SANRIZUKA 2001/07/01(No586 p02)

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週刊『三里塚』(S586号1面1)

 白昼の強盗「ご神木」伐採

 東峰部落の総有財産 公団、不法承知で強行

 権力に法律はねえのか! 報復誓う

 萩原進さん不当逮捕

 公団の阻止線に怒号と鉄拳 同盟一丸の阻止行動

 空港公団と空警機動隊は六月十六日十二時半、暫定滑走路予定地南端に位置する東峰神社を急襲して入り口の道路を封鎖、東峰部落の財産である神社の立ち木十九本を根元から切り倒すという暴挙を強行した。来年五月の暫定滑走路供用をごり押しするため、神社の法的所有関係さえ無視し、むきだしの暴力行為に訴えてきたのである。
 急を聞きつけた反対同盟と現地支援勢力はただちに現場に急行、約二時間の伐採阻止行動を闘いぬいた。権力はこの攻防で、東峰神社の権利関係人である反対同盟の萩原進事務局次長の立ち入りを妨害、不当にも逮捕した。
 暫定滑走路建設の無法ぶりは極まったといわなければならない。反対同盟の北原鉱治事務局長は「権力がここまで無法を働く以上、あらゆる手段で反撃する」と宣言した。

 白昼の泥棒働く公団に鉄拳の嵐

 十二時半頃、緊急連絡をうけて駆けつけた反対同盟と支援勢力、東峰区住民は神社に通ずる道路入り口を封鎖する機動隊の検問を突破、公団職員とガードマン、私服警官ら約百人による神社手前の阻止線に激しくつめ寄った。数十b先の神社では大型クレーン数台が立ち木を吊り上げ、切り倒す作業を開始していた。
 萩原進さんら東峰区住民らが激しく詰め寄る。
写真 白昼の強盗を働く公団とガードマンの阻止線に迫り,激しく抗議する反対同盟と東峰区住民。公団は弁解もできず顔面蒼白(6月16日 東峰神社手前)
 「いったい何のまねだ!神社は部落の財産だ! 通せ!」「公団職員が何の権限で道路を封鎖するのかいってみろ!」
 北原事務局長がトラメガをもって阻止線に迫る。「道を開けなさい。おまえたちの行為は泥棒だ」
 市東孝雄さん、鈴木幸司さんら反対同盟員が阻止線に食らいついて激しい抗議をくり返す。「おまえら絶対許さねえぞ!」「何とかいってみろ!」
 阻止線の公団職員らは全員青ざめた顔で押し黙ったままだ。婦人行動隊長の小林なつさん、鈴木謙太郎さん、加代子さん夫婦、三浦五郎さん、伊藤信晴さんらも続々と駆けつけ阻止線に突入した。
 「お前たちはいつもこういうやり方だ」「買収に行きづまると力ずくだ。法律もへったくれもない。何が『話し合い』か」「三十年前の代執行と何も変わってないじゃないか!」
 ついに激しいもみ合いとなった。
 「百姓の怒りを受けてみろ!」泥の固まりが公団・ガードマンの頭上に降り注いだ。
 「お前はどっかで見た顔だな! 公団のイヌに成り下がったか!」公団に寝返って動員されてきた条件派の元農民が胸ぐらをつかまれ阻止線から引きずり出され、地面に倒された。
 トラックの上から敵の阻止線に飛びかかる農民。顔面蒼白で下敷きとなった公団とガードマンがうめき声をあげた。
 「逮捕するぞ! 抵抗するな!」千葉県警の私服刑事どもがわめいた。
 「おお。できるもんなら逮捕してみろ!」
 逆に私服が農民たちに取り囲まれた。反対同盟と地元農民の気迫が私服どもを圧倒した。権力は自らの不法・不正義ゆえに動揺を隠せない。条件派から公団のブローカーとなった保坂某が、反対同盟の怒号をあびて逃げ去った。
  
写真 左=トラックの上から阻止線に飛び乗って抗議する農民
 中=神社の権利関係人でもある萩原進さんを不当にも逮捕
 右=不当逮捕直後、抗議する市東孝雄さんと
鈴木幸司さん

機動隊と乱闘に 萩原進さん逮捕

 突然、県道入り口付近から機動隊のわめき声が聞こえた。萩原進さんが自宅からトラクターを持ち出し東峰十字路の機動隊の検問を突破、現場の阻止線に向かってきたのだ。鉄製の大きな車両止めにぶつかる金属音が聞こえた。
 見ると大勢の機動隊が寄ってたかってトラクターの運転席に殺到、萩原さんを引きずり下ろそうとしている。公団の阻止線でがんばっていた反対同盟員が駆けつけ、今度は機動隊との激しい乱闘となった。
 「逮捕! 逮捕!」「なにやってる。逮捕だ!」
 機動隊の現場隊長が慌てふためき怒鳴った。萩原さんを引きずりおろして逮捕しようとする機動隊。これを阻止しようとする反対同盟員のつかみ合いの乱闘。大勢の機動隊の下敷きになって押さえられている同盟員もいた。
 多勢に無勢。ついに萩原さんが機動隊車両のなかに押し込められた。
 「不当逮捕を許さないぞ!」「機動隊はただちに萩原さんを解放しろ!」
 反対同盟の宣伝カーから抗議の大音響が東峰一帯に響き渡った。

 覚えてろよ! ただじゃおかぬ!

 神社でチェーンソウ(電動ノコギリ)の引き裂くような音が消えた。無残にも東峰神社のほとんどすべての立ち木が根元から切り倒された。切り株の年輪を見ると約五十本。神社開設時に植えられたものだ。
 伐採作業を終えた公団とガードマンが阻止線を解き、逃げるように現場を去った。反対同盟員や地元農民の怒号が飛んだ。
 「てめえら覚えてろよ!ただではおかねえぞ!」
 「飛行機の神様(東峰神社の元の祭神)のご神木を切ったんだ。何が起こっても知らねえからな!」
 北原事務局長の指示で同盟員と支援全員が天神峰に向かい、市東孝雄さん宅に集合した。公団から暴行を受けた北原さんの口元から血がにじんでいた。
写真=根元からすべての立ち木を切り倒され、丸裸となった東峰神社

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週刊『三里塚』(S586号1面2)

 小泉の権力犯罪

 公団「総有」認識覆す 収用法強行採決翌日

 公団は伐採の根拠について「神社の土地の登記簿上の名義人・浅沼輝雄から買収を済ませた(十五日に登記)」「土地と立ち木は一体で法律上は問題ない」(中村総裁会見=伐採当日)と弁解した。
 これは法律的に全くの暴論である。東峰神社は東峰地区の正式な産土(うぶすな)神であり所有権は部落の「総有(そうゆう)」。登記簿上の名義人が形式的に存在しても、所有権はあくまで部落全体にあり、私的な売買契約はすべて無効となる。
 このような権利関係を公団は熟知している。

 過去の買収で分筆 公団の「確信犯」裏づけ

 東峰神社が設立されたのは一九五三年十一月二十三日。戦後入植が一段落した頃だ。部落の合議で、当時の土地所有者・寺田増之助氏(戦後入植)が土地を部落に寄贈、伊藤音次郎氏(同)が戦前、津田沼に所有していた「伊藤飛行機製作所」内にあった「航空神社」を移遷した。
 神社移遷の際、部落合議により「勤労の神」二宮尊徳をまつり、「部落の産土(うぶすな)神社」とした。産土神は村落共同体などの守護神で、個人や一族の氏神(うじがみ)とは区別される。神社落成の際は神主を呼び、部落の全戸参加で落成記念行事も行われた(証拠写真も現存)。
 この事実が決定的な意味をもつ。神社の土地の所有権は神社設立をもって部落「総有」に移行したのだ。
 総有という権利取得は、共同体住民の同意による慣習的取得である。ゆえに近代的登記にはなじまない。民法で定める「共有」とも違い、各構成員は持分(もちぶん)を有せず、分割請求権もない。
 したがって個人の売買契約は総有関係が確定した後は無効となる。これは民法上の定説だ。総有関係にある土地や物件は権利売却は、構成員全員の合意がなければ成立しない。
 また総有権を構成する各住民(団体員)は、団体のメンバーたる資格を取得することで使用権などを取得する。移転などで団体員の資格を失った瞬間から、その土地・物件について一切の権利を失う。ここも重要なポイントだ。
     *
 「総有」は近代的登記になじまない。故に東峰神社設立後も、登記簿上は個人名義(寺田氏)のままだった。寺田氏はその後、一九六一年に家と土地全部を一括して浅沼輝男(元東峰住民)に売却。神社の土地はこの時点から登記簿上「浅沼」名義となった。
 空港公団が浅沼から土地と家屋全部を買収したのは一九六九年三月。この際、公団用地部は神社の土地・建物が部落の総有ゆえに売買できないことを承知していた。そのため神社の土地だけを分筆、神社以外の家と畑を買収する形にした。今回公団が強引に浅沼から「買収」し「登記」するまで、ずっと浅沼名義のままとなっていた理由は以上の経過による。
 「総有」は公団用地部の常識的認識だった。だから東峰神社の立ち木問題が暫定滑走路の妨害物として浮上した今年春以降も、公団は「伐採には部落の同意書取りが必要」との認識を東峰部落側に示していた。
 したがって今回、公団が神社の土地所有権を「買収した」云々と主張すること自体が暴論なのだ。浅沼には、寺田氏から土地を買った当初から、神社の土地の処分権はなかった。ましてや移転して部落の構成員から離脱して以降は、土地の使用権すら浅沼にはない。「買収した」とする公団の主張は完全に無効だ。
 今回の伐採は、国土交通省・空港公団が違法を承知で行った暴挙である。。東峰部落との確認事項を一方的に踏み破った点も看過できない。
 また政府・公団は九一年〜九四年のシンポ・円卓会議で「今後、一切の強制手段を放棄し、住民納得の上で進める」と社会的に確約してきた。今回の強制伐採は、この公的確約を完全に反故にするものだ。脱落派との政治的談合(シンポ・円卓会議)とはいえ、公的な確約を公然と踏み破ることは暴政そのものだ。
 成田空港建設の歴史は、今回と同様すべて「だまし討ち」だった。空港建設閣議決定、大木よねさん宅の強制収用、岩山鉄塔撤去、天神峰現闘本部封鎖、団結街道封鎖などである。今回の立木伐採を含め違法行為もやりたい放題。これが空港建設の本質だ。徹底した農民無視と暴力である。
 阻止行動後の記者会見で反対同盟の北原事務局長は「このような公権力の暴政に対しては、あらゆる手段の反撃が許される」と宣言した。公権力の暴政に対して人民が革命的暴力を行使して闘うことは、近代「民主主義」的規範においてすら正当であり、民主主義を真にたたかいとるための義務ですらあるという宣言である。
 ここにこそ三里塚闘争の真髄がある。東峰立木伐採による暫定滑走路供用の暴挙に対し、断固たる実力反撃をたたきつけよう。

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週刊『三里塚』(S586号1面3)

 収用法、衆院強行採決の暴挙 異例の緊急上程
 反対討論も封殺 10分で採決強行
 これが小泉の本性だ

 公共事業用地などを強制的に取得する手続きを定めた土地収用法改悪案が、六月十五日午前の衆院国土交通委員会で共産、社民両党を除く与党三党と民主党などの賛成多数で可決され、同日、衆院本会議に緊急上程、反対討論を一切させずわずか十分で採決・通過となった。法案は参院に送られた。一九六七年以来の抜本改悪である。
 改悪案の趣旨は収用手続きの迅速化と反対運動つぶし。報道される「事業の透明性確保」や「情報公開」などはその口実に過ぎない。軍事空港建設を三十五年間も阻みつづける三里塚闘争に対する反動的挑戦で、有事法制の核心部を先取りする内容。
 また小泉政権や石原都知事が進める大規模都市再開発(大規模土地収用)を強行するための最重要の法改悪でもある。(2面に解説記事)
 労働者階級への徹底的な犠牲転嫁を「構造改革」と称する小泉政権の本質は、この事態でむき出しになった。委員会審議は完全な翼賛審議。わずか二日間の審議で自民党委員はほとんど欠席、十五日の採決時のみ全員出席という異常さ。反対討論は実質ゼロに等しい状態。招致された参考人四人も三人までが推進派の御用学者などで占められた。
 反対同盟は十二、十三日と十五日の委員会、本会議の全過程を国会前座り込みでたたかいぬいた。三里塚闘争をはじめとする労働者人民のたたかいは小泉政権の反動的ファッショ的本質を徹底的に暴き、土地収用法改悪を実質的に無効にするようなたたかいを必ずや実現するだろう。
     *
 異例ずくめの土地収用法改悪攻撃である。本会議で強行採決した翌日に三里塚現地で行われた東峰神社立ち木の強制伐採(違法承知の犯罪行為)も含め、小泉政権の反動的本質がむき出しになった。
 土地収用法改悪の先鞭をつけたのは東京都知事の石原だった。昨年五月、建設省建設経済局長の「私的研究会」を立ち上げたが、メンバーも内容も非公開という前代未聞のやり方。この「私的研究会」の答申(十二月)がそのまま改悪案として今国会に提出され、反対討議をほとんど封じる形で強行採決された。
 石原は法改悪を進める趣旨として、東京日の出町の廃棄物処理場建設に抵抗した住民のトラスト運動にむきだしの敵意を表明していた。また石原は運輸大臣当時、成田空港二期工事で強制収用を発動しようとして(八八年)挫折した張本人だ。小泉政権下でこうした権力強化法案が一気に通過した意味は重大だ。

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週刊『三里塚』(S586号1面4)

 ピンスポット

 萩原さん総力で奪還

 全面的報復誓う 「何をやっても許される」

 六月十六日の立ち木伐採阻止行動で不当逮捕された反対同盟事務局次長・萩原進さんは、精力的な救援活動を行った同盟員と弁護団の尽力で翌日奪還された。以下は奪還後の会合での主要な発言。
 萩原進さん 公団は違法に訴えないと立ち木を切れなかった。必ずしっぺ返しを受ける。平行滑走路二五〇〇bはこれで終わりだ。
 萩原静江さん 若い頃の気持ちを思い出し気合が入った。全国の皆さんから激励のファクスをたくさんもらった。ありがとう。
 北原鉱治さん 警察は面会も妨害したが、弁護団も駆けつけて皆で警察署を取り囲んだ。伐採は違法を承知の暴政だ。あらゆる反撃が許される。
 小林なつさん 国家の暴力を改めて見た。萩原さんの勇気あるたたかいで皆ひとつになった。光輝く逮捕だった。
 市東孝雄さん 実力闘争は初めてで少し緊張しました。皆の気持ちはひとつだと感じた。今度は自分ががんばる決意です。
 三浦五郎さん 公団の伐採は無茶苦茶だ。萩原さんの奪還は皆一緒に怒りをぶつけた結果だ。

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週刊『三里塚』(S586号1面5)

 団結街道

 この季節、太平洋には大量の戦闘艦と航空機、巨万の兵員がひしめく。米・比合同演習「バリカタン」。米・豪・加合同演習「タンデム・トラスト」、米・タイ合同演習「コブラゴールド」。米韓・米日の戦技演習も目白押し。隔年実施の大演習「リムパック」も▼軍事演習は「季節の風物詩」ではない。ブッシュ政権のアジア重視戦略の反映だ。米統合参謀本部の戦略報告が打ち出した「絶対的優位を持続」戦略の実践だ。情報と兵站、ハイテク技術での絶対優位が三本柱。アメリカのスパイ機EP3Eが中国沿岸上空を偵察するというむき出しの侵略行為も「アジア重視」の実態▼アメリカの考え方は、世界の富を力ずくで独り占めにしてでも自国の支配階級を延命させるというもの。帝国主義たる所以だ。しかもそれが「自由と民主主義」の名のもとに徹底的に称賛される。これが「資本主義の精神」である▼対する敗戦国・日本。もう一度、帝国主義列強復帰を狙う。アジアの権益は日本の資本が独り占め。そのためには核武装も改憲も。アジア諸国を蔑視し敵意をあおる(石原「三国人」差別暴言)。「人民は痛みを我慢」の「構造改革」。政治資金と不正蓄財で作った国の借金はリストラと増税で穴埋め。侵略戦争の歴史は正当化(新しい歴史教科書)▼これが小泉「改革」だ。腐れ橋本派が多少゛憂き目″をみたからと「小泉改革を支持」する人々に警鐘を乱打する!「痛む」のは自民党政治家でもなければ高級官僚やバブル経済の戦犯たちでもない。庶民なのだ。小泉を倒そう! 人民の力で!

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週刊『三里塚』(S586号1面6)

 闘いの言葉

 公団は違法行為に訴えないと立ち木を切れなかった。必ずしっぺ返しを受ける。平行滑走路の二五〇〇メートル計画はこれで終わりだ。
 反対同盟事務局次長
 萩原 進さん

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週刊『三里塚』(S586号2面1)

 小泉「都市再生計画」と石原「東京構想」
 大規模収用で軍都建設ねらう
  小泉反革命と対決して打倒しよう!

 極右・小泉政権がかかげる「都市再生政策」は、アジア勢力圏の再建をかけた「帝都復活」計画であることが明らかになった。小泉「都市再生」のキーワードは「国際競争力復活」であるが、これは東京都知事・石原慎太郎の「東京改造構想」とまったく同じであり、中身は石原構想と完全に重なる。その石原構想の柱は「東京をアジアの首都に」という「新たな大東亜共栄圏」構想なのである。石原は宗主国同然の感覚で「東京を中心としたアジア圏構想」を主張し、この秋アジア各国の知事を集めた石原版大東亜会議を開催しようとしている。こうした観点から「世界に冠たる東京の再生構想」=「東京構想二〇〇〇」(下の写真)を打ち出し、これを石原に限りなく近い小泉が採用した。それが小泉「都市再生政策」である。国際ハブ空港機能の再整備、外郭環状道路をはじめとする三環状線整備および臨海副都心建設が内容である。そのためにこそ土地収用法改悪を強行し反戦・反権力の最強の砦三里塚闘争を破壊しようとしている。「帝都・東京復活」のための「都市再生」攻撃を許すな。小泉・石原による国家改造・戦争攻撃を阻止しよう。
 小泉政権は五月七日、都市の国際競争力を高めるためとして「都市再生本部」(本部長・小泉首相)を立ち上げ、六月十四日の第二回会合で、第一次プロジェクトと今後取り組むべき重点プロジェクトを決定した。(写真左
 それによると第一次プロジェクトとして、「東京臨海部での広域防災拠点整備」などが打ち出され、重点プロジェクトでは首都圏三環状道路の整備、都営大江戸線周辺開発、成田空港へのアクセス強化が打ち出された。(解説1
 これらは成田空港を羽田再拡張とおきかえればすべて石原東京都知事が今年一月に発表した「東京構想二〇〇〇」のプロジェクトの内容そのものであり、文言までが一致している。
 「都市再生本部」には東京都から局長級の高級幹部三人が派遣されたが、都から国に派遣されるという、通常と比べ逆の人事は極めて異例であり、「再生本部」が石原構想の実現機関として機能しようとしていることを示している。
 小泉と連合を組んだ石原が「東京改造構想」を売り込み、小泉が石原構想を全面的に採用した、というのが事の真相である。
 問題の石原「東京改造構想」とは、「世界に冠たる東京の再生」をキーワードとする「帝都復活」計画である。
 石原は今年に入って、矢つぎ早に、アジア勢力圏化構想というべきものを打ち出した。
 一月二十四日の記者会見で石原は「マハティール首相と会ってきたが、場合によったら大田区をマレーシアに移すことも考えている」と語り、「零細工業地帯を、日本の技術を、移転して新天地を造成することもある」とする新版「満蒙開拓団」構想とでもいうべきものを明らかにした。

 宗主国然

 さらに前記「東京構想二〇〇〇」の中では、「やがてリニア新幹線や超音速旅客機の開発でシンガポールが三時間で結ばれるようになり、東アジアが東京圏内に入る」と明言し、「東アジアは日本の植民地」と言わんばかりの戦前型アジア蔑視を展開している。
 そして締めくくりとして同じく「東京構想」の中で、今年の秋には「アジア都市ネットワーク二一」と称する石原版大東亜会議(解説2)を東京で開催することを表明し、″仮想敵国″である中国の北京と北朝鮮のピョンヤンを排除した。
 第二次大戦で敗北したアメリカへの「憎悪と復讐戦」の発想に立って石原は、新たな大東亜共栄圏の構築を声高に主張しているのだ。
 こうした帝国主義的勢力圏再構築の立場から「東京構想二〇〇〇」を提示するのである。
 目ざすのは「世界に冠たる東京の復活」である。他にも「今こそ、東京を二一世紀の日本の首都にふさわしい都市として再生させていかなければならない」とか「激化する国際都市間競争に勝ち抜かなくてはならない」「東京の危機は日本の危機」など「東京中心史観」を異常に強調し、だから「首都東京に対する国費の集中的な投入が不可欠」と手前勝手な結論を引き出している。
 そして小泉も石原と同じ問題意識を共有し、石原「東京改造構想」を採全面用したのだ。

 「土地収用法改悪」強行突破  “大東亜思想”で空港整備

 小泉=石原構想の具体的政策の第一が「国際競争力喪失」の象徴となっている首都圏国際ハブ空港の未整備の問題である。「世界に冠たる(はずの)東京」が国際航空争闘戦でアジア諸国に遅れることなど「問題外!」というわけだ。
 上述のように「都市再生本部」の第二回会合で、「成田空港アクセスの強化」が明文化さたが、これは、首都圏の国際ハブ空港網を強化する政策の一環として成田新高速鉄道を建設するという意味である。
 石原は言う。「欧州の先進国の諸都市はもちろんのこと、近年成長が著しいアジアでも、香港やシンガポールなどで国際空港機能の強化やIT化への積極的な取り組みが展開されており、東京との競合関係が一層強まってきている」「このままでは東京の地盤沈下は深刻なものになる」と。
 【アジアで開港している巨大国際空港は、香港やシンガポールだけではなく、韓国・仁川空港や、上海浦東空港があり、むしろそちらの方が東京のライバルだが、石原は中国を敵視するとともに、「つくる会教科書」問題で政府に修正を要求している韓国を敬遠して、両空港をわざわざ外している。ファシスト石原の本性が出ている】
 こうした発想から、石原「東京構想」では、最大の政策として羽田空港の再拡張と国際線化および二十四時間空港化を打ち出し、その承認を国土交通省に要求している。
 また小泉政権と国土交通省も、前述したように「成田空港アクセスの強化」と成田新高速鉄道の整備を打ち出し石原に呼応した。千葉県と国交省が財源等について厳しい交渉を進めている最中にあって異例の早さで首相自らお墨つきを与えたのである。
 ここでは石原と同じく「国際競争力強化」にとっての国際空港の位置付けの重要性が強調されている。小泉政権は、成田空港平行滑走路(三千三百b)の完成を最大級の重点政策として設定し、そのために激しい攻撃に踏み込んできているのである。

 伐採強行

 この間、成田暫定滑走路建設をめぐる攻撃が一気に激化しているが、その裏には小泉・石原連合の決断がある。
 たとえば六月七日に千葉県知事・堂本は、「千葉県に収用委員会が存在しない状態を放ってはおけない」と日本プレスセンターの講演で明言した。保守そのものであった沼田武前知事が手をつけられなかった収用委再任命問題で、「市民派」堂本が「解決」を口にしたのだ。
 これは堂本一人の判断ではなく「千葉県収用委員会の不在」が石原を先頭とした首都圏知事会で問題視された結果である。「東京構想」の中で「メガロポリス計画」なるものを打ち出し、東京を中心とした首都圏全体の開発を主張する石原にとって、千葉県での収用委員会不在が計画の支障となりかねず、堂本に圧力をかけたのだ。
 六月十五日には、廃案もささやかれていた土地収用法改悪案の衆議院通過が強行され、このまま参議院で成立する勢いとなっている。この裏にも六月一日に「土地収用法改悪成立」を求めた石原発言と後押しがある。
 そして六月十六日の東峰神社立ち木伐採強行である。この攻撃も明白に政権中枢の決断で行われた(写真下)。こうした一連の攻撃の背景には、国際ハブ空港整備の突破口となる成田空港完成攻撃への踏み込みがあるのだ。
 羽田空港の再拡張と国際線化、二十四時間空港化および首都圏第三空港の本格的整備が目論まれていることも明白だ。(解説3
 成田空港暫定滑走路建設阻止のたたかいは今や、小泉「構造改革」「都市再生政策」と真っ向から激突する戦略的たたかいに押し上げられている。

 露骨なゼネコン救済計画 環状3道路に10兆以上

 第二の政策は外郭環状道路をはじめとする三環状道路建設である。前記重点プロジェクトでも「三環状道路の整備」と明記された。
 三環状道路建設は小泉「構造改革」なるもののデタラメぶりをものの見事に暴露するものである。三環状道路とは、東京外郭環状線(外環道)と首都圏中央連絡道路(圏央道=以上道路公団)および首都高速中央環状線(首都高速道路公団)である。(右地図参照)
 いずれも典型的なゼネコン救済型土木工事で、これを全部足せば十兆円以上にもなる巨大公共事業である。外環道は全長八十五キロで完成部分が三十五キロ。残り五十キロの工事費は二・五兆円以上。
 圏央道は全長三百キロの内開通は二十キロ。残り二百八十キロの工事費は二兆円以上。
 首都高速中央環状線は全長三十キロ。現在開通しているのが東京江戸川区葛西から足立区扇大橋までで約十キロ。残りの工事費は二・五兆円以上。
 こうして全部を単純に足しただけでも七兆円以上となる巨大工事である。しかも「七兆円以上」という数字は、現在工事している区間の費用から距離対費用の比率で類推した数字でしかなく、予算として確定はしていない。着工の見通しのない区間については、工事費は未定なのだ。かくて全体の工事費は十兆円を超すというのが定説だ。(解説4)
 まさにすさまじいゼネコン救済政策である。小泉「構造改革」とは都市再開発の別名でしかないことが、この一事で明白だ。
 しかも外環道と圏央道は有事の際軍用に転用することを想定した軍事用道路である。地図で一目瞭然なように両道路の近くには多数の軍事基地が存在している。
 米軍横田基地、厚木基地、相模補給廠、自衛隊練馬基地、埼玉県入間基地、茨城県百里基地そして成田空港等々である。
 さらに「帝都復活」という観点から言えば、「風格のある東京」を強調する小泉や石原にとって、環状道路に未完成部分が残っているという「悲惨な状態」自体にがまんがならないのだ。
 前述したように、最も整備されている外環道でも三十年以上経って全体の四〇%しか完成しておらず、首都高中央環状線では三〇l、圏央道にいたっては七lである。
 小泉や石原はこうした現状を打破して「アジアの首都・東京にふさわしい高速道路網の整備を」と叫んでいるのだ。
 ここまでくると、戦車が通れる軍用道路アウトバーンを三千キロも整備し、ベルリンやミュンヘンの都市大改造を強行したナチス・ヒトラーの都市政策を彷彿とさせるものがある。「ヒトラーになりたい」と語った石原の言葉は現実味を持ってくる。このほか現在すでに大赤字で、回収の見込みもない臨界副都心計画も「東京の顔づくり」として石原は推進しようとしている。(同計画のデタラメさも驚くほどだが批判は別の機会に譲る)
 また「防災」を口実に自衛隊三軍を動員する大演習を、小泉=石原は今年も強行しようとしている。

 本質暴け

 今こそ三里塚を先頭に小泉・石原による国家改造政策、東京改造政策とたたかい全人民の決起を勝ちとらなくてはならない。すべての犠牲を人民に強制し、再び侵略戦争へと引きずり込むのが小泉反革命の本質だ。小泉打倒、小泉=石原打倒へ突き進もう。

 事項解説

【1、成田空港へのアクセス強化】 第一次プロジェクトでは成田空港にしか触れていないが、本文の後の部分で述べているように、ここで提起されているのは首都圏のハブ空港機能強化である。羽田空港の再拡張と国際線化についてもプロジェクト化されるのは時間の問題である。
【2、大東亜会議】 一九四三年十一月、東条英機首相が、アジア諸国のカイライ政権首脳を集めて、東京で開催した「植民地首脳会議」。「大東亜共栄圏」と称する植民地支配を、国際社会にカムフラージュするために開催した。ファシスト石原はこの時採択された大東亜宣言を著書「NOと言える日本経済」の中で絶賛している。
【3、環状道路の予算】 三つの環状道路の予算については、まだ決まっていない。大半の部分について着工が未定なため、予算も正式決定していない。本文では、現在着工している区間の距離と予算から、環状道路全体の距離に延長した場合の想定数字を弾き出してみた。それが合計七兆円以上。着工は概して地価の安い場所から始めるため、この計算方法だと実態より低い数字となりがちだ。そのため、実際には十兆円以上かかるだろうというのが一般的な予測となっている。
【4、首都圏第三空港】 現在国土交通省内の検討委員会で場所の選定作業が行われている。当面の航空需要を担う候補として羽田空港の再拡張がほぼ決まっているが、これとは別に本格的な第三空港候補地の選定作業も同委員会で続けられている。

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週刊『三里塚』(S586号2面2)

 解説・改悪土地収用法
 反対運動への敵意 一坪共有禁止など 都知事が改悪の先鞭

 十五日の衆院本会議を通過した土地収用法改悪案の趣旨は、収用手続きの迅速化と反対運動つぶし。報道されている「事業の透明性確保」や「情報公開と住民参加」などは改悪のための口実に過ぎない。
 具体的には(1)収用法適用事業を認可する事業認定手続きで「公聴会開催」や「第三者機関の意見聴取」などを形式的に義務付ける一方、(2)収用委員会審理で事業認定そのものに反対する地権者の意見表明を禁止する、(3)地権者が多数にわたる場合(一坪共有運動など)の手続き簡素化=3人以内の代表当事者制度や、補償金支払いの「郵便書留」化(拒否できない)などが柱。
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 国の収用権強化法であることは一目瞭然だ。新聞報道の柱となっている「住民参加」が聞いてあきれる。
 (1)の公聴会などは地権者との合意を必要としない。開催さえすれば収用審理の前提をクリアできる。この種の公聴会につきものの一方通行的アリバイを改善する規定は、導入されなかった。「第三者機関」(社会資本整備審議会)のメンバーを任命するのも事業認定権者の国土交通大臣本人だ。
 (2)は地権者の実質的発言権を制度的にも封じるという意味で決定的だ。沖縄の米軍基地に強制的に使用されている土地の収用審理を見ても、地権者が公的な場で反対意見を表明し、一方的な収用裁決に抵抗する場は収用委員会の審理である。これを明文で禁止した今回の改悪案はまさに暴挙だ。
 (3)は実質的な一坪共有運動の禁止。今回の法改悪の先鞭をつけた石原東京都知事(元運輸大臣)が東京日出町の廃棄物処理場建設で強制収用を行った際、一坪共有運動にあからさまな敵意と嫌悪感を表明、これをもって土地収用法改悪の理由にしたことからも今回の改悪案の反動的趣旨は明らかだ。
 さらにブルジョア民主主義的にも問題となっている「お手盛り認定」(事業認定の申請者と認可者が同じという問題)も、石原などの強い要請で「死守」された。
 背景は小泉「構造改革」そのもの。その反動性と強権性は、土地収用法改悪で象徴的に現れた。
(1面に記事。法案批判詳細は本紙575号以下のバックナンバー参照)

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週刊『三里塚』(S586号2面3)

 三芝百景 三里塚現地日誌 6月6日(水)〜6月19日(火)

●収用法の審議入りに抗議して国会連続闘争に決起 土地収用法改悪案が7日に衆議院本会議で趣旨説明・質疑が行われ、12日から国土交通委員会で審議入りすることにたいして反対同盟は国会連続座り込み闘争に決起した。初日は北原鉱治事務局長、鈴木幸司さん、2日目は萩原進事務局次長、市東孝雄さん、3日目は北原事務局長、三浦五郎さん、鈴木謙太郎さん、小林なつさんが闘った。反対同盟の呼びかけに応え、元静岡県議会議員の白鳥良香さん、動労千葉、部落解放同盟全国連、労組交流センター、婦民全国協、反戦共同行動委、全学連などが共に闘った。特に最終日は、同法案の衆議院通過に対して弾劾行動を強めた。(12=写真、13、15日)
●堂本知事弾劾の千葉駅頭ビラまき 「収用委がない状態を放っておけない」と発言した堂本暁子千葉県知事にたいして、千葉県議会の初日、千葉駅頭と県庁前で、三里塚闘争支援連絡会議が弾劾のビラまきを行った。(13日)
●東峰神社立ち木伐採を実力で弾劾 国土交通省と空港公団は、暫定滑走路の運用を阻んでいる東峰神社の立ち木にたいし抜き打ち的な伐採を強行した。反対同盟と支援は肉弾戦に決起し弾劾した。この中で萩原進さんが不当逮捕された。(16日)
●反対同盟各氏が不当逮捕を弾劾 北原事務局長をはじめ反対同盟各氏が本紙の取材にたいして立ち木伐採と不当逮捕を弾劾した。事務局長は萩原さんの闘いを称え「農作業に使うトラクターが゛戦いの戦車″に変身した」と語った。(17日)
●萩原事務局次長を奪還 東峰神社立ち木伐採攻撃に抗議して逮捕された萩原進事務局次長を午後2時に奪還した。午前中には伊藤信晴さんを先頭に、千葉県行徳警察署へ宣伝カーで激励行動を行った。萩原さんは「トラクターで機動隊に突っ込んで逮捕された、というのが留置場の中では、ダンプカーで機動隊に突っ込んだという話に拡大していた」とエピソードを紹介してくれた。(17日)
●サボテンに花が咲く 鈴木幸司さん宅で栽培しているサボテンに初めて花が咲いた。「10年以上も前にもらってきたサボテンだけど、今まで1度も咲かなかった。ピンクがかった赤のきれいな花が咲いているのにびっくりしたよ」といとさん。(18日)

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