市東さんの3・26農地裁判控訴審意見陳述 小作人の同意なき売買無効 命の農地を空港でつぶすな

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週刊『前進』06頁(2626号06面02)(2014/03/31)


市東さんの3・26農地裁判控訴審意見陳述
 小作人の同意なき売買無効
 命の農地を空港でつぶすな

(写真 天神峰の畑で天日干しで仕上げた切り干し大根を掲げる市東さん)


 3月26日の農地裁判控訴審で市東さんが読み上げた意見陳述書の要旨を掲載します。(編集局)
  ◇   ◇
 空港会社(NAA)が取り上げようとしている畑は、祖父市太郎が大正10年から耕作し、戦後は父東市が休まず守り続けてきた農地です。
 一審・千葉地裁の判決は、空港会社の違法を全面的に不問とし空港会社の請求を全面的に認めるという、最も悪質なものでした。南台農地と天神峰農地は私にとって命そのものです。一審判決は、私から農地を取り上げるものです。私は絶対に受け入れられません。

NAAがなぜ地主なのか!

 私が一番納得できないのは、空港会社が、私の南台農地と天神峰農地の「地主」だと名乗り出たことです。
 空港会社は、私の畑の「地主」として小作契約の解除を主張していますが、これは農地法に全面的に違反しています。
 そもそも空港会社は1988年に私の畑を買収したと主張しています。しかしその売買は父東市に秘密で行われたため、売買以降も父東市と私は、南台と天神峰の畑を小作地として耕し続けています。
 南台農地と天神峰農地は、農地改革で解放されるべきだった農地です。残存小作地は小作人に買い取る権利がある、小作人の承諾しない売買は許されない、これは農地法の根本原理です。
 次に、判決は「知事の許可は不要だから小作人の同意も不要」だという空港会社と千葉県の勝手な主張を、うのみにしています。知事の許可と、小作人の同意の必要はまったく別のことです。小作人に断りなく行われた秘密売買は無効だし、空港会社に地主を名のる資格はありません。しかも当時の空港公団は文書を偽造したり、地主と示し合わせて地代をだまし取ったりして、二重三重に法を破っています。
 また、手続きに小作人の同意が必要なことは、解約でも同じです。空港会社が解約申請に動き出したので、私は萩原進さんと一緒に農業委員会に確かめに行きました。事務局は「小作の同意のない解除申請は過去に一度もない」と答えました。

農地法悪用した「公用収用」

 さらに訴えたいことは、空港公団が1993年に千葉県収用委員会に収用裁決の申請を取り下げて土地収用法が行きづまったことで、今度は農地法を使って強制的に取り上げる、こういうやり方があっていいのかということです。
 判決は「解約手続きであって強制収用ではない」といっています。しかし最後は強制で畑を取り上げるのです。しかも「へ」の字の誘導路の手直しのためにです。形の上では解約ですが、実際は「公用収用」です。
 さらに強く訴えたいことは、南台と天神峰の畑は他に代えることができない農地だということです。これらは、開拓から100年近く耕作してきた農地です。父はその畑を大事に作り続けてきました。父の遺言を受けて相続し、何度も改良を重ねた畑は私の身体の一部です。有機農業は土づくりがすべてです。

天神峰の土とともに生きる

 私の農地問題は、私だけの問題ではありません。
 政府は農家をつぶす方向に動いています。TPPを進めて家族農業では生きられなくする一方、休耕地を企業が買いあさる、農地法も改悪する――農業を続けることがもはや闘いなのです。
 さらに、成田空港は「国策」を掲げ農地・家屋を収用することでつくられてきました。そのやり方は、「国策」として推進された原発や基地とまったく同じです。
 裁判所はすべての請求を棄却すべきです。
 ほんとうの「公共性」というのは、人が生きるための基盤となるものであり、農業にこそ公共性がある。
 誘導路が曲がっているのは農家を虫けらのように扱い、場当たり的に進めてきた空港建設の結果です。手直しのために、命の農地をつぶしてはなりません。貝阿彌裁判長は私の畑に立って、このことをよく考えて欲しいと思います。

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