近くの部族をまとめるライサン・ムターシャー部族長(38)には、「治安情勢が良くなったらもう1度、この地を訪れたい」と再会を約束した。地元紙「サーワ」のアドナーン・サミール編集長(43)は、「軍人というより、外交官のように地元に溶け込もうと努めていた」と話す。
 この日、ともに帰国した隊員の多くは、先遣隊のメンバーとして佐藤隊長と一緒にサマワ入り。現地の人たちの要望を直接聞いたうえで、連合国暫定当局(CPA)や地元のムサンナ県などと支援活動の内容を調整する役割を担ってきた。帰国後、会見した佐藤隊長は「イラクを愛する者として、微力ながら今後も復興支援にかかわっていきたい」などと語った。

 【本紙の解説】
 イラク派兵への出発、帰還に成田空港を使うことが常態化している。絶対に許すことことができない。新聞報道されただけで、これで7回目である。政府専用機で地方空港からも出兵しているが、民間航空機を使って成田を利用するケースが最も多い。この問題の帰結は、戦争がより切迫化してくれば、兵員移送を行なう民間機が攻撃されてもおかしくないということである。

TOPへ  週刊『三里塚』