崩壊するJR体制⑤ カクマルとの結託関係清算へ 下十条運転区廃止を手始めにカクマル支配解体に乗り出す 「スト」空叫びし混乱の東労組

週刊『前進』06頁(2635号05面03)(2014/06/09)


崩壊するJR体制⑤
 カクマルとの結託関係清算へ
 下十条運転区廃止を手始めにカクマル支配解体に乗り出す
 「スト」空叫びし混乱の東労組


 JR東日本はJR総連・東労組との結託体制の破棄を明確にした。昨年末に東京支社で行われた運転士・車掌への強制配転に続き、乗務員基地再編成攻撃と一体で、東労組の弱体化を狙う運転士の異動が再び画策されている。これまでの「労使協力関係」を清算し、東労組の「拠点」である運転職場を資本の全一的支配のもとに組み敷こうとする動きである。JR東日本は労務政策の転換に大きく踏み込んできた。

乗務員基地の大再編テコに

 昨年12月24日、JR東日本は東労組本部に対し「京浜東北・根岸線の乗務員基地再編成について」を提示した。これは、大宮、東京、横浜の3支社にまたがり、職場の廃止と新設、運転士・車掌の支社間異動を伴う大規模な合理化攻撃だ。
 2015年3月に東労組カクマルの「拠点」職場である下十条運転区が先行的に廃止され、「さいたま運転区」と「さいたま車掌区」が新設される。同年12月、「横浜運輸区」と「相模原運輸区」が新設され、16年3月に「大田運輸区」が新設されてこの施策は完結する。東京では蒲田電車区、蒲田車掌区の廃止も決定されている。14年度完成の東北縦貫線開業に合わせた大再編だ。
 JR東日本は施策の目的に「効率的な業務執行体制の構築」を掲げているが、他区所からの運転士の大量異動は、安全の崩壊に直結する大問題だ。下十条運転区では廃止までの間に半年で運転士の4割が入れ替わり、京浜東北線の乗務経験3年未満の運転士が7割に達することになる。この提案に対して東労組本部は一言のコメントも発していない。合理化率先推進の立場は明らかだ。
 1月30日、JR東日本東京支社は東労組東京地本に対し、「京浜東北・根岸線の乗務員基地再編成について」の「概要提案」を行った。提案に際し必須事項とされてきた施策の詳細や労働条件などの説明は一切なかった。2月に入ると東京支社は、東京支社管内の全運転士と全車掌を対象に「概要提案」の説明を行った。東京地本との協議を無視し、直接「社員説明」を行ったのだ。同様に、当該地本への説明抜きに、大宮支社は3月、横浜支社は4月に「社員説明」を行った。資本と労働者の個別的関係で異動の確認を取り付けようというのだ。これまでのあり方を逸脱する、かつてない事態だ。
 3月17日以降、下十条運転区では個々の運転士に対して異動のための面談が実施された。面談では「先に意思表示していた社員を優遇する」などの利益誘導が行われたという。カクマルからの引きはがしと会社派組合員の抱え込みが露骨になされたのだ。

東労組の哀願無視するJR

 3月26日、東京地本は東京支社に対して「面談の中止を求める緊急申し入れ」を提出、4月9日に団交に入った。団交で会社は、面談の中止要請については即答を避け、4月22日の回答で面談の続行を主張した。その後の団交でも、会社は「現在行っている面談は止めない」と強行姿勢を崩していない。
 これに対して東京地本は、「JR発足以降27年間築きあげてきた労使協議の進め方を変え、すべてを就業規則のみで強行しようとしている」「正常な労使関係を確立しよう」と、労資結託体制の維持を哀願した。
 しかし、乗務員基地再編成による安全崩壊については一切言及していない。地本も施策実施を前提にしているのだ。東労組執行部の関心のすべては、合理化・外注化を労組として承認し推進することによって与えられてきた既得権益(労組幹部としての地位とメンツ、天下り先の確保など)の護持だけなのだ。
 東労組東京地本は4月15日から4日間、全運転士を対象に「全運転士集会」を開催した。1800人の運転士が動員された。組合員再登録運動と言うべき異例の事態だ。東労組は、基地再編や強制配転自体と闘うのではなく、「全運転士集会」の「物質力」をもって労資結託体制の護持を資本にねじ込もうと動いたのだ。また、資本との一定の緊張感を利用し、それを組織の求心力に転化しようと画策した。
 だが、会社による「面談の続行」でそのもくろみは完全に崩れた。

労使共同宣言体制は大崩壊

 5月15日、東京地本は第16回執行委員会を開催し、「京浜東北・根岸線の乗務員基地再編成」の「施策の進め方」に対して、「同盟罷業(ストライキ)の戦術行使でたたかう」ことを決定した。合理化そのものは容認して、「施策の進め方」だけを問題にするなど、本末転倒もはなはだしい。組合員の命や安全を守るためではなく、執行部の自己保身のために「ストライキ」という言葉をもてあそんでいるのだ。
 さらに5月27日、東京地本は第37回臨時地本委員会で「ストライキ戦術の行使」の決定を承認した。6月8日から開催される東労組第30回定期大会に「ストライキ方針の決定」を要請することも決めた。しかし、方針をめぐる本部・地本間の不一致が明らかになるなど、東労組は組織混乱にたたき込まれている。青年労働者の離反はさらに加速している。
 これまでも定期大会の場などで「スト権論議」に関する言及はあった。しかし、機関決定として「ストライキ戦術の行使」を打ち出したことはない。東労組は、JR東日本と締結した第1次から第4次の「労使共同宣言」で、「労使間の問題処理にあたっては、平和裏に労使間の話し合いにおいて自主解決を図る」とストライキ権の放棄を確認してきた。東労組は結成以来の最大の危機を迎えている。彼らはさらなる屈服で事態を打開しようと必死にあがくだろう。しかし、突き出されている問題は、JRの労資結託体制がついに崩壊し始めたということだ。
 国鉄闘争全国運動の6・8集会でJR体制打倒の本格的な決戦が始まった。青年労働者の組織化を軸に、JR総連を解体し、JR職場に階級的労働運動の不抜の拠点を打ち立てよう。
(矢剣 智)
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