SANRIZUKA 2001/09/15(No591 p02)

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週刊『三里塚』(S591号1面1)

 「4・20」見切り開港粉砕へ

 10・7 全国集会の成功かちとろう

 敷地内農民に一方的通告の暴挙 「11月試験飛行開始」 暴力、威嚇で屈服迫る

 国土交通省・空港公団は、建設中の成田暫定滑走路について「十月末完成・テスト飛行開始〜来春4・20開港」の方針を一方的に確定した。そして滑走路南端付近の大騒音・危険区域で生活する反対同盟・敷地内農家を力ずくで押しつぶすための突貫工事を続けている。「平行滑走路建設は地権者の同意が前提」(公開シンポ=九三年)とした公的確約を公然と踏みにじっての暴挙である。反対同盟は「あらゆる手段で抵抗する」(北原鉱治・事務局長)との決意を怒りを込めて表明している。きたる10・7全国集会の大成功を勝ち取ろう。来春4・20暫定滑走路開港阻止決戦へ断固として闘いぬこう。
 空港公団総裁の中村は九月三日、扇千景国土交通相と会談し、成田暫定滑走路(二一八〇b)の開港時期について当初予定を約一カ月前倒しして来年四月二十日頃とする方針を伝えた。五月連休前の開港によって敷地内農民にできる限り大きな騒音を見せ付け、屈服を迫ることが目的だ。
 ついに公団は、滑走路南端付近で生活する東峰・天神峰地区の敷地内農家を屈服させることができないまま、国家ぐるみの一大゛地上げ行為゛としての暫定滑走路見切り開港へ、最後の反動的決断を下したのだ。
 これについて堂本千葉県知事ら自治体首長らは、農家圧殺を後押しする実に反動的なコメントを出した。
 堂本知事は「本来の二五〇〇b滑走路にむけて一層の努力を」とし、さらなる地上げ行為をせまる「檄」をとばした。成田市長の小川国彦は、自ら「開港」による敷地内農家脅迫の先頭にたつ意思を表明した。
 彼らは開港にともなう殺人行為の完全な共犯者として、未来永劫厳しく弾劾されなければならない。
     *
 およそ「民主主義」を標ぼうする国の空港建設において、立ち退きに抵抗する農家を屈服させるために、その農家の軒先まで一方的に滑走路を造り、実際にジェット機を飛ばすことで生活条件を完全に破壊してしまうような手段が許されようはずがない。商業マスコミはこの事実のすさまじさを事実上隠しているが、来春「4・20開港」が発表された暫定滑走路(二本目。二一八〇b)は、滑走路南端に隣接する農家の真上四十bをジェット機が飛ぶ以外に運航できない設計になっている。
 このような殺人滑走路は設計や認可自体が違法である。アプローチ内に多くの収用不可能(事業認定が消滅)な農家を含む未買収地がある。滑走路進入表面を侵害する障害物が複数存在する(六月に不法伐採された東峰神社以外の立ち木も存在)。滑走路本体の平行誘導路がぐにゃりと「く」の字にわん曲(市東孝雄さん方畑と反対同盟現闘本部に阻まれ)。着陸帯の幅が国際基準の半分(一坪共有地の影響)等々。そして何よりも日本を代表する国際空港でありながら、滑走路長が大型機も飛べない二一八〇bという短さ。
 このような滑走路は、本来なら航空法に照らしても認可できない。しかし国土交通省と空港公団は、成田空港建設の最終的破たんの危機に追い詰められ、それがもたらす国家的屈辱と危機を回避するために、「飛ばしてしまえば農家は騒音で生活できない。必ず屈服する」(公団幹部)として、反対農家の立ち退きを前提に、違法を承知で見切り着工(九九年十二月)を強行したのだ。

 欠陥、違法、全部露呈 暫定滑走路見切り開港 廃港への転換点に

 しかし公団の地上げ行為(開港)が失敗し、反対同盟・敷地内農民が断固として闘い抜く意思を貫くならば、暫定滑走路は政権の存立さえゆるがす危機を生み出す。事実、反対同盟と地域住民の粘り強い反撃で、公団の卑劣な願望(着工すれば屈服)は確実に裏切られつつある。暫定滑走路の違法な実態や農民殺しの数々が、否応なしに明るみに出ようとしている。

 致命的欠陥が露呈する危機

 滑走路南端付近の農民家族を物理的暴力で抹殺するような「見切り開港」が許されるのか!――この問題が本当に暴露され全人民の前で突きつけられた瞬間、政府・公団はこれに耐えうる論理を持っていない。
     *
 また公団が反対闘争を崩せなかった場合、暫定滑走路の開港は「二一八〇b」という欠陥滑走路の問題を一気に露呈させる。公団が公表している暫定滑走路の処理能力は「六万五千回離発着/年」である。外国航空会社との交渉もこれを前提に進められてきた。しかしこの数字は平行滑走路が本来計画の二五〇〇bで完成した場合のもので、大型機が使えない暫定滑走路では、国際・国内線をあわせても最大で年間二万回(便数にして一日二十八便)が限度だ。成田空港は発着枠の絶対的な少なさゆえに、大型機の発着が全体の九五%を占める。二一八〇bの暫定滑走路は端的にいって使い物にならない。
 国土交通省・公団はこの危機を突破しようと必死だ。彼らの攻撃の矛先は一点、敷地内農民を屈服させることに向かっている。村をフェンスで囲い営農環境を極限的に破壊しつつ、警察権力や地域反動を総動員して反対農家に有形無形の圧力をかけている。滑走路計画自体の違法性、公的確約を反故にした「地権者の同意なき見切り着工」、軒先工事による生活・営農環境の破壊、警察権力による昼夜を分かたぬ嫌がらせ等々。
 反対同盟と三里塚闘争が不屈の闘争意思を貫くなら、「開港」はすべての事実を露呈させる。「ワールドカップ開港」の鳴り物入りの宣伝は暗転し、政府は暫定滑走路の反人民的な実態や欠陥空港の事実を暴かれ、国際的にも厳しい批判にさらされることになる。それは成田空港建設三十五年にわたる農民殺しが、廃港への道に転じる歴史的な転換点となる。
 暫定滑走路開港阻止決戦は、そうした三里塚闘争の歴史的勝利の道をかけた決定的な攻防である。きたる10・7三里塚全国集会をその突破口として全力で闘いとろう。

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週刊『三里塚』(S591号1面2)

 三里塚弾圧を公言

 国家公安委員長

 5年ぶり現地視察

 村井仁国家公安委員長が八月二十四日、成田空港の視察と空港警察の「激励」に訪れた。国家公安委員長の成田訪問は五年ぶり。
 村井は過去の闘争現場でせん滅された警察官の碑のまえで「成田問題は日本の治安の歴史だ」「(反対農家やゲリラは)何とかならないか。日本は法治国家。残念の一言だ」と語った。三十五年もの建設遅延という敗北感のなかで、来春開港にむけた弾圧体制強化の意思をむき出しにしたのである。(=写真)
 治安当局が三里塚攻防の前面にあからさまに登場するのは成田治安法による団結小屋撤去攻撃が吹き荒れた九〇年決戦以来。政府が成田空港建設で暴力に頼る以外に手がなくなっていることの現れでもある。

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週刊『三里塚』(S591号1面3)

 ピンスポット

 堂本知事が「地上げ」に加担

 「2500メートル実現」が

 4者協唯一の方針

 成田空港建設の課題を話し合う千葉県と国土交通省、空港公団、周辺自治体の四者協議会が四日、第二回の会合を開いた。会議では「当初計画の二五〇〇b滑走路実現」を強く確認し、来春4・20開港が発表された暫定滑走路が使い物にならない欠陥滑走路である事実を露呈させた。
 翼賛ジャーナリズムの「歓迎」宣伝にもかかわらず、来春開港をめぐる関係者の危機感は尋常ではない。公団が見切り開港の前提として考えてきた地権者農民への屈服強要が失敗しているからだ。このまま開港すれば、農民殺しの実態が全国に知れ渡り、彼らは国家的地上げ行為に手を染めた犯罪者として厳しく断罪されるだろう。
 「環境派」「市民派」をかたって県知事となった堂本の動揺もあらわだ。暴力的地上げ行為に加担している自分の責任を棚に上げ「農家への開港通知のやり方(文書での一方的通告)」に「注文」をつけて見せる茶番を演じた。責任逃れは絶対に許さない。

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週刊『三里塚』(S591号1面4)

 小泉・都市再生本部が「成田完成」強調

 「航空立国」アジア勢力圏化狙う

 帝国主義の軍事政策と不可分

 暫定滑走路開港攻撃は、労働者人民の犠牲の上にアジア再侵略の道を準備しようとする小泉「構造改革」路線の柱となった。小泉政権の看板プロジェクトチーム、都市再生本部が、「都市再生プロジェクト」の中心に「大都市圏の国際交流・物流機能の強化」を据え、その筆頭に「成田平行滑走路の早期完成」および「羽田再拡張(四本目の新滑走路)の早期着手」と明記したのである。
 内容は「都市の国際競争力」という名のアジア市場制圧の拠点づくり、そして対米対抗的な「航空立国」への踏み出しである。国際的な市場争奪戦で日本の後退をもたらした成田空港建設三十五年の遅れを取り戻し、航空産業を国家の戦略産業として位置付けることを初めて政府レベルで打ち出したのである。
 日本の空港と港湾を含め、最も貿易額の大きい港は成田空港だ。成田空港を通過する輸出入総額は年間十五兆円(九八年度実績)を超えており、横浜港(同十兆円)や東京港(同九兆円)をしのいでいる。

 現代航空運輸の死活的位置

 また日本発着航空貨物の日米間シェアは、日本発のアジア全域で米航空企業が日本企業を圧倒している。主力の太平洋線が米六四%・日三六%。アジア線が米五六%・日二七%。オセアニア線が米一〇〇%。中国線が米五七%・日五%などである。日本発のアジア全域で米航空企業が日本企業を圧倒している。
 現在進められている日米航空交渉では、路線および運賃設定の完全自由化(オープンスカイ政策)を強く要求するアメリカに、日本の航空運輸当局は基本的に屈服している。香港、中国、シンガポール、韓国など周辺アジア諸国の相次ぐ新空港開港をテコにした対日包囲戦略(いわゆる日本パッシング)のなかで、「空港容量の不足」をたてに一種の航空鎖国政策を続けることはもはや不可能となっている。
 アメリカ側は「日本の国内線を含む市場開放」(カボタージュ)すら要求し始めており、日本は航空運輸業界から将来的に撤退するのか、弱肉強食的「市場競争」の場で生き抜くか(保証はない)のギリギリの判断を迫られている。
 小泉政権・都市再生本部での前記の方針決定は、後者の道すなわち日本版「航空立国」の決断だ。果てしない日米争闘戦を生き抜く以外に帝国主義国家として延命できないことの表現でもある。

 帝国主義の侵略政策と航空運輸

 かつて帝国主義段階への世界史的な移行期(十九世紀末〜二十世紀初頭)に、鉄道と海運の制圧は列強の世界市場争奪戦を左右する決定的要素だったことは歴史の教える通りだ。しかし現代帝国主義にとって、航空運輸の占める位置はかつての鉄道、海運と比較してもさらに大きい。航空運輸業と航空機製造業は、現代帝国主義にとって国家の軍事力水準を直接的に左右する戦略分野となっているからだ。
 航空業界の盟主はアメリカである。そして航空産業はイコール軍事産業だ。この分野はアメリカが圧倒的優位を現在も確保している数少ない分野でもある。
 アメリカ帝国主義の世界支配にとっての軍事力依存度は第二次大戦後飛躍的に増大した。九一年の湾岸戦争とソ連スターリン主義の崩壊以降はそれが極限化している。
 アメリカが貿易決済の「基軸通貨」としてドルを世界に流通させることも、米に一方的に有利な「グローバルスタンダード」を国際的に強制することも、本質的には限界を超えている。しかしそれはアメリカ金融独占資本の死活的利害だ。したがって軍事力依存はますます高まる。そうした状況は最終的な限界点=世界戦争的危機にむかって絶望的に拡大している。
 このアメリカの軍事戦略に深くかかわる航空政策に日本が「航空立国」(本格的な軍事大国化)で対抗することは絶望的選択である。だが日帝はアジアの勢力圏化が絶対的要請だ。それは航空運輸業での優位をアジアで確保できなければ確実に失敗する。日帝はその道を避けて通れない地点に追い詰められたのだ。
 三里塚闘争は日帝のアジア侵略政策の根幹を粉砕する闘いである。暫定滑走路開港阻止決戦へ!

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週刊『三里塚』(S591号1面5)

 団結街道

 三里塚・北総台地一帯で二十数年ぶりにサツマイモの花が咲いた。この地方では珍現象だ。その昔、天神峰でサツマイモの花が咲き、空港工事の夜間照明被害かと話題になったそうだ。葉もの野菜では夜間照明で花芽の出るのが促進され、収穫できなくなる懸念も大きい。暫定滑走路開港は、敷地内農家にとって営農上の大問題だ▼「薩摩芋」。カンショ、リュウキュウイモともいう。ヒルガオ科。熱帯アメリカ原産。日本へは十五世紀末に宮古島(沖縄県)や長崎、鹿児島に入り、南九州で栽培が広がった。一七三五年には儒学者の青木昆陽が江戸に導入、関東でも栽培されるようになった。今は千葉県も主産地のひとつだ▼今回、実地見聞したサツマイモの花は上向きの釣鐘状で、径三〜四センチの淡紅色。なるほど昼顔に似ている。゛識者゛によれば、温帯気候では開花する前に霜にあって枯れてしまうが、亜熱帯や熱帯では夏から秋に開花するとのこと。そうなのか。確かにこの夏は「熱帯なみ」だった▼昼顔のほうは三里塚でも毎年、人里植物として畑のまわりで初夏から夏に花をつける。昼顔が生えるところは毎年決まっている。野菜のように「連作障害」を起こさないことから、野菜も草と同じように育てるべきとの主張が昔一部にあった。だが実際は畑のまわりの雑草にも人の手が入る。草刈りで日あたりが良くならないと昼顔も成育できまい▼わが現闘がもう一度サツマイモの花をおがむことは可能か。笑い話ではない。わくわくする話だ。〈サツマイモ、二十年ぶり開花は吉兆か、秋の闘いに力がこもる〉

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週刊『三里塚』(S591号1面6)

 実りの秋、手ごたえ十分

 暫定滑走路開港阻止決戦の迫る中、三里塚現地は一斉に稲刈りが始まった。秋風そよぐ中、東峰部落の萩原進さん方の田んぼでもコンバインのエンジン音が勢いよく響いた。収穫は今年も「手ごたえ十分」(8月25日)

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週刊『三里塚』(S591号1面7)

 闘いの言葉

 幻想をもたず、意気消沈せず、きわめて困難な課題に立ち向かって、何度も何度も「始めに立ち返る」力と柔軟さを保持する共産主義者は敗北しない。
 エヌ・レーニン
 『政治家の覚書』

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週刊『三里塚』(S591号2面1)

 「空港と地域の共生」その虚構を暴く

 来春暫定滑走路の開港を阻止しよう!

 “俺の土地がタダになった!”

 騒特法で地価暴落 騒音下住民、怒りの声

 農民の叩き出しを目的とした暫定滑走路の供用開始攻撃が強まっているが、その中で「空港と地域の共生」なるものの虚構が次つぎと暴露されている。騒特法(特定空港周辺騒音対策特別措置法=本文参照)の線引き確定に伴う地価暴落=資産の強奪、野放図となる産業廃棄物処分場建設と自然破壊、地元商店街の没落・破壊と商店主の困窮……。空港がもたらすものは騒音地獄であり、自然破壊であり、資産の強奪であることが白日の下にさらされようとしている。暫定滑走路の開港は、空港公団と推進派のぺてん的「共生論」に最後的な破たんを強制するチャンスである。暫定滑走路開港阻止決戦へたたかいぬこう。
 暫定滑走路が「北側へ八百bずらした設計」になったことによって、新たに騒特法の強制立ち退き区域に組み込まれた地域で、土地評価額の暴落に対する怒りの声が上がっていることが明らかになった。
 問題の地域は成田市土室地区(右地図参照)。従来の平行滑走路案では、「防止特別地区」という強制移転区域に入っていなかったが、空港公団が苦しまぎれの暫定滑走路を計画したために、騒音地域が北側に八百b延び、強制立ち退き地区に組み入れられてしまった。(注)
 「防止特別地区」は建物の新増改築が禁止されるため、事実上の強制移転となる。ところが、強制移転に際して空港公団が買い上げるのは宅地と宅地と地続きの土地だけに限定される。宅地から離れた畑や山林で「防止特別地区」に入る土地は買い上げの対象にはならない。他方、「強制移転区域」の土地には利用価値がないから資産価値はゼロとなる。
 こうした畑、山林を持つ農家は重大な損害をこうむることになるのだが、補償は一銭もないのだ。
 このような地主が土室地区では四十世帯にも上る。そのため地主が集まって「空港公団に土地の買い取りなどを求める地権者会」を発足させることになったというのだ。(写真=六月十四日報道)
 これは、土室地区に限られた話ではなく、「防止特別地区」に編入された十四内外のすべての部落にあてはまる(成田市側だけの数字)。

 ●資産強奪

 このような資産価値下落問題はこれからあちこちの部落で噴出するのである。
 騒特法には「防止特別地区」のほかに騒音レベルが少し低い「防止地区」という規制がある。ここは強制立ち退きにはならないが、病院、学校、住宅を建設する場合には防音工事が義務付けられる。ここでも資産価値は下がる。
 成田市のかなりの地域で、空港騒音のために資産価値の強奪が行われることになり、怒りの声が続々と噴き出すことになるのだ。
 土室の住民の一人Aさんは本紙の取材にたいし「おれは元々空港反対だけどそれにしても公団のやり方はひどい。『空港と地域の共生』なんていったってウソっぱち。騒音被害に加えて土地の評価減。空港による利益など何もない」と怒りを口にする。
Bさんも「土地評価額が明らかに下がるのに、何の補償もないのはおかしい。うちの部落では、表だった空港反対運動を行ってはこなかったが、こんな仕打ちに会うのなら、空港反対の旗を振ればよかったと怒る人もいる」と語ってくれた。Cさんは「空港で雇用が増える増えると宣伝されているけど、うちの部落で公団はもちろん空港関係に勤めている人間なんて一人もいねえぞ。空港で良いことは何もない」と語った。

 「これなら反対しておけばよかったよ」

 さらに問題となっているのが、成田空港の北側(久住学区)で唯一の中学校である久住中学校の移転問題である。下の地図で分かるように土室地区にある同中学校も、暫定滑走路の文字通り飛行直下となり、「防止特別地区」に組み込まれた。強制移転区域である。
 問題は移転先だ。八月十九日に開かれた市教育委員会とPTAの会合で教育委員会側は、「久住地区外に移転し隣接学区との統合も考える」と説明して猛反発をあびた。教育委員会の趣旨は具体的には、JR成田駅近くの成田中学校に久住中学校を統合しようというのである。
 「久住中学校は生徒数が減っている。これからどんどん減るのだから成田中学校に統合するのが合理的」というわけだ。
 しかしこの統合計画が強行されれば、一番遠い芝地区からは十キロもの距離を通わねばならず、生徒ははなはだしい苦痛を強いられる。
 そもそも前述した騒音下無人化政策が問題なのだ。騒音を無くせばいい。成田市は暫定滑走路建設を認めなければいいのだ。しかし、市はあくまで暫定滑走路建設を最優先に、久住中学校の廃止を強行しようとしている。久住学区のPTAは「区域外の移転は認めない」として反対運動を起こす構えだ。
 また現在の四千b滑走路北側直下にあたる西和泉地区では、防音工事の効果が無くなるという問題が露呈してきた。(七月二十六日千葉日報=中央写真)
 同地域の防音工事は二十年も前に行ったものだが、建物および防音工事自体の耐用年数が過ぎて防音効果が無くなってきたという。現行では修繕にたいする補助制度はなく、改築による再助成制度では自己負担が膨大で実現不可能だ。ここでも空港への怒りが高まっている。
 土室同様に同じ問題は、成田空港北側の全域および南側の芝山町、横芝町でもこれから広範に発生する。「空港と地域の共生」なるものがいかに絵に描いたモチであるかを示す事態だ。
 暫定滑走路の供用開始前でこれだけの問題が噴出している。実際に航空機が飛び始めれば、騒音下のあちこちから怒りの声が噴き出すことはまちがいない。「共生論」のウソが最終的に暴かれる日は近い。

 空港のせいで商店閉鎖 地元住民 「運輸省と公団にだまされた」

 騒音下無人化政策と対応するのが、本紙でも何度か報道してきた騒音地域への産業廃棄物処分場、残土処分場、墓地、ゴルフ場導入政策である。
 上の地図(左図)は、成田空港周辺に設置された産廃・残土処分場を示す。その数実に百カ所。これらはすべて届け出済みのものだが、届出のない不法投棄ないしは届け出られたエリアを越えて投棄される不法廃棄物件数は、届出数の倍以上に上る。成田空港騒音下地帯はまさにゴミ捨て場と化している。
 本紙では十年前に、「成田市の周辺無人化政策の実態」を特集し、産廃処分場、一般廃棄物処分場の実状を報告した。(第三四〇号=一九九一年四月一日付け)。当時でも産業廃棄物処分場、一般廃棄物処分場は約三十カ所もあったが、この十年でそれが三倍も増えたことになる。
 しかもこれら処分場は、埋め立てが終わると表面に土をかけるだけで中の廃棄物類は半永久的に残る。地下水や大気は汚染されつづけるのだ。
 中でも深刻なのは、成田市芦田地区、三里塚地区、小泉地区、芝地区などである。
 成田市の残土埋め立て条例では「処分場設置には近隣地主と地元地区の同意書がいる」となっているが、芦田地区で現在計画されている処分場には地元が大反対している。

 産廃処分場100以上 元県議までが違法行為

 反対を無視して地主と処分場業者は、「仮設道路設置」の名目で勝手に廃棄物投棄を開始し、さらに処分場の巨大な穴を掘り始めてしまった。地元住民から怒りの声が上がっている。
 小泉地区では、元千葉県議会議員が自分の所有地に産業廃棄物を不法投棄していることが発覚し、追及を受けている。(写真)
 またこの小泉地区と芝地区は幹線道路の両脇に産廃処分場ないし埋め立て跡地がひしめいていて「産廃銀座」のありがたくない名前が授けられている。
 このほか『残土市民白書・ちば』によれば、一九九七年、三里塚地区の国道296号のバイパス脇で産廃の不法投棄が摘発された。業者の申請では畑を一・八bだけ掘ってそこに残土(といっても実態は産業廃棄物)を埋めることになっていたものが、実際は十bも掘っていることがわかって大問題になった。
 成田市松崎地区では正規に認可を受けた処分場の奥にまで違法に広げて廃棄物の不法投棄が行われ、隣接する山林が枯れるという被害を出している等々。
 これらは氷山の一画にすぎない。空港騒音下地帯はまさにゴミ捨て場と化している実態が分かる。
 一方、十年前に猛威をふるったゴルフ場開発ラッシュは、バブル経済の崩壊で大半が破たんした。しかしゴルフ場予定だった跡地が産廃処分場のターゲットとなっている。
 ところで最近顕著になってきたのが空港計画とともに進出してきた大型店による地元商店街の没落ぶりである。三里塚地区と久住駅前の商店街では閉鎖が相次いでいる。

 ●大型店舗

 三里塚現地に来たことのある人にとってはなじみ深い三里塚商店街。ところが成田空港建設に伴う人口増をあてこんで近隣地区に五カ所もの大型スーパーマーケットが進出した結果、閉鎖する店が続出、厳しい落ち込みを強いられている。 成田市中央部・富里町までエリアを広げると大型ホームセンター、ディスカウントストア、大型電機店などがひしめいており、大手ですら倒産する店が出るほどである。

 大資本だけ潤う仕組み 自ら首しめる地元賛成派

 同じく久住駅前商店街。ここは商店街といえるほどの店舗数は元々なかったが、その数少ない商店ですら、区画整理事業の行きづまりが尾を引いて、ほとんど壊滅である。
 商店主らの多くは「空港賛成」の立場を採り「空港が来れば客も増える」との前宣伝を信用したが、結果はまったく裏目に出た。
 成田山参道商店街でも、図式は同じ。「空港建設促進」の旗振り役をかって出てはいるが、空港によってもたらされる利益はわずかで、郊外大型店の猛威におびえる日々だ。
 空港で利益を受けているのは要するに航空会社であり、航空貨物輸送会社であり、大手旅行会社であり、大手小売り資本であり、国土交通省・空港公団官僚だけなのである。
 空港周辺では農民が貧困化し、商店主が労働者に転落し、どんどん貧しくなっている。これは小ブルジョア階層のプロレタリア化である。
 宣伝されている「雇用効果」なるものも実態は怪しい。騒音被害を直接受ける地元雇用(従来からの成田市民および芝山町民など)はごくわずかでしかない。そしてそのごくわずかな雇用にしても大手資本の莫大な利益の何億分の一=すずめの涙を頂戴するものでしかない。
 成田空港の実態は「空港と地域の共生」ではなく「空港と大資本の共生」なのである。

(注)千葉県が五月十一日、騒特法を実施するための都市計画を決定したため騒特法が実施されることになった。同法には「騒音防止特別地区」と「騒音防止地区」があり適用されると立地規制のため地価が暴落
することになる。

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週刊『三里塚』(S591号2面2)

 ”26万署名”はねつ造だった

 「半強制」「4回も書いた」

 一九九九年に展開された「平行滑走路促進二十六万人の地元署名」なるものがデッチ上げに近いデタラメなものであることが具体的に明らかになった。
 そもそも「地元」と言いながら署名者数が二十六万人にもなること自体がインチキだ。
 成田空港周辺の市町村の人口数を見れば一目瞭然だ(しかも赤ん坊も含めてだ!)。成田市ですら十万人に足らない。その他五千人から一万人の町村人口を加えても二十六万人には到底及ばない。
 さらに「自分は四回署名した」「五回署名した」などと自白する人間が続出している。
 また署名の大半が町内会のボスを通した半強制であったことも判明している。要するに空港利用客などから手当たり次第に署名を集め、数を上乗せしたデッチ上げ署名なのだ。
 まさに農民殺しのための官製署名である。

 百然郷もインチキ

 一方、空港反対運動を裏切って今や最悪の空港賛成派に回った小川国彦・成田市長のインチキも暴露された。
 小川市長の今の金看板は「日本一のふるさと作り」と称する「百然郷(ひゃくねんきょう)」構想である。市内の里山などを保護し、「ふるさと」にふさわしい自然を守るというのだが、その実態は「騒音下地域の荒廃」を隠蔽するためのサギ政策だった。
 小川市長は、利用価値のなくなった騒音下の山林などに税金を投入して、せっせと公園や遊歩道を造り「百然郷」と称している。しかし大騒音下の公園や遊歩道を訪れる人間など居はしない。逆に造成費と維持費に莫大な税金がかかるだけ。愚策もいいところだ。
 ところが小川市長の狙いは「ふるさと作り」などではなく、騒音下地域の荒廃ぶりの隠蔽にある。日本一の“金持ち市゜の長は税金の無駄使いなど平気の平左だ。「百然郷」を言うなら空港を無くし航空機騒音を根絶することが先決だ。

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週刊『三里塚』(S591号2面3)

 北総の空の下で

 “旦那日和”

 で蘇る野菜たち

 まだ残暑があるとはいえ、そこかしこに秋を感じる季節になりました。台風シーズンの到来でもあります。先の台風十一号。各地に多くの被害を出しましたが、三里塚では、懸念していたほどの暴風雨はなく、雨の恵みの方が勝っていました。
 今年ほど“水の力゜を実感した年はありません。七月から続いた猛暑で乾燥し切った台地にようやく雨があったのはお盆直前です。
 冬ニンジンのまき付けには間に合いましたが雨に縁遠かった作物には大なり小なりの被害が出ました。その後不安定な天気がつづき、近隣で雷雨やしぐれがあった時にもここはむし熱いばかり。台風十一号の雨でようやく一息ついた次第です。
 水不足は一般に、野菜を固くし、辛いものをより辛くする傾向があります。夏のホウレンソウといわれるモロヘイヤは、若芽が伸びた所から手で折り取って収穫します。 今年は水不足で株の育ちが悪く中腰での作業に苦労しましたが、折り取るのにも骨が折れて指が痛くなる程。ところが一雨振った後にはポキポキとリズムをつけて収穫できるようになったのです。水の力に驚きました。
 シシトウは、形はトウガラシに似ていますがピーマンと同じ甘味種です。ところが中には辛い房が…。今年は水不足で「こりゃトウガラシだよ」というほど辛いものが多く、一口目は恐る恐るです。
 この辺では夜だけ降る雨を“旦那日和(だんなびより)”といいます。雨には恵まれるが仕事への支障がないので、旦那(家長や雇い主)だけに都合のいい天気という意味です。地主にたいする小作人、家長にたいする家族の皮肉が込められている言葉ですが、農民にとっては“旦那日和゜大歓迎です。(北里一枝)

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週刊『三里塚』(S591号2面4)

 三芝百景

 三里塚現地日誌 2001

 8月22日(水)〜9月4日(火)

●萩原進さん宅で稲刈り 敷地内東峰部落の萩原進さん宅で稲刈りが行われた。20アールの田から採れた稲は早稲種の総乙女(ふさおとめ)。収量は10アールあたり8・5俵(510キロ)とまずまずの成績。進・静江さん夫婦の顔もほころんだ。モミはすぐに乾燥に出され、翌日には食卓に上った。萩原家一同、援農者からは、都会の消費者より一足早く味わう新米の美味に感激の声が上がった。(25、26日)
●10・7集会へ招請状発出
三里塚10・7全国集会への大結集を呼びかける招請状が反対同盟から発出された。(26日) 
●小泉内閣が成田完成を重点プロジェクトに 小泉内閣の都市再生本部は、重点プロジェクトの第2次案に、「国際交流・物流機能の強化」をはじめ5分野を盛り込むことを決めた。「国際交流機能」云々は、成田空港平行滑走路(3300b)完成と羽田空港再拡張プロジェクトを指す。(28日)
●関西実行委集会にむけ現地状況の撮影 全関西実行委員会は、9月18日に三里塚大結集に向けた集会を予定しているが、ここで写すスライド写真のため、現闘員K君は暫定滑走路工事を中心とした現地状況の写真撮影を行った。(28日)
●北原事務局長、全学連大会で激励 東京都内で開かれた全学連大会の初日、北原鉱治事務局長がかけつけて激励の演説を行った。「靖国神社参拝やつくる会教科書の攻撃など、日本の将来を危うくする戦争にむけた動きが強まっている。三里塚はこうした戦争攻撃を阻止するために闘っている。君たちも三里塚の地に立てば国家権力というものの正体が分るだろう」「沖縄・アジアの人びとと連帯して闘おう」と訴えた。(30日=写真)
●婦民群馬支部の集会に鈴木いとさん 群馬県前橋市で行われた婦人民主クラブ全国協議会群馬支部の「戦争に反対する女たちの集会」に中郷部落の鈴木いとさんが参加して10・7集会への結集を訴えた。(9月2日)
●「4月18日開業めざす」と公団 空港公団は、暫定滑走路の供用開始時期について「予定より一カ月前倒しし、来年4月18日開業をめざす」と発表した。農民追い出しだけを目的にした開港を許すな。(3日)

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