安倍の派遣法改悪阻止を 労働者の総非正規職化が狙い

週刊『前進』06頁(2619号04面02)(2014/02/10)


 安倍の派遣法改悪阻止を
 労働者の総非正規職化が狙い

 派遣労働者を3年で解雇へ

 安倍政権は今国会で労働者派遣法改悪案を押し通そうとしている。労働者の総非正規職化を狙うこの攻撃を、労働者階級の団結と闘いによってなんとしても打ち砕こう。
 1月29日、厚生労働省の労働政策審議会・職業安定分科会労働力需給制度部会は、「労働者派遣制度の改正について」と題する報告書をまとめた。安倍政権はこれに基づき労働者派遣法改悪の法案を策定し、今通常国会に提出して、15年4月から改悪内容を実施に移す構えだ。
 報告書の内容は、おおよそ次のとおりだ。①現在、「通訳」や「事務用機器操作」などのいわゆる「専門26業務」以外については、派遣先企業は3年以上は派遣労働を受け入れることができなかったが、その規制を廃止する、②派遣先企業が3年を超えて派遣労働を受け入れる場合、労働組合や労働者代表からの意見聴取を条件とする、③他方、同じ派遣労働者が3年を超えて同一派遣先での同一部署に就労することはできない、④派遣元と無期雇用契約を結んでいる派遣労働者については、3年の期間制限は適用しない。
 この改悪で、派遣先企業は、3年ごとに働く人を入れ替えれば、派遣労働を無期限に利用できるようになる。しかし、派遣労働者は3年後には必ず職場を追われるのだ。
 また、これまであった「専門26業務とそれ以外」という区分もなくなる。派遣元と無期雇用契約を結んでいる労働者については期間制限なしとされているが、派遣労働者の大半は短期間の有期雇用契約を繰り返し結ぶ状態を強いられている。
 こんな制度は、企業にとっては好都合だが、労働者にとっては最悪のものだ。
 さらに労働政策審議会の報告書には、使用者側の意見として、①現在、禁止されている30日以内の派遣(日雇い派遣)の全面解禁、②違法派遣の場合、派遣先が直接雇用したものとみなす制度の廃止、などが書き並べられている。
 これらの規制は民主党政権下の2012年に行われた労働者派遣法改定で設けられたが、この条文がまだ効力を持たない今の段階で、規定自体を削ってしまおうというのである。要するに、派遣労働に対するあらゆる規制を撤廃することが、資本と安倍政権の狙いだ。
 労働者派遣法は、国鉄分割・民営化に向けた攻撃が吹き荒れていた1985年に制定された。これにより中間搾取を禁じた戦後労働法制の根幹は打ち壊された。まさにそれは、国鉄分割・民営化と並ぶ新自由主義攻撃の切っ先としてあった。
 だが、それでも支配階級は、「派遣労働が認められるのは臨時的・一時的な業務に限る」という建前を今日まで崩すことはできなかった。今回の改悪は、その建前さえ最終的に取り払うものだ。安倍政権は、派遣法制定時や、製造業派遣を容認した03年の改悪に次ぐ、労働者派遣法の大転換を狙っている。

 攻撃容認した連合の裏切り

 こうした攻撃を引き出したのは、またしても連合の裏切りだった。労働政策審議会に委員を送り込んでいる連合は、昨年末までは形ばかりは「反対」のポーズをとり、12月25日の審議会で報告書のとりまとめを狙っていた厚労省の思惑が阻まれる一幕もあった。だが、今年に入って連合は態度を一転させ、「『派遣は臨時的・一時的なもの』という大原則を復活させることができた。労働側として大きな成果だ」と言い張って、報告書の取りまとめに合意を与えたのだ。しかし、報告書の内容は、昨年末段階で検討されていた原案と基本的な中身はまったく変わらない。
 そもそも連合は、派遣法撤廃とは一言も言わない。彼らは「派遣法抜本改正」と言うが、それは、派遣労働も中間搾取も認める立場をとっているということだ。全労連もまた同じだ。彼らのスローガン「派遣は臨時的・一時的業務に限定せよ」は、派遣労働を基本的に容認している点で、連合と何も変わらない。

 2・16集会から14春闘勝利へ

 非正規労働者は今や全労働者の36・6%を占めている。不安定雇用と低賃金を強いられ、資本によって代替の利く部品のように扱われる労働者の怒りは、この社会に深く広く満ちている。
 鈴木たつお候補を押し立てての東京都知事選決戦は、その怒りと結びつき、力ある行動に転化するものとして闘われた。それは、社会保険庁解雇を強行した舛添や、郵政民営化をごり押しした小泉(細川)、国鉄闘争の4・9政治和解で解雇撤回闘争の圧殺者となった宇都宮らと激突して打ち抜かれ、国鉄解雇撤回闘争勝利の道筋をも大きく切り開いたのだ。
 その全成果を2・16国鉄集会に集約しよう。1047名解雇撤回、外注化粉砕・非正規職撤廃を軸とする国鉄決戦は、新自由主義を根底から打ち砕く闘いだ。
 2・16集会を跳躍台に「賃下げ攻撃粉砕・大幅賃上げ獲得」「8時間労働制死守・過労死を許さない」を掲げて14春闘に立とう。労働者派遣法の改悪を許さず、派遣法と非正規職そのものを撤廃させよう。総非正規職化の攻撃に突き進む安倍政権を打倒しよう。
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 労働者派遣法改悪案のポイント


○「専門26業務」を除き最長3年としている派遣期間の上限を廃止。「専門26業務」という区分も廃止。派遣先企業は、3年ごとに労働者を入れ替えれば、派遣労働を無期限に利用できる

○派遣先企業が3年を超えて派遣労働を受け入れる場合、労働組合や労働者代表からの意見聴取が条件。合意までは必要ない

○同じ派遣労働者が3年を超えて同一派遣先の同一部署に就労することはできない

○派遣元と無期雇用契約を結んでいる派遣労働者、60歳以上の派遣労働者については、派遣先企業は3年を超えて就労させることができる

○3年を迎えた派遣労働者について、派遣元は派遣先企業への直接雇用の依頼や新たな派遣先の提供などの措置を講じる。派遣先に直接雇用の義務はない
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