焦点 セウォル号事故の核心は何か 新自由主義が安全破壊した

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週刊『前進』10頁(2630号05面04)(2014/04/28)


焦点
 セウォル号事故の核心は何か
 新自由主義が安全破壊した


 韓国南西部・珍島(チンド)沖で16日、乗員乗客476人を乗せた旅客船セウォル号が転覆・沈没した事故は、24日の時点で159人の死亡が確認され、143人が安否不明と報じられている。同船には、修学旅行で済州島へ向かっていた高校生や教員ら339人も乗船しており、珍島の港には乗客の家族や関係者のほか、全教組をはじめ民主労総傘下の組合員も多数駆けつけている。
 多くの人びとの深い悲しみとともに、パククネ政権への抑えがたい怒りの声が日増しに高まっている。政府の事故対応がずさんを極めた(事故を小さく見せるため虚偽の公式発表を繰り返し、救助の出動も致命的に遅れた)ことに加え、安全無視・利益優先の新自由主義こそ事故の根本原因であることが、日を追って明らかになってきたからだ。パククネは、逮捕したセウォル号船長や航海士らにすべての責任をなすりつけようと必死になっている。だが今回の事故は、新自由主義による安全崩壊がどれほどの大惨事をもたらすのかを、ごまかしようもなく示しているのだ。

●乗組員の過半数が非正規職
 セウォル号は、濃霧のため他のすべての船が出港を中止する中、運航会社(清海鎭海運)が無理な出港を決定し、定刻より2時間半も遅れて15日午後9時頃仁川港を出た。積載貨物量は約3600㌧に達し、船の復元力(船が傾いた状態から元の姿勢に戻る力)が維持される基準の3・6倍もの過積載だった。
 事故が発生したメンゴル水道と呼ばれる海域は、狭くて海流の速い危険区域で、過去7年間で28件もの海難事故が起きていた。この区域では通常、1等航海士が操舵指揮を執る。だが事故当日は、出港の遅れにもかかわらず勤務時間表を修正しなかったたため、操舵したのは最も経験の浅い、入社4カ月の25歳の女性3等航海士だった。遅れを取り戻すために本来の航路を外れ、ほぼ全速の19㌩で航行中に船が傾き、コントロールを失って急旋回し、積み荷が崩れて船体が横転したと見られている。
 事故に至る一連の経過は、05年のJR尼崎事故と驚くほど類似している。
 その上、セウォル号の乗組員15人のうち、船長と操舵手3人を含む9人が非正規職(6カ月〜1年の短期契約)だった。しかも清海鎮海運は昨年、売上高320億㌆に対し、安全面を含む船員教育費用にわずか54万㌆しか支出せず、接待費や広告宣伝費にはその数百倍を出していた。

●規制緩和で使用期間を延長
 さらに根本的な事故原因は、セウォル号の構造上の問題である。もともと同船は日本の海運会社マルエーフェリーが所有し、鹿児島―沖縄間で18年も航行し退役した老朽船を、清海鎮海運に売却したものである。すでに内部の操縦装置の腐食が進み、操舵機やレーダーの故障が度々発生していた。加えて清海鎮海運は、1回の就航でより高い収益をあげるため、客室部分の垂直建て増しを行った。このため重心が船体上部に大きく移動し、船の復元力が著しく損なわれた。
 この背景には、船齢(進水後の使用期間)の規制緩和という新自由主義政策がある。09年、当時のイミョンバク政権は「船齢と海洋事故は関係ない」「旅客船の船齢制限の緩和で200億㌆が節減される」と主張して海運施行規則を改悪し、旅客船の船齢制限を20年から30年へと大幅に緩和した。本来なら、18年も航行し退役した6800㌧規模の大型船を、たった2年の航行のために買い取ることは考えられない。だが規制緩和によって、韓国企業は低コストで大型旅客船を確保して長期間使用でき、日本企業は老朽化した退役船を売りつけることが可能となった。まさに「安全よりもうけ」「命よりカネ」の新自由主義が事故を引き起こしたのだ。
 セウォル号の事故が突きつけているのは、この間のJR北海道の相次ぐ事故や川崎駅脱線転覆事故と同様、新自由主義そのものの破産である。
 今こそ動労千葉が確立してきた反合・運転保安闘争を実践し、闘う労働組合の拠点建設と日韓国際連帯の発展で、破産した新自由主義に怒りを込めて断を下そう。

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