福島の子どもたちを守ろう 深刻な甲状腺がんの多発 「放射線と関係ない」 国・県の居直りを許すな

週刊『前進』08頁(2627号07面01)(2014/04/07)


福島の子どもたちを守ろう
 深刻な甲状腺がんの多発
 「放射線と関係ない」 国・県の居直りを許すな


 「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」が4月2日、報告書を提出し、「福島での被曝によるがんの増加は予想されない」と言い放った。UNSCEARとは原子力推進のための機関であり、報告書は「福島県で発症している子どもの甲状腺がんは放射線とは関係ない」と強弁する福島県立医大教授・鈴木眞一らを擁護するためのものだ。

原発事故の影響は明白だ

 福島第一原発事故によって放出された放射能により福島県民(さらに少なくとも東日本の人たち)の健康被害が急激に増大しつつある。すでに福島では多数の子どもたちが甲状腺がんを発症している。
 周知のように、福島県の「県民健康管理調査」検討委員会は2月7日、33人の子どもが甲状腺がんと確定し、41人の子どもが「がんの疑い」になったと発表した。甲状腺検査は原発事故発生当時18歳以下だった約37万人を対象とした検査で、これまで1次検査で約27万人の結果が判明し、1796人が2次検査の対象となった。
 だが、そもそもこの検査の判定自体が極めて重大な問題をはらんでいる(表参照)。2次検査に進むのはB判定、C判定だけで、「A2判定」の「5㍉以下のしこりや20㍉以下ののう胞を認めたもの」=11万7679人の子どもたちは、20歳までは2年後、それ以降は5年後の検査を待つだけとなるのだ。
 甲状腺がんと判明した子どもの中には5㍉を少し超えただけの〝しこり〟の子どももいる。「5㍉以下」の子どもの中にがんの子どもがいる可能性もあるのだ。あるいは、小さな病変でも急速に増殖していくことも大いにありうる。A2判定の子どもも全員精密検査しなければならないのだ。また、「2年後」などというのは、到底許し難い処置だ。現在異常が見られない子どもも含めて、3カ月後や半年後には検査すべきだ。
 「疑い」とは、がんでない可能性もあるような言い方だが、この検査結果は「細胞診」による結果であり、「疑い」の患者は「90%の確率でがん」と言われている。
 検討委員会の「甲状腺検査評価部会」は、甲状腺がんは簡単な手術で良くなるかのように言っているが、患者の子どもや両親、家族の悲痛な思いを泥靴で踏みにじる暴言だ。そもそも、臓器を取り除いてしまうことが人体に与えるダメージの大きさははかりしれないものがある。さらに手術により受ける心身の傷はどれほどのものか。
 1990年代後半、5年半の間、ベラルーシ共和国の首都ミンスクの国立甲状腺がんセンターなどで小児甲状腺がんの手術を中心に医療支援活動を行った医師の菅谷昭さん(長野県松本市長)は著書『原発事故と甲状腺がん』の中で子どもたちの手術の模様を描写し、「12歳のオリガは......黙ったまま何かを観念したかのような面ざしで、音もたてず、そっと手術台に上がります。何とも忍びがたい光景です」「全身麻酔のかかったアリョーナは静かに眠り、ほどなくして彼女の透き通るような白い首にメスが入りました」「7歳のリョーバという男の子は......点滴の針を見たとたん、小さな手の平で両目をこすりながら泣きじゃくり始めました」と胸が痛む報告をしている。
 それだけではない。鈴木眞一は「甲状腺がんは予後は良好」と平然と語っているが、絶対に許すことのできないうそだ。甲状腺を取り除いてしまえば、子どもは一生ホルモン剤を飲み続けなければならない。
 転移はないかのように述べているが、これも悪質なうそだ。1986年のチェルノブイリ原発事故によって放射能汚染されたベラルーシでは1986年〜1997年に小児甲状腺がんを発症した15歳未満の患者570人のうち、385人にリンパ節への転移が発生し、94人は肺に転移していた(グラフ参照)。
 またチェルノブイリ事故の場合を見ると、大人も甲状腺がんを発症している。子どもは早く発症するが、大人は遅く発症し、数十年後に発症する場合もある。さらにチェルノブイリ事故の場合、全身の器官に多種多様な病気が発症している。福島(東日本)においてもこれらの恐れがありうる。即座に、全住民の検査と治療に全力を挙げることが必要なのだ。

生命維持に必須の甲状腺

 甲状腺はのど仏の下にあり、蝶が羽を広げたような形をしていて成人では20㌘ほどの臓器だ。ここから分泌される甲状腺ホルモンは体の発育や基礎代謝、新陳代謝などを促しており、生命の維持に不可欠なものだ。甲状腺ホルモンがまったく分泌されなくなると、人間は1カ月くらいしか生きられないと言われている。
 甲状腺ホルモンを合成する材料が、昆布などの海藻類に多く含まれるヨウ素だ。放射性ヨウ素は、このヨウ素と似た性質を持っており、そのために放射性ヨウ素が体内に入ると、甲状腺は誤って取り込んでしまう。そして放射性ヨウ素の発する放射線による内部被曝によって細胞の遺伝子が傷つけられ、それが複製を繰り返し、がんを発症する。また放射性ヨウ素以外のセシウムなどの放射性物質も甲状腺がんの原因だとも言われている。重要なことは、内部被曝の量がどんなに少なくとも甲状腺がんを発症する危険性があるということだ。
 子どもの甲状腺がんは100万人に1人か2人だ。福島の多くの子どもたちに甲状腺がんが発症しているのは福島第一原発事故によって放出された(そして今現在も放出され続けている)放射性ヨウ素などが原因であることは明らかだ。
 しかも単に放射性物質が膨大に放出されただけではない。放射性ヨウ素から身を守るためにはヨウ素剤の服用が効果を発揮するが、検討委員会の前座長・山下俊一は原発事故直後、「ヨウ素剤の投与は不要」として、子どもたちにヨウ素剤を服用させなかった。さらに「外で遊ばせても大丈夫」とまで言い放ち、何十万人の子どもたちを被曝させ、甲状腺がんを発症させているのだ。

共同診療所に熱い支援を

 福島の子どもたちを守ろう。被曝から逃れるには避難が最も有効だ。子どもたちの避難を実現しよう。今日的に避難が無理な場合は保養だけでも一定の効果がある。それも無理な場合は子どもたちの側に立った医療が必要だ。ふくしま共同診療所は現在、命と健康を守る医療施設として福島の人たちの希望の砦(とりで)となっている。診療所をさらに大きく発展させよう。その実現に向けて資金も含めて全国の力を集中しよう。
 そのためにもNAZEN(すべての原発いますぐなくそう!全国会議=な全)を全国につくろう。NAZENの五つの柱(①全原発廃炉、②被曝労働拒否、③ふくしま共同診療所建設、④保養・避難運動の推進、⑤国際連帯)こそ、福島の子どもたちと福島の人たちを守り、すべての原発をなくしていく道だ。
 被曝労働拒否で闘う国労郡山工場支部、動労水戸と団結しよう。被曝労働と闘う階級的労働運動が軸に座った時、原発と放射線被曝に反対して立ち上がる民衆の怒りが真に解き放たれ、力を持ち、勝利に向かって本格的に歩み出すことが可能となる。自らの職場で被曝労働拒否で闘おう。
 川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を絶対に阻止しよう。避難住民への帰還強制を許すな。福島の子どもたちを守り、すべての原発をなくすために闘おう。
〔北沢隆広〕

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