SANRIZUKA 2001/05/01(No582 p02)

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週刊『三里塚』(S582号1面1)

堂本知事 「2500メートル」「完全空港」を公言
 裏切り者・小川国彦が「指南」 むき出しの屈服強要

 軒先工事積極承認 「県が建設の主体」!?

 堂本千葉県知事が成田市長の小川国彦とはかり、成田空港「二五〇〇b平行滑走路」完成のための中心的役割を自らはたすとの考えを明らかにした。県や市が公団用地部と直接連携して反対派農民への屈服強要の工作を行うという反動的意思表示であり、きわめて重大だ。堂本は「成田空港問題の解決(三里塚闘争破壊!)」のための「国、県、公団、周辺自治体の四者協議会」設置も打ち上げ、連休明けにも始動させる方針だ。「市民派」「環境派」を標ぼうして知事となった堂本は、いまや三里塚闘争の最悪の破壊者である。堂本県政との徹底的な対決を呼びかける。
 堂本が成田空港問題への基本スタンスを確定したのは、七日の成田市長・小川国彦との会談だった。堂本は当選後、政府関係者や中央省庁などすべての訪問外交に先立ち真っ先に成田市長・小川の後援会パーティーに参加、小川から「成田問題の扱い方」の指南を受けた。
 ここで堂本は「成田をとりまく現状を正確に把握」(4・16朝日)したうえで、知事と県自らが「二五〇〇b滑走路実現の主体」になるという政治姿勢を明確にした。
 県がみずから「空港建設の主体(?)」になる。そして「二五〇〇b滑走路を実現する」こと。この二つが堂本の主張のポイントである。過去三十数年間の千葉県の姿勢を反動的にエスカレートする大転換だ。
 成田空港の建設主体は法的枠組みとしては政府・国土交通省である。県の役割はあくまで周辺対策だ。例外なく地元住民の利害を侵す国の大規模プロジェクト推進に対して、住民の利益を守ることが自治体の基本的立場である。
 堂本は今回、この枠組みを初めて公然と破壊した。県が「空港建設の主体」になると言い切り、反対派農民の屈服工作に自ら乗り出すというのである。あまりに重大な事態といわなければならない。
 そして堂本は四月九日、首相の森と直接会談し「二五〇〇b滑走路の実現」と三里塚闘争破壊のための「国、県、公団、周辺自治体の四者協議会(後述)設置」を打ち出し、政府の了承を取り付けた。反対同盟破壊のための攻撃を国家ぐるみでもう一度推進するとの確認を、堂本が主体となって取り付けたのである。
 千葉県がここまで成田空港建設の攻撃「主体」として積極性をむき出しにしたのは三里塚闘争の歴史上はじめてのことだ。堂本が゛確信犯″であることも最終的に明白になった。

 2500実現の4者協議会設置

 堂本の政治姿勢は、以下の点できわめて反動的だ。
 第一に成田空港問題について、自らが「解決」に乗り出すとする積極的な攻撃性である。行政の立場からいう成田問題の「解決」とは、イコール反対同盟・地権者農民への切り崩しであり、三里塚闘争の破壊だ。
 以前、脱落派と運輸省の政治談合、シンポ・円卓会議で、国は過去のいきさつ(強制収用などの経緯)を「公式に謝罪」した。ペテンは明白だが公の場で「謝罪」したのだ。平行滑走路については「地権者の同意なき着工はしない」と最終報告(円卓会議=九四年)にも明記され、関係者はその遵守を「誓った」。
 にもかかわらず国の実践的結論は、平行滑走路(現在は暫定滑走路)の一方的な押し付けであった。かつてと同様、地権者の反対の声は無視され、軒先工事が暴力的に着工された。暴力団の地上げ屋のごとく、農家の軒先を機動隊で固めて工事を始め、屈服を迫ってきたのだ。それが隠しようもない現実である。
 重要な点は、堂本知事がこの成田問題の経緯をすべて容認したことにある。知事は国彦(小川市長。反対同盟は軽蔑をこめて「国彦」と呼ぶ)から成田問題の詳細をレクチャーされた(四月七日)という。敷地内農民がおかれた状況も十分に承知した。それでなおかつ軒先工事を批判するのではなく、逆に暫定滑走路の積極的容認を決断、あろうことか「二五〇〇b滑走路の実現」を自己の政治主張の中心に据えたのである。

 県官僚の意のまま 空港利権も公共事業も

 第二に、堂本は「成田空港問題」を盾にして国や県の財政を食い物にする利権集団の意向を承知のうえで、巨大公共事業をはじめとす旧来の利権構造を無条件に後押しする姿勢を明確にした。
 「成田新高速鉄道」の推進表明が典型だが、堂本はゼネコン利権を背景にした県幹部の意向を最初から無批判的に受け入れた。「市民派知事」の体裁はすでに跡形もない。
 堂本が提唱した「四者協議会」は、それ自体が三里塚闘争破壊のために機能するが、もうひとつの重要な側面は「国費獲得」のためにするトンネル機関というところにある。
 そもそもこの四者協議会なるものは長年の小川国彦プラン。予算上乗せ要求組織としての意図が露骨で、運輸省(当時)はこのプランを一貫して拒否し続けてきた。堂本の登場は国彦にとってプラン復活の渡りに船だったわけだ。
 そして早速、「成田新高速鉄道」の復活である。計画は二〇一〇年度開通予定で建設費は千三百億円。一説では二千億を超えるという。よくある話ではある。この鉄道は京成線やJRと競合し、採算性などがいまだに危ぶまれている計画でもある。この財政危機の下で、ブルジョア経済的にいっても強行するのは暴論に近い。
 そんな詳細展望は検討もせず、堂本は当選の勢いと県幹部の言いなりでこの計画実施を首相本人に「飲ませて」しまった(九日の堂本・森会談)。相手が倒れる寸前の森政権とはいえ県幹部はニンマリである。
 このほかにも県の狙いは成田財特法(新東京国際空港周辺整備のための財政上の特別措置法)の再延長がある。成田財特法は「成田空港」による騒音などの見返りとして、県内の公共事業に国の補助金が上乗せされるもの。
 七〇年に十年間の時限立法として制定され、九八年段階までに四千九百五億円の国費が投入された。かなりの額だ。その後二度も延長され、九九年三月に五年間延長が決まった。
 やりたい放題の成田関連利権だが、国の財政危機でさすがにこれ以上の延長はないと言われていた。
 それをさらに延長しようと県幹部や成田市などは全力をあげている。それがこのかんの県の「羽田国際化反対」要求の最大の動機だ。
 補助金獲得で赤字公共事業もなんのそのという体質は堂本県政で加速されている。怒りをもって対決しなければならない。

 「完全」へ知事が率先 県企画部幹部が明言

 千葉県企画部長の田辺英夫は九日、堂本県知事が成田問題の「解決」で四者協議会の立ち上げ方針を打ち出したことに関連し、「今後は(県と)知事が率先して、完全空港化を目指していく」(4・10読売)との姿勢を鮮明にし、知事の発言が県幹部全体の意向であることを強調した。
 この田辺発言は、三里塚闘争に対する千葉県としての反動的「宣戦布告」である。断固として受けてたたなければならない。

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週刊『三里塚』(S582号1面2)

 団結新たに花見会
 早朝デモ 軒先工事を弾劾

 反対同盟は四月八日、小見川県道迂回道路開通粉砕をかかげてデモと敷地内デモを行った。
 首都圏から結集した約百人の参加者にたいして北原鉱治事務局長は、「一方で軒先工事を推進しておきながら『真摯な話し合い』なるものを唱える堂本暁子新千葉県知事は偽善者だ」と堂本知事の闘争破壊策動を厳しく弾劾した。
 デモ行進は迂回道路を通り、工事用フェンスで覆われた東峰部落をめぐった。十bを超える「ジェットブラスト防音塀」などの骨格ができあがっている。部落内の生活道路はずたずたに破壊され、東峰神社に通ずる道は機動隊が封鎖して通らせもしない。
 まさに国家ぐるみの「地上げ」である。これを容認した堂本知事に怒りが込みあげる。
 デモ隊は東峰神社立木伐採の策動に対しても弾劾の声をあげた。

 「現地に一歩も入れさせない」 萩原進事務局次長 

 デモ終了後、参加者全員が三里塚第一公園で春恒例の団結花見会に臨んだ。
 鈴木幸司さんが乾杯の音頭。九十六時間のストライキ闘争を見事に打ち抜いた動労千葉から白井共販部長、婦人民主クラブ全国協の西村綾子さん、都政を革新する会事務局などがあいさつした。
 三里塚名物のジンギスカン鍋を囲みながら、市東孝雄さん、三浦五郎さんが自慢の歌を披露。途中から三里塚教会の戸村義弘さんも参加した。最後に萩原進事務局次長が「堂本知事は小川国彦成田市長と同類の敵対者。現地には一歩も入れさせない」と宣言した。

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週刊『三里塚』(S582号1面3)

反対同盟、5月国会闘争へ 収用法改悪阻止訴え
「迅速収用」でゼネコン救済 有事法制を先取り

 三月二日、国土交通省は倒壊寸前の森内閣に土地収用法改悪案を提出した。同省は今国会で是が非にも成立させたい「最重要法案」との位置づけで、五月連休明けにも委員会に付託する準備を進めている。
 反対同盟はこれに対し五月十六日から三日間の国会座り込み闘争を決定、首都圏の仲間を中心に行動への参加を呼びかけている。(要項別掲)
     *
 土地収用法改悪の中身は戦前なみの国の収用権強化で、有事法制の核心部を実質的に先取りする意味合いが強い。また東京都などが倒産寸前のゼネコンや大銀行を救済するための大型公共事業を「円滑に」進めるため、地権者の合法的抵抗手段(一坪共有運動など)をはく奪することも同法案を政府・国土交通省が重視する大きな理由だ。
 改悪法案の対外宣伝用コンセプトは、強制収用の対象事業として認定する「事業認定」について、認定以後の争いをなくすために、認定以前の「情報公開」や「住民参加」システムを導入するというもの。
 「情報公開」や「住民参加」のペテンはあらかじめ予想されたが、そのペテン性の度合いは予想を上回る露骨なものだった。
 新たに導入された「事前説明会」「公聴会」は、ただ開催さえすればよいという内容。反対意見から起業者が制約を受ける規定はひとつもない。「第三者機関からの意見聴取」にいたっては、そもそも「第三者」たる「社会資本整備審議会」の人事が県知事と国土交通大臣による任命とあって、およそ「第三者」とは程遠い内容だ。
 このあまりに形式的な「情報公開」「住民参加」と引き換えに実現されようとしているのが、収用審理における地権者の異議申し立て禁止であり、一坪共有運動の実質禁止措置だ。
 「事業認定への不服」は主張してはならないと明記された。一坪共有運動への国側の対抗措置として、収用審理の手続きを「三人以内の代表当事者」を選定して進める「代表当事者制度」導入も決まった。個人の財産権そのものを否定してしまおうという内容だ。ブルジョア民主主義にすら逆行する悪法である。
 反対同盟とともに対国会行動に立ち上がろう。

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週刊『三里塚』(S582号1面4)

 ピンスポット

土地収用法改悪阻止シンポジウム ホームページ
 ご意見などの投稿歓迎します
 最新情報を更新中 国会動向や新資料も豊富

 反対同盟と顧問弁護団の共催で行われた「2・28土地収用法改悪阻止シンポジウム」の趣旨に踏まえ、同シンポジウム名によるホームページが三月三十一日から開設されている(写真)。
 ページ上ではシンポ当日の講演や発言が詳しく紹介され、収用法改悪問題の資料も豊富だ。三月二日に法案が国会提出されて以降の動向なども随時紹介されている。
 土地収用法改悪攻撃は、次期国会に提出確実となった有事法制の核心部を先取りする内容をはらむ。戦前なみの収用権強化をめざし、一坪共有運動の実質的禁止措置も盛り込まれている。改悪法案を作成した国土交通省は今国会の「最重要法案」に位置付けている。
 読者の意見や主張をメールで受け付けています。これらも随時掲載予定。運動を広げるために多くの読者諸氏の協力を要請します。  (シンポ事務局)−−−(2001年10月末に閉鎖:『前進』HP編集委員会)
 URL・・http://homepage2.nifty.com/totisosi2001/
 メール・・ totisosi2001@hotmail.com

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週刊『三里塚』(S582号1面5)

団結街道

 自民党の次期総裁候補四人がテレビ番組に出演中、アナウンサーが「今度、小学校の教科書で円周率を『3』と教えるそうですが、どう思うか」と質問した。四人はキョトンとして誰も質問の意味を理解できず。小泉にいたっては「俺の時代は『3・14』だったけどなあ…」▼思わず爆笑。なんとも不愉快。おいおい。お前の時代と円周率が変わったわけじゃないんだよ。「学力レベル低下が問題になっている折、円周率の小数点以下を省略して教える教育行政の考え方をどう思うか」と聞いているのだ。アナウンサー氏はあまりの締まらなさに話題を変えた▼お笑いの構造をコミニニケーション論的にいうと、自明の前提や自明の成り行きが思わぬ形でかわされ、予想外の展開になる状況をさす。ただし予想外の結果が人畜無害であることが条件。人がケガをしたり死んでしまってはお笑いにならない。それは「洒落(しゃれ)にもならない」▼保守王国の千葉に誕生した「無党派」知事。「市民派」で「環境派」。大勢の良心的サポーターを獲得し、話題にも事欠かなかった。その看板の偽りは前号で書いたが、早速「成田空港の完全空港化」をぶちあげた。地元利権誘導組織(四者協議)も立ち上げ、推進派と意気投合▼実はこの人、元社会党代議士の裏切り者・小川国彦成田市長の「盟友」。旧社会党から保守に転向という政治信条も共通で「四者協議」も国彦プラン。「市民派」の看板も降ろして早々と公共事業(新高速鉄道)拡大も県幹部の言いなり。こういう人には、早く三里塚闘争の神髄を知ってもらわねば。

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週刊『三里塚』(S582号1面6)

【革命軍軍報速報】
堂本の挑戦状に回答 軒先工事推進の知事 「完全空港宣言」の暴挙

 以下は革命軍から発表された軍報速報の要旨。

革命軍は、四月十八日午前三時、千葉県流山市西初石四丁目にある千葉県企画部理事・石塚碩孝宅と車両に対して、火炎攻撃を敢行した。この戦闘は、千葉県知事に就任するや「二五〇〇b滑走路建設」を宣言し三里塚闘争解体・農地強奪の先頭に立っている堂本暁子への反撃の戦いである。
 四月十八日  革命軍
 (詳細は次号)

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週刊『三里塚』(S582号1面7)

闘いの言葉

 従来の社会主義は資本主義を批判はしたが説明できなかった。肝要なのは資本主義を説明する事で没落の必然性を証明することだ。
 F・エンゲルス
 一八七六年『反デューリング論』

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週刊『三里塚』(S582号2面1)

ゼネコン利権の舞台裏(上) 政・官・財複合体による土地収用法改悪の深層
 権力の維持に巨額事業が不可欠 「年間50兆」に自民党群がる
 「公共事業の危機」に収用の迅速化で対抗 一坪共有運動を法改悪で禁止 国土交通省
 土地収用法改悪阻止! 5月国会闘争へ

 今回の土地収用法改悪の最大の目的は、有事法制と一体となった軍用地収用の実現にある。さらに、自民党を中心とする日帝の権力構造の柱である公共事業の推進を、「用地取得の簡素化・迅速化」によって確保する事にもう一つの狙いがある。現在高まる公共事業批判の逆風を「見直し」のポーズでかわしつつ、実際には、住民サイドの抵抗手段を奪うために土地収用法改悪を狙っているのだ。公共事業の展開は、政・官・財“鉄のトライアングル゜の利権の源泉であり、日帝支配体制の維持につながる死活的なテーマである(左中図))。本連載では収用法改悪が支配体制維持に直結するカラクリを暴露し、土地収用法改悪阻止闘争の意義の大きさを訴えて行きたい。

 止まらぬ道路建設 年金など財投食い物

 公共事業は、公共投資とも言われ、その定義は次のようにされている。「国・地方公共団体、公社・公団・営団・公庫等の政府機関、水道・交通・発電・病院事業を営む地方公営・準公営企業等広義の政府が自ら直接行う投資」(『社会資本と公共投資』)
 具体的には四つの分野に分かれる。
@国・自治体の一般会計から直接支出される事業−−道路、港湾、政府住宅、国土保全、土地改良事業、環境衛生、文教施設、厚生福祉など
A特別会計など一般会計に含まれないもの−−道路整備、治水整備、港湾整備、空港整備など
B公団など特殊法人によるもの−−道路公団、鉄道建設公団、住宅都市整備公団、本四架橋公団、空港公団など
C政府・自治体関係機関、公営企業など−−地下鉄、市電・バス、水道、電源開発、その他地方公営企業、準公営企業(第三セクター)、
 この公共事業費の総額が、怪物のように巨大化しているのだ。
 国家予算について見ると、@の一般会計の公共事業費にあたる公共事業関係費が約九兆四千億円である。予算総額八十三兆円の一一lになるが、これは国の行う公共事業全体(三九兆円)の四分の一にすぎない。
 公共事業では、一般会計予算よりも特別会計や特殊法人予算の方がはるかに巨額で、上記AとBとCを足したものが一般会計の三倍=二十九兆円という大きさだ。この巨大な公共事業の伏魔殿にいかがわしい政治家や官僚が巣くっているのだ。
 一般会計以外はよく知られているように、一般庶民・労働者が貯金したり積み立てたりしている郵便貯金や国民年金・厚生年金の掛け金および政府の特別会計の余裕金などからなる財政投融資の原資から借りている。
 以上の国の公共事業に加え、地方自治体の予算による公共事業費が約十一兆円もある。これらの大半は国からの補助金政治で、事実上強制に近い形で造らされているものであり、大半の地方自治体を財政危機に追い込んでいるものである。
 こうして国・地方あわせた公共事業費は約五十兆円にも達する。国家予算に迫ろうという金額である。
 そして九〇年代の長期不況も加わって「景気対策」の名の下での伸び率もすさまじい。
 自治省発行の『行政投資』によれば一九七五年に一六兆五千億円だった公共事業総額は、一九九九年には約五十兆円へと三倍にも膨れ上がっている。
 一九八七年から一挙に増え始め九〇年代をとおして、七から一〇lの増加を続けている。(橋本龍太郎政権が財政構造改革をとなえた一九九四年だけ例外=表参照)

【公共事業費の推移】(単位億円)
年度
国民総生産
公共事業額
1966
396.989
31.388
1967
464.454
35.269
1968
549.470
41.043
1969
650.614
48.470
1970
752.985
59.111
1971
828.993
76.212
1972
964.863
93.208
1973
1.167.150
106.924
1974
1.384.511
142.043
1975
1.523.616
165.137
1976
1.712.934
175.980
1977
1.900.945
208.684
1978
2.086.022
243.725
1979
2.252.372
261.104
1980
2.455.466
278.765
1981
2.608.013
287.934
1982
2.733.224
287.621
1983
2.855.934
279.873
1984
3.051.441
276.401
1985
3.242.896
265.055
1986
3.393.633
278.608
1987
3.555.218
304.116
1988
3.796.568
316.790
1989
4.064.768
338.276
1990
4.388.158
367.937
1991
4.631.744
403.362
1992
4.719.257
463.373
1993
4.767.461
511.270
1994
4.790.264
478.287
1995
4.885.225
508.944

 この結果が、国・地方合わせて六六〇兆円という天文学的な借金なのである。

 5年計画

 以上のような莫大な公共事業の内、大半がむだな事業と指摘されている。法政大学の五十嵐敬喜教授によれば、公共事業の王様である道路建設では、一九七〇年代中葉以降の大半が利権のための事業なのだ。(『公共事業をどうするか』)
 教授によれば道路建設は一九五五年に第一次道路整備五カ年計画が始まり、その後延々と五カ年計画が更新され、第十二次五カ年計画(一九九八年から二〇〇二年)にいたっている。
 根拠となっている法律は一九五八年に制定された道路整備緊急措置法で、それが現在まで五十年近くも使われている。第一次で二千六百億円だった五カ年計画予算は、野放図な拡大を重ね、現在の第十二次では三百倍(!)の七十八兆円である。
 第一次から第十二次までの総計は三百十七兆円。この内、第七次(一九七八〜八二)以降の約三百兆円が利権のための道路工事だったというのである。
 田中角栄に象徴される土建政治屋と大成や鹿島、清水建設を先頭とするゼネコンおよび五十二万といわれる地方建設会社そして自民党の先兵となり自らの特権的権益の護持・拡大に必死となる高級官僚。これらがいわゆる“鉄のトライアングル゜を形成して、三百兆円にもおよぶ道路予算を食い物にしてきたのである。
 のみならず道路建設の暴走は、激しさを増す一方である。一九八七年に始まった第十次五カ年計画の時に建設省は、高速道路の総延長を一万一千五百キロとする計画を決めたが、現在までにできた道路は六千百四十キロでまだ五三lである。この後、現在とほぼ同じ距離の五千三百六十キロが計画されており、その大半が赤字路線となる。(左上グラフ【道路建設予算の内訳】(第11次5カ年計画)
 実は現在でも東名・名神・東北道など幹線高速道路以外は赤字なのである。北陸道などは幹線であっても採算が取れない。その結果、道路公団の累積赤字は一九九六年度で二十二兆円に達し増える一方である。この膨大な金に群がっている者の正体は明らかだ。すべては、自民党による住民支配とゼネコン・土建会社の延命、高級官僚の既得権益護持・拡大のためである。(解説1
【以上の道路建設を国土交通省は「他に比べて道路敷設率が低い」との口実で行っているが、欺瞞だらけである。国交省の主張は道路延長が短いというものだが、可住面積という条件を加味すると日本の道路長は世界一となる】

 川辺川ダム

 最近批判が高まっているのがダム事業である。ダム建設が中心の治水関連費は国・地方自治体を合わせた公共事業の第三位で年間八兆五千億円(全体の十七l)である。
 ダム建設のデタラメぶりも道路行政に負けてはいない。日本には高さ十五b以上のダムがすでに二千五百以上あり、建設中・計画中のものがさらに五百もある。驚くべき事に計画中のものだけを見ても大半が治水、利水の両面で役に立たない利権のための計画なのである。
 その典型が熊本県球磨川の支流・川辺川に計画中の川辺川ダムである。熊本県五木村に川辺川ダムが計画されたのは、一九六六年。日本一水のきれな川と言われていたが、当初、村人たちはさしたる反対運動も行わず、補償交渉に応じていった。農業・林業に展望を見出せず、補償によって移転したいという農民が多かったからである。
 ところが建設省側の態度は強権的だった。また他のダムの現地視察などで、いったんダム建設を許すと水没地だけではなく村全体が壊滅する事が分かってきた。さらに「ダム湖が観光資源になって村は発展する」などは真っ赤なウソである事など、調べれば調べるほど建設省のデタラメさが判明していった。
 こうして一九七〇年代半ばから裁判闘争を含む条件反対闘争がたたかわれたが、町を取り込んだ建設省の圧力によって、熊本地方裁判所で敗訴した後、一九八四年に第一次反対闘争は終結させられた。

 むだの典型ダム建設 全国26カ所で反乱

 しかし一九九三年、治水の利益を受ける人吉市民の間から、川辺川ダム見直しの署名運動が起こり、有権者三万人のうち一万九千人の署名が集まった。
 川辺川ダムの目的は治水に加えて農業用水の供給にもあったが、人吉市隣の相良村など灌漑事業の対象となった農民からも灌漑事業の中止を求める運動が盛り上がった。事業対象の四千軒のうち二千百戸が原告となって、一九九五年、事業の中止を求める裁判闘争を提起したのである。
 要するに洪水の被害を受けるとされる人吉市民からも農業用水の利益を受ける農民からも「ダムはいらない」「ダム建設は中止せよ」との要求が公然と起きたのである。川辺川ダムは建設目的を失ってしまった。
 しかしこれであきらめるような利権屋たちではない。ダム建設事業のスピードを上げ始めたのである。灌漑事業中止要求の裁判は昨年九月、国側に勝訴の判決が出された。建設省はこれを楯に、川辺川ダム建設の最大の障害になっている漁業権問題をめぐってついに昨年十二月、事業認定の認可を下ろした。
 こうして、川辺川ダム建設への全国的な反対運動の高まりに抗するかのように法的にはいつでも漁業権を収用し、ダム本体工事に着工できる状態に入っている。(解説2
 国土交通省の河川局長はあせりのあまり「体を張ってでも川辺川ダムは造る」などと息巻いているほどである。すべては政・官・財の利権のためなのである。最初から「ダム建設ありき」で、理由は後からでっち上げるのだ。現在問題になっている諫早湾干拓にしても最初は農業用干拓地の造成だったのが、減反政策で農地は不要となり、現在は「防災」を前面に押し出しているのと同じである。

 集票装置

 この川辺川ダムに見られる住民無視は、ほぼすべてのダム建設に共通している。全国で起きているダム反対運動は、分かっているだけでも岐阜県の徳山ダム、岡山県の苫田ダム、石川県の辰巳ダム、新潟県の清津ダム、栃木県思川ダムそして長野県の蓼科、淺川ダムなど二十六カ所にも上る。またダムに近い治水施設として岐阜県長良川河口堰、吉野川可動堰反対の強力な運動がある。
 政治家や官僚、ゼネコンらがどうしても公共事業を止めない理由は巨額の利権とそこから生まれる集票力、巨大な既得権益にある。
 五十兆円の公共事業から生み出される利権が政・官・財の力の源泉なのである。中でも道路建設、治水事業だけで約半分二十二兆五千億円を占める。
 これらの利益を受ける土建・建設業は約一千万票の票田だ。自民党・土建政治屋は、数千億、数兆円単位の公共事業を大手ゼネコン、地元建設会社に受注させることによって利益を供与、鉄の支配体制を作り上げ、選挙の時には集票マシーンとして動員する。(写真上)
 官僚は官僚で、自民党の利益を体現しつつその中で、自分の省庁や部局の既得権護持と拡大のため、「事業のための事業」に、暴走車のように突進しているのだ。それが前述河川局長の「体を張っても」云々という言葉である。これが日帝による人民支配の道具として深く組み込まれた公共事業の悪しき構図である。

 「鉄の三角形」揺らぎ出す 権力の支配構造壊せ

 以上のような公共事業利権を中心に形成されてきた“鉄のトライアングル゜が、揺らぎ始めている。三里塚闘争を先頭とする全国住民運動が一坪共有運動・トラスト運動の形態や住民投票条例運動など、さまざまな方法を駆使して日帝の延命のためのムダな公共事業に反乱を開始したのだ。
 三里塚闘争を背景としつつ、“ムダな公共事業反対゜の最初のノロシとなったのが一九八八年に始まった岐阜県長良川河口堰建設反対運動だった。金丸信が深くからんでいた同建設工事は、大義も理由も失われたにもかかわらず「土木利権護持」の一点で、水門封鎖が強行された。
 つづいて川辺川や岐阜県の徳山ダム、徳島県木頭村の細川内ダム、岡山県の苫田ダム、長野県の淺川、蓼科ダムなど百害あって一利もないダム建設にたいして全国で反対運動が噴出し始めたのである。
図 年間50兆円にも上る公共事業費を食い物にする”鉄のトライアングル”
 そして空港をめぐっては、成田の暫定滑走路阻止闘争を先頭に、関西新空港、静岡空港、神戸空港、びわ湖空港反対運動が、あまりにも理不尽な空港建設と対決している。
 デタラメな公共事業の推進に対し、ようやく住民の怒りに火が付き、自民党・公明党・保守党政権の足元を揺るがし始めたのだ。昨年、自民党の亀井静香政調会長による「公共事業見直し」のペテンも、住民のこうしたうねりに追いつめられた苦肉の策である。
 以上のような「見直し」の逆風の中で、公共事業推進の切り札として行われようとしているのが、今回の土地収用法改悪である。
 国土交通省は、一坪運動やトラスト運動によって、ダム建設や道路建設が反対運動の焦点となってしまったという点に失政の責任を転嫁しようとしている。問題を焦点化させず、計画から建設まで一気に走ってしまうこと、反対運動の武器となる一坪運動自体が成立する余地をなくし、運動を無力化することが必要と土地収用法改悪に乗り出してきたのだ。
(つづく)

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週刊『三里塚』(S582号2面2)

 

 解説

(1)道路建設が無限に続くカラクリ 道路建設は、ガソリン税、軽油税、自動車諸税という特定財源が大きな予算のベースとなっているため、永遠に続く仕組みになっている。ガソリン税は総額で二・七兆円。軽油引き取り税は一・四兆円だ。自動車諸税では、自動車取得税が一・四兆円、自動車重量税は一・一兆円である。(いずれも一九九八年)
 欧米諸国でもガソリン税は道路建設の特定財源だったが、近年は地下鉄の建設、街路電車の維持、バス路線の拡充などにも使えるようになっている。アメリカなどは一般財源に組み入れている。日本でも「道路建設は格段に進んだのだから特定財源を廃止すべきだ」という議論が時折起きているが、その度に国会の道路族議員、建設省、ゼネコン、地方自治体の首長、地方議員から反対の大合唱が巻き起こり道路利権に群がる者どもによって闇に葬られてきた。

(2)ダム建設推進の口実 建設省がダム建設を野放図に展開する常套手段は、工業用水の需要予測を過大に見積もることである。一九九六年九月に三重県三島町で開かれた「国際ダムサミット・イン長良川」で東京都環境科学研究所の嶋津輝之研究員が発表したグラフが反響を呼んだ。そのグラフは建設省が長期予想した工業用水の量と、現実に必要となった工業用水の量を図示したものだが、現実の需要量の方が長期予測よりも半分も少なかったことが示されていた。建設省は長期予測を元に実際に必要な数よりも二倍も多いダムを造ってきたことになる。これは建設省が誤った予想をしたのではなく最初から確信犯として行ったことなのだ。ごうごうたる弾劾が起きたのは当然である。
 さらに建設省は治水を口実としてダム建設をする場合には、川に流れ込む流量予想を意図的に過大に設定して、必要のない規模のダムを造ったりすることを常套手段として使っている。しかも造ったダムによっても洪水は防げずという逆に洪水被害が悪化するのだ。

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週刊『三里塚』(S582号2面3)

三芝百景 三里塚現地日誌2001 4月4日(水)〜4月17日(火)

●デモと団結花見会 反対同盟と首都圏の労農学は、4月2日に小見川県道の迂回道路が開通したことに対して弾劾のデモ行進を行った。生活道路は破壊され、東峰部落がいっそう寸断されている。参加者は怒りを強めた。その後、三里塚闘争ゆかりの三里塚第一公園に場所を移して団結花見会を開催した。名物のジンギスカン鍋を囲んで談笑するうち、歌、踊りが次々飛びだす。桜は散り始めていたが、桜吹雪となって、満開の時とはまた違った風情を湛えていた。一同は大いに飲み、食い、東峰神社立ち木伐採策動、暫定滑走路完成攻撃など激闘に向かう活力を養った。(8日=写真)
●堂本新知事が成田問題で4者協議会設置へ 3月の千葉県知事選挙で当選した堂本暁子新知事は、森首相との会談後記者会見し「成田空港問題の解決へ国土公通省、空港公団、県、地元自治体からなる4者協議会を設置する意向」と表明した。「成田国際空港の充実」を唱えて空港建設を推し進める堂本知事の姿勢が露骨になってきた。正体を暴いてやらなくてはならない。(9日)
●市東さんが星野文昭さんに写真贈る 市東孝雄さんの庭に植えてある星野文昭さんのコブシの木がまもなく開花するが、孝雄さんは「二期阻止・再審勝利 星野文昭」と書かれた木札とともにコブシの木をカラー写真に撮り、六つ切り大に引き伸ばして獄中の星野さんに贈った。(10日)
●有機栽培の三つ葉が好評
萩原進さん宅で出荷している三つ葉が好評だ。スーパーなどで売っている三つ葉とは香りと歯ごたえがまったく違う。有機・無農薬野菜ならではの味を発揮している。三つ葉は短期間でトウ立ちするため、出荷時期が短かく大量に出せないのが悩みだ。(16日)
●芝山町で生態系が激変 芝山町辺田部落にある鈴木幸司さんの畑で、タマネギ畑の草取りをしていた時、この地方では見られない変わった種類のトカゲが見つかった。体全体が黄緑色でたてに4本の黒い筋が入っている。鈴木加代子さんは「空港建設で生態系が変わったのか、外国から新種が入ってきたのか、気味が悪い」と語っている。家の周りの植木には、数年前から見なれないカタツムリが大量発生しており、こちらも同じ現象か、と不安がっている。(17日)

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週刊『三里塚』(S582号2面4)

《訂正》

 先週号の三芝百景で「星野さんの桃の木」は「コブシの木」に、「鎌田同志の桜の木」は「桃の木」におわびし訂正します。 

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