SANRIZUKA
2001/03/15(No579 p02) 
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週刊『三里塚』(S579号1面1)
収用法改悪阻止シンポ
「収用権強化は戦前逆行」
反対同盟 国会・都心デモを貫徹
戦前の軍部、31万ヘクタールの軍用地収用
有事法制の核心部
土地問題 民衆の抵抗手段奪う
二月二十八日、反対同盟と顧問弁護団共催による「土地収用法改悪阻止シンポジウム」が、東京・霞が関の弁護士会館で行われた。土地収用法改悪案は三月二日、閣議決定をもって国会に提出されたが、その内容は一坪共有運動の実質的禁止措置など地権者側の抵抗手段を奪うことが主眼で、国の収用権を戦前なみに強化するもの。有事法制の核心部である土地強奪問題を先取りしている。反対同盟と弁護団はこのシンポで改悪案の具体的問題点と政府の狙いを暴き、法改悪阻止のたたかいの方向性を鮮明にうちだした。終了後、参加者は国会に向けてデモを行い、道行く人々に連帯を訴えた。
シンポジウム会場には約百五十人の参加者が集まった。司会は反対同盟事務局の木内秀次さんが行い、冒頭主催者を代表して反対同盟事務局長の北原鉱治さんがあいさつした。
北原さんは今回の土地収用法改悪攻撃の特徴を「一言でいって戦前の土地収用体制に戻すもの」と説明、「戦前、軍部の土地は三十一万ヘクタールあった。ほとんどが強制収用。現在の自衛隊の土地は九万ヘクタール。有事になれば再び三倍必要というのが政府の考え。それで収用法改悪が動き出した」と政府の狙いを暴いた。
また千葉県収用委員会が三里塚闘争の力で「空白」となっている事実を紹介、「三里塚の強制代執行が多くの人の命を奪ったことへの人民の怒りが正当だったことの証明だ」とし、三里塚の実力闘争は強権を振り回す権力への根底からの批判だと訴えた。
講演者は、前静岡県議会議員の白鳥良香さんと反対同盟顧問弁護団事務局長の葉山岳夫さん。
白鳥さんは静岡空港建設強行に反対する運動を地元で推進する立場から今回の土地収用法改悪の問題点を提起。「静岡空港はマスコミでも『不要な公共事業』の一つに上げられている計画で、反対派の共有地権者百八十人と立木トラスト参加者が千六百人。これが工事区域の八四%を阻んでいる」ことを明らかにした。
さらに建設省(現国土交通省)が今回の改悪案をまとめた「土地収用制度調査研究会」(「民間」を含む二十人の委員=非公開)での議論を紹介し、「議論を常にリードしたのは収用委員会と建設省の委員。彼らの結論は『相手方は敵対者で一切協力を得られないことを前提に、なおかつ迅速に収用可能な仕組みに改正(改悪)すべき』だった。ここに本質がある」と法改悪の核心を指摘した。
第二講演の葉山弁護士は今回の土地収用法改悪の法律的問題点を詳細に明らかにした。戦前、戦後の土地収用法の変遷をたどりながら、「戦後土地収用法そのものが住民の財産権を一方的に侵す違憲法令」であること、「今回の改悪は特に沖縄など軍事基地反対運動との関連において切迫している」こと、さらに戦前の国家総動員法〜周辺事態法九条(民間動員、施設の対米提供等)〜土地収用法改悪〜有事法制制定攻撃の一貫した問題などを説明、「改憲阻止闘争、成田闘争、全国の住民闘争が一体となってたたかう必要がある」と締めくくった。
各界からの報告では沖縄一坪反戦地主会の狩野正幸さん、関西空港・神戸空港建設に反対する東灘住民の会・山本善偉さん、東京外環道建設ともたたかってきた元東京都議・長谷川英憲さんなどが発言した。
このなかで狩野さんは「米軍用地特措法を二度も改悪し、土地収用法本体にまで手をつけたことで、米軍基地の確保という政府側の意図にただならぬものを感じる」とのべた。
また山本さんは「私たちのたたかいの根底には二度と戦争をしないという決意がある。関空二期や神戸空港の強引な建設、土地収用法改悪と成田問題の歴史、すべてがつながる」と提起、さらに長谷川さんは今回の土地収用法改悪で主導的役割を果たしている石原東京都知事の狙いを指摘、「三千軒の強制移転」となる東京外環道問題を含め「有事法制に等しい土地収用法改悪を反対同盟とともに阻止しよう」と訴えた。
最後に反対同盟事務局長次長の萩原進さんが三月二日の法案国会提出=閣議決定に対する直接抗議闘争など、当面する行動方針を提起し、シンポジウムを締めくくった。(2面に北原さんと講演者二人の発言詳細を掲載。シンポ全体の詳細はインターネットのホームページで紹介予定)
今回の土地収用法改悪問題について、国土交通省など推進勢力や一部御用マスコミが事前説明会の「義務化」などをもって「公共事業見直しの一環としての収用法改正」を云々することはまったく転倒している。反対同盟シンポジウムは、こうした論議のウソを暴き改悪側の意図を明確に突き出すことに成功した。
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週刊『三里塚』(S579号1面2)
反対同盟が国会座込み 法案提出を弾劾 収用法改悪案 「有事法制と一体だ」
森内閣が土地収用法改悪案の閣議決定―国会提出を強行した三月二日、反対同盟はこれを弾劾する国会前闘争を行った。
北原鉱治事務局長を先頭に本部役員の鈴木幸司さんと郡司一治さん、婦人行動隊長の小林なつさんらが三里塚現地から駆けつけ、呼びかけに応えた動労千葉の滝口誠さん、反戦共同行動委員会、婦人民主クラブ全国協議会、全学連、沖縄一坪反戦地主会など約三十人も加わり、閣議決定強行に抗議の声をあげた。
午前十時、衆議院第二議員会館前に陣取った反対同盟一行は横断幕、のぼりを林立させハンドマイクで収用法改悪の実態を訴えた。
北原事務局長は「土地収用法改悪は、時代を戦前へ逆行させる暴挙です。ともに反対しましょう」と通行する人びとに訴えた。鈴木幸司さん、小林なつさんも次々とマイクをとった。
隣には春闘で国会闘争をたたかうタクシー労働者のグループが陣取っていて、ビラを交換するなどの交流もあった。
途中「森首相が退陣するまで座り込みを続ける」との趣旨で近くで座り込み闘争を行っていた作家の宮崎学さんのグループが反対同盟への激励に訪れ、北原さんらと固い握手。
小林なつさんは、婦民全国協の仲間などと共に衆議院、参議院議員会館を訪れ、「公共事業チェック議員の会」の国会議員たちにビラを配り土地収用法改悪阻止への協力を訴えた。
最後に北原事務局長が「もし収用法改悪案が審議入りするようなことがあれば、さらなる対国会闘争を継続しよう」と集約、闘争の継続を呼びかけた。
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週刊『三里塚』(S579号1面3)
3・25三里塚現地へ 反対同盟より訴え
立木伐採阻止の東峰決戦/収用法改悪阻止へ
反対同盟各氏から3・25全国集会へのアピールをいただいた。
●事務局長・北原鉱治さんの話
天神峰の団結街道は通告もなく封鎖された。厚い鉄板フェンスが張り巡らされ、鉄板の上には電流の通った有刺鉄線が張られている。戦時中の捕虜収容所のようだ。農民にこうした環境を強制してたたきだすこと自体が暫定滑走路の狙いです。権力のやり方は三十年前と変わりません。
土地収用法の改悪が狙われていますが、有事立法につながる問題です。戦前のアジア侵略戦争の時のように、国が必要と認めた土地を、政府が「公共」の名で没収するものです。
東京都知事の石原慎太郎は昨年九月に防災訓練をやるに先立って土地収用法の改悪をいいだした。ここに問題がよく表われている。
3・25全国集会は暫定滑走路供用をめぐる決戦本番の開始です。多数の結集を期待しています。
●事務局次長・萩原進さんの話
日本の政治、経済、社会のすべてが行きづまってきた。危機突破のための教育反動や有事法制。憲法改悪もついに動き出した。そのなかでの今回の土地収用法の改悪だ。
三里塚は来年の暫定滑走路供用開始をめぐる決戦のただ中にある。東峰神社の立木伐採を絶対に許してはならない。反対同盟は断固として実力でたたかう決意だ。農家の目の前まで滑走路を造るような暴挙、曲がった誘導路、使い物にならない滑走路の実態などを全世界の人々に明らかにしなければならない。3・25全国集会で現地攻防の決戦の火ぶたを切る。
暫定滑走路は完全に破産している。一日せいぜい十四便。それを無理やり飛ばして農家を追い出そうという「勉強会」を国土交通省は組織している。空港に反対する農民をエゴだと非難してきた連中こそがエゴではないか。3・25全国集会で労農学の新たな連帯を強化しよう。
●天神峰部落・市東孝雄さんの話
インドの大地震救援ということで、自衛隊の輸送機が成田空港を使いました。軍用機が成田から出て行く様子は異様でした。政府は軍事使用しないなんていってましたがウソですね。
小見川県道のトンネル工事は振動がひどかった。団結街道について成田市は、「廃道にしない。六月までに元に戻す」といっていたがウソでした。彼らは本気でわれわれを追い出すつもりだったんですね。
ガードマンや私服刑事はいまだに家を覗(のぞ)いたりしている。私服車の尾行は毎日。この間も関西から訪ねてきた人がびっくりしてました。
土地収用法の改悪は国が勝手に土地を取り上げるという話。一坪運動をやらせないのもひどい。扇国土交通大臣が「三里塚の一坪共有地も強制収用すべきだ」といっていました。
反対同盟は暫定滑走路の十一月完成計画を絶対に許さない。多くの人が3・25集会に集まってほしい。
●婦人行動隊長・小林なつさんの話
戦前のような状況になってきた。森首相の支持率がどんどん下がっているのはあたりまえ。KSD汚職も機密費問題も原潜事故の時の首相のギャンブルもひどいものです。
土地収用法の改悪は一坪運動をつぶしたり軍事基地を造ることがねらいです。三里塚で失敗したので法律を変えるという話です。
沖縄では知花昌一さんの土地を政府と米軍が取り上げている。米兵の犯罪を政府は放置している。みんな戦争のためです。
郡司とめさんや市東東市さんなど多くの同志を失ったけれど、反対同盟はたたかい続ける決意です。私も郡司さんの遺志をついでがんばっていきます。
三里塚闘争はこれから正念場です。全国の闘う人々の力で勝利しましょう。
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週刊『三里塚』(S579号1面4)
ピンスポット 運輸省「共生原則」のウソ自認
「あれは成田の方便」 地方空港は「関係ない!」
静岡空港建設計画にかかわる「静岡空港設置許可処分の取消」を地元住民が求めている裁判で、運輸省側が成田の公開シンポや円卓会議の確約を反故にすることを公言していたことが明らかになった。収用法改悪阻止シンポ(2・28=本号)で前静岡県議の白鳥良香さん(写真)が紹介したもの。
それによると運輸省側は、かつて成田シンポ・円卓会議で確約した「一切の強制手段を放棄」などの「共生原則」について、「あれは国次元の空港建設に通用する約束で、第三種空港である静岡空港とは全く関係のない方針(!)」と公判の場で語ったという。
白鳥さんは「運輸省のいう『共生原則』はまやかしだという反対同盟の皆さんの指摘がいかに正しいかが証明された」と語った。
同裁判は昨年十二月に静岡地裁が住民側請求を退ける不当判決を下し、現在も控訴審続行中。まだ事業認定以前の段階なのに、地裁は「将来の強制収用」を不当にも正当化した。
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週刊『三里塚』(S579号1面5)
団結街道
事務所に沈丁花(じんちょうげ)が生けてあった。甘い香り。毎年、卒業や人事異動など「別れの季節」にこの花が咲くので、この香りに出会うと切ない気持ちになる人も多いそうな▼市東東市さん(故人)は、自宅の沈丁花の苗を会田芳枝さん(同)に贈っていた。「逃げたと思われたらやだからきた」と言って昨年の旗開きに参加した会田さん。病床で見舞いの同盟員に「オレは最後までがんばるからなー」とこぶしをつき上げて見せた姿が沈丁花の香りと重なる▼沈丁花と入れ替わりに、会田さん宅から贈られた子猫は、サバもようの立派な「虎猫」となった。車の往来にも注意を怠らない賢いやつだ。天神峰の風景にもなじんで飼い主の分まで長生きしている▼かつて東峰部落の萩原さん宅にあった花の苗が、多くの婦人行動隊に配られ、その美しさが評判になったことがあったそうだ。誰もその花の名前を知らなかったので、婦行の面々は「トウホウバナ」と呼んで慈(いつく)しんだ。今度調べてみる▼春一番。今年も三里塚名物゛赤っ風゛が舞った。このざらざらの感触の中でいくたびもの決戦に臨んだ年配の同志も多い。そう。決戦の季節到来である。工事区域が徐々に農村風景を破壊する。使い物にならない「一七四〇b」暫定滑走路。離島空港なみの短さだ。公団は「農家上空四十bを飛ばす」「生活できなくなるから(屈服する)」と公言する▼彼らのもくろみは必ず失敗する。農民の尊厳を踏みにじるツケは必ず払ってもらう。それが三里塚の流儀だ。ちなみに沈丁花の花言葉は「不滅」である。
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週刊『三里塚』(S579号1面6)
闘いの言葉
自から犯した誤りに対する党の態度は、その真面目さを測り、階級と勤労大衆への真剣さを測る、重要で確実な基準の一である。
N・レーニン
一九二〇年『共産主義における左翼空論主義』
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週刊『三里塚』(S579号2面1)
2・28収用法改悪阻止シンポの講演より
「敵対者からの収用を想定」し作成! 収用法改悪案 建設省委員が「研究会」で公言
三里塚空港反対同盟と顧問弁護団の共催による「土地収用法改悪阻止シンポジウム」が、二月二十八日、東京霞が関の弁護士会館で開催され、百五十人の参加者を得て成功した。シンポではメイン企画として「土地収用法改悪が住民運動に与える影響」について静岡空港建設とたたかっている白鳥良香さん(前静岡県議)が、「有事法制攻撃の先取りとしての収用法改悪」について顧問弁護団事務局長の葉山岳夫さんがそれぞれ講演を行い、参加者に感銘を与えた。収用法とたたかいつづけてきた反対同盟・北原鉱治事務局長の主催者あいさつとあわせて要旨を紹介する。
“体張り強権政治阻止”反対同盟事務局長・北原 鉱治さん
今回の土地収用法改悪は、国の一存においてどんどん土地を奪うという、戦前への逆行を行おうというものです。
現在の土地収用法ですら、裁決申請された事業認定について却下されたという話を聞いたことがない。これはおかしいということで、千葉県では心ある人びとによって収用委員会が粉砕され、今も委員会が存在していないという歴史があるわけですが、きわめて強権的な現在の収用法でも政府・権力にとっては不充分だと言う。
そこで、あさって土地収用法の改悪案が閣議決定されようとしている。このままでは民主主義の一片のかけらもない、専制政治が強行されてしまいます。
戦前日本では、陸海軍の軍用地が三十一万ヘクタール存在していた。これはほとんど強制収用によって奪われた土地ですが、こうした体制をもって日本は対米英の戦争に突入して行った。
強奪し放題
現在はといえば、自衛隊の用地が全国で約九万ヘクタールあるわけですけども、有事の際は、戦前と同等の三十万ヘクタール程度はどうしても必要となるし、そうした事態が今到来している。広大な軍用地を強制収用することが今回の土地収用法改悪の重大な狙いだと思います。
三里塚では強制代執行が何度も行われてきましたが、そのたびに尊い生命を失い、何千という逮捕者を出し、また何万という人びとが土地強奪に反対して決起してくれた。それは現在もつづいている。
私が大学に行っていつも話すのは、学問と並行して今の政治がどのように動いているのかということも勉強してもらいたいということです。そして共に決起してほしいということです。
再び戦争の道を許すのかか、それともこれを阻止するのか、私たち一人ひとりがしっかりと考えなければいけない情勢がきています。
昨年九月には、石原東京都知事が「防災訓練」に名を借りて自衛隊を動員しました。この石原の強い要求で、今回の改悪も動き出したと聞いています。
われわれは実力闘争をもって土地収用法とたたかうと同時に法改悪を許さないたたかいを展開したいと思います。
今日のシンポジウムを契機に土地収用法の改悪を許さず、今の政府を打倒するたたかいを展開しようではありませんか。
静岡空港 不要公共事業の筆頭 前静岡県議会議員・白鳥 良香さん
静岡空港建設が持ち上がって来たのは、四全総(第四次全国総合開発計画=一九八七〜二〇〇〇)によってです。当時の中曽根内閣が全国一日交通圏という、「全国改造」構想で計画を立ち上げたわけです。そして、静岡県には空港が一つもない、空港を作るべきだという声を一部のゼネコン業者から上げさせ、県知事や県議会がそれをとらえて県民の要望がある、と静岡空港建設を押し上げた。
ですから空港を造るということが大前提で、島田市、金谷町、榛原町、吉田町に県の決定を押し付けたのです。
場所は、静岡県中部の牧ノ原台地であります。この五三〇ヘクタールの茶園地帯に、山を削り谷を埋めてそして二五〇〇メートルの滑走路をもつ空港を造るということが進行しているわけです。(左に記事)
もちろん住民は、反対地権者の農民を先頭に、そして騒音地区の住民、県内の労働運動・市民運動が一緒になって六つの反対運動組織を作り、また連合体を作り、反対運動をつづけてきています。
この空港建設のデタラメさというのは今では県民にほとんど明らかになってきています。
全国的にも大変問題になりまして、マスコミ各紙が全国の不要公共事業の一つに静岡空港をあげています。神戸空港、諌早湾、吉野川可動堰とならんでまったくゼネコンのための公共事業だということが明らかになっているわけですが、九八年から静岡県は工事に着工し、千九百億円という予算計画で進行しています。
九八年着工以来、すでに一千億円を使い切って、本体工事も進行は一六パーセントしか進まず、後八四パーセントの工事を残りの九百億円でできるはずがない。全国まれに見るというか、広島空港とか岡山空港の二倍は必要とする土木工事ですから、千九百億でできるはずがないのですが、そのことがいよいよ赤裸々になっているわけです。
なぜこういう事態になったかというと、実は工事をやる場所がなくなってしまっている。工事を広げたくても広げられない。反対農民、約百八十名の反対地権者、そして千六百名の立木トラスト参加者、こうした反対運動の側のもっている土地が虫食いのように残りの八四パーセントの工事を必要とする部分に入っている。工事を進めようがなくなっている。
私は県議会で「知事、あなたは強権発動を考えているのか」と迫ったのですが、知事は「理解と納得のうえで土地を取得します」と言うだけだった。
収用を公言
しかし私どもが起こした二つの訴訟で、県や運輸省の代理人が「この事業は土地収用法の適用事業だから収用法で土地は間違いなく取得できます」と、公然と主張した。
そして昨年十二月に、静岡地裁も県勝訴の判決を下した。土地収用法という牙を剥き出してきたということがはっきりしてきた。
ちなみにこの裁判で、三里塚で約束した「空港と地域の共生」について運輸省の代理人は「あれは国次元の空港建設の約束なのであって、第三種空港の静岡空港とは全く関係ない」とぬけぬけと言い張ってます。
さて、わたくしどもが直接、収用法と対決する局面が迫って来たという時期に、昨年の春から収用法改正の動きが公然としてきたわけです。認定手続きの民主化などうたっているわけですが、現在の土地収用法自体がすでに法律とは呼べない前近代的な強権法です。事前説明もなければ、公聴会の義務づけもなければ、理由の開示の義務づけもない、そんなものは法律として通用しないのは当たり前。だから情報公開を義務付けたところで痛くもかゆくもないというふうに運用できるのです。
中でも、収用手続きの迅速化というのが法改悪の眼目です。一坪共有運動・一坪地主が、収用の手続きを進めさせない武器として、三里塚をはじめとして数多くのたたかいで編み出されて来た。それが全国の多くの力になってきた。この一坪共有運動をつぶす。
なぜ改正をするのかという理由は、例えば東京日の出のごみ処分場で五千七百万円の土地を取得するために十二億円を使ったという、六百兆という国の財政赤字の時にこういう無駄は許されない、公共事業を阻害している一坪共有運動を一刻も早く無くさなければならない、と言っている。
そして収用委員会では、もう事業の適法性=収用がいいか悪いかなどということは一切審議の対象に加えないということを明文化しようとしている。
さらに「地権者は敵対者だ」「それでも強制収用できる法制度を作らなきゃいけない」と建設省委員が公言している。ここに今回の改悪の本質がある。こういう改悪を万が一にも許したら、住民の土地はやりたい放題に国家権力に取られてしまう。抵抗の手段も無くなってしまう。
こういう状況の中で、土地収用法とのたたかいの先陣を切ってこられた反対同盟と弁護団がシンポジウムを開いたことは、全国の住民運動に対する大きな励ましとなります。
共に力を合わせて収用法改悪を阻止しましょう。
「軍用地の収用が焦点」 顧問弁護団事務局長・葉山 岳夫さん
土地収用法とは対象とする土地への死刑執行法であり、現行法自体が憲法違反だということをまず申し上げておきたい。
「何ゆえに収用するのか」という説明が地権者に一切ない。国の行う事業について建設大臣が認可するのは、「権力分立」の原理に違反している。そして事業認定による地価固定制度は憲法の「正当な補償」の定めに違反します。
成田の例で言いますと、事業認定当時の地価と九〇年の地価では一対十五になっている。九〇年の段階で土地を売って移転しようとしても十五分の一の土地しか取得できないという状況になっています。
そこへもって来て、国土交通省は土地収用法をさらに改悪しようとしているのです。まやかしの情報公開、住民参加手続きと引きかえに収用委員会審理において事業認定違法の主張を封じ込めるということが大きな特徴です。
説明会の開催を義務づける、公聴会をやらなきゃいかんといっているのですが、こんなものは単に説明するのみで、住民の意向を聞くなどありえない。それから事業認定の理由を公表するというわけですが、当たり前の話であります。
そして最大の問題は、収用委員会の審理の中で事業認定が違法だという主張を制限しようという点であります。成田空港の場合、空港の内定からわずか十二日で位置の閣議決定をしてしまった(一九六六年七月四日)。その位置の策定に対し、住民の意志や意向は全く無視された。それこそ国の側から住民との話し合いを拒否した。
沖縄軍用地
だから収用委員会審理で「事業認定は違法だ」という主張が爆発したわけで、当然の話です。改悪案ではこれすらも条文で禁止するというわけで、とんでもない暴挙です。
さらに、「公共事業の効率化、迅速化」という名の下に一坪共有運動の封じ込め、無力化を狙うことが顕著です。
一坪共有者が大勢いるとめんどうだというので、代表当事者制度を取り入れる。補償金の払い渡し方法も簡略化します。現行法では、収用裁決をした者について、補償金を払わないと、代執行ができない。多数の当事者がいる場合については本人に現金を手渡す、俺は受け取らないと言った場合供託する。
これを改悪案では、多数当事者の場合には、書留の発送で金は払ったものとする、受け取ったかどうかは関係ない、という乱暴極まる見なし方で処理してしまおうというものです。
そして、収用適格事業についても拡大せんとする意図があります。旧土地収用法のなかでは、イの一番に軍事に関する事業が規定されていましたが、現行法は戦後憲法下で制定されたため、軍事に関する事業は収用適格事業から排除されています。その結果として、航空自衛隊百里基地におきましては、誘導路はくの字に曲がったままです。今回の改悪案ではさすがに明示はされていませんが、軍事に関する事業を適格事業に加える意図を明確に持っている。すでに防衛施設庁筋の話として「自衛隊は軍隊ではないから、自衛隊施設は公共性があるから収用適格事業にしてよい」などととんでもないことを言い出している。
これは要するに、刃物をもった強盗が「俺は強盗でないから、カンパをだせ」というのと同じような暴論でありまして、改憲問題と連動します。
また、収用法の改悪は地方分権一括法と一体となって沖縄軍用地の強奪をねらってやって来ているわけです。(注)事態は切迫しています。有事立法のための各省庁間の検討会が発足しました。改憲攻撃が急を告げている。戦争国家化への攻撃が強化している。有事法制では、自衛隊による土地、家屋の強制使用が行われようとしていますが、それに関連した収用法の改悪が強行される恐れもあります。反戦闘争の重大な課題として土地収用法改悪とたたかわねばならないと思います。
(注)地方分権一括法
周辺事態法、盗聴法などの悪法を作った第一四五国会の終盤(一九九九年七月)に制定された四百七十五本の地方自治関連の改悪法の総称。
この中に米軍特措法と土地収用法の改悪が含まれており、前者では県収用委員会に代わって首相による代行裁決が決められ、後者では機関委任事務の廃止=法定受託事務の創設によって県知事の代理署名権が剥奪された。いずれも沖縄の米軍用地をはじめとする土地強奪を念頭においた法改悪だ。
《全国の一坪共有・トラスト運動》
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場所と事業
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起業者
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反対運動の形態
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人数
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| 静岡空港 |
静岡県 |
一坪運動・立木トラスト |
計1800人 |
| びわこ空港 |
滋賀県 |
立木トラスト |
約430人 |
| 東京都日の出産廃処分場 |
三多摩廃棄物処分組合 |
立木トラスト |
2800人 |
| 岐阜県徳山ダム |
水資源公団 |
一坪運動 |
48人 |
| 徳島県木頭ダム |
四国地方建設局 |
借地トラスト |
約3000人 |
| 岡山県苫田ダム |
中国地方建設省 |
一坪運動 |
1097人 |
| 東京・地下鉄半蔵門線 |
営団地下鉄 |
一坪運動 |
260人 |
| 石川県辰巳ダム |
石川県 |
土地共有・立木トラスト |
282人 |
| 長野県蓼科ダム |
長野県 |
立木トラスト |
450人 |
| 愛知県万博会場予定地 |
愛知県 |
立木トラスト |
約1000人 |
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週刊『三里塚』(S579号2面2)
ゼネコンのための静岡空港建設 進渉率16%! 破たん必至
静岡空港計画は、中曽根内閣が策定した第四次全国総合開発計画(一九八七年〜二〇〇〇年)によって浮上した。四全総は、「多極分散型国土の形成」と称しつつ、「全国十五カ所の空港機能を整備する」とした日帝独占資本のための土木事業計画であった。
一九八七年に「静岡県新総合計画」で斎藤知事が、最重要課題の一つとして位置付け、同年十二月に建設予定地を決定した。場所は大井川沿いで島田市、榛原町、吉田町、金谷町にまたがる通称牧の原台地。規模は五三〇ヘクタール。二五〇〇b滑走路一本の第三種地方空港だ。
第六次空港整備五カ年計画(一九九一〜九六)で、びわこ空港、神戸空港、大館能代空港、小笠原空港、新石垣空港とともに「予定事業」に組み入れられた。
予定事業とは、そのまま新規事業となるのではなく、設定された課題をクリアーして初めて新規事業に格上げされるというものだった。
静岡空港の課題とされたのは「航空自衛隊浜松基地との空域の調整」であった。さらに東に羽田空港、西に中部国際空港、そして東海道新幹線が東西に走る静岡県に、航空需要のあろうはずがない。航空会社の間では「東京や大阪路線が見込めない静岡空港では採算が合わない」「ビジネス客の乗らない観光客だけでは利益が出ない」と尻込みする声が上がった。
それでも日帝・運輸省と静岡県は一九九三年に防衛庁との空域調整を済ませ、一九九六年七月、空港の設置を許可。一九九八年九月、住民の反対を押し切って着工した。
現在工事は予定の一六・三lしか進んでおらず、買収拒否農家五軒、百八十四人の反対地権者、千六百人の立ち木トラスト参加者が強力な反対運動を展開している。三月七日からは「静岡空港の是非を問う住民投票条例を求める署名運動」がスタートする。
土地収用法改悪策動は東京都と静岡県が主張して始まった。静岡空港反対闘争に収用法攻撃が加えられてくるのは時間の問題だ。三里塚闘争と連帯した力で収用法改悪を阻止すると共に静岡空港計画を撤回させなければならない。
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週刊『三里塚』(S579号2面3)
北総の空の下で
無農薬農業
悪循環の克服かけ
日差しが強くなりました。深呼吸すると太陽のエネルギーが充填されるような気持ちになります。寒中の農作業に床土(とこつち=苗を移植する時に使う腐葉土)作りがあります。ビニールハウスの一画を囲って、落花生の茎、落ち葉、ぬかを混ぜ込み、上に稲わらを敷きつめて十分に水を染ませます。
踏み固めること約一時間、少しは脂肪が燃えたかなと期待しつつ汗をぬぐいます。
今年萩原進さん宅では、家の周りの落ち葉だけでは足りず、畑の先の雑木林まで落ち葉を集めに行きました。化学肥料が普及するまでは、落ち葉はもちろん下草も大切な肥料で、枯れ枝は貴重な燃料となるため、先を争って集めたそうですが、今はほとんど人が入りません。
空港建設やその警備のためと称して、雑木林が理不尽に伐採された事情もあります。
即効性のある化学肥料は、昔は配給でしか手に入らないため、少しずつ大切に使ったとの事。でも現代農業では化学肥料の多用が地力を低下させ、その分農薬の使用を増やすという悪循環を生み出しています。無農薬・有機栽培方式はそこからの脱皮をかけた営農方法です。
昨年、萩原さんの畑で模様のある土器の破片が見つかりました。専門家に見てもらった所、縄文初期の物と分かりました。進さんの母親である萩原哲子さんによれば、戦後、竹林や松林を開墾していた頃には「大きな壷のようなものがずい分出てきた」との事。
この雑木林の下には先人たちの生活につながる物が今もひっそりと眠っているかも知れません。彼らもここを飛行場にする事など決して望んでいないはずです。
(北里一枝)
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週刊『三里塚』(S579号2面4)
三芝百景 三里塚現地日誌 2001 2月21日(水)〜3月6日(火)
●市東さん宅にビニールハウス完成 敷地内天神峰の市東孝雄さん宅で、新しいビニールハウスが完成した。たて10・8b×よこ5・4bの立派なもの。「暫定滑走路建設阻止」の大看板の横に作られた。稲やさまざまな野菜の苗を育てるのに威力を発揮する。暫定滑走路建設による追い出し攻撃に負けず、天神峰の地で農業をやりぬく市東さんの気持ちが込められている。(22日)
●成田空港アクセス最悪 空港公団が日本人旅行者を対象に行った「旅客満足度調査」で成田空港はアクセスの点で最下位の25位。(22日)
●3・25集会への招請状出る
三里塚現地で開かれる3・25全国集会への結集を訴える反対同盟の招請状が作成され発送された。(24日)
●土地収用法シンポが成功
反対同盟と顧問弁護団の共催による「土地収用法改悪阻止シンポジウム」が東京・霞が関の弁護士会館講堂で開かれ、150人の参加者を得て成功した。(28日)
●市東宅の猫に“嫌疑゜ 市東孝雄さん宅のレタスの苗が何者かによって踏み荒されていた。“嫌疑゜をかけられているのが東市さんの可愛がっていた飼い猫“オミ゜。苗の上で惰眠をむさぼったらしい。「オミは家族の一員だが、農家にはルールがあることを教え込まなければダメだな」と孝雄さんはしばらく“教育的指導゜を行うつもり。(3月1日)
●収用法改悪法案の国会提出に抗議 反対同盟は動労千葉や全学連、反戦共同行動委員会、婦人民主クラブ全国協議会などに呼びかけて、土地収用法改悪法案の閣議決定・国会提出に対する抗議行動を衆議院第2議員会館前で展開した。国会行動には、「とめよう戦争への道 百万人署名運動」の呼びかけ人で作家の宮崎学さんも激励にかけつけた。(2日=写真左)
●伊藤さんが部落解放同盟全国連大会へ 大阪市森之宮ピロティホールで行われた部落解放同盟全国連合会の第10回大会に反対同盟から伊藤信晴さんが参加して、連帯のあいさつを行い、三里塚反対同盟が部落解放闘争の一翼を担う決意を述べた。(4日)
●飛行コースをずれて飛行
午前11時ころ、4000b滑走路を飛び立った航空機2機が、「暫定滑走路コースに接近して飛行していた」と市東孝雄さんが証言した。(5日)
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