ロンドン地下鉄48時間スト 「駅窓口閉鎖・960人解雇」撤回へ

週刊『前進』06頁(2620号03面02)(2014/02/17)


 ロンドン地下鉄48時間スト
 「駅窓口閉鎖・960人解雇」撤回へ

(写真 地下鉄ビクトリア駅でピケットを張るRMT【鉄道・海運・運輸労組】の労働者【2月5日 ロンドン】)

 ロンドンの地下鉄労働者は、2月4日から6日にかけて48時間ストライキに決起した。ストを組織したのはRMT(鉄道・海運・運輸労組)であり、そこにTSSA(運輸職員協会)が合流した。地下鉄はほぼ完全にストの制圧下に入り、70%の運行が止まった。ロンドン地下鉄は市内だけでなく、首都圏全体の交通の大動脈であり、世界的な金融センターである「ザ・シティー」にも大打撃を与えた。
 ストの要求は、TfL(ロンドン市交通局)・LU(ロンドン地下鉄)当局による265の駅の窓口(チケット・オフィス)の全面閉鎖・960人解雇という計画の撤回である。ストは1月のスト権投票で77%の高率で圧倒的に支持され、貫徹された。当局はスト破り部隊として、ロンドン・オリンピックの際に組織した特別輸送班を「オリンピック特使」と名付けて投入しようとしたが、ストを妨害することはできなかった。
 さらに、11日からも連続ストが設定され、いっそう大規模な運行停止が準備されてきた。TfL・LU当局はこの闘いに震え上がり、当面、RMTが反対してきた合理化計画は実施しないことを回答してきた。
 当局と労組側は、4月4日まで交渉を継続することで、ひとまずストは集約された。

 英労働党の敵対粉砕しスト貫徹

 今回の駅の窓口業務全面閉鎖と960人解雇計画について、TfLは、鉄道業務近代化と経費削減のためだと説明している。だが、これは実際には地下鉄を始めとする都市交通、中近距離交通に対する新自由主義攻撃の一環であり、駅業務の完全自動化や、無人駅化、管理・保守業務における人員削減などと関連して強行されようとしているものだ。
 この大量の首切りについて、当局は「強制的解雇」ではなく希望退職だと主張し、労働者の切り崩し、屈服を狙っている。しかも政府を先頭に「スト権投票の有効性」を問題にし、スト権そのものへの攻撃を開始している。ロンドン市長は、「ストはロンドンの頭に銃をつきつけるものだ」「しかし、計画に変更はない」などと強硬姿勢を示し、キャメロン首相は、「恥知らずなストライキだ」と許しがたい暴言を吐いている。そしてマスコミは、「スト=迷惑」論の大キャンペーンを展開し、労働者間の分断を図ろうと必死になった。
 これに対しRMTは、「一つひとつの雇用がすべて大切だ」のスローガンを掲げ、「希望退職の強制は、労働者への屈辱だ」「計画の撤回までストライキは貫徹する」という声明を発表している。
 またイギリス労働組合会議(ナショナルセンター)に強い影響力を持つ労働党のミルバンド党首は、「ストは遺憾だ」と資本家階級に完全に同調して、ストを圧殺しようとした。
 英労働党は、もともと労働組合によって創立された党であり、RMTの前身である鉄道労組、海員労組を始め、ほぼすべての労働組合が組織まるごと労働党に加入してきたのだ。
 RMTは、03年のイラク戦争の先兵となって労組破壊攻撃を推進した当時の労働党と対決し、圧力に屈せずに反戦闘争を闘う諸党派を選挙で推薦し、労働党から真っ先に除名された。その後、労働党から除名された消防士労組などとともに、労働党の既成労働運動指導部と対決する新たな潮流の軸になっている。労働党と対決してきたからこそ、地下鉄ストを貫徹できたのだ。
 RMTは、駅頭・街頭などでのビラまきや説得活動などを展開し、団結の拡大強化をめざして闘っている。

 ロンドン五輪で市の財政が破産

 今回のロンドン地下鉄の経費削減攻撃は、12年ロンドン・オリンピックによる市財政の破産を動機としている。もともと05年に12年開催が決定されたロンドン・オリンピックは、階級闘争圧殺のためのものだった。
 01年のアフガニスタン侵略戦争以来拡大してきた反戦闘争は、02年、03年には、ロンドン市内を200万人のデモが制圧するまでに高揚し、戦闘的になっていった。それを組織したイギリス反戦連合の構成実体はほとんどが労働組合だった。サッチャー以来の新自由主義、民営化、労組破壊への怒りと反戦闘争が結合し、イギリス帝国主義を揺るがしていたのだ。
 そして11年3月の巨大な労組デモや同年6月の75万人公務員労働者のゼネストなどに、新自由主義攻撃の強行を脅かされたイギリス政府は、「テロ対策」の名目で、オリンピック開会から数日にわたってロンドンを軍と機動隊の制圧下に置き、市内はゴーストタウンと化した。このための警備費のほか、膨大な施設建設費などのために、ロンドン市財政の負債は巨額になっていった。こうした状況の中で、今回のロンドン地下鉄への経費削減攻撃が行われているのである。
 昨年末の韓国鉄道労組の民営化反対ストにRMTは連帯メッセージを送り、今回のロンドン地下鉄ストには民主労総と動労千葉が連帯している。この闘いが、全世界の階級的労働運動の新たな結集点になろうとしている。2・16労働者集会は鉄道・交通労働者の国際連帯の新たな出発点だ。
 (川武信夫)
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