医療福祉の丸ごと民営化と対決し14春闘―安倍打倒へ

週刊『前進』08頁(2622号04面01)(2014/03/03)


医療福祉の丸ごと民営化と対決し14春闘―安倍打倒へ
革共同医療福祉労働者委員会


 東京都知事選で鈴木達夫候補は、「労働者階級だけが社会を変えられる」「1千万人の怒りで安倍を打倒しよう」と訴え、選挙戦を労働者階級自己解放の闘いとして終始闘いぬいた。青年労働者・学生は街頭に立ち、労働組合への結集を訴えた。この地平を引き継ぎ、韓国・民主労総のゼネストと連帯し、国鉄決戦を軸に3・11闘争―14春闘の爆発に向かって全力で闘おう。

 医療を「成長戦略」の柱に据える安倍

 今こそ青年を先頭に、生きられない現実への労働者階級の根底的怒りを解き放つ時だ。体制内労働運動勢力は、都知事選での連合東京の舛添支持に明らかなように崩壊を始めた。労働運動は大流動の時代に入った。党派闘争を積極的・攻勢的に闘い、階級的労働運動派の拠点建設、一大前進をかちとろう。
 安倍政権は3・11以来の労働者階級の怒りと闘いにグラグラになりながら、集団的自衛権や武器輸出を解禁し、改憲に向かって突き進んでいる。教育、自治体、医療・福祉などの「丸ごと民営化」に一気に踏みこみ、企業への「市場開放」と国家的なリストラ―労働規制の撤廃、労働基本権の解体を進めようとしている。この中で、医療・福祉をめぐる階級的激突が強まっている。
 「日本型医療、新興国へ/ラオス・カンボジアと覚書調印へ」と報道されているように、原発・鉄道輸出と並んで「医療のパッケージ輸出」が位置づけられている。安倍政権は成長戦略の一環として、最新医療施設や医療機器、保険制度、人事管理まで含む日本式医療のパッケージ輸出を掲げている。パッケージ輸出はその範囲が国家的規模に拡大し、武器輸出と海外派兵を不可欠としている。安倍政権は、こうした形でアジアの勢力圏化―再分割をめぐる帝国主義間・大国間の争闘戦に深々と踏み込んでいる。

 医療福祉法人の戦後的あり方の転換狙う

 規制改革会議の「混合診療の大幅な解禁」の提言と同時に、産業競争力会議は「医療・介護分野の成長戦略の中間まとめ」として、①複数の医療法人と社会福祉法人をまとめて運営できる「非営利の持ち株会社の設立」を検討し、②「ヘルスケアREIT(不動産投資信託)」の導入を提言している。これは金融商品を使って施設整備を進めようとするもので、福祉を投資=金もうけの対象にするものだ。すでにファンドによる介護施設買収が過熱している。ファンドは取得した施設を「優良な投資先」として転売するために、徹底的に合理化を推進し、「身売りされるごとに厳しくなる労働条件」「効率優先、人員は最低限」と言われている。常駐の医師や看護師も削られ、事故が起きればもみ消しを指示され、発覚すれば責任は労働者に押しつけられる。また、多くの事業所で金もうけのために、利用者の希望に関係なく目一杯のケアプランを立てなければ、ケアマネが首にされる。一方に豪華ホテル並みの老人ホームがあれば、他方には「雑魚寝ホーム」(通称「お泊まりデイ」)とまで言われる施設を利用する以外にない老人が生まれている。労働者の中には、「人生を豊かにする仕事のはずなのに、その人の尊厳を奪っている」と怒りが充満している。こうした中で、特養でもストライキが闘われている。これが民営化の現実である。介護保険制度は完全に破産している。
 にもかかわらず、規制緩和・民営化攻撃を、介護から医療の領域に一挙に広げようとしているのが安倍政権だ。「非営利の持ち株会社設立」の狙いは、徳洲会病院のような巨大病院チェーン、介護施設を含む医療産業複合体を積極的に育成し、大民間資本を中心に「医療提供体制の再編」を狙うものだ。急性期病床の9万床の削減を始め、上からの再編のために都道府県知事に病床の削減を命じる権限を与える「地域医療・介護推進法案」も準備されている。
 12年の医療・介護報酬の同時改定は「医療から介護へ」「施設から地域へ」を合言葉に、「医師の仕事は訪問看護師に」「訪問看護師の仕事はヘルパーに」「ヘルパーの仕事はボランティアに」「介護療養病棟は民間のサービス付き高齢者住宅へ」と移行させ、社会保障費の大幅削減を目指すものだった。
 そして14年度の診療報酬の改定では、本体である病院の機能分化を徹底的に進め、主治医を決め、200床未満の病院や診療所に「包括払い」の仕組みが新設される。自由に医療機関を選択できる「フリーアクセス」を前提とした国民皆保険制度を根本からひっくり返し、「命よりカネ」の「アメリカ型医療」に転換させる攻撃である。

 病院労働者に解雇・賃下げと非正規職化

 政改革推進会議は昨年末、全国に143病院(職員約5万6千人)をもつ「国立病院機構」の職員を非公務員化することを決めた。これをテコにして医療機関全体を貫くリストラ・合理化推進のために、厚労省に「医療経営支援課」を立ち上げようとしている。国立病院機構労働者の非公務員化、社会保険病院2万人の「全員いったん退職、労働条件改悪」の攻撃は「解雇自由・賃下げ」攻撃であり、断じて許せない。民営化も統廃合も、核心的狙いは労働組合の破壊にある。
 これに屈服し協力してきたのが、国鉄闘争を投げ出した体制内労働運動の勢力だ。福祉の民営化を進める介護保険の導入に際しても、日本共産党・医労連は「自分たちの手で介護を充実させる」とこれを擁護し、労働者階級自己解放の闘いに敵対し、診療報酬・介護報酬改善の請願運動にすり替えてきた。
 医療・介護の規制緩和・民営化、外注化・非正規職化の行き着く先は、労働規制の撤廃、解雇の自由化である。労働者階級が歴史的にかちとってきた団結権や社会保障の権利をはく奪し、19世紀半ばの『イギリスにおける労働者階級の状態』(エンゲルス)に突き落とそうという、新自由主義の大攻撃だ。しかし、これは労働者階級の反乱を不可避とする。

 新自由主義の大破綻に労働運動で反撃を

 福島原発事故とJR北海道問題は、新自由主義が完全に破綻し社会を崩壊のふちに追い込んでいること、それゆえ労働者階級が資本家階級を打倒して、社会の主人公となって責任を取りきる以外に、いかなる根本的解決の道もないことを示している。同じように、医療・介護の民営化=営利化がもたらす荒廃した現実は、新自由主義と労働者階級が絶対非和解であり、プロレタリア革命以外に出口がないことを示している。また、この事態は、労働者階級自己解放の闘いに敵対し、合理化に協力し、労働者の闘いを診療報酬改定の請願運動にすり替えてきた日共・医労連を始めとする体制内労働運動の完全な路線的破産を突きつけている。
 なぜなら新自由主義は、そこで働く医療福祉労働者に極限的な疎外労働を強制することで、逆に「医療労働とは何か」「介護労働とは何か」を根底から問い直すことを迫っている。こうした中で医療福祉労働者が、内部被曝と闘う「ふくしま共同診療所」と連帯し、反原発闘争を闘うことは正面課題である。

 国鉄決戦闘い全国に階級的な労組拠点を

 医療・福祉の民営化攻撃は、新自由主義による国鉄分割・民営化攻撃と一体で進んできた。その中で、国と資本の意思を体現した八尾市による八尾北医療センターの明け渡し=全員解雇攻撃に対して八尾北労組は十数年間、絶対反対で闘って勝利してきた。それは労働組合の基礎的団結を土台に、絶対反対の闘いをとおして階級的団結の形成と、党と労働組合の一体的建設に勝利してきたからだ。新自由主義の攻撃は、動労千葉と階級的労働運動路線が切り開いている地平があれば、必ず粉砕できる。
 今日膨大な青年労働者が劣悪な医療福祉職場で働いている。「何年たっても非正規」「家族を養うこともできない低賃金」、事故と隣り合わせの労働、過労死寸前の長時間労働を強制されている青年労働者が合同労組に結集し、闘いに立ち上がっている。地区党が青年労働者の根底的怒りに肉薄し、労組を建設し、路線的闘いをやりぬく力が問われている。何よりも時代認識と路線的一致が核心だ。営利化が進み事故が多発する医療福祉現場でこそ、動労千葉のように反合理化・安全闘争を闘おう。
 介護職場で働く労働者の多くは零細事業所で働いている。合同労組に組織するとともに、病院・介護施設などでの職場細胞建設、闘う労組権力の確立をとおして地域における階級的労働運動の拠点を建設しよう。A労組は地域の闘う労働組合の結集軸となり、正規・非正規を超えた地域の拠点となっている。また、八尾北医療センター労働組合は全国水平同盟とともに地域の医療拠点として闘っている。
 労組交流センター医療福祉部会の強化をかちとり、医療・福祉解体攻撃に反撃する陣形をつくりあげよう! 韓国保健医療労組の闘いを学び、正規・非正規を超えた医療福祉労働者の決起をかちとろう!
 社会保障解体攻撃を今こそ粉砕しよう! 今こそ職場生産点に階級的労働運動の不抜の拠点を建設しよう。その武器は、新自由主義に風穴をあけた国鉄決戦―9・25判決の地平だ。B労組では、職場闘争を基礎に国鉄解雇撤回の10万人署名を職場にもちこみ、全職場を対象化した闘いに打って出て、労組執行部への支持を圧倒的に拡大した。C労組では国鉄全国運動への参加を決議し、国鉄闘争への決起を訴えている。
 都知事選闘争が切り開いた地平を打ち固め、国鉄決戦を基軸に、階級的労働運動の力で安倍政権を打倒しよう! 3労組共同声明を軸に労働組合の巨万の隊列を改憲阻止・安倍政権打倒の闘いに登場させよう!
 この闘いと一体で、社会保障解体攻撃を粉砕し、階級的労働運動の大前進へ、医療福祉労働者は最先頭で闘おう! 14春闘に勝利しよう!
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