崩壊するJR体制④ 「株主価値重視」が安全を破壊 駅空間を利用してカネもうけ 鉄道業務は関連会社に丸投げ 「駅ナカ保育」の拡大さえ狙う

週刊『前進』08頁(2634号03面04)(2014/06/02)


崩壊するJR体制④
 「株主価値重視」が安全を破壊
 駅空間を利用してカネもうけ
 鉄道業務は関連会社に丸投げ
 「駅ナカ保育」の拡大さえ狙う

鉄道は駅への集客の手段に

 JR東日本が2000年11月に打ち出した「ニューフロンティア21」や、JR北海道が2002年3月に公表した「スクラムチャレンジ21」などの経営計画は、株主価値重視経営を唱え、〝コストがかかる鉄道よりも関連事業で稼ぐ〟という考え方をあからさまに押し出して、今までの鉄道会社のあり方を根本のところで変えてしまった。
 JR東日本が2008年3月に出した経営計画「グループ経営ビジョン2020―挑む―」は、今後10年間で「運輸業以外の営業収益を全営業収益の4割程度まで引き上げる」としている。
 安全が完全に崩壊したJR北海道では、全営業収益のうち不動産や駅ビル事業などの鉄道外収入はなんと62%も占めている。鉄道会社としてのあり方をすでに根本的に放棄しているのだ。
 JR東日本の経営の第一の柱は「ステーションルネッサンス(駅空間の経営資源化)」だ。JR東日本は「1日1686万人のお客さまが移動し交流する駅空間という最大の経営資源」と言い、駅をカネもうけの場に位置づけた。鉄道は単にそこに乗客を運ぶ手段でいいという発想だ。
 多くの客が行き交う駅改札内の販売効率は、通常の小売りに比べて格段に優位だ。駅ナカでの売り場1平方㍍当たりの年間販売額は513万円で、他の小売業の66万円の約8倍だ。駅ナカ事業で働く労働者の70%以上が非正規職で、低賃金で働かされている。これによりJRは膨大な利益を得ている。
 乗客にはきれいな商店街が並び、ピカピカに飾りつけられた駅しか見えない。しかし、そのもとで進んでいる現実は、まさに安全の崩壊だ。
 外注化攻撃によって闘う労働組合を破壊し、労働者の団結を破壊しバラバラにして、本来の鉄道業務の9割以上を下請けのグループ企業に丸投げする。実際に鉄道を動かしているのは下請けの労働者、さらには孫請けの労働者になっている。技術継承は寸断され、下請け・孫請けの労働者には低賃金で劣悪な労働条件が強制される。まともな教育も行われない。
 その結果、有機的一体性があって初めて成り立つ鉄道事業は破壊され、安全に対するチェックはまったく機能しなくなる。このようにJRは、安全などなんら眼中にない状態になった。
 その行きついた先が、JR北海道での重大事故の続発や検査データ改ざん、そしてJR東日本の京浜東北線・川崎駅事故だ。まさに「JR崩壊」と言うべき現実が進んでいるのだ。

子どもの命も守れなくなる

 ここ数年、大都市圏の鉄道会社のほとんどが「駅ナカ保育」事業に本格参入している。駅やガード下などに空きスペースを持つ鉄道各社が、「今こそビジネスチャンス」と駅ナカ保育事業に全面的に乗り出しているのだ。
 JR東日本も「子育て支援事業」と称して、首都圏を中心に駅構内や駅ビル内、ガード下に保育施設を造っている。08年の「グループ経営ビジョン2020―挑む―」は2年間で「駅型保育園など育児支援施設を倍増させる」と打ち出し、2011年には埼京線の埼玉県内沿線のほぼ全駅に保育園を開設した。今年4月段階で首都圏に70カ所も設置され、今後100カ所まで拡大すると発表している。
 大都市圏では、通勤の行き帰りに子どもを預ける場所として駅ほど「便利」なところはない。しかも保育施設に関する規制はどんどん緩和されている。「待機児童解消」という名目で、国や自治体の政策的後押しを受けられる保育事業は、「もうかるビジネス」になっている。
 かつて認可保育所の設置者は、市町村か社会福祉法人に限られていた。2000年の規制緩和で、株式会社やNPOなども可能になった。公立保育所は民営化され、保育事業への新規参入が加速した。2012年には認可条件を市町村が自由に決めていいことになった。
 ビル内の手狭なスペースで小規模保育所を開設するケースでも、今では認可が下りる。駅ナカ保育所も「○○市認可」のお墨付きが取りやすくなったわけだ。
 そもそも大都市圏の駅とその周辺は毎日数万、数十万の不特定多数の人びとが行き交う場所だ。騒音や振動なども激しい。そこに保育所をつくってカネもうけすることが許されるのか。
 保育所は「特殊建築物(児童福祉施設等)」として、耐火性だけでなく採光、換気、内装材の不燃性などについて建築基準法で基準が定められ、消防法の厳しい基準もクリアしなければならない。一方、鉄道の駅舎は建築基準法や消防法の対象外だ。
 その「駅舎崩壊」が現実に起きたのが1995年の阪神・淡路大震災だった。当時はまだ駅ナカ保育所はなかった。しかし2003年にJR西日本の「JRキッズルーム」第1号が誕生したJR六甲道駅は、大震災の朝、真新しい駅舎が轟音(ごうおん)とともに崩壊した。
 同規模の都市直下型地震が起きたら、駅ナカ保育所にいる幼児たちはどうなるのか。そんなことも構わずJRはひたすらカネもうけに走っている。

6・8大結集でJR体制倒せ

 JRとその体制は、労働者人民の命と安全を破壊してカネもうけを貫く新自由主義の象徴だ。雇用と安全を破壊する民営化・外注化は、新自由主義の核心的な攻撃だ。
 動労千葉は反合・運転保安闘争路線を貫き、12年にわたり検修業務外注化を阻んできた。外注化強行後も、外注先の職場に労働者の団結をつくり、外注化を覆す新たな闘いに入っている。これはJR体制を打倒し、新自由主義を打ち砕く画期的な闘いだ。
 解雇撤回・JR復帰の10万筆署名をなんとしても達成し、国鉄闘争全国運動の6・8全国集会の大成功をかちとろう。国鉄闘争の新たな出発点を築こう!
(魚沼敬一)
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