2・11郡山 共同診療所報告会 声を上げ命守ろう 県の甲状腺検査に怒り

週刊『前進』08頁(2622号07面04)(2014/03/03)


2・11郡山 共同診療所報告会
声を上げ命守ろう
県の甲状腺検査に怒り

(写真 母親、農民、教育労働者などが次々と発言し、実り多い質疑応答になった【2月11日 郡山市】)


 2月11日、福島県郡山市のビッグアイにおいて、「ふくしま共同診療所報告会」が行われた。
 2月7日には、福島県の「県民健康管理調査」の検討委員会が、子どもの甲状腺検査で結果がまとまった約25万4千人のうち「がん」と「がんの疑い」が合わせて74人と発表し、福島県、全国に衝撃が走った。
 「子どもたちを守りたい」「福島の現状をなんとかしたい」、その切実な思いで、会場には郡山市を始め福島県内各地、東北、首都圏などから120人が訪れ、気迫のこもった報告と真剣な質疑応答が行われた。
 まず、都合で不参加となった診療所院長の松江寛人さんに代わり、診療所医師の深谷邦男さんが「甲状腺エコー検査から見えてきたもの」と題し報告を行った。
 深谷さんは診療所で子どもたちの甲状腺を検査した結果を説明し、「小さなのう胞が〝蜂の巣状〟に無数にある例が多い。普通はあまりないこと。甲状腺の機能障害が一番心配される」と語った。続けて県の甲状腺検査の結果について「手術した34人のうち、最小の腫瘍(しゅよう)は5・2㍉だった。1次検査で5㍉以下の結節を『異常なし』とするのはとんでもない」と弾劾した。さらに「相双地区では、帰村準備のために役場などに労働者を無理やり送り込んでいる。福島第一原発では事故収束のためにひどい労働条件の中で労働者が頑張っている」と語り、「自分たちの健康を守るところからやりたい。ぜひ、ふくしま共同診療所にいらしてください」と報告を終えた。
 次に、同じく診療所医師の布施幸彦さんが「仮設住宅健康相談会から見えてきたもの」と題して報告。「阪神大震災の教訓として仮設住宅で命を落とす人が多かったことから、仮設での相談会を始めた」と述べて現状を語り、「仮設住宅は原発事故の縮図であり、そこに福島の現実がある」と訴えた。
 休憩の後、「隠され続けてきた内部被ばくの危険」の演題で琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬さんが講演を行った。
 矢ケ崎さんは冒頭、「加害者の都合で被曝が語られてきた。その手段が『科学』だった」と断言。それは広島、長崎への原爆投下による内部被曝を米軍が切り捨てたところから始まったと語り、「それが規模を増して戦後の放射線被害を隠し続けてきた。放射線の被害をできるだけ少なく見せる〝知られざる核戦争〟がずっと続いてきた。それらは公益のためには犠牲があってもかまわないという功利主義、経済主義、国家主義によるもの」と指摘した。さらに「ECRR(欧州放射線リスク委員会)の試算では、戦後の多くの大気圏内核実験の結果、世界で6500万人が放射線で命を落とした」と弾劾し、放射線が人体に及ぼす危害について詳しく解説した。
 三つの報告を終えて質疑応答に移り、会場から多くの質問が寄せられ、活発な論議となった。
 中通り地区の女性が「子どもたちを県外に保養に出したいと思っているが、『放射線』という言葉も出せない教育現場を変えるにはどうしたらいいのか?」と質問。深谷さんは「この3年間、お願いすることでは何も解決しなかった。事実を突きつけ、社会的な広がりのある声にしていくことが大切だと思う」と語った。
 国労郡山工場支部の橋本光一さんは、会社が「国が『安全』と言っている」と言って被曝列車の検修を強制したことに対して労働者が団結して闘ったことなどを報告し、「診療所の先生がたが『内部被曝は危険だ』と言って、一緒に主張してくれている。診療所の協力があればかなりやれる」と結んだ。
 最後に再び深谷さんが発言し、「『甲状腺がんは放射能と関係ない』などと言って、福島を今の状態に閉じ込めようとしている現状を、みなさんとともに変えていきたい」と述べて報告会を締めくくった。
 (本紙・北沢隆広)

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