原子力規制委員会人事 原発再稼働への策動粉砕を 安倍が推進派の田中知狙う 福島事故起こした張本人

週刊『前進』06頁(2635号04面01)(2014/06/09)


原子力規制委員会人事
 原発再稼働への策動粉砕を
 安倍が推進派の田中知狙う
 福島事故起こした張本人


 安倍政権は5月27日、原子力規制委員会の委員に東京大学大学院教授の田中知(さとる)などを充てる人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。現在の規制委の5人の委員のうち島崎邦彦ら2人が9月に任期満了となるためだ。
 田中知とは日本原子力学会の2011年度の会長まで務め、原子力政策を中心で進めてきた人物であり、3・11福島原発事故を引き起こした張本人の一人だ。福島と東日本一帯を高濃度に放射能汚染させ、福島の人びとから大切な古里を奪い、「疑い」も含めて89人もの子どもたちに甲状腺がんを発症(5月19日現在)させている階級的大犯罪人だ。こんな人物の委員就任など絶対に認めることはできない。そもそも原子力規制委員会そのものが原発再稼働と原発推進のための組織であり、今すぐ解体すべき対象なのだ。
 田中知が会長を務めたことのある原子力学会は1959年に発足し、定款で「本会は、原子力の平和利用に関する学術および技術の進歩をはかり、......原子力の開発発展に寄与することを目的とする」と掲げている。この事実が端的に示すように、原子力学会は自民党や電力資本と一体となって原発政策を進めてきた中心的な組織だ。

NHK会長人事と同じだ

 大恐慌の深まりが帝国主義間・大国間争闘戦を軍事化させている情勢下で、NHK会長や最高裁長官の人事と同様に、安倍は戦争と原発再稼働の政策を強行するために田中知を規制委に送り込もうと企んでいるのだ。4月に閣議決定し、原発の再稼働と核燃料サイクル維持を宣言した「エネルギー基本計画」の人事面での具体化攻撃だ。
 安倍の思惑は、現在の規制委員会が作られた狙いと、その破産をみれば一層はっきりする。委員長の田中俊一は田中知の5代前の原子力学会会長であったが、11年3・11福島原発事故後の3月30日、原子力研究を担ってきた15人の研究者と連名で「福島原発事故についての緊急建言」なる文書を公表した。この建言の本質は「原子力の平和利用を先頭だって進めて来た」という書き出しで明らかなように、福島原発事故を開き直り、もっとあくどく原発政策を推進しようとの宣言である。だが他方で建言は、原発事故への「遺憾」「陳謝」なる言葉をちりばめ、〝原発の安全〟に最大の関心があるかのようにとりつくろっている。
 田中俊一は、この建言に名を連ねていることをもって、民主党政権下の12年9月、規制委員会発足と同時に委員長に就任した。民主党政権の狙いは、田中俊一の〝安全重視〟のポーズを最大限活用し、それをもって日米安保と並ぶ日帝の基本政策である原発政策をなにがなんでも守り抜き、原発再稼働を行うということであった。
 また日本地震学会会長、地震予知連絡会会長などを歴任した島崎邦彦の委員長代理就任も、〝安全重視〟を最大限アピールするためのものであった。この田中俊一・島崎を軸とする体制で規制委員会はとくに、「活断層」問題を最大限クローズアップさせる手法をとった。再稼働を狙う原発の敷地内での活断層調査の場面を大々的に報道し、〝安全重視〟の姿勢を強調したのだ。

勝利の道を示す動労水戸

 だが、労働者民衆の原発への激しい怒りの前に、こんな見えすいたペテンは通用しない。すでに明らかなように、現在、規制委が審査を行っている九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)周辺にはいくつもの活断層とカルデラがある。それで最も危険な原発のひとつに上げられているのが川内原発なのだ。にもかかわらず、田中俊一と規制委員会は再稼働の一番手として審査を進め、そればかりか田中は「規制委員会は審査するだけで、事故が起こらないと保証するものではない」と何度も言い放っているのだ。なんという卑劣漢! なんという責任逃れの言葉だ。実に許しがたい。
 田中俊一と規制委員会の〝安全重視〟のペテンは完全に破産した。労働者民衆の怒りと「再稼働やめろ!」「すべての原発をなくせ!」の声はより一層激しく深いものとなっている。この、ペテンの路線が破綻し追い詰められた末に安倍がすがり付いたのが、田中知を規制委員会に送り込み、正面突破で再稼働に突き進もうとの策だ。
 だがそれは、中間的なものやあいまいなものを取り払い、反原発闘争を原発の廃炉か推進かの非和解的な闘いに発展させていく。「命よりカネ」の再稼働策動に対し、絶対反対の闘い以外にないのだ。集団的自衛権行使容認の戦争・改憲の攻撃と、その一環でもある核武装の偽装形態としての原発再稼働攻撃に対し労働者民衆の怒りが爆発し、安倍打倒へと必ず発展していく。
 動労水戸は被曝労働を拒否し、常磐線の竜田駅までの延伸に反対して5月10日に続き30、31日、ストライキに立ち上がった。このストライキと、31日にいわき市で行われた集会とデモは、避難者などの住民の圧倒的な支持と共感をもって迎えられた。
 この外注化反対、反合理化・運転保安闘争の階級的労働運動の発展の闘いは、福島の怒りと深く結びつき、福島圧殺の攻撃を根底から跳ね返し、労働組合が中心に座って反原発闘争を発展させ勝利させていく道筋を実践的に示した。
 この道をさらに推し進め、田中知の委員就任を許さず、川内原発の再稼働を絶対に阻止しよう!

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田中知は「原子力ムラ」の中心人物

日本原子力学会会長(2011年度)
日本原子力産業協会で役員(2011〜12年)
原子力環境整備促進・資金管理センターで評議員(11〜13年)
日本原子力技術協会で評議員(11年)
東電記念財団から報酬50万円以上(11年度)
日立GEニュークリア・エナジーから寄付60万円(11年度)
(原子力規制委員会への自己申告による)


田中 知
たなかさとる
東京大学大学院教授(64歳)
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